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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2597
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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181.  魔法にかけられて
劇場で予告編を観た時から、これはただのディズニー映画ではないし、ただのパロディー映画でもないなという直感はあった。  「メルヘンなおとぎ話」+「現実のNYでの恋人模様」=「今まで見たことのないラブコメ」という構図が、とても面白く、巧い。  もっと安直なアニメと実写映画のコラボレーションを想像していた。 しかし、物語は、メルヘンの世界から現実世界へ送り込まれたプリンセスの揺れ動く絶妙な心理描写と、理路整然と現実世界で生きるシングルファーザーの心理変化までを、とても丁寧に描き出している。  メルヘン世界に対する現実世界の厳しさや哀しさを描き出しつつ、常にファンタジー性やファニー感を保ち、最後には登場するキャラクターも観客も、すべてを“ハッピー”にさせてしまうストーリー展開に、ディズニー映画の強さとプライドを感じた。   現実世界の人生は、当然おとぎ話ではないから、嬉しい時、悲しい時に歌って踊ってなんていられない。 でも、だからこそ歌って踊ってみれば、人生は大きく変わるかもしれない。  ディズニーが真剣にディズニー映画のパロディーに挑んだ意味と答えは、そういうことなのではないかと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2009-03-25 15:42:54)(良:2票)
182.  ベンジャミン・バトン/数奇な人生
人生は、いつ終わるか誰にも分からず、故に果てしないからこそ、希望に溢れ、素晴らしいのだと思う。 老いた状態で生まれ落ち、次第に若返っていくという男の数奇な人生は、同時に明確な“終わり”を常に意識し、感じ続けなければならない過酷過ぎる人生だったと思う。  その過酷さが、イコール悲劇では決してないのだけれど、彼が携えるどこまでいっても拭いきれない「悲哀」に胸が詰まり、その彼を愛した女の人生に涙腺が緩んだ。  とても長い映画ではあるが、その尺の長さは、主人公の人生を生い立ちから描く上で必要なもので、終盤になるほど序盤の一つ一つの描写がとても効果的に効いてくる。 ついには、映画の終わりと共に、主人公の人生が潰えてしまうという必然すらも、悲しくなってくる。  皺だらけの老人から、どんどん若返り美しくなっていくブラッド・ピットの様は、ファンの女性にはたまらなかっただろうし、演技の質もとても高かった。 ただ個人的にもっとインパクトが大きかったのは、ケイト・ブランシェットの女優としての美しさと巧さ。 可憐な10代の少女を演じたかと思えば、死を間近にする老婆に転じる。圧倒的なその“女優力”は、もはや「現役最高女優」と言って過言でないだろう。  この映画は、決して短絡的に、面白かった、悲しかった、楽しかったとは言えない。 様々な感情が常に混ざり合って展開し、誰にも平等に存在する「死」へと向かっていく映画だ。 それは、決して悲劇的な意味ではなくて、その揺るがない部分こそ人生の面白さであり、素晴らしさであろう。 そういうことを、とても奇妙な一生を送った男と、その男を愛した女の「人生」の中で、ユニークに、しっかりと描いた作品だと思う。 
[映画館(字幕)] 8点(2009-02-11 23:13:37)(良:2票)
183.  12人の怒れる男(2007) 《ネタバレ》 
まず最初に言っておきたいことは、この作品は、1957年のアメリカ映画の名作「十二人の怒れる男」のリメイクであり、しかし同時に、ロシア映画としてのオリジナルであるということだ。  それは、同じ「素材」を元に映画を作ったとしても、制作される“国”と“時代”が違えば、これほどまでに“異質”な映画となるということを、雄弁に物語る。  安易に評決が出ると思われた或る殺人事件。陪審員として集められた名も無い12人の男たち。それぞれが個性的な人格と、思想を持ち、審理は思わぬ方向へ混沌としていく。 その様自体は、オリジナルに即したものであるが、集められた12人が、あらゆる民族の集合体である現代の“ロシア人”であることで、オリジナルにはない別のタイプの深みへと突き進んでいき、とても興味深かった。  特に関心が引かれたことは、あまり馴染みの無い“ロシア人”自体の気質だった。 基本的には感情を押し殺し、突如として感情を爆発させる様は、ロシアという国に生きる人間の本質的なプライドと、ある意味での“危うさ”を感じた。  僕自身が、もう少し現代のロシア事情に精通していれば、それぞれの独白のエピソードに対しもっと真実味を感じることができただろうと思う。  そのロシアという国の社会性と国民性を全面に押し出したからこそ、辿り着く結末には、オリジナルを観ていたからこ味わえる良い意味での裏切りがあった。  単純に1957年のアメリカ映画に対する面白さを比較するのではなく、現代のロシア社会を描いた一つのオリジナル作品として、堪能するべき上質の映画だ。 
[DVD(字幕)] 8点(2009-02-07 10:00:29)
184.  フローズン・タイム
失恋による傷心から不眠生活が続く青年。そんな彼が、深夜バイトをしながらふと手に入れた能力は、「時間を止める」というものだった。  いわゆるミニシアター系の作品なので、卓越したストーリーでぐいぐい見せるというよりは、美しい映像と雰囲気で見せる映画である。 こういう映画は元来嫌いではない。  フォトグラファー出身の監督らしく、一つ一つのカットがとてつもなく美しい。 時間が止まっているシーンよりも、他の何気ないシーンのそれぞれがとてもアーティスティックで、惹き付けられた。  最も興味深かったのは、主人公が新たに恋に落ちる相手の女性が、主人公の気持ちの深まりと共に、どんどん魅力的になっていく様だ。 まさに主人公の想いと同じように、観ている者の想いも深まっていく。  ある意味、非常にナイーヴでウジウジとした「男の子」映画なので、女性にはあまり勧められないかもしれない。(作中の小ネタなども、いかにも“男子”が喜びそうなネタが多い)  しかし、誰しも「眠れぬ夜」を過ごした経験はあるはず。 眠れない夜の主観的な感覚を、「時間が止まる」ということで表現したアイデアは、映画的にとても良いと思う。 
[DVD(字幕)] 8点(2008-12-27 08:06:30)(良:1票)
185.  潜水服は蝶の夢を見る
この映画を観ていてふいに、「美しい」と思った。 描かれる物語は「現実」であって、決して綺麗ごとだけでは済まされない内容なのだけれど、それでもやはり「美しい」と思った。  人生を謳歌する最中、突然あらゆるものからシャットアウトされてしった苦悩。 古めかしい潜水服を着せられ、海中深くに沈み込んでいくような閉ざされた世界の中で、それでも生きていこうとする人間の根本的な強さに、心を掴まれる。  左目の瞬きだけで意志を伝え、本を書き上げるという途方も無い営みの中で、彼が見出したものこそ、「人生」の美しさの本質なのだと思う。  とにかく映し出される「光」が美しい。 その光の美しさが、悲しみを和らげ、幸福感へと昇華させる。  映画というものは、あらゆる意味で「光」だと思う。 今作のような美しい「光」を見せる作品こそ、映画のあるべき姿なのだと思う。 世界は見えている以上に美しいということを、ビジュアルのそれ以上に伝える映画だ。
[DVD(字幕)] 8点(2008-12-23 23:35:10)(良:1票)
186.  ハッピーフライト(2008)
この映画を10年前に観ていたなら、航空業界への就職を目指していたかもしれない。  国際線の機上と大空港の各部署で、それぞれに巻き起こるドラマ。 同監督の「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」のようなコメディ路線を想像していたけど、意外にもそれぞれのステージを丁寧に描いた小気味良い群像劇に仕上がっており、想像以上に感情がはまり込む映画だった。  主演の田辺誠一や綾瀬はるかが登場するシーンよりも、その他の登場人物たちのシーンに、より面白味があったことが映画の質の高さを物語っていると思う。 各部署における、それぞれの“シゴト”に対するプライドと真摯さがあってはじめて、一機の飛行機が飛ぶという群像の一体感が、この作品の最大の魅力だろう。  主要キャストから脇役まで、思わずほくそ笑んでしまう”何気に豪華”なキャスティングは、群像劇の精度を殊更に高めている。 “空の旅”にまつわる様々なハプニングとプロフェッショナルを、それぞれのキャストが愛着をもって演じることで、各シーンが愛すべき光を放っていると思う。  過剰なコメディ演出は控えた、ほどよい笑い、ほどよい緊張、ほどよい感動。 そこから紡ぎ出されたものは、まさに“ハッピー”なフライトだった。 
[映画館(邦画)] 8点(2008-12-02 00:29:10)(良:4票)
187.  ペルセポリス
混沌のイラン。自由なき国で自由を求め、健気に懸命に生きていく少女の青春時代を味わい深いアニメーションで描き出した独特な映画だった。  イランという国の包み隠さぬ“実情”を知る日本人なんて、ほんとはほとんどいない。 報道などで伝えられる情報など、ほんの一側面でしかなく、それでその国のことを知ったつもりになることは、とても愚かで、危険なことだと思う。 作品中で、主人公の叔父さんが言うように、大切なことはとにもかくにも「知ること」だ。  そういう意味で、一人の少女のまさに等身大の目線で描き出された本作は、とても興味深く、映画として魅力的だった。  独裁的な政権の下、あらゆることを抑制され、あるべきはずの「自由」はそこに存在しない。 しかし、生きる環境がどんなものであれ、少女はひたすらに青春を謳歌し、一人の女性としてあるべき人生をどこまでも追い求める。  混沌の社会環境にあるからではなく、世界中の国で有り得る普遍的な少女の姿そのものに純粋に感動する。
[DVD(字幕)] 8点(2008-10-25 23:47:42)
188.  イーグル・アイ
何やら意味深な予告編だけでは、今ひとつストーリーのテイストが分からなかった本作だった。 が、観て納得。これは予備知識を入れずにフラットな状態で観るほど楽しめる映画だと思う。  そういうわけで、ストーリーの詳細は避けたいと思うが、言うなれば物語の本質は異なるが、超現代版「北北西に進路を取れ」的な印象を受けた。  とても面白かったと思う。  このところ大作映画への出演が続いているシャイア・ラブーフのパフォーマンスを初めて観たが、良い意味でスター性が薄い存在感が、エンターテイメント大作においてバランス良いのだと思う。スピルバーグが好んで起用している理由が分かる気がする。  個人的には、ビリー・ボブ・ソーントンの演技を久しぶりに見られたのも嬉しかった。テロに対して信念を持って対峙するFBI捜査官を、相変わらずの曲っ気たっぷりに演じてみせている。  下手をすればもっとコケている作品なのかもしれないという危惧もあっただけに、高いアクション性と、終始緊迫感溢れる展開に満足度は殊更に高い。
[映画館(字幕)] 8点(2008-10-18 12:58:24)(良:1票)
189.  容疑者Xの献身
この映画は、「容疑者Xの献身」というベストセラー小説の映画化に対し、「どうすれば面白い映画になるか」、そして「どすれば売れる映画になるか」ということを、真剣に考えた製作サイドの完璧な“企画勝ち”だと思う。  原作でそうであるように、この物語の主人公は、「容疑者X」こと石神哲哉である。 しかし、「X」というワードが示す通り、この主人公は終始「謎」を秘めなければならない。 その文体であるからこそ表現できている微妙な立ち位置の主人公を、映像化する上でもそのまま表現できるかというと、それはとても困難なことだ。出来ないことはないだろうが、高い確率で、文体で表現する以上にナイーブで地味な作品になってしまったと思う。  そこでまず必要だったのが、原作でももちろん登場する“探偵ガリレオ”こと湯川学が、映画作品では、魅力的な主人公であるという「前提」だったのだと思う。  その「前提」を作るために、ドラマシリーズ「ガリレオ」を展開させ、福山雅治演じる湯川学、そして柴咲コウ演じる内海薫の主演コンビのキャラクター性に対する強い印象を観客に植え付けておいたわけだ。 そして、その主演コンビを言わば「狂言回し」として存在させ、「真実=X」を追い求める役割を与えることで、真の主役である「容疑者X」の立ち位置を確立させている。 つまりは、いわゆる「月9」で大ヒットしたドラマシリーズ自体が、この映画のための豪華な「伏線」であったのだと思う。  「容疑者X」という陰の主人公に、陽の主演コンビが花を添えるというなんとも奇妙ではあるが、絶妙な配役のバランスが、この作品を殊更に「面白く」していると思う。  売れた小説や、漫画の映像化は、もはや「常識」となりつつある。 そのこと自体に異論は無いが、大切なことは、「映像化する意味」を確実に持たせることだと思う。 今作の場合、堤真一が容疑者Xを演じることにより、よりリアルな形でその人間性を感じることができ、ある部分においては文体以上に「感動」を与えることが出来ていると思う。 そして、ガリレオ役の福山雅治と対峙することにより、ビジュアルの異質さと、白熱する頭脳性が絶妙に混じり合い、映画世界ならではの塩梅を得られていたと思う。  「実に面白い!」……思わずそう言いたくなった。
[映画館(邦画)] 8点(2008-10-11 00:56:17)(良:2票)
190.  スルース(2007) 《ネタバレ》 
尊大な作家と作家の妻の愛人、奇妙な大邸宅内で繰り広げられる男と男の“淫靡”な闘い。  この奇抜な会話劇を織りなす上で、ジュード・ロウ×マイケル・ケインという二人の英国俳優は、それぞれに妖しさと美しさを秘めていてこれ以上ないほど適役だったと思う。  ケネス・ブラナー監督らしい「文体」を意識した映像世界の演出も冴え渡り、会話が頭に流れ込むように展開され、登場人物らの攻防を同じ部屋で目の当たりにしているような感覚を覚えた。  二人の男が発するそれぞれの言動に対し、何が真意なのか、何が虚偽なのか、というまとわりつく“靄”のような雰囲気に終始やきもきしながら、たっぷりに余韻を残すその映画世界を存分に楽しめた。  久しぶりに、ジュード・ロウの変質的な演技を見れたことも満足。
[DVD(字幕)] 8点(2008-09-27 09:57:23)
191.  ウォンテッド(2008)
この映画は、 「弾丸と弾丸がぶつかって弾けるまでの弾道を追った映像が見たい」だとか、 「弾道を自在に操って芸術的な曲線を描かせたい」とか、 そういうビジュアルに対する妄想を「実現」させようというコンセプトのみで作られた映画で、それ以上のものもなければ、それ以下のものもない。  詰まりは、コレはコレできっぱり「完成」していると言える映画だ。と、思う。  「映画」が、音と光で構築されている以上、確実な目論見をもってして作り込まれた映像世界前にしたならば、少々ストーリーがチープであろうが、整合性に欠けていようが、それはそれとして評価しなければならないと思うのだ。  すなわち、存在そのものがマンガ的に妖艶なアンジェリーナ・ジョリーが、訳も分からない主人公を強引に引き連れて、大暴走を繰り広げる冒頭の時点で、この映画の価値は確定している。  どうも回りくどくなってしまったけど、要するに「こういう映画は、嫌いじゃないよ」ということ。
[映画館(字幕)] 8点(2008-09-23 01:01:02)(良:1票)
192.  アフタースクール
前作「運命じゃない人」で、衝撃のスパイラルムービーを見せつけた内田けんじ監督の最新作。またもや、人の思惑と思惑がストーリーの“裏側”で入り交じる展開が見事だった。  何も考えていなさそうなやつが、実は秘めている企みの妙。確信犯的なストーリー以上に、人間が常に秘めている表には出さない感情と真相に、面白味を感じた。 今作では、大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人と、それぞれに味わいを持った性格俳優がメインを張っていることも、「人間の深層(真相)」という部分で、深みを持たせる要因となっている。  日本には今、エンターテイメント映画のジャンルで、良作を連発できる映画監督は少ない。 肯定的な意味で、“同じような映画”を連発する監督が少ないのだと思う。 内田けんじ監督には、今後も、積極的に観客を騙し続ける映画を量産していってほしいものだ。
[映画館(邦画)] 8点(2008-07-13 12:04:45)(良:1票)
193.  JUNO/ジュノ
16歳で妊娠をしてしまった少女の等身大の姿が、いろいろな意味でとてもナチュラルに描かれた映画だった。  少女のある種とても生々しい感情や葛藤をダイレクトに描きつつ、映画としての核心は、少女を含め「妊娠」という現実に直面した周囲の人々の“不完全さ”を、時に辛辣に、時にあたたかく表現している。  結局、大人になりきれないのは、十代の少年少女たちだけではなく、「大人」そのものも、同じように未成熟であって、だからこそ幸福に結びつく事もたくさんあるということが、この映画の真意ではないかなと思った。  この映画の中で描かれるすべてのことが正しいなんて思わないけど、人間なんてものは、ああやって間違ったり、悩んだり、泣いたりしながら、少しずつ成長して、生きていくものだと思う。  目新しい奥深さはないけれど、展開されるストーリー以上に、物語るものは大きい映画だ。
[映画館(字幕)] 8点(2008-06-14 18:20:22)
194.  マイ・ブルーベリー・ナイツ
「2046」以来、久方ぶりにウォン・カーウァイの映画を観た。この映画監督の味わいを思い出すと共に、自分が彼の作品を大好きだったことを思い出した。  ストーリーに深みがあるわけではないが、映画自体が薄っぺらいわけではない。 それは、登場するキャラクターの息づかいと振る舞いを、独特の映像世界の中で丁寧に映し出しているからだと思う。 何気なくも美しいものを、確実に美しく描き出すことに、この映画監督は長けているのだ。 映画初主演のノラ・ジョーンズを筆頭に、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマン、この映画に出演するそれぞれの女優は、もちろん確かに美しい。ただ、描き出されるものは、ビジュアルを超えた彼女たちの内に秘められた絶対的な美しさだったと思う。 その言動を見ているだけで、ただ幸福になる感じ。それはイコール、映画を観るという「幸福」の本質的な部分だと思う。  自分の好きな映画が、良い映画。映画に対する価値観とは、本来そういうものであり、それ以上でもそれ以下でもない。 ただ、春の夜に、温もりと甘さに溢れた空気に包まれる。
[映画館(字幕)] 8点(2008-03-29 01:09:55)
195.  めがね
「何が自由か、知っている」 このコピーを見た時、まだ作品を観ていないのに、なぜだか「なんてこの映画を捉えた巧いフレーズだろうか」と思った。 「かもめ食堂」の監督が描き出す新しい映画世界が、きっと「自由」というものの本質をさらっと表現しているのだろうということは、かなり容易に想像ができたからだ。  そしてそれは想像通りに、美しく、美味しそうな描写の中で、淡々と何気なく伝えられていた。  「自由」というものを得るために、必要なのは時間を過ごすためのトランクではなく、その本質を見ようとする「意識」だ。 何もしない時間を、楽しむということは、コツがいる。 個人としての自分を、本当の意味で自立させなければ、本当に自由な時間というもを過ごすことはできない。 そしてそれは、大きな勇気と、経験が要る。  おだやかな時間の描写の中で、この映画は、そういう人間として生きていく上での本質的な「強さ」とその意味を伝えてくる。  ストーリー性が無い分、「かごめ食堂」よりも一層に映画としての面白味は、ゆっくりとじわりじわりと染み込むように伝ってくる。  並ぶテーブル、古めかしいかき氷機、当たり前に広がる曇り空、そういう何の変哲もないワンカットごとに、「情感」が溢れるこの映画の価値は、紛れもなく本物だと思う。
[映画館(邦画)] 8点(2007-11-25 14:05:08)
196.  EX MACHINA/エクスマキナ(2007)
予想外に衝撃的な面白さだった「アップルシード」の続編は、前作同様、スピードと衝撃性に溢れた次世代アニメーション映像と、直球勝負のストーリー性で優れたエンターテイメントを備えた作品に仕上がっている。  最先端のCG技術に彩られたこの3Dライブアニメというスタイルは、アニメーションの一つの方向性を確立していくと思う。 アニメーションをどこまで実写のクオリティまで近づけていけるかという試み。結果からすると、まだまだそこには大きな「違和感」が生じている。 ただその「違和感」は、決して嫌悪するような類いのものではなく、もはやこのアニメスタイルの「味わい」のような感覚を覚えてきた。  それは、日本の古典芸能である「人形浄瑠璃」や「文楽」のそれと通じるものがあるのではないか。 人によって生み出された「人形(ひとがた)」に魂を吹き込み、彼らによって物語を紡ぐという創造性は、日本人の文化の中に古くから息づいてきた性質であり、現代におけるその“カタチ”こそが「アニメ」なのかもしれない。 そう考えると、アニメが今や日本が世界に誇る“文化”であることも、必然なのだなと思う。   文化のこの更なる「進化」は、驚嘆と賞賛に値する。
[映画館(邦画)] 8点(2007-10-27 00:20:18)
197.  気球クラブ、その後
かつて「気球クラブ」というサークルに集った若者たち、サークルのリーダーの死をきっかけにし、彼らが当時内に秘めた様々な想い、今なお続く想いを、“過ぎ去った時間”を通じて切なく、断片的に描いていく。  過ぎ去った時間の中で彼らが見ていたものは、何だったのだろう。 たぶんそれは一つではなく、本人たちも明らかにできないくらいあやふやで、不確かなものだったのだろう。 誰もその時の自分の「想い」を正確に説明できなどしない。 ただ、だからこそ、その時間の中での「想い」には価値がある。 大切なのは、振り返り答えを見出すことではなく、かつての「想い」と再びそれに触れた「瞬間」そのものだと思う。  言葉ではなかなかうまく説明できないけど、この青春群像劇が伝えることは、誰しもが経験する過去の想いに対する「感覚」なのだと思う。  P.S. 永作博美が、ほんとに素晴らしい。
[DVD(邦画)] 8点(2007-07-24 23:37:47)
198.  ダイ・ハード4.0
十数年ぶりにまたもや巻き込まれてしまった全米一“不運”な男、ジョン・マクレーン。結論、この男、衰え知らず。 いや、正確に言うと、だいぶ衰えてはいる。第一作目の彼などと比べると、老け込んでいることはもはや明らかであり、もう風貌的には初老という印象さえ覚える。 が、その「不完全さ」こそ、ブルース・ウィリスという映画俳優を一躍スターダムに押し上げたジョン・マクレーンというキャラクターに他ならない。 ちょっとおかしな話だが、スマートで血みどろにならないマクレーン刑事など誰も見たくはないのだ。  おまけに今回の敵は、サイバーテロ。全米を揺るがすほどのバリバリのデジタル集団VS全米一のアナログ刑事という構図は、彼のキャラクター性を際立たせると共に、とてもユニークな対比を見せる。 「ダイ・ハード」シリーズでは、マクレーン刑事の奮闘ぶりと同時に、彼をサポートする「相棒」のやりとりも重要なファクターだと思う。今作では青年ハッカーとコンビを組むわけだが、アナログ豪腕刑事とデジタル貧弱オタクの間で生じるギャップの中でのかけあいは、娯楽性に溢れ、絶妙なバランスを生んでいた。  久しぶりに文句なく楽しめるアクション映画を観たという感じがする。 無味乾燥的な映像美の中で、アニメの「ルパン三世」ばりに何でもありのアクションシーンが連続して、息をつかせない。  「ダイ・ハード」といえば、「主人公VSテロリスト」という構図のアクション映画の金字塔的映画なわけだが(まあ正確にはこのシリーズに出てくる敵はテロリストではないのだが)、そのシリーズの最新作にふさわしい優れたアクション映画だったと思う。  そして、その第一作「ダイ・ハード」で大スターにのし上がり、以降20年間にわたってエンターテイメント映画の主人公で体を張り続けているブルース・ウィリスという男は、実のところかなりスゴイ俳優なのではないかと思ったりした。
[映画館(字幕)] 8点(2007-07-14 09:13:42)(良:4票)
199.  007/カジノ・ロワイヤル(2006) 《ネタバレ》 
「007」シリーズにそれほど愛着があるわけではないので、賛否両論の“新ボンド”ダニエル・クレイグが「ジェームズ・ボンドにふさわしい」かどうかは実際定かではないが、個人的な感想としてはかなり良かったんじゃないかと思う。  ジェームズ・ボンドが“007”になるまでの物語というだけあって、今作のジェームズ・ボンドはあらゆる意味で“未成熟”である。「殺しのライセンス」を貰ったばかりであるが故、任務に対する繊細さに欠け、過去のシリーズ作品でのボンドが常に携える絶対的な“余裕”が無い。いろいろな意味で不器用で、非常に“感情的”である。 そこにダニエル・クレイグという俳優の無骨でワイルドな風貌も加味され、今作のジェームズ・ボンドはまるで“ジェームズ・ボンドらくしない”。 冒頭のシーン、ターゲットを問答無用に追いかけ回す様に、英国諜報員007の紳士的なスタイルは微塵も無い。 たぶん多くの人が「こんなので007としてやっていけるのか?」と不安を感じずにはいられなかったことだろう。  が、そういう“未熟さ”とそこからの“成熟”こそ、今作が描く“ジェームズ・ボンド”であり、そのボンドを演じる俳優としてダニエル・クレイグという俳優はとてもふさわしかったと思う。 数々の名優が演じてきた映画史に残るスーパースターを演じることは、非常に困難なことだろうが、この俳優独特の「憂い」を携えた存在感は、新たなジェームズ・ボンド像としてふさわしく、今後の期待を存分に感じさせる。  「007」としての資質を問われ、敵の策にまんまとハマッて死にかけ、騙され、ボンドにとっては一種の「悲劇」とも言える結末を迎える。 が、ラストカット、「Bond,James Bond.」という言い放ったその姿は、まさに“ジェームズ・ボンド”そのものだった。 文字通り“新たに始まった”007シリーズに期待していきたい。
[DVD(字幕)] 8点(2007-05-27 18:48:18)
200.  パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
もうこういう娯楽大作シリーズというものは、「好きな人はとことん面白い」、「嫌いな人はとことん面白くない」という二通りしかなく、どちらにしてもそれ以上のことは求められない。 クセっけたっぷりの海賊をジョニー・デップが心底に揚々と演じ、これでもかというほどに製作費をつぎ込んでつくり上げた「海賊世界」に没頭できるかそうでないか、詰まるところそれが全てだ。 そして、個人的には充分に“没頭できた”。それはとても幸福なことだろう。  前作はトリロジーの“つなぎ”的な性格もあったので、今ひとつ盛り上がりきれない部分もあったが、完結編である今作はもう本当に遠慮がなく仰々しすぎるほどにパワフルに創り上げられ……。  ……ああ、やはりこういう映画はもう言葉で評する意味などナンセンスだ。 3時間という時間を何も考えずに楽しむことができた。ほんとうにただそれだけのことだ。 
[映画館(字幕)] 8点(2007-05-27 18:15:31)
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