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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2598
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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321.  NINE(2009)
劇中、ジュディ・デンチが言う。「映画には歌がなければ」と。そして、御年75歳の大女優が惜しげもなく歌って、踊る。このシーンがこの映画のハイライトというわけではないけれど、その様には映画というエンターテイメントが持つ本質的なエネルギーに溢れていて、彼女が言ったことは正しいと思える。  「シカゴ」のロブ・マーシャル監督が、アカデミー賞受賞俳優たちを豪華に揃えて描き出した渾身のミュージカル映画。それは、ミュージカル映画好きとしては、たまらなく魅力的なイントロデュースだった。  仕事を終えた週末、公開されたばかりの今作をレイトショーで観に行った。  名優ダニエル・デイ=ルイスが演じる主人公の映画監督が苦悩する様を取り囲むように、7人の女たちが入れ替わり立ち替わり現れては、彼の妄想の中で歌い踊り消えていく。 新作映画の制作を目前に控えて、アイデアが枯渇した映画監督の脆く弱々しい優柔不断な様を延々と描いていると言えばそれまでだが、繊細な男の悲哀と葛藤を、ミュージカルという形できちんと描き出していると思う。  主演のデイ=ルイスをはじめ、主要キャストが織りなすミュージカルシーンは、とても丹念に作られ魅力的だ。 ただし、残念だったのは、それらのシーンがあくまで「舞台」上でのミュージカルを撮影という手段で切り取ったという範疇を出なかったことだ。 今作は、ブロードウェイミュージカルの名作を映画化した作品であり、それならば映画化する必要はあまりなく、ブロードウェイのライブの迫力に勝ることは到底不可能だ。  映画化するのであれば、映像世界だからこそ出来るミュージカルの表現を追求してほしかった。  豪華女優陣の“競演”も、それぞれが単独で挑んだミュージカルシーンを付け合わせただけという印象にとどまり、映画としての一体感が無かったように思える。  ただそれでも、冒頭でも記している通り、豪華で実力者揃いのスターたちが歌って、踊る様には、圧倒的な力強さがあり、それだけで充分すぎるエンターテイメントであることは間違いない。
[映画館(字幕)] 7点(2010-03-22 02:28:15)
322.  それでも恋するバルセロナ 《ネタバレ》 
この映画は、スカーレット・ヨハンソン×ペネロペ・クルスという今やハリウッドを代表する二大セクシー女優の“絡み合い”を、スクリーンで見たいぞ!という願望を、こちらもハリウッドを代表する根っからの“女好き”ウッディ・アレンが見事に達成した作品だと思う。  「一夏の恋」という誰もが一度は憧れるアバンチュールを、独特の人間模様をもって、時におかしく、時に生々しく描いたウッディ・アレンらしい映画世界を堪能出来る。  ヨハンソン×ペネロペという誰もが夢見た「競演」を実現させたのは、やはりウッディ・アレンだからこそ成し得た業で、それぞれの女優としての個性を最大限に発揮させつつ、他のキャスト陣も含めてバランス良く“大波小波”を打ちながら、映画を展開してくれている。 女たらしのスペイン人画家を演じたハビエル・パルデムは、持ち前の”濃ゆい”ルックスを生かしつつ好演しており、彼に3人の女優が絡んでいくことで映画は展開する。 凄いのは、それぞれの女優と絡む場面場面で、スペイン人画家の物腰と映画の雰囲気が女優に合わせて波打つように変わっていくところだ。 そして、女優同士が絡み合う場面では、さらに大波をうつかのように雰囲気ががらりと変わる。 まさに、監督がそれぞれの女優たちが持つ雰囲気を引き出した結晶であり、それこそがこの映画の最大の魅力だと思う。  「一夏の恋」からあっさりと冷めてしまった主人公たちの憮然とした表情で、映画は終わる。 劇的なウェーブを経て、また元通りの凪に戻る様は、この監督らしいシニカルさも伺えて、総じて「ああ、ウッディ・アレンの映画だな」と思った。
[DVD(字幕)] 7点(2010-03-20 17:32:09)(良:2票)
323.  パッセンジャーズ 《ネタバレ》 
「驚き」を売りにしたサスペンス映画を見る時は、出来る限り雑念を消し去って、目の前に展開される「場面」にのみ集中することが、幸福な映画ライフを送るためのポイントだ。 主演のアン・ハサウェイの愛嬌のある演技に一喜一憂しながら、用意された顛末に素直に“驚きたい”映画だったと思う。  悲惨な飛行機墜落事故、奇跡的に助かった5人の生存者、彼らをカウンセリングする主人公……。ある程度映画を見慣れている人であれば、用意されたプロットは大概想像できる。ただ、それに気付かぬふりを自分自身にし続けられるのも、映画を見慣れている人の利点だ。  登場人物の少なさ、キャスト陣の地味さから低予算作品であることは容易に伺える。ただその中で、ねらった映画世界を丁寧に構築出来ていると思う。 何と言っても、アン・ハサウェイの瑞々しい魅力が、今作の一定の完成度を支えている。ポスト”サンドラ・ブロック”と言うと、褒めているのか貶しているのかは微妙なところだが、幅広い作品に出続けて、ゆくゆくは“オスカー獲得”という路線は約束されているようにも思える。  期待せずに、国際線の機内ででも観ると、ある意味物凄く“心揺れる”映画だろう。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2010-03-19 13:06:24)(良:4票)
324.  クライシス・オブ・アメリカ
前々からレンタルショップに行っては、パッケージを手に取り借りようか借りまいか迷った挙げ句、棚に戻すという行為を繰り返していた今作。 デンゼル・ワシントンとメリル・ストリープというある意味“間違いがない”キャスティングを見た時点で、それほど躊躇することはなかったろうと思うが、何か「不穏」なものを感じ取っていたのかもしれない。  「不穏」なんて言葉を使うと、なんだか物凄い駄作だと言わんばかりだが、決してそうではない。トータル的にはよく出来た映画だと思った。  ただし、終始とても“気持ちの悪い”感覚に覆われる作品だと思う。  アメリカの国家を揺るがす程の大陰謀に主人公のデンゼル・ワシントンが気付き、その黒幕がメリル・ストリープで、二転三転しながら巨悪に向かって対峙していくというような、「陰謀」を描いたサスペンス映画にとっては王道的なストーリー展開を想像していた。 しかし、実際に描かれた映画世界は、人間そのものの利害と精神の「闇」が広がり、端的に言ってしまうと、非常に悪趣味だった。  ただその悪趣味さが、そのまま映画に対する嫌悪感に繋がるということはなく、想像に対してアウトサイドな世界を見せつけられつつ、どんどんと引き込まれていく。 それは、「羊たちの沈黙」で禍々しいサイコサスペンスを“名作”として完成させてみせたジョナサン・デミ監督の成せる業だろうと思う。  演出の効果だろうが、多少編集のブツ切り感が目立ち、キャラクターの相関関係も粗いので、展開が伝わりづらいところもあり、完成度が高い映画だとは言い難いけれど、独特の見応えがある映画ではある。   メリル・ストリープの禍々しさが非常に怖い。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2010-03-13 12:46:53)
325.  プラダを着た悪魔
今作の主演で、14回目のアカデミー賞ノミネートを果たしたメリル・ストリープ(2010年現在では更に伸ばして16回!)。 ぱっと見ラブコメ的な雰囲気満載な今作でのノミネートは、流石に疑問を感じてしまっていたが、鑑賞してみて納得。巧すぎる。 絶対君主的なキャリアウーマンを、ある部分においては神々しささえ感じてしまう程にクールに表現していて、冒頭の登場シーン時点で脱帽してしまった。  作品自体も、決して安直なラブコメなどではなく、ファッション業界のトップ・オブ・トップを舞台に、女性の仕事に対する真摯な姿をテンポ良く描いた良作だと思う。 ファッションに無関心な新人社員が、持ち前の気概と隠れ持った(実は全然隠れてはないけれど)美貌を徐々に発揮していくことで、頭角をあらわす様には、とてもファッショナブルなエンターテイメント性と、スポ根的な要素が混じり、ユニークだった。 そして、節々には、女性が現代社会において仕事に従事することに対して未だ残る難しさと、可能性を示し、娯楽性から一転して社会性を見せる映画でもあった。  タイトルとパッケージが伝えるものよりも、遥かに深いテーマ性が存在する作品だと思う。  アン・ハサウェイもかわゆい。
[DVD(字幕)] 7点(2010-03-09 23:52:00)(良:2票)
326.  TOKYO!
「TOKYO」という都市は、世界から見ても(世界から見ると特に)奇異な場所なんだと思う。 僕自身、あの街に数年間住んでみて、そういうことは常々感じた。 もちろん、日本の首都だし、何でもあるし、決して住みにくいところではない。 ただ、曲がりなりにも世界を代表する「国際都市」というにしては、あまりに完成されていないというか、一つの“スタイル”に定まることがない。  このオムニバス作品で、3人の世界の映画監督が描き出したものは、まさにそういった変化し続けるTOKYOという“モノ”の姿だったと思う。  オムニバス映画というものが、割と好きな方だ。なので、こういう企画を聞く度に、期待は膨らむ。ただ、それに相反して、結果的に一つの「映画」として面白い作品は少ない。  しかし、この「映画」はとてもよく出来ていたと思う。 TOKYOという奇異な都市を、世界が誇る3人の奇異な映画監督に撮らせるという企画自体が、そもそも奇異で面白い。 それぞれが物凄く個性的な世界観を描き出すので、フツーなら各作品を繋ぎ止めることは難しく、オムニバス映画としてまとめることは不可能に近いことだったと思う。  それを繋ぎ止めた要因こそが、TOKYOという都市であった。  ミシェル・ゴンドリーの哲学性に溢れたファンタジーも、レオス・カラックスの文字通り爆発的な変態映画も、ポン・ジュノの情感と根本的な力強さに満ちた精神世界も、すべてを「許容」する。 それこそが、TOKYO。
[DVD(邦画)] 7点(2010-01-10 15:49:27)
327.  クローズZEROII
原作「クローズ」の最大の魅力は、バラエティー豊かな“キャラクター性”だと思う。 決して主人公の描写に注力するわけではなく、むしろ周囲の様々なキャラクターに確固たる人間性を持たせ、様々な視点から極限の不良世界を構築したことが、この漫画の最大の成功理由だと思う。  そしてこの「映画化」が成功した理由も、まさに同じポイントを確実に抑えたからだと思う。 山田孝之が演じる芹沢多摩雄をはじめとする鈴蘭の面々、そしてトップ鳴海大我をはじめとする宝仙の面々。 映画独自のオリジナルストーリーでありながら、原作漫画に登場してもおかしくない(むしろ登場してほしい)と思わせるほど、魅力的なキャラクター造形が出来たことこそ、最大の勝因だろう。  特に、山田孝之のパフォーマンスは素晴らしい。 個人的にはそもそも好きな俳優ではなかったので、「クローズ」に出演という報を聞いた時は、彼があの漫画の世界観にどう息づけるというのかと、全く期待していなかった。 が、見事に主人公の最大のライバルというオリジナルキャラクターを演じ切り、強烈な印象を残した。時に二カッと笑いながら殴り合いをする様は、最も”クローズ的”だと感じさせる存在感だった。  この「クローズZERO」二部作は、監督三池崇史のバイオレンス性と多様性が、伝説的な不良漫画とこれ以上ない絶妙な具合で融合した作品である。 その完成度の高さは、ひとつのサプライズであったが、それは決して偶然などではなく、揺るぎない必然性の元で生まれた結果だ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-10-23 14:03:45)(良:1票)
328.  スピード・レーサー
自宅で、ブルーレイディスクが見られるようになって、初めて見る映画を何にするか? それは、映画好き&家電好きにとってかなり重要な問題だったりする。  レンタルショップのブルーレイコーナーに集められた作品群を前に、暫し思案した結果、見る機会を失っていた今作を手に取った。  流石にスゴイ。映像に度肝を抜かれたのは久しぶりだ。しかもそれが自宅のテレビで味わえるのだから、スゴイ時代になったものだと思う。  ウォシャウスキー兄弟が持ち前の“オタク魂”を、良い意味で好き勝手に発揮した快作だと思う。 こういう映画は「中途半端」な部分があった時点で“負け”である。 ただそこは、「マトリックス」で映画自体の常識をひっくり返した同兄弟だけあって、そう文字通りとことん“突っ走っている”。  原作は往年の日本のテレビアニメ「マッハGoGoGo」である。 日本で生まれたアニメや漫画が海を渡り、ハリウッドで映画化されるという構図は、最近続発されているが、その中ではかなりレベルの高い仕上がりを見せているとも思う。  やはりこれくらい問答無用に突っ走れるだけの、原作に対するこだわりと愛着がなければ、映画化は成功しない。  人生初のブルーレイ鑑賞にふさわしい映画だったと思う。  P.S.ただ、真田広之の役どころはもう少しおいしくしてあげて欲しかった……。 
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2009-09-19 14:16:55)(良:1票)
329.  トランスフォーマー
これほどまでに、「クソクソ面白いクソ映画」は観たことがない。(下品ですみません)  ストーリーなんてあって無いようなものという言い回しはよく聞くが、これほどまでその文句に相応しい映画もない。 そもそもの発端の設定から、主人公のキャラクター性、他のキャラクターたちの言動に至るまで、本来あるはずの整合性はほころびまくり、ただただブロックバスター映画としての“勢い”だけで突っ走る。  ただ、その“勢い”が馬鹿馬鹿しいまでに物凄い。  「トランスフォーマー」という玩具は、自分も幼少時によく遊んだおもちゃで、持っていたのは、戦闘機からロボットに変身(トランスフォーム)するタイプだった(今作の中では悪役……)。 自分が遊んでいた時には、漫画とかアニメとかは無かったと思う。 基本的に“一人遊び”が好きな子供だったので、一人好き勝手にストーリーを想像しつつ、「ドカーン」、「バキューン」と遊んでいた記憶が、沸々と蘇ってきた。  「物凄い」のは、誰しもがやっていたであろうそういう“一人遊び”のまさに延長線上に、この莫大な製作費によって生み出されたブロックバスター映画が存在するということだ。  ハリウッドを代表するいい大人たちが、よってたかって「子供の空想」を真剣に映像化するという試み。 「理屈」や「リアリティ」なんて言葉の意味すら知らないよ、と言わんばかりの怒濤の映像世界には、感嘆を通り越し、心底ほくそ笑んでしまう。  「なんて馬鹿馬鹿しい……」と思いつつ、これほどまで楽しめてしまうその要因は、ハリウッドでエンターテイメント映画を創り続ける重鎮たちの意地とプライド、そして偉大なる“永遠の子ども心”に他ならない。  子どもの頃に遊んでいた時、何を考えていたか全く思い出せない様に、この映画を観て「何かが残るか?」というと、何も残らない。“クソ映画”と吐き捨てても仕方あるまい。  ただし、圧倒的に「面白い」がね。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-24 01:58:02)(良:2票)
330.  スラムドッグ$ミリオネア
クイズ番組が好きだ。  問題に答えるための「知識」は、自分がこれまでの人生の中で生み出した結晶で、クイズ番組はそれを確認できる一つの方法だからだ。  「知識」は、積極的な勉学の果てに得たものだろうが、偶然知り得たものであろうが、その価値は変わらないと思う。  自分だけのオリジナルの人生を経て、結果として“知っていた”ということ、それが最も重要なことだ。  そういう概念を根底に敷いて、スラム街に生まれ育った青年の一つの「運命」を、巧みな映画術で描き出した良い映画だったと思う。  前面的に描かれる“クイズショー”は、インドのスラム街の現状とそこに生きる子供たちの現実を如実に表現するための「縮図」で、出題される問題の一つ一つが、主人公の青年の人生にリンクしていく構成が見事だった。  当たり前の様にゴミ山の中を裸足で走り回り、当たり前の様に孤児になり、当たり前の様に物乞いをし、当たり前の様に犯罪に手を染めていく少年たちには、不思議なくらい陰惨さを感じない。 それは、彼らが自分たちが生きるその環境を「当たり前のこと」として受け入れ、生きる覚悟をしているから。  欺瞞に満ちたクイズショーで大金を手に入れることも「運命」。 銃弾を浴び札束で溢れたバスタブで果てることも「運命」。  そのさじ加減を一体誰が決められるというのだろうか。 
[映画館(字幕)] 7点(2009-04-28 23:58:40)(良:1票)
331.  夜のピクニック
24時間かけて、80㎞の道のりを、高校生活を共にする仲間たちと歩き通すという稀有な行事「歩行祭」。  「一緒に並んで歩く。ただそれだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう」 すべては、その想いに尽きると思う。  それは、毎朝毎朝10㎞近い道のりを自転車通学したことや、部活が終わって疲れきっているのにたわいもない話を延々としていたことと全く同じで、自分自身も感じてきたその“特別さ”がよみがえってきた時、この映画の真の価値が煌めいたと思う。  おそらく初めてのことだが、実は、映画を観る数時間前に原作を読み終えたばかりだった。 そのことによって、作中の登場人物たちの心情が掴めやすかったと同時に、描き方として不充分だなと思われるところも多々あったと思う。 特に映画の序盤は、原作の持つ空気感が表現されていなくて、映画作品として「失敗」かなとも思った。  しかし、「歩行祭」も折り返しを経て、物語が“ゴール”に向けて突き進むにつれ、空気感が一変する。 疲労困憊の中、それぞれの高校生たちが心情を吐露していくその息づかいが、とても情感に溢れ素晴らしかった。  それは同時に、将来の日本映画界を担うであろう若い俳優たちが、この作品の中だけでも確実に成熟していく様を見ているようで、今まさに等身大の若者たちが「成長」を遂げている姿だったのではないかと思う。  「ただそれだけのこと」の素晴らしさ。 そこには明確な理由も派手さもなく、ただただじわりと染み渡る。  時の重なりとともに、何ものにも代え難くなるその「特別」に涙が出る。
[DVD(邦画)] 7点(2009-04-16 01:06:39)(良:2票)
332.  タロットカード殺人事件 《ネタバレ》 
永遠の“女好き”ウッディ・アレンが、新たなディーバとしてスカーレット・ヨハンソンを迎えた第二作。  連続殺人事件を追うという主題に反してコメディ要素たっぷりのストーリーテリングの中で、いかにヨハンソンを魅力的に映し撮るか、その部分に徹底的に心血を注いだウッディ・アレンは流石だ。 他の作品ではクールな役柄が多いスカーレット・ヨハンソンだが、そのセクシーさを保ちつつ、見事にコメディエンヌぶりを発揮していて、終始ニヤニヤしながら観てしまった。  邦題がいかになミステリ調なので、サスペンスフルな展開を期待していると肩すかしをくってしまうだろうが、ウッディ・アレンという監督を知っている人であれば、相変わらずの調子に安心感を覚えつつ、良い意味で終始“のんき”に楽しめる作品だった。  ヨハンソン演じる主人公に終始振り回されながら、大事なところであっさりあの世いきしていしまう道化的な役割を自らに当て込むあたりにも、ウッディ・アレン独特のらしさと、コメディ作家としてのある意味でのプライドを感じられた。 もう80歳近い高齢のはずだが、これからも楽しい映画をつくり続けてほしいものだ。  スカーレット・ヨハンソンの魅力に酔い、ウッディ・アレンのユーモアを心ゆくまで堪能する。そういう愛すべき映画だと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2009-02-22 13:07:16)
333.  7つの贈り物 《ネタバレ》 
主人公のベンは、見ず知らずの他人7人に対し、“ある計画”の上で各人の運命を変える“贈り物”を与えていく。 主人公を演じるウィル・スミスの瞳の中に在る決して消えることのない“愁い”が、とても印象的な映画だった。  主人公の「行為」が本質的な意味で正しいかどうか、それを判断することはとても難しい。 別の方法を選択すべきだったとも思うし、本人にとってはそれ以外無かったという決断も理解できる。  自らの中で膨張する思いに耐えきれず、断固たる意志のもとに下した"決意”は、その正当性を度外視して、心が揺さぶられる。 そして、その一連の行動の中で、残酷にも恋に落ち、愛の元で最後のプロセスを実行する様に、涙が溢れた。  この映画は、観客それぞれの価値観において、大いに是非が分かれると思う。 ただ僕は、一人の男がひたすらに苦悩し、不器用で愚かな決断をする姿に、人間の人間らしい部分を感じずにはいられなかった。 物語の美徳的な部分ではなく、そういう人間の不完全さを目の前にし、感動した。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-21 20:19:02)(良:1票)
334.  ハリウッドランド 《ネタバレ》 
レンタル店の“ミステリー”にジャンル分けされていた今作。 もちろん、ハリウッドで実際に起こった俳優の自殺事件と、その真相を明らかにしようとするプロセスを描いている以上、そのジャンル分けは間違ってはいないと思う。  ただし、この映画の面白さは、謎が解明される顛末にあるわけではない。 往年のハリウッドのきらびやかさと、その裏に確実に広がっていた「闇」を、綿密なディディールの中で描いたところに、その醍醐味はあると思う。  ヒーロースターの死の謎を、しがない私立探偵が運命的に追い求める。 メイキングの中の言葉の通り、「人の人生を追うことで、自分の人生を見つめ直す」映画であると思う。  華やかな銀幕の世界の裏側に隠された深い闇。 それは必ずしも「犯罪」に直結するものばかりではなく、俳優をはじめとする映画に関わるすべての人間に確実に潜む“心の中の闇”であったのだと思う。  「光」は「闇」があるからこそ初めて成立する。その避けられない現実の皮肉を、ミステリーという娯楽性によって巧みに彩ってみせた作品だと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2009-01-25 10:58:36)
335.  ワールド・オブ・ライズ
中東を主舞台とした“対テロ戦争”における情報戦を描いた今作。 敵を欺き、ある時は味方さえも欺き、生と死の狭間での戦いは、決して安直な派手さはなく、その痛々しさのみが様々な側面で突き刺さる。  それは、この映画が今この瞬間も繰り広げられている「現実」の一側面を描いているからに他ならないと思う。  ディカプリオ演じる主人公が、自らの命をさらしながらも感じ続ける葛藤。 それは、“対テロ”の名の下に突き進めるこの「戦争」が、果たして正真正銘の「正義」なのかということに他ならない。  「異文化」への排除行為の先にあるものは決して「平和」などではなく、愚かしく、絶え間なく続く「報復」の螺旋である。 ということを、痛々しく見せつけてくる作品だった。   それにしても、リドリー・スコット監督作品は、「アメリカン・ギャングスター」に続き今年2本目である。 時間を空けず、これほどの骨太な大作映画を連発してくるこの巨匠のパワーに感嘆する。
[映画館(字幕)] 7点(2008-12-23 18:56:48)
336.  彼が二度愛したS
サスペンス映画が好きである。 鑑賞者の思惑を大いに覆すストーリーに惹かれるものだ。  が、今作の場合は、ストーリーに驚くべき起伏があるわけではない。 もちろん、ただ平坦なだけではサスペンス映画として成立しないので、程よい緊張感と“二転”くらいのエスプリは持ち合わせている。  ただこの映画の面白さは、そういうストーリー展開にあるわけではなく、映画を構築する他の要素の質の高さによるところが多いと思う。 最近は、とにかくストーリーに「衝撃」を押し出そうとする作品が多いだけに、今作のようなサスペンス映画は少し珍しい。  では何が良いのか?  ユアン・マクレガー、ヒュー・ジャックマン、ミシェル・ウィリアムズら出演者たちのキャラクターに即したビジュアルの美しさ。 高級ホテルに高級スーツなどから発せられる洗練されているからこそ、同時に醸し出されるある種の“禍々しさ”。  そういった主人公の感情と、ストーリーを彩るラグジュアリーが、映画を魅惑的に仕上げているのだと思う。  「驚き」には欠けるが、たまにはこういうオールディーさを感じるようなサスペンス映画も悪くない。
[映画館(字幕)] 7点(2008-11-19 14:12:49)(良:2票)
337.  最高の人生の見つけ方(2007)
“最高の人生の見つけ方”、この邦題自体は気に入らないが、そのために必要なのは、自分が既に得ている「幸福」をきちんと見出すことだと思う。 Bucket Listに書かれた“死ぬまでにやりたいこと”をこなしていくプロセスは、あくまでそのためのきっかけに過ぎなかった。 残されたリストの項目が、ひとつずつ、必然的に消化されていく様がとても感慨深く、上質な余韻として残っていく。  ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが、老人の悲哀をそれぞれ演じるという時点で、思わず「ずるい」と言いたくなるくらい安心できる。 そして思惑通りに、二人の大俳優はキャラクターの全く違う老人の哀愁を演じて、魅せる。  それにしても、すっかり“爺さん”になってしまったジャック・ニコルソンには、どうしても少し寂しい感じがしてしまう。だけれど、ふいに見せる相変わらずの“悪ガキ”っぽい目つきを見て安心した。 
[インターネット(字幕)] 7点(2008-09-23 23:35:22)(良:1票)
338.  エリザベス:ゴールデン・エイジ
前作「エリザベス」から実に10年ぶりの続編。 まず驚かされるのは、10年経ってもまったく劣化のないケイト・ブランシェットの神々しいまでの麗しさと、10年を経たからこそ更に強まった彼女の存在感の大きさだ。  世界史に対してあまり明るくないので、実際の時代背景だとか人物像について無知な部分が多いのだけれど、ブランシェットが演じるエリザベス一世の姿には、問答無用の説得力があり、現在に繋がる英国史を築いた女王の姿にくるいないと確信せずにはいられない。  前作を遥かに凌駕する映像世界の絢爛豪華さも、申し分なく、重厚な宮廷内の描写や迫力の海戦シーンにも圧倒させられる。 しかし、ケイト・ブランシェットのもはや「大女優」としての威厳が、そういうビジュアル的な力強さを抑えつけ、あくまで映画を彩る一つの要素に至らしめている。  スペインの無敵艦隊を退け、大英帝国の礎を確固たるもとしたエリザベスの文字通り威風堂々とした姿には、神に選ばれた者の「運命」を感じた。  ただ、やはりもう少し当時のヨーロッパ史の勉強をしてから見るべきだとは思った。そうすれば、更にこの映画の深みを堪能できたと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2008-09-23 11:56:04)
339.  ノーカントリー
2007年のアカデミー賞を席巻したコーエン兄弟監督作品。  2001年の「バーバー」を観て以来、この兄弟の映画は、とりあえず観ておかないと損をするという感覚がこびりついている。  世界観が独特なだけに、好き嫌いの触れ幅が激しく、主観的な感想として当たり外れも多いのだが、今作はアカデミー賞の主要部門を確実に抑えた作品だけあって、またエライ映画世界を生み出したものだと思う。  正直なところ、一度観ただけでは、この映画の本質と染み込んだ味わいの深さを堪能しきれていないと思う。  3人のまったく異なる登場人物たちが暗示するアメリカという国の凶暴性と、不条理さ、虚無的な絶望感。 それらが、絶妙な台詞回しや、奇妙な緊迫感を終始携えた演出の中に垣間見えはしたが、鑑賞者としてそのすべてを確実に捉えきれたかというと、自信はない。  ただそれでも、この映画が持つ深みと、説明がつかない濃密さは感じ取ることができたし、初見としてはそれでいいと思う。  トミー・リー・ジョーンズの哀愁を携えた演技は渋かった。 しかしこの作品の中で圧倒的だったのは、やはり助演男優賞を獲得したハビエル・バルデムの超絶な怪演だろう。 “ぬぼ~”とした風貌から滲み出る奇怪さと、圧倒的な恐ろしさは、悪役史上に残る存在感だった。  自分自身の読解力の低さで、問答無用に「大傑作」と断言できないことは情けない限りだが、それは再び観る時の楽しみとしてとっておこうと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2008-08-30 02:39:05)
340.  転々
「人生」なんてものは、まさに“転々”としていくもので、悲しい事も、嬉しい事も、順繰りにめぐるものだと思う。 ただ、幸せは、はっきりと目に見えるものではないし、これがそうだと実感できるものではないから、見逃してしまいがちで、辛い事ばかりに目がいってしまうのだと思う。  そういう人生の中での、ささやかな幸せを、淡々と、とぼとぼと、踏みしめるように映し出した映画だった。  三木聡監督らしいゆる~い可笑しさと、ふいに垣間見せる温かさの中で、オダギリジョーと三浦友和がさらにゆる~く息づく。  冒頭では、ただの借金を抱えた大学生とそれを追う取立屋だった二人の関係が、東京の可笑しさに溢れた“散歩”を通じて、次第に“疑似親子”のそれになっていく様に、人と人が触れ合うことによってはじめて生じる滑稽さと、その素晴らしさを感じる。  むさくるしい風貌の男二人の掛け合いがメインの映画なので、上野樹里と蒼井優が出演した「亀は意外と速く泳ぐ」ほどの華やかさはなく全体的に地味な感じはあるが、その分、じんわりと暖かみが染み渡る作品だったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2008-06-21 10:46:14)(良:1票)
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