21. うなぎ
《ネタバレ》 全体に流れる枯れた雰囲気とキーワードとなる「うなぎ」の得体の知れないグロテスクさが印象的でした。多分、うなぎとは女性全般の象徴であり、まさに夜釣りでヤスで刺して(殺して)得たうなぎが最初の妻であり、その後罠によって(殺さずに)捕まえたうなぎが桂子を象徴していたのだと思います。その桂子を汚れのない理想の女性として描かず、ドロドロとした愛憎の末に逃げ出してきた汚れた女とするところに今村監督のシニカルさが醸し出されていたと思います。 5点(2004-08-30 13:13:43)(良:1票) |
22. フォレスト・ガンプ/一期一会
《ネタバレ》 何だろう?人生に行き詰まったり、失恋したりすると見たくなる映画なんです。作品の善し悪しとは別にその時その時の悩みに対応するような場面や台詞があって心にしみる映画ですね。最近、仕事、プライベート共にうまくいかなくてまた見てしまいました。そこで気づいたのは、物語のヒロインのジェニーのように辛い現実と渦巻く欲望に生きる我々はガンプのような存在を欲しているのかもしれませんね。 「また、精一杯あがいて、突っぱって生きてみるよ、そして何年後かに行き詰まったらジェニーのように帰ってくるよ。」 8点(2004-08-11 16:00:07)(良:1票) |
23. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 アメリカの抱える暗の部分、移民差別、労働者階級の貧困、身障者の問題ありとあらゆるものが重く暗い画面と共にのしかかってきます。その現実と向き合いながらも空想の中でミュージカルに耽る主人公の姿がとても健気でした。本当に救いのない話で見ていて辛いのですが、不思議とビヨークの醸し出す雰囲気が全てをオブラートのように包み込み、辛い現実を中和していました。多分他の女優さんなら成り立たない映画だと思います。 8点(2004-07-27 10:31:41) |
24. プライベート・ソルジャー<TVM>
忘れ去られた激戦にスポットをあてた力作ですが、戦場はどこも同じで、ノルマンディーだろうがバルジであろうがそこで戦った者達にとっては深い印象と残像を刻みつけているのでしょう。邦題でもわかるように「プライベート・ライアン」系の現代戦記映画ですがなかなか良くできています。戦場でのもうどうしようもない心理状態とか勝っても負けても栄光などない閉塞した状況とか良く描かれてます。何にせよ演出・配役が「プライベート・ライアン」や「バンドオブブラザース」とは対照的でとっても地味です。出ている俳優さんたちもうだつの上がらなさそうな人達ばっかり出てます。まさに忘れ去られた戦場を描くにふさわしい感じです。しかし、そこがリアルでいいんですよ。多分実際はあんな感じで戦っていたんだろうなと思いました。 8点(2004-07-14 13:01:46) |
25. アダプテーション
《ネタバレ》 面白かったと思います。訳は分からないけど、クリエイティブの苦悩や自分の才能に対する不信感ひいては他人に対する敵対心と挫折感が今の自分の状況に合致していたのでその部分に共感したのかな?ただそれを縦軸として色々な事柄やテーマが入り乱れてくるので途中で現実と非現実が曖昧になってきてしまいました。脚本が進まない兄のヘルプに弟が出てくるあたりから急展開になってきて「これは弟の影響を受けて脚本がこうなりました」っていう意味なのかな?と思ってたら現実の出来事だったのでズッコケてしまいました。コメディって書いてあったけどあんまりコメディって感じがしなかったなぁ…。 6点(2004-07-02 10:54:52) |
26. バトル・ロワイアル 特別編
《ネタバレ》 深作監督の実質的遺作ということもあり画面からは並々ならぬものが醸し出されておりました。邦画でここまでストレートなエンターテインメントを作れるほどの監督は今の若手には皆無ではないでしょうか。ただ内容は別物として何のメッセージが込められているのかが全く理解できませんでした。昨今の小学生の殺人事件の加害者もこの映画を観ていたようなので「あぁこんなに簡単に人って殺せるんだぁ」と思ってしまう気持ちも分かるような気がしました。原作は読んでいないのでBR法なるものがどういう意図で成立して何故彼らが代表として殺しあいをしなければならないのか?それによって社会には何が還元されるのかが分からなかったので彼らの死の意味が無意味なものに思えました。微妙な問題を差し引いて観るならば良くできてたと思います。ビートたけしの独壇場もなかなか良かったですし。 4点(2004-06-20 19:27:19)(良:1票) |
27. ビッグ・フィッシュ
《ネタバレ》 ファンタジー的要素の中にフリークスを絡めてくるティム・バートン節炸裂のお話ですが、ちょっと長いかなと感じました。テーマとしては、息子が父親になる時に今まで偉大だと思っていた父親と同じ立場になりそこから父親の実像を掘り起こしていくというまさに自分の立場と被りまくりの話でしたので非常に感情移入しましたけど、実際フタを開けてみればオヤジも人間だし何のことなく自分と同じような苦悩を抱えて家族を養っていたということな訳で、その話をゴチャゴチャとした演出にしてしまうより、シンプルに展開させた方が良かったんじゃないかなと思いました。デビット・リンチの『ストレイトストーリー』と対極をなす映画だと感じました。 6点(2004-06-14 10:44:38) |
28. ストレイト・ストーリー
《ネタバレ》 ちょうど、映画館でビッグフィッシュを観て家に帰ってからDVDでこの作品を観たこともあり似たようなテーマでありながら監督によって表現の仕方がこうも違うものかと思いました。回想シーンを入れるか入れないかが大きな違いであり、入れた方が物語に変化がつき観客も飽きさせないだろうけど、この作品はそんなもの全く無しで延々とおじぃちゃんの語りだけで進行します。一見単調なんだけれども、その顔に刻まれたシワが色々なことを想像させてくれます。実話に基づいているが故に演出も控えめで俳優さん達の演技も自然だし観ている方も、コタツでおじぃちゃんの昔話に耳を傾けてるようなゆったりとしたそれでいて含蓄のある時間を過ごせます。デビット・リンチはリアルな人を撮るのがうまい監督さんだなと思いました。主演のおじぃちゃんの冥福をお祈りします。 8点(2004-06-14 10:29:31) |
29. ドーン・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 怖くはなかったですね。中学生の頃に見たゾンビ映画のトラウマになりそうな怖さが抜けて、音やタイミングでビックリさせる演出とグロ画像のオンパレードは生理的に受け付けられませんでした。走るゾンビはありだと思うんですが、頭を破壊されない限り何度でも蘇るゾンビの特性が生かされて無くてただの「暴徒」になってしまっているのが不満でした。極限状態におかれた時の人々の行動にも説得力が無く(みんな身勝手すぎ)登場人物に感情移入出来なくて傍観者としてしか観れなかったのも怖さを感じなかった一因なのかと思います。話にメリハリが無かったのでラストの絶望感が薄くなってしまっていたと思うのと全体的に突き抜けた所が無くて中途半端な印象を受けました。 6点(2004-06-07 11:12:17) |