1. おくりびと
《ネタバレ》 ひと言で言って多くの映画賞を受賞したということに充分納得できるものでした。 「納棺師」という人々に馴染みのないテーマを、誠実に、地味に埋もれることなく、かつ観客に媚びることなく、エンタテイメントとしてのツボはしっかり押さえた脚本、抑制された演出が光ります。 キャスティングも本木雅弘、広末涼子は言わずと知れたスターですが、脇を固める山崎努、余貴美子など実力派が大変良い味を出しています。 特に銭湯のおかみ吉行和子、常連客の笹野高史が本当に素晴らしい。 本作は脇役の存在感が非常に活かされた作品だったと思います。 それから、音楽は宮崎駿作品でお馴染みの久石譲。僕は彼の音楽は宮崎作品以外ではあまりに叙情的というか大袈裟に感じて好きになれなかったのですが、本作ではチェロの旋律がピッタリとはまっています。 大部分の人は、普段死、自分の人生の終わりを意識してなど生活しないでしょう。 しかし生きとし生けるもの、必ず平等に訪れるのが死というもの。 人生の終わりは人それぞれ。多くの人に看取られる最期が有れば、腐乱するまで誰にも見つからない寂しい最期もある。 遠くない将来に訪れる両親との別れ、そしていつかくる自分のこの世との別れ。色々と考えさせられる作品でした。 [映画館(邦画)] 9点(2010-12-09 13:02:24) |
2. ALWAYS 続・三丁目の夕日
《ネタバレ》 各所批評サイトでの微妙な評価に観ようか観まいか迷っていたのですが、今日行ってきました。 単なる昭和30年代博覧会になっていたら、お安い人情物語になっていたら、なれ合いコントのつなぎ合わせになっていたら・・・様々な危惧を抱いていたのですが、全ては杞憂でした。 各登場人物のエピソードが前作を引き継ぎ、丁寧な脚本と構成で無理なく物語を紡いでるではないですか。 急遽続編の製作が決まり、時間もなかったはずなのに、種の巻き方、複線の張り方、その引き取り方、ラストへ向かう盛り上げも見事です。 確かに、ストーリーテリングはある種王道であり、既視感あるエピソードの積み重ね。安心感はあるけれど、奇をてらった斬新さは無いかも知れません。 しかしこの映画には他にはないパワーを感じます。邦画の水準を突き抜けたVFX、画面の隅々に神経の行き渡った美術、小道具大道具の配置、照明、音響、演じる俳優の輝き、それを纏め上げる演出の見事な采配からそれを感じるのです。 何よりも人間に対する限りない信頼と愛情が全編に溢れています。 そうするともう、重箱の隅突きはプロの批評家に任せておけばいい、この世界にどっぷりと浸り、彼らの生き様や気持ちの移ろいに一緒に笑い、涙したいと思ってしまうのです。 晴れて結ばれたあの3人は、鈴木オートの家族は、エンドロールが終わっても、確かに生き続けていると感じます。もしかしたら2007年の今も、同じ日本の空の下で成長した六子や淳之介がどこかで暮らしているかも知れない、そうであるなら幸せであって欲しいと願わずにはいられない、劇場からの帰り道、そんな気持ちにさせてくれる映画です。 本作はどの俳優陣も入魂の演技でしたが、特に小日向文世の存在感は素晴らしい。おそらく本作に最も貢献したキャラクターは、冷徹な会社社長川渕康成と、彼を演じた小日向文世であると思います。彼の存在が本作を単なるお涙人情物語に終わらせないスパイスになった。そのさじ加減も絶妙でした。 文句なしの10点を献上致します。 [映画館(邦画)] 10点(2007-11-29 00:55:49)(良:3票) |
3. 俺は、君のためにこそ死ににいく
《ネタバレ》 石原慎太郎脚本、製作総指揮ということからなのか特攻賛美、戦争賛美という批判も聞かれるが、僕はそういう感想は持たなかった。むしろオールドスタイルな反戦映画の域を出ていないと感じた。あの石原慎太郎が関わっているのに、そう言う面では意外な、硫黄島二部作とは対極の情緒たっぷりな日本映画だった。 おそらく誰も石原に意見を言えなかったのだろうと想像するが、題材への思い入れはわかるが、それに溺れてしまっていて物語が整理されていない。あれもこれもと詰め込んだ結果、ひとりひとりの若者の生き様やトメとの交流が散漫になってしまっている。 もちろん多くの人物を群像劇としてたたみ掛けて描くという手法もあるが、本作はとてもそう言えるほど構成も練られていないし、エピソード間のつなぎ方、演出も雑。若年層を呼び込みたかったのか、誰が聴いたってミスマッチなB'zのテーマ曲を当ててくるところにもセンスの無さを感じて痛々しい。 元来日本人というのは大人しくてシャイで控えめだと思うのだが、役者の演技も舞台劇のように大仰で、ハイテンション。役者が段取りでしか動いていないという演出の詰めの甘い場面も多い。 戦闘シーンのVFXは硫黄島二部作にははるかに及ばないが、「男たちの大和」に比べれば格段の進歩が見られるし、時代考証も邦画だけにしっかりしている(と思う)。 返す返すも脚本、演出の稚拙さが目立つ残念な作品だった。 [映画館(邦画)] 5点(2007-11-09 19:56:02) |
4. オリバー・ツイスト(2005)
原作は知らないのですが、大いに楽しめました。古典であるためなのかどうか、人物設定がやや類型的な感はありますが、テンポも良く、ぐいぐいと物語に引き込まれました。それからこの映画、美術が大変素晴らしいです。19世紀の薄汚れたロンドンの貧民街が、下水や人々の体臭まで臭って来そうな位リアルに表現されています。「ALWAYS三丁目の夕日」もそうですが、僕は美術セットに現実感があると、それだけでスクリーンの向こう側に引き込まれてしまいます。 [DVD(吹替)] 8点(2006-07-10 16:27:31) |
5. 奥さまは魔女(2005)
あちゃー。これはどうしちゃったことでしょう。絶対決まると思っていたニコール・キッドマン、どうも冴えないですよ。何か表情が乏しい。コメディなんだからもっと生き生きとした表情が見れると思ったんだがなあ。それに加えてウィル・フェレルは劇中の「奥様は魔女」だけでなくてもミスキャストじゃないですかね。ちょっと間抜けすぎて感情移入できないです。何よりもこんなに絶好の題材なのに脚本がダラダラして盛り上がりに欠けるし演出のテンポも悪い。最後まで観るのが辛い映画でした。 [DVD(吹替)] 4点(2006-01-07 19:35:53) |
6. 男たちの大和 YAMATO
原作未読。予告編を観て、ちょっと過剰かなと思われた中村獅童はじめ役者の演技は素晴らしく、この映画のパワーを感じさせるものでした。それだけに残念なのが、ひとつひとつのエピソードがブツ切れで、総集編を見ているような感覚に陥ったこと。これだけ多くの登場人物の人間模様を描くのなら、2時間半では足りないでしょう。おそらく「バンド・オブ・ブラザース」や「U・ボート」のTV放映版のように時間がたっぷりあればもっと時代背景から太平洋戦争における大和の位置、そして彼らの生き様を見せられたと思います。結局上映時間に詰め込むためにナレーションや図解を多用して説明を加えなければならなくなり、熱い人間ドラマとのバランスがちぐはぐになってしまったように感じます。DVD化にあたって、ディレクターズカット版をつくてもらってそのあたりを補って欲しいですね。 あまり瑣末なディティールにけちをつけたくは無いのですが、製作費20億円という邦画では破格の製作予算、しかしそれでも予算が足りなかったのか、最大の見せ場、大和と、最期の戦闘シーンはもうひとつでした。大和を捉える画はいつも左舷からばかり。海面を切り裂いて進んでいく大和の重量感や巨大さが伝わって来ませんでした。また、飛行機の機動があまりにもちゃちですよね。雷撃機がどのような動きで大和に攻撃を仕掛けたのか、資料なら沢山残っている筈。それなのに昔懐かしいUコンの如くくるりくるりと玩具のように旋回するだけ。30年前の糸釣り特撮レベルから全く進歩が無い。なんとか編集で誤魔化しているようでしたが、今の観客はハリウッド映画の最新VFXで目が肥えている。もうすこし頑張って欲しかったです。 [映画館(字幕)] 7点(2005-12-27 00:33:52)(良:2票) |
7. ALWAYS 三丁目の夕日
《ネタバレ》 レビューに当たって細かいケチをつけてしまうのがバカらしくなってくるほどほのぼのとしたいい映画です。登場人物はそれぞれ魅力的で愛らしく、極悪人が一人も出てこない。淳之介の実の父親はまあ、ちょっと憎まれ役ですが。昭和33年の世界を再現したビジュアルエフェクト、美術の努力には敬服するほかありません。現在出来るベストの映像ではないでしょうか。子供からお年寄りまで安心して薦められる映画ですね。 とはいえ、褒めてばかりではつまらないので、あえて気付いたことをあげるとすれば、この物語が昭和33年でしか成立しないのかといわれれば、そんなことも無いような気がします。六ちゃんの集団就職や三種の神器をとりまくドタバタはもちろんこの時代ならではなのですが、しかしそれもディティールであると思います。日本とは!戦後とは!なんて大上段に構える映画ではありませんが、もう少しこの時代だからという必然性が欲しかった気がします。そうすればもっと立ち上がっていく東京タワーも印象に残ったのではないでしょうか。 最後に「ALWAYS」という英語、要らなかったと思いますね。なんでALWAYSなのかもピンと来ないし、「三丁目の夕日」だけでいいと思いました。 そうそう、映画館での周りの反応ですが、年齢層は見たところ40代後半以上の方が多かったですね。きっとこの時代をリアルタイムで体験した人も多いと思います。そして皆さん大笑いしたり、手を叩いて喜んだり、最後はあちこちですすり泣きが聞こえてくるなど、いつも静かな日本の映画館とは思えないほどにぎやかでした。本当に皆さん楽しい時間を過ごしたのだと思いました。 [映画館(字幕)] 9点(2005-11-30 07:43:41) |
8. オープン・ユア・アイズ
本作を見て、先に「バニラスカイ」を観てしまったことを後悔。オリジナルはハリウッド製よりもおそらく低予算ゆえの映像の薄味加減が散見されるが、語り口の緊迫感はこちらの方が上かな。ペネロペ以外は自分の知らない俳優達だったので、先入観に惑わされることなく物語に集中することが出来たし、舞台が欧州というのも味わいがあっていい。 8点(2005-02-02 21:38:27) |
9. オー・ブラザー!
役者もいいし映像も素晴らしいし音楽も最高。秀才コーエン兄弟が無理しておちゃらけてみたけど、秀才ゆえの格調の高さが妙なアンバランスを生んでいておもしろい。 8点(2004-07-25 08:16:36) |
10. オールウェイズ
最後は不覚にもうるっと来てしまったが、スピルバーグ演出はストレートすぎて見ていておしりがむずむずしてくるような気恥かしさがあった。 6点(2004-07-13 14:42:50) |
11. 小津と語る
先日BSで放送していたので見ました。カウリスマキが小津の写真に「オズサン」といって日本式に一礼したので驚いた。彼は本当に小津映画を愛しているんですねえ。 6点(2004-02-29 17:47:03) |
12. おもひでぽろぽろ
思春期の微妙な心理が実にこまやかに表現されてる。世代が主人公と同じなので、ぐっと来るものがあります。うちの姉を思い出します。髪型もそっくりだったし。 7点(2003-12-14 07:52:20) |
13. 陰陽師
なんでこう奥行きのない平板なライティングをするんだろう。 カメラワークも編集ももっさりしててイライラした。テーマ以前に技術レベルが低すぎる。 2点(2003-12-12 11:42:24) |
14. おろしや国酔夢譚
原作をなぞるだけで精一杯だったという印象。緒方拳をはじめとする日本人俳優の熱演はよかったが、ロシア人俳優大根じゃないか?それからお金をかけているように見えてしょぼい技術、照明。カット変わりで音楽がブチッと途切れるのも気になった。 4点(2003-12-12 11:40:21) |
15. オルカ
初めて劇場で観た映画だったと思う。これ、「ジョーズ」のあとにつくられたものだと思いますが、結構暗い物語なんですね。 8点(2003-12-12 11:40:02) |
16. 王立宇宙軍 オネアミスの翼
新しい世界観を作ろうとして努力してる跡は伺える。でもキャラクター達の存在感が軽すぎるというか、どうも素人が背伸びして書いた台本(そんなことは無いのだろうが)のように見えて入り込めない。「ここでそんなこと言うかな」とか「ここでそういう反応はしないだろ」って思ってしまう。単に自分の好みでは無いだけかもしれないけど。坂本龍一の音楽は素晴らしかった。 6点(2003-12-12 11:39:27) |
17. お葬式
このあたりから伊丹の快進撃が始まるんですね。葬式で一本映画を撮っちゃうなんてすごい発想です。 6点(2003-12-12 11:38:48) |
18. オーシャンズ11
超豪華キャストで物語りもなかなかみせますね。傑作というほどではないけど、普通に楽しめました。 6点(2003-12-12 11:38:03) |
19. 狼たちの午後
淡々としながらも一本糸の張り詰めたような緊迫感のある演出。最後まで息を抜けなかった。アルの非凡ぶり、ただののスターではないということがよくわかる熱演。共演は「ゴッドファーザー」のフレド役を演じたジョン・カザールがいい味を出している。急逝してしまったのが非常に残念だ。 8点(2003-12-12 11:37:13) |
20. 狼男アメリカン
これは「Blue moon♪」ていうテーマ曲が忘れられない。この頃のランディスは脂が乗ってて面白かったですねえ。リック・ベイカーの特殊メイクも、今観るとしょぼいですが、当時は最新テクだったんです・・・ 6点(2003-12-12 11:36:54) |