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341.  美女と野獣(1946) 《ネタバレ》 
イマジネーションを刺激する寓話。雑感です。◇野獣の力の秘密は鏡、白馬、金の鍵、手袋、薔薇の5つ。鏡は見たいものが見える。白馬はどこへでも迷わず行くことができる。金の鍵は真の財宝がある場所の扉を開ける。手袋は瞬間移動能力。では薔薇の力とは何だろうか。事件の発端は、ベルの父が知らずに薔薇を摘んでしまい、死の宣告を受けたことだった。摘んではいけないものだったことしかわからない。薔薇はベルに渡されたが、その後は登場しない。他の力から類推すれば、見る人の好きな形に姿を変える花だったのではないか。あるいは世界一美しい花か。◇ベルの父は一輪の薔薇を盗むという微罪を犯した。その罪は、死か、娘を野獣に差し出すかという不条理なものだ。不条理さを受け入れることにより野獣の魔法に取り込まれてゆく。心優しいベルは父のために自らを犠牲にし、進んで野獣の元へ向かう。城では不思議なことが次々起きるが、予想に反して野獣の態度は紳士的だった。「お前を見ていいか。ここではお前が主人だ」小間使いの仕事などしなくよく、自由に贅沢に暮らせる。ただ野獣と夕食を一緒にすればいいだけだ。ベルは徐々に心を許し、一緒に散歩をしたり、飲み水を汲んであげたりする。いやなことは毎日求婚されることと病気の父に会えないこと。◇ベルは野獣を醜いと思っているが、野獣が自分自身の醜さを認識しており、根は善良であることを見抜いている。◇アブナンはどうして野獣になったのか。彼はベルを愛しており、彼女を救出しに城に向かった。だが間違って宝物館に行ってしまった。金の鍵で開ければよかったのに天井の窓を壊して侵入しようとした。このとき宝物に眼が眩んでしまっていた。そして魔法の矢で射られてしまった。真の愛があれば真直ぐにベルのところへ行けただろう。 ◇野獣はどうして人間に戻れたのか。女性から心から愛されなければ魔法は解けない。野獣は父親を思うベルの心に打たれて、帰宅を許した。そのとき力の秘密を教え、金の鍵を託した。ベルが期限内に戻らないと死んでしまうという。これは恋の苦しみなのか、そういうシステムなのか。恋の苦しみならベルが戻ってきたときにすぐ元気になる筈。ベルが金の鍵を探すぶんだけ遅れたのだろうか。ベルが野獣を愛したのは確実。しかしそれでも魔法は解けず、野獣は死んだ。魔法が解けたのは、アブナンが野獣になってから。交代制なのだろうか。
[DVD(字幕)] 7点(2010-06-25 23:09:54)
342.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 
【タイムリープ(TL)】設定は女子高生が後ろ向きに倒れて過去に戻る映画「タイムリープ」に酷似。胡桃でチャージ、腕に度数表示、記憶は保持。他人がTLした場合、度数はそれに応じて戻り、記憶は失う。真琴が事故で偶然にTLしたのが最初。跳躍で実行。どの過去に戻るかは跳躍距離による。胡桃は未来から千昭が持ってきた。千昭は度数ゼロでも時を止める能力も持つ。未来へも行ける。TLすると「自分の得」が「他人の損」となり反映。真琴の事故が、功介と後輩の事故へ転換するなど。【千昭】この時代でしか存在しない絵を見るためにきた。「川が地面に流れているのを初めて見た」「こんなに人が沢山いる所を初めて見た」「この時代好きだよ、野球もあるし」荒廃した未来を暗示。過去の住人にTLの存在を知らせた罪で姿を消す。【おば】TLを容認。経験あるという。絵を修復。彼女の写真の隣にラベンダー。原作の主人公芳山和子であることを暗示。【恋愛】千昭が真琴に告白。真琴は戸惑ってTL。千昭を避けるが、千昭が友梨と付き合うと、千昭のことを好きだったことを知る。最後のTL後、再告白を期待するが期待外れ。未来での再会を約束。【感想】先ず背景画が美しいのに感心。二度と戻ることの出来ない青春の一頁。過去に戻る力を手に入れても、結局過去は取り戻せない。恋愛に無垢な女子高生真琴のオバカぶりはとても面白い。走りっぷり、泣きっぷりが弾けていた。人の心を踏みにじることはもうしないと決意するも「お前TLしてるだろ」と言われ思わずTL、結果度数ゼロ。プラスされたTLを千昭のために使ったのは偉い。絵は何百年も昔の大戦争と飢饉の時代、世界が終ろうとしていた時代の菩薩像。絵を見るためだけに危険を冒してやってきたロマンティストとガラの悪い茶髪少年の間にギャップがある。彼が去ると、級友からぼろくそに噂されていた。千昭は未来に戻れなくなる犠牲を払って功介達の命を救ったが、代わりに誰かが事故に遭う筈。千昭は「未来で待ってる」というが、違う時代の人とは会えない。真琴は「やりたいことが見つかった、それは秘密」と話すが、何か?再会を早めることだとして、何をする?それとも絵を未来に伝えるとか、荒廃しない未来を作ることか。尚遮断機に自転車が突っ込んでもスルーして飛びません。ブレークが効かないのだから。いじめられっ子の最終形を見たかった。 
[DVD(邦画)] 7点(2010-06-20 19:05:32)(笑:1票) (良:1票)
343.  ザ・マジックアワー 《ネタバレ》 
【コメディパート】町の名が守加護(シカゴ?)。町の入口の塑像がドナルドダックもどき。わざと映画のセットっぽい建物で、それを映画内でフォローしている。ビンゴ(妻夫木)がダサイ下着。ヤクザなのに妙に昔のマフィア風。リーゼント、鳥打帽、セメント詰め、大げさな機関銃など。キャバレーの名が「赤い靴」。映画中映画が「黒い101人の女」(本当は「黒い10人の女」)で、本物の市川崑が登場。人気俳優の名前が「ゆべし」「亀」。ホテルの女主人が変すぎ。化粧が濃く、妙に姉御肌で、髪型と服装がすぐに変わる。サービスは最低で、役者にサインを大量にねだる。小さな醤油瓶が倒れ、その容積の何倍もの醤油が流れる。マリが弾き語りの札をせこく盗む。村田(佐藤浩市)が休憩中にたばこではなく飴をなめる。ボスと中ボスが最後まで芝居に気づかない。【感動パート】売れない役者が一連の騒動を通じて、映画を愛する役者としての自分の原点を再確認し、再出発を決意。自己中心的でころころ心変わりする女マリが、本気で人を愛することを覚える。「死ぬのは怖くない。怖いのは誇りを失ったまま生き続けることだ」「マジックアワーを逃したときの対処法は明日を待つこと」「スクリーンの中の私が堂々と見えるのはスタッフのおかげ」「次のマジックアワーを待っている。この歳になってもいまだに」「俺に会いたかったら映画館に来な」など名言あり。【感想】良く練られた脚本。笑える。小ネタが多いので得した気分になる。メインの役者の演技はうまい。二段落ちのラストはお見事。意外な人物が本物ベラ。「ありえない」ところはあるが、コメディなのでスルー。監督もきっと計算済み。マジックアワーは人生の黄金期の象徴でもある。それをまだ見つけられない無名の役者。無名故に嘘映画の主役に抜擢される悲哀。生き生きと演じる様子は笑えるが、後で思うとせつない。ラッシュを見て引退を決意。尊敬する先輩役者との邂逅で自分を再発見。芝居が不完全燃焼だったので引退を撤回。この感動パートがやや弱い。ここで泣けるのなら名作となった。マリのキャラは最後まで薄っぺら。「ベラ富樫」の由来はドラキュラ俳優「ベラ・ルゴシ」と「LAコンフィデンシャル」の謎の殺し屋「ロロ・トマシ」から。銃をドンパチ撃ちながら誰も死なない。どこまでも人を食ってる。こんな監督他に見当たらない。著名俳優が大勢友情出演するのは人柄なのでしょうね。
[DVD(邦画)] 7点(2010-06-19 20:29:21)(良:1票)
344.  バッファロー'66 《ネタバレ》 
【ビリー】父親には反発し、母親とは心が通わない。同級生に好きな女の子がいたが相手にされずじまい。女には奥手。裸を見られたくないなど神経質。酒、麻薬と無縁。愚図のグーンが親友。行動は行き当たりばったり。ボウリングの腕はプロ並。金も無いのに大金を地元チームに賭け大損。その償いで他人の罪をかぶり5年間の禁固刑。両親には結婚し、働いていると嘘。母を思いやる気持ちは強い。女を拉致し、妻として紹介。自分に絶望し、八百長選手を殺して自殺すると計画。 【母】アメフト依存症。ビリーを産まなければ地元チームの優勝場面が見れたのにと悔やむ。子供のチョコアレルギーを忘れるなど子への関心薄い。 【父】元歌手。ビリーの愛犬を殺す。短気。フォークが自分の方を向いているなどと難癖。 【女】まさにムーンチャイルド。踊りはヘタ、頭は悪そう。いつでも逃走できるのに従順。孤独で一人暮らしか。想像力は豊か。男の心を読み取る能力に長けている。風呂に押しかけるなど押しが強い。 【感想】奇妙なボーイ・ミーツ・ガールもの。あんな奇妙な女がいる?自分を拉致したムショ出男を愛するなんて。男は無害とすぐに見破ったのでしょう。愛は奇跡を生みますね。アイデアは秀逸。「あなたは世界一優しい男でハンサム」は優しさから出た言葉。女の愛情が男の殺伐とした心を癒し、殺人を思いとどまらせた。初めて無条件で愛され、ようやく自分の居場所を見つけた男。女の身上が語られないのは残念。人生に退屈しているのは明白。女は彼に何を求めたのか。最初は同情心から。徐々に彼の優しさ、心の弱さ、純粋さを見抜いたようだ。嫉妬も手伝い、母性をくすぐられたのだろう。車の運転できないし、恋には純真で、両親に反発しつつも愛し、粗暴で繊細、まるで子供だもの。女は自分を頼ってくれる人を欲していた。「かわいい駄目さ」は魅力がある。心に傷を持つ者同士は共感しやすい。冒頭トイレを探すシーンはギャグ?それともうまくいかない男の人生の暗示?。リアリティに欠けのが惜しい、いっそミュージカルにしたら。どちらかが自己犠牲を見せる場面があればよかった。四人いるのに三人しか映さない食卓シーンは興ざめ。ラストの銃撃シーンの3Dもどきもインパクト無し。写真は死後両親に送るものだが、誰が送付するのか。それに死ねばすぐに両親に知れる筈。やっぱりかわいいね。今後二人で成長してゆけそうです。
[DVD(字幕)] 7点(2010-06-10 13:37:38)(良:1票)
345.  天然コケッコー 《ネタバレ》 
【そよさん】心やさしい少女。下級生の母親的存在。思い出をとても大切にする。それは大沢が捨てた校舎の石を捨てれなくて持ち帰る挿話に集約されている。「もうすぐ消えてなくなると思えば、些細なことが急に輝いてみえてきてしまう。一緒に登校したことを奇跡みたいに思い出すことがあるのだろうか」大沢に愛のある接吻はできなかったが、黒板にはできた。ジャケットにこだわるところはリアリティがあります。 【大沢くん】いつも無愛想でつまらなそうな顔。両親が離婚し田舎へ引っ越すという悲運を負う。都会ずれし、プロレスとゲームが趣味。自殺者に花を供え、拝んでいるさやに無理やりキスしようとするほど無神経。「おまえの手、おしっこくさい」「(膀胱炎の子を心配するそよに)よかったじゃん、ガキの子守りしなくてすむし」などと心無い発言が多い。「この高校パス、だって坊主じゃん」「都会の高校行くかもしれん」でもそよの温かさにほだされ、田舎の学校に残ることに。悪い人じゃないんだけどね。 【感想】修学旅行で都会の喧騒に馴染めないそよだったが、ふと町騒が山の音と同じだと気づく。幻想的な映像と音楽が流れる。新しい世界との折り合いがついた瞬間だ。「あんたらとはいつか仲良くできる日がくるかもしらん」元気になって大沢の手をとって歩きだす。少女の心の成長の一頁を鮮やかに切り取った場面です。そよとって大沢は外部世界の象徴。彼から刺激を受けつつ、ささやかな冒険を通して、時には傷つきながらも成長してゆく姿が瑞々しく描かれています。大沢の魅力が少ないのが残念。さやを救った場面くらい。あとは接吻のおねだりばかり。田舎の人の心に触れ心が癒され、やさしい少年に成長してゆくのが理想なのですが。ロングショットによる長回しや合間に挿入される季節の映像が印象的。ラストショットは少し作り過ぎでしょうか。「扉から教室を見るさや」から「窓から教室を見るさや」への転換は見事ですが、陽光浴びるカーテンのゆらぎ、満開の桜の位置、舞う花びらなどコテコテです。きっと私の心が汚れてるからそう見えるのでしょうね。反省。不倫、ロリコン男など田舎を描くのにリアリティありましたが、映画の主題からして不要でしょう。短縮して短編映画の如き雰囲気にすれば傑作になれたかも。題名は「天然の鶏=地鶏」で田舎に自然に暮らす人のこと。ボロイラーにはなりたくなりですね。心は地鶏で居たいです。
[DVD(邦画)] 7点(2010-06-09 17:34:27)(良:2票)
346.  あこがれ (1958) 《ネタバレ》 
悪童にとって絶対に手に届かない花へのあこがれ。恋に目覚めた少年の苛立ちと嫉妬と憎しみ。女優が美しいので納得がゆきますね。 モノクロの白と黒のコントラストを上手に使っている。脚を目立たすために黒めの服。ボディラインを美しく表現する白いテニスウエア。あの時代にあんな短いテニスウエアがあったことが驚きです。テニスやコレシアムで呼び合うシーンなどは絵巻物を見るような美しさです。 悪童たちは美女から眼を離せない。女性がはつらつとして美しいということもあるが、恋人がいることがさらに興味をかき立てている。絵にかいたような幸せを体現しているカップル。テニス、森でのデート、人目を気にしない接吻や抱擁。あこがれの感情に加えて、やっかみや嫉妬の感情が複雑に入り込んでいるのだ。ナレーションでは「憎しみ」「復讐」などと表現されている。すべて性の芽生えに根ざすものだ。 悪童たちは彼女の後をつけて自転車に触ったり、カップルを脅かしたり、はやし立てたり、テニスを見学したり、落書きをしたりする。そうせずにはいられないのだ。それはエスカレートして、恋人(婚約者)がいない間に卑猥な絵葉書にみだらな言葉を書き連ねて女性に送るという行動になる。だがそれには大きなしっぺ返しがあった。男が山の遭難で死んでしまうのだ。あこがれだった女性はかつての輝きを失い、黒服に身を包み、もう悪童たちの関心を惹く存在ではなくなってしまう。恋をしていることにより、彼女は明るく若々しく、美しく輝いていられたのだ。罪の意識と後悔だけが胸に残る。失恋の疑似体験といえるだろう。無垢な少年期も終わりを告げた。。 複雑な心理の少年期を一陣の風のように描ききった力量に敬意を払います。ラストの太陽に映える木の葉が少年期の象徴でしょう。まぶしいですね。ナレーションが語り過ぎるのが欠点でしょうか。 
[DVD(字幕)] 7点(2010-06-09 04:55:44)(良:1票)
347.  ピアニストを撃て 《ネタバレ》 
【編集】冒頭の逃走シーンで、人にぶつかったと思ったら、一緒に歩き出し、和やかな話をする。そしてまた逃走。酒場で弟に助けを求めたと思ったら、女をくどいている。見つかり、また逃走。その後歌手が歌うシーンが長々続く。一本につながらない難解な編集。他にもある。孤独な男と思っていたら、娼婦と和気藹藹に寝る。二人組が部屋を見張っていたら、子供のいたずらで車に液体を落とされる。誘拐したと思ったら、穏やかに家族などの話を始める。根は悪くない二人組と思わせておいて、最後は銃撃戦で恋人殺害。意表を突きます。 【難解】難解なのは、人生は一筋縄ではいかないという意味。娯楽映画の善悪二次元論的展開を拒否。悪人の兄や二人組にも家庭的、人間らしい部分があるし、善人の妻も夫の出世のためにプロモーターと寝ていた。逃走や誘拐しているときでも心が緩み、ふと人間性が表れる瞬間がある。人間の持つ複雑性を表現したかったのだろう。 【内なる声】男の内なる声(科白)は臆病であることの告白。臆病故に、ピアニストとしての成功も一時的なものであり、女への態度も本心とは裏腹のものとなり、女を不幸にする。この内なる声は不要。あくまで映像で見せるべき。 【題名】男は絶望しておらず、開き直っている。死神に対して今度は女ではなく、俺を撃てという意味。開き直りが運命を切り開く場合がある。「piano player」は「pianist」より格下の存在。 【感想】男はピアニストとして成功したが、自信が持てない。妻はプロモーターと寝て自己嫌悪に陥り、又男がいつまでも自信がないことへの苛立ちから別れを持ち出し、自殺する。そのショックで、名を変え、場末の店でピアノ弾きに。恋人ができ、新出発の矢先、三角関係が発覚し、店主を正当防衛で殺害。兄のトラブルで引き取った弟がさらわれ、恋人も死亡。場末のピアノ弾きに戻る。一連の事件で開き直った男にとってピアノだけが自信の存在証明となる。さぞ演奏には深みが増すことでしょう。最後は自信を持った顔付になっている。悲劇が男を強くしたのだ。これも人生の皮肉、深み。映画で言いたいことはわかるが、手法がこなれていない気がする。人間劇よりも、細切れ、継ぎはぎの印象の方が残るのは欠点。悪人の孤独や悲劇も描けていればもっと深い作品になっていただろう。
[DVD(字幕)] 7点(2010-06-09 03:25:23)
348.  エアポート’75 《ネタバレ》 
①空港で誰かを待つ女。男が現れ、熱い抱擁と接吻。向こうで話そう、と歩きだす。だがその会話は別れ話だった。スチュワーデスと元パイロットで現航空会社の職員の二人は、すれ違いの毎日を送り、もう6年間も婚約中。これ以上一晩でも待てないという女と仕事の都合で30分しか時間が取れないという男。結局物別れに終わる二人。その後女の乗ったジャンボ機が事故で操縦者がいなくなり、女が操縦するはめに。最後は男がヘリからジャンボ機に乗りこんで無事に着陸させることに成功。男は女に結婚を申し込む。これがメインとなる話の筋。②もう一つは飛行機会社の副社長の活躍。事故機には妻と息子が乗り合わせている。興味半分で取材、報道しようとするTVレポーターに反発。各方面にテキパキと指示を出し、なんとか飛行機を無事着陸させようと悪戦苦闘する。③2つの筋に加えて、いくつかの群像劇が用意されている。引退したハリウッド女優、亡くなった副機長の恋人のスチュワーデス、端役の役者、病気の少女、心やさしいシスター二人組、犬を持ち込んだ女など。だが彼らの人生の掘り下げが浅く、十分に機能していない。生きるか死ぬかの大危機に直面しているのである。もっと感情的になり、パニックになる人も出てくるだろう。皆大人し過ぎるのだ。④操縦士がいなくなれば、先ず乗客に操縦経験者がいるか尋ねるのが普通。経験者がいなくても、男達何人かで協力して操縦するだろう。それに穴が開いたのなら気圧の関係で気流が外に向かい、中のものは外へ出る。現に副操縦者は投げ出された。そんな状況下で女性が操縦するのは難しい。機内も気圧が低くなり、酸素マスクが必要となる筈。この辺りの事故描写が甘く、手に汗握る展開とはいかない。ところで飛ばされた空軍パイロットはどうなったのか。パラシュートは装着してなかったのだから。事故当時飛行機はソルトレイクで着陸態勢に入っていた。それからぐるっと回ってソルトレイクに戻ってきたのだろうか。⑤油漏れもあり、ブレーキが効きにくいという障害もあった。だが、物足らない。タイヤが降りないとか、滑走路が霧で見えないとか、第二の危機があればよかった。そう思うのは現代の「危機を煽るハリウッド映画」を見すぎた弊害だろうか。昔はパニック映画でものんびりしていたんですね。古き良き時代を象徴する映画ともいえそうです。そう思って観れば悪くない出来です。
[ビデオ(吹替)] 7点(2010-06-06 11:12:32)
349.  ゴジラVSメカゴジラ 《ネタバレ》 
◆俯仰、俯角、ズームを駆使し、巨大なものを巨大に撮れている。カメラのタメやパン、随所に見せる効果的なオプチカル合成。光、煙、土煙、風、火薬、逃げる大衆など特撮は秀でている。◆ゴジラ、メカゴジラ、ガルーダ、ラドン、謎の卵、ベビーと五条の疑似母子、G-force、国連軍、超能力、恐竜オタク、青木と五条の恋愛など内容は多彩。ゴジラも建物を小気味よく破壊。戦闘シーンも長い。ファン心理を心得ており、飽きさせない展開になっている。◆それにも関わらず鑑賞後に爽快感が得られない。それを分析してみた。①敵役が不在。ゴジラもラドンもベビーを仲間と思い、守りに来ただけ。ゴジラもメカゴジラも悪相。どちらを応援すればいいのか。②テーマは「生命の偉大さ」。にも関わらず、死んだラドンが風化してそのエネルギーを得て、ゴジラが復活するなど、生命を無視した展開になっている。この矛盾が最大の失敗。生命賛歌で通すべきだった。せめて第二の脳が再生されるシーンはカットすべきだった。③ラドンもゴジラもベビーを仲間と思っているが、大きさが違いすぎる。とくにラドンは姿も全く違う。無理がある。④故に結末でベビーがゴジラについて行くが、それで良かったのか分らない。だからわだかまりが残るのだ。【ツッコミ】①青木は能力が劣っているのに何故G-forceに選ばれる。青木のダメぶりを強調する必要はない。②青木がプテロノドンを好きという設定は偶然がすぎる。③ラドンは先に孵化したわけだが、早く巨大になりすぎ。④「雑食恐竜が翼竜に托卵」はありえない。托卵は鳥が鳥にするもの。⑤ベビーが不安になると目が赤くなるのは解せるが、卵全体が赤くなるのは解せない。⑥卵に付着した植物が音楽を奏で、それがベビーの精神に影響を及ぼすメカニズムが不明。何の植物だったのか。⑦子供たちが植物の音楽を歌ったとき、どうしてベビーは興奮したのか。⑧ラドンの飛行速度が遅すぎる。マッハを超える筈だが。⑨卵を巡って、島でラドンとゴジラは対決した。何故ラドンは敵であるゴジラに自分の残っている生命エネルギーを与えたのか。⑩復活したラドンが熱線を吐けるようになってる。⑪第二の脳を破壊するより第一の脳を破壊せよ!⑫コンテナから救出するのに手間がかかり過ぎ。⑬復活したゴジラ強すぎ。⑭グルーダとメカゴジラが合体してもさほど意味がないなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2010-05-20 07:27:42)
350.  2012(2009) 《ネタバレ》 
ディザスター映画としては最高の出来。都市や大地の破壊を描くCGパートは迫力満点で、見る価値あり。だが人間ドラマは厚みがない。 ■そもそも余計なものが多い。マヤの予言とか、マヤの集団自殺とか、ダイアナ妃のトンネルとか、子供の名前がノアとか。どんどんB級になってゆく。都市が破壊されているのに電話がつながりすぎ。 ■人類愛パートは大統領とエイドリアン。ぱっとしないですね。大統領は残っても何の役にも立たないし、津波が来る15分前に乗客を乗せる決断にも疑問あり。■民衆の反乱もしょぼい。軍人などに反乱させれば盛り上がったのに。そうすれば正義の味方が登場する余地があった。 ■家族愛パートは作家とロシア富豪家族。離婚家族が再結束するワンパターン。作家と富豪、ゴードン医師と富豪の妻が知り合いなど、ご都合主義が目立つ。飛行場で飛行機に乗れないときに、大型ジェット機が見つかって、使用人がたまたま運転できたりとかはその最たるもの。 ■クライマックスは作家が命をはって障害物を除去する場面ですが、これは自分の播いたタネなので感情移入できず。ドアが閉まらないとエンジンがかからないってどういうシステム?無理やり感が強い。 ■ノアの箱船を最初は宇宙船にみせかけていたが、実際には津波に耐える船でしかなく、落胆でした。あんなのなら空母や豪華客船を改造すればできますし、潜水艦を使えばもっと安心です。それに中国奥地の高山の洞窟で船を使って、どうやって出港するのか?津波を待つ?ばかばかしい。港で作って早めに出港させとけばいいんです。人や物資はあとで運べばいいでしょう。遊覧していて、いざとなったら水中に潜るというシステムでもいいでしょう。あんなものなら各国で沢山作れますよ。 ■乗車券を売って富豪からお金を集めてましたが、これはおかしい。47国の国際協力事業なのでお金は潤沢にあるはず。刷ればいんですから。それに募集なんかしてたら秘密がすぐバレます。秘密を知った博士を暗殺していることと矛盾します。一方で遺伝子で選ばれた人の様子が描かれていないのはどうしたことか? ■冒頭の雨の中、少年が船で遊んでいる場面、あれは映画の後半を示唆するものとして印象的でした。 ■ぶっとんだDJオヤジ最高!個性があり、映画に活力を与えている。 
[映画館(字幕)] 7点(2010-02-26 11:32:01)(良:1票)
351.  都会の牙(1950) 《ネタバレ》 
暗黒フィルム(フィルム・ノアール)の佳作。話が転換する場面で、渦がでたり、毒が光ったり、前方の敵の拳銃の弾が横や後ろから飛んできたり、いかにも安っぽくB級だが、展開の疾走感が心地よく、観て損はない。昨今のジェットコースタームービーを思わせる脚本の勝利だ。会計士のビグローは何者かに毒を飲まされた。医者からあと一日か二日、せいぜい一週間の命と宣言される。絶望し、恋人の元に戻って残りの人生を癒されながら過ごすかと思いきや、猛然と走り出し、犯人探しにやっきとなる。傍題をつけるとすれば「走る会計士」、それくらい走り回っている。出会う人物がみんな怪しいのはご愛嬌。黒幕はギャングのボス、メイジャック。ピグローを誘拐させ、自宅に連れてこさせ、余計な説明をする。放っておいてもすぐ死ぬ運命なのに殺害を命じる。この手下がお約束のドジ。ピグローには安々と逃げられ、警察に射殺される。真相はこうだった。メイジャックは過去にイリジウムの不正取引をした。表向きは彼の甥ジョージ・レイノルズ(本名レイモンド・マクビアン)とフィリップの取引になっている。不正に感づいたフィリップはレイノルズを探すが、見つからない。実は、レイノルズは5ヶ月前に亡くなっていた。警察も不正に気づき、フィリップを尋問し、追及した。釈放されたフィリップは公正証書を作成していたのを思い出し、ビグローに連絡をとるが、あいにくと旅行で留守。どういうわけか、ビグロウの秘書に理由を明かさない。滞在先を教えてもらうが、翌日には自殺偽装で殺されてしまった。フィリップの妻もギャングの仲間だった。実行犯は、メイジャックの手下のホリディ(フィリップの会社の社員)。ホリディは証人を消すため、ジャズバーでピグローに毒を飲ませた。ここのジャズ・バンドが非常にクールで最高のスイングを聞かせてくれる。真相を解明しピグローは、会社から出てきたホリディを射殺。警察で真相を話し、恋人の名を口にすると、果てる。親玉は警察が逮捕してくれるだろう。主人公の人間ドラマが薄く作品に重さはない。離婚暦がある以外、どういう人生を歩んできたか不明だし、恋人への態度にも一貫性がない。恋人の嫉妬とか、バーでのナンパシーンは不要だった。二人は深く愛し合っているのが良い。数日しか命がないという設定が、緊張感をいやが上にも高める。悪者は余計なことをして墓穴を掘るのはサスペンスの黄金律?  
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-26 21:13:51)
352.  アリバイなき男 《ネタバレ》 
古いミステリー作品としては拾い物。観て損はない。元警察官のボスが立てた完全犯罪が興味深い。お互いに顔を知らないチンピラ三人を集め、現金輸送車強奪を決行する。銀行の隣の店に止まる花屋の車とそっくり同じ車を用意し、カムフラージュする。警察は花屋の車を追うので時間稼ぎができる。四人はマスクをしているためお互いの顔を知らない。金はほとぼりが冷めるまで隠匿しておく。実は紙幣の番号は知られており、そのことを知っているボスは警察に三人を逮捕させ、保険会社から出る高額報酬を目的としていたのだ。ボスはかつて担当した事件で誤解され、強制解雇された過去があり、警察をうらんでいた。だがボスの計画は少しずつ。それは嫌疑をかけられた花屋のジョーが、自らの潔癖を晴らすために事件の真相を調べ始めたからだ。わずかな手がかりだけを頼りにメキシコに飛び、犯人の一人にたどり着く。このあたりまで無理がなく、脚本は冴えている。その人物は運悪く警察に射殺されてしまうが、その人物になり代わってボスの指定した場所に出向く。お互い疑心暗鬼の三人。ボスはジョーの正体が分からない。最高に盛り上がるサスペンス。それにジョーとボスの娘との恋愛がからむ。ラストは”ぬるい”が、最後まで持続する緊張感は見事。尺は短かめ。ボスとその娘、ジョーの過去を紹介し、その人間像を深く掘り下げれば名作になり得ただろう。ボスにもジョーにも”古傷”があるのだが、未消化のまま終る。ジョーと娘との恋も唐突すぎる。だから感動しきれない。リメイクしてほしい作品。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-25 02:08:42)(良:1票)
353.  ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア 《ネタバレ》 
男は単純だ。人生に必要なのは、酒、たばこ、女、車。余命いくばくも無いと宣告された二人。やけになって煙草を吸うし、酒は飲む。あんなところにテキーラがあるのは実に不思議だ。「天国じゃ海の話題が流行っているらしい」「おれはまだ海を見たことがないんだ」「じゃあ、見に行こう」酔っ払った二人は高級ベンツを盗んで出かける。途中でお金が必要となって、ガススタンド強盗と銀行強盗。驚くほどうまくいく。また車のトランクから大金の入った鞄も出てきた。こうして道具立ては揃い、ギャングと警察の追求をうまく逃れて無事海にたどり着けるかの、痛快なロードムービーが始まる。ギャングがトジなのはいいが、警察が間抜けすぎるのは笑えない。やりすぎてはいけないのだ。海を見るのが目的だったが、お金が入ったので予定変更。もうひとつのやりたいことをする。一人はプレスリーの真似をして母にキャデラックをプレゼント。一人は女二人と寝る。ギャングに捕まり、絶体絶命のピンチ。だが大ボスが粋な計らいを見せる。「海を見に行きたいんだろ?行きな」最大のサプライズだった。大ボスの人生ドラマを少し描いておいて欲しかった。銃撃戦があっても弾は人には当たらない。車が崖から落ちても平気。大ボスは許してくれる。本当は二人はすでに死んでいて、天国にいるのだろうか?結局強盗で奪った金は戻し、損をしたのは大ボスだけ。残った金は見知らぬ誰かに送る始末。最後までギャグを忘れない二人。二人は海に辿りつくが、もう終りだと思うと寂しい気分になった。目的があるということが人生を価値あるものにしている。彼らにはもう目的がない。ささやかな目的を達して、彼らは死ぬ。ささやかな人生だけど、つかの間の夢をありがとう。
[DVD(吹替)] 7点(2009-10-24 02:56:07)(良:2票)
354.  砂の器 《ネタバレ》 
◆癩病を発症したら「らい予防法」により療養所に強制収用となる。それがいやなら、妻と子を残し、自分が巡礼の旅に出ればいい。その前に妻はどうして子供を残して出て行ったのか?◆癩病といいながら、その症状がない。◆英良は小学校にも行かず。流れ流れて自転車屋の丁稚奉公。それが大学出て、クラッシックの天才作曲家、ピアニスト、指揮者。絶対無理!◆英良は育ての親なしで、大学まで出たの?◆子供の英良は何故父の元を訪ねなかったのか?療養所はすぐわかる。◆元巡査の三木は英良の子供時代しか知らないのに、成長した英良の写真を見ても何故本人とわかった?◆英良は三木から連絡があったとき、「人違い」と何故言わなかった。◆三木の手紙では、千代吉は子供に会いたい一心で生きてきた。なのに刑事が写真を見せても、知らないふりをするのは何故?殺人事件の容疑者とは知らない筈。◆殺人が無計画すぎ。急に殺意が芽生えたので、石で殺して、礫死にみせかける。殺人は計画的に。◆動機が薄い。父親に電話一本でもかけて事情を説明すればいいものを。◆英良の恋人の理恵子は、刑事が「電車からシャツを捨てた話」を聞きにきただけで、何故逃げたの?「人違い」で済む話。◆理恵子は血染めのシャツを何故電車から捨てた?◆理恵子は英良が人殺しであることを知っていたのか?◆英良のコンサートを聴いて「彼は今父親と会っている」と刑事が言うが、何故そんなことがわかる?◆英良は父が癩病患者であることを世間に知られるのを死ぬほど恐れたため、別人になった。殺人をしてまで秘密を守ろうとした。そこが伝わらない。砂の器のような殺害動機だ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-10-23 03:48:40)
355.  ワイルド・ブラック/少年の黒い馬 《ネタバレ》 
これが本当にアメリカ映画かと首をかしげたくなるほど抑えた演出。全体に渡り無言のシーンが多く、美しい影像詩でつづる。これほど美しく馬を映した映画は珍しい。又馬の演技も見事。前半は嵐で船が難破した少年と謎の馬が奇跡的に島に流れ着き、少年と馬が仲良くなるまで。後半は帰国して、少年と老調教師の友情物語。ロッキーのような展開になります。ラストはお約束の競馬レース勝負。クライマックス・シーンは、大げさな音楽とアナウンスの熱狂で無理やり感動を誘うわけではなく、努めて控えめ。好感が持てます。老調教師にトラウマを持たせて、それを克服するというサイドストーリーを持たせれば、もっと盛り上がったでしょう。馬好きの人は是非観てください。良質な映画です。この映画の3年後に「ワイルド・ブラック2/黒い馬の故郷へ」という続編が作られます。そこではアフリカの砂漠に連れ去られたブラックを少年が追う、冒険物語になっています。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-18 19:17:15)
356.  名探偵ポワロ ゴルフ場殺人事件<TVM> 《ネタバレ》 
真犯人は最後までわかりませんでした。誰もわからないように出来てます。あの二人がお互いに相手が殺人犯と勘違いしてかばいあいますが、殺人現場に二人が別々に通りがかるのは偶然すぎるでしょう。ルノー夫婦の逃亡計画を犯人が立ち聞きしていたというのも偶然。緻密に計画された犯行ではなく、偶然が重なりあって複雑に見えただけなのが欠点。この辺りを工夫すれば秀作になれたかもしれません。ただ事件や道具立ては込みいっています。過去と現在の2つの誘拐偽造殺人。見知らぬ死体。3つのナイフに3つの恋。義父と子の確執。ポアロとパリの刑事の推理対決。美人歌手とヘイスティングスの恋。ゴルフはほとんど関係ありません。義父が殺害され、自分が疑われているのに、息子はのこのこ自転車レースに出場します。ポワロは飲み残しのコーヒーの匂いを嗅いで睡眠薬が入っていたことを見抜きます。原作ではヘイスティングスの恋の相手は双子の姉で、事件に関係するのは妹。殺された富豪は気が弱いですね。脅されたら逆襲すればいいのに。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-18 10:21:09)
357.  ブレードランナー/ファイナル・カット 《ネタバレ》 
科学が発達して、人間と人造人間(レプリ)との区別がつかなくなった世界。レプリは感情と移植記憶を持ち、人間との間に愛も生まれる。人間であることとは何か、生命とは何かを問う作品。だがいくら科学が発達しても、人間と見まがう人造人間を造るのは土台無理と思うので感情移入できない。寿命が少ないことに不満なレプリが反乱するが、そもそもロボット三原則を埋め込むとか、人間とすぐ区別がつくデザインにするとか、長年生きて満ち足りた人生の記憶を移植しておけば済む話。レプリを見分けるのに感情テストは笑える。ピッとスキャンすれば判別できそうなものだが。ボスのロイは、処理屋デッカを助けてやり、静かに死ぬ。仲間はみな殺され、自分の死も近いと悟ったロイ。彼の感情は、他人の生命を慈しむまでに発達し、自分の死を受け容れる。「恐怖の連続だろう、それが奴隷の一生だ」「思い出もやがて消える、時が来れば、涙のように、雨のように」感動的な場面だ。雨の未来都市はリプリの心象風景。光の点滅や影、雨、ビル群などで感情を表現する演出手法は芸術的。よくぞここまでと感心する。が、レプリが強制労働に従事してきた辛い過去、美しい宇宙の光景などが言葉でしか紹介されないので、人生ドラマとしての深みに欠ける。創造主の社長に復讐するのはいいが、逃亡の為に人を殺したり、親切なセバスチャンを殺すのはダメ。単なる悪党に堕している。レプリの一人が蛇ダンサーというのも必然性なく、悪趣味。デッカは、レプリを処理するのに何のためらいも無かったが、自分の正体を知ったレイチェルが涙するのを見て、心が動き、彼女に恋する。ロイの死でレプリへの同情は決定的となり、レプリを人間の仲間として受け容れる。ここでもデッカの過去が紹介されていれば、ラストはもっと感動的だったろう。レイチェルがデッカに「テスト受けたことある?」と聞き、夢のユニコーンの折紙が置いてあることから、デッカがレプリであると示唆されるが、これは不要。人間とレプリの心の交わりを描いているのだから、全否定となる。もし記憶を埋め込むとして、ユニコーンは使わないでしょう。ユニコーンの夢は人間の証明とも思えます。ブレードランナーを観た日本人は、「強力わかもと」の夢を見るか? 
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-11 06:34:15)
358.  アニー・ホール 《ネタバレ》 
アルビーは神経質で、”死”の強迫観念に捕われ、人生を楽しめない。「人生は寂しく、惨めで、苦しく、しかもアッという間だ」と人生観を語る。「僕を入れてくれるようなクラブには入りたくない」とも言う。理想は高いが、高望みは無駄とわかっており、常に自虐的である。無いと欲しがるが、あると気に入らない。インテリで理性的で合理的精神の持ち主だが、非理性的で非合理的な感情に捕われやすく、セラピーが欠かせない。結婚2度、恋人もいるが、性生活の悩みが常につきまとう。性欲が強いがちょっとしたことで中断してしまう。ロブスターは食べたいが、触るのはいや。都会は好きじゃないが、田舎はもっと住みにくい。昨日言ったことと正反対のことを今日は言う。アニーを尊敬する教授のいる学校に行かせるが、教授と浮気しないかと尾行してしまう。浮気するが、アニーに戻って来てと泣かれると戻る。一緒にいると別れたくなるが、別れると一緒にいたいと願う。アニーの歌は好きだが、有名になるのでレコーディングはして欲しくない。カリフォルニアは「人生を楽しむこと」の象徴だが、そこに行くと気分が悪くなってしまう。暗い天気のニューヨークが気に入っている。ついには「惨めなのは生きている証し、感謝すべき」とうそぶく始末。アニーと別れたが、彼女との生活を脚本にする。脚本で、縒りを戻す設定にして心を慰める。アルビーはコメディアンとして成功しており、経済的にも恵まれているが、性格が複雑で、惨めさや苦しみから決して抜け出せない男。矛盾だらけで、現実を見ず、決して産むことのない卵を欲しがる愚か者。永遠の精神分析患者だ。映画で監督は「アルビーは君や僕らに似てないかい?」と訴えてくる。似ているところがあるので、つい共感してしまう、そんな映画。劇中ロブという友人だけが常にアルビーの味方。精神安定剤のような役割を果たしている。こういう目立たない人に助けられているんですね。それに気づくようになったらアルビーの神経症も治るでしょう。人生は捨てたもんじゃありません。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-10 17:08:24)
359.  チェブラーシカ(1969) 《ネタバレ》 
1969年~1983年に作られたロシアの人形アニメ。非常に珍しいものを見せてもらいました。子供向けアニメはどこの世界でも変わらないですね。子供を思う心は政界共通と思いました。主要登場人物は、チェブラーシカ、ワニのゲーナ、意地悪おばさんのシャパクリャク。チェブラは観る子供が自分を投影できる「無垢な子供」、自分が何ものかを知る旅が人生です。ゲーナは親役、いつもチェブラのことを気にかけています。シャパクリャクは世間や大人の象徴でしょうか。物事を引っ掻き回す役で、意地悪もしますが、知恵があり、寂しがり屋です。敵に回すと怖いけど、味方にすると頼もしいです。物語はゲーナの行動によって動きます。本当の主役ですね。善意から行動するのですが、どこか間が抜けていて、笑えます。失敗したり、騙されたりしますが、最後には収まるところに収まります。ドタバタ劇の一種ですが、どこかもの寂しい雰囲気が漂っています。チェブラはたいてい不安そうな顔をしていて、音楽は短調。挿入歌が素敵です。「過去はちょっと惜しいけれど、未来はもっとすてきだよ。誰だっていいことあると信じてる。走るよ、走る。水色の汽車」特徴は、物語が終わっても、ちょっと待って、あれはどうなったのと気に掛かるところが残されること。①ライオンは動物園にいるが、友達がいないとガーナを訪れる。②船の錨を間違って持っていったまま。③シャパクリャが汽車で先に行っているのに、チェブラ達にトロッコで追いつく。④ケーキとダイナマイトの箱が同じ。⑤チェブラはワニの手紙や鉄くず集め募集の文字が読めたのに電報が読めなくなっている。ツボはガーナが空港でポーターに荷物を3個渡すが、気のいいガーナはポーターも乗せて自分が押し、荷物4個分の料金を払うところ。ポーターに悪意があるわけではなく、ポーターも抜けているんですね。何事もなかったかのように物語は進みます。おおらかな国民性の表れでしょうか?こういう笑いは日本人には珍しいですね。日本の笑いは、たいがい「オチ」や「突っ込み」があります。「大らかで、洗練されたユーモア」と解釈しました。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-10 13:00:46)(良:1票)
360.  エイリアン/ディレクターズ・カット 《ネタバレ》 
SF、ホラー部門で革新的な進歩を遂げた記念碑的作品。その影響力は計り知れない。しかし、今観直してみると、いくつか疑問が湧きます。星間旅行ができ、人間と見分けがつかない人造人間が作れる科学力があるのに、惑星への着陸に失敗して故障するなんてしょぼいです。故障させる必要もないですね。また地球外生物の宇宙船や化石を見つけたのに、そのことは一切言及されないのはどうしたことか。写真撮ったり、採集したりして記録に残すでしょう。世紀の発見ですよ。見せ方がうまいです。ゴシック・ホラーの見本のようなもの。なかなか姿を現さないエイリアン。光の点滅、影、水蒸気、サイレン、コンピュータ音、火などの演出で恐怖を盛り上げます。舞台が宇宙船で、他に逃げ場がないのが怖いです。閉塞感をつくるのが本当にうまい。エイリアンのデザインはまさに芸術。三つの変態と繭があり、飽きさせません。血液が強い酸なので、ヘタに殺せない。実に厄介です。クルーは軍人ではなく一般人なのでみな怖がり。そこが少し不満です。脳みそが筋肉でできているような軍事おたくや仲間を犠牲にする卑怯者、知恵と勇気のある者など、バラエティに富んだ人物が欲しかった。ボーナスの苦情をいう輩は不要でしょう。リプリーは船を爆破させますが、その必要はないでしょう。脱出すればいいのだから。ブレットが猫を探す場面で、水が雨のように降ってますが、何故ですかね。水道管が故障しているんでしょうか?コンピュータの反乱は「2001年宇宙の旅」、腹から怪物出てくるのは「遊星からの物体Ⅹ」という先駆者があります。途中、地球まで10ヶ月かかると言っていたのに、最後リプリーは地球まで6週間と言っている。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-09 15:47:48)
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