321. 眠狂四郎 人肌蜘蛛
《ネタバレ》 そこそこ正統派時代劇っぽくなった前作からさらに一転、今回は再びダークドロドロ路線です。とにかく敵兄妹の徹底した外道ぶりというか、ほとんど人間の皮をかぶった妖怪とでもいうべきキャラ設定が強烈です。これこそ死神狂四郎の敵として相応しいといえます。脚本上の展開自体はかなり場当たり的で、それぞれやっていることは思いつきの連続なのですが、それで映画として成立してしまっているほどです。何といっても紫役が緑魔子ですよ。この時点で制作者の気合と覚悟が見えます。川津祐介も普段あまりない役に新鮮味を感じたのか、演技が充実しています。目がいっちゃってます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-04-16 01:47:18) |
322. インビジブル・ゲスト 悪魔の証明
《ネタバレ》 ある殺人事件の容疑者と、弁護士の代理でやってきた女性との室内限定会話劇。タイムリミットは尋問開始の3時間後まで。という超魅力的な設定です。構成は、出だしから予想できるとおりの「羅生門型」であり、あるやりとりが終わって別のやりとりが始まると、今度はがらりと違った様相を見せる、というなかなか凝った展開です。また、会話劇が基本でありながら、回想や時系列操作を適切に入れ込んでおり、単調に陥ってもいません。オチ自体は、伏線の分かりやすさも手伝ってかえって分かりやすいともいえますし、また性質上話の広がりも期待できない(一定の枠からは外に出ない)わけですが、それでもサスペンスとしては手堅く焦点を絞ってまとまっています。 [DVD(字幕)] 6点(2023-04-15 22:36:26) |
323. 続・荒野の七人
とりあえず7人集めてどこかの村人を守って悪と戦う、ということ「だけ」しか考えずに作られてしまったのがよく分かる作品。肝心の7人に個性も技術もないし、しかもそのそれぞれの処理も中途半端だし。そもそも、敵からしてあまり強そうじゃないんだよな。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-04-14 01:03:34) |
324. 抜き射ち二挺拳銃
《ネタバレ》 最初のところではシルバー・キッドのスタートというか背景が描かれていたはずなのに、本編に突入するとどう見ても保安官が主役になっていて、キッドはオマケ扱い。視点がぶれぶれです。そして、ヒロインっぽい女が、実は黒幕で・・・ではなくさっさとネタバレするのはある意味斬新かもしれませんが、肝心の保安官がこの女に鼻の下を伸ばしっぱなしで作戦どおり騙されまくっている(しかもラブシーンっぽいところをそこそこ真面目に撮っている)ので、マヌケなことこの上ないのです。最後に敵のアジトまで行く流れからのまとめ方も、かなり無理矢理ですね。普通にキッド大活躍、でなぜ作れなかったのでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-04-13 01:33:36) |
325. バッド・ジーニアス 危険な天才たち
《ネタバレ》 いや、これはびっくりしました。テーマはずばり「カンニング」、その一点がどこまでもぶれない。その上で、当初はごく素朴でシンプルな日常の一幕だったのが、いつしか国際的な作戦(!)に発展していく。中盤以降などは、その辺のサスペンス映画など吹っ飛ぶほどのスリリングぶりです。あくまでも「カンニング」からずれていないにも関わらず、です。また、どこぞのベンチャー企業のプロモーションかと思うような作戦説明シーンなど、ハッタリを堂々とぶち込んでくる姿勢にも好感です。●そしてそして、やはり主演の彼女が素晴らしい。いかにもクラスに一人はいそうな、頭は良さそうだけどちょっと近寄りがたいという風貌。この子ならこういう作戦も考えつくだろうと無理なく思えるほどの自然な存在感。そして、追い詰められたときの焦った表情なんかもしっかり表現できています。 [DVD(字幕)] 7点(2023-04-12 01:04:25)(良:1票) |
326. 眠狂四郎 女地獄
《ネタバレ》 ドロドロに怪しかった前作からさらに一転、今度は意表を突いて正統派時代劇っぽい風味です。とある藩内の家老同士の権力抗争があって、そこに謎の浪人どもが絡んできます。ここでは、田村高廣の素浪人のはまりっぷりが新鮮ですね。剣の腕も極上で、途中、「俺は後ろの敵を斬る余裕はなかった」みたいな、狂四郎が負けを認める(?)台詞がありますが、これはこのシリーズでは珍しいかも。一方でこのシリーズ定番のハニートラップ作戦も健在ですが、さすがにここまで何人も出てくると、やり過ぎではないでしょうか。とりあえず進行が途切れたら、場面をつなぐために入れているというように見えなくもありません。というか、途中で一体何人目なのか分からなくなってきたぞ。あと、なぜか途中からわざわざ女性お着物になって正体をばらしている高田美和のお姫様ですが、貴重な男装の浪人ルックはもうちょっと見たいところでした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-04-08 00:58:39) |
327. 影の軍団 服部半蔵
《ネタバレ》 あえて忍者を主役にして、しかもわざわざダブル・キャスト的な分家設定!これはどれだけの忍者ワールドが!と期待したのですが、まったく思ったほどでもありませんでした。大体、この設定のはずなのに、忍者アクションがほとんどありません。ラストの対決も、忍者なら裏から回って隙を突くとか、相手に気づかれないような武器を使うとかいろいろあるはずなのに、普通に階段から正面突破しています。それなら普通のチャンバラと変わりません。●あと、渡瀬恒彦はどうやってもチンピラ浪人にしか見えないし、西郷輝彦は不自然に出番が少ないし、その他の人もほとんど使いこなされていません。よく見ると脚本担当が3人いますが、誰かが途中で飛ぶか降りるかして、ピンチヒッターでつながれていったのでは?という邪推すらしてしまいます。それくらい展開が適当です。 [DVD(邦画)] 3点(2023-04-07 01:01:43) |
328. アメイジング・ジャーニー 神の小屋より
《ネタバレ》 家族と平和に暮らしていた父親が、ある日末娘を殺害され・・・というハードな出だし。ところが中盤から、怒濤の宗教映画に突入します。いえ、声高に教義をどうのこうの言うことはないのですが、何気ない会話の一つ一つに、何とも言えない重みがあります。ここでは、人の好い小母さんにしか見えないオクタヴィア・スペンサーが「神」というのも凄いし、軽そうな明るい兄ちゃんが実はイエス・キリストというのも面白すぎます。そして、小屋の3人組に巻き込まれていくうちに、いつしか「赦し」という壮大なテーマが突きつけられます。そして映画はそこから逃げません。まるでその壁をよじ登る主人公に同行するかのように、一歩一歩丁寧に進んでいきます。だから、そこからまとめ上げるラストにも説得力があります。●ところで、後でどうにも気になったんですが・・・主人公の幼少時、近所の小母さんらしき人から「教会に行きなさい」と勧められますが、これ、オクタヴィアでしたよね?ということは、あれも実は「神」だったということでしょうか?神は意識しなくてもいつも身近にいますよ、というメッセージでしょうか?だとすると、それを後で「あなたは、あのときの・・・」などといちいちつなげないのが凄いです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-04-06 00:50:55) |
329. キネマの神様
《ネタバレ》 松竹100周年ということで、映画愛みたいなものをテーマにしたったんでしょうけど、タイトルからも連想する「キネマの天地」のレベルにすら遠く及んでいませんでした。人格設定も演技も演出も、すべてが安直で、練った気配がありません。●しかもこの作品には核爆弾級のギャグがあって、食堂でリリー・フランキー達が映画談義をするシーン、自信満々に「その台詞は邪魔」「脚本は10のところを7で止める」などと言い放っている。いや、この作品自体が、邪魔な台詞ばっかりで、10のところを100くらい喋らせてるでしょ。さらに、孫と祖父が脚本を作るシーンで、孫が「クライマックスにその台詞はストレートすぎる」などと言っちゃってますが、まさにストレートな台詞ばかりで構成されているこの脚本の中で、一体何を言っている(言わせている)のでしょうか。脚本家が自分で書いていることの意味を分かっていないのか、分かっていてあえてやっている(あるいは、せざるをえなかった)のか、謎は尽きないところですが、この脚本のレベルの前には、真相はどうでもいいです。●往年の名女優の役名が桂園子というのも、絶対に園井恵子のもじりなんでしょうけど、こういった中途半端なレスペクトもどきにも腹が立ちます。 [CS・衛星(邦画)] 1点(2023-04-05 02:19:45)(良:2票) |
330. 妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ
《ネタバレ》 導入部から前半での凡庸かつ官僚的な描写に、前作や前々作もこんなに段取りと口先台詞だけでできてたっけ?としばし疑問に浸ってしまったが、最後までそれで行ききってしまったのにびっくりした。例えば、クライマックスになるはずの妻夫木が西村を説得する場面、妻夫木の台詞内容もそれを受けた西村のリアクションも、50年くらい前のテレビドラマレベルそのまんま。というか、それを別の日常場面で画面上表現するのが映画ではないのか。夏川の家出後の家族会議という美味しすぎるはずの場面も、西村と橋爪の新旧頑固親父対決なんてのはいくらでも見たいと思うし、また今作ならではの意味があると思うのだがが、その方向には発展しない。全体の中でコメディを感じさせたのは、風吹ジュンが家政婦の体で登場するくだりくらいでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2023-04-04 00:26:48) |
331. コッホ先生と僕らの革命
《ネタバレ》 何とも実直でストレートな作り。かつての日本の学校ものドラマを見ているようです。こういう作品はそれだけでいいのですが、ただいくらサッカー導入の話だからといって、サッカー「だけ」だと、あららそれだけ、と思ってしまいます。最初はサッカーで英語を学ぶという口実(?)だったはずですから、英語教師である以上そこはもう少し描写すべきだったし、また一番大事なフェアプレーやチームプレーについても、生徒がそれをきちんと学んだことを表現してほしいところでした。「ベルリンに電報」作戦が発覚したときのかばい合いのくだりみたいなシーンがもっと欲しかったです。あと、使用人の彼女は、画面内で可憐に目立っている割には、あまり活用されてなかったような・・・。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-04-03 02:20:24)(良:1票) |
332. マンハッタン物語
《ネタバレ》 最初のところでマックイーンが性格も行動もいい加減なニート風の体で登場します。そのうちどこかで見せ場がとか、何かぱりっと変化してとか思いながら見ていたら、まったく格好良くなりません(笑)。逆にナタリー・ウッドの方は、最初は神経質で面倒くさそうな感じだったのが、最後は綺麗になっていましたね。ですが、この作品を成り立たせているのは脇役の充実ぶりで、特に、実は一番人格的に完成されているバービーちゃんと、何も訊かない美学を心得ているマックイーンの両親は、品格の向上に大きく貢献しています。あと、ナタリーに過保護につきまとうあのオッサン、父親かと思っていたら、兄貴なの? [DVD(字幕)] 6点(2023-04-02 00:25:36) |
333. 眠狂四郎無頼控 魔性の肌
《ネタバレ》 前作と前々作があまりにもつまらなかったのを反省したのか、「女妖剣」の池広監督を再び引っ張り出しての作品です。はたして、導入部からいつぞやのインチキ宗教セレモニーで始まり、期待を高めます。そして狂四郎は、仕事を受ける対価として相手の娘を要求し、しかも娶るつもりはないと言い放つなど、ゲスぶりをいかんなく発揮しています。やっぱりこのシリーズの見どころはここですよね。その後も、これが狂四郎に守られるヒロインなんだろうと思っていた美女が次々に退場し、死神ぶりも健在であることがアピールされています。悪の教祖が成田三樹夫先生というのも、画面に登場されるだけで笑みがこぼれてしまうほどのナイスなキャスティングなのですが、中盤からはトンデモ作戦の数々にお株を奪われて、あまり出番なかったのでは?それと、対決順序は、金子オヤジを後にした方がよかったと思います。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-04-01 19:54:50) |
334. 8月の家族たち
これはもう、明らかな「詰め込みすぎ」です。これだけの豪華キャストを揃えておいて、役者の見せ場というか本領発揮場面が全然ありません。みんな揃っての食卓のシーンなどは、よくぞこの全員のスケジュールを調整したな、とは思いますが、それだけです。元は舞台劇のようなのですが、舞台ではこうしてるんだろうということは想像できても、それを切り分けしてカメラの前でやっているだけでは、意味がありません。つまり、映画としての構成なり演出がないのです。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-03-31 00:26:54) |
335. マンディンゴ
《ネタバレ》 実はこの作品で一番凄いのって、美術部門の屋敷の作り方ではないかと思うのですよ。庭先は「何となく」草が濃く繁っていて、綺麗に手入れがされているとは言えないけど、荒れ放題というほどでもない。玄関先なんかも、微妙に散らかっている。そして、家の中がやたら暗いです。もうこれで、家全体に圧倒的な負のオーラが漂っていますし、崩壊の予兆を感じさせます。そしてこの時点で、あのラストは必然です。●だから、奴隷への支配や抑圧や虐待をゴリゴリ描写しても、作品がそれに溺れていない。登場人物がそれに負けないほどに立ち位置を確保して踏ん張っている。この作品が後世まで語り継がれることになった要因は、そのような制作側の突出したセンスの鋭さにあったのではないかと感じています。 [DVD(字幕)] 7点(2023-03-30 00:33:04) |
336. ワレサ 連帯の男
《ネタバレ》 ポーランドの解放と民主化の中心人物、レフ・ワレサの伝記作品です。何かすごく派手な演出があるわけではなく、どちらかといえば地道に淡々と進行するのですが、その中でも、一貫してぶれないワレサの意志の強さはびしびし伝わってきます。これは、ワイダ監督の演出の腕もさることながら、やはり主演俳優の役作りの丁寧さを讃えるべきでしょう。一方で、若い頃には官憲に抵抗できずサインをして釈放される描写もあったりして、決して超人ではなかったことも伝わってきます。ソ連の圧政を跳ね返して民族の独立を保った歴史を後世に残すという点でも、意義ある作品です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-03-29 20:59:26) |
337. ビューティフル・ボーイ(2018)
《ネタバレ》 志は高い作品だとは思いますが、全然深められていません。何よりも、麻薬中毒のはずの息子は、話が進んでも、お肌はピチピチ、髪はツヤツヤ、目には光があって、会話もまともに成立している。その上で、どこからクスリが始まり、そして深まっていったのかも分かりませんし、それが生活をどう(制御不可なレベルまで)蝕んでいったのかも分からない。つまり、中毒ではなく、単に趣味でクスリをやっているようにしか見えないのです。この作品は父親と息子の双方の手記を元に作られたということなのですが、手記だけを元に作ったのでは?と思ってしまいます。●ただしただし、終盤、母が息子を追う場面で炸裂するのは、アメリカン・プログレの伝説パブロフス・ドッグの"Of Once And Future Kings"!!これにはびっくり!いや、ドッグの曲が映画で使われるのって、絶対にこれまでほかにはないですよね?思わず背筋が伸びてしまいました。ここだけは10点つけたいです。 [DVD(字幕)] 5点(2023-03-28 01:17:02) |
338. ミステリー・トレイン
《ネタバレ》 三話構成のオムニバスなのですが、意外にも最初の永瀬&工藤編が一番出来が良かった。永瀬正敏のぼーっとした感じが、実はジャームッシュの雰囲気に割とはまっているのです。由緒正しいはずのスタジオがどってことない地味な外見であるくだりなど、演出も冴えています。エロシーンの工藤夕貴の無邪気な色っぽさにもぞくっとしました。●2篇目も筋としてはいい感じなのですが、ニコレッタの方がちょっと押されてたかな・・・もうちょっとカウンター的な何かが欲しいところでした。3篇目はあれこれいかにもな線を狙いすぎて、かえって収縮してしまいました。●あと、銃声が3篇を共通させているのですが、この辺はほかにもいろいろ仕込んでもよかったと思います。せっかくの同一夜同一宿宿泊という設定なのですから。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-03-27 20:45:10) |
339. 眠狂四郎 無頼剣
何と今回は敵役に天知茂を投入!しかも円月殺法の使い手同士の対決!と期待は高まったのですが、見事に外されました。狂四郎は説明的にブツブツ呟いているだけで、ほとんど活躍の場がない。しかも、ヒーローにあるまじきゲスな内面を有するところに味わいがあったのに、それもありません。天知茂の方も、円月殺法はとってつけたみたいだし、むしろ拳銃という反則技頼りだったりするし。2回目登場の藤村志保も、何がしたいキャラなのかよく分からず、前回とは比較にもなりませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2023-03-26 00:16:16) |
340. ブルドッグ(2003)
《ネタバレ》 一つ一つのシーンはそんなにつまらないとまでは思わなかったのですが、それがつながったときに全体として何かを生み出せているかというと、何もないのですよね。7年かけて捕まえた敵の旧ボスが、新ボスから侵食され、しかも主人公とは何となく味方っぽい感じになる、というのも、新たな角度を狙ったのかもしれませんが、それだけで終わってしまいました。終盤は制作側が息切れしてしまったのか、完全にぐちゃぐちゃだな・・・。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-03-25 00:59:12) |