1. ポリス/インサイド・アウト
時期的には2007年のポリス再結成に合わせるように発表された、スチュワート・コープランドによるポリス回顧録。 作中でコープランドが話していますが、少し売れてきて余裕が出てきた頃に買ったという 自前のスーパー8で撮影された映像を軸に構成されています。 それだけにお世辞にも画質がいいとは言えず、撮影技術云々も度返しして見る作品です。 ポリスを結成した頃から全米、そして世界中で人気が不動のものになる頃まで。 粗削りだった小規模のステージからビッグなステージに変わり、移動手段も小さなバンから専用機に変わり 衣装やステージでのお行儀も良くなっていく。そしてメンバーそれぞれの心境にも変化が芽生えてくる。 ポリス結成時から、1982年頃までの映像、エピソードで構成されています。 よって代表作である83年発表のアルバム〝Synchronicity″と代表曲である〝Every Breath You Take″は収められていません。 そして、その全盛期の真っ只中にポリスは解散してしまうのですが、 解散が現実のものとなっていた83年のことについては触れたくなかったのかもしれません。 しかし、82年の時点で別れの時が近づいていることを匂わせる最後のコープランドの言葉は印象深い。 映像は正直、見づらい時間帯もあるし、そもそもポリスが好きな人しか見ない作品であり、 同じポリスのドキュメンタリーでもアンディ・サマーズによる「サヴァイヴィング・ザ・ポリス」の方が ドキュメンタリー作品としてはまとまっています。 しかしその粗削りな映像とエネルギッシュな特に初期のポリスの活動の軌跡がうまく相まった作品になっています。 [DVD(字幕)] 6点(2020-10-22 15:35:01) |
2. 炎の戦線エル・アラメイン
《ネタバレ》 北アフリカ戦線を戦うイタリアのとある小さな部隊の苦闘とその人間模様。 見渡す限り戦争と砂漠以外何もない。見ているだけで喉が渇いてくるような作品です。 敵と対峙する戦争映画としてはかなり地味な部類に入る作品ですが、 見捨てられ置き去りにされたような、負け戦の最前線の兵士の苦しみを徹底して見せ続けます。 あえて派手さをおさえ、兵士たちの苦闘を常に至近距離で見せることで彼らの苦しみがリアルに伝わってきます。 バイクで去っていく主人公の若い兵士と、もう動けずにそこに残るしかない上官。 二度と再会することはできないであろう、砂漠の真ん中の別れのラストがひたすら悲しい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-08-17 13:13:15) |
3. ボディクライム 誘惑する女
B級映画にありがちな邦題がついていますが、キャストはなかなか豪華です。 音楽がエンニオ・モリコーネというのにもビックリな作品です。 それにしてもエマニュエル・べアールが老けたなあ・・・・。 本作のちょっと前の彼女の出演作も幾つか見ていますが、その時はそういう感じはしなかったんですけどね。 ハーヴェイ・カイテルの醸し出す雰囲気、人相は相変わらず独特の不気味さがあります。 映画の中で高い脱衣率を誇る人ですが、本作でも年齢を感じさせない鍛え抜かれた体をご披露されています。 ストーリーの方は、前半から中盤も、後半から結末にかけても、いちいちスッキリしません。 死んだはずの男が生きていることを示唆するブーメラン、そして目の前にその男が現れる、 このあたりの流れは悪くなかったのですが、その後が結構ダラダラするし最後の決着方法もエグすぎる。 べアールとノーマン・リーダスが演じるカップル、果たしてこれで幸せになれますかね・・・。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2018-03-16 20:18:06) |
4. 僕らのミライへ逆回転
《ネタバレ》 リメイクを作成するまでに至る序盤の展開は結構無茶苦茶だし、 あのリメイク作品が1時間待ちの行列になるほど大評判になるのか? 「何だ!?このふざけたビデオは!」と苦情が全く無い?といったツッコミ所は結構あったりします。 でも“映画愛の映画”に弱い僕としてはこの映画、やっぱり好きですねえ…。 次々と作品名が登場する段階になると映画史に残る大作も出てきますが、 初めて製作するリメイクが「ゴーストバスターズ」。 2作目は「ラッシュアワー2」という気軽に見れて笑える映画から登場する流れもいいじゃないですか。 みんな、もっと気軽に映画見ようよ。映画館に行こうよ。そんな単純なメッセージが聞こえてきそうです。 映画のテンションはいつもの典型的ジャック・ブラック映画です。 時代の流れと共に街も変わっていき、愛した建物も取り壊される危機に直面する。 一時代を築いたVHSの時代が終わりを告げようとしている。 何かを守るために、誰かのために必死にがんばる。 少々ダサくもあるんですが、そんな男をコミカルに演じさせると他の誰にも無い、この人ならではの味があります。 そしてラストは感動させてもらえるとは思わなかった。 みんなで同じ映画を見る、その表情が実にいい。 気が付けば、周りには人が一杯。同じ空間で同じ映画を見て一緒に笑ったり感動したり。 映画館で映画を見ることの素晴らしさを感じずにいられない、映画愛にあふれたラストシーンでした。 [DVD(字幕)] 8点(2014-08-08 22:11:09) |
5. 暴走特急 シベリアン・エクスプレス
《ネタバレ》 邦題に偽りありというか、どこかで見たような感じのB級臭漂うタイトルが付けられていますが、なかなか迫力があり、見応えのあるサスペンスでした。 シベリア特急に乗りこんだ善良なアメリカ人夫婦。楽しい旅行になるはずが…。乗りこんでいきなり車掌にロシア語でキレまくられるところから、異国にポツンと紛れ込んでしまったようなアウェー感があり、どこまでも続く雪景色と少し暗めで寒々しさを感じる映像も得体の知れない不安感を掻き立てます。 このような夫婦が旅先で事件や陰謀に巻き込まれるというサスペンスの場合、夫婦が善良であるほどいいと思う。本作のご主人の全く危機感の無い能天気なキャラはそういう面では良かったと思います。残念だったのは、奥さんに大きな罪を犯させてしまったこと。その為に、最後は一応丸く納まっても釈然としないものが残ってしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-02-01 00:57:04) |
6. ホワイト・ライズ
《ネタバレ》 フランス製恋愛サスペンスの傑作のハリウッド・リメイク。ストーリー、シチュエーションから台詞・小道具に至るまで、オリジナルに沿ってかなり忠実にリメイクされています。時間軸と限られた登場人物を絡め合い、すれ違わせながら進むストーリーはかなり凝っているのですが、これもオリジナル通りです。 しかしキャストの方はオリジナルの圧勝だと思います。モニカ・ベルッチの美しさに、“2人目のリサ”を演じたロマーヌ・ボーランジェが素晴らしかったと思うので。元々ロマーヌが個人的に好きだったのもありますが・・・。 決定的にオリジナルと異なるのがラスト。オリジナルとリメイク、フランス映画らしさとアメリカ映画らしさが出ていますね。ハッピーエンド大好き人間の僕にとっては本作の方がいいと言いたいところですが、このミステリアスな恋愛サスペンスの結末としてはオリジナルの方が良かったと思います。何とも言えない鑑賞後の余韻も含めて。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-09-21 00:15:16) |
7. ホリデイ
《ネタバレ》 程よいベタさと温かみがある。時にはダサくもあるけど、それでいて洒落ている。ナンシー・マイヤーズらしい作品。イギリスパートもLAパートも好きです。 イギリスはサリー州の田舎の一軒家に突然夜中にジュード・ロウが訪ねてきちゃうのも映画らしくていいじゃないですか。キャメロンは相変わらず見ているだけで飽きないコミカルな可愛らしさがある。そこにジュードの子ども達が登場しますが、この辺もナンシー・マイヤーズらしいあたたかさを感じます。 LAは脚本家アーサーとの出会いの挿入もいいし、ジャック・ブラックも持ち味がよく出ていました。LAで出会った元脚本家と映画音楽を手掛ける男。それぞれが語る脚本と映画音楽談義も、チラッとダスティン・ホフマンが登場するユーモアも、ナンシー・マイヤーズの映画愛をあざとくなりすぎず、少~しずつ披露してくれているようでとても楽しかったです。特に終盤の元脚本家アーサーを囲む会は、ナンシーのハリウッドの歴史と先人達への敬意が感じられるようでした。 本作の2つのラブコメの4人が顔を揃えるラストも、クリスマス映画らしい幸せに満ちていました。こういう映画は細かい事は気にせず登場人物が幸せになる様子を気分よく楽しめるのがいいですね。 [DVD(吹替)] 8点(2012-07-01 15:21:59)(良:3票) |
8. ぼくは怖くない
序盤はどこか「スタンド・バイ・ミー」を思い出す展開。冒頭から何度も登場する青空の下一面に広がる麦畑の風景も、10歳の少年ミケーレの汚れなき心も、綺麗な映画です。一方で描かれる大人の汚さ。しかし優しい笑顔のウラに隠された別の顔を持つ父、「大人になったらこの村を出て行きなさい」=「私達のようになってはいけない」とミケーレに教えながら、村のしがらみに縛られた母の姿には大人の悲しき一面も感じられます。子どもが持ち得る勇敢さ、純粋さと大人というよく見られるテーマを一風変わった切り口で描きながらも温かみのある作品となっています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-01-14 00:57:15) |
9. ボン・ヴォヤージュ
《ネタバレ》 ナチス進攻によるパリ陥落を背景に描かれる2つのドラマ。殺人犯と殺人犯に間違われた男、恋人と愛人とをユーモアを交えて見せるドラマと、「ある物」をナチスの手から守りイギリスへ脱出しなければならない老教授一行のシリアスなドラマ。この2つのドラマを登場人物が行き来する。事情は色々だし共感できる生き方ばかりでもないですが、共通するのは自由への脱出口を求める人々のドラマということでしょうか。作品としては2つのドラマを行ったり来たりで忙しすぎる気がするけど、ナチスの抑圧の時代を生きる様々な人間模様を重くならずに2時間以内によく纏めた作品だと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-09-01 23:40:19) |
10. 微笑みに出逢う街角
ソフィア・ローレンの100本目の出演作と言う事で話題になった作品。監督はエドアルド・ポンティ。名前からも分かりますが、イタリア映画界の超大物カルロ・ポンティとソフィア夫妻の息子さんです。100本目に息子の初監督作を選んだソフィアにとっても、監督デビュー作で母の区切りの作品を監督した息子にとっても記念の作品。それだけに年は取りましたがソフィアがとても綺麗な作品です。 同じ町で暮らしているが全く重なり合う事の無い3人の女性それぞれが抱える心の闇と、それでも立ち上がり新たな人生のスタートをきるまでを3人のストーリーを平行して淡々と見せていきますが、散漫にならず3つのストーリーを巧く切り替えながら3人の心の声が確かに伝わってくる作品でした。その中でもやはりソフィアの存在感が際立っています。 ソフィアの夫役など3人の周りにいる男たちにも名優を揃え、その中にはドパルデューまでが登場するのですが、せっかくドパルデューまでキャスティングした割には扱い方がちょっと勿体無かったか。ただ、重さのある作品の中で彼の登場シーンにはほっとさせられました。 ラストはようやく顔を揃えた3人が笑い合う。3人の問題はまだ全く解決していませんが、人生の新たな一歩を踏み出した3人の笑い声に希望が感じられるラストでした。この息子さん、この後も映画を撮っているんでしょうか?もしあれば他の作品もぜひ見てみたいと思える作品でした。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-24 15:47:13) |
11. ボローニャの夕暮れ
《ネタバレ》 会社からすぐ近くのミニシアターの本作のポスターがとてもいい感じだった。夫婦と一人娘、見るからに幸せそうなセピア色の家族写真。幸せなイタリアの家族の物語か、と思っていたらかなりシビアな話でした。 戦争中から戦後に渡るこの家族の崩壊と再生の物語。ひたすら娘を溺愛する父。娘を心配するあまり行き過ぎた行動を取ってしまう。また、ある事件まで表面化する事は無かったが潜在的に存在していた娘と母の確執。いや、娘が母に抱くコンプレックスか。 何があっても常に娘のそばに居ようとする父と娘の心の触れ合いはよく分かるのですが、二人の心の間に解決しなければならない問題があった母と娘は結局戦後に再会するまで全く触れ合いが無かった。 そして最後はこの家族が再び新たなスタートをきったという娘の語りで映画は終わりますが、母と娘、更には夫婦間の関係修復への過程、心の軌跡が描かれておらず、原題「ジョヴァンナのパパ」の通り父と娘の物語として見ればいいのかもしれませんが、家族の崩壊と再生の物語としては物足りなさを感じました。 [映画館(字幕)] 5点(2010-07-18 12:38:48) |
12. ボビー
《ネタバレ》 いわゆるグランドホテル方式でRFK暗殺の舞台となったアンバサダーホテルに集う様々な人間模様を描くことでベトナム戦争、東西冷戦、キング牧師暗殺、増加するヒスパニック系移民や人種問題など当時の世界とアメリカを浮き彫りにしつつ、RFKの実像は敢えて描かず彼がいかに当時のアメリカ市民の希望であり、その死がいかに彼らにとって悲劇であったかを描き出す構成はお見事でした。 JFK亡き後大統領選挙に立ち上がるRFKの実像とたたかいを描いた人間ドラマだと思っていたので肩透かしをくった感もありましたが、これはこれで見ごたえ感たっぷりの豪華キャストの使い方もRFK登場の場面は当時の実際の映像を挿入する構成などもよく出来ており、監督がエミリオ・エステベスだと知って驚きましたが、彼の監督としての次回作にも期待したくなる映画でした。 [DVD(字幕)] 7点(2010-05-21 21:33:17) |
13. 僕のピアノコンチェルト
《ネタバレ》 この作品は主人公の少年の何をやっても完璧の天才ぶりをどう思うかで楽しめるかどうかも変わってくるのかもしれません。そんな天才少年の苦悩と普通でいいという思い。一見生意気で子供らしさを感じさせない少年ですが、唯一本音で何でも話ができる祖父にだけは素顔の少年らしい一面を見せる。そんな彼が愛したおじいちゃんを演じたのはブルーノ・ガンツ。本作を観る前に僕が見たブルーノ・ガンツの主演作では彼は独裁者ヒトラーになりきっていた。田舎のほのぼのおじいちゃんと独裁者。あまりにもかけ離れたキャラクターですがどちらも素晴らしい演技で見事なまでにはまっていました。名優ガンツ、流石です。 [DVD(字幕)] 6点(2009-12-20 18:27:02) |
14. ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!
《ネタバレ》 僕は典型的なおバカコメディが好きだ。それを期待して本作を観ようと思った。現にDVDのパッケージからも十分すぎるほどおバカコメディのオーラが出ているではないか。しかし、その期待は裏切られた。いい方に。勿論コメディとしても十分楽しませてもらった。序盤は、のどかな田舎町でのニコラスのあまりにも場違いなスーパーポリスぶりが可笑しい。作品全体を見ても、一つ一つの細かいシーンを見てもメリハリがあり実に丁寧に綿密に作りこまれています。そんなのどかな村に大事件が発生。作品は一転してミステリー・サスペンスの様相を呈してくる。さらに終盤のハチャメチャな展開とスーパーポリスメンぶりが痛快だ。そんな村の様子は「こんな状況ありえないだろ!」という状態になるのですが、そんなツッコミを入れる気も起こらないほどのパワーと痛快さに満ちている。この怒涛の流れの中、所々に見せてくれるアホらしさも楽しい。このスーパーポリスとコンビを組む典型的ダメポリスの間に共感が芽生え、実にいい相棒になり、友情に発展していく過程の見せ方も素晴らしく、まさにホットなスーパーポリスの熱い正義感と人間味にあふれ、これは1つの作品で2度、3度おいしい映画。オススメです! [DVD(字幕)] 8点(2009-07-30 22:28:34) |
15. ホルテンさんのはじめての冒険
《ネタバレ》 観る前には定年を迎えた鉄道マンのおじさんが定年を機に気ままな冒険の旅に出る、みたいな展開を予想していたのですが、かなり予想とは違う展開でした。ホルテンさんは1人暮らしのようでしたが、これまでのホルテンさんの人生の説明が少し欲しかったと感じました。凍てつく冬のオスロの街で定年を迎えたホルテンさんが色々な人生、色々な老後と出会う。僕はまだ定年や老後の事を真剣に考えた事は無いですが、いつかはこういう時がやって来るんだなあ、と考えさせられました。さすがは北欧ノルウェー。スキーのジャンプが人々にとってこんなにも身近な存在なんですね。あの犬を連れて、あの人のもとを訪れる分かりやすいラストにはほっとした気持ちになりました。 [映画館(字幕)] 5点(2009-04-06 20:15:45) |
16. 僕はラジオ
《ネタバレ》 アメリカのとある町のハイスクールで実際にあった、とてもいい話。キューバ・グッディングJr.の素晴らしい演技が作品全体をほのぼのとした雰囲気にしてくれていました。彼が演じるラジオとエド・ハリス演じるコーチとの関係も微笑ましく、更にラジオの優しいお母さんもとても印象に残りました。こんな、いい話系の実話モノに弱いんですよね。ラジオのような若者にも居場所がある、そんな社会であってほしいですね。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-02 01:35:55) |
17. ホテル・ルワンダ
《ネタバレ》 恥ずかしいのですが、この作品に出会うまでルワンダという国の事も、この国で実際にあった悲劇も全く知りませんでした。非常に重い作品で、何度も見たいと思う映画ではないですが、日本ではあまり知られていないこの作品を多くの人に見てもらえる機会がもっと増えて欲しいと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-15 21:05:27) |
18. 法王の銀行家
《ネタバレ》 実際に起こったあるイタリアの銀行頭取と彼の死をめぐる国際的な金融スキャンダルの解明に挑んだミステリーです。バチカンの知られざる暗部にメスを入れようとした問題作と言ってもいいでしょう。バチカンの宗教界、イタリア、そして世界の政治、金融界が絡んだ大変見ごたえのある作品でした。オメロ・アントヌッティ、ジャンカルロ・ジャンニーニ、ルトガー・ハウアーらの重厚な演技も見ごたえたっぷり。私も全く無名なのがとても惜しい作品だと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2008-12-16 23:57:14) |
19. 星降る夜のリストランテ
イタリアのとある街の小さなレストラン。客は10組程度だったでしょうか。作品はレストランを出る事はなく、一つ一つのテーブルと従業員の会話を丁寧に拾っていく群像劇。 よって作品全体のストーリーは特に存在しませんが、テーブルの数だけ存在する人間模様とドラマに実にいい味わいがあります。 ファニー・アルダン演じる店の女主人、常連客のヴィットリオ・ガスマン(素敵ですねえ・・・こんな風に1人で食事を楽しめる余裕がいいですね)、不倫カップルの大学教授と学生のジャンカルロ・ジャンニーニとマリー・ジランをはじめ、ビッグネームから名前も知らない俳優まで様々な顔触れですが、さもありなんと思えるキャスティングもいい。各テーブルのドラマのバランスもよく考えられています。 この平均点の通り万人受けする作品ではないのかも知れませんが、エットーレ・スコラの映画職人ぶりが随所に発揮されている佳作。やがて楽しい夜にも終わりが訪れ、閉店の時間となる。お客さんが満足そうに店を後にする姿がとても印象的でした。 [映画館(字幕)] 7点(2008-11-20 18:55:25) |