1. ヒューゴの不思議な発明
今、この瞬間もそう望む人がいればこそだが、望む人さえいればいつまでも映画は消えないという、その切なる祈りに見えました。終始この映画から観えるのは「映画」そのもののように思いました。メタファーとしては、例えば他人の恋沙汰を「覗き見」するその行為そのものであったり、「ぺらぺら漫画」であったり、「機関車が迫ってくる様」など、もはや“=(イコール)”で結び付けてもまったく遜色のない映画の原型が散りばめられています。それらの進化系が現代映画なのだということを改めて痛感すると共に、サイレント期の名作映画がスクリーンに映し出された瞬間、映画好きのぼくの心は激しく興奮を覚えました。一瞬流れた「セブンチャンス」や「月世界旅行」をシネコンのあの巨大スクリーンで全編通して観ることができたらどれだけ幸せだろう、などと妄想してしまいました。また、サイレントや白黒映画に一切の興味を持たぬ人があれを目の当たりにするとどんな気持ちになるのだろうという、素直な疑問も覚え、それと同時にどうか「観たい」と思って欲しいと祈ってしまいました。つまるところこの作品の目指すところがそれであることを感じずにはいられません。現代映画とは比較にできぬほど、“映画”本来の面白みに溢れていた黎明期の作品群を観たいと望む観客が増えれば増えるほど、それらの作品のリバイバルが観れるのでは?という希望を抱いてしまいます。つまりそれが映画を朽ちさせない後押しになるのです。 現代映画は過去の作品群の積み重ねのその先っぽに存在しており、その先っぽを存分に楽しむには、引用元である下に埋もれてしまっている作品を知る必要が出てきます。“歴史を知る”というのはその文化を楽しむのと等しく、それを知るだけで今そこにあるものの“見方”がガラリと変わるのだと思います。この作品は映画のその重要な“映画史”を観客に刷り込ませた歴史的に見てもとても重要な作品になったのではないかと思います。しかしながら、作品そのもののドラマ部分とそれらの祈りが噛み合ってなさが尋常じゃないので、その意味でアカデミー賞作品賞を争っていた「アーティスト」に負けたのは頷けますが、あのロボットの描く事、あるいは描かせることも映画のメタファーになっている構造は結構好きでした。 [映画館(字幕)] 7点(2012-05-10 18:52:55) |
2. ヒア アフター
《ネタバレ》 タイトルを直訳すると「来世」で、そのことに執着して物語がどうだったか考えてしまうと、この物語に登場する人物たちはみな共通して「過去のできごと、過去となってしまった人物たち」に捕われている存在なので、なかなか「来世」との結びつきが困難でした。死を身近に感じる出来事に遭遇した主要三人がメインのストーリーになるわけですが、それぞれ抱えている重みや種類は違う訳です。まず、マットデイモン演じる主人公は死者と会話ができてしまいます。つまり、過去となってしまった人々と今この瞬間に向き合える力を持った人間です。自分ではない過去を生きた人間の存在によって、前進する事ができなくなっているのです。また、少年は瓜二つの双子の兄弟を失った事で、二人で一人だった意識に捕われて前進する事ができなくなっています。そして、彼女は臨死を経験したことによって、死のあまりの身近さに取り憑かれ、それ以外のことが考えられなくなっているのです。三人に共通するのは、今を生きているのにまるで生きていないかのように先に進めない硬直感です。この構成が巧みではありますが、やっぱり当然のように三人はいずれ会う事が予想できますし(あえてそういう作りにしたのだと思いますが)、心待ちにし、どういう流れで三人が巡り会うのかを期待します。そして、紆余曲折あって会う。凄い運命的な偶然を大団円的な華やさで描く事なく、穏やかにさも当然といわんばかりの落ち着いた雰囲気で会うのです。そこで行われることは、それぞれがそれぞれのHEREAFTERと向き合うという行為です。つまり、この先を三人が歩み始めたその瞬間が描かれている訳です。「来世」で考えてしまうと、グラントリノで死んだイーストウッドの神的目線物語?あるいはそろそろお迎えを感じ取った彼の遺書?とか深みにはまってしまうのですが、「この後、この先」で考えるととてもスマートな物語構成であることが納得できます。だからこそラストで見えたあれが、過去ではなくこの後であることに納得がいき、また抑制された状況からの解放によるカタルシスに酔いしれることができたのだと思います。80歳を過ぎ、多くの別れと出会いを繰り返し、そしてまもなく必然的に訪れるそれの実感があるからこそできる作品なんだと思いました。ただ、実感として高めすぎた期待値からするとその大きな落差は否めないほどのシンプルな作品であることも確かです。 [映画館(字幕)] 8点(2012-01-14 12:12:35) |
3. 127時間
《ネタバレ》 この作品は彼のみの、主観的な物語で構成されているがゆえ、感情移入がとても容易にできる作りになっている。絶対的な主観の人生に閉じ込めらている観客自身が、彼になりきった気分で、まさに岩に右腕挟まれた感覚で、物語の成り行きに身をゆだね、没頭することができる。カタルシスは絶対的な孤独の中で、人生をどう取り戻すか。そういった意味では、「キャストアウェイ」が内容的には近く、心情を吐露する対象が物語を発展させる上で必要不可欠で、キャストアウェイではボールだったのが、この作品ではビデオカメラの液晶に移る自分自身になっている。比喩的にも物理的にも、自分自身と自分自身について語り合うという構造が見事に描かれていて、とても面白い。自らの欠点を見つめ、自らの人生の反省点と改善点を、絶望的な状況下で自分自身と語り合い、見つめなおす。そして、自分がすべきだったことを液晶の自分自身に向けて語る。彼に与えられた選択肢は3つ。ただただ一日でも長く生き延び救助を待つ、岩を崩して脱出する、そして腕を切り取り、生き延びる。結局、最後の決断以外、死の予感しかしない。選ばざる終えない究極の決断にいたるプロセスは、「生きる」への熱意、希望が最高潮に達するまでを、様々な手法で描いている。人は喪失の予感を目の前にしないと、変われない。彼もそうであったに違いない。振り向き様に写真を撮った彼の最後の言葉は、つまり127時間の己との対話を設けてくれた自然への感謝の言葉だったと思う。最後に、できればもう少し死への恐怖心、緊張感を感じさせてもらえたら、脱出の時の死からの開放のカタルシスがもっと感じられたのではないだろうか。観客自身も己の人生を見つめなおすきっかけに成りえる作品の一歩、二歩手間で止まってしまっているような感じ。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-17 20:09:59)(良:1票) |
4. 百万円と苦虫女
《ネタバレ》 この作品はとにかく蒼井優さんが素晴らしい。 彼女が町や村を転々とするのは、彼女が寂しがり屋で臆病で、弱い人間だから。人と関わるという事は、とにかく面倒なことで、迷惑をかけたり足を引っ張られたりするものだと思う。それは社会で生きるなら逃れられないことで、それから100パーセント逃れようとするのなら、社会の存在しない無人島に行くか、生きることをやめるしかない。だけど、彼女がそこまでしなかったのは、生きていたいからで、誰かとどこかで繋がっていたから。彼女は逃げて逃げて、でも最後は逃げたのではなく、別れたのだと思う。物語はある種のオムニバスのように、目的を果たすたびに住む町を変え、そこで出会った人との繋がりが、彼女を少しずつ変化させたのだと思った。 恋に落ちた瞬間も、弟への申し訳なさも、愛した人と別れる瞬間の力強い表情も、全てが変化の着地点に見え、その全てのカットが記憶に鮮明に残っている。 でも、彼女の弱さや脆さは誰しも心の奥に持っているものだから、彼女の心の小さな小さな起伏をしっかり掴むことができたのだと思う。そして、それが掴むことが出来たのは、蒼井優さんの演技が素晴らしいからであり、それを搾り出すように引き出すことに成功したタナダユキ監督の演出あってだと思った。 [映画館(邦画)] 8点(2008-08-09 22:43:35) |
5. 人のセックスを笑うな
《ネタバレ》 僕は好きです、この作品。基本的に登場人物たちが感情を口に出さないので、唯一三度目の濡れ場後に、みるめが語る台詞だけが感情の説明になっており、観る側として感じた違和感をきっとゆりちゃんも感じたのではないでしょうか。カット尻が長いのはその意味もあると思いました。感情の大きな起伏もなければ、大きな出来事もないので、ゆったりとしたカット尻の作品になるのは当然だと思います。また、登場人物たちの自由気侭な姿が愛しく感じれたのは、井口奈己監督の演出力に他ならないと思います。役者さんたちの魅力を引き出し、可愛く見せる力は間違いなく才能だと僕は思いました。また、ヒキとヨリの組み合わせや、唐突なポンヨリには思想を感じ、映画を観たと感じさせてくれました。 [映画館(邦画)] 8点(2008-02-21 22:11:47)(良:1票) |
6. ビフォア・サンセット
『恋人までの距離≪ディスタンス≫』の良さを落とすことなく、いや、むしろ、『恋人までの距離≪ディスタンス≫』の良さをより引き立てるような役目を果たしていた。常に会話の一部として出てくるのが、9年前のあの日の出来事とそれからの日々のこと。それはもう、『恋人までの距離≪ディスタンス≫』を観た後、感動した人ならきっと一度はこの二人はこの後どうなってしまうのだろう?と考えた筈。その想像でしかなかった部分を見せてくれた。しかもそれが前作の良さ、良かった所を一切汚すことなく、見たいと強く願っていたその部分を見せてくれた。見れたその部分も、ロマンチックではあるが、ひじょうに現実的で、切なく、でも、淡く美しい。二人の間にははっきりとした愛があった。それだけで僕にとっては十分すぎた。 [DVD(字幕)] 9点(2006-06-25 03:05:45) |
7. 火火(ひび)
高橋伴明監督に直接質問することが出来た。「タイトルの火火というのは、どういう理由があったんですか?」すると判明監督は「田中さんが付けたんだよ。火と火でよろしくって」そんな単純な会話にも満たない言葉だったが交わすことができた。実際に監督直々に映画の説明をしていた。白血病のリアルな映写の時、窪塚君は直々にリアルな演技を進んでしたとか、本当に様々な裏話から、特に感じ取って欲しい部分だとか、丁寧に語られた。親子の深い絆、信頼、愛情。どこにでもありそうだけど、どこにもない、本物の親子。どこまでやれるか、どこまで尽くせるか。胸が痛くて仕方なかった。残そうと思えば永遠に残すことが出来る焼き物の美しさとは違い、人間はいつか必ず灰になる。でもそのとき、誰にどういう形で愛され、また愛し、そのときを迎えるか。どんなに辛くともそこに温もりがあるのなら幸せなのかも知れない。この映画から伝わってくる最も大きく、美しいメッセージは、「ありがとう」だと思う。 [映画館(字幕)] 9点(2006-06-19 00:45:12)(良:1票) |
8. ひみつの花園
《ネタバレ》 映画では“お金”を求め過ぎると最後に落とし穴にはまる、という展開を良く目にする。それは“お金”に対しての主人公の欲が何処か薄汚く、時には悪質だったりする。だから天罰のような形だったり、「人生、そんなに上手く行かないよ」と言うような形で落とし穴にはめる。しかしこの映画の主人公は違う。咲子は、純粋な気持ちで“お金”を愛していた。お金の使い道に期待したり、夢や欲望を抱いたりする訳ではなく、ただ本当に純粋な気持ちで“お金”という紙切れを愛していた。だから咲子の心の中には“欲”はなく、その行為自体が本当に純粋で、それはまるで子供が海岸でキラキラ光る小石を集めるみたいに無邪気だった。だから危険性が感じられず、終始安心して見守る事が出来たのだった。そして咲子にとって5億円は通過点に過ぎず、言わば、更なる大金への踏み台でしかないのだ。だから咲子にとって求め過ぎの限界は無く、きっと咲子は死ぬまでお金を求め、探し続けるのだろう。そしてお金を手にする度に、誰も知らない“ひみつ”の場所に隠し続けるだろう。 8点(2005-03-11 19:18:50)(良:1票) |
9. 彼岸花
《ネタバレ》 今まで観てきた小津作品は、全てがお気に入りの作品なので、この『彼岸花』も以前から漠然とした期待があり、とても観たい作品の一つでした。さらに小津作品で初のカラー作品という事で、期待は膨らみました。冒頭はいつも通りの小津作品の穏やさで僕を和ませ、白黒作品となんら変わりのない静けさに安心して画面に食い入る事ができました。ストーリーは派手に言って見れば結婚に至るまでの考え方の“新旧対決”という風に感じました。やはり、まだまだ子供で最近の考えの強い僕の感情は当然のように娘さんに移入しました。その為、中盤では父親のわからず屋で頑固な態度と意見にとても腹が立ち、画面に向かって唾を吐きまくっていましたが、ラストでのあの電車に揺られ、緩やかな表情を浮かべる父親の姿を見たとき、何とも言えない爽やかな気分になりました。それはどことなく春の爽やかな風のような温もりに満ちていてすごく気持ちが良かったです。やはり小津作品は素晴らしい、と心から感じさせてくれる作品でした。 [DVD(字幕)] 9点(2005-01-15 00:48:03)(良:1票) |
10. 美女と野獣(1991)
これはこれは。僕が小学5年生の時に劇をした作品ではないですか!ほほ!その中で僕はなんと主役の、野獣!いやぁ~ヒドかった!あれは実にヒドかった!なにがヒドイかって?それは相手役の女子が美女にはふさわしくない、“デブ”だったからです。このいい方もまたヒドイかもしれない、でも事実。観客の生徒たちは完全に凍死しておりました。あぁムゴイ・・・なんて卑劣なんだ。僕は相手役にその頃、好きだった子がなるよう神に祈りつづけました。が、神は僕を見捨てました。その子はBGM、ピアノ担当になり、そして相手役に“デブ”が選ばれました。はぁ・・・もう思い出したくない・・・あぁ神よ!どうか、どうか今度こそ願い叶えて!この頃の苦痛な記憶を僕のメモリーから消去して下さい!どうか!お願いしますぅ~・・・ 7点(2004-06-27 13:01:31)(笑:1票) |
11. ビッグ・フィッシュ
ファンタジーの様な世界と、現実的な世界がうまく絡み合っていた。それでいて、それぞれの世界が強調し過ぎず、そして薄れる事無く描かれていた。夢のような、おとぎ話しの世界は、どのシーンも明るくて、元気があり、楽しくなる。その反対の現実の父と子の世界では、夢がなく、本当に嫌になるほど現実的。でも最後にこの二つの世界が重なり、混ざり合う。父の気持ちを理解した息子・・・そして、観客はこの時『ビック・フィッシュ』というタイトルの名の本当の意味を知る。素晴らしい・・・感動です。泣 9点(2004-06-10 18:49:45) |
12. 秘密(1999)
以外とおもろいヤァ~ン!ストーリーも斬新で、 主演の小林薫、広末涼子の両者ともいい味が出ていて、 とても観やすく、観ていてほのぼのできた。 正直これほど面白いとは想像していなかった為か、とてもよかったです。 ですが、最後のあの結末は微妙です。と言う事で-2点。 8点(2004-05-23 14:18:43) |
13. ピンク・パンサー3
随所で笑えましたけど、爆笑さしてくれると期待していたので 正直、期待以下でした。 7点(2004-05-04 19:09:23) |
14. ひまわり(1970)
たしかに名作っぽいストーリーと映像でした。でも、僕みたいなガキには まだちょっと難しい作品でした。いつかまた大人になった時 もう一度観て、自分が大人になったかどうかの基準の作品にしたいと思います。 5点(2004-04-29 08:11:58) |
15. ビバリーヒルズ・コップ
ふつーのアクション映画+エディ。面白かったッスょ。 6点(2003-10-16 13:02:10) |
16. 羊たちの沈黙
やっと観ました!この映画は一度は観ないとダメですね。それほど恐怖感はないのですが、緊張感がかなりある。一度観たらストーリーを忘れられなくなる様なインパクトのある内容でした。これから観るA・ポプキンス物が全てレクターに見えそうで不安です... 9点(2003-09-29 17:06:19) |
17. HERO(2002)
俺にはストーリーが理解不能。それにワイヤーアクションが変!すごいという雰囲気が出てなかった。もー少し面白いと思っていたので、期待ハズレです。剣を使うシーンでもあまり強さやすばやさが伝わってこなかった。CGと背景、色合いはよかった。 4点(2003-08-18 20:26:25) |
18. ヒドゥン(1987)
かなりむちゃくちゃなストーリーだったけどそこが面白かった。 8点(2003-06-08 19:21:40) |
19. ピンポン
性格がとっても不器用なペコとスマイル。無愛想なスマイル。陽気なペコ。この二人、最高だよ。マジ、最高だよ。ソコントコヨロシク。 7点(2003-04-01 09:04:31) |
20. 陽はまた昇る(2002)
いや~よかった~。すっごくよかった~。俺これ観たのもVHSだから、やっぱすごいな~。日本映画もこれからって感じ? 8点(2003-03-22 19:37:56) |