181. ブラウン・バニー
《ネタバレ》 あのギャロの映画ということでかなり期待してしまいましたが、ギャロの相当のナルシストぶりと、いわゆる「コントロールフリーク」ぶりが全面に押し出される結果となってしまいました。 誰か意見する人は居なかったのかと思うくらい平板なストーリーに、何の演出もない映像。ちょっときつかったなぁ。基本的にはアメリカを放浪してるんだけど、ロードームービーと呼ぶのは厳しい。 そんでベッドシーンになるんだけど、セックスはしない。まぁここが衝撃のラストとかいわれるゆえんなんだろうけど、セックスシーンじゃなくてフェラチオなんだよね。ギャロの狙いというか、男の身勝手さを演出するには確かに一番良い方法だったかもしれません。そういう意味ではとても象徴的であるしショッキングであるし、インパクトはあります。 何しろギャロは一方的にフェラさせながら、彼女に「誰かと寝たんだろ」と責めまくります。普通に怒ってます。でもフェラさせてんだよね。そこのミスマッチが妙に印象的です。 結局クロエの口の中に出して、その後どうなるかなーと思ったら、ギャロはベッドに寝ころんで「お前は売女だ、アバズレだ。お前なんかとはもう会わない」と罵ります。 このまさかの展開。愛を取り戻したんじゃないのかよ、と誰もがつっこむ所です。さらにデイジー役のクロエから、その時の真相が明かされます。 レイプされてたのをギャロは目撃したが、逃げ出した。その後デイジーはオーバードーズで死亡。ギャロのへなちょこぶりをつきつけられてしまいます。ギャロっていうかバド・クレイね。 情けなさとへなちょこぶりが全面に押し出されてこの映画は終わります。 この映画はギャロの男性観を表しているんだろうか? でもフェラチオシーンっていうのはすごい。アイディアはすごく良かったと思います。シンボリックで、しかもインパクトがあって。だからあのシーンはいいと思うんだけど、そこまでがなぁ。そのシーンに5点。 [DVD(字幕)] 5点(2009-06-21 22:20:16) |
182. サルバドールの朝
《ネタバレ》 「死刑ジャンル」というものがあるのかどうかは分からないけど、「白バラの祈り」と非常に似ています。戦時下の抑圧された状況の中で、思想活動をして捕まり、ほぼ冤罪で死刑になるというストーリー。スペインのフランコ政権で社会主義的思想からテロ活動を行うようになるサルバドールが捕まり、警官殺しの容疑で死刑判決を受けます。 主人公のサルバドールが回想をしていく形なんだけど、実話らしくストーリー的に平板。そこがどうも痛いんだけど。その分リアルではあります。 個人的には看守との交流が気に入ったけど、全体からすると必要な要素であったとは思えず、感動させるためにとってつけたストーリーにしか見えません。 映画としては平凡な作品でした。 [DVD(字幕)] 5点(2009-06-21 22:15:30) |
183. リトル・ダンサー
なんか前に観たことあるような気がするなーと思ってたけど最後まで思い出せませんでした。この種の典型的なサクセスストーリーだったからかも知れません。 とにかく主人公の男の子が素晴らしい。あと父親。ストライキ中の炭坑が出た時点で感動ポイントは読めてしまいましたが、わかっていてもあの感動。危うく泣くところでした。別に我慢してたわけじゃないけど。 このタイプの映画にしては出色ですが、その要素は主人公の周辺の屈折というか、変態ちっくな所かな。女装趣味のある友達や「わたしのアソコ見たい?」と誘惑してくるバレエの先生の娘、「私はダンサーになれた」と連呼する祖母など、普通じゃないです。 それが逆にストーリーのアクセントになっていて、「またこのパターンかよ」と視聴者を落胆させていないのだと思います。ただ冷静に振り返れば「またこのパターンか」と思うようなストーリーですね。 クラッシュなどセンスの良い音楽が光りました。でもやっぱりこのテのストーリーはあんまり好みじゃない。変態要素は良かったけど。 [DVD(字幕)] 6点(2009-06-21 22:14:13) |
184. ヒトラーの贋札
《ネタバレ》 ラストシーン、収容所の過去を回想し、金(恐らく贋札)をありったけ持ってめちゃくちゃにルーレットに賭け、有り金を全て失う主人公。そして女性に「あんな大金…不運な人ね」と言われたあとの一言「金は造れる」。 この言葉の重みのために今までが有ったんじゃないかと思います。金「は」造れる。贋札グループと普通の収容所に居た人々とのビジュアル的差異も強烈でしたし、手ぶれ映像なんかも迫真性が加わって良かったと思います。ヘルツォークもありがちなサディストっぽいキャラではなく、意外と人間味がある所や、ユダヤ人の中にも色々なキャラを持たせている所も素晴らしい。 ブルガーのその後が非常に気になりますね。 [DVD(字幕)] 7点(2009-06-21 22:12:38) |
185. ヒトラー 最期の12日間
自分が漬け物石の下敷きになった白菜のようになり、水分がぐいぐいと押し出されるような映画です。もちろんヒトラーは憎まれるべき存在ですが、一種の同情に似た哀しさも感じます。 [DVD(字幕)] 7点(2009-06-21 22:07:32) |
186. ダークナイト(2008)
《ネタバレ》 アーロンエッカートとヒースレジャーとモーガンフリーマンが素晴らしすぎます。脚本もジョーカーのキャラ設定や非道の数々の作り方がかなり巧い。予想していたよりもドンパチな感じではなく、派手なアクションよりかは心理的、ドラマ的要素が濃かったです。クリスチャン・ベールは正直のっぺりしていてあまり好きではありません。アクションシーンもなんか緩慢としています。 バットマシリーズを観たことがなくて、これを一番最初に観たので意味の良く分からないシーンがあったのは残念です。せめてバッドマンビギンズでも観てからにすればよかったと後悔しました。 バットマンのバイクも車もあまりかっこよくなかったのも残念だったかな(笑) ヒース・レジャーありがとう。 [DVD(字幕)] 7点(2009-06-20 20:26:12) |
187. レスラー
《ネタバレ》 老レスラーの生き様を描いた作品ですが、プロレスの舞台でしか輝けず、生き甲斐を見出せなくなった一人の男の人生を描いているように見えました。決してプラスのベクトルのみでは表現されていません。いったん仲直りしかけた娘とのディナーの約束を、ナンパしたギャルとクスリやってあんなことやこんなことしてお泊まりして、挙げ句寝坊してすっぽかし、結局絶交。バカすぎます。マリサトメイ演じるストリッパーとも恋仲になりそうで、しかし一線は越えられず、最後は試合からも目を背けられてしまう。バイトはうまくいかずぶちキレて大暴れ。そんな現実の世界でうまく生きられない不幸な不器用さというものがこれでもか、というくらいに見せ付けられます。しかし、だからこそリング上での彼の輝きは尋常ではなく、会場に入るシーンなんかは思わず鳥肌が立つほどでした。闘いはかなり痛そうだったけど。ホッチキスはほんと痛そうだった。だいたいあんなちっちゃい針は観客から見えないと思う。 そして試合前に打ち合わせをする姿を見て「なーんだ、やっぱりやらせじゃん」と一旦は思わせて、リングでの闘いを克明に描くことによって打ち合わせ済みであるからこその真剣さというか、覚悟というものを観客は思い知ります。やらせだとかやらせじゃないとかプロレスはそういう次元で語るべきではないということです。自分の命を犠牲にしてまでプロレスに生きる、そんな可哀想な男ですが、結局夢の世界でしか生きられない彼を最後は一種の尊敬と憧れの目で見ることになるのです。かなり熱い映画です。熱すぎてちょっとついていけないかも、って思うくらいです。ミッキー・ロークとマリサ・トメイの演技は素晴らしいけど、良くも悪くもミッキーローク頼みの映画でした。よかったねミッキーが迫真の演技してくれて、っていう。 冗長にならず、すっきりまとめた脚本良かったです.そして音楽好きとしてもたまらない選曲達。Quiet Riot,AC/DCなどなど、かっこいい音楽が使われます。最後はブルーススプリングスティーンだし。 まぁまとめると、プロレスラーという題材からしてけっこう扱いづらかっただろうけど、それにしては巧くまとめたな、という印象です。現実とリングの対比が命、の構成でした。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-14 23:31:39) |
188. 4ヶ月、3週と2日
《ネタバレ》 パルムドール受賞作ということで観ましたが、パルムドールらしい作品だったと思います。少ない登場人物に重いテーマ、そして手持ちカメラの使用や、BGMや効果音を一切使わない手法、ラストシーンに含みを持たせている等々、ヨーロッパ特にフランス映画の影響を強く受けているように感じました。最近のパルムドールでは「ある子供」と非常に似た手法です。 ストーリーはチャウシェスク政権をよく知らないと理解しづらいようですが、こういう時ほど世界史を勉強しておいて良かったと思うときはないです(笑) 違法である堕胎を行うルームメイトを助けるために奔走する主人公。そこで堕胎という女性に特有の行為に直面し、金の問題や闇医者によるレイプなど厳しい現実にも遭います。そこから生まれる男性への不信、将来の不安が一気に溢れだし、彼氏と衝突します。その家族とも衝突します。その家族と友人達が古い価値観しか持っていないからです。 そこを表す食卓での長い会話のシーンは恐らく1カットであり、あそこまでの長回しをするということはそれなりに意味があるのでしょう。その会話に嫌気がさしている主人公の顔が印象的でした。 ラストシーンもかなりシンボリックで、唐突に終わります。ガラスに反射する車のライト。主人公はその車に目を向けます。あの車は希望を、それとも更なる苦難を彼女たちにもたらすのか。恐らく現実は甘くはないでしょう。 暗い顔でテーブルに座っている二人の向こう側には、すりガラスを挟んで裕福な人々がパーティをやっています。その全くの別世界は当時のルーマニア人達が切望していたものなのでしょう。 それから闇医者ベベのカバンから取ったナイフや、彼が忘れていったIDカード、彼氏から借りた300レイなど、回収されていない伏線が少し気になります。 自分がパルムドールに相性がいいのもあるかもしれないけど、傑作です。 [DVD(字幕)] 8点(2009-06-13 15:45:23) |
189. 戦場のアリア
音楽って素晴らしいですね。これが実話だっていうんだからすごい。ただ女性まで登場したのはやりすぎ。特に居る必要も無かった。歌えないダイアン・クルーガーを起用した意味もよく分かりませんでした。あんな口パクするくらいなら歌える人にしてほしかったです。 最後は救いがないといえばないですが、実話だと思うとリアルですね。ちょっと切ない気分になりました。 [DVD(字幕)] 6点(2009-06-13 15:43:41) |
190. 茶の味
茶の味 非常にキュートな作品です。初っぱなから少年の頭から電車が飛び出していくシーンはこの作品の特徴を非常によく表していると思います。これすごくいい映画で最後は感動的なんだけど、基本はコメディです。 だから「無駄に面白い」って感じがします。もちろん褒め言葉です。この無駄さ加減がとてもゆるくてさくさく観れるのです。 うーん、なんともコメントしづらい映画でした。個人的には浅野忠信が良かったですねー。あと主人公の男の子もとても好感が持てました。恋をした時の「わかるわかる」とうなずくような行動はほほえましい。 [DVD(字幕)] 5点(2009-06-12 00:22:48) |
191. KEN PARK ケン パーク
ハーモニーコリンはこれが「ガンモ」につながっていったのね、と納得するような映画でした。でも全く性描写はないけど。 ストーリーをあそこまで進めて、最後のあのシーンとなると完全に整合性はなくなるけど、なんだろう、ある種の純粋さというか何にも縛られない自由なセックスが表現されているのかなぁと思いました。登場人物たちは誰もが何かに抑圧されており、それがセックスに影響を及ぼしていたのだと思います。 まぁおれは純粋なセックスが最高、というように解釈しました。 [DVD(字幕)] 6点(2009-06-06 21:36:36) |
192. ザ・ローリング・ストーンズ/シャイン・ア・ライト
こういう映画を観るのはほとんどストーンズファンだから高得点に決まってます。かくいう自分もストーンズファン。鳥肌立ちっぱなしの二時間でした。 ラストシーンもすごい好みです。単なるライブ映像に終わらせないスコセッシの実力。 [映画館(字幕)] 7点(2009-06-06 21:25:25) |
193. グラン・トリノ
一言でいうと巧い。うまい。万人受けする映画でした。そういう意味では置きにいってる感じがする。でもこれは批判のための批判(笑) 全面的に褒めたくないっていう自分のあまのじゃくな所です。 ただ、もともとイーストウッドはどこか人を信じられないような厭世観というか、無常観というか、皮肉で暗い感じがあって、「ミスティックリバー」や「ミリオンダラーベイビー」はそこが好きだったのに、これは意外とどストレートにきましたね。実際ちょっとうるっときちゃったしなぁ。自然に感動させられるのはすごい。 何より全編にちりばめられたユーモアとかっこよさ、「わかってんなぁ」と唸らされます。イタリア人の床屋とのやりとりとか、おばあちゃんとのやりとりとかね。あの辺も観客というものを知っているし、下手なコメディ映画より数段上。 タオとの交流もほんと今思えば「あるある」という感じで、特にラストの閉じこめるシーンなんて「うわっ」っていうくらい既視感がすごいんだけど、しかしそれを自然にやってのけるのがイーストウッドの手腕なんでしょうね。ラストもきれいだし。 でもイーストウッドが銃を持ってにらんだりするのはずるいよなぁ(笑) ダーティハリーらへんのイメージをそのまま持って来ちゃってて。これがかっこいいし迫力あるんだもん。 矛盾した表現かもしれないけど、これは普通の傑作です。また私見ではあるけれど、隣の家族が中国系移民である必然性は全くありませんね。ただこれが普通のアメリカ人だったらこの作品はここまで評価されなかったでしょう。その辺も「うまい」と唸ってしまう一つの要因ではあります。 この完成度、正にイーストウッド監督の集大成といっても過言ではない傑作だと思います。 [映画館(字幕)] 9点(2009-06-03 14:12:44) |
194. スパイダーマン2
キルスティンダンスト大好きなんだけどなぁ……。絶世の美女ではないからこそのあの色っぽさと演技。なかなか居ませんよ、ああいう人は。 電車のシーンとかアイディアがいいですね。王道をきっちりいった感じで面白かったです。 [映画館(字幕)] 6点(2009-06-03 14:08:59) |
195. パッチギ!
いい映画でした。沢尻エリカの純真さは素晴らしかったです。暴力シーンは監督の趣味なんで仕方ないかもしれないけど、そこまでやる必要があるか疑問でした。 朝鮮やら何やら関係なく素晴らしいラブストーリーです。 [DVD(邦画)] 6点(2009-06-03 00:50:22) |
196. 暗いところで待ち合わせ
原作のイメージを何とか出そうとしている印象を受けました。そつなく出来ていると思います。可もなく不可もなく。 [映画館(邦画)] 5点(2009-06-02 00:26:23) |
197. リアリズムの宿
「間」がとにかく命。気まずさというものをかなり感じるんだけど、その中にほっと和む場面があったり、くすりと笑えるシーンがあったり、粋な映画です。 山下監督の自主製作である前二作品を観てからこれを観ると、作品の描く「範囲」というものが格段に広がったことを感じますし、それがリンダリンダリンダから始まる新たな山下ワールドへとつながっていくことになるんだなぁと感心しました。 外国人にこの間はわかるのかな? [映画館(邦画)] 6点(2009-06-02 00:19:44) |
198. クィーン
なまじっか実際の映像とかを使って、事実を題材にしている(しかも最近の)のだから、もう少し工夫があっても良かったと思います。テレビドラマみたいな安っぽさはここからくるのでしょう。 正直つまんないです。ヘレン・ミレンの演技もこのストーリーでは説得力に欠ける。 [DVD(字幕)] 4点(2009-03-01 19:49:19) |
199. 百万円と苦虫女
蒼井優を目的で観て、鑑賞後蒼井優に満足して思いました。ここまで一人の女優に依存していていいんだろうか? もっと面白くできそうなのに、映画の脚本云々よりも彼女一人が際立ってしまっていいんだろうか? いいんです。そういう映画です。 [DVD(字幕)] 6点(2009-02-08 00:14:23) |
200. 松ヶ根乱射事件
すごい作品だと思います。キャスティングといい脚本といい凄い。特にリアリティという面ではぞっとするほどの力があります。とはいえ冷静に考えればありそうもない話です。そのちょうど狭間をいくようなストーリーが最高。 序盤の小学生からぶっ飛んでますが、そのぶっ飛んだシュールさを維持しつつ最後までいけた希有な作品ではないでしょうか。 [DVD(字幕)] 8点(2008-12-08 00:16:26) |