2701. 刑事コロンボ/野望の果て<TVM>
上院議員を目指す者らしく目的の為には手段を選ばず、周到な計画で犯行に及び、発覚の恐れを微塵も持たないヘイワード。コロンボは一歩一歩追い詰めて行き、詰めの部分は「果報は寝て待て」とばかり彼が墓穴を掘るのを待っているようでした。ヘイワードが自分から動いてしまったのはコロンボを恐れてなのか、見くびってなのか、ラストのぐうの音も出ない表情から自分は後者だと思います。自分は愛人は若いだけでヘイワードがそうまでしても失いたくないという魅力を感じる事が出来ませんでした。コロンボは犯行の動機も見抜いていたようで今回の犯人は相手にとって不足があったのではないでしょうか。 6点(2004-12-10 23:31:13) |
2702. 刑事コロンボ/別れのワイン<TVM>
コロンボシリーズは、子供の頃放送が楽しみで欠かさず観ていました。毎回、犯人を応援していたのは言うまでもありません。この作品は犯人がワインを海に投げ捨てるシーンが強烈に印象に残っていました。30年振り位に観ました。何時もの、芒洋とした姿で覆い隠した、深い洞察力と権威に臆することの無い強靭な意志で犯人に食らい付いてゆくコロンボとは趣きが異なっています。人生でワインしか愛せなく、愛するものを守るため凶行に走ってしまったエイドリアンを見つめる眼差しに思いやりと敬意、悲しみを感じました。エイドリアンの完全犯罪の破綻がワインであるのも自縄自縛とはいえ悲しいです。コロンボの「自供してくれますね」「なによりも嬉しいお褒めの言葉です」には酔いしれました。上質なワインのように味わい深く、心地良い余韻が残る素晴らしい作品に乾杯。 9点(2004-12-09 17:02:51)(良:3票) |
2703. 黄金(1948)
《ネタバレ》 ハワード爺さんは酸いも甘いも知り尽くしているのでしょう。器の大きさが違います。ラストの高笑いは「降り出しに戻っても、生きていればいいんだよ」と言っているように感じます。茫然自失のカーティンがつられて笑い出したのには思わず頷いてしまいました。ハワードのように年を重ねた、上司、先輩、師匠が居てくれれば心強い事この上なしです。大金の誘惑に狂ってしまったドブスはハワードに言わせると正直者だからそうなったという事ですが、自分は大金に変わってしまう人間と大金にも変わらない人間の違いは人に対する優しさがある、なしの違いに思います。手に汗握る展開、三人の名演技。見応えのある作品でした。 8点(2004-12-05 12:45:59) |
2704. ターミナル
《ネタバレ》 自分ではどうする事も出来ない困難な状況に陥った場合どの様に振舞うのか。ビクターは絶望せず、悲嘆せず、他人の不幸を願わず、他人や世間を恨まず、助けを請わず、節を曲げず、焦る事無く一つ一つ乗り越えて行く人物でした。その思いが意地からではないごく自然な飄々としたものである事にとてつもない心の強さを感じます。というか、人間離れしていて白ける部分もあります。 [DVD(字幕)] 6点(2004-12-03 23:43:16) |
2705. ボビー・デアフィールド
《ネタバレ》 F1レーサーのボビーと難病のリリアン。「死」を覚悟しながらも、その時をただじっと待っているのではなく、その時が来るまでの「生きる」力強さをお互いに感じとり、惹かれ合ったのではないでしょうか。二人の束の間の幸せは、お互いが一日一日「今日が最後かもしれない」と思いがあるからでしょうか、輝いて見えました。最期を看取る者、看取られる者の姿は二人ならではのもので、静かな様子にとてつもない悲しみを感じました。静かなパチーノもまた素晴らしいです。 7点(2004-12-01 23:45:38) |
2706. ローラーボール(1975)
土居まさるさんの実況で『東京ボンバーズ』のミッキー・角田、佐々木ヨーコ、ラルフ・パラディアスをアメリカチームが悪どく痛めつけるシーンに熱狂した自分(この頃既に悪役好き?)が、親に頼んで連れて行ってもらって観た作品です。ムーンパイが三人がかりで葬られる事のみ記憶に残っていました。29年振りに観ました。所々思い出すシーンがあり、懐かしかったです。組織対個人という事がテーマなのでしょうか、ストーリーはつまらなく退屈でした。ゲームの模様もただの殺し合いで、大昔にテレビの前でワクワクした思いとは程遠く興ざめしました。 3点(2004-11-17 01:21:03) |
2707. まぼろしの市街戦
《ネタバレ》 戦争の狂気がこのような形で描かれている事に驚きました。「現実の世界は苦しいことばかりよ」 確かに生きる事は苦しみもありますが、苦しみながらも現実の中で皆生きているのではないでしょうか。患者達の御伽噺の如く戯れる様子は現実逃避の卑怯者のように最初は感じました。そうではありませんでした。プランピックにラスト彼らのもとへと門を叩かせたのは、その方法でしか現実から逃れられない、そうまでしてまでも居られない戦争という現実の世界だったのですね。皆様ご指摘の通り、命令のもと個人的に何の恨みも無い者同士が破壊し合い殺し合う戦争という行為、そして、己と家族は絶対安全な場所に身を置いた上で、己の欲望を正義と言う美名で覆い、警察官気取りで戦争を起こし、苦しみ・悲しみ・痛みを何にも感じない指導者こそまともな神経を持たない狂った輩であると言えます。素晴らしい作品でした。 10点(2004-11-15 15:32:04)(良:1票) |
2708. 座頭市物語
《ネタバレ》 初めて観ました。共に裏街道に生きる平手と市。死期を悟り、己の死に場所を探す平手と、世間にも自分にも負けずに生きてゆこうとする市。ラストの二人、最高の死に場所に本望の思いを胸に息絶えた平手と、彼の思いを汲み取って無念の涙を堪える市。死ぬ事より生きてゆく事の方が辛いのですね。天知茂の演技を終生忘れる事はないでしょう。 9点(2004-11-06 07:32:24)(良:1票) |
2709. 新・極道の妻たち
極妻シリーズでこの作品が自分にとって最も印象深いです。加奈江と直也の葛藤は、極道社会のみならず、堅気の世界の何処にでも見られる親と子の姿です。加奈江と重田の絆の強さは、実の親子以上、極道の親と子としての凄みを感じました。重田を演ずる本田博太郎の静かな迫力に見惚れました。ラストの二人の姿は胸に迫るものがありました。 7点(2004-11-04 18:15:22) |
2710. ヒート
パチーノとデ・ニーロを十二分に堪能させてもらいました。名シーンに次ぐ名シーンの中でパチーノが娘を惨殺された母親を抱きしめる姿はパチーノ名場面集の一つです。弱者を慈しむ温かさと「罪を憎んで人も憎む」刑事としての信念の熱さにシビレました。対するデ・ニーロのストイックな仕事振りにもシビレました。この二人が雌雄を決したのは、背負った者を背負い続けようとした者と降ろしてしまった者の差なのだと思います。ラストのパチーノの姿は「罪を憎んで人を憎まず」思いだったのでしょう。もう、感電死状態です。 [DVD(字幕)] 9点(2004-11-01 01:43:35) |
2711. スピード(1994)
《ネタバレ》 バスはこの状況から如何にして脱するのか。もうハラハラ、ドキドキし通しで、飛行場での大爆発には心底スカッとしたものでした。緊迫感を後押ししてくれた音楽も記憶に残っています。その後の展開は大爆発の余韻のように感じました。悪役好きの自分にとってデニス・ホッパー演ずる偏執狂的ないやらしさに満ち溢れる犯人は、これぞ悪役といえる印象深さでした。あの対決とあの散り方はこの犯人には相応しくないように思いました。 8点(2004-10-31 00:34:43) |
2712. 穴(1960)
《ネタバレ》 無実の罪でなく、刑務所内で虐待された訳でもなく、犯した罪を償う責任を果たす事から逃れたいという身勝手な理由で練られた脱獄計画。最初は、あの手この手で知恵を絞って成功にこぎ着けようとするも結局は失敗、その原因は何か?の興味津々で観ていました。五人の知恵とチームワーク、特に砂時計を作る件には唸らされましたし、頭だけでなく力ずくでひたすらに穴をあけ続ける姿に成功させるという強い意志を感じました。あの異常な程の音は彼らの意志を表していました。ガスパールの描かれ方が絶妙で、裏切る、裏切らない、どちらにもとれて、もしかしたら成功するのではと次第に手に汗握って観ていました。鏡に映った光景は思わずアッと口走ってしまった強烈さでした。裏切り行為は情けないといえばそうですが、ガスパールと寝起きを共にしながら察知できなかった己の不明さを棚に上げて、目くそが鼻くそを笑うように感じました。署長もそう思っているのではないでしょうか、彼らより何枚も上手だったようで、やはり最後の一歩を踏むことは難しいようでしたね。 8点(2004-10-20 20:55:26) |
2713. 座頭市(1989)
鼻が、耳が、腕が、首が飛ぶ血みどろの殺陣と終わった後の死体の光景に、斬られる痛みと犬死にの虚しさを感じました。ヤクザと役人共に下品なだけのキャラクターで血しぶきを派手に上げて死んでいっても、悲しみを堪えて人を斬る、潔く散っていく心の痛みが感じられなく、響いてくるものがありませんでした。市と浪人との対決は一瞬で台詞も無く、表情も見られませんでした。物足りない気もしますが、二人の心中を思い自分の頭の中に思い浮かべる楽しみを残しておいて下さったようにも思いました。見せ過ぎる事と見せない事を考えさせられた作品です。 5点(2004-10-20 20:11:43) |
2714. ブラック・レイン
当時の通勤途中で見かけたあの場所、この場所。スクリーンの中では妖しい魅力に溢れる光景で誇らしく思ったものでした。悪役好きの自分にとって松田優作の狂気に満ちた演技も日本男優ここにあり、と誇らしく思います。ラストシーンの百貨店の包装紙と健さんの表情は忘れられません。自分の思い出の作品です。 8点(2004-10-14 00:11:21) |
2715. サンセット大通り
初めて観ました。ノーマの老いを受け入れられない姿は強烈な印象ですが、自分にはマックスの存在が圧倒的でした。ノーマに仕える姿は執事としての忠実さを超えたものを感じましたが、最初のご亭主だったとは・・・自分の想像をはるかに超えるものでした。無償の愛というのでしょうか。ラストシーンの、マックスの別れを覚悟したような眼差しは胸が痛くなり、最後の晴れ姿を見届けてあげるから悔いなく精一杯演じよ、という思いがこめられたような「アクション」 この一言には胸が一杯になりました。心に残る作品です。 8点(2004-10-07 08:31:19) |
2716. イザベル・アジャーニの惑い
男にぶらさがる女、見返りを求める女。そんな女にウンザリしながらも哀れみから情けをかける男。こんな関係はどちらかが覚悟を決めてスパッと思いを断ち切らないと、長引けば長引く程お互いが傷つき不幸になるだけですね。この作品では女にそれを求めるのは無理なので、男がするべきでしたね。イザベル・アジャーニはこういう役どころを演じたら天下一品です。 8点(2004-10-05 22:34:11)(良:1票) |
2717. スクールウォーズ HERO
ドラマ「スクールウォーズ」に熱中した自分にとっては、懐かしさを感じる作品でした。山上役の照英は違和感無く良かったと思います。彼の「俺は、スター選手だった事をはなにかけて、皆を心の何処かで見下していた。その事を皆は気づいていた」という台詞が心に残りました。 7点(2004-10-03 00:07:24) |
2718. レボリューション・めぐり逢い
子供が成人するまでは親としてあらん限り力を尽くし、独立して巣立っていくときは笑顔で見送る。パチーノ親子の絆の強さは胸に響いてきました。パチーノとナスターシャ・キンスキー、パチーノとドナルド・サザーランドの絡みは物足りませんでした。アメリカとは独立戦争当時から身勝手な理屈を振りかざす国だったように感じました。 6点(2004-10-01 00:40:34) |
2719. 針の眼
《ネタバレ》 任務を遂行するために邪魔者はためらい無く削除するヘンリーが、指を切り落とされながらもルーシーを傷つける事無く死んでいったのは彼女を愛していたからでしょうか。ルーシーはデイビッドに愛されなく、淋しい心を癒されたくヘンリーに惹かれていったのでしょうが、デイビッドの亡骸にすがる様子や、ヘンリーにとどめをさした姿から、愛した人はデイビッドだったのですね。荒涼とした風景が三人の心模様を浮き彫りにさせているように感じました。ドナルド・サザーランドが時折見せる笑顔が、何とも物悲しかったです。 7点(2004-09-29 23:10:08)(良:1票) |
2720. 仁義
当時はアラン・ドロンを観るだけで幸せでした。今観てみるとドロンよりイブ・モンタンのほうに魅力を感じました。宝石店襲撃シーンに見られるように、寡黙な男達は渋いと言えば渋いのですが、彼らの心の内が感じられなく、淡々とした映像を淡々と観た様で物足りませんでした。 5点(2004-09-22 06:47:59) |