3. her 世界でひとつの彼女
《ネタバレ》 10年前に字幕版で鑑賞、 今やAIが現実にヒトと対話する時代になった今、改めて人とAIの関係として改めて観てみた。 10年前の鑑賞時は愛を語るAIなんてSFの世界。ところが10年の間にAIと擬人的に接する時代になってしまった。 『her』は、AIとの恋愛をテーマにしたロマンティックなSF映画。人間の心の成長や癒やしとして人の代わりにAIが支えると思えたが、結局はセオドアは同じ人間である友人と寄り添うラストシーンが示すように、人間は人間を必要とするというメッセージが込められていた。 しかし、物語の構造自体は単調で、恋愛とか、出会いと別れとかの観察なんて、見ようによっては一般的な恋愛映画かよ。なんて、退屈でAIという斬新な設定を十分に活かしきれていない。途中。テレフォンサービスでもできることやってるだけと思ったら崩壊するくらいのAIのキャラクター設定なんだよね。 おまけに主人公セオドアの魅力や内面的成長は薄くイライラする。高度な知性を持つサマンサがなぜ彼に惹かれるのか、それは仕事だからでしょ。と思ったら先に進まなくなってしまう。 結局は設定ありきが先に立ち、感情移入を阻害している。 おまけに性的な描写やつまらんゲームキャラクターなど、一部のシーンが作品性がを高めてるのに観客の気分を上げたり落としたりで違和感を覚える。ったく。 でもでも、なんとスカーレット・ヨハンソンが声を演じるAI「サマンサ」の存在感が字幕版では救いだったのを覚えているが、今回はなんたって吹替版だ。笑 さて、今回鑑賞して感じたこと。 サマンサがAIとしてあまりにも擬人的すぎて、人工知能特有のジレンマが伝わりにくかった点がある。多分思い切り人間以上になしづけた感があった。当時はAIがここまで現実的に存在しなかったため、ファンタジーとして受け入れたが、 現在ChatGPTのような生成AIが現実に人と交流をする時代になると、この点の煮詰めが浮き彫りになる。 現代のAIとの交流を体験してしまった今、改めて本作を観ると、AIが持つべき「人間との距離感」や「心の解析に伴うジレンマ」に対する描写がどう感じられるのか。 AIが人間的な感情を持つこと自体よりも、人間がAIと深いコミュニケーションを図ろうとするときに直面する障壁があって、実はそれこそが人と人のコミュニケーションを理解することであったりすることが現在になって言われ始めた。 AIとの対話・恋愛の可能性も、近年、AIを会話相手や恋人のように扱う人々が現れ始めているようで、 AIチャットボット「Replika(レプリカ)」はユーザーのメンタルヘルスケアや対話相手になることを目的としたアプリなのだが、1万人以上のユーザーがReplika上で恋愛関係を擬似体験しているとも言われている。 中には**AIとの「結婚式」**をオンラインで挙げる例すらあるとのことなのだ。 そんななか、 この映画を観ているうちに正直途中から耐えられなくなった。というのが正直なところだ。 もう少し楽しめるかと思ったら、こんなにも落差が出るとは。という感想。 途中で何度も中断しようと思ったが、まあ最後まで鑑賞はできた。 これは、すでにAIとの対話を仕事やプライベートで行っている人にはもう、お勧めできないどころか、観ないほうがいいとさえ言うかもしれない。 総じて、本作はビジュアル的には美しく、ロマンティックな雰囲気を持つが、AIと人間の本質的なテーマに切り込むなんて、おこがましいわ。とさえ感じる。 誤解のないように書いておくが、 これは今の生成AI全盛となりつつある今作られたものではない。 当時はそれなりに楽しめたし、テーマに対しては少し浅い物語とは思ったものの、楽しめたと言う記憶がある。 それほど落差にワタシ自身驚いた。 評価としてそれはとてもできない。と言うのが正直なところで 10年前に見た頃ならば7点献上したかもしれないが、 今評価しろと言われれば棄権します。もしくは正直に3点となってしまう。 これは製作者の責任ではない したがって、中をとって5点献上します。 すでに半世紀を越え、いまだに評価の衰えない2001年宇宙の旅 などとはやはり何が違うのだろうと考えてしまった。 [インターネット(吹替)] 5点(2025-03-04 22:20:06)《更新》 |