2121. 大巨獣ガッパ
《ネタバレ》 昭和42年に突然公開された、日活が制作した唯一の特撮怪獣映画です。この年は、松竹も唯一の怪獣映画『宇宙大怪獣ギララ』を公開しています。特撮映画に志が低い両社ですが、特撮のレベルは『ガッパ』の方がはるかに高かったというのが公開時の感想でした。さて40年ぶりに懐かしの『ガッパ』と再会してみて、やっぱ、「何でこんな映画作ったのだろうか?」と首をひねる出来ですね(なんでって、そりゃカネを稼ぎたかったからに決まってますよね)。簡単に言うと、過去の内外の怪獣映画のプロットの寄せ集めということでしょうか。そもそも、怪獣が我が子をとり返しに来ると言うのは『怪獣ゴルゴ』のパクりですし、南海の孤島は東宝、ガキを前面に出すのは大映、というところでしょうか。ガッパの造形は、これ絶対に高尾山の烏天狗をヒントにしてますよ、たぶん…。 特撮自体は、渡辺明という元東宝特撮スタッフが参加してますので、当時としてはそこそこのレベルかなと思います。しかしこの映画を観直して、怪獣映画というのは本編部分の出来や音楽がいかに大事かということを痛感させられましたね。怪獣が存在する設定やディティールにこだわりがないといかんということです。それにしても、ガッパ親子が体面するシーンで親ガッパが涙を流すのですが、古今東西の怪獣映画の中でも涙を流した怪獣・モンスターはガッパだけでしょう。特撮映画史に残る迷シーンです。 [映画館(邦画)] 3点(2010-05-31 23:44:17) |
2122. ビリー・バスゲイト
《ネタバレ》 名匠ロバート・ベントンにしては、どこか散漫な映画です。確かに、核となる登場人物がいないという印象があり、下手に良い俳優をそろえちゃうと陥りやすい失敗の典型でしょう。ダスティン・ホフマンの演技はさすがに存在感がありますが、彼にしては大して力量を出している風ではありません。ブルース・ウィリスに至っては、彼のフィルモグラフィの中でもっとも情けない役だったのでは。見どころはニコール・キッドマンの脱ぎっぷりの良さに尽きます。 [DVD(吹替)] 5点(2010-05-30 11:16:00) |
2123. フルメタル・ジャケット
《ネタバレ》 ああ、ハートマン軍曹、可哀そう…。せっかくどんくさい肥満児をあそこまで鍛えたのに、あんな悲劇が待っていたなんて…。新人を教育するのは、どんな組織でも大変なことデスね。この映画は何度も観ていますが、「微笑みデブ!」ってハートマン軍曹に罵られてみたいとだんだん感じてきた自分が怖くなってきました。 ベトナムに行ってからの戦場シークエンスは結構評判が悪いですが、キューブリックらしいひねった戦闘シーンは癖がありますね。まずジョーカーとカウボーイだけがなぜか眼鏡をかけているのが下品な海兵隊らしくなくて、キューブリックの意図が感じられます。部隊をテト攻勢で攻撃されるフエの街にして、ベトナム戦争なのにまるでスターリングラードみたいな市街戦を見せてくれるのも、キューブリックらしいひねた視点ですね。ただベトコンの女スナイパーがAK47を狙撃銃に使っているのは、現実にはあり得ないでしょう。全般的に戦場シークエンスは私たちがイメージしているベトナムに比べるとリアリティがないのですが、却って悪夢のようなシュールな世界でもあり、引き付けられてしまうのです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-28 00:55:04)(良:1票) |
2124. ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
《ネタバレ》 ヘドウィグのひげ面パートナーのイツハクって、なんとミリアム・ショアという女優が演じていたと鑑賞後に知ってびっくり仰天しました。そういや、歌声は女性みたいだし、てっきり吹き替えしているのだと思っていました。ふと思ったのは、ジャンルは全然違いますがこの映画S・ポッターの『オルランド』となんか似ていますよね。俳優が性をクロスオーバーするし、ラストはなんか判りにくいイメージですが、ヘドゥイグとイツハクが合体して性別を超越してしまった様になっちゃったり、『オルランド』の手法を彷彿させます。ヘドゥイグ役のJ・キャメロン・ミッチェルも、ロザンナ・アークエットみたいで不思議な雰囲気です。全体的に『Toomy/トミー』の影響が強く感じられました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-05-27 21:17:34) |
2125. 真昼の死闘
《ネタバレ》 イーストウッドが“ガンマン”、マクレーンが“娼婦”とそれぞれ当たり役キャラで共演してるので、まあ安心して観られます。おまけにモリコーネが音楽とくればマカロニチックな雰囲気もバッチリです。ただこの当時ではどうしてもマクレーンの方が文字通り役者が上で、イーストウッドも頑張っているのですが見劣りしてしまいます。イーストウッドの役柄が深く掘り下げられていない脚本のせいでもありますが。ドン・シーゲル作品にしてはちょっとキレ味が鈍いかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-05-25 01:33:58)(良:1票) |
2126. ブルーベルベット
《ネタバレ》 デヴィッド・リンチは既成曲を取り込むのが上手い監督ですが、中でもこの“Blue Velvet”は最高です。ほんと、リンチにしては意表つくぐらい判りやすい映画ですが、その中でもデニス・ホッパーの危なさはリンチ史上これも最高で、ディーン・ストックウェルとのデユエットは自分が観たリンチ映画の中で一番好きなシーンです。そして、イザベラ・ロッセリーニのエロさには参りました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-23 23:24:05) |
2127. 熱いトタン屋根の猫
《ネタバレ》 “ビッグ・ダディ”はいかにも大物という貫禄ですが、P・ニューマンとの会話で判るように実は親父はホーボーだったという成り上がり者。妻やニューマンに自分が注いだと思っている愛情もお金や物質的なものに過ぎず、家族はそういう“ビッグ・ダディ”にはうんざりしてそれぞれ割り切った感情しか持っていないのに、本人はそれに気がついていない。ただの傲慢で専制的な南部男の様で、実は心の奥底には成り上がったのに消えることがない虚しさを抱える人間像をバール・アイブスが好演しています。自分としてはテイラーやニューマンより彼の存在がこの映画では大きいと感じました。ニューマンがテイラーを嫌う理由が、テイラーがゲイの相手と不倫したことになっては、原作劇の本質が台無しになってしまったのではないでしょうか。そして強烈な印象を残してくれたのは、グレムリンみたいな面相の兄嫁とそのガキどもでした。 [DVD(字幕)] 6点(2010-05-23 20:21:50) |
2128. 三つ数えろ
《ネタバレ》 「誰が運転手を殺したのか?」は有名なエピソードですが、そもそも運転手はストーリーとどんな関係があるの? と、まあこういう穴が多すぎるのか単にこり過ぎただけなのか、とてもじゃないけど一回観ただけではストーリーが追えない困った脚本です。本作に比べれば、昨今の時系列がぐちゃぐちゃになった映画なんて可愛いもんですよ。 今まであまり意識していなかったのですが、本作のローレン・バコールは痺れるぐらい魅力的です。確かに演技は大根ですが、“The Look”と異名をとるあの視線はただ者ではありませんよ、彼女は。あと「アクメ書店(!)」の店員でボギーにフェロモンまき散らすドロシー・マローンも良かったなぁ。ハワード・ホークス映画に出てくる女性キャラは、独特の色気がある女優が多いので楽しいです。 [DVD(字幕)] 7点(2010-05-21 23:01:05)(良:1票) |
2129. テキサスの五人の仲間
《ネタバレ》 後年製作されたコン・ゲーム映画の原型とも言える作品。まあ、オチはだいたい判るのですが、ポーカーの駆け引きをこれほど秀逸に見せてくれる映画はめったにありません。ジョアン・ウッドワードが銀行に駆け込み、ポーカーの手札を担保にして融資を迫るところなぞ、まさに抱腹絶倒・痛快無比! そう、この映画はジョアン・ウッドワードの快演で盛り上がるところが大です。そして予想外のコメディ演技を見せるヘンリー・フォンダや、冷酷な悪党かと思いきや実はペーソスあふれる役柄だったジェーソン・ロバーズがいい味出してます。ちなみに公開時のポスターを見ると、邦題は『オーシャンと11人の仲間』をもじってつけられたみたいです。銃が一発も撃たれず誰も死なない西部劇というのもたまにはいいもんですね。 [ビデオ(字幕)] 8点(2010-05-21 22:24:15)(良:1票) |
2130. バージニア・ウルフなんかこわくない
《ネタバレ》 言葉には暴力性があることは承知していますが、同じフレーズでも「文字にして紙に書く」のと「言葉を音声として発する」のではコミュニケーションの手法としていかに性格が違うのかと考えさせられました。テイラーとバートンの血が出るような罵り合いは、まさに「セリフのボクシング」と呼べるのでは。たった四人しか登場人物がいないのに、四人ともオスカーにノミネートされて二人が受賞って、ちょっとすごくないですか? 四人の中でもテイラー・バートンの毒気にあてられて、冒頭とラストでは同じ人格とは思えないほどボロボロになっちゃうS・デニスの演技の上手さには感心させられました。ちなみに本作はハリウッド映画で初めて“Fuck”というセリフが使われた記念すべき作品だそうです。実際のところどこで使われたか気がつかないほどですが、まさか40年後には“Fuck”だらけの映画が量産されるとは、当時の観客は想像もしなかったでしょうね。 [DVD(字幕)] 9点(2010-05-20 20:56:42) |
2131. バターフィールド8
《ネタバレ》 全盛期のE・テイラーを堪能させていただきました。ストーリー自体は『椿姫』みたいな古風なものですが、ヘイズ・コードがまだうるさかった頃で脚本は何度も書き直しさせられたみたいです。テイラーは高級娼婦のはずなのに、冒頭のシーン、一夜のお代を払った男に何で激怒するのか意味不明です。ルージュで『売りものじゃない!』って鏡に書く有名なシーンがありますが、あなた娼婦でしょ。こういうわけが判らない部分に検閲の跡が見られます。そこまでされてこの原作を映画にすることないじゃん、と思うのですがいろいろ大人の事情があったんでしょうね。結局テイラーは本作でオスカー初受賞となるのですが、この映画に対してテイラーが残したコメントはもう凄まじいものです。確かにお世辞にも名作とは言えない出来ですが、自分がオスカー獲った映画をここまでボロクソに貶したのは、後にも先にもE・テイラーだけでしょう。 [DVD(字幕)] 4点(2010-05-19 22:37:56)(笑:1票) |
2132. 愛のイエントル
《ネタバレ》 男装のバーブラを見てると、確かに学芸会の演劇を見せられている様な雰囲気です。さすがにバーブラの歌唱は素晴らしく、バラードを歌わせたらバーブラ・ストライサンドにかなう者無しですね。自分で監督までしてるせいか、ある意味究極のナルシスト映画と言えそうで、エイミー・アービングはイエントルに比べてあまりに愚かな女という位置づけはちょっと可哀想かな。船上で歌うバーブラを引きで撮っているラストは、何度見ても素晴らしい名シーンです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-18 00:52:01) |
2133. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 私の中で、イーストウッドという映画作家の評価に大疑問符がついてしまった作品です。イーストウッドは基本的には脚本を書かない人なので、まず原作があっての本作なのでしょうが、このいかにもアメリカ的なリンチが正当化される世界観はどうしても受け入れられない。ラストのショーン・ペンとローラ・リニーの会話、「パパは王様、王様はすべきことを行う」「皆、弱いからよ私たち以外は。私たちは決して弱くならない」、これは「パパ」「私たち」を「アメリカ」に言い換えてもしっくりする嫌なフレーズではありませんか。ティム・ロビンスに疑惑を抱いたマーシャ・ゲイ・ハーデンの描き方も、ラストではまるでイエスを売ったユダの様で、ショーン・ペンが犯した大罪を免罪するかの様な印象まで与えるのがはっきり言って不快です。カトリック教徒のコミュニティーが舞台で、ショーン・ペンの背中には十字架のでっかいタトゥーが彫られているなど、イーストウッドよりスコセッシの方が監督にふさわしい題材のような気がします。イーストウッドはスコセッシの様に、宗教的にテーマを掘り下げる感性は持ち合わせていないと感じました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-05-16 00:02:09)(良:3票) |
2134. 地球最後の男 オメガマン
《ネタバレ》 公開当時は「チャールトン・ヘストン主演のSF超大作!」という感じで宣伝していた記憶があります。40年後に初めて観たわけですが、安―い音楽といいはっきり言ってこれB級だったのですね。監督は誰かと思えばTV映画の職人ボリス・セイガルではありませんか、たしかに全体に漂うチープさはTVムービーなのかなと思えてきました。リチャード・マシスンの原作は三回映画化されたわけですが、ヴィンセント・プライスが主演した一作目は隠れた名作だそうです。本作に関しては、そもそも“オメガマン”って誰のことでどういう意味?この答えは最後までありませんでした。そして異様に鼻につく宗教色で、ラストシーンのヘストンを見て「こいつはキリストだったのか!」と愕然とさせられました。どう考えても、原作の哀切な持ち味を台無しにしてしまったクソ脚本ですよ。まあこれでヘストンがこの映画に出たわけが判りましたけどね。 [CS・衛星(吹替)] 3点(2010-05-12 22:28:24) |
2135. 恐怖のメロディ
《ネタバレ》 監督第一作目から自分の趣味を盛り込めるところは、さすがイーストウッド。プロットは、きっと実体験を盛り込んでいるのだろうなと思わせてくれるほど、イーストウッドにはまり役の能天気なプレイボーイですよ。でもねえ、パンチ一発であの世までぶっ飛ばすラストはなんか気分が良くないですね。『ミザリー』のJ・カーンみたいに肉体的に痛めつけられたわけではないのに、と多少イブリンに同情しちゃいます。ここはイーストウッドらしく銃で決着をつけた方が良かったかと思います。確か『ガントレット』でもやってますけど、女を拳固で殴るヒーローは彼ぐらいのものでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2010-05-12 00:31:58) |
2136. 海底軍艦
《ネタバレ》 そりゃ轟天号の古風な造形美とドリルマシンとしての完成度の高さは認めますよ、でも敵役であるムー帝国の設定がねえ・・・。 これも関沢新一の悪いところが全部出た脚本のせいであるのは明らかですが、やたらと「日本は平和憲法で戦争放棄した」ということを強調して神宮寺大佐たちを躍起になって否定するのもなんかあざといですね。やはり明治時代に書かれた原作なので、もっと入念に翻案しなければならなかったということです。それにしても、轟天号のメインウェポンである冷凍光線って摩訶不思議ですね、海中でマンダに発射して凍らせるシーンには失笑させられます。物理の法則が無視されてる・・・。 [映画館(邦画)] 4点(2010-05-11 01:03:51) |
2137. ステート・オブ・グレース
《ネタバレ》 『フェイク』と似たプロットですが、ドラマ自体はちょっとスケールが小さいですね。私はエド・ハリスのいぶし銀のごとき演技に痺れました。アイルランド系ギャングのボスと言っても愚連隊にしか見えない小勢力で、イタリア系にはもう頭が上がらずヘコヘコしっぱなしの情けないボスを抑えた演技で好演しています。レストランで電話をかける・かけないのやり取りでは、ハリスがポーカーフェイスの下で目まぐるしく打算を巡らせているのが良く判ります。まあ、キレやすい弟を殺してまで守らなきゃいけない稼業とは思えないですけどね。ラストの銃撃戦は、弾着効果が激しくてちょっとびっくりしました。でもこのラストシーンは、それまでの淡々としたドラマ展開からはちょっと浮いてしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-10 22:02:41) |
2138. ナバロンの嵐
《ネタバレ》 名作『ナバロンの要塞』の一応後日談というわけですが、マロリー少佐とミラー軍曹(それぞれ前作より階級がひとつ上がっているところは芸が細かい)のスピンアウトストーリーと言った方が正解。それにしても、よくもここまでというくらい無残な出来には腹が立ちます。まずR・ショウがぜんぜんキース・マロリーらしくなくて、明らかにミスキャストです。ショウは上手い役者だと思っていましたが、軽妙なセリフが上滑りしちゃってなんかヘンテコでした。彼は本作の公開直後に急死していますから、死期が迫っていたことが演技に影を落としていたのかも。H・フォードも相変わらずのやる気なさそうな演技で、特殊部隊の猛者らしさはゼロです。旧ユーゴでロケしただけあってT34戦車がドイツ戦車役を務めていますが、これがまた雰囲気が出ていないんだなあ。マクリーン御大が原作を書いているのですが、どうもカネに目がくらんででっち上げたとしか思えず、R・ショウともども晩節を汚してしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2010-05-10 00:56:10) |
2139. ナバロンの要塞
さすがに製作後50年ですからスリルの盛り上げ方など古めかしいところはありますが、特攻作戦ものとしては元祖でありジェットコースタームービーとしても現代に通じるものがあります。マロリー大尉やスタブロ大佐など登場キャラがよく作り込まれていますし、「ウソも方便」ではありませんが架空のナバロン島をめぐる英独両軍の動きもディティールが良くできていますね。冒険映画の古典としての風格すら感じさせられます。 [映画館(字幕)] 7点(2010-05-09 23:07:42) |
2140. ホワイトハンター ブラックハート
《ネタバレ》 イーストウッドが『許されざる者』へと昇華してゆく直前に撮った、彼の作品の中でももっともカルト的な一本です。イーストウッドがジョン・ヒューストンをモデルとした映画監督を演じているのですが、喋り方とか表情の作り方など精一杯ヒューストンの真似をしているのが微笑ましい。もっともイーストウッドはヒューストンと違って映画監督としては現場のキャスト・スタッフには大層評判がよい人なので、信じられないほどやりたい放題するヒューストンを通して彼なりの映画芸術に対する思いを語っているのかもしれません。予想もしなかった神々しいラストシーンにはちょっと感動しました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-05-08 20:26:18) |