Menu
 > レビュワー
 > ゆき さんの口コミ一覧
ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 616
性別 男性
自己紹介  「監督の数だけ映画が有るのではなく、観客の数だけ映画が有る」という考えでアレコレ書いています。
 洋画に関しては、なるべく字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くというスタンスです。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  映画ドラえもん のび太の地球交響楽 《ネタバレ》 
 音楽を嫌いだった少年が、音楽を好きになるまでを描いた映画。   「冒険」を主題にしたドラ映画が多かった中、本作では「音楽」が主題になっているという、それだけでも斬新さを感じますね。  映画の強みとは映像だけでなく、音にもあるのだと実感させられたし、漫画という媒体の原作では生み出せない「映画ドラえもん」ならではの魅力を生み出す事にも成功してるのだから、大いに感動。  実にシリーズ18作目(スタドラを含めたら20作目、旧アニメ版も含めたら40作以上)でありながら、未開拓の分野に切り込んでみせた作り手の発想力と冒険心に、熱い拍手を送りたいです。   そんな本作で一番心に残ったのは、クライマックスの場面。  地球上の音楽全てを結集させて敵を打ち払うという、とても盛り上がる場面なのですが、そんな中で、さり気無く「戦場でハーモニカを吹く兵士」という一コマを挟んでいるんですよね。  恐らくは傷付いた戦友の為、束の間の安らぎを与えてるという、その姿を刹那的に描く演出には、本当にグッと来ちゃいました。  主人公であるのび太達は、平和な日本で暮らしているけど、地球には戦争をしている人達もいる。  そして、そんな場所でも人々は音楽を奏でているという、正に「地球交響楽」を体現した場面であり、文句無しで素晴らしかったです。   序盤にて、のび太が風呂場で笛の練習していたお陰で地球が救われたとか、脚本の伏線回収も鮮やかだったし、ゲストキャラクターも魅力的。  ロボットの語源になったというカレル・チャペックから拝借して、ゲストロボを「チャペック」と名付けるセンスにも、ニヤリとさせられましたね。  幼女のミッカちゃんも可愛らしく「のほほんメガネ」と呼んで小馬鹿にしていた相手を、最後の最後に「のび太お兄ちゃん」と呼ぶツンデレ表現なんかも、幼い女の子ならではの魅力があって、良かったです。  主人公のび太と同世代の女の子ではない、妹のような幼女だからこその可愛さが、上手く描けていたと思います。   そんなミッカちゃんとの別れの場面を直接描かず、エンディングの一枚絵でのび太に抱き着く姿や、皆から貰ったプレゼントを部屋に飾ってる描写などで、断片的に伝えて想像力を刺激する形になっているのも、非常に御洒落。  今井監督って「新恐竜」でもピー助との二度目の別れをさり気無く描いてみせていたし、こういった「さり気無い描き方で、大きな感動を生み出す」という手法が、本当に上手いですよね。  「十八番」や「職人芸」と言って良い領域に達してると思います。   「中盤でジャイスネ主役になる場面は、ちょっと浮いてるし、観ていてダレる」「ゲストキャラも多過ぎるし、個々に見せ場を与えようとして散漫になっているので、ミッカちゃんとチャペックの二人に焦点を絞っても良かったのでは?」等々、不満点も有るには有るんですが……  主題歌も大好きなVaundyだし、映画にも合ってる曲だったしで、満足度の方が高かったですね。   そうして、最後の「おまけ映像」には、心から興奮。  満を持しての寺本監督復帰作で「新・夢幻三剣士」の可能性が高いだなんて、期待するなという方が無理な話です。   また一年後に、スクリーンでドラ映画を満喫出来る。  そんな幸せを噛み締めながら、劇場を後にする帰り道まで、楽しく過ごせた一本でした。
[映画館(邦画)] 8点(2024-03-01 21:29:24)(良:1票)
2.  AVA エヴァ 《ネタバレ》 
 「美人女優による殺し屋映画」という、そんな一言で片付いてしまいそうな内容。   取り立てて語るような事も無い出来栄えだったのですが……  それって要するに「際立って良い部分も無ければ、悪い部分も無い」という事であり、娯楽映画としては優れてるのかも知れませんね。  とりあえず、観ている間それほど退屈しなかったのは確かです。   あえて良かった部分を語るなら、冒頭の場面。  最初に主人公エヴァに殺される男が「聞き飽きてるかも知れないけど」と前置きしてから命乞いする様は中々面白かったし、この映画を象徴する台詞にも思えましたね。  「皆、こういうタイプの映画は観飽きてるかも知れないけど、それでも観て欲しいんだ」っていう、作り手からのメッセージみたいでした。   如何にも怪し気で、ラスボスになるかと思われたジョン・マルコビッチ演じるデュークが「実は主人公を大切に想ってる親のような存在」として終わったのが意外だったとか、逆に良い人そうな元彼のマイケルが意外と駄目な奴だったとか、程好いサプライズがあった辺りも、何か安心感がありましたね。  多分これ、完全に予想通りの展開だったら、退屈な映画って印象になってたと思うんです。  でも本作に関しては「娯楽映画に必要なだけのサプライズ要素」を、しっかり備えてるバランスであり、ここは評価に値すると思います。   映画の終わりでは「幸せな最期だった」というデュークのメッセージと共に、主人公エヴァも殺される事が示唆されるんだけど、あんまりバッドエンドとは思えなかったのも、不思議な感覚でしたね。  案外あっさり敵を返り討ちにして、エヴァが生き延びる未来も有り得そうだし、結末を観客に委ねる度合いが高かった気がします。  「ハッピーエンドでも、バッドエンドでも、好きなように解釈して良いよ」って優しさが感じられて、それが心地良いんだけど、ちょっと物足りなくもあるという……   何か、つくづく曖昧というか、語るのが難しい一本でした。
[DVD(吹替)] 5点(2023-03-28 07:27:10)(良:2票)
3.  映画ドラえもん のび太と空の理想郷 《ネタバレ》 
 「世界平和」を目的とした人物と戦うドラ映画というのは、今回が初めてではないでしょうか。   非常に大人向けというか、難解とも言えるテーマであり、ともすれば観客の子供に「レイ博士は世界を平和にしようとしているのに、どうして悪い人なの?」という疑問を抱かせてしまいそうなのですが……  そこを、しっかり分かり易く、万人に伝わるよう作ってあったんだから、お見事でしたね。    「ユートピアとは、即ちディストピアである」という事を感じさせるパラダピアの描写も秀逸であり、空に浮かんだ理想郷としての魅力と、人の心が消されてしまう地獄としての恐ろしさ、その双方を描く事に成功しているんだから凄い。  特に、ジャイアンとスネ夫が「浄化」され「穏やかな善人」に変わっていく様は、何とも言えない不気味さが漂っていて、印象深いです。   メインゲストとなるソーニャが「もう一人の、ドラえもん」として描かれているのも、見逃せないポイント。  それはのび太に対し「キミは私に似ている」と呟いたレイ博士にも通じるものがあり、彼は「もう一人の、のび太」として描かれている。  過去作でも「アリガトデスからの大脱走」(2012年)のマジメー(声もレイ博士と同じ)という前例がありましたが「一歩間違えば、のび太もこうなっていたかも知れないという悪役を倒す物語」の系譜として、本作は決定版と呼べるほどの、素晴らしい仕上がりになっていると思います。   「南極大冒険」(2017年)や「STAND BY ME ドラえもん 2」(2020年)の系譜である「時間軸を弄った脚本」としての質の高さも、特筆に値しますね。  「青い虫の正体」「晴れてるのに雨が降っていた理由」どちらの伏線も巧妙に張られており、その回収の仕方が、実に鮮やか。  思えば脚本担当の古沢良太は三丁目の夕日シリーズでも山崎貴監督とコンビを組んでいた人ですし、それゆえにスタドラ2を踏まえたような内容にしたのかも知れません。   ドラえもんに「ボク達は、皆の友達になる為に作られた」と言わせたのも印象的であり、正に現行アニメ版を象徴するような一言。  そもそもドラえもんとは原作初期において「セワシの子分」であり「のび太の見張り役」でしかなかったんです。  そこから徐々に「のび太の友達」へと変わっていった原作漫画を踏まえ「ドラえもんがのび太の友達になるまで」を描いたのが「STAND BY ME ドラえもん」(2014年)でしたが、本作は更に踏み込んで「ドラえもんが生まれた理由」まで断言させているんですよね。  そこに「自分が生まれてきた理由(作られた理由)は、誰かが決めるんじゃなく、自分で決めるものなんだ」という、強いメッセージ性を感じました。   レイ博士の過去が詳細に描かれていないのも、想像をかき立てるものがあり「パーフェクトな存在になる為には、心は不要」と言うレイ博士と「心は絶対に必要」と言うのび太との対比で(レイ博士はのび太と違い、誰かの優しさに触れる事無く、年老いてしまったんだな……)と感じて、切なくなったりもしましたね。  劇中における「ボクは、そのままの、のび太くんが……」というドラの台詞が、エンディング曲の「大好きなんだ、そのままで大好きさ」に繋がる構成も、本当にグッと来ちゃいました。   一応、不満点も述べておくなら「静香ちゃんは強情っぱりなのが欠点というのは、無理やり感ある」「0点の答案が降ってきて終わるよりは、ソーニャが生き返るという感動の余韻に浸らせたまま終わらせて欲しかった」とか、その辺りが該当しそうなんですが……  これも「エンディング絵にて、母が薦めるピアノではなくバイオリンに拘って演奏する静香ちゃんの姿に、否応無く納得させられる」「人間は駄目なまま変わらなくても良い、という誤った受け取り方をされない為、0点の答案で叱られるオチは必要だった」という具合に、不満に思えた箇所に関しても、すぐに答えが浮かんでくるし、本当に完成度が高かったですね。  「心を失うくらいなら、パーフェクトな存在になれなくても良い」というメッセージが込められてるのに、この映画自体がパーフェクトな出来栄えじゃないかって思えるのが、何とも皮肉。  でも、大前提である「心」を失っておらず、優しさに満ちた作りだったというんだから、本当にもう、参っちゃいます。   劇中にて、敵に狙われた故郷を守り切ったのび太が「この町の事を、もっと好きになった」と、満足気に呟くのですが……  観客の自分としても「ドラえもんという作品を、もっと好きになった」と、そう感じるような、素敵な映画でした。
[映画館(邦画)] 8点(2023-03-03 12:52:06)
4.  映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021 《ネタバレ》 
 ドラ映画としては監督&脚本が新人コンビである為、不安も大きかったのですが……中々の仕上がりになってたと思います。   まず、何と言ってもアクション描写が素晴らしい。  小説版を読んだ時点では「アストロタンク」だの「アストロスラスター」だのといった兵器名が並んでるのを見ても、全然ピンと来なかったのに、映画本編を観た今となっては、こうして名前を書き込んでるだけでもワクワクが甦って来ちゃうくらいですからね。  火力重視の戦車モードと、機動力重視の戦闘機モードを使い分ける戦闘シーンが、本当に見事でした。   正直、最初は(どうして戦車に名前を付けたの?)(変形する必要あったの?)って疑念を抱いたりもしたんですが、それが映画を観ていく内に「名前を付けて正解だった」「変形させて正解だった」と思えてくるんだから凄い。  この「謎が解き明かされていく」ような感覚は、ちょっと独特な楽しさがありましたね。   例えば、原作漫画では「パピ君が銃を使って探査球を撃ち落とす場面」が、本作では「スパナを投げて探査球を破壊する場面」に変更されているんです。  (何故?)と思っていたら、後に「野良猫のクロの口に翻訳ゼリーを投げ込み、説得するパピ君」という場面に繋がって、そこで(おぉ、なるほど! だから事前にパピ君のコントロールの良さを示しておいたのか……)と納得出来ちゃう。  この改変、原作で一番不可解な部分である「窮地に追い込まれたパピ君が、突然謎の超能力でクロを洗脳して助かる」という場面を、自然に変える事にも成功しているんだから、本当に効果的だったと思います。   悪役のドラコルル長官も「原作以上に知的で、部下想いな一面がある軍人」というキャラに生まれ変わっていたんだから、嬉しかったですね。  ギルモア将軍から「有人兵器ではなく、無人兵器を用いるように」と命じられた際の 「我々の犠牲を恐れているのでしょうか?」 「……将軍が恐れているのは反乱だ。我々ですら信用ならんのさ」  という副官とのやり取りなんて、もう痺れちゃうくらいに良い。  万策尽きて敗れた後、巨人と化したジャイアンに対しても一切怯まず「長官から手を離せ!」と銃を向ける副官という描写も、ドラコルルの人望が伝わってくるものがあり、好きな場面。  最後まで毅然とした態度を貫き、降伏する代わりに部下の安全を保障して欲しいと交渉するドラコルルの姿は、作中で一番恰好良いと思えたくらいです。   それと、地球人であるのび太達だけでなく、ピリカ星の人々が頑張って「自分達の手で自由を掴もう」と独裁者に立ち向かう要素がアップしているのも、良かったと思います。  これに関しては、旧アニメ版の「宇宙小戦争」でも同じような試みが為されていたのですが、本作の方が更に徹底しているし、戴冠式におけるパピ君の演説などによって、市民による革命に至る流れも、とても自然になっていましたからね。  「原作を改変し、原作より面白くなった映画」という意味合いでは、間違い無く本作の方が上だと思います。   「アストロタンクの戦闘シーンが素晴らしかっただけに、ラストの巨人VS小型兵器という戦いが見劣りして感じる」「自由同盟のリーダーが恰好良くなっていただけに、出来れば本職の声優さんを配して欲しかった」など、細かい不満点は色々あるんですけど……  明らかに長所の方が多いので、まぁ良いかって気持ちになっちゃいますね。  なんていうか「才能は豊かだか、経験が足りない若手監督」っぽさを感じる作風というか「ここは、もっとこうすれば良いのに」って思える箇所が多い映画なんだけど「ここは素晴らしい、本当に素晴らしい!」って箇所も同じくらいあるっていう……  悪く言えば完成度の低い、良く言えば破天荒でパワーを感じる品に仕上がってたと思います。   あと、出木杉くんの扱いが良かったというか「皆の仲間外れにされてる」感じが薄くって、むしろ「出木杉くんも皆の仲間」って形になってたのも、凄く嬉しかったですね。  冒険に参加出来なかった理由も「塾の合宿で不在だったから」と、きちんと理由が説明されているし、ラストにて一緒に「宇宙大戦争」を観て、冒険の顛末をのび太達から教えてもらう事になるのも、良いオチだったと思います。   おまけ映像からすると、次回作は「創世日記」か「ブリキの迷宮」が有力に思えますが……  いっそ出木杉くんと一緒に冒険するような、オリジナルストーリーの映画でも良いなぁと思えちゃうくらいでしたね。  そんな「禁じ手」を用いたとしても、きっと面白くなると信じられる程に、今のドラ映画はクオリティが高い。   また来年も、映画館に足を運ぼうと思えるような、良い映画でした。
[映画館(邦画)] 8点(2022-03-04 12:48:39)(良:1票)
5.  80デイズ 《ネタバレ》 
 「八十日間世界一周」をジャッキー主演で映画化したという、正に夢のような映画。   その分、ちょっとファンタジー色が強過ぎるというか、映画版「八十日間世界一周」(1956年)のリメイクと考えたら違和感が大きいけど、自分としては満足でしたね。  あくまでも、ジュール・ヴェルヌの小説を翻案した「ジャッキー映画」として楽しむべきなんだと思います(エンディングのNG集は無いけど)   物語の大オチ「日付変更線を越えたから期限に間に合った」は変えてないし、世界一周の旅を通して「金や名誉よりも大切な人を得る事が出来た」という、原作で一番大切な部分を、きちんと踏襲しているのも嬉しい。  随所にアクションも盛り込まれているし、急造飛行機以外にも「色んな機能を備えたステッキ」「車輪を付けた靴」など、ワクワクさせられるアイテムが揃ってるのも良かったです。  主人公格のフォッグを発明家キャラにした事に、ちゃんと意味があったと思います。   ゴッホやライト兄弟にウォン・フェイフォンなど、史実におけるビッグネームが登場する事と「俳優としてのビッグネーム」が登場する事をシンクロさせている作りも面白い。  この辺りは「さりげなくスターを出演させる」という1956年版の遊び心に通じるものがあるし、ただ真似をするだけでなく、一歩先に進んでみせた感もありますよね。  特に「ジャッキー・チェンとシュワルツェネッガーの共演」には胸躍るものがあって、本作が「夢の映画」である事を実感させてくれました。   万里の長城を徒歩で移動する場面なんかも、旅映画らしい切なさを感じられて好きだし、パスパルトゥーの故郷の描写も「懐かしき我が家に帰ってきた……」って感じがして、良かったですね。  敵と戦っている内に、自然とキャンパスに絵が完成しちゃう場面も可笑しくって、コメディ部分としては、ここが一番お気に入りかも。   そんな具合に、様々な長所が備わっている映画なんですが……  ・船を材料として提供した船長達が、その後どうなったかについて描かれていない。 ・「また腕が取れた」と笑いを取って終わるのは、ちょっと微妙。   といった具合に、終盤において短所が目立つのが残念ですね。  最後の最後で、テンションが下がって終わっちゃう形。  これって「終わり良ければ全て良し」の逆の現象であり、作品全体の印象も微妙なまま終わっちゃう訳だから、凄く勿体無い。   せっかく旅の途中までは楽しかったのだから、その勢いのままハッピーエンドまで駆け抜けて欲しかったものです。
[DVD(吹替)] 7点(2021-04-15 17:19:01)
6.  映画ドラえもん のび太の新恐竜 《ネタバレ》 
 名作「恐竜2006」の続編となる映画。   本作を手掛けた今井監督自身「恐竜2006を手掛けた渡辺歩さんは、僕が尊敬し憧れてやまない監督」「あの作品が無ければ今の劇場版ドラえもんは存在しない」「子供だけでなく大人も『映画』として鑑賞できる作品になった」と絶賛している品の続編であるだけに、確かな意気込みが伝わってきましたね。  とにかく映像と音楽のクオリティが素晴らしいし、脚本の川村元気氏と話し合い作り上げたというストーリーに関しても、非常に練り込まれていたと思います。   何せ、これまで頼もしい味方だったTPが敵に回り「のび太が時空犯罪者として逮捕されそうになる」という衝撃の展開まで描かれていますからね。  滅びゆく恐竜達を救おうとする終盤の展開は、ともすれば「竜の騎士」の二番煎じというだけで終わってしまいそうなものなのに、そこに独自の要素をアレコレと盛り込んで、全く新しい魅力を感じさせる品に仕上げてみせたのだから、お見事です。   一応、上述の「竜の騎士と展開が被っている」部分。  それから「恐竜2006の『続編』であるにも拘わらず、まるで『リメイク』に思わせるようなミスリード展開があった事」「キャラデザが月面探査記より微妙に思えた事」「オープニング曲が流れない事」など、細かく言えば欠点になりそうな箇所も幾つかあるんですが……  それ以上に「キューは滑空する翼竜ではなく、羽ばたいて空を飛べる始祖鳥だった」と判明する場面の爽快感。  「のび太達が冒険していた島の正体が分かる」までの脚本の巧みさなど、長所の方が圧倒的に眩しくて、霞んじゃいます。   それと、本作の好きなポイントとしては「主人公の『努力』が濃密に描かれている事」も挙げられそうですね。  これまでのドラ映画って、尺の都合もあるにせよ、主人公のび太が努力して何かを身に付けるとか、そういう展開って殆ど無かったんです。  精々が魔界大冒険の「スカートめくり」くらいであり、あれが完全にコメディタッチに描かれていた事を考えると、真面目な面持ちで何度も諦めず挑戦し、傷付きながら「逆上がり」に挑んで見せるのび太の姿は、本当に新鮮に感じられて良かったです。  これも恐竜2006以降の「僕も頑張る、とピー助に約束してみせたのび太」だからこそ、また「キャラクター達が傷付き血を流す描写を、原作同様に描くようになった」からこそ出来る展開であり、非常に味わい深い。  思えば原作コミックス第一巻にも「人にできて、きみだけにできないなんてことあるものか」とドラに励まされ、特訓の末に竹馬に乗れるようになるのび太って場面がありましたし、本作が紛れも無く原作漫画「ドラえもん」の魂を受け継いだ品である事を実感させられます。   そもそも前作の月面探査記では「これまで舞台になった事が無い月が舞台である」という分かり易い斬新さがありましたが、本作はその点不利であり「これまで何度も舞台になってきた恐竜達の時代の話」なんですよね。  それでも、そんなハンデをものともしないというか、むしろ逆手に取って「生まれ変わったピー助との再会」という、これ以上無いほどの劇的な展開に繋げてみせたんだから、もう脱帽です。   鳴き声を聞いた時点で(もしや……)と思っていましたが、スタッフロールにて「ピー助/神木隆之介」の表記を目にした際には、本当に声が出そうになったというか、涙が溢れて止まらなくなったくらい。  本作のノベライズを読んだ時点でも(これ、神木隆之介ボイスだったら良いのになぁ)と思いつつ、やはりそれは諸々の理由で難しいんじゃないかと諦めかけていただけに、まさかの神木ボイスであった事、そして別れの場面でも登場させ「恐竜は滅びていない。ピー助も生き続ける」と伝えてくれた事に対する感激というか……  作り手の皆さんへの「ありがとう」という気持ちが抑え切れなくて、ひたすらに「涙」という代物でしか感情を表せなかったんですよね。  ドラえもんを好きで良かった、映画館に足を運び続けて良かったと、そんな事をしみじみ感じられた瞬間でした。   なお、来年の映画は山口晋監督による「新・宇宙小戦争」であるみたいで、これまた期待が高まりましたね。  原作漫画の「市民による武力革命」を映像化してくれるかどうか、戦車のカラーリングを原作準拠にしてくれるかどうかと、色んな面で注目しつつ、また来年の公開日を楽しみに待ちたいと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2020-08-07 12:42:44)
7.  エスター 《ネタバレ》 
 「オーメン」という有名過ぎる先例がある事が、良い目晦ましになっていましたね。  それによって、悪役であるエスターの勝利エンドとなる可能性もあるのでは? と思えたし、最後まで結末を読めないまま楽しむ事が出来ました。  この映画が2009年製であり、三年前にあたる2006年には「オーメン」のリメイクが公開されていた事を考慮すると、作り手側も意図的に「オーメン」とは異なる「悪が退治されて、めでたしめでたし」エンドを選んだんじゃないかな……って気がしますね。  DVD特典の未公開エンドでも、エスターが逮捕される事を示唆する終わり方でしたから。   そんな具合に、基本的には「面白かった」「充分に楽しめた」という一本なのですが、ちょっと気になる点もチラホラ。  まず「襲われるかと思ったら、実は大丈夫だった」という肩透かし演出を何度も繰り返す点に関しては、正直キツかったです。  作り手の意図としては「本当に襲われちゃう場面」の衝撃を強める為、あえてブラフを重ねておいたのかも知れませんが、流石にこれだけの頻度でやられると(もういいよ……)とゲンナリしちゃいましたからね。  この辺りの「ハッタリの積み重ね」を、もっと少なめにしてもらえたら、より自分好みな映画になっていた気がします。   エスターのジョンに対する愛情が、本物だったのかどうか曖昧なのも、クライマックスにおける集中力を削ぐ効果があって、勿体無かったです。  「エスターなりに本気でジョンを愛していた」でも「単なる性欲に過ぎなかった」でも、どっちでも構わないから、ハッキリした描き方をして欲しかったんですよね。  仮に前者の場合なら、エスターが彼に惹かれるキッカケを丁寧に描くべきだったと思うし、後者の場合なら、彼に拒まれた際にあんなに泣く事は無いだろうと思えるしで、どうも中途半端でした。    翻って、良かった点はといえば……やはり、エスター演じるイザベル・ファーマンの熱演が挙げられそう。  劇中における「三十三歳の素顔」は特殊メイクなのでしょうが、本当にそちらが素顔なんじゃないかって思えるくらい、劇中のキャラクターと一体化していましたからね。  ジュースを欲しがって、それを拒否されたら寂しそうに俯き大人を騙す場面や「殴る?」と挑発する場面など、幼い子供という立場を活用する「狡い大人」としての姿に、真に迫った説得力があったんだから、お見事です。   そんなエスターの正体が明かされていく流れを、丁寧に描いている点も素晴らしい。  最初の出会いや、養子としてコールマン家に貰われていく序盤の段階では「天使のような良い子」という印象を与えた上で、少しずつ「この娘、どこかが変だ」と思わせていく構成になっているんですよね。  特に感心させられたのが「パパに構って欲しがるダニエルと、そんな彼に見せ付けるようにパパに抱き付き甘えるエスター」という場面。  ここって、普通に考えれば「子供っぽい独占欲の発露」でしかないはずなのに、観ていて微かな違和感を覚えちゃうっていう、そのバランスが絶妙なんです。  ブレンダを突き落とす場面や、尼さんを殺害する場面で一気に衝撃を与える形ではなく、事前にそういった伏線を張っておき、猜疑心や恐怖心を徐々に高めていく形にしたのは、本当に上手かったと思います。   ケイトがアルコール依存症、マックスが聴覚障碍者であるという設定に、きちんと意味のある脚本だった点も良いですね。  特に前者は「ケイトが酒の誘惑に打ち勝った事を観客は知っているのに、酒を飲んだんだろうとジョンに責められてしまう」という展開への繋げ方が上手くて、本当にやるせない気持ちになるし、その分だけケイトを応援したい気持ちにもなる。  また、それによって「妻のケイトはエスターを疑っているのに、夫のジョンはエスターの言う事を信じている」という状況設定にも、説得力を与えていたと思います。   エスターが細かく肉を切り分けて食べる事すら伏線だった(歯がボロボロだから細かく切る必要がある)のには感心しちゃったし「薔薇のプレゼント」「万力で自らの腕を折る」場面なんかも、ショッキングで良かったですね。  白い雪原に、黒いコート姿のエスターが立っているコントラストの美しさには見惚れちゃったし「光を当てる事によって、絵の中に隠された別の一面が見えてくる」場面の衝撃も、忘れ難い。   自分は冒頭にて「オーメン」を「有名過ぎる先例」と評しましたが、この「エスター」もまた、今後「悪の子供」をテーマにした映画が製作される度に引き合いに出されるような……  そんな、スタンダードな品になっていく気がします。
[DVD(吹替)] 7点(2019-09-27 12:03:22)(良:3票)
8.  映画ドラえもん のび太の月面探査記 《ネタバレ》 
 自分には「アニメのドラえもんは原作漫画に敵わない」「原作大長編の存在する映画の方が、原作無しのオリジナル映画より面白い」という偏見があったのですが、前者を「恐竜2006」が、後者を本作が徹底的に打ち砕いてくれた気がしますね。   オリジナル映画としては間違いなく一、二を争う出来栄えですし、ドラ映画全体で考えても、これより上と言えるのは「恐竜2006」「新・鉄人兵団」「新・大魔境」「新・日本誕生」の四つくらいになるんじゃないでしょうか。  しかも「南極」「宝島」という傑作が二つ続いた後に、またまた凄いものを拝ませてもらった訳なのだから「映画ドラえもんは、オリジナルでも面白いものを作れるようになった」と潔く認め、脱帽する他無かったです。  本当にもう、作り手の皆さんに「参りました」「ありがとう」という言葉を送りたい気分。    小説版を読んだ際に一番の懸念となっていた「定説バッジの効果を、小さい子供でも分かるように描くのは大変じゃないか」って部分を、視覚的に分かり易く、面白く描いてクリアしている辺りなんか、特に見事でしたね。  「月世界旅行」に「キングコング」などの古典映画や「恐竜2006」「緑の巨人伝」のオマージュ描写が散見される辺りも、ニヤリとさせられるものがあって、良かったです。  他にも、教室に勢揃いしたクラスメイトの顔触れに、まさかのペロ登場など、ドラえもん好きなら嬉しくなっちゃう描写が多くて、本当に観ていて楽しい。  月世界にて、異説バッジが外れた途端に無音になる演出がゾクッとしたとか、出木杉くんとルカが話す場面が凄く特別感があって良いとか、細かい部分の「良かった探し」を始めたら、止まらなくなっちゃうくらいです。   それでも、これだけは書いておかずにはいられないという意味では、やはり気球での旅立ちの場面が挙げられます。  もう二度と帰ってこられないかも知れないという恐怖を乗り越え、友情が芽生えたエスパル達を救う為、約束の場所に皆が集まる流れだけでも感動しちゃうし、ここのジャイアンとスネ夫の描き方が、本当に素晴らしいんですよね。  スネ夫は来ないのかと諦めかけている他の面子に対し「頼む。もうちょっとだけ待ってくれ」と訴え、最後までスネ夫は来ると信じているジャイアン。  そんな信頼に応えるかのように、時間ギリギリでやって来て「前髪が決まらなくてさ」と照れ隠しを口にするスネ夫。  (あぁ、良いなぁ……こいつら、良い仲間だなぁ)って思えたし、それから(良い映画だな)って、しみじみ感じ入る事が出来ました。  月に向かって気球で旅立つという浪漫溢れる景色に、微かな寂寥感を伴ったBGMも最高で、本当に忘れ難い、特別な場面だったと思います。   じゃあ、そこが本作のクライマックスなのかというと、然に非ず。  ディアボロとの最終決戦や、ルカ達を「普通の人間」にして別れを交わす場面も、同じくらい素晴らしかったというんだから、本当に参っちゃいますね。  モゾは宇宙一硬い甲羅の持ち主、ノビットは「あべこべ」な道具を作る天才、という伏線を、ギャグシーンで笑わせつつ張っておいたのか、という驚き。  ムービットや怪獣達という「月からの援軍」で形成逆転する痛快さ。  空気砲ラストシューティングの迫力。  あえて涙は見せず「もう一度会える日が、きっと来る」と笑顔でルカと別れるのび太の、強さと優しさ。  そのどれもが心地良くて、観ていて幸せな気分に浸る事が出来ました。   一応難点というか、気になった点を挙げるなら「いつか、月へ行く事が当たり前になる、その日まで」という台詞でルカ達と別れるのは、なんていうか、勿体無い気持ちに襲われましたね。  これって、勿論良い台詞なんだけど、原作における「のび太の息子ノビスケは、新婚旅行で月に行く」って設定を知っていると「良い台詞」から「凄く良い台詞」に昇華されるんです。  つまり「のび太とルカは、再会するんだ」「何時かまた会えるという言葉は、嘘じゃなかったんだ」と分かって感動する形になっている訳で、凄く上手いんだけど、凄く勿体無い。  ここは、もうちょっと分かり易く描いて、原作を読んでいる人が受ける感動を、読んでいない人にも伝わるようにして欲しかったなぁ……って思わされました。   ちなみに、予告の映像からすると、来年は今井監督。  内容は「新・竜の騎士」か、あるいは恐竜を題材としたオリジナル映画となりそうで、これまたワクワクさせられましたね。  また一年、あれこれと想像力を働かせながら、楽しく過ごす事が出来そうです。
[映画館(邦画)] 9点(2019-03-01 13:31:14)(良:2票)
9.  エアポート'04 《ネタバレ》 
 所謂キッズ映画に分類されそうな一本。   主人公のリッキーには空想癖がある為、物語の随所で挟まれる奇想天外な空想シーンが良いアクセントになっている……と言いたいところなのですが、正直それに関しては「物語の進行を遅めている」「テンポを悪くしている」という印象しか抱けず、残念でしたね。  可愛い子役が沢山出ていますし、空想シーンでは彼らに色んなコスプレをさせて、観客を視覚的に楽しませるという意図があったのだと思われますが、自分としてはノリ切れませんでした。   完全に子供向けな作風ゆえか、作中に感情移入出来るような大人キャラがいなかった事も難点。  例えば、主人公のパパにしたって殆ど活躍しないし、あんまり良い人とも思えない描かれ方だったりするんですよね。  我が子に意地悪する教師に対し「いじめるなら、他の子にしろ」と囁き掛けるシーンなんて(いや、他の子に矛先を向けちゃダメでしょう)とツッコんじゃうし、そんなパパさんなものだから、ラストシーンにて彼が息子を認め、褒めてくれても、観客としてはあんまり嬉しくないという形。  キッズ映画といえど、大人が見てもある程度の満足感が得られるような、受け皿的なキャラは必要だったんじゃないかな、と思います。   とはいえ「子供が主役の映画」「子供の夢を叶えてくれる映画」としては、きちんと作られており、その点は好印象。  僅か十歳の子供が飛行機を操縦し、乗客の命を救ってヒーローになる展開なんて、実に気持ち良かったですね。  友達連中にも「内気な親友」「可愛い女の子」「意地悪だけど、実は良い奴」とオイシイ顔触れが揃っており、主人公が彼らと共に奮闘する姿を見守るだけでも、微笑ましく、楽しい気分に浸れました。   ちょっぴり退屈で、毒にも薬にもならない映画かも知れませんが、夢はあったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2018-03-21 06:24:04)
10.  映画ドラえもん のび太の宝島 《ネタバレ》 
 初代アニメ版ドラえもんを盛大にリスペクトした「奇跡の島」に続いて、二代目アニメ版、所謂「大山ドラ」をリスペクトした内容となっている本作。   とはいえ「野沢雅子が主役級のキャラとして復帰」というほどの衝撃は無く、リスペクト度合いとしては低めに感じられましたね。  一応、キャラデザには「大山ドラ」調のテイストも取り入れられており、特に主人公のび太とドラえもんの造形が前作までとは異なっている為 (せっかく2006年から原作通りのキャラデザになったのに……)  という抵抗も大きかったのですが、脚本や声優陣はキチンと「現行アニメ版」の空気を保持している為、安心して観賞する事が出来ました。   ちょっとメタ的な分析をすれば 「フロックは新世代ファンの象徴」 「ジョンは旧世代ファンの象徴」  であり、この映画はそんな両者の和解を描いている……なんて事も言えそうなのですが、そんな事よりも何よりも、純粋に娯楽映画として「面白い!」と言える作品であった事が、嬉しかったですね。  上述の通り、脚本や声優陣の力も大きかったのですが、何と言っても、これが映画デビュー作である今井監督の演出が素晴らしい!   特に、クライマックスの流れは、本当に手に汗握るものがありましたね。  ドラえもんが地球を守る為に奮闘し、スーパー手袋やタケコプターが壊れていく中でも、身一つで頑張り続け、とうとう意識を失う。  それを受けて、のび太が怯える我が身を勇気でもって抑え込み、危険を顧みず奈落の底に飛び込んでみせる。  どちらも非常に熱い演出であり、普段のテレビ放送回にて今井監督が見せている切れ味を、映画という舞台でも如何なく発揮してくれた事が、心底嬉しかったです。   単なる「可愛いマスコット枠」かと思われたミニドラが、のび太達を救ってみせる際の、絶望の中に光を差し込ませる演出も良いんですよね~  船で旅をする魅力、皆で外泊する魅力、美味しそうな食事シーンの魅力と「ドラえもん映画なら、ここは押さえておいて欲しい」と思える要素が、きちんと揃っている辺りも良い。  挿入歌「ここにいないあなたへ」の使い方も上手くて、その曲が流れる親子の和解場面では、涙で画面が滲んでしまった程です。   そんな具合に、褒めだすといくらでも褒められる映画なのですが……欠点というか、気になる部分も多かったですね。  まず、主題歌の「ドラえもん」に関しては、ドラえもんという作品そのものをテーマにした曲である為「映画宝島の主題歌」という感じがせず、ラストに流れても今一つピンと来なかった事。  名曲「夢をかなえてドラえもん」が流れなかった事。  「ここは俺達に任せて、先に行け」という場面が二つ存在し、最初のジャイアンとスネ夫の方は凄く熱くなれたのに、二回目になるマリアさん達の場面では(それ、さっき同じ展開やったばっかりじゃん)と思えてしまい、白けてしまった事。  そして、静香ちゃんとセーラが瓜二つである理由について、説明が為されていない事が挙げられるでしょうか。   最後の点に関しては、過去作の「奇跡の島」において「のび太とダッケが瓜二つである理由」を、タイムマシンを絡めて劇的に説明してみせた前例があるだけに、実にもどかしい。  恐らく「人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人」という劇中の台詞からすると、フロックもセーラもジョンも、のび太と静香ちゃんの子孫なんだよって事だとは思うんですが、そこはもっと断定的に表現して欲しかったです。  この描写だと、観賞中に(これって多分、のび太達の子孫って事だよな……いや、深読みし過ぎか?)とアレコレ考えてしまい、せっかく感動しているのに、気が散る形になっているんですよね。  ここでハッキリと「のび太とフロック達は血が繋がっている」と確信させてくれる描写さえあれば、思う存分映画に没頭して、より感動出来ていた気がします。   総評としては、前作の南極が「完成度の高い傑作」であったのとは対照的に「欠点も目立つけど、長所がそれを補って余りある傑作」であるように思えましたね。  ラストに金貨を手に取り、冒険の日々を思い出して笑顔になるのび太達という「本当の宝物は、金貨じゃなくて、そこに込められた思い出だった」と示す終わり方も、凄く良かったです。   ……そして、来年は八鍬監督による「異説クラブメンバーズバッジ」を題材にしたオリジナル映画であるらしく、こちらにも大いに期待!  予告映像からすると、再びキャラデザも原作準拠な形に戻るようですし、心から楽しみに待ちたいと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2018-03-03 12:33:13)(良:1票)
11.  エヴェレスト 神々の山嶺 《ネタバレ》 
 原作小説が大好きなので、期待を込めて観賞。   絶対に二時間で纏めるのは無理だろうと思っていただけに、ちゃんと物語を完結させている事に感心半分(やっぱりダイジェスト感は否めないなぁ……)と落胆半分、といった感じでしたね。   結構な尺が必要となるであろう「マロリーのカメラ争奪戦」の件を思い切って省略したのは正解だと思うし「鬼スラへの挑戦」「岸との別離」「グランドジョラスからの生還」と、羽生丈二というキャラクターを語る上では外せない場面を映像化してくれた事は、素直に嬉しかったです。  それでも、どうしても「あれも見たかった」「これも見たかった」というモヤモヤが残ってしまうのだから、全く以て困り物。  折角モノローグを多用して小説の文章そのまま再現する演出をやっているのだから「きしよう」や「地球を踏んだ」などの言葉も、心の声として聞かせて欲しかったなと、ついつい思ってしまいました。   主演の岡田准一と阿部寛は熱演されており、特に後者の存在感はお見事でしたね。  凍死した羽生の「死体」をここまで迫力込めて演じられる人は、ちょっと他にはいないかもと感じるくらい。  ライバルである長谷の扱いが軽い事も含め、どうしても原作に比べると羽生に関する描写は薄くなってしまっていたのですが、それでも「これは間違いなく羽生丈二だ」と思えたのは、役者さんの力が大きかった気がします。   中でも、遭難しかけた深町を羽生が助けるシーンは凄く良くて、ここが本作の白眉であるように感じました。  ちょっと原作に比べるとエキセントリック過ぎるというか「羽生の魂を継ぐ者」として、野性味溢れて描写されていた深町であっただけに「もういい、もうやめてくれ……」と弱々しく呟き、自分を見捨てるよう訴えかける姿が、一際胸に迫るものがあったのですよね。  その後に「最初から羽生は最も困難なルートを登るつもりだった」と明かされる展開についても、良かったと思います。  正直、原作と異なる部分に関しては不満も多かったりしたのですが、ここの流れは原作よりも好み。   最後も深町の生還というハッピーエンドで〆てくれる為、後味も悪くなかったですね。  久々に本棚から「神々の山嶺」を取り出して、蜂蜜を溶かした紅茶片手に、ゆっくりと読み耽りたくなりました。
[DVD(邦画)] 5点(2017-04-11 18:14:38)(良:1票)
12.  エグジット・スピード 《ネタバレ》 
 とにかく序盤の展開が早い早い。  登場人物の説明を手早く済ませ、バイカー集団との対決に至るまでをスピーディーに描き、痛快に突っ走ってくれます。  これは隠れた傑作ではないかとの期待が一気に膨らんで……その後、同じくらいの速度で萎んでしまった気がしますね。   如何せん、籠城戦に移行してからの展開が、非常にかったるいのです。  元々演出が冴えているとか、画作りにセンスがあるとか、そういう訳ではなく、ひたすら早く物語を展開させて、観客に余計な事を考えさせる暇を与えないからこそ、序盤は退屈せずに観賞出来たと思うのですよね。  その唯一にして最大の利点である「速度」が失われた後は、どうにもパッとしない。  終盤、じゃがいもバズーカが登場する辺りからは持ち直した感がありましたが、それでも中弛みの印象は拭い切れなかったように思えます。   敵となるバイカー集団が「悪魔の追跡」を連想させたり、じゃがいもバズーカ大活躍の件は「トレマーズ3」を連想させたりと、この監督さんとは映画の好みが合いそうだなぁ……と感じる場面もあっただけに、全面的に楽しめなかったのが残念でしたね。  言葉が通じないスペイン人のオジサンに、アーチェリーが得意なオタク気質の女性など、主人公以外にも個性的な面子が揃っているし、そんな中では地味な印象だった「子供想いのママさん」が、何としても生き延びて我が子と再会する為、止むを得ず人殺しを行う場面なども、良かったと思います。  最後は、お約束のハッピーエンドで〆てくれる辺りも、安心感がありましたね。   人物設定やストーリーなどは好みなのですが、個々の場面が今一つ洗練されておらず、退屈さを覚える時間も長かった為、胸を張って傑作とは言えない事がもどかしくなる……そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 5点(2017-03-20 05:57:39)
13.  映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 《ネタバレ》 
 昨年の「新・日本誕生」が歴代ドラ映画でも三本の指に入るほどの名作であった為、大いに期待を込めて観賞。   結論から言うと、流石に前作を越えるほどの衝撃は味わえませんでしたが、まず満足出来る一品でしたね。  所謂「F原作大長編」の存在しないアニメオリジナルの作品としては「ひみつ道具博物館」に次ぐ出来栄えではないかな、と思います。   何といっても、脚本が良い。  これほど見事に「タイムトラベル」ならではの妙味を劇中の核に取り入れた作品は、ちょっと過去作品には無かったのではないでしょうか。  思えば十数年前、子供時代の自分は某ドラ映画を観賞し「何じゃそりゃ!」と盛大にツッコんで、時間軸が矛盾している脚本に呆れ返り「やっぱりアニメのドラえもんは原作漫画には敵わない」という偏見を抱くに至った経緯があったりしたのです。  それを、現代のドラえもん映画が汚名返上してくれた形なのだから、実に愉快痛快。  偏見を取り払い「アニメでも原作漫画より面白くする事は出来る」と教えてくれたのは「恐竜2006」でしたが、そこから更に十年以上の月日を経て「アニメオリジナルでも、複雑な時間軸を扱った面白い映画が作れる」と証明してくれたのは、本当に嬉しかったです。   伊藤つばさと星野スミレが背景で顔見せしたり、かき氷のシロップに「からあげ味」「かつどん味」があったり、ヒャッコイ博士が「ジャングル黒べえ」そっくりの仮面を被ったりと、遊び心に満ちているので、そういった小ネタを見つける喜びがある辺りも良いですね。  「氷細工ごて」を使って氷を溶かしながら移動するシーンは視覚的にも楽しいし、テントが強風で飛ばされてしまい、止むを得ずその場に穴を掘ってビバークするなどの「冒険」「探検」ならではのワクワクする展開がある辺りも嬉しい。  「南極でオーロラに見惚れながらカップ麺を啜ろうとしたら、すっかり凍ってしまっている」という場面が「翻訳コンニャクを食べようとしたら凍っている」という場面に繋がっている辺りも面白かったです。   また、全体的に演出がスピーディーであり、名曲「夢をかなえてドラえもん」によるオープニングの中で「氷の遊園地作り」「ジャイアン、スネ夫、静香を仲間に誘う件」を片付けてしまう辺りなんかは、大いに感心。  「南極での探検」「遺跡内での冒険」の中でもダイジェスト調にして手早く片付ける場面があり、自分としては好印象でしたが、ここは「ダイジェストになる場面が二回もあるのは、流石に如何なものか」と感じる人もいそうですね。   その他、あえて不満点を述べるとすれば「ゲストキャラであるカーラとの別れが、ややアッサリめ」だった事が該当するでしょうか。  エンディングの一枚絵にて「のび太との思い出のカキ氷機を大事にしている」と示されている為、それなりに余韻はあると思うのですが、ちょっと物足りなかったです。  前作において「ククルとの別れ」「ペガ達との別れ」と連続して描いたばかりという事もあり、今作においても別れのシーンを濃密に描いては流石に食傷気味になる……という判断だったのかも知れませんが、せめて一分くらいは尺を取って欲しかったなぁ、と。   クライマックスであるブリザーガとの戦いは「人間VS怪獣」という趣きがあり、実に自分好みで嬉しかったですね。  夢幻三剣士のシズカールに先駆けてドラえもんが「取り寄せバックで大量の水を取り寄せる」という作戦を披露しているのもニヤリとしたし「非力な人間達が知恵を働かせて、強大な怪獣を見事打ち倒す」という、心地良いカタルシスを味わう事が出来ました。  ラストにて「十万光年先のヒョーガヒョーガ星」を天体望遠鏡で観察し、十万年前に星が救われていた事を確認する演出なんかも(オシャレだなぁ)と、しみじみ感じ入りましたね。  二つの星と、十万年という時間、それらの壮大なスケールの話が、野比家にある望遠鏡のレンズの中で収束し、完結するという形。  子供の頃、原作漫画からしか感じ取る事が出来なかった「すこし」「不思議」な感覚をスクリーン越しに感じ取る事が出来た、素敵な映画でありました。    ……そして、来年はどうも「南海の大冒険」を再映画化するらしく(旧アニメ版の「南海大冒険」とは別物になるの?)なんて事も気になっていたりする訳ですが、それよりも何よりも監督候補が今井一暁さんなので、自分としては大いに期待しちゃいますね。  同氏が担当されている「最強! ころばし屋Z」や「巌流島ちょっと前の戦い」は文句無しの名作である為、映画ではどんな手腕を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ありません。  今後も観客に夢を与えてくれるような、素敵な映画を作り続けて欲しいものです。
[映画館(邦画)] 8点(2017-03-04 13:07:28)
14.  エラゴン/遺志を継ぐ者 《ネタバレ》 
 冒頭「ドラゴンに乗った人間」の目線で戦いが描かれる演出に興奮。  飛行速度なども程好くスピーディーだし、戦闘場面には「自分もドラゴンに乗って戦ってみたい」と思わせるような魅力がありました。   ……とはいえ、根本的に「これ一本では完結していない」と思えるストーリーであり、満足度が高かったとは言い難いです。  従兄弟のローランの旅立ちなどは中々情感を込めて描かれていたのに、彼はそれ以降全く出て来ないし、最後もラスボスというよりは中ボスを倒して一段落、という感じ。  わざわざ主人公に「期待外れだ、弱いな」なんて言わせているくらいなので、恐らく作り手としても意図的に「今回倒した相手は、単なる手下の一人に過ぎない」という演出にしたのでしょうね。  それは次なる相手の強大さを予見させる一方で「本作単体ではカタルシスを得られ難い」という結果にも繋がってしまった気がします。   とかく展開が早くて、サフィラの成長速度も凄過ぎて、主人公との間に絆を感じられない辺りも、困り物。  空を飛んだと思ったら、いきなり大きくなって、いきなり喋れるようになっちゃいますからね。  飛べるようになる為の訓練を行うとか、早く大きくなれるように餌を食べさせるとか、言葉を教えるとか、そういうイベントにも尺を取った方が良かったのではないかと、つい思っちゃいます。  サフィラ自体は「えっ、メスだったの?」という意外性、熱くなりがちな主人公とは対照的に落ち着いた性格に、青い宝石のようなデザインと、魅力的なキャラクターであっただけに、実に勿体無い。   馬で先行しているお姫様に、ドラゴンに乗って簡単に追いつくシーンなど「ドラゴンに乗れる事の素晴らしさ」は、ちゃんと伝わってくる作品なだけに、もどかしい思いがありますね。  粗削りながらも、夢のある映画だと思うので、出来ればもう少し丁寧に作って、続編も拝ませてもらいたかったところです。
[DVD(吹替)] 5点(2017-01-30 06:57:58)(良:1票)
15.  炎上 《ネタバレ》 
 小説では味わえない映画の魅力の一つとして「音」があります。   本作においても、作中の関西弁が早口であり、それによって主人公の吃音の「周りと歩調が合わない、取り残された感じ」が際立っていたのが印象深いですね。  序盤にて主人公が金閣寺(=驟閣寺)に見惚れているシーンで、唐突に音楽が流れだす演出などは「ちょっと分かり易過ぎるかな」とも思いましたが、総じて音楽は秀逸であり、それでいて多用する事は無く、静かな場面の方が多かった事も好印象。   また、何と言ってもラストにおける、燃える寺の囂々とした焼け音が素晴らしかったですね。  モノクロ映像ゆえか、それまでは驟閣寺の美しさを感じ取る事が出来なかった中で、炎上するその姿からは、圧倒するような美を感じられました。    原作小説には愛着がある為、柏木(=戸刈)よりも重要な人物であろう鶴川の出番が殆ど無い点。  そして、主人公が列車から身投げするという結末も、原作の「生きようと私は思った」という前向きな姿勢とは全く正反対である点などは、正直抵抗もあったりするのですが、そういった先入観を排し、一本の映画として観賞すれば、充分に楽しめる代物だと思います。   主演の市川雷蔵は、相変わらず惚れ惚れするような演技巧者っぷりだし、彼の悪友を演じる事となる仲代達矢の存在感も素晴らしい。 「あんた、その片端の脚が自慢なんやろ?」 「片端やなかったら、誰一人振り向いてくれる人あらへんもんな」  なんて痛烈な台詞を吐く新珠三千代の姿も、忘れ難いものがありました。   原作において、何よりも美しいと感じられたのが、あれほどのドン底に落ち込みながらも、なお生きようとした主人公の最後の姿だった事に対し、本作においては「驟閣寺と心中しようというかのように、刑事を振り払って身投げする主人公」の姿が、非常に醜く描かれているように思える辺りも、何だか興味深い。  様々な意味で原作小説とは異なる、意図的に対とした結末であるように感じられました。
[DVD(邦画)] 7点(2016-10-29 19:33:55)
16.  永遠の0 《ネタバレ》 
 「上手い」と感じる部分と「ズルい」と感じる部分とが混在しており、評価が難しい一品ですね。   まず、本作はフィクションであるはずです。  にも拘らず、さながら事実をそのまま映像化したような印象を与えてしまう。  これは創作物として非常に優れた点であると同時に「現実と虚構の区別をつかなくさせる」作用も大きく、純粋に「映画」として楽しむ事を妨げているようにも思えました。   実質的な主人公である宮部久蔵というキャラクターは、非常に魅力的ですね。  軍人でありながら命を惜しみ、誰にでも敬語で礼儀正しく接して、端正な顔立ちの二枚目。  大人しくて卑屈な性格かと思いきや、仲間の尊厳が踏み躙られた時には上官に反抗だってしてみせるという、正にフィクションだからこそ許される存在。  この映画のタイトルに「実録」なんて付いていようものなら(これ、絶対美化しているよね?)と疑ってしまうのは避けられなかったはずです。  積極的に戦争に参加していないくせに、実は凄腕のパイロットであるという矛盾した一面も良い。  同僚と「模擬空戦」を行い、瞬時に相手の背後を取って、鋭い眼光で睨み付けている時の姿なんて、とても格好良かったです。   上述の「ズルい」部分に該当する話でもあるのですが、この映画って「戦争は良くない」という基本スタンスでありながら、空戦シーンは非常に面白く撮っていたりするのですよね。  主人公が零戦を宙返りさせる姿にも、思わず見惚れてしまうような魅力があり、そういった意味においては「軍人に憧れる子供」を生み出してしまう可能性はあるかも。   その一方で「上手い」と感じたのは、作中において大きな謎である「何故、命を惜しんでいたはずの宮部が特攻したのか」に対して、明確な答えを出さなかったという事。  作中の情報から推測する限りでは、教え子達が次々に特攻して死んでいくのに、自分だけが生き延びるという罪悪感に耐えられなかったからだと思えます。  ただ、自分としては、この「理由を知りたいのに決して知る事が出来ない」という現象が「何故なら、その人は死んでしまったから、訊きたくても教えてもらえないのだ」という答えに繋がっているようにも感じられたのですよね。  恐らくは戦争行為における最大の喪失であろう「人の死」が「決して明かされる事のない謎」を生み出してしまったという、何とも悲しい結末。  だからこそ、特攻していく宮部の姿を最後までは描かず、不思議な笑みを浮かべさせたまま、戦死の直前で終わらせたのだと思われます。  一度死んで0になってしまったものは、永遠に0のまま、1には戻らない訳です。   面白いというか、少々意地悪なユーモアを感じられたのは、現代パートにおいて宮部の孫が「特攻と自爆テロの違い」について語る場面。  ここは作中の流れを踏まえて考えれば「特攻は無差別に民間人を狙ったりしない。空母だけを狙うのだから、自爆テロとは違う」という結論で終わらせても良かったはずなのです。  けれど、本作においては議論の相手から「昔の日本軍を美化して考えるのは、今現在の自分に不満があるがゆえの逃避行動だ」という指摘が行われており、結局それに対して宮部の孫は反論出来ず、大声で怒ってから逃げ帰るというストーリーにしている。  この「特攻を美化して話す人間の格好悪さ」を、意図的に描いているような辺りは、良いバランスだなと思えました。   山崎貴監督は、基本的には好きな監督さんですし、本作においても家族愛を軸に据えて、万人が感動出来るような形に仕上げてみせたのは、実に見事だと思います。  ただ、どうも演出過剰な面もあり、ラストに零戦の幻影を見るシーンなんかは、それが悪い方向に作用してしまった気もしますね。  あそこは、もう少し静かに余韻を残して、平和になった現代の姿を映し出すだけでも良かったかも。   その一方で、過剰だからこそ良いと思えたのは、宮部の戦友である景浦が感情を発露させる場面。 「特攻がどんなものか、見ていますよね?」 「殆ど敵艦に辿り着けていないって!」 「殆ど無駄死にだって!」  と訴える姿には、大いに心を揺さ振られるものがありました。  もし、この映画に何らかのメッセージが込められているとしたら、それはこの叫びに尽きるのではないかな、と思う次第です。
[DVD(邦画)] 7点(2016-08-11 19:58:46)(良:1票)
17.  江ノ島プリズム 《ネタバレ》 
 「デロリアンは何処だ?」「(ドラえもん風に)タイムウォッチ~」などの台詞には、クスッとさせられました。   前半部分はコメディタッチで、明るいハッピーエンドを予想させる流れだったにも拘らず、後半からシリアス濃度が高くなり、自己犠牲を伴った切ないハッピーエンドに辿り着く……という流れだったのも、良かったですね。  作風が途中で百八十度変わる訳でもなく、ちゃんと冒頭から人死にを扱ったりしていて(この映画は完全にコメディという訳ではありませんよ)と伏線を張っておいた形だったので、作品の空気が徐々に変わっていく様も、自然と受け入れられた感じ。   個人的には、主人公の性格がワガママ過ぎるというか「相手が嫌がっていても、自分が決めた事はやり通す」ってタイプだったのが、ちょっと抵抗あったんですけど……  それよりも気になったのは、携帯電話の扱い。  途中(何で携帯を使わないの?)と思わされる場面が多くて、映画のストーリーに没頭出来なかったのですよね。  もしかして、この世界には携帯電話は存在しないのか……とも思ったのですが、そういう訳でもなさそう。  ならば、時代設定を1980年辺りにするか、あるいは劇中にて「誰かがタイムトラベルを行った副作用で、携帯電話が発明されない世界になっている」という設定を付け足した方が、自然に受け入れられた気がします。  後者の場合は、タイムパラドックスについて説明する際に「時間改変によって、元の世界に存在していた何かが失われてしまう可能性もある」「この世界も、既に変わってしまい、何かが失われた後なのかも知れない」「たとえば、手のひらサイズで持ち運べる電話とか」などと言わせるだけでも、かなり印象が違っていたんじゃないでしょうか。   あと、中盤辺りから完全にヒロインと化す「タイムプリズナー」の今日子ちゃんは可愛かったのですが、ちょっと扱いが大き過ぎたようにも思え、本筋から外れてしまった感があり、残念。  思い切って彼女が主役級の映画にするか、もっと主人公との絡みを減らして、脇役に留めておいた方が良かった気がしますね。  ラストにて、他の人物が主人公を忘れてしまったとしても、今日子ちゃんだけは憶えているというのは救われるものがあり、嬉しかったのですが……  本当に「ただ憶えているだけ」であり、その後に主人公と再会するのかどうか不明というのも、流石に中途半端なんじゃないかと。   主人公が最後に振り返り、もはや他人となった幼馴染の二人を見つめる演出なども、味わい深くて魅力的だとは思うのですが(本当にそれで良かったのか?)という疑問も残ってしまい、どうもスッキリしないんですよね。  元々親友の命を救うのが目的だったとはいえ、相手にとっては命よりも大切かも知れない思い出を、主人公の独断で失わせているってのが、納得出来なかったです。   ……とはいえ、そんな疑問、ちょっとした後悔まで味わえるという辺りが、結果的に、本作の青春映画としての完成度を高めていた気もしますね。  納得いかない事もあるし、正しい選択じゃなかったかも知れない。  それでも、学校での花火や、皆で記念写真を撮った瞬間など、楽しい事も確かにあった……と、しみじみ後から思い出せる形になっている点に関しては、好みの映画でありました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-06 19:51:47)
18.  映画 ビリギャル 《ネタバレ》 
 あらすじを知って(やれば出来る、の見本のような話だな……)と思っていただけに、劇中にて塾の講師が「やれば出来る、という言葉は良くない」と言い出した時には、驚かされました。  その後に「やっても出来なかった時に、挫折感を味わってしまうから」と説明してもらう形となっており「なるほど」と大いに得心。    実話が元ネタで無ければ「有り得ない」「大学受験を馬鹿にしている」と批判も受けてしまいそうな非現実的ストーリーゆえか、登場人物もステレオタイプな描き方。  塾の講師と、学校の先生の描き分けなんて、正に善と悪。  理想の教師と最低の教師という対比となっており(ここまでやっても良いの?)と最初こそ戸惑いましたが、結果的には思いっ切り極端化させた事が、成功に繋がっていたように思えますね。  主人公同様に、観客も余計な懸念は捨て去って、講師を全面的に信頼し、純粋に受験を応援する気持ちになれたかと。  また、上述の「最低の教師」を後半あまり登場させず「嫌な奴を見返してみせた」という陰湿な復讐の快感をズルズル引っ張らなかった事によって、終盤の爽やかな成長物語に繋げた辺りも、お見事でした。   母親が苦労して塾の費用を工面した件では(これは何としても頑張ってあげないと!)と思わされたし、父親の「野球馬鹿親父」っぷりなんかも、説得力があって良かったです。  私的な事ではあるのですが、身近にあの親父さんに良く似たタイプの人がいるもので、確信を持って「こういう人、いるよ」と言えたりするのですよね。  その父親も完璧な悪役にする事は無く、ちゃんと良い部分(困った人は見捨てられずに人助けする場面)も見せる辺りなんかは、不器用なやり方でしたが、何だか凄く嬉しかったです。   この作品に関しては、全体的に「実話ネタである」事が上手く作用していたみたいで、恋愛要素が極めて薄い辺りなんかも好印象でしたね。  これが完全な創作であれば、先生なり同じ塾の生徒なりと恋に落ちていたかも知れませんが、そういった要素は取っ払い、受験のみに専念してくれたので、安心して楽しむ事が出来ました。    野球映画を観た後に、キャッチボールをやりたくなる。  音楽映画を観た後に、歌い出したくなる。  それと同じように「ビリギャル」を観た後は、勉強してみたくなったのだから、間違いなく良い映画なのだと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-04 10:09:11)
19.  エベレスト 3D 《ネタバレ》 
 「実話もの」であるのだから、最後は何だかんだで主人公は助かるのだろうな……と考えながら観賞していたもので、まさかの展開には本当に驚かされました。  全滅では無かった事が「救い」を感じさせてくれますが、やはりコレはハッピーエンドとは言い難いでしょうね。  雪原に倒れ込んだままの死体の描写や、凍傷の表現なども衝撃的で、中々頭から離れない。  観賞後は、非常に重苦しい気分を味わう事となりました。   中盤にて登頂に成功したシーンで盛り上げて、その後に遭難してしまうという展開の緩急などは、映画としての巧みさもを感じさせてくれます。  その一方で「実話だから仕方ない」とばかりに、ベックのキャンプ地への生還に明確な理由付けが窺えない辺りは、気になってしまいましたね。   実話を題材にしていたとしても、映画として観る以上「何故、彼は助かったのか?」という根拠を求めてしまう訳で、それが明かされないまま結末を迎えた事は、どうにも消化不良に思えてなりませんでした。  物語ではなく、再現映像による一種のドキュメンタリーとして観賞するのが正しい品なのかも知れません。
[DVD(吹替)] 6点(2016-06-05 01:11:31)
20.  エターナル 奇蹟の出会い 《ネタバレ》 
 ヒロインとの出会いから婚約までを描いた冒頭部分も、良質なラブコメ映画として、充分に楽しめる出来栄えですね。  けれど、この作品の真骨頂は、主人公が少年サッカーチームの監督に指名されてからの展開にこそあると思います。   「これって、もしかして……」という予感に応えてくれるかのように、チームの選手となった子供達が、超人的な身体能力で、大活躍!  そんなの全然リアルじゃないというツッコミを、完全にファンタジーな動きで吹き飛ばしてくれる様は、実に痛快です。   一刻も早く敗退してくれるように、という主人公の内なる願いに反して、チームが快進撃を続けていくのが、もう可笑しくって仕方ないんですよね。  あの手この手で監督自らチームを妨害して、子供達に薬を飲ませたり、デタラメな采配をしたり、気弱で活躍など出来そうもない子をキーパーに抜擢してみせたりするも、それが結果的に勝利に繋がってしまう不条理、もう最高です。   そして、この映画の秀逸なところは、そんな皮肉なコメディ映画というだけで終わらずに、もう一歩踏み込んだ内容を見せてくれた事にあると思います。  中盤以降、主人公の監督と、選手となる子供達の間に、家族のような絆が芽生えていく。  それを軽いタッチで、けれども大事な部分は押さえた上で描いてくれるのだから、観客の自分としても、気が付けばチームの敗北よりも勝利を願うようになるんです。  そんな願いを叶えてくれるかのように、とうとう主人公が自らの結婚よりも「この子達を勝たせたい」という想いを優先させてくれるシーンには、もう拍手喝采。  本気でチームの優勝を願って、応援させられる事になりました。   登場人物も魅力的で、主人公とヒロインだけでなく、恋敵役となる女教師と、新婦の幼馴染の男性なども良い味を出しているのですが、やはり何と言っても子供達のキャラクターが素晴らしい。  特にお気に入りなのは、キーパー役の二人。  小柄で気の強いテイルボーンは、途中でスタメンの座を剥奪されるも、さながらマネージャーのような立ち位置に収まって、ゴールの度に監督に抱き付いたりハイタッチしたりして喜びを表してくれるのが可愛いし、気弱な秘密兵器ダリクが魅せるスーパーセーブの数々は、観ているこちらの心をも鷲掴みにしてくれます。   ストリートチルドレンである選手達の塒も、妙に童心を刺激するというか、ちょっと住んでみたいなと思わせるような魅力ある造形だったりして、とにかくもう何もかもが好みな映画なんですよね。  決勝戦の前夜、主人公が子供達みんなと寄り添うように寝そべって、一緒に空を見上げるワンカットなんて、溜息が零れちゃうくらいに素敵。   面白いとか、笑ったとか、泣いたとか、そういった感情よりも何よりも「この映画、好きだな」という想いを強く抱かせてくれる。  そんな、特別な映画です。
[DVD(吹替)] 10点(2016-05-02 17:54:05)
030.49%
110.16%
230.49%
3172.76%
4436.98%
512420.13%
620633.44%
712319.97%
86510.55%
9213.41%
10101.62%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS