21. つぐみ
一つ一つの描写がいちいち観念的で、「これって雰囲気いいでしょ?」という感じで。つまり、登場人物が「生きてない」のです。したがって、どこまで話が進んでも、台本がそのまま進んでいるようにしか見えません。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2023-09-22 01:45:31) |
22. 手紙(1997)
《ネタバレ》 亡くなった夫から手紙が来ました、というのが主題のはずでありタイトルでもあるんだけど、そもそも夫が亡くなるまで1時間以上。最初の手紙が来た時点で残り20分。いや、その時点でおかしいと誰か気づきましょう。もともとの夫婦の描写自体、表層的な断片の連続でドラマも何もないんだけど、肝心の手紙が来てからは、単に来ましただけで終わっています。しかも最後はビデオレターって、それならひねりも謎も何もないじゃん。作品の全体を壊しかねない締め方です。つまり、設定だけで制作者が満足してしまって、その後を何も考えなかったということです。 [DVD(字幕)] 3点(2023-09-19 00:16:14) |
23. 酔拳2
《ネタバレ》 半分ふざけて作ったような(そこが良かったとも言えるが)1作目と比べて、数段真剣でシャープになっている。ジャッキーのアクションの純度という点から見れば、数ある彼のキャリアの中でもトップクラスなのではないかと思う。その上で、序盤では次々に設定やキャラクターをぶち込んできますから、異様に濃い世界が形成されるわけです。ただそれを制作側が自分で処理できなくなったのか、終盤はそのほとんどが置き去りで、完全にアクション頼みになってしまいました。例えば、せっかく印章という重要ツールを持ってきたのだから、最後の決戦も、その取り合いをめぐって繰り広げられる、とかできなかったのかな。 [DVD(字幕)] 6点(2023-08-31 00:25:47) |
24. GIGANTIC ギガンティック
《ネタバレ》 3人組の若者のロード・ムービー的なあれこれを描いた作品です。台詞なしにグッと食い込んでくる導入部で期待は高まったのですが、その後が、単にいろいろ散りばめましたという感じで、妙に散らかっている。まあ、子供用のようなサッカー・ゲーム対決など、優れた場面もありますけどね。で、ダラダラ引っ張らずに余韻を残すラストは上手く締まっています。というわけで、最初と最後が出来が良いので妙に印象に残ってしまうという、困った作品。 [DVD(字幕)] 5点(2023-08-29 02:38:19) |
25. タクシーハンター
《ネタバレ》 タクシー運転手を標的に殺しを繰り広げる主人公!という驚愕の設定に、どんなB級作品なのかと警戒してしまいますが、意外にこれが悪くない。平和な家庭を有する単なるサラリーマンの主人公が、いかにそのバイオレンスな世界に変質していくのか、そのステップもきちんと踏まれていますし、標的をタクシー運転手にするのも無理なく説明されています。また、最初からうまくはいかずに逆襲に遭ったりとか、ときにはいい人である運転手に遭遇したりとか、そのあたりの多面性も確保されています。ただ、ホネはそのようにしっかりしている割に、話としてはあまり広がらずにあっさり終わってしまいました。導入部の妻関連のエピソードが苛烈なだけに、その後の餌食になる各運転手には、あれだけではなくもう少し何か欲しかった気がしますし、最後はあまり意味のないカーチェイスが続いてしまいます。犯人が判明する音声のくだりとか、最後の病室の一連の描写とか、もう少し引っ張ってほしいと思いました。 [DVD(字幕)] 5点(2023-07-10 23:50:48) |
26. メジャーリーグ2
続編の王道ではあるし、安定した内容ではあるのだが、よく考えると、あの実況のおじさんのトークに面白さの大半を依存しているのではないだろうか。各メンバーの描写も、前作で確立したキャラに制作者側が頼ってしまっているようにしか見えない。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-07-04 00:11:05) |
27. 女殺油地獄(1992)
樋口可南子はただ脚本を読まされているだけだし、それと対置されるはずの藤谷美和子にも全然見せ場がない。五社監督は、「鬼龍院」にしても「陽暉楼」にしても「吉原炎上」にしても「肉体の門」にしても、多数の登場人物を遠慮なくぶち込んで、その中で主人公の存在を浮かび上がらせるという手法が得意だったのですが(そして、違うことをやってみたくなるのも分かりますが)、限られた2~3名をじわじわ追っていくというのは、やはりセンスが合っていませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2023-06-17 01:05:22) |
28. 二十才の微熱
主人公と周辺数人の設定をしたところで、力が尽きてしまったというか、その先に手が回りませんでした。全体の作りがどこまでも平坦で、登場人物が生きていません。随所で長回しにトライしているのは意欲的ではありますが、特段の効果が発生していないので、かえって作る側がその手法に依存しているようになってしまっています。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2023-06-02 00:19:58) |
29. アドレナリンドライブ
《ネタバレ》 偶然ヤクザの事務所から大金を持ち逃げして逃亡する、という出だしだけで見てみたくなる魅力的な初期設定。しかしそこからは、それなりに安定して進行はするものの、いろんなネタを使いこなせなかったというか、もうちょっと上に飛翔しそうなところでそのまま高度維持で行ってしまったという感じです。主人公2人は、ありえない一歩を踏み出すのだから、もう少し前フリとか決断の瞬間とかが必要なんだけど、ただ何となく持ち逃げしてるし、途中で痴話喧嘩っぽくなるのは、逃亡から一段落ついて、今度はこの2人の間の関係の変化を・・・みたいにしたかったんでしょうけど、あまり機能していない。あと、あの6人組は、変にチンピラ演技がしっかりしていて妙にイラッとするので、兄貴分との区別という点でも、コメディ部分をもっと強めてほしいところでした(バーベキューのシーンみたいなのがもっと欲しかった)。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-05-28 00:30:53) |
30. トリコロール/赤の愛
《ネタバレ》 何よりも、主演のイレーヌ・ジャコブを美しく撮ろうとする徹底ぶりに驚き。表情アップから全身ショットから背景の色彩感覚からカメラのアングルまで、すべてがそれに統一されている。一方で、滅茶苦茶な理屈を淡々と強引に語っていく元判事との、研ぎ澄まされて選ばれた言葉のやりとりは、「羊たちの沈黙」すら彷彿とさせる(!)。●マイナスは、周辺人物があまり機能していないこと。電話でしつこく浮気を疑ってくる彼氏は結局「それだけ」だし、法律家志望の若者とその彼女も「それだけ」。私はむしろ、あの若者については、同じ時間軸に並行存在していると見せかけて、実は元判事の若き日の姿がバーチャル展開されている、と思っており、なかなか凝った真似をするなあ、とも思っていたのですが。●最後の全員集合は、完全に蛇足ですね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-21 19:59:14) |
31. トリコロール/白の愛
《ネタバレ》 ジュリー・デルピーが主演と勝手に思い込んでいたので、途中からさっぱり出番がなくて、あれれ?となってしまいました・・・。ただそれはそれとしても、国外脱出にしても、謎の男とのあれこれにしても、土地取引をめぐるどうこうにしても、かなりの危機が発生するものと思いきや、何となく上手くいってしまうのがいい。フランス作品ならではのしんみりとした可笑しさと、そしてペーソスがあります。そう考えると、トリッキーな「作戦」の方がかえって浮いている気がしますが、最後のジュリーの微笑は聖女の雰囲気すら感じさせ、それで丸め込まれるように着地している不思議。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-05-16 00:44:17) |
32. トリコロール/青の愛
ひたすらチマチマじめじめしている独善的な心理描写が続く、いろいろな意味で何とも辛い作品。ジュリエット・ビノシュだったからそれなりに見ることはできたが、通常レベルの俳優だったら破綻していたのではないかと思う。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-05-12 00:27:00) |
33. ロゼッタ
嫌がらせのように役者のアップ以外見せないカメラ。完全な制作者の自己陶酔だけの世界です。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-05-03 00:20:31) |
34. ポネット
《ネタバレ》 カメラはひたすら母を亡くした少女を追い続ける。最後までほとんどそのまんま。しかし、主演のヴィクトワールちゃんの類い希なる存在感によってなぜか品質を維持しているという、何ともラッキーな作品。カメラ負けしていないというだけではなくて、そこそこの長回しにもきちんと耐えていますからね。ただそうだとすると、大人(制作側)がそこまで一人の少女によりかかって作ってしまってどうする、と言いたくもなりますが。ただし、いざ母親を出すときに、変な小細工をせず、他の登場人物と同じようにそのまま自然に出しているというセンスは良い。そして主演の彼女は、後に「ショコラ」でジュリエット・ビノシュと一緒に帰ってきました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-04-25 23:14:02) |
35. エイリアン3
ひたすらジメジメしていて陰鬱で、覇気のない世界が続く。それはそれで後のフィンチャーの源流っぽいといえなくはないのですが、肝心の各登場人物に個性も魅力もなく、エイリアン自体も大して強そうに見えないので、緊迫感が全然ありませんでした。しかも、設定を刑務所内とかにしたせいで、閉塞感もまる出しです。映画的なものがあったのは、最初の漂着宇宙船の中の描写だけでした。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2023-03-21 02:24:53) |
36. 渚のシンドバッド
肝心の伊藤君と吉田君のあれこれの方は、何か単調で作為的でもあり、あまり面白くない。むしろ、周辺人物の方に見るべきものがある。清水さんはいかにもクラスにいそうな優等生キャラで、画面に登場するだけでぱっと焦点を引き寄せてしまうほどの存在がありますが、この女優の高田久実さんって、もしかしてほかには出てないの?また、浜崎あゆみがきちんと演技ができているのにもびっくりしました。あと、長回しの多用はなかなか意欲的ではあるのですが、「ほーらここが重要場面ですよー」というようないかにものところでばかり使われているので、かえって効果を削いでいます。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2023-02-25 00:48:41) |
37. ナイト・オン・ザ・プラネット
《ネタバレ》 コンセプトはなかなか魅力的なんですけど、肝心の会話の中身があまり面白くないのですよね。いろんなパターンの登場人物を世界各地で取りそろえて、そこで終わってしまったというか、形ありきで作ってしまったというか。例えばわーわー怒鳴るロージー・ペレスにしても、すぐ突っかかるベアトリス・ダルにしても、人の話を聞いてないヘルシンキの酔っ払いにしても、何か一つ一つが作為的なのです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-01-31 01:41:37) |
38. 生きたい
いろいろと外れた人たちを配置して、外れたシーンを連ねようとしていったら、かえって作品が自由度を失って閉塞してしまっただけでした。もっともらしく語られる姥捨山がどうのこうのというのも何も機能してないですし、そもそも制作側はこの主人公に何をさせたかったのでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2023-01-28 02:12:27) |
39. われに撃つ用意あり
《ネタバレ》 根本的なところで、訳あり台湾人のお姉ちゃんをめぐるあれこれを追いたかったのか、元全共闘世代がどうしたということを表に出したかったのかが分からない。お姉ちゃんについては、ただ逃げて、追いかけられるというだけ(そもそも敵があまり強くなさそうなので、それに立ち向かうという展開も生まれてこない)。また、拠点に集まっている人たちは、かつて闘いましたという切実感というか、ヒリヒリ感というか、そういうものがまったくない(逆にそれを消化したならしたで、それを表現しなければならないはずだが、それもない)。つまり、いくら原田芳雄がそれっぽく振る舞おうが、全体として、その辺のおっさんおばさんの久々の集まりというのと、それほど変わりません。 [DVD(邦画)] 4点(2023-01-23 00:52:26) |
40. 僕らはみんな生きている
せっかくの「サラリーマンチームが異国の内戦に突入」という美味しすぎるシチュエーションなのに、どうも使いこなせていないかなあ。こういう設定だったら、ビジネスのことしか考えてない(考えられない)日本チームが、銃撃戦からゲリラ戦からなぜか全部解決してしまう、みたいなギャップコメディを期待するのに、そういうシーンはあまりありませんでした。一方で、各種のロケにはやたら気合が入っているため、変なシリアス感が逆に立ちこめて、勢いを削いでいるのです。えらく消化不良感が残りました。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2023-01-10 23:36:29) |