1. ボディ・スナッチャー/恐怖の街
《ネタバレ》 「周囲の人間が違うものと入れ替わっている」という侵略SFの元祖でしょうか。日常に根を下ろしたSFという点では、眉村卓や光瀬龍などの学園ジュブナイルにも影響を与えているように思えます。元祖なので話の展開もオーソドックスですが、そのためか安定感があります。最後がちょっと弱いのですが、これも時代的に致し方ないところでしょうか。 共産主義批判というのも、時代がうかがえて興味深いです。ただ、ナントカ主義を離れても、「顔は知っているが何を考えているのかわからない」ということを考えれば、現代的な側面も持っていると思います。そういうところをSFではなく現実的に描くと、『サイコ』のような話になるのでしょう。何度もリメイクされているのも納得です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-05 19:45:57) |
2. 炎の人ゴッホ
《ネタバレ》 正直美術にはほとんど関心がないので、ゴッホについても「こういう人だったのか」と思いながら見ていました。エピソードはまあよかったと思いますが、序盤の宗教と美術との関連があるのかないのか、そのあたりをもう少し突っ込んで見てみたかったです。ゴーギャンも登場しますが、むしろ弟テオとの情愛の物語が中心のようで、そこはよく描けていたと思います。しかし、希望が持てるような雰囲気だったのになぜ自殺したのか、正直よくわからず不可解な気持ちになりました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-19 21:04:37) |
3. 炎のごとく(1981)
加藤泰監督、最後の劇場公開作品だそうです。会津小鉄会の始祖が主人公ですが、渡世の義理より女が大事というのが面白い。時代に翻弄されながらも我が道を行く仙吉が小気味いい。前半の倍賞美津子、後半のきたむらあきこと、ヒロインも魅力的です。菅原文太はとにかく怒鳴っているような印象で、普通ならあまり評価できないのですが、これは作品自体が熱に浮かされたようなところがあって(幕末が舞台のせいか)、そこにあって浮かずにうまくはまり込んでいるところは、監督の計算でしょうか。音楽がテレビドラマ風で安っぽいところが残念。2部に別れているのですが、それぞれが75分程度で、テレビなら90分枠で収まりそうです。もともとテレビドラマとして企画されたというのは考えにくいのですが、主人公を考えるとなきにしもあらずか? 構成は雑然としたところがあって粗いのですが、先に書いたような熱いところがあり、力業ではあっても捨てがたい魅力がありました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-04-17 10:59:11) |
4. 星空の用心棒
《ネタバレ》 日本のデータでは100分程度なのですが(90分版もある)、今回見たのは120分を越えるもの。しかし全体として冗長で、「これはいらないんじゃないか」と思う部分もあります。カットされたのは正解かも。 話としては復讐譚で、血で血を洗う展開は殺伐としていますが、妙にユーモラスなところもあり、それがしっくり来ないように思いました。悪役が多めでそのため途中でどんどんやられていくのですが、それが冗長な理由の1つのようです。もう少し最後までためてほしかったのですが、最後もけっこう雑魚が多く、やっぱり悪役多すぎに思われます。女性2人の扱いはよかったです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-01-08 19:34:26) |
5. ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声
《ネタバレ》 音楽映画としては悪くないですし、示唆に富む箇所もいくつかありました。が、少年と老人の成長物語としては、かなり物足りない。もっぱら話の筋を追うだけで、人物の心の移り変わりが十分には描かれていないと思います。たとえば主人公のステットくんは、はたして音楽を好きで歌っていたのか、合唱することに喜びを見いだしたのか、はっきり言って最後まで判然としません。これでは最後まで見てきた意味があるのかと思えてしまいます。このステットくん、優等生ではないがすれっからしのワルでもないという、なんとも中途半端な設定。まあ主人公なのであまり悪くはできないということなのでしょうが、この中途半端さが作品全体に漂っていたように感じられます。ただ、子どもが音楽に目覚めてうまくなってよかったというだけでなく、大人の事情もいろいろと描いていたところは評価できます。それも見方を変えれば中途半端ということになるのかもしれませんが。 [映画館(字幕)] 6点(2015-09-21 22:11:06) |
6. 暴力脱獄
《ネタバレ》 日本の伝統的な文化が仏教と切り離せないように、欧米の文化の根底にはキリスト教があります。当然映画にもそれが反映されることが多いのですが、宗教的な要素がはっきり示された方が、むしろわかりやすいことがままあると思います。本作のように暗喩にとどめたやり方では、かなりわかりづらくなってしまいます。ということで、どうもピリッとしないという印象でした。 収容所ものとしては、ルークが次第に人気者になっていく前半が面白い。母親の死を知らされて脱走を繰り返すのは、生きる目的を見失ったのか、それとも収容所での生活が外よりも幸せだからなのか。いずれにせよ、後半はそれほど楽しめませんでしたし、“神”に語りかけるあたりも、抽象的で私の理解できる範囲ではありませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-03-02 20:03:08) |
7. ボッカチオ'70
《ネタバレ》 基本的に、この手の話ってあんまり好みじゃないんですよね。つまらないというわけではありませんが。 印象的だったのは2話・4話。2話はお堅い人たちを揶揄しているバカバカしい話かと思っていたのですが、看板のモデルとの妄想あたりから雰囲気が変わってきて、かえってつまらなくなってしまいました。ミニチュアセットはよくできていたと思います。4話がいちばん楽しめました。あの若い男は物語の展開上必要なのでしょうが、演じている俳優のためか、あまり魅力的に感じられません。ソフィア・ローレンがなびくぐらいだから、もっといい男でないとね。しかし、彼女の仕事仲間の奥さんやクジに当たっちゃう気の弱そうなおじさんなど、それ以外の人物はなかなか魅力的でした。 1本約50分程度ですから、1時間ドラマを一ヶ月分続けて見たような案配ですね。そのせいか、長さの割にはボリューム感とか重厚さとかを感じませんでした。そもそも題材がそういう種類のものだと思いますし。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-11-04 21:00:51) |
8. 冒険者たち(1967)
冒険者たち、っていうタイトルが泣かせる。一般的な「冒険」要素は少ないのですが、人生そのものに対する冒険のようなものがあって、もはや冒険ができないような年齢になった自分にとっては、かなり感じるところがありました。まあリノ・ヴァンチュラも、このとき50歳に近かったわけですが……。あとはやはり、ジョアンナ・シムカスのかわいらしさ、音楽の美しさにノックアウトされてしまいました。評判がいいので以前から見たかったのですが、もしかしたらいいタイミングで見ることができたかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-03-23 10:34:11) |
9. 慕情(1955)
《ネタバレ》 主題歌は音楽の教科書にも載っていて有名でしたが、映画の方はロマンスという以外あまりよく知りませんでした。まあラブストーリーとしてはこんなものでしょう。実話が元というのは初耳でした。 それよりも興味深かったのは、共産党の扱い。中国からは香港に逃れてくる人がたくさんいるし、スーインの妹は共産党に狙われないよう外国人と親しくなる。マークは朝鮮戦争の取材に行って亡くなり、はっきりとはしていませんが、北軍の攻撃が原因でしょう。つまり本作での社会主義・共産党というのは完全な悪役で、ほぼ全否定されています。ハリウッドでマッカーシズムが猛威を振るったのは1950年代前半のようですが、それと関係があるのでしょうか。もっとも、本作が公開された前年の1954年12月2日にマッカーシーは失脚することになり、反共産主義の映画としては時機を逸したと言えるかもしれません。 本作が主題歌以外あまり話題にならないのは、ラブストーリーとしてありきたりなだけでなく、政治的な問題もあるのではないかと思えました。 あと、中国難民の女の子に歌を歌わせたら、「フレール・ジャック」だったのには驚きました(しかも中国語の詞)。 [映画館(字幕)] 7点(2013-10-06 22:29:15) |
10. 望郷(1937)
《ネタバレ》 これは「世界名画劇場」以来で、けっこう忘れている部分がありました。全体的には、記憶にある通りの作品でしたが。ペペが元パリジャンらしく、おしゃれなところは新発見でした。内容的には人物のキャラクターが今ひとつで、物語が平板になっているのはそのあたりが原因でしょうか。もっと癖を持たせた方がよかったと思います。いかにもな悪党にせず、わりと普通の人たちに描いていたのは、狙ったのかもしれませんが。演出的にも面白いところはありましたが、全体としてはそれほどでも。最終的には、望郷の念というか自由に対するあこがれを捨てきれず逮捕されたペペですが、それと犯罪ものとギャビーへの恋慕がごたまぜになり、どれにも的を絞りきれなかったためか、散漫な印象を受けました。最後に自殺したのも「自由の身」になれないためかもしれませんが、そのあたりのペペの心情をもっと掘り下げたら、また変わってきたのではないかと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-06-12 20:02:50) |
11. 本日休診
《ネタバレ》 なかなか楽しい下町人情喜劇でした。驚くのはテンポの速さ。基本的にエピソードの羅列なのですが、テンポが速くて次から次へと進むので、それも気になりません。主要人物がお互い顔見知りで、いろいろと助け合っているところに時代が出ていますし、好感を持ちました。医者が主人公だとイヤでもヒューマニティな話になるわけですが、本作では三雲先生のセリフでそれをより強調しています。しかし当然ながら古さを感じさせるところもあり、特に最後の「家族がいるのが幸せだ」というのはたしかにそうでしょうが、近年のように高齢化が進み、認知症や介護の問題が大きくなってくると、必ずしも素直に肯けません。とはいえ、美しくもさわやかな幕切れは気に入りました。これも隠れた佳作でしょう。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-01-12 20:26:38) |
12. 鉄道員(ぽっぽや)(1999)
《ネタバレ》 やっぱりちょっと長いなぁという感じ。静かな雰囲気を出そうとしたのかもしれませんが、もう少しリズムよく運んでほしかった。だいたいにおいて、私は本作のような「不幸の叩き売り」話は嫌いなのですが、これはキャストで何とか見られるものになっていました。あざといお涙ちょうだいはこちらが白けるだけです。 それにしても、あの娘はいうならば死神だったのか。これだけが発見でした。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-09-15 18:17:35) |
13. 炎のランナー
《ネタバレ》 はっきり言って日本人向きではないでしょう。スポーツものとはいえ、「根性」の要素は薄く、もちろん練習の場面はありますが、あくまで一部でしかありません。肝心なのは、なぜ走るのか。ハロルドにとっては、ユダヤ人である自分をイギリス人として認めさせるためのもの。彼を取り巻くアイテムに、きわめてイギリス的なケンブリッジ大学やサヴォイ・オペラが配されているところがうまい。一方のエリックは、信仰表明として走る。あくまで神のために走るから、安息日には走れないというのがいいです。世俗の名誉を越えた大きなもののために走っているわけで、このあたりが現代日本人にはピンとこないところでしょうか。 オリンピック終了後の、2人の違いが本作のポイントでしょう。ハロルドの方にあまりたいしたものが残らなかったというのは、やはりキリスト教思想が根幹にあるヨーロッパの価値観が原因でしょうか。イギリスにおける異邦人の扱われ方、アマチュアリズムなど、いろいろと考察できそうです。とはいえ、私にとってはイギリス的な風景・雰囲気・音楽が堪能できただけでも嬉しい作です。 (レビュー400本目・ブルーレイ初鑑賞) [ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-08-30 20:35:09)(良:1票) |
14. ボー・ジェスト(1939)
《ネタバレ》 こりゃ面白い。ジャンルとしては一応冒険ものに分類されるのでしょうが、むしろミステリーとしての側面が強い。冒頭、いきなり不可解な事態が続出してこちらを引きつけ、ひとつの言葉を軸に過去へ戻る展開がうまい。そこでも宝石消失事件が起き、「誰が盗ったのか?」という興味でつなぎます。ここからは3兄弟が外人部隊に入って冒険色が強くなるのですが、軍曹とのやりとりなど見ていて飽きません。一応兄弟の絆も描かれていますが、味付け程度で基本的に娯楽作として作っているのがいいです。冒頭へとつながる終盤は目が釘づけになりますし、それで終わって無事帰宅したと思ったら、最後の最後に意外な真実が。ちゃんと伏線も利いているし(ボーはたしかに宝石を持っていなかった!)堪能させられました。傑作。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-06-16 22:11:13)(良:1票) |
15. 菩提樹
《ネタバレ》 どうしても『サウンド・オブ・ミュージック』と比較してしまいますが、こちらも遜色はありません。大佐が子供たちを笛で呼んだり、古いカーテンで服を作ったりするエピソードが共通していて、どこが実際の話だったのかがわかって興味深いです。後半で屋敷をホテルにしたり、オーストリア脱出の祭の執事の行動などが印象深い。しかしもっとも感動的だったのがラスト。アメリカで入国待ちをしている時、シューベルトの「菩提樹」を歌うと、みんながその声に引き寄せられて集まってくる。アメリカ人の係員もやって来る。まさに歌の力、音楽の力を実感させる名場面です。またその歌声がたいへん美しく、話の流れに説得力を与えています。ちなみに「菩提樹」の最後の節は、かつて菩提樹の元にいた頃を回想して、“今はあそこから遠く離れているが、菩提樹の「ここはお前の憩う場所だ」と言う声が聞こえる”という内容です。まさに、ふるさとを離れたトラップ一家のことをを歌っていると言えましょう。実に心憎い、みごとな選曲です。それを知ってか知らずか、邦題に採用したのもよかったです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-03-12 20:37:04) |
16. 砲艦サンパブロ
時代背景がよくわかっていないので、どの程度内容を理解できたのか自信がありません。もっと知識があれば、高得点をつけられたと思います。とりあえず骨太の人間ドラマであると感じました。それと、画が非常にきれい。特に自然の美しさが印象的で、絵画を見ているような気分になりました。これだけでも一見の価値はあります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-18 21:28:16) |
17. ホッタラケの島 遥と魔法の鏡
《ネタバレ》 うーん、テオとかコットンとか非人間のキャラクターはいいのですが、やはり人間はゲームの中の住人にしか見えません。特に遥パパは正直気持ち悪い。ホッタラケの島は、異世界としてはなかなか面白いと思います。しかし、存在意義とかそこに住んでいるキャラクターの由来とかがよくわからず、ひたすらストーリーだけを進めていったのは、よかったのかどうか。そういうものがないから、3人組にしろ男爵にしろ、単なる脇役・悪役で終わってしまっています。もっとふくらませたら、面白くなりそうですが。遥の鏡だけが特殊な存在だというのも、よくわかりませんし。そういうわけだから、終盤でテーマらしきものが提出されても特にどうという感興も湧かないわけです。アニメーションとしては、非常によく動いていてよろしいですが、ある意味動きすぎかも。なんか物語り・動き共に力業で強引に持っていった感じで、もっと緻密な仕上がりだとよかったと思います。それにしても、これが開局50周年記念ですか。フ~ム。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-08-18 19:54:15) |
18. ホルテンさんのはじめての冒険
言いたいことはわかるのですが、どうも淡々としすぎているような気が……。個々のエピソードは悪くないですが、「悪くない」止まりで積極的に評価しようという気にはなりません。やはりというか何というか、最後の爺ちゃんの話が印象的です。隕石の旅はまだ終わっていない……。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-17 19:34:36) |
19. ポセイドン・アドベンチャー(1972)
《ネタバレ》 意外と評価が高いようですが、私としてはそれほどでも。けっこうご都合主義的展開が目立ちました。主人公たちが調理場に登ったあと水が押し寄せるとか。クライマックスでのリンダの唐突な死とそれに続く蒸気なんか、見ていて白けました。それで「お前のせいでリンダは死んだんだ!」と言われ、牧師はなんと神様に責任転嫁。そりゃあ神様の御意志なら、どんなご都合主義でもありでしょうょ。話を盛り上げるためにあっさり殺されたリンダは実に不憫。サバイバルドラマとしてはまあよくできていますが、どうも力でねじ伏せようとするところがあって好きではありません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-03-01 19:41:12) |
20. ボルサリーノ
《ネタバレ》 ドロンとベルモンドを、ひたすらカッコよく見せる映画。その点では言うことありません。この個性派2人と対抗すべく、綺麗どころは4人も登場するのですが、どれも決め手に欠ける。あえて言うなら、最初から最後まで出ていたカトリーヌ・ルーヴェルが頭ひとつ出ているでしょうか。が、出てきて途中で殺されちゃう女の子もかなりインパクトがあります。とはいえ、結局主役2人の友情物語なので、全部持って行かれちゃってます。まあ、ベルモンドファンの私としては、とりあえず満足。後半の派手な抗争は好みでないので残念です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-02-09 19:48:02) |