1. ハート・ロッカー
なぜか劇中、主人公に振り回される同僚サンボーンの気持ちになって見てました。こういう狂気スレスレの主人公というのは戦場ではたいへん優秀だったりするわけですが、これまでの戦争映画にありがちだったヒロイズムを徹底して廃した映像から、この主人公が戦場においても極めて迷惑な存在であることが伝わってきます。そんな主人公がヒーロー化しかける後半の展開がお見事。ヒーロー化したって結局は迷惑度倍増で部下に罵られる始末です。このあたりから、僕はひたすらサンボーンの無事の帰還を祈ってました。そんな私は、この作品の「真意」をつかみ損ねていると思いますが、映画的にちゃんと見せ場を作って盛り上げつつ、同じようなテーマを描いていた『地獄の黙示録』やら『プラトーン』のほうが断然よかったんじゃないかなと思いました。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-16 00:45:52)(良:1票) |
2. バベル
《ネタバレ》 アメリカ、モロッコ、メキシコ、日本の4つの世界が「つながり」を持っているということよりも、そこに存在する「断絶」のほうが印象的でした。アメリカ人夫婦のためには政府が動き、メディアが動き、(多少遅れてブラピが焦ったとしても)ヘリが飛ぶ。日本の女子高生がいくら暴走しても「君は悪くない」と言ってくれる人がいる。でもアメリカの子どもの親代わりを真面目に勤めてきたメキシコ人のメイドは、自分の息子の結婚式に出たかったばっかりに仕事と住む場所を失い、モロッコの子どものちょっとしたいたずら心が、家族の破滅を招く。因果応報とはいいますが、小さな過ちから立ち直るチャンスを与えてもらえるのかどうか、それが私たちが生きる世界の「不平等」なのだと痛感しました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-08-30 15:21:27)(良:2票) |
3. バットマン ビギンズ
《ネタバレ》 シリーズ映画では、ネタが尽きてきたところでその序章的な作品をやるというパターンはよくあります。そんなわけで、ああバットマンもネタ切れなのかなと思い、結局劇場で見ることがありませんでした。しかし、いざ見てみれば、クリストファー・ノーラン監督によるバットマンの見事な再創造でした! ヒーローものとは思えない渋い俳優の競演も含めて、「正義」を問い続ける新しいバットマンの誕生物語として期待以上の出来でした。ラストシーンも含めて、傑作『ダークナイト』への壮大なイントロダクションとなっています。難をいえば、忍者軍団がローマなどの堕落した文明を滅ぼしてきたという設定でしょうか・・・。あの忍者軍団にそこまでの力があるようには見えず、ここだけ子ども向け戦隊モノみたいだったのが残念でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-03-19 20:12:31)(良:1票) |
4. ハッピーフライト(2008)
《ネタバレ》 ANA国際線の機内上映で鑑賞。飛行機1機飛ばすのにこれだけ多くの人が関わっているんだというのを実感できて、じんわりと感動しました。映画の内容的にはふつうのお仕事コメディ映画で、とりたてて目新しさや発見もなかったのだけれど、飛行機のなかでみれば尋常ではないリアリティで、映画のキャラクターと実際のスタッフの方々が重なってみえました。ある意味、スタッフの「軽率なミス」がこれだけ登場し、最後には目的地にたどり着けないという映画を、機内で上映するANAの太っ腹に敬意を表したい。無事目的地に着いて飛行機を降りるときに、妙に優しい気持ちでスタッフの皆さんに感謝できたのは言うまでもないです。ちなみに、機内上映版では冒頭に「映画のなかで描かれているのは映画的な誇張が含まれています」的なメッセージがありましたが、映画版でもあったのかな。 [ビデオ(邦画)] 7点(2009-02-18 13:34:12) |
5. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 予備知識ほとんどなしで見ました。序盤のスリラー調の演出から一転してタイムトラベルものになり、最期はちょっと切ないラブストーリーという展開には飽きずに楽しめました。脚本もがんばっていたと思うけど、残念なのはやっぱり主人公のヒロインに対する思いの深さが序盤に伝わってこないこと。子ども時代に二人に絆の強さを示すようなエピソードがほしかった。ただ、この点は実は主人公の「片思い」だったという解釈もできる。過去の小さな出来事の変化で、彼女の彼への思いは簡単に覆ってしまう。そういう部分の「切なさ」も主題としてド~ンと出してくれたらあと2点は評価が上がったかも。あと、個人的にはラストのオアシスはNG。ストリング中心のBGMで静かに終わってほしかった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-07-19 10:10:50) |
6. 博士の愛した数式
《ネタバレ》 まあまあ。これが典型的ハリウッド映画なら、日常に疲れて人間不信になったシングルマザーの家政婦が記憶が80分しかもたない「博士」と出会い変化していく、みたいなストーリーだったんだろうなあ、などと関係ないことを考えながら見ていた。そんな妄想ハリウッド版と比べると、登場人物どうしでこれといった衝突も起こらず(出会って1日で博士との「つきあい方」を心得てしまう家政婦、クビになってもすぐ復帰、親子ゲンカもすぐ仲直り、教師の思い出話を素直に聞き、適切すぎる反応をする生徒たち)、予定調和的に淡々と進んでいく物語は、良くも悪くも「日本的だなあ」という感じでした。 [地上波(邦画)] 6点(2007-05-20 10:34:45) |
7. パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
やたら長いし、ジャックとウィルとエリザベスを妙な三角関係にしたせいで、映画の爽快感そのものも失われてしまった。この映画に求められているのは『マトリクス』の謎解きでも、『指輪物語』の壮大な世界観でもなく、ディズニーアトラクション的な爽快感だと思うんだけどなあ。正直、ジャック・スパロウの謎とか、たいして印象に残ってもいない前作のキャラクターの再登場とかどうでもいい・・・。ただ2時間、冒険を楽しませて最後はスッキリさせてもらえればよかったのに。 [DVD(字幕)] 4点(2007-01-08 07:29:29)(良:1票) |
8. ハウルの動く城
思ったよりは悪くないんだけど、「宮崎駿作品」として考えると、やっぱり手放しでは賞賛できない。カリオストロからトトロまでの頃は作画の美しさだけでなくて、よく練られて、わかりやすいシナリオも魅力だったんだけど、どうも最近は勢いまかせな強引さが目立つ。「天才」にしかわからない世界なのかもしれないけど、もう一度「凡人」の世界に降りてきてくれないかなあ。 [地上波(邦画)] 6点(2006-07-22 08:24:10) |
9. パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
ジョニー・デップのアウトローぶりと、ディズニーアトラクション系エンターテインメントの奇跡のような共存。だけど見所はそれだけ。長いし、解説しすぎの演出のおかげでテンポも悪い。アクション・シーンも新鮮さには欠ける・・・。インディジョーンズ・シリーズのようにグロテスクなヘビや虫やクモなど登場しないぶん、子どもと一緒にみるには、楽しい映画なのかもしれない。ただ、個人的には、ヘビや虫は大嫌いだけど、こーゆー温室培養のような清潔さでパッケージされたアドヴェンチャー映画というのは、なにか物足りない。 [DVD(字幕)] 6点(2006-07-20 08:50:54) |
10. パッチギ!
在日の問題(の扱い方)も含めて、用意されているプロットはどれもベタで、既視感のあるものばかり。前半から中盤にかけてのケンカのシーンの連続には、正直うんざりだった。なのに、それが不思議な化学反応を起こして、最後には、ものすごく魅力的な「映画」になった。最近の時代回顧的な日本映画にありがちな、妙に「ハズした」ことをやろうとするのではなく、ひたすらストレートな青春映画であることの力強さが心地いい。葬儀のシーンのおっさんの一言と、その後のクライマックスまでの流れでは、社会派であると同時に娯楽系でもあるという奇跡のような難業をやってのけた。お見事。 [DVD(字幕)] 8点(2006-01-24 09:30:14) |
11. バーティカル・リミット
これはキビしい。典型的な「予告編」映画。期待の雪山描写も予告編だけで十分。クリス・オドネルもアクション映画の主役としては微妙だなあ。 [地上波(吹替)] 3点(2006-01-07 11:07:25) |
12. 花とアリス〈劇場版〉
こうゆう「雰囲気映画」あるいは「妄想系映画」撮らせたら、やっぱり岩井俊二はいい(褒めています)。映画としてまとまりがあるわけじゃないし、ストーリーも平凡だけど、一つ一つのシーンの美しさに惹きつけられる。冒頭の電車、バレエ、アリスと父親、雨のなかで二人の間に不信感が芽生える場面、アリスの最後のデート、学園祭と落語、どのシーンも印象的で心にしっかりと残る。残念だったのは、有名人のチョイ役出演。せっかく主人公2人のシーンがいいのに、どうも気が散ってしょうがない。そこは、もともとイベント映画だったからしょうがないのかもしれないけど、あれで中途半端な印象になってしまった。でも、個々のシーンの美しさは特筆モノということで、それだけで8点の価値アリだと思う。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-06-26 00:50:35) |
13. パニック・ルーム
よくできてて面白かったと思うけれど、監督がデヴィッド・フィンチャーだと知ってしまうと、やはりちょっと物足りなかった。悪役側のまとまりのなさとフォレスト・ウィテカーのいい人ぶり(でも完璧に正義の味方になっちゃうわけでもない)は、「冷酷な敵に追われる主人公母子」というスリラーの構図を微妙にぐらつかせて、見ているほうに居心地の悪さを感じさせる。けれど、これも「一筋縄ではいかない」フィンチャー監督のねらいなのか? それとも、単に演出がダレているだけなのか? そのへんがよくわからない。 6点(2004-10-25 13:10:29) |
14. ハリー・ポッターと賢者の石
《ネタバレ》 序盤(寮をわけるところくらいまで)は、夢のある物語でワクワク。だけど、そっから後が、原作のエピソードをこなすためか(原作未読ですが)、詰め込みすぎで、展開としてはグダグダ。特に、ホウキ競争以降(でも物語的には本筋なのに・・・)は、メリハリなくエピソードを消化していくだけで、逆に眠くなった。ラストに近づくほど眠くなる娯楽映画なんて・・・。あと原作もそうなのかもしれないけど、ポケットのなかの「賢者の石」の謎を最後に校長にネタバラシさせちゃうのも、教育的効果はあるのかもしれないが、娯楽「映画」としては失格です。 4点(2004-08-15 11:56:43) |
15. パンチドランク・ラブ
うーむ、PTA監督の新作ってことで期待しすぎたかな。ところどころのシーンは美しいんだけど(特にエミリー・ワトソンとの初デートやハワイなど)、全体のつながりがいまひとつだったのと、人を食ったような演出に今回はついていけなかった(『マグノリア』ではハマったのに)。アダム・サンドラーのキレるキャラは、彼自身のコメディ映画(『Mr. ディーズ』みたいな)のセルフ・パロディのようで、あまり新鮮味がなかった。前二作がやたら長かったPTA監督作品としては、90分のこの映画は中編って感じなのかな。中編は中編らしく楽しんでみようと思えば、感想も違った気がします。次は、ぜひ、120分の映画をとってほしいぞ。 6点(2004-07-02 02:56:49) |
16. パール・ハーバー
見る前は、日本の描写がどうこうとか、アメリカのナショナリズムがどうこうとか、そういうこと考えてましたが・・・。見終わったら激しい脱力感に襲われて、そんなこと、どーでもよくなりました。もう映画としてダメ。長すぎるし・・・。 1点(2004-04-29 10:21:45) |
17. バニラ・スカイ
リメイクだけど、ほとんどオリジナルと一緒でしたね・・・。ペネロペまで一緒だし。妙に豪華なキャストにしてスター映画っぽくして、言語が英語になっただけ? まあ、冒頭の無人のマンハッタンのシーンは印象的だし、キャメロン・クロウらしい音楽もよかったけど。それだけかなあ・・。 5点(2004-04-01 15:03:51) |
18. 破線のマリス
ラストは驚いたけど・・・驚かせばいいってもんではないでしょう。盗撮も、撮影者と撮影対象が逆のパターンだったら納得はできますが・・いくらなんでもあれは無理でしょ。サスペンス仕立てなのに、結局犯人がわからないのもバツ。独善的な黒木瞳には感情移入できないし、陣内さんの演技はちょい芝居がかりすぎ。で、メディア批判も犯人捜しも置き去りにして、結局何を描きたいのか、よくわかんない映画になっちゃった。 3点(2004-03-20 22:59:48)(良:1票) |