21. ゴジラ(1954)
記憶に新しい戦争の記憶、癒されぬヒロシマ・ナガサキの傷あと、ビキニ環礁水爆実験の現実、核兵器が世界に広がっていく言い知れぬ恐怖。当時、日本人だけが持ちえたであろうこれらの不安と怒りのメッセージを、ひとつの映画に込めようとしたスタッフの情熱と、天才特撮監督円谷によって生み出された傑作。ゴジラが永遠にゴジラであり続けるのは、この作品によって誕生したからである。末裔がプロレス界入りしようが、アメリカに渡ってジュラシックパークでアルバイトしようが、腐ってもゴジラなのだ。 10点(2004-09-28 19:51:51)(良:1票) |
22. 眠れる森の美女(1959)
子供の頃、美しいオーロラ姫に胸をときめかせ、王子と竜の対決をどきどきしながら観ました。たしかに、姫が眠っている印象しかないのは、この作品の紹介の絵が、例外なく全て眠っているものを使っているからなのでしょう。起きたとき、大あくびして背中をぼりぼりかいたら受けるだろうな、などと考えるようになったのは、純粋さなどとっくに無くなった大人になってからです。 7点(2004-05-13 19:08:41)(笑:1票) |
23. 悪魔のような女(1955)
リメイクを先に観てしまったのが、残念です。サスペンスとしては一級ですね。意表を突く展開に、恐怖を感じさせる映像は見事でした。たしかに、これだけ面白いとリメイクしたくなりますね。邦題は誤解を与える要素がありいまいちです。くれぐれも、こちらを先に観て下さい。 8点(2004-05-12 22:49:05) |
24. 幕末太陽傳
テンポの良さと、粋な台詞、たしかに、落語を立て続けに聞いているような感覚でした。傑作でしょうね。天才川島監督の名は聞いていましたが、初めて観ました。幕末で時代が大きく動いている時でも、庶民の関心は日々の暮らしや色恋事。天下国家を論じても、つまるところ、いかに世渡りを上手くやるかが先決。建前や理屈を言う前に、生き抜いていかねばなりません。佐平次が高杉晋作に言う「武士にしておくには惜しいな」は、維新後、時代に順応できなたった者たちへの、痛烈な皮肉に聞こえました。 9点(2004-05-09 21:46:04) |
25. 蜘蛛巣城
マクベスは未見です。人間の欲望への執着と精神的弱さが織りなす悲劇が、日本が誇る最高のスタッフで表現された傑作です。物の怪の予言が本当かもしれないと判ったときの心理の変化や、自分の行為の罪悪感に正気を失っていく様子、さらには、予言に必死に縋ろうとするあがきぶりに、有史以来繰り返されてきたであろう人間の権力への執着と悲劇の本質をかいま見た気分です。人間が悲劇を引き起こすのを止めないの は、結局、我々自身がそれを望んでいると言うことなのかもしれません。悲しい事実です。音声だけが少し残念です。 9点(2004-04-27 23:01:14) |
26. 情婦
面白いです。皆さんの高得点は納得します。何といってもあの弁護士。老練なたぬき親父ぶりで、人情味がある言動が魅力です。ユーモアがあり、敏腕であり、このキャラクターならシリーズ物にしても十分いけます。そして、マリーネ・デートリッヒの影のある怪しい魅力。出てきただけで、何かが起こりそうな雰囲気が何ともいえません。ラストで見せる女心がまた泣かせます。結局、この・・、もうやめましょう。観てのお楽しみ。すごいですよ。 9点(2004-04-14 19:55:16) |
27. ミスタア・ロバーツ
組織の中で働く者にとって、仕事の内容にも増して、人間関係が重要です。ましてや、四六時中顔をつき合わせて共同生活を送る船乗りにとってはそれが全てとも思われます。自分の出世しか頭にないトップと、この人ならと思える直属の上司。みえみえの設定でも、思いっきり笑えて、さわやかな涙をながせます。こういう人に巡り会いたいと思う以上に自分がこうなりたいと思うはず。三波さんありがとうございました。PS:映画から25年後、ある受賞セレモニーの際、海軍のコーラスに聴き入っていたヘンリー・フォンダに対して、歌い終えたメンバーの代表が敬礼し、「Thank You Mr.Roberts」と感謝の意を表すると、フォンダが感極まってか涙を流したとの事。映画の場面と重なり、熱いのもがこみ上げました。 9点(2004-03-31 00:15:02)(良:1票) |
28. 東京物語
《ネタバレ》 家族は、どういう関係にあろうが、一番身近な存在である。戦後まもない高度経済成長前の日本の家族の様子を、夫婦、実の親子、義理の娘といった関係を通して、丁寧に描いている。子供とはいえ、すでに独立して別の家庭を営んでいることもあり、肉親との関係でも、一見気を使っているが、どこかよそよそしい。実の親だからこそはっきり言えるようにも感じる。逆に、血のつながっていない義理の娘は、遠慮があるのか、むしろ、より優しさをもって親と接している。末の娘は、正直に兄や姉を批判するが、義理の姉は、年齢を重ねると悟ることとなる心境を諭す。一方で彼女は、義理の父には、複雑な自分の気持ちを正直に話もする。家族を構成する各人の思いと葛藤が、物語の進行にあわせて、少しづつ観る者の心に染み渡ってくる。深く静かな印象が心地よい。実生活をベールに包み、男たちの夢とあこがれを壊すことなく、映画の中のイメージを守り通した、原節子の女優魂に乾杯。と言う訳で、世の男達のほとんどは、結婚するならば原節子の演じたタイプの女性を夢見るだろうな。でも、現実は甘くない。運が良ければ、しかも、奇跡的な運の良さを持ってしても、せいぜい三宅邦子タイプだな。そして、ほとんどの男は杉村春子タイプと一緒になってしまう。働きもしないで太っている杉村春子タイプだな。 [地上波(邦画)] 10点(2004-02-23 13:02:12) |
29. シェーン
《ネタバレ》 ある種の、男の美学を表現しています。ガンの達人でありながら、抜いたのは、ジョーイに撃ち方を教えた時と最後の決闘だけで、飲み屋で侮辱されても、最初は引き下がり、無用な争いは避けます。奥さんと微妙な関係になると、それ以上発展しないように自ら去っていきますが、その前に、一人で決闘に臨みます。そして、なにより、少年の心に強烈なヒーローとしての印象を刻んでいきます。映画史に残る名ラストシーンの西部劇の傑作です。 9点(2004-02-21 20:01:11) |
30. エデンの東(1955)
ジェームズ・ディーンの名作です。いまさらコメントすることもないので、ちょっと脱線しますが、監督のエリア・カザンの特別名誉賞受賞の時に感じたことを一言。カザン監督は第71回アカデミー賞でこの賞を受賞した。プレゼンターは、スコセッシ監督とデ・ニーロで、二人の紹介でカザン監督が登場すると、会場の、立ち上がって拍手する者と腕を組んですわったままの者に分かれた状況がテレビに映し出された。彼らは、カザン監督の赤狩りに協力した過去の行為と芸術への評価について、自分がどう思っているかを明確に示していたのだ。私にとっては感動的な場面であった。感情を押さえた大人の対応ではあるが、明確な意思表示。アカデミー賞の権威とアメリカの民主主義の成熟を見せ付けられた瞬間だった。 9点(2004-02-10 13:07:34)(良:1票) |
31. 十二人の怒れる男(1957)
陪審員が法廷で示された証拠や証言を基に評決するまでの過程を登場人物の表情と台詞だけで描いていきます。法廷に求められるのは、真実の追求と正義の執行です。社会生活で起こる事件やトラブルで私たちは司法を最後の拠所とするからです。しかし、この映画は、その司法の現場でも、過ちを犯す危険性があることを示しています。立派な法律があっても、事実を認定し、法を適用するのは人間である以上、個人的感情、誤解、偏見などが入り込む可能性がそこにあります。司法に携わる者の責任と判断の重みを示した法廷ドラマの傑作です。 10点(2004-02-07 08:56:46)(良:1票) |
32. 戦場にかける橋
デビッド・リーンの作品らしく、見ごたえのある骨太な人間ドラマが、大自然の中でくりひろげられていきます。みなさんと同様に、戦争のむなしさも感じましたが、それ以上に人間の生き方も考えさせられました。主人公は、捕虜として生きていく上で、軍人としての誇りある生き方を、橋を見事に完成させることに求めます。救出をただ待つといった、あるいは、戦争終結まで生き延びるといった受身の姿勢ではなく、敵の仕事でも積極的に協力して、自分たちがこの戦争に関わった証を残そうとします。やがてそこに、敵味方の間を超えて、信頼関係が生まれます。人間は、たとえどんな状況でも、考え方を変えれば、生きがいや目的を見つけられるのかもしれません。しかし、こうして順調に進んだかに思えた仕事も、結局悲劇に終わり、戦争のむなしさを、よけい引き立たたせる結果ともなっています。 9点(2004-02-03 00:55:09)(良:2票) |
33. 生きる
先日、職場の健康診断で胃のバリウム検査をしました。結果は精密検査が必要とのこと。ガーン、目の前真っ暗。数日後、気を取り直し胃カメラ検査。見る限り何ともなさそう。その時、先生が「細胞を取って、悪性か検査します」と言って、カメラの先のピンセットみたいなもので胃の3箇所ばかりをつまんでピッ。ガーンまた真っ暗。血が出てるし、どうなるのか。結果が出るまでの2週間が長かったこと。当然最悪の事態も考えました。もしもの時は公園作ろうか・・・。で、おかげさまで悪性ではありませんでした。 8点(2004-01-14 23:49:02) |
34. ガンヒルの決斗
《ネタバレ》 その昔、テレビで両親と見ました。西部劇の名作です。最後の決闘に持っていくエピソードの積み重ねが優れていると記憶しています。両親は、それぞれ感じるところも違っていて、決闘の場面で親父が「いよいよ親玉どうしの決闘だ。」、最後の場面でお袋が「あの女の人汽車に乗るかしら?」。で私は、解説の、当時まともだった水野晴郎氏のコメントに感動した覚えがあります。「アンソニー・クインの最後の言葉は、子供を亡くした父親の悲しみと、主人公との友情に満ちたものです。」うん、たしかに今でもそのとおりだと思います。あのころは、まさか、・・・。 8点(2004-01-11 17:15:43)(笑:1票) (良:2票) |
35. 七人の侍
日本映画の傑作です。日本人が外国(ハリウッド)に対して誇れる数少ない作品でしょう。ところで、黒澤監督が若いころハリウッドに進出し、何本か撮っていたら、どんな作品が出来ていたんでしょう。想像しただけでわくわくします。さて、この作品、見所は数知れずありますが、前半の仲間となる侍を集めていくシーンが今後の展開を期待させるという点で好きですね。しかし、良くまあ個性的な連中が集まったこと。いやあすごい。追加。今日、4Kリマスター版を観てきました。良かった。まず音声が改善されている。ほとんど聞き取れなかった前のバージョンだったが、7割がたわかった。そして映像が美しい。白黒映画の美しさが蘇っていた。コマが変わる時のブレは無くなり、細かい部分もクッキリしていた。それに、・・え?前はよっぽど酷いバージョンを観ていただろうって?・・・そ、そうかも知れない。 [映画館(邦画)] 10点(2004-01-10 22:46:45)(良:1票) |