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321.  ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密
ダニエル・クレイグもアナ・デ・アルマスも老けたなあというのが最初の印象。特にダニエル・クレイグなんてお爺ちゃんじゃないですか。「007」引退もやむなしという感じ。 それはともかく、きわめて上質なサスペンスでした。とりわけ面白いのが〝格差問題〟の描き方。最初はみんな優しかったのに、立場が逆転して以降急に態度が変わるというのが、なんともリアルというかえげつないというか。というわけで、皮肉混じりの(というか皮肉しかない)最後のワンシーンがけっこう好きです。アナ・デ・アルマスは老けたけど、セクシー系を脱していい女優さんになりそう。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-12-15 23:15:13)
322.  誘拐報道 《ネタバレ》 
2本の映画をパラレルに見ているようで、疲れます。端的に言えば、暗い・寒い・悲惨の3拍子。 犯人側パートについては、とにかく人質少年の生命力が驚異的。厳冬の丸2日弱、半ズボンのまま目隠しをされてズタ袋に拘束されて、クルマのトランクに放置されて、ほとんど飲まず食わず。ふつうなら、肉体的にも精神的にも早々に限界が来そうですけどね。このあたりは創作らしいいのですが、ちょっと無理があるような。 それから終盤のショーケンの演技は気合が漲っていましたが、なんだかんだ言いながら少年の生命より自分の保身を優先したわけで、エネルギーの放出先を間違えているような違和感が募りました。 一方の読売新聞パート。別に全カットでも映画としては成り立った気が。これでもかと言わんばかりの大人数&豪華キャストですが、すごくカラ回りしている感じ。非番の記者まで招集するわりに、結局詰め所でゴロゴロしているだけだし。大山鳴動してネズミ一匹とは、まさにこのこと。最後の協定云々を言いたかっただけだとしたら、ずいぶん志が低いんじゃないでしょうか。 同じ誘拐ものでも、残念ながら「天国と地獄」にはとうてい及ばない感じです。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2021-12-06 03:14:21)
323.  MIFUNE:THE LAST SAMURAI
あのスピルバーグやスコセッシが日本の一役者について語るなんて、おそらく三船敏郎以外では考えられません。たしかに、画面に登場するだけで空気がピンと張り詰めるというか、重みが増すというか。やっぱり不世出の役者だったんだなと再確認できます。 ただ大真面目なドキュメンタリーで、特に目新しい情報もなし。NHKとかがふつうに作りそうな内容でした。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-12-04 01:41:17)
324.  テロ,ライブ 《ネタバレ》 
これは面白い。とにかく冒頭、やさぐれた感じの主人公が、にわかに欲望をたぎらせ、そしてテレビカメラの前で急に生真面目風なキャスターを演じるまでの三変化が見事。これが役者の演技力というものかと、この時点ですっかり魅了されました。 いろいろ「how?」と突っ込まれたら説明できないシーンが多々あったように思いますが、そんなことはどうでもいいと突っぱねる緊張感とスピード感がありました。政府やら警察やら局やら他局やら、いろいろな思惑や疵が絡み合うカオスな状況は、もはやコントのようでもあります。で、いったいどうやってオトシマエをつけるのかと思っていたら、これ以上ないほどのカタストロフィーでした。いろいろ裏切ってくれます。このあたりも見事。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-12-02 02:07:11)
325.  シチズンフォー スノーデンの暴露
ホンモノのスノーデンとかジュリアン・アサンジとかが出てきて語る面白さはありますが、基本的にインタビューのみのドキュメンタリーですからねぇ。正直なところ、途中で飽きます。 たしかに当時はけっこう騒ぎになった覚えはありますが、かれこれ10年近くが経過した今、では何が変わったかといえば、よくも悪くもまったく変わってないんじゃないでしょうか。今もアメリカは全国民の通信だの会話だのを監視できるのかもしれませんが、それがどうした、という感じ。3億人もいる国民をいちいちチェックするとなると、途方もない労力が必要です。ご苦労さん、という感想しかありません。 だいたい今日に生きている時点で、私たちはGAFAMに個人情報をごっそり抜かれているわけで、今さらジタバタしても始まらないという気がします。むしろ個人情報を提供しているんだから、その分コンシェルジュサービスをよろしくという感じです。 そして国家の場合、逆に管理できていないことのほうが問題。かなり前には「消えた年金問題」、最近も給付金の給付でモタモタしたりということがありましたが、ああいう杜撰なことでは困るわけです。個人的には、ZOOMでもメールでも国家転覆やテロ等について協議したことは1度もないので、見たければどうぞと。ただし共産主義国なら話は別です。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-11-30 01:32:48)
326.  アン・ハサウェイ/裸の天使 《ネタバレ》 
ご多分に漏れず、私もアン・ハサウェイの「裸」に期待した1人ですが、トータルで正味1分ぐらいですかね。しかし、そもそも年齢の設定がよくわからない。大学生にしては幼稚すぎるし、高校生にしてはずいぶん老けています。たぶん後者だと思いますが、実年齢は20歳代半ばのはず…。 実はこれ、けっこう面白そうなストーリーだったように思います。裕福なお嬢がほんの遊びのつもりで悪ぶった結果、他人の人生や家庭まで破壊してしまうという、ありそうでなかった話。そこに格差や偏見の問題も絡んで見応え十分、となってくれればよかったのですが、まったくそうなっていません。なんか中途半端で、いろいろ描き切れていない感じ。唯一の売りの「裸」も1分じゃねぇ…。
[インターネット(字幕)] 4点(2021-11-26 21:10:53)
327.  バットマン・フォーエヴァー
ティム・バートンの世界観の劣化普及版という感じ。本物のカニに対するカニカマ的な。 主役級5人はそれぞれがんばっていたと思いますが、勝手に盛り上がってカラ回りしている印象。可もなく不可もなく、定番のアクションがあって定番の結末に至りましたというだけのお話です。何が「フォーエバー」なのかもよくわかりません。 なお「ロビン」というキャラは原作に登場するらしいですが、個人的には、ずっとバットマン1人で孤独を噛み締めつつ戦い続けてほしかったかなと。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-11-25 03:18:46)
328.  ミッドナイト・ラン 《ネタバレ》 
超久しぶりに再見。その昔見たときはちょうど「アンタッチャブル」の直後で、あの暗黒街のドンと本作の小市民的な役どころのギャップに心底驚いたものです。 で、本作はとにかく全編にわたって爽やか。なぜなら、主役はあくまでもカネだから。登場人物の多くは、ひとえにカネ儲けのためだけに命懸けで追いかけっこや騙し合いを繰り広げているわけで、そこには恨みとか嫉妬とか、あるいは愛情とか友情とか面倒くさいものはほぼ存在しません。その割り切り方が心地よさの源泉ではないかと。 極めつけはラストの「1000ドル札」。苦労の末に念願の〝大金〟を得たわけですが、タクシーどころか、おそらくどこでも使えないでしょう。寂寥感のあるいいシーンでしたが、なんとも皮肉が効いています。やはり最後に存在感を示したのは主役でした。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-11-22 02:58:52)
329.  T-34 レジェンド・オブ・ウォー
痛快娯楽映画という感じ。独ソ戦という過酷な戦場が舞台でありながら、陰惨とか死と隣合わせといった印象はほぼなし。戦車戦という、ある種のスポーツを見ているような錯覚に囚われます。内部の構造はこうなっていて、こういうふうに操縦するのかと勉強になりました。砲弾が鋼板をかすめると耳に来るというのも面白い。 しかしジョン・ウー監督ばりにスローモーションばかりで、緊張感よりエンタメ感が増しています。そしてもう1点、湖に飛び込んで「自由だ!」と叫ぶシーンがありましたが、これから10年近くスターリンの時代が続のかと思うと少々気の毒に見えてきました。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-11-19 02:33:39)
330.  愛と追憶の日々 《ネタバレ》 
この作品における唯一最大のネタバレを書きますが、早逝をクライマックスに持ってくる時点で、物語として失格だと思います。どんな立場や状況の人であれ、若くして死んで悲しいのは当たり前。それを利用してお涙頂戴ではヒネリがなさすぎます。 ついでに言うと、あの〝色情グランマ〟がどうしても好きになれません。それにフィクションとはいえ、あんなにモテるはずがない。80年代アメリカは、若い女性が不足していたのか?
[CS・衛星(字幕)] 1点(2021-11-15 23:19:55)
331.  バイス 《ネタバレ》 
これは傑作。クリスチャン・ベールのメイクもさることながら、すっかり老獪な権力者になり切っていて、クリスチャン・ベールであることを忘れるほどでした。けっして悪の権化としてではなく、人間味溢れる人物として描いているのもいい感じ。 ストーリー自体は史実どおりだと思いますが、切り取り方が面白い。特に中盤に〝エンドロール〟が流れて以降の悪ふざけ、ブラックジョーク、痛烈な皮肉がいろいろ見事。レストランで〝メニュー〟を紹介するウェイターに「全部だ」と伝えるシーンとか、ラムズフェルドにクビを宣告するシーンとか、「心臓」をめぐるオチとか。かの国は、良かれ悪しかれ「絵」になる政治家が多くて楽しそうですね。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-11-13 01:06:42)
332.  3時10分、決断のとき 《ネタバレ》 
クリスチャン・ベールとラッセル・クロウありきの作品という感じ。まあ2人がカッコいいだけで十分なんですが、ストーリー的にいささか無理がある気がしないでもありません。特に最終盤、ホテルから駅へ逃げながら走るラッセル・クロウは、なんだか身体が重そうで、それまでの凄腕の悪党のイメージとはちょっと違います。それにこのとき、当人はどういう決着を予想していたのか、すべて想定どりなのか、ぜひ聞いてみたい気もします。 ただ、イラストにまつわる前フリと回収は、ベタとはいえいいシーンだったなと。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-11-09 02:03:08)
333.  地獄の7人 《ネタバレ》 
個人的には、かなり苦手な部類の作品でした。だいたい自分の息子を救いたいがために昔の仲間を巻き添えにするという、そのエゴが気に入らない。それに何より、彼らは国軍とは何ら関係ないわけで、いわば「アメリカ人武装勢力」に過ぎません。そんな彼らがクルマを盗み、ヘリを奪い、武器を調達してラオス軍兵士を殺しまくるのは、間違いなくテロ行為です。ところが、そんな後ろめたさは微塵も感じさせず、ひたすらタフなヒーローとして描いているので、もう違和感しかありません。ラオスを国家として、ラオス人(アジア人)を人間として見なしていないかのよう。大国の傲り、ここに極まれりという感じ。 例えばもし、どこかのテロリストがグアンタナモ収容所を襲撃し、米兵を多数殺害したとしたら、米国はテロリストの国籍を調べ上げ、その国の首都あたりに容赦なく報復攻撃を加えるはずです。そんなダブスタを想像して、とても嫌な気分になりました。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2021-11-04 23:55:34)(良:1票)
334.  ゼイリブ
ドラえもんが取り出しそうな「ホンネメガネ」が面白い。しかしこれ、そのうちGAFAMのどこかが開発しそう。それも街の広告どころではなく、各種の映像や記事や人の表情や声の調子から真意を読み取るとか。そうするとエイリアンが来て洗脳作戦を展開する以前に、人間社会はあっという間に自己崩壊していくんじゃないでしょうか。その意味では、エイリアンよりメガネのほうが怖いかなと。タテマエを盾にして、お互いに腹の探り合いをしているほうが、世の中は平和なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-11-02 01:39:55)
335.  わたしは、ダニエル・ブレイク
ドキュメンタリーではないが、娯楽作品としても見れません。実は日常に溢れる、しかし多くの人が見て見ぬフリをしている社会の矛盾を見事に表現した作品だと思います。 ただ印象としては、「いたたまれなさ」だけが残りました。市井の人が助け合い、支え合う姿は感動的です。しかし国家の制度はそう簡単には改善しないでしょう。たしかに杓子定規かつ煩雑な感じでイライラさせられます。しだいに人としての尊厳まで奪われていくようで、なかなか辛いものがあります。しかし、逆に簡便で温情や融通がまかり通るようでも困る。それこそ不正受給や不公平の温床になりかねません。じゃあどうすればいいのか、という根本的な解が簡単には見つかりそうにないところが、もっとも大きな問題のような気がします。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-10-31 02:39:59)(良:1票)
336.  007/ワールド・イズ・ノット・イナフ
よくもまあ次から次へと危機のシーンを繋げたものだと感心します。危機アイデアを一つ一つ付箋に書き、ホワイトボードか何かに貼り付けながら順番とか辻褄とかいろいろ議論したのかなと想像すると、ちょっと微笑ましい気分になります。実態は知りませんが。 それにしても、あれだけ毎度毎度銃弾の雨の中にいながら一発も当たらないってどうなのよと。もちろん当たったらシリーズ自体が終わるわけですが、出来すぎな気がしないでもありません。 タイトルのカッコよさに惹かれて見てみましたが、終盤に一言発するのみ。別に作品の世界観を表しているわけじゃなかったんですね。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-10-28 01:54:17)
337.  ハミングバード・プロジェクト/0.001秒の男たち
主人公の彼、どこかで見た顔だと思ったら、「ソーシャルネットワーク」のザッカーバーグ役だったんですね。さすがに当時よりずいぶん老けたような。しかし苦渋の表情がよく似合います。 で本作、正直なところ、見ようという気になる人はなかなか少ないでしょうねぇ。「超高速取引」など一部の人しか興味ないし、結局自分の利益のためでしかないし、どう転んでも映像的には地味な結論にしかならないし。 しかし途中で挿入されるレモン農家の話とか、アーミッシュの話とか、そして憎まれ役の元女性上司とか、けっこう楽しませてもらいました。そしてけっして予定調和ではないオチにも驚き。ますます、映画にする必要があったのかと思わずにはいられません。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-10-24 22:20:00)
338.  密偵 《ネタバレ》 
舞台設定上、日本が悪者に描かれるのは仕方のないところ。ただしそのへんは案外薄味で、基本的には朝鮮人どうしの追いかけっこと騙し合いの様相。特に列車内のシーンなど、けっこうハラハラドキドキを楽しめます。 しかし結局、主人公たちがやったことは爆弾テロに過ぎません。何の罪もない人を含めて大量の日本人が犠牲になっただけ。昨今のIS等によるテロと同様、社会に恐怖を与えることはできたとしても、それによって体制は1ミリも変わりません。むしろ変わったとしたら世も末です。義烈団の面々をやたら悲劇のヒーロー・ヒロインのように描いていましたが、その姿を見てかの国の人たちが溜飲を下げるとしたら、それはそれで恐ろしいかなと。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-10-20 01:25:35)
339.  御法度 《ネタバレ》 
現実と幻想の中間のような雰囲気はいい感じ。殺伐とした時代が舞台でありながら、平和的な話として展開します。妖艶な松田龍平を取り巻く男たちの微妙な駆け引きやら腹の探り合いやら、けっこう楽しめました。 ただ当方は残念ながら衆道に関心がないため、今ひとつ没入できず。ストーリーも単純すぎて、いいのかこれでと。 だいたい伊武雅刀の存在理由がわからない。本筋にほとんど絡まなかったような。代わりにトミーズ雅が重要な役割で意外。もしかすると、途中でシナリオの変更でもあったんでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-10-16 18:47:39)
340.  羊たちの沈黙
超久しぶりに再見。前回の印象は牢の中、檻の中のレクターしか残っていなかったのですが、今回も同様。独特な〝マスク〟で覆われた風貌もさることながら、ひたすら特殊な性癖とずば抜けた頭脳で勝負するあたりが斬新。脳筋で勝負するスタローン等とは対照的な、ある種のヒーローだと思います。 そのダークな輝きが強すぎて、個人的にはジョディ・フォスターも肝心の猟奇犯も霞んでしまった感じ。さすが名作だと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-10-08 00:40:14)(良:1票)
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