21. シュガー・ラッシュ
《ネタバレ》 ゲームが好きだった。12歳のころ。スーファミのソフトを買ってもらって家に帰るまでの車中。待ち切れず、丁寧に丁寧に箱を開けて、説明書をチラ見したりして気を紛らわした。もう気持ちは早く帰りたくてしょうがない。あのときの、そわそわした、はち切れそうな幸福感に勝る幸福感を、大人になった僕はいまだ知らない。おそらく同じような少年は日本中にいたはずだ。この映画はあの頃の僕たちのための映画だ。全編にわたってノスタルジーに基づいたゲーム愛があふれている。もちろんストーリーの軸となる、ラルフの仕事に対する想いの成長や、ヴァネロペというあまりに輝きに満ちたキャラクターの言動は、心をさわやかにしてくれるけれど、やはりこの映画の本質的な価値は、あの頃のゲームに対する言葉にできない想いを表現してくれていることだと思う。それは二度と手に入ることのない、あの頃にしかない価値で。あのときの僕たちは、ある意味リアル以上にリアルなものをゲームに感じていた。(8bitの単純な音楽は、どんなオーケストラより胸をうった)。映画が終わると、ゲーム愛がむき出しになったエンドロールがはじまる。見ていて、ストーリーと何の関係もなく、涙がとめどなくあふれてきた。なぜ泣いているのかわからなかった。12歳の頃の僕が泣いていた、と言ってもいいような気もする。 [映画館(吹替)] 9点(2013-04-25 01:43:03)(良:3票) |
22. テッド
《ネタバレ》 冒頭一分。「この季節になるとアメリカの子供はみんなユダヤ人をいじめます」ってナレーションになるのですが、そのテンションが笑えるかどうかで、この映画を本当に楽しめるかどうかが決まると思う。予告編は、そういう男っぽいブラックユーモアを抜いて「かわいいクマが下品」という構造的な面白さだけで勝負していたので、つられて見にいった女性はちょっと引いたんじゃないかな。。男たちが酒を飲みながら深夜にバカ話をするようなテンションが終始つづくので。ロシア人風の名前に変換してく言葉遊びで、女性だけついてこれないとことか、男性的ユーモアにあふれてるので、本当のところは男の人のほうが楽しめる映画です。だけど、映画の見た目は女性向け。誰がターゲットなんだこの映画は。 [映画館(吹替)] 6点(2013-03-25 01:01:29)(良:1票) |
23. ウォーリー
このあたりからピクサーは時折外す作品が出てくるようになった印象。 [映画館(字幕)] 6点(2013-03-25 00:44:08) |
24. 最強のふたり
とてもいい映画です。インパクトには欠けるかもしれないが、映画館には、こういう映画が必要だと思う。平日の昼間とかに、授業や会社をサボってちょっと見たら、映画館出た後にもう少しがんばろうと思いながら出てこられるような。そんな小作品の映画です。 [映画館(吹替)] 8点(2013-03-25 00:40:32) |
25. レ・ミゼラブル(2012)
舞台を見たことがある人とない人で、評価は大きく分かれるのではないでしょうか。僕は見たことがなく、音楽もストーリーも完全に初見だったので、信じがたい感動を味わうことができました。すべてがプロフェッショナル。原作自体がとてもよくできていたということだと思うのですが、誰もがどこかのシーンで共感できる人間ドラマが描かれています。それでいて、観客を飽きさせない宿屋の道化たち。そして名曲の数々…。キャストもすばらしいですが、個人的にはガブローシュが大好き。ドラクロアの民衆を導く女神の横に描かれてるのが、彼がモデルと聞いてとてもうれしい。 [試写会(字幕)] 9点(2013-03-25 00:35:21)(良:1票) |
26. ONE PIECE FILM Z
原作よりも早く提供された情報があったりして、映画としてよりワンピースのストーリーとして観るべき価値があったという印象。内容的にもストロングワールドよりも面白かった。Zのキャラクターはラストとかなかなかよかったです。でもまぁ、それだけかな…。 [映画館(邦画)] 5点(2013-01-09 00:12:00) |
27. ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
《ネタバレ》 「監督、あんたまだわかんないのかよ!」とちょっとがっかりしました。庵野さん、この手のことは14年前の劇場版でもうやったじゃないですか、と。破を観た時、ようやく「エヴァが好き」って公言できるようになったと思ったんですよ。それまでちょっと恥ずかしいものだったエヴァが、エンターテインメントとしてみんなで共有できるメジャーで歴史に残るものになれた、と思って嬉しかったのに。それでたくさんの人が喜んだのに。Qでまたちゃぶ台をひっくり返してしまった。内容のない精神世界の迷いにみんなをつきあわせてしまった。これでまたエヴァンゲリオンはニッチなもののままになってしまった気がします。残念でなりません。おそらくたくさんの人がQでエヴァから脱落したことでしょう。監督はこんなに演出の技術が長けている人なのに。もったいないの一言。ふろしきをたためないとしても、たたもうと闘う姿勢を見せてほしかった。ちゃんと、共感できる”人間”を描いて欲しかった。Qの劇中、誰の気持ちにも共感できませんでした。シンジに現状をまったく説明しない大人やアスカたち。フォースインパクトを本当に止めたいとは思えないです。カオル君がやめろと言ってるのに槍を抜くシンジ。お前、なに考えてんの?これはついていけないですよ。でもアニメーションの技術は本当にすばらしいんです。音楽もとてもよかった。シナリオ以外のすべての要素はいいのに。思わせぶりな用語に内容がないってことはわかってるでしょうに。願わくば次作でこのレビューがとんちんかんなものになることを祈っていますが、おそらく難しいでしょう。なんで前作の予告の通りにつくってくれんかったんや…。 [映画館(邦画)] 5点(2013-01-08 00:46:32)(良:2票) |
28. モテキ
《ネタバレ》 Perfumeはやっぱりテンションあがってしまうし、エンドロールでスチャダラパーの今夜はブギーバックとか、やっぱりそれしかないよなという選曲。 全体的に、「俺が出ている、これは俺の話だ!」と感じてしまいましたが、日本全国で同じようなことをたくさんの男子たちが思ったことでしょう。しかし何より麻生久美子が、「神聖かまってちゃんとかちゃんとYoutubeで観るからぁ~」って泣きながら言うシーンはなんだかよくわからないけど、歴史的な勢いを感じた。これだけでも観る価値があると思いました。 [DVD(邦画)] 7点(2013-01-08 00:30:00)(笑:1票) |
29. おおかみこどもの雨と雪
反応見てると、ツイッターでは絶賛、2chでは賛否両論、みたいな感じなんですね。この評価の別れ方、すごくよくわかります。表面だけを見てファッション的に語れるアニメとしては良作だし、芸術作品として本質的な部分に着目すれば、けっこう薄い映画であるということでしょう。いろんな意味で細田監督らしい作品です。おそらくその原因は「人間」が描けていないこと。いわゆる「アニメ」のお約束の枠内から出ていないがゆえに、いまを生きる我々の現実に影響を及ぼさない映画だということ、だと思います。これは細田監督がつくるものに終始一貫するので、もうやむを得ないかと思います。花と雨は「物語のためのキャラクター」という感じで心から共感できる行動原理を持ちません。成長後の雪もただのテンプレキャラです。ただ、じゃあ映画がつまらなかったか、と言われたらそうではなく、アニメのお約束の中での技術的試みのうまさはかなりもの。新しい挑戦を成功させています。12年の歳月を2時間で見せるこれまでの映画にはあまり見られない独特なテンポとリズム。背景の絵を自然に動かす技術。CGの使い方のうまさ。感嘆しました。あと、雪の子供時代の声優さん。天才だと思います。あんなに明るく自然な笑い声、どうやって録ったんだろう。蛍の墓の節子以来の衝撃でした。そのおかげか、幼少時代の雪のみ例外的に、突出して魅力的な人間が描けています。このあたりはすごく評価したいのです。でも映画としてはどこか違和感があるのです。こんなに芸術的批判と、技術的称賛が入り混じる映画もあまりないです。 [映画館(邦画)] 8点(2012-07-22 02:15:48) |
30. テルマエ・ロマエ
前半のギャグは、マンガと同じことをやってるだけなんですが、120%増くらいでさらに面白くなっていて、本当に阿部寛は日本のコメディー界の宝だなと思いました。前半部分はまったく文句のない面白映画で、観客も自然に笑っていて、良作です。「ローマ人が日本の銭湯に来る」というアイデアはとても強いビックアイデアだったんだなーと改めて思いました。ただ後半になると、監督の興味が「上戸彩をいかにエロく撮るか」に集中していったような印象があり、まあ確かに悪くないエロさだったんですが、ストーリー内容は実に平面的で薄っぺらいものになっていきます。上戸彩はどの作品みても同じような薄い人に見えますね。まあエロさは悪くなかったですけど…。彼女にはもっと成長を期待したいです!胸を強調して撮られてる場合じゃないだろうと!…まあ悪くはなかったですけど…。 [映画館(邦画)] 6点(2012-07-17 02:43:47) |
31. リトル・ミス・サンシャイン
すばらしかったのは、特に3点。まず主役の女の子。終始無邪気で、明るくて、かわいくて、暗くなりがちなストーリーを一気に救っていた。つぎに「家族みんなで協力しないと動かない車」というアイデア。ストーリーやキャラクター設定はわりとベタでちょっとやりすぎな感じもあるのだけど、車を押すシーンが自然に繰り返されるおかげで、無理せず全体が丁寧な印象になっていた。最後に音楽。地味だけど、とてもクオリティの高い音楽だったと思う。良作でした。 [地上波(吹替)] 8点(2012-07-17 02:25:57) |
32. アーティスト
《ネタバレ》 とても面白かったんですが、ストーリー構造が同じような『ライムライト』など、過去の白黒映画の名作たちと比べてしまうと、やはりもうひとつという印象です。ただひとつ、興奮したシーンがあって、それは途中、ガラスが割れて急に音が入るシーンです。映画に効果音があるって幸せだなと痛切に感じ、さらに「もしかしてここから音声ありになるのか!画期的!」と興奮したのですが、結局それも一瞬で終わってしまいました。構造に新しい文脈を持ち込んでいない以上、過去の名作と同一線上で比べざるを得ず、そうなるとちょっと負けてしまいます。 [映画館(字幕)] 7点(2012-07-17 02:18:53) |
33. ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ
すごくアートディレクションされていて、よかった。リンゴ投票のシーンを再現した、CGでいろんな人の顔がめまぐるしく変わるのとか、雰囲気作りが素敵でした。まぁドラマの延長でしかないので、ストーリーのカタルシスはないです。一億に対する価値観がリアリティに欠けるのがその原因かと。 [地上波(邦画)] 6点(2012-03-05 01:02:51)(良:1票) |
34. 踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!
久しぶりにつまらない映画をみたなーという印象。 テレビシリーズの最後の年末スペシャルをピークに、どんどん作品が弱っていくのを見るのがつらい。いかりやさんがいなくなり、役者たちが歳をとり、脚本はアイデアを使い果たし、どんどん引き算になってる感じ。踊るはもっとうまいことやれば、男はつらいよ的に国民的な資産になれる作品だと思います。マンネリでいいから、楽しませる努力をストーリー上でしてほしい。豪華な役者とか、そういうのはもういいから。 [地上波(邦画)] 3点(2011-12-31 01:33:23) |
35. 男はつらいよ
寅さんシリーズを初めて観ました。さすが名作と語り継がれるだけあって、見ごたえのある内容でした。序盤はちょっとだるいなぁとか思ってたのが、後半になるにつれどんどん寅さんの事が大好きに。寅さんの発するセリフが、いちいち心に全段命中していました。こういうヒーローは日本にしか描けないし、こういう風景や、寅さんみたいな人を心の原風景にしながら日本人は生きているんだなぁと。そういう事実が、いいなぁと素直に思えました。 [DVD(邦画)] 7点(2011-12-03 23:53:36) |
36. ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON
《ネタバレ》 三谷監督は、この映画を思いついたときについて、「金縛りにあった弁護士が幽霊に、『証人になってください!』って言っている絵が理由もなく浮かんだ」って言ってましたが、これが天才ということだと思います。ただ、その思いつきをこの映画ですごくよく昇華したかというと、そうでもないと思います。まず、長すぎる。監督のサービス精神が過多すぎます。テレビ出身の人らしいやり方ですが、大物役者を出して間を持たせる、という手法に頼りすぎるあまり、彼らを出すためだけのシーンってのが多すぎます。それがストーリーの本質とずれて上映時間を引き延ばす結果となっている。さらに、この映画の笑いのパターンって実はそんなになくて、「幽霊が見える人と見えない人の差による面白さ」という手法を手を変え品を変えで繰り返していることがほとんどです。だから、今一つ飽きてしまう。あと、歌で場面が切り替わるシーン。監督がやってみたかったのはわかるんですが、すごくこちらが当惑するだけのものになっていた。…悪い部分ばかり書いてしまいましたが、僕は三谷監督が大好きなのです。たとえばタップダンスや、犬のシーン、僕は心から笑っていました。そして深津&西田両名の演技は日本最高峰だったと思います。だからこそ、すごくもったいなく感じるのです。エンターテインメントとして楽しめるテレビドラマみたいな映画をつくるだけじゃなくて、せっかくこんなに才能があるんだから、三谷監督にはさらに上に行って頂きたい。監督の大好きなアメリカの映画監督たちのように。今回は、正直ハッピーフライトみたいな娯楽映画だなーという印象でした。そんなレベルで留まる才能じゃないので、三谷監督には、観客や興行主やテレビ局の評価を得ることを一旦忘れて、自分のためだけに映画を作って頂きたい。これが一映画好きとしての切なる願いです。 [映画館(邦画)] 7点(2011-10-31 01:51:42) |
37. 映画 レイトン教授と永遠の歌姫
原作のファンなので期待していたのですが、残念な出来でした。レイトンという作品をつかって遊ぼうという制作者の意識をまったく感じなかったです。宮崎駿がルパンを解体してカリオストロをつくったように、この映画ならではのレイトンをみせてほしかった。 [DVD(邦画)] 3点(2011-08-14 18:36:10) |
38. カーズ2
前作が大好きだったので、2もかなり期待して観にいきました。結論から言うと、全体的にちょっと弱体化してる印象でした。前作は、マックイーンの心の成長や古びた街の再生という大テーマがあったので、大きな筋の上に乗っかって、笑ったり、泣いたりできたのですが、今回共感できたテーマはマックイーンとメーターの友情くらい。もちろん、エンターテインメントとしては間違いなく、カーズならではのスピード感、映像のハラハラ感は前作以上のすばらしさです。子供と一緒に楽しめる映画を見たい人には心からおすすめできます。でも、ピクサーの本当の良さは、すごくレベルの高い人間心理を描写しつつ、映像力やセンスで楽しませてくれる、ってとこにあると思うので、個人的にはすこし残念でした。笑いのレベルも、同時上映のトイストーリー短編のほうが高かった気がしてしまって…。 [映画館(吹替)] 6点(2011-07-30 23:33:37)(良:1票) |
39. コクリコ坂から
《ネタバレ》 まず、全体の感想としては、悪くなかったのです。少なくともアリエッティよりは演出の才能がある人がつくっている感じがしました。だけど、この制作条件を与えられていれば、もっとよくなれたはずだ、とも思いました。一番の問題だと思ったのは、主人公の海の心が描けていないこと。え、なんでガリ版手伝ってんの?え、いつ俊のこと好きになったの?(イケメンだったからってだけ?)どういうふうに成長したの?(父のことはどう乗り越えたの?)テーマであるべき人間の心の変化が描かれていないから、感動が浅いところで止まってしまう。せっかくのいい題材がなんだか薄っぺらくなってしまう。駿さんが書いた脚本段階では、冒頭に海の父が戦死する海戦シーンがあったという。それを吾朗監督は「旗を揚げる海が重い宿命を背負っている子にしか見えなくなってしまうから」と削除したという。ここに映画経験の乏しさ、あるいはセンスの欠落が出てると思った。あるとないとでは、海が旗をあげていることの意味や、彼女の印象がだいぶ変わってくる。たしかに朝食の準備から始まるシーン、軽快な音楽でとても素敵だけど、そのせいで作品の背骨が抜かれてしまってる。気の毒だとも思うけど、ジブリはもはや国民的アニメをつくる責務を背負ってしまっているのだから、それに耐えうるだけの濃度をもった映画を準備してほしいと思う。30年先に残る作品を毎回つくる気でやってほしい。悪くなかったけど、もうちょっと頑張ってほしい、勝手ながらそう思いました。「バス停での告白」「東京で理事長を待つ3人」「カルチェラタンまわり」のシーン、好きです。可能性を感じました。がんばってほしいです。今作で吾朗監督を応援しようという気になってきました。 次回作に期待します! [映画館(邦画)] 6点(2011-07-18 02:07:19)(良:1票) |
40. さや侍
《ネタバレ》 門番のふたり。娘。殿様。家老。脇を固める役者がみなとてもうまく、いい味をだしている。松っちゃんは、今回の映画ではじめて役者を信用し、助けられはじめたと思う。映画は総合力だと思うので、とてもいい傾向だと感じた。大枠のアイデアもすばらしい。松っちゃんの才能がうまく使える構造をみつけたと思った。テンポもよかった。でも、残念ながらシナリオには釈然としない部分がやはりけっこうあった。父親を見捨てたり反発したりするのは、もうちょっと歳が上の娘なんじゃないかなぁ。違和感。大がかりなセットも、たかが罪人のために誰がどうやって作ったのか。期待した野見さんの素人感もあんまり効いてない。あと、最後、切腹しなくてもいいんじゃないかとか、歌わなくてもいいんじゃないかとか。つめが甘い印象がありました。ただ、すごく好きなシーンもあって、さや侍と娘がはじめて手をつなぐシーンはよかった。子役の女の子がすごくいい笑顔。嬉しくてたまらないといった様子で、見ていて心があたたかくなった。こういう絵がとれるんだから、松っちゃんは一回ギャグ忘れてみるのもいいんじゃないかと。 [映画館(邦画)] 6点(2011-06-19 03:17:05)(良:1票) |