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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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261.  パコと魔法の絵本 《ネタバレ》 
映像のデキについては、独創的な世界が構築されており、かなり評価したいところ。 中身がそれほどあるとは思えない脚本を、奇抜さや遊びを交えつつ完全に活かし切っている。 個人的には、CGの使い方などはかなり上手いと感じられた(最後の対決を除く)。 CGのデキ自体はアニメチックではあるものの、実写とCGが効果的に融合されており、付加的な満足を与えている。 監督の世界がとっぴ過ぎていて、正直いって付いて行くのがメンドクサイと感じることもあったが、個性が強すぎることはあまり否定したくない。 失敗や批判を怖れずに、ガンガンとアイディアを盛り込むことは“ヤリスギ”と思われるかもしれないが、本作のテイストを踏まえると、深く考えずに突っ走ることは悪くはない。 難点としては、映像的な世界に対しては満足することができるが、ストーリー面に対してはそれほど満足することができないところだろうか。 心が弱い人々が多数登場するが、どのキャラクターに対しても感情移入しにくいところがある。 強く生きることを強いられて、弱い面を見せることができなかった寂しい人たちの“弱さ”とパコという“強い”少女との交流を通して、何か熱いものを刻み込んで欲しかったところだ。 ファンタジックな世界なので、ミラクル的なストーリーもあってもよい。 最後は現実的なラインに落ち着いてしまったような気がする。 オオヌキを殺さないで、パコを死なすという展開は意表を付いているのかもしれないが、いい具合にオチが付いていない。 いい具合にオチが付かないので、現代パートに戻って、訳の分からない形で逃げたようなオチというのはいかがなものか。
[DVD(邦画)] 6点(2010-06-08 23:37:47)(良:1票)
262.  ブルーノ 《ネタバレ》 
ハリウッドコメディはそれほど笑えないが、本作は意外と笑えたという印象。虚構の設定と現実が入り混じり、新たな世界・新たな笑いが展開されている。日本では絶対に不可能なことをやっているので、見たことがない未知の世界に対して新鮮な思いや驚愕させられたりもする。何事に対しても妥協なく限度や限界を超えていく辺りは高いプロ根性も垣間見られた。笑いの質としては、上品なものでもレベルが高いものでもなく、かなり下品であることは間違いない。しかし、他人を見下したり、弱い者をバカにするようなムカつく自己満足的な笑いではなくて、カラダを張った自虐的な笑いであったり、ハリウッドセレブや有名になりたい者などを皮肉った笑いなので、嫌いではない。ゲイネタに関しては好きではないが、別に嫌悪することもないので問題なし。相手を完全に怒らせるという笑いはそれほど好きではないので、相手を怒らせながらも呆れさせるという笑いをもっと極めてもらいたいところ。エア○○○編、裁判シーンエキストラ編、黒人の観客が多い子ども番組編、子どもを使って仕事をさせる親に対する面接編、空手道場編、ハリソン・フォードへのインタビューを行う新番組モニター編、スワッピングパーティー編(完全に仕込み)、金網デスマッチ編辺りは好きだが、野外キャンプ編、元大統領候補へのインタビュー編辺りは好みではない。軍隊キャンプ編(ナチス敬礼は悪くない)、中東編、手錠編辺りは製作者の狙い通りに進まず、ややスベってしまったような印象。中東編は物足りないが、あの辺りが限度なのだろう。一般人に追いかけられるシーンをもうちょっと見たかったところだが。 個人的にはラストの金網のシーンがかなり面白いと思う。悲鳴、怒り、中には泣き出す者がいるといった凄まじい喧騒の中で、男二人が金網の中でラブシーンを演じるという構図がシュールであり、斬新なコントラストを生んでいる。感動とはちょっと違うかもしれないが、それに近いものも感じられる。セリーヌ・ディオンの「タイタニックのテーマ」もなかなかセンスの良いチョイスだ。したがって、あの二人の関係をもっとクローズアップしてドラマ仕立てした方がよかった気がする。なんとなく二人でアメリカに旅立って、なんとなく喧嘩して別れて、なんとなくラブシーンを演じるというものではなくて、1本筋が通った流れを構築できれば映画としての仕上がり具合が増しただろう。
[映画館(字幕)] 6点(2010-05-22 23:34:55)
263.  ウディ・アレンの夢と犯罪 《ネタバレ》 
「ウディ・アレンの重罪と軽罪」が好きなので、この手の作品は嫌いではない。 しかし、正面から“罪の意識”を捉え過ぎてしまった感が強く、ストレートに描き過ぎてしまったような気もする。 “悲劇”にも面白いものはあるが、遊びも捻りもなく、本作はあまりにも現実的に描き過ぎてしまったようであり、疲労感が残る映画ともいえる。 罪を犯す前から“罪の意識”に苦しむ弟が、犯罪後にも“罪の意識”に苦しむのは、かなり重過ぎる。 逆に、ラストはアレンらしいといえばアレンらしいが、あっさりとし過ぎている。 “兄弟”という設定が上手く噛み合っていかなかったようにも思える。 犯罪前には、一方は“罪の意識”に苦しみ、他方は“罪の意識”を感じないが、犯罪後には、それが逆転するような仕掛けもあってもよかったのではないか。 また、同じような道を歩いていた兄弟が一つの事件をきっかけに、光と影という全く異なる道を歩み始めるような展開や、光と影という全く異なる道を歩んでいた兄弟が一つの事件をきっかけに光と影が逆転するという展開の方が、映画らしい気がした。 しかし、本作は延々と弟が罪の意識にさいなまれて不眠症に陥り、兄がその弟に悩まされるだけだ。 ユニークさや不条理さもなく、現実的な苦悩を見せ付けられても、重々しさは堪能できるものの、面白みはさすがに感じにくい。 さらに、二人の“夢”であったような「カサンドラズ・ドリーム」号の取扱もやや微妙。 この小さな“夢”を得ようとした結果、どんどんと欲求がエスカレートしていくにしたがって、どんどんと落ちて破滅していく姿も見たかったところ。 小さな欲求によって小さな代償を払い、次第に戻ることの出来ない大きな代償へと上手く繋がっていくようなところはなかった。 また、調べてみるとカサンドラは、100%当たるのに誰も信じないという呪いが掛けられた予言者であるらしい。 トロイの木馬も予言したらしいが、誰も信じずにトロイの民は破滅したらしい。 そういう意味をタイトルに込めたのだから、兄の恋人の舞台の設定や彼らの父親にそういう予言者の役割を担わせるべきだろう。 父親は意味深なセリフを発していたが、あれでは弱いのではないか。
[映画館(字幕)] 6点(2010-05-09 12:37:42)(良:1票)
264.  月に囚われた男 《ネタバレ》 
一般的な評価も高く、賞も受賞しているようだが、個人的にはハマることはできなかった。 良い設定のアイディアがひらめいたが、それを上手く発展させることはできなかったという印象も受ける。 エンターテイメント性を重視せずに、精神的な世界を描こうとしたことが自分には合わなかったのだろうか。 SFファンを楽しませてくれそうな小ネタや不可思議な設定が満載だが、あまりそういったことにも深い関心はない。 3年という労働期間が、彼らにとっての寿命なのか、月面作業による肉体崩壊(宇宙では骨がボロボロと聞いたことがある)なのかどうかも、何故ロボットではなくてクローンが働かされるかも、何故韓国企業なのかも、自分にはどうでもよい話だ。 クローンの悲哀のようなものは見ていても面白みには欠けた。 もちろんクローンではなくて、生身の人間の姿が投影されているとは思う。 単身赴任で何年も家族に会えないサラリーマン、会社で酷使されて使い者にならなくなったらポイ捨てされる労働者などといった、実際の生身の人間の悲哀のようなものを投影しているようには思えるが、上手くまとまっている印象はない。 ラストで「俺たちは人間なんだ」って言われても、あまりグッとは来ないが、コンピューターシステムのガーティがサムの味方をすることを考えると少し感じるものもある。 ガーティは何代もサムのクローンを見守ってきて、サムに対して友情に近い感情を持ち始めたのではないかと思う。
[映画館(字幕)] 6点(2010-05-09 12:36:44)(良:2票)
265.  バッド・ルーテナント 《ネタバレ》 
オリジナルは未見。 有名のようだが、本作の監督についてもよく知らない。 ストーリーは理解できるが、正直言って、本作を通して何を伝えたかったのかが理解しにくかった。 ガッチリとハマる人にはハマるようだが、自分はそうではなかったようだ。 爬虫類メイン、死者のダンス、長回し、ニコラス・ケイジの独特の演技など、面白い部分は多々みられるが、ややヒネリのあるだけのクライムサスペンスという印象も受ける。 肝心の“善悪”の扱いについて、答えのようなものが自分には見えてこなかった。 善と悪の間で葛藤するというよりも、銃とバッジのチカラを借りて自己の利益だけに突っ走り、ただのラッキーで事態が好転しているようにも見える。 それはそれでもよいのだが、何か分かりやすいポイントも欲しかった。 本作の冒頭で、賭けの対象にしているのに溺れそうな囚人を救ったり、ギャングの仲間になり下がったのにパイプを証拠にデッチ上げたりと、土壇場で理屈抜きに翻意していることが、良心ともいえないのではないか。 ただ、全てが万事解決というわけではなくて、薬物中毒に関しては簡単に解決というわけにはいかず、それがなんともいえないラストに繋がっているようだ。 様々な事態が悪化して、どんどんとドツボに陥っていくニコラス・ケイジの演技は確かに素晴らしい。 衣装もネクタイも終始変わっていないような気もする。 実生活でもリアルで財政難に陥り、訴訟を起こされているだけのことはある。 本作の主人公のように事態が好転していけばよいが。 ニコラス・ケイジについてはお腹いっぱい堪能できるが、ヴァル・キルマーとエヴァ・メンデスについては役不足であり、物足りない。 ヴァル・キルマーについてはニコラス・ケイジと対極的な役柄でも与えておけばよかったのではないか。 表向きは善良だが、裏では心から腐っているような存在。 ラストの展開において彼の性格が少し見えたが、あれだけでは足りないだろう。 エヴァ・メンデス辺りには、ニコラス・ケイジが道を踏み外しそうになったところを元に戻すようなきっかけを与える存在になって欲しかった。 “銀のスプーン”辺りのエピソードではやや弱いか。 あまり深く考えたり、善悪といったことに捉われずに、個性的な映画には仕上がっているので、本作の雰囲気を楽しく鑑賞した方がよかったかもしれない。
[映画館(字幕)] 6点(2010-04-04 18:12:56)(良:2票)
266.  ロックンローラ 《ネタバレ》 
それほど悪くはないが、それほど良いとも思えない作品。 悪くはない点としては、鋭いユーモアとエッジの効いたガイ・リッチー独特のセンスは光っている。 ハリウッドコメディ作品を観ているときよりも笑っている時間が多かったような気がする。 ベタな部分でもあるが、「オマエ、俺とやりたいのか」という意表を付いたゲイネタの使い方などが悪くなかった。 このネタを途中でつまらないネタ晴らしをせずに、ラストまで引っ張ってもよかったのではないか。 それほど評価できない点としては、やはりゴチャゴチャし過ぎている。 ストーリーはほぼ100%理解でき、登場人物もほぼ100%把握できるにも関わらず、整理されておらず雑然としている。 そういう雑然さがいい効果を生み、評価される場合もあるが、本作はそういう効果を生まなかった。 ゴチャゴチャしているために、肝心の主題ともいえるものが見えてこず、観ていて途中で飽きてしまうところもあった。 「あぁ、なるほど“ロックンローラ”とはこういうことだな!」というぶっ飛んだ生き様が感じられない。 ボスの忠実な腹心、女に動かされて強盗をする奴、ただのジャンキーが“ロックンローラ”というわけではあるまい。 こいつら全員ヤバイな、イッチャッているなというものがなく、ある種ぬるま湯のような生き様しか描かれていないのは残念だ。 全員が主役というような位置付けのようであり、ユニークなキャラクター像はそれぞれ描かれているものの、個々のキャラクターが逆に弱まったような印象も受ける。 存在感を発揮しなければならないボスの腹心やボスの義理の息子があまりにも存在感が弱すぎるのではないか。 彼らが活躍してくれなければ、本作が躍動しない。 また、“絵画の行方”“裏切り者は誰か”という根幹に関わるネタも上手くストーリーに溶け込んで活かされているとは思えず、ストーリー展開の上手さが感じられない。 “裏切り者は誰か”というネタを活かしたいのならば、もっと伏線を張っておいた方がよかっただろう。 “絵画の行方”もいい意味での裏切りやドタバタが少なく、サプライズ感が生まれなかった。 会計士への求婚もラストのオチを付けるために、取ってつけたような仕上がりとなっている。 全体的にスムーズで精錬された流れを構築できずに、行き当たりばったりに進んでいったような印象を拭えない点がマイナス評価となってしまった。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2010-03-20 00:22:11)
267.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 
つまらなくはないが、期待度が高かっただけに少々物足りなさも覚える。全体的にドキドキ感やワクワク感には乏しく、爽快感やサプライズも感じられなかった。もっとホームズを危機やピンチに陥らせて、もう少しハラハラさせた方がよかったのではないか。危機に陥ったとしても明晰な頭脳で切り抜けたり、本当に危険な際にはワトソンが助けてくれたりしないと盛り上がらない。屠殺場でのアイリーン救出劇や大爆発といった展開はもちろん用意されているが、基本的には予定調和気味の仕上がりといえる。 アクションをメインにしてもよいが、ホームズらしい謎解きという要素がほとんど見当たらないのも残念だ。ホームズがおかしな動きをしたり、やたら変な物をクローズアップして、伏線的なものはきちんと張っているが、観客が推理するという仕掛けにはなっておらず、観客はやや置き去り気味となっている。最後に一気にネタ晴らしされても、「ふ~ん、そうだったんだ」位にしか感じられない。 その肝心のトリックや謎や陰謀も分かるごとにテンションが下がってしまった。自分に従わない国会議員を殺すというどうしようもないネタには拍子抜けであり、トリックは古典的かつ既視感があるだけではなくて無理があるものばかり。ブラックウッド卿自身にカリスマ的な“悪”が見えてこないのもマイナスだ。 そのようなネタやトリックを無視できるほど、ホームズとワトソンの相棒愛やコンビが光っていたかというとそうでもない。ロバート・ダウニーJr.は頭脳明晰ではあるものの、人間的にやや足りず、女には甘いというルパンⅢ世のような親しみやすいユニークなキャラクターには仕上がっているが、アイリーンは峰不二子、ワトソンは次元や銭形のようなキャラクターには仕上がり切っていないため、肝心のホームズとワトソンの友情や信頼感などをそれほど深いものだとは感じられなかった。 変装して彼を見舞い治療するという姿にはやや驚いたものの、それだけでは足りない。 モリアーティ教授の登場は嬉しいが、こちらもどうしようもない動機にはテンションが下がる。モリアーティ教授を登場させるくらいならば、ホームズもブラックウッド卿も実はモリアーティ教授の掌で転がされていただけ、事件は何も終わっていない、むしろ今から事件が始まるというオチくらいのものを出して欲しいところ。 そうしないと続編に対する期待感を欠くこととなるだろう。
[映画館(字幕)] 6点(2010-03-15 21:03:57)(良:3票)
268.  パラノーマル・アクティビティ 《ネタバレ》 
殺人鬼やモンスター・ゾンビを登場させて、派手な流血を好むと一般的に思われているアメリカ人としてはなかなかユニークな作品を作ったという印象。恐怖を与える存在が具象化されることはなく、音や影や足跡などを利用して得体の知れない“存在”で驚かせる発想やアイディアはそれなりに評価したいところ。 また、(実際には大して起こらないが)何かが起こるかもしれないという人間の感じる恐怖感を上手く煽り、恐怖感を効果的に利用するできているのではないか(個人的にはそれほどの恐怖は感じなかったが)。製作者の計算なのか、予算の関係なのかは分からないが、観客の“恐怖”が発散されずに最後まで“維持”されていくので、ラストに上手く繋がっていく。さらに、素人のような俳優、ブレまくるカメラの映像、いい位置にセットしてある寝室のカメラなどのマイナス的な要素も逆手にとって効果的に利用している。しかし、全体的に作り込みの甘さ、粗さ、稚拙さも目立つ作品(意見は分かれるかもしれないが、「ブレアウィッチ」の方が作り込み度は高かったと思われる)。 低予算による試験版のようなものなので、この程度でも仕方がないかもしれないが、もうちょっとだけでも丁寧に作成し、もう少し様々なアイディアを盛り込むことができていれば、評価はもっと高まっただろう。夜間に突っ立っているだけ、突然ベランダに行くといったネタもあるが、ラスト付近で突然おかしなことを言い始めるといった“不気味さ”などをもっと前面的に押し出してもよかったか(ラスト後の余韻は評価)。序盤は楽観的な雰囲気を出していてもよいが、楽観が悲観に上手く変わるような演出も求めたいところ。 ところで、やむを得ず、渋谷で鑑賞することとなったが、観客層が非常に若かった。 驚いた声を出す・隣の連れと常にしゃべり続ける・前の席の後ろに足裏をくっ付けるような体勢で見るといったように鑑賞態度は非常に悪かったが、リアルに感情を表してくれるので、本作のような作品を鑑賞するにあたっては、悪くはない環境だった。 予告編や紹介VTRなどを見ていると、ラストではだいたい“アレ”が来ることが分かるので、自分は構えることができたが、不意を付かれると相当にビビルようだ。 後ろの席から、どれほどビックリすれば、そのような衝撃を与えることができるのかと思えるほどの衝撃が自分の席を直撃した。 映画よりも、それが一番ビビった。
[映画館(字幕)] 6点(2010-02-20 13:41:41)(笑:1票)
269.  ラブリーボーン 《ネタバレ》 
素晴らしい作品だと思うが、同時につまらない作品でもある。ジャッジするのはかなりやっかいな作品だ。ただ、ピーター以外には作れないような作品に仕上がっており、独創性は評価したいところ。初見では上手く感じ取れなかったが、何回か見ることがあれば、評価は変わると思われる。 「事件の真相」「殺された少女が幽霊になり、家族にメッセージを送って犯人を暴く」「残された家族が犯人に復讐をする」といった視点からみてしまうと、はっきり言ってつまらない作品としか思えないだろう。本作はそういった視点をメインには描こうとしていない。大人の事情からかサスペンスタッチが前面に出ているテイストとなっているが、ピーターはそういった面はもっとカットしたかったのではないかと思えるほどだ。スタンリー・トゥッチが必要以上に頑張り過ぎてしまったのも誤算だったか。おかげでバランス感が悪くなった点は否定しがたい。 本作は「殺された少女が天国に行くまでの過程」及び「残された家族・関係者が再生していく姿」を描いた作品であると思われる。そういった視点から見てみると、本作の評価はがらりと変わると思う。ピーターにとっては、犯人の存在なんて本当はどうでもよかったのではないかと思われる仕上りだ。 殺された少女の少女らしい想いや、家族の苦しみや悲しみが、ストレートではないものの、時間を掛けてゆっくりと丁寧に描かれている。しかし、本来描きたい部分を何故か真正面から十分なヒカリを当てずに描こうとしており、豪華な俳優を起用しているのも逆に計算外だったか。各キャラクターを活かしきれていないと感じてしまうのは仕方がない。 面白いと感じられる点は、関係者それぞれが“愛”を見出して、スージーの死を受け入れていくところだ。スージーのボーイフレンドや妹は新たなパートナーを見つけて愛を感じたことで、スージーの死を受け入れることができたのではないか。また、娘の死という事態に上手く向き合っていくことができなかった父母も時間の経過とともに悲しみを癒して、それぞれの壊れかけた“愛”を再認識することで娘の死と向き合うことができるというまとめ方はなかなか感動的なところだ。喪失感・無力感から救われていく“希望”のような光が見えたような感じがした。しかし、つまらなさを否定しにくく、アプローチが監督の思惑とはズレていったようなところがあるので、賞賛しにくい映画ではある。
[映画館(字幕)] 6点(2010-02-09 23:03:10)(良:1票)
270.  重力ピエロ 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 雰囲気や仕上りは悪くはないので、評価は低くはない。しかし、「どこが良かったか」と問われると、なかなか答えが見当たらないという困った作品。家族の絆に対して感動できるものでもなく、不可思議なストーリーやサスペンスに関しては文句を付けるレベルではないが、回りくどさにやや疑問点も生じてしまう。 “たかだか・・・”という事柄がいかに関係者を苦しめるかが痛いほどに伝わってくるが、一歩間違えれば「改心しない犯罪者は殺してもよい」という極端な結論が導かれてもおかしくはない。どんなに苦しいことがあっても、笑って明るくしていればよいというメッセージは心に響くので、ありきたりでキレイごとのオチになるかもしれないが、“復讐”を果たすことなく、犯罪者にある程度のダメージを与える程度に済ませてもよかったかもしれない。復讐を果たすことである程度スッキリとするかもしれないが、別の苦しみにさいなまれることになるだろう。しっかりとしていないかもしれないが、兄なのだから、やはり弟を止めないといけない。兄だからこそ、弟を止めないといけないというべきだろうか。逆に、兄が犯罪を企てているとすれば、弟だからこそ、兄を止めるということもあるだろう。「グレープ」のやり取りのように一緒になって、笑って明るくすれば、弟の心の傷を癒してやることができるのではないか。“血”よりも家族の“絆”は濃いのであり、“最強の家族”というのはそういうことではないだろうか。 (統計学的なデータは分からないが)暴力的な性質は先天的にひょっとして遺伝するかもしれないが、犯罪に対して犯罪で仕返しをするというのはいかがなものか。自己の遺伝子を否定したいにも関わらず、自らそれを認めることにはならないか。せっかく産んで育ててくれた父母の恩に報いることにもならないだろう。どんなに苦しいことがあっても、“復讐”をしなくても最強の家族の“絆”はそれを乗り越えることができるはずだ。 もし、“復讐”を肯定ないし是認できるレベルにもっていきたいならば、もう少し深く兄弟の内面に切り込まないといけない。“法律”“倫理”といったものを超越できる作品レベルに達しないと、「殺人はやっぱりダメだよ」という意見が多くなっても仕方がないだろう。原作を読んでいないので、こういうことしか言えない。
[DVD(邦画)] 6点(2010-02-08 23:09:26)
271.  フィッシュストーリー 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 「フィッシュストーリー」という一曲が世界を救うという流れだが、ほとんど直球がなくて、大部分が変化球というところは逆に面白い仕組み。 『それ関係ないやん』という突っ込みを観客に入れさせることを当然に念頭に置かれて製作されているだろうが、狙い通り突っ込みを入れたくなる流れとなっている。 マジメに直球を待っていると、意外な変化球に戸惑わされることになるだろう。 この世の中では何が起きても不思議ではないということをユニークな視点から感じさせる作品となっている。 また、70年代はパンクロックに情熱を燃やす青年たちを描き、80年代はオカルトチックな昭和テイストを感じさせ、00年代はアクション作品を描き、10年代はSFテイストを交えながら、終末をまさに迎えようとする3人の男たちによる独特な世界を描かれており、年代ごとに演出のテイストを変えていることは評価したいところ。 ただ、どういう趣旨かは分からないが、多部未華子が出演している大部分のシーンにはどこか違和感を覚えさせる。 いい意味でのアンバランスなバランス感覚に優れている作品だが、この部分が悪い意味で失敗しているように思われる(別に彼女のことは好きでも嫌いでもない)。 「正義のみかた」というキーワードから、特撮やアクションヒーローのようなテイストに振りすぎてしまったか。 もともとリアリティのある作品ではないが、胡散臭さが倍増したというイメージ。 こういうテイストが好きな人もいるとは思うので、正解・不正解という単純な割り切りはできないが、個人的な感覚では少し合わなかったという印象。 また、「シージャック発生○分前」というテロップを出すことに対しても違和感がある。 そんな種明かしをすることによって、どういう効果を期待しているのだろうか。 こういうことは、むしろ突然やった方が観客にインパクトを与えられるのではないか。 逆鱗による居酒屋での“フィッシュストーリー”の種明かしも、彗星の爆発のあとのオーラスに持ってきた方がいいかなという印象。 “フィッシュストーリー=ほら話”というオチをもってくると、今までのこと全て現実なのか虚構なのか、観客に対して“混乱”させる効果を生じさせることができるだろう。
[DVD(邦画)] 6点(2010-02-07 20:37:03)
272.  オーシャンズ 《ネタバレ》 
興味を惹かれる映像や、迫力のある自然の驚異的な映像には確かに圧倒される。 我々が知っていると思っている“海”という存在の新たな一面を垣間見ることができる。 ただ、映画としては面白みに欠ける作品。ドキュメンタリーなので面白みに欠けるのは仕方ないとはいえるが、既存のドキュメンタリーの枠からは飛び出している訳ではなく全体的に単調な仕上がり。前半は新鮮さがあるため画面に集中できるが、後半に進むと慣れてきて飽きてくるところもある。 驚異的なシーンだけで構成して観客に驚きを与えるのではなくて、『食物連鎖』『自然と自然との共生』『自然の驚異』『人類の過ち』『南極と北極』といったテーマが見えるような仕組みで構成している。こういった作りには好感を持てたが、全体的に“サプライズ”感が乏しい。多くのシーンは脳裏には焼きついたが、「シャコが結構強い」ということがインパクトの残るデキでは物足りないのではないか。 また、「アース」ならば人類が登場してきてもおかしくはないが、「オーシャンズ」で人類が登場するのはやや違和感あり。 乱獲という問題はあったにせよ、広大な海洋において人類が影響を与えられるほど、人類の能力はそれほど高くないのではないか(衛星からの写真によって川による海洋への汚染の影響はあったが、どういった影響が実際にあるかは不明)。 多くの海洋生物は確かに滅んだかもしれないが、それは自然の摂理であって、果たして人類の責任といえるかは分からない。 人類の影響を描くにするのならば、もっともっとエゲツナイ映像も用いてもらわないと観客に訴えるチカラには欠ける。 網に掛かった魚たち、ヒレだけを切られて投げ捨てられるサメ(実際にはロボットサメ)、海に捨てられたショッピングカート程度では手ぬるいと言わざるを得ない。 本作を観た者に本気で“海”のことを考えてもらいたいという気迫がない。 そもそも何をして欲しいというメッセージがないので、観客は混乱しそうだ。 ストレートに『自然を大切にしましょう』ということを大きな声で発することは大事なことかもしれないが、“映画”ならではのスマートな伝え方というものがあるのではないか。 子ども達に対するメッセージなのでストレートに伝えたいのかもしれないが、やはりこの辺りはもう一工夫して欲しいところ。 もっとも海がダメになる前に、人類が先にダメになるだろう。
[映画館(吹替)] 6点(2010-01-24 01:02:27)
273.  脳内ニューヨーク 《ネタバレ》 
強引に点数を付けるとこの程度となるが、点数を付けにくい映画。 満点を付けてもいいかもと思うほど、ある種のレベルを超えている映画でもある。 ぶっちゃけると1割も理解はできなかったと思う。 何を描きたいのかについては、ボンヤリとしたイメージしか伝わらず、言葉で表現するのは難しい。 “死”“生”“人生”についての映画なのかな程度としか言いようがない。 “自分”というものは、存在しているようで存在していないものなのだろうか。 ただ、この不可思議さや難解さは、「フザケルナ」と頭にクルようなものではなくて、どこか心地よさを感じられるものだ。 描かれている事象はそれほど難解ではないので、まったく飽きることはなく、不可思議な世界に酔いしれることができる。 “緑の○○○”“燃えている家”など、あまり意味など深く考える必要はなく、何も考えずにアタマを映画に委ねた方がよさそうだ。 終盤でリアルな“現実”が明らかになり、種明かしでもあるのかと思っていたら、そういうこともなく、“混乱”させたままスパッと観客を突き放す辺りも常人とは思えない発想。 “現実”や“虚構”と考えること自体が凡人の発想なのかもしれない。 映画に描かれた世界は、全てが“現実”であり、全てが“虚構”でもあり、又はどちらともいえない第三の世界と捉えるのが、カウフマンの発想なのだろうか。 毒にも薬にもならない映画に見飽きている人にはおススメできる映画に仕上がっている。 それにしても映画監督はこういう難解な作品にチャレンジしたがるものなのだろうか。 初映画監督作品でこのような作品を作ってしまう、カウフマンはやはりとんでもない奇人だ。 次回作も楽しみだが、いきなりハードルを上げてしまうと飛び越せなくなってしまう。 カウフマンのことだから、またいい裏切りをしてくれそうだが。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-21 23:36:39)
274.  パブリック・エネミーズ 《ネタバレ》 
評価しようと思えば、いくらでも評価はできる作品には仕上がっている。 映像面においては、素晴らしいシーンや素晴らしいアングルなど、見所で溢れている。 例えば、森の中でデリンジャーが銃を乱射するシーンを映しながら、相手の動きまでをも同時に捉える場面などには唸らされる。また、個人的に気に入ったのは、“静”から一気に“動”へと展開していく演出だ。冒頭の脱獄シーン、銀行強盗シーン、アパートやクルマの中にいる捜査官を襲う各シーンなど、少なくとも4~5ヶ所はそういった演出を試みている。このような演出により、作り物らしくはないリアリティさは生まれている。ただ、マイケル・マンらしい臨場感のある演出は冴えているが、映画としては面白みに欠けるような気がする。 特に、人間ドラマが希薄のように感じられた。ジョン・デリンジャーという人物がはっきり言って見えてこない。人質に取った女性にコートを貸してやるところを含めて、もちろん断片的にはどのような人物かは分かるが、デリンジャーに共感したり、彼の生き様に感動したりはできにくい。ジョニー・デップの圧倒的な存在感により、彼の姿は確かにカッコよくは描かれているが、彼の内面を深く描けば、もっともっとデリンジャーは輝きを増したのではないか。本作のメインになると思われたデリンジャーと恋人のビリーの肝心な関係も深くは描かれていない。深まりそうになったところで、逮捕されてしまうので仕方がないところはあるものの、彼らの関係には物足りなさを覚える(ラブシーンは綺麗に撮られていたが)。 デリンジャーとFBI捜査官のパーヴィスの関係も何も伝わってくることはなく、パーヴィスの執念といったものは感じられない。出番の少なかったフーヴァーの方が存在感を発揮するようではダメだろう。緊迫感を伴って追われる者を描くためには、追う者の存在感が強くなければ、面白みがなくなる。 そして、デリンジャーとその仲間たちの関係もイマイチなので、初見では誰かが死んでも、訳の分からない奴が死んだとしか感じられない。FBIサイドとしても増強したメンバーを含めて、彼らの存在感が強くはないので、この部分においても面白さが感じにくい(見に行く映画を当てるというシーンなどはあるが)。 人間ドラマをメインにしたタイプの映画ではないということもできるが、ストーリー上の面白さを感じにくいタイプの映画になってしまった。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-13 22:32:18)(良:2票)
275.  カールじいさんの空飛ぶ家 《ネタバレ》 
3D字幕版を鑑賞。それなりに楽しむことはできる作品には仕上がっている。妻を亡くし孤独になって旅に出るという少々センチメンタルで感傷的なストーリーになると思っていたのに、いつのまにか“奇妙な鳥を巡る戦い”になってしまったのは物足りないが、子ども向き作品なのでこの辺りは諦めるしかない。ただ、それなりには楽しめたが、それだけで良かったかは疑問が残るところ。ピクサー作品は失敗が許されなくなってしまったためか、ディズニーに完全買収されて歯車が狂ったのか、近年の作品は心に響く作品でもなく、ドタバタ感だけが残るという印象が強い。他のピクサー作品ももちろんドタバタしているが、「メッセージ性」「ストーリー」「アクション・映像」が三位一体となっており非常にバランスが優れていた。しかし、本作は「アクション・映像」の比重が多く、ややバランスが悪いような気がする。小さなお子さまは喜ぶかもしれないが、これでは見終わった瞬間「面白かったね」だけで終わる作品となってしまう。ピクサー初の3D作品だから、「アクション・映像」の比重が多いのかと思ったものの、それほど3Dを活かした作品でもなかった気がする。「カールじいさんがアルバムを眺めるシーン」など、もちろん素晴らしいシーンもあるが、“夢の実現”“冒険への憧れ”“過去の思い出に囚われて生きる希望を見出せない”“孤独か友情か”といったメッセージ性が深く感じ取れないところがある。深く感じ取れないのは、マンツに思い出の詰まった家に火を付けられて、ケヴィンよりも家を守ろうとするシーンと、家を放り出してラッセルやケヴィンを助けようとシーンの対比が上手く働いていないといったところにもあるような気がする。「たかが家だ」というカールじいさんのセリフはカッコいいが、カールじいさんの心境の変化が分かるように、もっと分かりやすく演出した方がよかったのではないか。また、“滝に辿り着いて夢を実現したものの、孤独のままで何も変わらない”というシーンももっと感傷的に描いて欲しかったところ。過去の楽しい思い出ももちろん重要だが、我々は現在を生きているわけであり、現在の仲間たちと過ごす時間もまた重要で楽しいものというメッセージに繋げたい。ケヴィンとラッセルを助けたいというカールじいさんの“情熱”を肌で感じられるレベルまでに仕上げることができたら、もうちょっと高い評価をしたかもしれない。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-05 23:06:48)
276.  ソウ6 《ネタバレ》 
デキは意外と悪くはなく、合格ラインは突破しているのではないか。驚くようなトリックはないものの、ゲーム自体はなかなか凝ったものとなっている。また、ホフマン刑事にカリスマ性がないことが欠点だったが、そういう欠点を長所に変えるところがこのシリーズの良さでもある(Ⅲでも使った手法)。直接殺人を犯すという暴挙に出た彼に後継者失格の烙印を押して、今後のシリーズ展開を膨らまそうという狙いもみられる。 気に入らないところは、保険会社の担当者を殺す必要があったのかというところだ。彼のゲームのプレイを見ている限りでは、それほど悪い奴ではない。自分だけが生き残ることや自分が痛みを感じないことを第一に考えているわけではない。計算や数字で判断するのではなくて、純粋に仲間を助けたい、家族や子どもがいるかどうか、というような点で判断している人間的な一面が垣間見られる。 彼がどういうプレイをするかを母子が判断するという“ゲーム”があるとすれば、彼のプレイは間違っているようには思えず、母子の“ゲーム”はミスではないか。彼を殺さないことによって、今後は更生して何人もの命が彼の保険によって救われる可能性も出てくる。 彼をたとえ殺すとしても、もうちょっとタメが必要だったと思われる。母親がいったんは殺そうと決意するもののやはり最後には殺せないと嘆いて、観客に対して安堵感を与えておきながら、最後の最後に息子がもう一撃食らわせるということが必要だったのではないか。“彼が助かった”と感じさせないと息子の一撃が活きてこない。 “ゲーム”の趣旨を考えると、殺すこと自体賛成できないうえに殺し方も面白みに欠けるので、この点がマイナス評価となる。一応、“生への実感”“生に対する感謝”が本作のテーマでもあるわけなので、なんでもかんでも殺せばよいという問題ではない。父親を見殺しにされたから“むかついたので殺します”では、復讐や暴力を是認する残酷なだけのものであり、映画としての“深み”もなくなってしまう。 彼を殺すか殺さないかというのも製作者に対する一つの“ゲーム”だったような気もする。化学薬品を使った面白い殺人方法を思いついたから、実現させてみようぜというノリではないか。ハロウィーンシーズンに楽しむサスペンスホラーなので仕方がないとはいえ、製作者自身が“ゲーム”に負けているような気がする。
[映画館(字幕)] 6点(2009-11-08 22:37:41)(良:2票)
277.  沈まぬ太陽 《ネタバレ》 
202分という上映時間の割には、長さを感じさせない映画に仕上がっており、この点に関しては大いに評価したいところだ。 原作は読んだことがないが、その膨大な原作を練りに練りこんで脚本化して、一人の男の半生を興味深く描き込むには相当な労力を要したことだろう。 飽きるということは全くなく、むしろもっともっと色々なことを深く描いて欲しかったというところが正直な感想。 ただ、つまらないという印象は全くないが、男の人生・生き様に関して、深く感銘を受けるというものもなかった。 実際の事故や人物をベースに描いているので、深くえぐり取ることができずに、ぼやかさざるを得なかったのかもしれないが、ストーリーを流すことを主眼に置きすぎて、ポイントが少々ズレてしまったところがある。 企業も政治も何もかも「どろどろ」としているが、その「どろどろ」が上手く活きていないような気もする。 上映時間だけは長いが、長ければそれだけ深く描けるということはないようだ。  観客に訴えたいポイントを“核”にしなければいけないが、その“核”が少々見えてこない。 『苦しみの果て、悲しみの果てのアフリカの地で恩地が何を見て、何を感じたのか』が自分には深いところが分からなかった。 恩地とココロを通わして、何か同じことを感じ取ったり、考えることができなかったのは自分が幼すぎるからだろうか。 「逃げずに立ち向かい戦い続けた男」「波から落ちないように戦い続けた男」「戦うことから逃げてしまった男」など、様々な男の生き様と、その男を支え続けた女の姿が描かれている。 自分自身の性格が「逃げずに戦う男」ではなくて、「戦うことから逃げてしまう男」なので、本作の“核”が感じ取れないのかもしれない。 兄が妹に対して、「生きている時代が違うから分からない」というセリフがあったと記憶しているが、まさにそういう感想だ。  ただ、人類が生まれた地であるアフリカという場所に立って、再び生れかわれる、再びスタートできるというような気持ちがあったのかもしれないというようなことは感じられた。 自分自身との苦しい戦い、悲しみの果てにも人間はやり直せるというようなメッセージをもっと本作から深く感じ取りたかったところだ。
[映画館(邦画)] 6点(2009-11-02 00:30:44)
278.  さまよう刃(2009) 《ネタバレ》 
原作未読。よく出来た映画であり、何かを考えさせられる映画でもある。ただ、“深い”部分まで描かれているかといえば、そういう作品でもない。表面的な部分をすくった程度であり、ココロに深く何かを刻まれたという想いはない。“傑作”というジャッジをするには至らず、“良作”というところではないか。 しかし、寺尾聰さんの演技は評価に値する。演技の上手さや下手さの判断がそれほどよく分からないが、寺尾聰さんの演技はリアルであり、ナチュラルである。実際に娘を殺されて、未来を奪われた人間としか映らなかった。そこには“答え”が分からずに、呆然として、さまようしか術がない男しかいなかった。 “復讐”ということは“答え”ではないかもしれない。しかし、被害者の遺族の感情とすれば、何らかの“答え”は必要なのだろう。“復讐”以外に答えを求めるとすれば、「立法」と「矯正行政」の範疇となる。せっかく裁判員制度も導入されたのであるから、もう少し刑罰の幅を広げてもいいかもしれない。複数名を殺害しないと死刑にならないというのはおかしな裁判判例であるし、殺害の意思がなければ殺人罪にも問えないこともある。過去の判例と照らし合わせて判決を下すのではなくて、裁判員制度ではもっと様々な事情を鑑みて判決を下されるべきではないか。「1人でも殺せば死刑になることがある」という判決を重ねないと、犯罪の抑止力が損なわれる恐れがある。 日本には「死刑」「無期懲役」という刑罰はあるが、「無期懲役」には仮釈放というおなしな制度もある。この際、「終身刑」という新たな刑罰を創設し、被害者遺族の感情に応える立法も必要な時期に来ているのかもしれない。また、刑務所にいったん入っても再犯するような事態を極力避けるような矯正行政の在り方や社会の仕組みも問われるべきだろう。罪を犯した者が刑務所に入ることによって、誰しもが納得できるようなシステムを構築することが、被害者の家族の感情の軽減や犯罪の抑止力といった効果が期待できる。 なかなか簡単には社会は変わらず、変えることもできないが、よりよい方向に変える社会作りに我々は貢献したいものだ。 現在の動きは、逆に「死刑制度」をなくそうという動きすらある。 被害者の想い、加害者の事情、人を裁くことはそれほど簡単なことではないが、犯した罪に応じて厳罰を処するということはあってしかるべきであろう。
[映画館(邦画)] 6点(2009-10-19 21:20:50)
279.  カイジ 人生逆転ゲーム 《ネタバレ》 
原作はかつて“沼”辺りまで見ていたような思い出がある。本作に描かれているゲームはかなり簡略化されているだけではなくて、ポイントが少々ズレているので、それぞれのゲームの面白みは薄れている。カラクリを知っているためか、それとも演出がマズいためなのか、ゲームに息を呑むような緊迫感があるわけではないので、評価を下げたいところだが、本作のメッセージがそれほど悪くはなかったので少々評価を上げたい。 脚本家の大森美香は、金を持っているから「勝ち組」とか、金を持っていないから「負け組」といったことで“人”を判断してよいのかということをメッセージとして伝えようとしていたのではないかと感じた。“金のため”に平気で仲間や他人を裏切って、それによって「勝ち組」ということになるのならば、「勝ち組」になんてならなくてよい。カイジが船井や利根川に勝てたのはイカサマというよりも、相手のイカサマや能力を逆用しただけだ。 カイジは友達の連帯保証人になっただけにも関わらず、限定ジャンケンの負けを被り(一人で十分なのに一緒に落ちるというのはいかがなものか。おっさんの負けを被ったあとにおっさんも地下に落ちてきたという流れの方がよい)、勝利した金を遠藤にかすめ取られ、それでもなお、おっさんと交わした“約束”を守ろうとしている。 カイジは誰も裏切ることはせずに、佐原や石田のおっさん、そして遠藤までをも最後まで信頼しているのである。現代にはあまり存在しないバカ正直なオトコだが、カイジは「勝ち組」でも「負け組」でもない何か新しい“階層”にいるような気がした。 一寸先は闇である不況時代においては、そういう人間こそ、真の「勝ち組」といえるのではないかというメッセージを受け取った。1年前は金を死ぬほどもっていても、1年後には破産するような時代である。「勝ち」でも「負け」でもない、人間としての当然の在り方を求められる時代ではないか。 あのシチュエーションで、遠藤が組織に歯向かってでも5千万円をカイジに貸すということは、原作的にはあり得ない流れだが、そういうカイジのバカ正直さ(自分のことを最後まで良い人と言う)、他人に対する信頼を、彼女なりに信じてみたくなったのではないか。 彼女もいわゆる「勝ち組」から脱して、違う“階層”に進みたかったのかもしれない。 最後は騙し討ちをしているが、“金利”という名目なので仕方はないだろう。
[映画館(邦画)] 6点(2009-10-19 00:06:08)
280.  ココ・アヴァン・シャネル 《ネタバレ》 
シャネルの生き様や彼女のファッションに関しては、ほとんど前知識なし。フランス語はよく分からないが、“アヴァン”は“前”という意味があるようであり、“シャネルになる前のココ”というタイトルになるようだ。自分はデザイナーとしてのシャネルに関心があったので、一人の女性としてのココ・シャネルにはそれほど関心がなく、大きな感銘を受けるほどのものはなかった。 あまり面白みはない作品ではあるが、オドレイ・トトゥの表情が非常に印象的に描かれている。冒頭から憂鬱そうな表情を浮かべている。「退屈だと老けてみえる」というようなセリフがあったと思うが、まさにその通りである。裕福なバルザンの家に転がり込んでも、浮かない表情はそのままだった。しかし、“ボーイ”カペルとの2日間の小旅行ではその表情が一変している。生気のない表情から生き生きした若々しい表情へと変化している。“ボーイ”カペルとの別れや死で再びその表情も曇ってしまうが、最後のコレクション時の表情もまた印象的なものとなっている。“ボーイ”カペルと過ごした際の幸せそうな表情とは異なるものの、新たな生きがいを見つけたようなこれまで見せたことのない不思議な表情を浮かべている。オドレイ・トトゥの表情を見ているだけで、色々なことが伝わってくるような気がした。表情だけで内面を描き出すという演技は評価したいところだ。 本作は「愛している」「愛していない」、「結婚する」「別れる」というような単純な二面で割り切れるようには描かれていないのも特徴。人間の感情などは複雑極まりないものだ。映画においてはその複雑性を描くことは本来難しいものだが、本作においてはそれがきちんと描かれているようには感じられた。女性監督だからか、繊細なあやふやさがいい効果として発揮されている。 また、実際はよく分からないが、本作の中のココ・シャネルは「結婚」や「家庭」について嫌悪するのとともに大きな憧れを抱いていたようにも思われる。 苦しむ母親の姿を見て育ったものの、冒頭の孤児院において父親を待っている姿を振るかえると、いっそうそう感じざるを得ない。 “ボーイ”カペルとの結婚を心から望んでいたと思われるうえに、彼が生きていれば、彼女の人生も大きく変わったかもしれないとも感じられた。 そういう屈折した想いが深く描かれていれば、観客はより感情移入しやすい映画になったのではないか。
[映画館(字幕)] 6点(2009-10-17 23:10:41)
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