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281.  メットガラ ドレスをまとった美術館 《ネタバレ》 
メトロポリタン美術館(メット)で開催されるファッション・イベント「メットガラ」の制作過程を追ったドキュメンタリーです。最初に、「ファッションは美術たりうるか」という中核テーマがどかんと提示されるのが良い。この主催者はもちろん肯定しているのですが、逆にゴルチエなんかは「ファッションは客が満足するのが目的であり、美術などではない」という立場です。どちらもデザイナーとしてのプライドをかけた見解なのが興味深いです。中盤の制作過程では、展示ファッションをどうするというにとどまらず、いろんな現場設営や対外交渉の場面にもスポットを当てているのが良い。席次のところで、ちょっとずついじりながら何日も延々と悩んでいるくだりなど、思いっきり共感できて笑えます(泣けます)。いざ本番になれば、参加者のセレブどもが怒濤の如く登場するのですが、それまでの舞台裏の熱量からすると、むしろこちらの方がオマケですね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-31 21:03:15)
282.  ガーダ パレスチナの詩 《ネタバレ》 
パレスチナの紛争状況を追ったドキュメンタリーなのですが、焦点は現地の女性ガーダに合わせられています。前半、ガーダの結婚から出産、そして子の成長となるに至って、これなら世界各地どこにも似たような風景はあるのでは、と思い出した頃に、周辺の銃撃が鳴り響く光景へと転換していきます。そして、何人かの人物に次の焦点が当たっていくのですが、この辺では、話を聞いているのが監督なのか、ガーダなのかが不明なのが弱点です。全体としては、紛争そのものを解説しているわけではないので、知識を得ようとするには不向きですが、普段あまり見る機会がない現地の生活風景が存分に見られるのは貴重です。
[DVD(字幕)] 5点(2023-05-30 00:44:00)
283.  アドレナリンドライブ 《ネタバレ》 
偶然ヤクザの事務所から大金を持ち逃げして逃亡する、という出だしだけで見てみたくなる魅力的な初期設定。しかしそこからは、それなりに安定して進行はするものの、いろんなネタを使いこなせなかったというか、もうちょっと上に飛翔しそうなところでそのまま高度維持で行ってしまったという感じです。主人公2人は、ありえない一歩を踏み出すのだから、もう少し前フリとか決断の瞬間とかが必要なんだけど、ただ何となく持ち逃げしてるし、途中で痴話喧嘩っぽくなるのは、逃亡から一段落ついて、今度はこの2人の間の関係の変化を・・・みたいにしたかったんでしょうけど、あまり機能していない。あと、あの6人組は、変にチンピラ演技がしっかりしていて妙にイラッとするので、兄貴分との区別という点でも、コメディ部分をもっと強めてほしいところでした(バーベキューのシーンみたいなのがもっと欲しかった)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2023-05-28 00:30:53)
284.  カポネ大いに泣く
一つ一つのシーンが、カットが、台詞が、演出が、すべて制作側の自己満足でしかない。それを2時間以上も積み上げられるタガの外れっぷりにも、逆に驚嘆する。意味があったのは、三味線を弾く田中裕子の静かな迫力のみ。ショーケンもジュリーも、よくこの趣旨不明な撮影につき合ったな。演技も何も求められてないのに。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2023-05-25 00:36:30)
285.  リボルバー(1988) 《ネタバレ》 
これはびっくりしました。序盤のビーチのシーンで手際よく登場人物を整理し、しかもその時点で全員に個性と背景を与えている。そこから相互に徐々に絡みながら展開し、最後には自然に一点に収斂。実に洗練された脚本です。●そして何より、役者陣の充実ぶりが際立っています。まずは、手塚理美さんの出番多めなのが嬉しい(水着シーンまで!)。20代の頃の彼女の映画出演作は貴重です。しかも、ジュリーとの共演シーンも多いんだけど、この2人って、その4年前のNHK大河「山河燃ゆ」では、チャーリー田宮&マリー田宮の兄妹だったわけじゃないですか。もうニヤニヤが止まりません。一方で、柄本明&尾美としのりの、コメディアンとしての息の合い具合にもびっくり。ぴりぴりした登場人物も多い中で、この2人が絶妙なタイミングでほっとさせます。高校生の彼も、大げさではないけど無表情でもないという難しい役回りをこなして、話の流れ三本柱の一角を支えています。高部知子がちょっとだけ出てくるのも見逃せません(実に今さらですが、この人、演技凄く巧くないですか?)。●そして、エンドクレジットに乗せて、台詞もナレーションも字幕もなしで登場人物のその後を全部描き切る、という演出も凄いね。●唯一のキズは、南條玲子の扱いが今ひとつなこと。あんな「ずれた人」設定にするよりも、むしろ大人しい控えめな一般人キャラにしておいた方が、ラストのインパクトもあったと思いますし、少なくともあの変な眼鏡はいらなかったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-05-24 00:14:38)
286.  アラキメンタリ
あの「アラーキー」のドキュメンタリーです。そのアグレッシブな撮影実績から、どんな怖いオッサンが登場するのかと思いきや、一番印象的なのは、常に「とてつもなく楽しそう」であるということです。撮影中はもちろんですが、カメラ(の横にいると思われるインタビューア)に喋るときもそうです。まるで砂場で無我夢中で遊んでいる子供のようです。そこを確実に切り取っただけでも、この作品は意義があるといえるかもしれません。全体の構想や体系、さらには経歴のディテールなんかはあまり細かく考えられてないような気もしますが、そういうパンキッシュな作り方で75分を駆け抜けるというのも、この対象には適合しているのかも。
[DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2023-05-23 01:35:59)
287.  サンダウナーズ(1960) 《ネタバレ》 
ほのかにウエスタンっぽくもありながら、その実は直球ど真ん中のファミリー・ドラマです。しかもテーマは「流浪か定住か」に明確に絞られています。そこからぶれない中で、夫と妻と、そして時には子供が、地道で的確な会話を積み重ねています。この堅実さはジンネマン監督ならではです。とりわけその中で、設定上土と埃まみれメイクを余儀なくされながら、それでも凜とした美貌(と色気)を失わないデボラ・カーの存在の強さが素晴らしい。●進行としては、前半で羊の大行進や山火事スペクタクルで目を奪っておいて、中盤では羊の毛刈り作業なんかのディテールの描写も怠りません。そして毛刈り対決では、ハラハラ一大決戦かと思いきや、前半で行く末をたっぷり暗示しておいて、後半は一瞬で切り上げるこの手際の良さ。この辺は現代の制作者も見習ってほしい。●ただ、馬を入手したあたりから、何かテンションも落ちて進行もチグハグになった気が・・・草競馬などは、2回もある割にそれほど機能していませんし(子供頼りというのがよくない)、そもそも物語としては、みんなが地主宅から散り散りになったところで完結でしょ。あの辺でフィニッシュしてほしいところでした。
[DVD(字幕)] 6点(2023-05-22 00:38:34)(良:1票)
288.  トリコロール/赤の愛 《ネタバレ》 
何よりも、主演のイレーヌ・ジャコブを美しく撮ろうとする徹底ぶりに驚き。表情アップから全身ショットから背景の色彩感覚からカメラのアングルまで、すべてがそれに統一されている。一方で、滅茶苦茶な理屈を淡々と強引に語っていく元判事との、研ぎ澄まされて選ばれた言葉のやりとりは、「羊たちの沈黙」すら彷彿とさせる(!)。●マイナスは、周辺人物があまり機能していないこと。電話でしつこく浮気を疑ってくる彼氏は結局「それだけ」だし、法律家志望の若者とその彼女も「それだけ」。私はむしろ、あの若者については、同じ時間軸に並行存在していると見せかけて、実は元判事の若き日の姿がバーチャル展開されている、と思っており、なかなか凝った真似をするなあ、とも思っていたのですが。●最後の全員集合は、完全に蛇足ですね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-21 19:59:14)
289.  パディントン2 《ネタバレ》 
前作で登場人物の整理は終わっているので、今回は最初から飛ばしていきます。が、途中から冤罪だの脱獄だのとやたらと背景が重くなってきて、それもコメディっぽくまとめるのかと思ったら、何とストレートにそのまんま。刑務所の中をいろいろ変化させるというこの主人公ならではの展開はあるものの、やっぱり全体としては薄暗くなっています。一方で、家族4人+1人の個性も見えにくくなっています。●この作品の最大の功績は、ヒュー・グラントを使い倒していることです。少し前から映画自体にも興味を失ってきたっぽくて、まして(みんなが期待するはずの)コメディ演技はもうやらないんじゃないかと思われていたところに、これです。しかも、前作のニコール・キッドマン同様、絵に描いたようなザ・悪役を、嬉々として演じています。まだこういうヒューの芝居が見られたというだけで感涙ものですし、クマよりもむしろそっちに見入ってしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-20 00:17:26)
290.  ミオとミラミス 勇者の剣 《ネタバレ》 
割と冷たい扱いを受けている少年が、実は王様の血筋で、突然異世界に連れて行かれて、親友を相棒に勇者の剣を振るい、悪を殲滅する。いや、本当にまったくそのまんまです。小学生でも筋書を思いつきそうなくらい、ひねりなしです。ただその中でも、原色重視の色調とか、画面を一杯に使う構図とかが、北欧っぽさを感じさせます。そちら方面のファンタジーってあまり見る機会がないので、その意味では貴重かも。●で、最大のサプライズは、主人公の相方の少年が、まだローティーンだった頃のクリスチャン・ベールだということですね・・・。
[DVD(字幕)] 4点(2023-05-19 02:07:06)
291.  イエスタデイ(2019) 《ネタバレ》 
入口の時点で、もう面白くなることが約束されるかのようなフックのある設定。そしてその後は、予想できるコメディの王道を進んでいくわけですが、その中でも、「謎の老人2人」とか「生きていたあのお方」とか、話を一次元上に持っていくセンスが光っています。●ダニー・ボイルとリチャード・カーティスという取り合わせには、一体どうなるのかと思っていましたが、カーティスの脚本は、いつもどおりの安定度ですね。他方、ダニー・ボイル色はほとんどありません。何でこの仕事を受けたのかが不思議になるくらいです。●で、一番まずいのは、肝心の主演の彼が、演技もできてないし、歌も上手くないし、ステージでも別に格好良くないという点です。分かりやすく作品の足を引っ張りまくっています。一体誰がどうやってキャスティングしたのかと疑うレベルです。制作側は途中でまずいと思わなかったのか?●あと、小ネタで一番ウケたのは、主人公のタイトル提案場面で「ホワイト・アルバム」に対し「それは多様性の観点で問題がある」と切り捨てられるくだりです。さらっと毒が利いてるねえ、カーティス先生。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-18 00:15:01)
292.  風花(2000) 《ネタバレ》 
結局、主人公の二人が「ただ移動しているだけ」なんですね。小泉今日子の方は、設定がただ風俗嬢だというだけで、それが主人公の現在にどうつながっているのかが不明。また、演出も単調なので、本領を発揮する場もありません。浅野忠信の方も、終始(脚本家の)思いつきのように発言しているだけで、あえて旅路に出る意味も乏しく、また小泉その他とも絡んでいない。よって、本来なら感動ポイントのはずのラストも、予定調和にしか見えません。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2023-05-17 01:18:40)
293.  トリコロール/白の愛 《ネタバレ》 
ジュリー・デルピーが主演と勝手に思い込んでいたので、途中からさっぱり出番がなくて、あれれ?となってしまいました・・・。ただそれはそれとしても、国外脱出にしても、謎の男とのあれこれにしても、土地取引をめぐるどうこうにしても、かなりの危機が発生するものと思いきや、何となく上手くいってしまうのがいい。フランス作品ならではのしんみりとした可笑しさと、そしてペーソスがあります。そう考えると、トリッキーな「作戦」の方がかえって浮いている気がしますが、最後のジュリーの微笑は聖女の雰囲気すら感じさせ、それで丸め込まれるように着地している不思議。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-05-16 00:44:17)
294.  パディントン 《ネタバレ》 
所詮子供向けの動物コメディかな、と思っていたのですが、予想外にしっかりした内容でした。まず、キーパーソンのブラウン夫人が、サリー・ホーキンスですよ。この時点で制作者の本気度が分かります。そして彼女はやはり、こういった軽い路線でも仕事がしっかりできることを示しています。悪役のニコール・キッドマンも、ものすごく楽しそうに芝居をしていて、作品に一本の柱を埋め込んでいます。一方で、パディントンの声はちょっと老けすぎかなあ、もうちょっと若い人はいなかったのでしょうか。内容的にも、定番ばかりとはいえいろんなネタや伏線を散りばめていますが、美味しいところでもかなり切り詰めている感じで、もっと全体の尺を長くとってもよかったのではないかと思いました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-15 01:16:11)
295.  アメリカン・ナイトメア(2002) 《ネタバレ》 
何か曰くありげな姉ちゃんが、もっともらしくじわじわと一人一人毒牙にかけ・・・という導入部は、まあ見られないことはなかったのです。ところがそのまま同じような中身で最後まで進み、しかもその姉ちゃんは単に殺戮者だったというだけ。いや、単純ホラーなのは分かってるから、別に複雑な裏を設けよとかヒネれとかオチをつけろとかは言わないけど、やっぱり思いつきを羅列しただけで、安直すぎるのではないでしょうか。あと、何か催眠術にかかってるっぽかったあの男性は、結局何だったんでしょう。
[DVD(字幕)] 2点(2023-05-14 00:23:36)
296.  メカゴジラの逆襲
人間側の描写もものすごく適当で手抜き感満載なんだけど、肝心のゴジラとメカゴジラの決戦(チタノも含め)が、ただダラダラ長いだけで迫力が皆無であるというのは、やっぱりまずいのではないか。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2023-05-13 00:12:10)
297.  トリコロール/青の愛
ひたすらチマチマじめじめしている独善的な心理描写が続く、いろいろな意味で何とも辛い作品。ジュリエット・ビノシュだったからそれなりに見ることはできたが、通常レベルの俳優だったら破綻していたのではないかと思う。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2023-05-12 00:27:00)
298.  女は二度決断する 《ネタバレ》 
前半は、主人公がクスリはやるわ周囲とは喧嘩するわという、何だかろくでもない存在であるのがいい。そうだからこそ、その被害回復を追求するという正義が表されている。一方、後半は、えらく力は入ってるんだけど、それによってかえって問題が訴訟の行方という一点に収斂されてしまって、いろんなアヤは消されてしまっていると思う。●ところで、この法廷で一番問題だったのは、あれだけ証拠がありながら有罪判決が取れなかった検察官であるような気がするのですが・・・。だから、その後の第3部シークエンスは、いろいろ演出上の工夫をしているにもかかわらず、根本のところで説得力を失っています。
[DVD(字幕)] 5点(2023-05-11 01:47:11)
299.  ハンナ・アーレント 《ネタバレ》 
凶悪な事件が起こったとき、人は、その犯罪者が常人には理解不能なモンスターであることを願う。もしそれが平凡などこにでもいる小市民であったならば、自分とも地続きであることになり、明日は我が身かもしれないという見たくない闇に直面せざるをえないからだ。その真理を明らかにしただけでも、アーレントの研究は、そしてこの作品は、貴重な意義がある。●終盤近くまで、アーレントは、じっと法廷を観察しているか、あるいは周囲の人たちと身近なやりとりをしているかである。わざとらしい事件は起こらない(理不尽な脅迫等はあるが、その描写も割とすっと流される)。しかしその中で主人公のスタンスは常に一貫しており、いつの間にかじわじわと意志の強さがにじみ出て、クライマックスの講演で一気に凝縮される仕掛け。見事な押し引きの呼吸、そして演出です。
[DVD(字幕)] 7点(2023-05-10 00:50:03)(良:1票)
300.  オズランド 笑顔の魔法おしえます。 《ネタバレ》 
この安直で説明的なタイトルの時点で、すでに期待が下がっていて、凡庸な導入部でさらに期待が下がったのですが、そこから後は意外にもちゃんとした内容でした。中盤の盛り上がりの部分で、たった1人の迷子の対応のために全員が全力を尽くすのがいい。変に凝った課題なんかがなくても、こういうありがちな問題に対する一点集中こそが、チームワークとスキルを感じさせるのです。役者陣もなかなかの好演で、特に橋本愛ちゃんが場を引き締めるいい働きをしていますね。随所で「とりあえず笑顔でハッピーにまとめる」という制作思考がありありなのは、作品の深みを奪っている気もしなくもないですが、許容範囲内ではありました。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2023-05-09 00:36:59)
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