1. ヘンゼル&グレーテル
《ネタバレ》 本国の批評家からは散々な評価だったらしいけど、わたしはこれ結構面白かったです。グリム童話を下敷きにしたファンタジーホラーの中に、当時の捨て子等の社会問題を織り込むとかしてもう少し格調高いテイストに寄れば識者の方々も納得なのかな。 いや、そんな小難しいことは抜きにして悪い魔女をぶっ殺すB級姿勢が良いんですよ本作は。 アクションも観易いし、時代考証も(途中まで)よく再現できているみごとな美術。中世の画ヅラにガトリング砲登場でびっくりさせられますけども、これが妙にマッチしてる。無骨な銃器に魔法の液体をかけてパワーアップ、ってデタラメがまた心地よい。森の中を杖に乗って飛ぶ魔女の画が素敵で、CGを観てわくわくしたのは久しぶりです。 中学生の妄想を余すことなく映像化した快作と言っていいんじゃないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-10-28 23:47:33) |
2. ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
《ネタバレ》 何度も映像化されてきたニクソン政権の政治スキャンダルを、M・ストリープとT・ハンクスの二大スターの安定感と演技力でしっかりした骨格の娯楽作に仕上げています。人物らの立場説明が簡略にして明快なので、事件そのものに疎くても理解が容易です。 クライマックスの盛り上げ方も巧いなあ!受話器を握りしめるストリープの、決断を迫られた緊迫感あふれる表情にこちらも手汗がにじみます。 また、この脚本は横糸として当時の世相であった女性軽視の視線をだびたび挟みます。ポスト紙社主のケイは「女が社主なんて」という目で見られている描写が多々あり、またストリープも随分と物腰柔らかな女性としてケイを演じます。それだからこそ、ヤマ場での経営者としての腹のくくり具合は大変に立派で胸を打つのでした。 ケイの置かれた厳しい立場を誰よりも理解していたのがハンクス演じるキャップの妻(彼女もまた大事な情報を伝えてもらえないという形で軽んじられています)というのも、皮肉が効いているなあと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-18 18:32:35)(良:1票) |
3. ベスト・フレンズ・ウェディング
《ネタバレ》 当時の制作の意図としては、ジュリアを久々にコメディの場に引っ張ってきたことと、新進気鋭人気上昇中のキャメロンを起用したことで成功間違いなし、と思ったんじゃなかろうか。四半世紀ほど経ってからこの作品を観ました。で、断言できるのはこの映画の美質は音楽とR・エヴェレットの存在であるということ。キャメロンの音痴カラオケ、親戚の集う会食での合唱そしてラストシーン。ポップスの心地よさを最大限に生かした演出には心掴まれました。 さらにジュリアの親友役のルパート、彼が良い塩梅に差し水をすることによって話が硬直せずにすんでいます。絶対にジュリアと恋仲にならない設定=ゲイ、としたことでラストのダンスも厚い友情を感じる大変爽やかな名場面になっています。 不満も多々ありますが。キャメロンの造型が甚だ浅く、若いだけの可愛い子ちゃんであること。なによりダーモット・マローニーがどうハードルを上げ下げしてもジュリアとキャメロンが必死に取り合うような素材に見えないこと。わたし的には大味顔のジュリアより各パーツの整った小顔のキャメロンが贔屓なのですが主役をジュリアに譲っていること、などです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-13 23:54:10) |
4. ベン・ハー(1959)
《ネタバレ》 どえらいお金がかかっている壮大な映画ですが、内容は‶小学校中学年向き偉人伝”です。なにしろ人物描写がシンプル。感情パターンが「裏切られる」→「悲嘆に暮れる」or「復讐に燃える」→「奇跡を前にして歓喜」、と情感のひだが少なめ。人間がこんだけ単純ならキリスト教のみならず各宗教布教は容易に広まったことでありましょうが、二千年経った現在人類の思考はもう少し複雑なのでした。戦争はいっこうに収まらんし。 映画は前例の無いほどに作り込まれていて、セットや衣装のまばゆさにパワー負けしそうです。ただ、あくまで‶舞台上のお芝居”を観ているようでリアリティは低い。世を忍び廃屋に隠れ住んでいる元従者の娘の髪が綺麗にセットされていて、肌ツヤも良くメイクもばっちりというあたりとか。 長尺なドラマの締めを、それまで観客と共に苦難を分かち合ってきた主人公ベン・ハーが担わない、というのには感動どころかずっこけた21世紀の客(=わたし)でありました。 ともあれ、C・ヘストンの隆々たるスターの風格といい、制作への熱量といい、当時のハリウッドの隆盛をつくづくと知る作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2021-06-13 22:39:33) |
5. ベガスの恋に勝つルール
主演の女優が35才、男優が30才ですか。他愛もないラブコメにしてはやや年齢高めの役者を起用したものです。それだけキャメロン・ディアスのコメディエンヌの才に対しての信頼の高さを感じますが・・さてどうでしょう。 結論から言うとまあまあ面白かったです。序盤はうるさ過ぎに感じましたが、リアルなキャラ作りが功を奏してだんだんとこちらもノセられてゆく。こういう引きの強さはさすがにベテランの仕事だと感じます。 でもね、やっぱりこれが10年前のキャメロンならもっと快作になっていたと思うんですよ。彼女のコメディ演技は若い頃と何も変わっていない。昔みたく顔全体でパッと明るく笑ってみせても目尻のシワが気になってしまうし、やっぱり年相応の演技をしなければ特にコメディはキツイ。これは未だに20代仕様の脚本をキャメロンに強いた制作が悪いのです。ラスベガスでのバカ騒ぎの場面なんか若さの勢いがあればこそ。分別のある大人がやると痛さが先に立ちます。 かつては輝くばかりのコメディエンヌだったキャメロン。どうかメグ・ライアンの二の轍を踏まぬようにと誰もが願っていたところ、女優引退してしまいました。メグとは全く違った決断をした彼女。いくつかあるシリアス系のお芝居も(メグと違って)そんなに悪くないなあと思っていたのですが。もう観られないと思うと寂しいです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-09-28 22:59:47)(良:1票) |
6. ヘレディタリー 継承
《ネタバレ》 ・・ああやだやだ。嫌だーこの映画。なんか怖がらせてくるというより、ヤな気持ちにさせる嫌がらせのような映画である。えげつないんですよねやり口が。小説に「いやミス」があるなら、こちらは「えげつなホラー」とでもジャンル確立できそうな。 悪魔信仰云々といった正統ホラー描写は宗教の違いもあってか、別に怖くない。けど人の気分を胸糞悪くさせる中盤まではホント消耗する。妹を事故で死なせた兄ちゃんが現実逃避するあのいたたまれなさ。翌朝長々と耳障りに響くトニ・コレットの絶叫。トニ・コレットのガサガサした感じの顔もしんどいが、あの娘役の顔がこれまたキツイ。一体どうやったらあんな不吉なオーラをまき散らす顔になるのか。あの子の担任になるのは絶対ゴメンである。 ‟親として絶対子どもに言ってはいけない”ことばかりを息子にぶつけるトニ・コレットの毒親ぶり。その言葉に削られてゆく息子の土気色の顔。えげつないって。誰だって辟易する。 「家」もヘン。やけに奥行きあり過ぎ、だだっ広い空間が多くて昔の旅館みたい。撮影のために建てたんだとか。生活動線を考えてない住居ってこうも居心地悪いもんなのか。 現代アメリカンホラーの最高作との呼び声高い本作、たしかに強烈なパンチは食らうけれど個人的には「怖い、でも美しい」シャイニング的ホラーの方が好み。ほんとやだったあ 二度と観ない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-08-20 23:45:20) |
7. ベイビー・ドライバー
カー・アクションの見せ方の巧さではここ十数年で観た中で一番の出来と思いました。車内目線と外から俯瞰した画の切り替えがうまくて、こちらもスピードに乗れる感覚。速すぎるうえにカット割りが多すぎて、観てて疲れる割に迫力が伝わらないカースタントのこれまでなんと多かったことか。 というわけで冒頭から掴みはOK、な今作。リリー・ジェイムズは可愛いし(髪をアップにした時のキラキラしいことったら)、ケビン・スペイシーは安定だしジェイミー・フォックスは見るからに怖い人だしで、人物の引きも充分。あ、主人公の彼はちょっと弱いな。要努力。 クルマ映画で日本車が相変わらず活躍しているのを見るのも嬉しいですね。壊されるのはちょっとつらいけど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-12-01 23:20:55) |
8. ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ
トマス・ウルフ。学生の頃講義で名前だけは知っていたけれど、作品に触れたことはありませんでした。ましてヘミングウェイやフィッツジェラルドも担当した名編集者の存在も今作で初めて知り、当時の世相描写とあわせて興味深かったです。 キャスティングが成功してまして、破天荒な天才を演じたのはジュード・ロウ。イケメンなので分かりづらいけれど、かなり器用にいろんな役をこなせる人です。C・ファースは言うに及ばず安定感ハンパないですし、想いは常に一方通行のパトロン、N・キッドマンも痛々しいヒステリックぶり。下降気味のフィッツジェラルドのG・ピアースも良かった。 トムの抑え切れない表現欲と苦しみも、パーキンスの情熱と困惑も、アリーンの嫉妬心も生々しく伝わります。人間ドラマの濃さが尺足らずの脚本を補って余りある、役者陣の力演でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-11-18 23:33:18)(良:1票) |
9. ヘイル、シーザー!
《ネタバレ》 コーエン兄弟の映画愛とか、ハリウッド黄金期へのリスペクトなどうっすらと感じますが、まああんまり面白くはないですな。 赤狩りが吹き荒れる時代の、その入り口。デフォルメ気味のハリウッド10の面々、あっさり共産主義に取り込まれるなーんにも考えてないスター俳優。潜水艦にて登場とは、ソ連の仰々しいこと。ゴシップ記者の厚かましさ。各方面に皮肉砲を浴びせるコーエンらしさは感じるものの、いかんせん21世紀の他所の国の人間にとって興味深いストーリーか、といえば甚だ疑問。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-07-16 23:42:55) |
10. 別離(2011)
イラン映画は、そう、以前から人間の心理描写が巧かった。今作は、介護、教育、離婚といった洋の東西を問わない問題を抱える銀行マン一家が舞台。観ていると遠い中東の国のこととは思えない近しさを感じる。 誰の立場に最も肩入れできるかで、鑑賞者の感想はそれぞれ違ってくるだろう。登場人物一人一人の考えは、その立場に立ってみると各々ごもっともで、さらに少しずつ嘘も混じるので正悪の判断はにわかにはつけ難い。見せる脚本である。ただ、大人に振り回される中一の長女だけは一貫して可哀想だった。とてもしっかりしているので尚更。こんな年若い子に、親の選択を迫るんだねえ。厳しいなあ。決して楽しい話ではないけれど、イランの人たちの感性や日常がこんなにも我々と近いのだ、と改めて思った。日本のみんなに観てもらいたい。ついでに米国大統領にも。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-25 00:54:08) |
11. ペット・セメタリー(1989)
《ネタバレ》 猫で失敗して、息子で失敗してるのに何故3度目の過ちを犯す?学習能力の無い父ちゃんだなあ。 あと、あんな小さい子に禍々しい芝居をさせるのはやめてください。 [ビデオ(字幕)] 4点(2017-08-21 00:01:35) |
12. ヘイトフル・エイト
何作作ってもテンションの衰えないタランティーノ、ほんとに偉大な映画バカですね。ヘイトに血しぶきに腹の探りあい。またかよー、ではあるものの、タランティーノリピーターをもってして170分釘付けにする話力の凄いことよ。タラ監督作はすべて観ている当方、血しぶきが上がるのは分かっているが、そのタイミングはいつも分からない。いつ誰が引き金を引くのか毎回度肝を抜かれる。 今作は密室ものであるので、狭い空間に充満する”ヤバイ空気感”は相当のもんである。いわば「イングロリアス・バスターズ」の地下居酒屋だけで120分、君は耐えられるか。 殺伐とした中に挟まるピアノや、しみじみ聞かせるジェニファーのギターソングなど、こちらの心を懐柔するやり口も巧い。 難を言うと、演技達者揃いの中ティム・ロスが「ジャンゴ」のクリストフ・ヴァルツの真似をしてるんじゃないのかと見えてしまうのが惜しかった。だって似てるよお? [DVD(字幕)] 7点(2017-05-29 16:57:17) |
13. ヘル・レイザー
《ネタバレ》 グロテスクと肉体的痛みと黒魔術要素の合わせ技。当時は画期的な脚本だったのかな。 しかし21世紀になって観賞したワタクシの感想としてまず来るのはホラーには若いのを使え、ということだった。若いお姉ちゃんがキャーキャー言ってパニくらないと娯楽として成立しないということを本作で知る。あの後妻にはもう10才年若なのを使っても話の流れでは問題ないはず。ほうれい線が目立つ顔でのベッドシーンは見せられる方がキツイ。何度もあるし。 あとさあ、フランクが逃げたって事 魔導師の皆さん、知らなかったよ?カースティがチクるまで。異界の者としてこんなぼんやりで良いのだろうか。 挙句「我々を騙したらお前の魂を引き裂いてやる」ってメキシコマフィアみたいな脅し文句。あまりに人間ぽい安っぽさ、勘弁してくださいよ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-10-09 00:26:44)(笑:1票) |
14. HELL(2011)
太陽光が凶器となっている近未来の世界観がとても熱心に作りこまれていると感じます。どこを映しても、かさかさ、ぱっさぱさ。画面は常に黄味がかって砂っぽく、車の窓には眼張り、降りる度にマスク+長袖着用と、防塵装備を怠らないといった隙の無いサバイバル描写。 背景描写に力を入れまくりの一方で、人物描写やストーリーのサスペンス性といった点は△。せっかく姉妹で登場していても、キャラの描き込みが足りないのでドラマのふくらみにも欠けてしまいます。いつもむっつりと愛想の無い顔で奮闘している。彼女らが笑うべき場面もまあ無いんですけども。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-10-09 00:04:20) |
15. ベルヴィル・ランデブー
音楽が素敵。活躍するのがお婆ちゃんと犬、というのがまた粋。引きこもり気味の孫を立派な自転車選手にするべく奮闘する物語かと思いきや、話は予想もつかない展開へ。ちょっと呆然とする。ストーリーの引力、摩訶不思議な三つ子婆ちゃんの生活風景、電車が通る度に吠える犬。なんというか、アニメを観る上で初めての経験。・・しかし、とにかく絵である。静物はすごく好き。風景も建物も、情感漂う佇まい。でも生き物はキツかった。汚物までリアルに描きつけなきゃならないもんなのか。とても“妖精”には見えなかったし・・。ダメだったなあ・・なじめなかったなあ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-09-05 01:16:17) |
16. ベンジャミン・バトン/数奇な人生
《ネタバレ》 逆さまの人生を生きた男の人生か・・。出会う人たちがほぼ善人だし、“愛する人を送る悲しみ”を人より多く経験したにせよ、ベンジャミンは幸せな人生だったと言えるのじゃないかしら。人生の端っこで、ベンジャミン・バトンと交わった人たちのそれぞれの人生も重量をもって展開していて、しみじみ感じ入ります。みんな逝ったんだ・・ベンジャミンも、デイジーも。何故かしら精一杯生きよう、と思いました。 [DVD(字幕)] 7点(2013-08-01 01:03:29) |
17. ベニスに死す
《ネタバレ》 おじさんが延々と熱っぽい目で少年を追ってるだけですから、話は面白くはないです。とはいえ、ベニスの街並に貴婦人と美少年おまけに疫病、と舞台も小道具も完璧に揃って、これは退廃美ジャンル(そんなのあるのか)の中でも最高峰に位置する一作。自らの手で美を完遂すること叶わなかった老芸術家が神の創りたもうた完璧な美と心中する。自分は醜く朽ち果てようと、彼の心の幸福はいかばかりか。ビョルン・アンドレセン、凄かったですねえ。当時はちょっとした事件を目撃したかのような衝撃でしたよ。少女マンガの存在が具現化して立ち現れたんですから。このキャスティングでなければもちろんこの映画の成功も無かったと思われます。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-04-11 00:30:41) |
18. ベティ・ブルー/愛と激情の日々
愛と激情の日々、いやもうその通り。ベアトリスが行っちゃい過ぎてて、当時の私は完全に思考停止した思い出があります。うーん、分からん、ということです。ゾーグは仏サマみたいだ、とも思った。今観たらまた違う観方ができるかな。 [ビデオ(字幕)] 6点(2012-07-14 16:47:32) |
19. ペーパー・ムーン
《ネタバレ》 テータム・オニールの天才爆発。“可愛さ”を売りにしない子役の新鮮なこと。賢くて動物なみのカンの良さを発揮して、その家の状況をぱっと見で把握、聖書のインチキ価格を設定。0から24ドルまで。テータム・オニールで思い出すのは、この名場面とあとリボンをつけられた時のふくれっ面。なんてキュート。 [地上波(字幕)] 7点(2012-06-03 15:19:22) |
20. ペレ
とても気持ちが沈んだ記憶のある映画。貧乏も寒さもちっとも良くなる気配はないし、年取った親父はどんどん覇気を無くしてく。えーん。なんとか息子には脱出してほしいと願いつつ、願いを打ち砕きそうな北欧の厳しい自然と現実に言葉もない。こちらの手までかじかんだ気がして、さすりながら映画館を出たのでした。 [映画館(字幕)] 6点(2012-02-11 12:28:20) |