41. 八月の狂詩曲
《ネタバレ》 黒澤監督の「夢」の中の短編を、1時間半の映画にしたような感じだ。 あのピカドンの眼は、インパクトあった。見事です。 黒澤さんの夢のようなイメージだ。 黒澤さんはどの作品観ても、丁寧に創り込んでいくのが感じられる。 今の映画に慣れてる人には、ちょっと物足りないかも・・ でもこんな地味な内容を最後まで観せられる力量はスゴイです。 まさに日本の映画! テンポも、内容も、映像も。 アメリカに影響を受けた「姿三四郎」などの初期の作品から 日本を取り戻した監督のやらなきゃいけなかった仕事だと思います。 [ビデオ(邦画)] 7点(2019-07-05 02:29:59) |
42. 花筐/HANAGATAMI
《ネタバレ》 大林監督の戦争三部作の最後の作品。 「野のなななのか」よりも赤裸裸である。 自分の中に封印した「青春の悶え」みたいなものを、映像として表現されると、 何か口惜しい。 しかし、戦争とはこんな無垢の魂をいきなり晒すようなものであるのだ。 戦争の悲惨さを描くことなく、反戦映画になってる。 素晴らしい。 DVDが欲しい。 [DVD(邦画)] 10点(2019-05-11 15:37:00) |
43. 張込み(1958)
《ネタバレ》 映画の前半で、どっかで観たことある映画だなぁとデジャブを感じたら、 ヒッチコックの「裏窓」(1954)だと気づいた。 でも後半、ついに動き出してから、一気に映画が動き出す。 そして見失いそうになると、ここまで張り込んだのに、逃したら間抜けな刑事だと 見方の厳しいサスペンスになっていく。 でも下手な銃撃戦もなく、きれいに幕。 でも東京ってやっぱり怖っと思ってしまう内容だった。 清張の「顔」もそうだけど、都会での挫折って北九州出身の彼のポイントだよね。 [DVD(邦画)] 8点(2019-03-23 10:47:10) |
44. ハイヒール(1991)
《ネタバレ》 自身が同性愛者ということもあって、ゲイの描写が群を抜いている感じだ。 劇中、ベルイマンの「秋のソナタ」に触れているが、 彼が思春期の女親と娘の向き合い方を描いてることが、興味深い。 無神経な言動をするような男と付き合ってたり、男を見る目のない才能豊かな母親。 かなわない母親の男と結婚することで、母親に一矢報いたつもりだったが、もともと男が 大したタマじゃない。乱れた女性関係から、殺人事件にまで発展して、最後は母娘の話になる。 アルモドバルの全盛期を予感させる初期の傑作。 早くも彼の卓越した女性観や色の使い方が顔をのぞかせていて、興味深い一本。 [DVD(字幕)] 7点(2019-02-03 00:27:55) |
45. 橋の上の娘
《ネタバレ》 ルコントの「髪結いの亭主」を観てたので、 ラストはなにか過ちを犯して、ナイフ投げに失敗して、 ヒロインを殺しちゃうんじゃないかとヒヤヒヤものでした。 (確かに気の毒な花嫁に失敗しちゃうんだけど・・気の毒です) だけど、人生を語るというより、ラブストーリーの体だったので、 無事、ハッピーエンド。ホッとしました。 運命の人と出会うと運がバカつきになる、という話。 なにかで元々人間は4本足、4本手の生き物だったが、 神によって、2つに裂けられて、人間はその片割れを探して生きている、なんて 話を聞いたことあるけど・・ おフランスのラブストーリー。はまりそう(笑) [ビデオ(字幕)] 8点(2018-11-29 10:00:59) |
46. パシフィック・リム
《ネタバレ》 ワンシーン、ワンシーン手を抜かず、 細部までこだわった映画。 デルトロってクリーチャーだけでなく、ロボットまで オタクとしての守備範囲があるんだね。 この先、デルトロはどこに行ってしまうのだろうか? [DVD(字幕)] 7点(2018-10-27 13:12:01) |
47. ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
《ネタバレ》 スターウォーズのスピンオフって、内輪受けみたいで面白い。 もっともそれだけじゃないのが、ハリウッド仕掛け人たちの思惑。 ファルコン号の脱出ポッドがない理由が明らかになったのが、 個人的には嬉しかった。 あとチューイとの出会いもなかなか。 部族か、ハン・ソロか、って悩むシーンはもう少し掘り下げても良かったと思う。 でハンの恋人なんだけど、なんか本作だけでは煮え切れないよね〜。 SWシリーズ最終話にもしかしたら、絡んでくるんじゃないかな? 楽しみができました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-10-20 18:19:50) |
48. バスキア
《ネタバレ》 とにかく豪華なキャスト。 何より笑っちゃうのが、デビッドボウイのウォーホールとバスキアの合作。 これは本物? さもありなんという感じで、絵が完成していく様は楽しい。 それだからこその次にくるウォーホールの死。 観ている方も衝撃が来る。 そして旧友のデルトロが優しく迎え入れてくれる。 最後のジープでの飛翔のシーンはジーンとくる。 テイタムオニールが出てたんだね。 髪に赤いスカーフ巻いてた画商の女性と思うんだけど・・ 「がんばれベアーズ」の女の子からは、変わり過ぎてて、ちょっと自信がないのだが・・ いい映画でした。 合掌バスキア。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-09-30 21:46:12) |
49. パーマネント野ばら
《ネタバレ》 死のにおいのする映画だ。 都会は、その圧倒的にぎやかな情報群で、人の死に鈍感である。 しかし、地方は誰それの死は情報的に大きな話題性を持つ。 それ故、地方の方が「死」のにおいが漂う。 ただでさえ、有望な若者は地方を離れ、都会に行っている。 その置いてきぼり感と、寂しさで、地方の人間は過激になる。 この映画は、そんな地方の漁村の話である。 菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴、夏木マリ、4人の名女優が話を彩る。 後半の菅野美穂のエピソードが強烈だ。 一番しっかりしてそうな彼女が、一番弱かった。 観終わって、死と隣り合わせででも生きていこうとする人たちの健気さが胸をうった。 [DVD(邦画)] 7点(2018-07-14 20:59:59)(良:1票) |
50. バーディ
《ネタバレ》 「フェーム」のアランパーカー、有名な今作を鑑賞。 若者の瑞々しい感性は「フェーム」、現実に押しつぶされそうな痛々しさは「ミッドナイトエクスプレス」。 鳥の目線で翔んでいく映像体験は、音楽系監督ならではのもの。 そしてニューシネマに有りがちな鬱っぽいラストじゃ「ない」ところが、「スヌーピー」を生んだアメリカらしいオチ。 精神を「病んでる」人のあっけらかんとしたところの描写が巧い! それにしても・・親より、友人が付きっきりなんだね(笑) [ビデオ(字幕)] 8点(2018-07-12 01:33:46) |
51. パラダイス・アレイ
《ネタバレ》 レスラー映画って少ないんですよね。 ミッキーロークの「レスラー」とか「カリフォルニアドールズ」とか・・ それを「ロッキー」のスタローンが監督。 同じく下町風で、いい塩梅に仕上がってる。 しかもスタローンは、強い弟の美味しい役はやらず、 ちょっと調子のいい次男役を好演。 これが後で効いてくる。 下町の苦さを一番味わう役どころ。 今までの敵役レスラーと酔っぱらうシーンは名場面でしょう。 派手さはないけど、中々の佳作です。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-23 19:18:02) |
52. バリー・シール/アメリカをはめた男
《ネタバレ》 アメリカにはめられた男? 密輸王ってどんなに悪かと思ったら、はめられてキングになっちゃった話だった。 こわ~(;゚Д゚) [DVD(字幕)] 6点(2018-06-18 00:00:50) |
53. パターソン
《ネタバレ》 ジャームッシュが好きだ。 彼がいるから、また生きていける、そういう感じだ。 彼の映画がまた観られるから、また生きていけるとも言える。 もの言わぬ隣人のような映画だ。 あの「事件」が起きて、最後、永瀬正敏が天使のように現れるとこなんか 最高だ。 また好きな映画ができた。 今宵はジャームッシュの昔の作品でも観てみるか、という気持ちになった。 [DVD(字幕)] 8点(2018-06-09 22:11:32)(良:2票) |
54. 白痴(1951)
《ネタバレ》 さすが黒澤監督、圧巻である。 4時間ほどの映画を短くしたことに対する不満もあるが、 短くなったおかげでクライマックスの原節子と久我美子の対決がより鮮明になった気がする。 原節子の演技がこの映画の命だ。 とくにクライマックスでの表情は、小津さんなどの映画に出ている原節子とは全く違う。 ここまで女優がむき出しの演技をしている映画はあまりないのではないか? ラスト、主人公の青年はどうなったのだろうか? 伝言少年の嘆き「あの人のいいとこだけを思い出に・・」とか言ってたが・・ 三船が気がふれてきた場面から一体何が起こったのだろう・・う~む これは原作を読むべきかもしれない・・ いずれにせよ、この作品のおかげでドストエフスキーに興味をもった。 黒澤監督がラブストーリーを撮らないのは、これ一本でもう十分だからだろうなぁ。 いや、唸った。唸った一本だ。 10点満点だが、縮小版のため、この点数。 [DVD(邦画)] 9点(2018-05-05 18:53:27) |
55. 橋のない川(1992)
《ネタバレ》 非常に正攻法な演出で、分かりやすい。 日常的な差別がさらりと描かれていて、観るものにズシリとくる。 特に二人の女の子とのエピソードが心に残る。 一人は差別とも、愛情ともとれる微妙な事件の女の子。 もう一人は、同じ境遇の中、戦いに身を投じていく女性。 宣言文との結婚式のシーンは圧巻である。 原作者の住井すゑさんの次の言葉が好きだ。 「文化というのは、簡単に言って、命を大事にする事。 これが文化なんです。命を大事にする事が、つまり文化国家なんです。」 [DVD(邦画)] 7点(2018-05-02 00:33:42) |
56. バード(1988)
《ネタバレ》 ジャズ史をちょっと勉強してから観たので、面白かった。 逆に知らずに観たら、どこまで話に入りこめたか・・ あのチャーリーパーカーをしても時代の流れに屈したか・・ ビバップで一世風靡した巨人(身も心もボロボロだったけど)もロックンロールの登場という 時代の波についに倒れることになるのが印象的だった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-03-17 10:32:17) |
57. 8 1/2
《ネタバレ》 フェリーニの良さは自分には分かりにくかった。何故かというと、彼の映画のイメージのセンスは、影響を受けた後のいろんなジャンルの創り手によって、進化しており、それを観てきた私には分かりにくかったのだ。これは映画だけでなく、マンガ、小説においても言える。噂に聞いた伝説の作品をいざ、観てみると、ちょっと物足りなかったりする感じ。しかしこの作品は、にもかかわらず、風格がある。有名な映画である。最初は戸惑った。いつになったら物語がはじまるのか?しかし慌てない。これは「去年マリエンバードで」か?それならと思い、肩に力を抜いて、観てみた。最後まで見て、トリュフォーの「アメリカの夜」よりも、正直な映画創りの実感だろうと思った。映画は一人ではできない芸術だ。混乱の内に映画作りが始まってしまう芸術家の正直な感情の吐露だろう。そう思うと、ちょっとユーモアのある作品だ。それにしてもフェリーニって巨大な建築物や船を映画に出すのが得意ですね。さらにニーノロータの名曲が冴える。この映画の彼の曲は特に好きだなぁ。 (再見) 画面から目をそらさせぬ演出にうなった。これは映画の教科書だったんだ!大筋の分かってた2度目の方が面白かった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-03-10 13:21:57) |
58. パッセンジャー(2016)
《ネタバレ》 よくある宇宙船モノではあるが、この映画が面白いのは、そこにラブストーリーを絡めてきてること。男の身勝手さを許してしまうくらいの、男への敬意を感じたときに女性は愛を受け入れる。そのようなラブストーリーに宇宙船の危機を絡めている。 冒頭の、男が自分一人船内にいて、90年間、一人で生きていかなければならなくなった苦悩がもう少し丁寧に描かれてあれば、ドラマとしても見応えがあったと思う。ここでの苦悶は手塚治虫の漫画のテーマにもなりそうだ。 単純じゃない愛と正義が、無機質な宇宙船の船内の感じとミスマッチで面白い。 他にも見せ場が多い映画だった。無重力のプールで溺れかけるところは斬新なアイデアだと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2017-11-25 16:40:22) |
59. ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場
《ネタバレ》 イーストウッド12作目の監督作品。上司が喧嘩が強いと、出来の悪かった部下たちも上司の汚点に全員一致でシラを切りとおすとこがいかにもアメリカ。自分で自分の身を守れる人間に人望が集まる国のようです。最後に書類バカが降格されるのは小気味いいですね~。戦場では書類に忠実なことよりも臨機応変な対応が肝なんでしょうね。話変わりますけど、今の日本って有事の際の対応は、書類バカのような気も・・(汗)。アメリカさんから降格されなきゃいいけどねぇ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2017-09-25 01:01:03) |
60. バルカン超特急(1938)
《ネタバレ》 これは貴重!前半はヒッチコック節絶好調なのだが、医師が敵だと分かってからの展開がヒッチコックらしくなく、特に駅馬車のような銃撃戦をヒッチコックが描くなどまったく珍しい作品。後半はヒッチらしいユーモアもなく、本当に珍品。加えて政治情勢を加味して、非常に社会派サスペンスとしての色も濃く、興味深い。特に無抵抗主義をつらぬく男性がかんたんに殺されたりして、第二次世界大戦前の不穏な空気をあらわしている。そして暗号が曲だなんていうオシャレなところも憎い。アメリカに行く前のヒッチコックの作品なので、色んな意味でイギリス時代のヒッチコックの円熟味が堪能できる。 [ビデオ(字幕)] 7点(2017-09-18 14:12:31) |