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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1922
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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381.  マリッジ・ストーリー 《ネタバレ》 
情熱的な恋の果てに結ばれたはずの夫婦が迎えた離婚の危機を、ほろ苦いユーモアを交えて描いたヒューマン・ドラマ。監督は僕とはどうにも相性のよくないノア・バームバックだったのだけど、アダム・ドライバー&スカーレット・ヨハンソンという今ノリにノッてる人気俳優が豪華共演ということで今回鑑賞してみました。先に結論を述べさせてもらうと、やはり今回も僕の好みとはどうにも合わなかったですね。確かに、全編に散りばめられたユーモアはどれもセンスがあって大変良いし、ときおり見せる機智と警句に富んだセリフにもハッとさせられるし(特に、キリスト教圏の女性は常に聖母マリアと比べられるというセリフには唸らされました)、役者陣のナチュラルな演技も素晴らしいしで、完成度はむちゃくちゃ高いのは僕も認めるところなんですけども。離婚どころか一度も結婚すらしたことのない自分としては、この離婚あるあるにいまいち嵌まれなかったのも要因の一つかな。まあでも最終的には、好みの問題。僕は本作のいい観客にはなれなかったようです。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-11-24 00:30:59)(良:1票)
382.  心のカルテ 《ネタバレ》 
摂食障害に苦しむ少女たちが、型破りな精神科医が営むグループセラピーを通して徐々に立ち直ってゆく姿を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。キアヌ・リーヴスがそんな破天荒な精神科医を演じているということで今回鑑賞してみましたが、正直、さっぱり面白くなかったです。とにかく脚本がゆるゆる過ぎます!!最後までダラダラダラダラどうでもいい話が延々と繰り返され、僕はもう退屈で退屈で眠気が止まりませんでした。拒食症の実態も上辺をなぞってるだけの薄っぺらい代物。僕が昔読んだ摂食障害をテーマにした本によると、ある拒食症患者は買い込んできた大量の食糧を夜中中食べては吐き食べては吐きを繰り返すことを止められないそうなのですが、ここにはその悲惨な現実の片鱗すらありません。もう、終始、キレイごと。それにこの少女たちのグループホームに一人だけ少年が混ざっているのもなんか不自然で、これって無理やりラブストーリーの要素を入れたかっただけちゃうんって思っちゃいました。んで、最後はお母さんの腕の中で赤ちゃんごっこしたら、過去の確執も無事解決ってあまりにも浅はか過ぎるっしょ!主役を演じたリリー・コリンズのもはや本当の病人にしか見えないメンヘラ女子っぷりに+1点!
[インターネット(字幕)] 3点(2020-11-21 03:01:49)(良:1票)
383.  ディストピア パンドラの少女 《ネタバレ》 
そこでは最後に残された唯一の希望さえ、今にも消え去ろうとしていた――。謎の伝染病が蔓延し人類の大半が狂暴な化け物〝ハングリーズ〟と化した近未来。人々は強固なフェンスを張り巡らせその中で何とか身の安全を確保していた。軍部が管理する完全に外部と隔離されたその施設内で暮らす11歳の少女メラニーもまた、深い絶望の中に生きていた。彼女をはじめとする十数人の子供たちは常に独房に監禁され、外へと出る際は完全拘束された状態でしか許されなかった。何故なら彼女たちもまた謎の病原菌に汚染されているから。そう、彼女たちは〝ハングリーズ〟でありながらも思考能力を残している新種なのだ。彼らこそワクチン開発の決め手となるかも知れない唯一の希望だった。だが、優秀な科学者のもともう少しで人類の未来を取り戻せそうになっていた矢先、とうとうハングリーズたちによってフェンスが破られてしまう……。滅亡の危機に瀕したそんな未来社会で、明日の光を求めて彷徨う人々を描いたサバイバル・スリラー。といういかにもベタな設定の典型的なB級ゾンビものだと思って観始めたら、意外や意外、なかなかしっかりとした内容でけっこう面白かったです。特にこの人々がゾンビ化する謎のウィルスの発生源がある種のキノコというのは良いアイデアですね~。最後、このゾンビたちを栄養源としていた菌が発芽し、巨大なキノコとなって今にも胞子を撒き散らそうとしているというシーンは絶望感マックスで大変グッド。それに、大量のゾンビたちが徘徊する世界でのアクションもちゃんとツボを押さえていてなかなか楽しい。主人公であるメラニーも保菌者なので、いつゾンビ化してもおかしくないというのも緊迫感があって良かったです。ただ惜しいのは、ここまで徹底的に考えられた設定で始まったお話なのに、後半から徐々にその設定に綻びが出ちゃうところ。まず、日中立ったまま寝ている彼らの近くで間違って音を出しちゃったのに、それに気づくゾンビと気づかないゾンビがいるというのはおかしい。後半、普通に思考能力が残った子供ゾンビが急に出てくるのですが、彼らの存在に一切説明がなかったのも残念。ここら辺の脚本上の詰めの甘さをもう少し何とかしてほしかったかな。とは言え、最後のパンドラの箱の暗喩もばっちり決まってたし、絶望的な世界観もしっかり作り込まれていたし、主人公もけっこう魅力的だったしで、まずまず満足の内容でありました。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-11-19 23:37:41)
384.  日の名残り 《ネタバレ》 
第一次大戦後から第二次世界大戦にかけての激動の時代を、英国上流階級の貴族に仕えるある執事の視点から描いたヒューマン・ドラマ。原作は、今や世界的な大作家となった日系英国人カズオ・イシグロ。主演を務めるのは、もうこれ以上ないくらいのまさに嵌まり役というしかない名優アンソニー・ホプキンス。もちろん本作のことはずっと前から知っていたのですが、以前読んだ原作があまりに素晴らしかったので、そのイメージが壊されるんじゃないかとの懸念が拭えず、ずっと未鑑賞のままでした(だって『わたしを離さないで』という前例があるしね)。でも、ネット配信サービスのラインナップの中に本作のタイトルがあったので、満を持して今回鑑賞してみました。率直な感想を述べさせてもらうと、いや、なかなか良かったんじゃないでしょうか。原作では、このスティーブンスという堅物の執事の「私」という一人称で話が進んでいくのだけど、もちろんこの執事は仕事一筋の超真面目人間なのでそこに一切個人的な感情は書かれていません。でも、読者は彼の同僚である女性への秘めたる想いをひしひしと感じとることが出来て、その切なさに誰もが胸打たれずにはいられないというまさに名作と呼ぶにふさわしい作品でした。映画では逆に、この主人公のモノローグを一切使わなかったのは英断だったと思います。それでもちゃんとこのスティーブンスの仕事第一主義に徹するあまり、自らの感情を二の次にしてきたことの後悔や孤独感をちゃんと感じ取れたのは凄いことですね。特に、この主人公と密かに想いを寄せるヒロインが暗い部屋の中でぐっと近づくシーンは出色の名シーンでした。「もしあの時、ほんのちょっと勇気を出して彼女にキスしていれば僕の人生は違ってたかもなぁ」なんて、誰もがふと思い出すような青臭い感情をビシバシ突いてきて、もう切ないのなんの(笑)。んでも確かに、この彼女が結婚を機に仕事を辞めることを決断した夜、思わず部屋で泣いてしまった彼女の元へとスティーブンスが入ってゆくというのはやり過ぎですね。ここは原作通り、スティーブンスが部屋のドアの前で彼女の泣き声を聞いたのにそれでも声を掛けられなかったとした方がより、後のこの主人公の悔恨がくっきりと際立ったと思うんですけどね。とはいえ、歴史の巨大なうねりの中でちっぽけに埋もれてゆく個人の感情という何処か日本的な〝もののあはれ〟もしっかりと描かれていたし、なかなか良い映画化作品だったんじゃないでしょうか。教訓。キスしなかったことを後悔するより、キスして後悔した方が絶対いい!
[インターネット(字幕)] 8点(2020-11-14 01:17:20)
385.  もう終わりにしよう。 《ネタバレ》 
物語は、とある女性が彼氏の運転で田舎町をドライブしているシーンから始まる。目的は、彼の両親に初めて会い、夕食をともにするため。予定が立て込んでいる彼女はその日のうちに家に帰りたいと何度も念押しするのだが、出発前から降り始めた雪は次第にその勢いを増していた。「大丈夫なの?」と何度も問う彼女に、彼氏は「ちゃんとチェーンを積んでるから」とどこか他人事。次第に険悪になってゆく車内――。と、ここまではよくある映画の冒頭部。でも、本作はそこから次第に変な方向へと舵を切ってゆく。全く噛み合わない二人の会話、何度も挿入される意味不明なシーン、詩の朗読や過去に読んだ小説の作品論を延々と繰り返す二人、そして彼女のスマホに何度も掛かってくる謎の電話……。目的地である彼氏の両親の家へと辿り着くと、この不穏な空気はますますその濃度を濃くし、やがて観客は気づくことになる。「あ、これはそっち系の映画なのか」と。いわゆるデビッド・リンチ系のシュルレアリスム劇。ここで監督の名前を確認し、僕はなるほどと納得する。そこには、こういう前衛的な作品を撮り続けてかつて天才の名をほしいままにしたチャーリー・カウフマンの名があったからだ。観客の生理に直接訴えかけるような不条理なエピソードを積み重ね、次第に悪夢のような世界に誘う独自の手法は相変わらず健在。この主人公を迎え入れる両親の神経症資質な感じや常にブルブルしている愛犬などなんとも不気味で、この世界観は嫌いではない。最後まで観ても明確な答えなど提示してくれない、監督の嫌らしさも非常に意図的だ。恐らく物語の合間合間に出てくる孤独な用務員のおじいさんがある雪の日、車の中で自殺したときのその脳内に走馬灯のように駆け巡った願望や妄想、過去の思い出を映像化したものだと僕は解釈したのだが、どうなのだろう。ただ、これが緻密に構築された、知的好奇心を刺激する内容だということは分かった。とはいえ、それが面白さに繋がっているかと問われると正直微妙と言うしかない。この分野の大家であるデビッド・リンチの数々の作品と比べると、やはり圧倒的に映像センスや芸術的な深みが足りないように思うのだ。ほんのちょっとシュールなだけの映像を延々見せられ、そこまでこの手のジャンルが好きではない自分としては非常に退屈に感じてしまった。そればかりか、この監督の自己顕示欲ばかりが鼻につく醜悪な自慰行為を見せつけられたようで嫌悪感すら湧いてきてしまった。結論。この監督の映画を観るのは、これで「もう終わりにしよう。」と思う。
[インターネット(字幕)] 4点(2020-11-11 10:13:08)(良:1票)
386.  オールド・ガード 《ネタバレ》 
彼らの名は、オールド・ガード――。謎の現象により、ある日突然、不死の力を宿してしまった四人の男女。以来彼らは何百年もの間、歴史の陰で人知れず人類の危機を救ってきたのだった。ナポレオンのロシア遠征、南北戦争、二度に及ぶ大規模な世界大戦、そして冷戦終結……。遥か昔に生を受け、もはや何百年生きたかすら分からないアンディをリーダーに、彼らは今日も世界の危機を人知れず阻止していた。そんなある日、四人は数世紀ぶりに新たな仲間の誕生を知る。アフガニスタンの紛争地で敵の襲撃に遭い、呆気なく命を落としたはずの若き黒人女性兵士が、そのすぐ後には何事もなかったように立ち上がったのだ。脳内映像でそのことを知った彼らは、すぐさま新たな仲間の元へと向かうのだった。そんな折、彼らの存在を知った世界的製薬会社がその不死の秘密を探ろうと動き始めていた……。アメリカのグラフィック・ノベルを原作に、歴史の陰で暗躍する孤高のダーク・ヒーローたちをスタイリッシュに描いたSFアクション。主演を務めるのは、もはや世界一カッコいい美魔女と言ってもいいシャーリーズ・セロン姉さん。徹底的に鍛え抜かれたであろう彼女のそのパーフェクトなボディが画面狭しと暴れまくるアクションシーンは、もうさすがの貫禄でそれだけでも見応え充分でした。いやー、どうやったらこのお歳でここまでの美貌とプロポーションと身体能力を維持できるのやら…。この人、もはや半分機械で出来てるんじゃないかとさえ思っちゃいますね(笑)。ただ、それに対してお話の方には僕はそこまで嵌まれませんでした。まあ突っ込みどころ満載の荒唐無稽な設定はそーゆーもんなんで全然オッケーなんですが、問題は脚本の詰めの甘さ。まず、主人公がこのセロン姉さん演じる不死たちのリーダーなのか、それとも新人のこの若い黒人女性なのか、最後までそこらへんが非常に曖昧なのでいまいちどちらにも感情移入出来ない点。やはりこの黒人女性をがっつり主人公にして、物語の冒頭は彼女が生き返るシーンから始めた方が良かったのでは。そんな戸惑う彼女に、アンディはじめ不死の軍団が現れた方がより物語に入り込めたように思うのですが。あとこのアンディが物語の終盤で不死の力を失ってしまうシーンがあるんだけど、そこも結局どうなったのか最後まであやふやなまま終わらせたのは致命的。不死の力を失ってはもはやリーダーを続けていけないと思うんですけど。映像は終始キレイだし、アクションシーンもスタイリッシュでけっこう頑張っていただけに、もう少し脚本を練って欲しかった。惜しい!!
[インターネット(字幕)] 6点(2020-11-09 03:09:27)(良:1票)
387.  ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋 《ネタバレ》 
次期大統領候補として充実した日々を送る美しき女性国務長官と、現在失業中の超イケてない小太りの元ジャーナリストのおっさん。全く違う世界に生きる彼らの人生がある日ひょんなことから交錯し、いつしか恋に落ちるまでをスラップスティックに描いた格差恋愛コメディ。普段、こういった大人の女性向けのちょっぴりお下品なロマンティック・コメディ?は全く観ないんですけど、監督がかつて『50/50』や『ウォームボディーズ』というポップな作品でスマッシュヒットを飛ばしたジョナサン・レヴィンということで今回鑑賞してみました。しかも、お年を召してますますその美貌に磨きがかかっているシャーリーズ・セロン姉さんが主演を務めているというのですから、これは観ないわけにはいきますまい。うーん、確かの彼女の魅力は充分堪能できたものの、肝心の内容の方は僕の好みとはやはり全く合わなかったですね、これ。全編に渡って、とにかく下品!妙に生々しい下ネタ満載で、しかもさして笑えないという、ね。特に後半、主人公がオ〇ニーしてるとこを政敵に盗撮されるシーンなんてあまりにも下品すぎて、もはや嫌悪感すら湧いてきちゃいましたわ。唯一笑えたのは、ネオナチに無理やり彫られたカギ十字のタトゥーが棒人間になってたとこくらい。あと、主人公のこのおっさんがひたすら癇癪ばかり起こしてずっと怒鳴り散らしているのも不愉快千万!どうしてこんなウザイおっさんにこのバリバリのキャリア・ウーマンである国務長官が恋に落ちたのかという肝心の部分も理由づけがかなりテキトーなので、僕は物語に一切入り込めませんでした。そして最後、このおっさんのオ〇ニー動画がネット上に拡散して一大スキャンダルになったのをどう落とし前つけるのかと思えば、ヒロインが「誰だって一人エッチすることあるじゃない。私はそれでも彼を愛しています」と国民に語り掛けたら無事丸く収まって、それで次期大統領の立場も安泰って……。どんなけテキトーなんですか(笑)。そんなわけで、シャーリーズ・セロンの美魔女っぷり以外は一切観るべき部分のない凡作でありました。
[DVD(字幕)] 3点(2020-11-02 02:02:30)(良:1票)
388.  荒野の誓い 《ネタバレ》 
1892年、いまだインディアンの脅威が去らぬアメリカ南部の田舎町。退役を間近に控えた、かつての戦争の英雄ブロッカー大尉に、恐らく最後となるであろう任務が下される。それは、過去に仲間を惨殺したアパッチ族の首長イエロー・ホークを故郷まで連れ帰るというものだった――。末期の癌を患い、長年囚われの身だった彼を人道的な見地から故郷に帰そうというのだ。殺された仲間のことを思い、当初は断ったものの、軍人としての義務と年金のために仕方なく任務を引き受けるブロッカー大尉。信頼する仲間たちを集め、首長とその家族を連れ荒野へと旅立つのだった。ところが初日、彼は荒野で悲嘆に暮れるある一人の婦人と出会う。話を聴いてみると、彼女はなんと凶悪なコマンチ族に幼い三人の子供たちと愛する夫を目の前で殺されたらしい。絶望の淵に立たされた彼女をそのままほっておくことも出来ず、大尉は彼女を連れて旅を続けることに。だが、目の前に拡がる広大な荒野は彼らに何処までも無慈悲だった……。雄大な大自然を背景に、そんな恩讐の中に生きる人々を冷徹に見つめた西部劇。監督は、『クレイジー・ハート』でアカデミー賞の栄誉に輝くスコット・クーパー。この監督らしい細部にまで拘った丁寧な演出は本作でも健在で、一つ一つのエピソードの見せ方などは相当巧い。特に、家族を殺され天涯孤独となってしまった未亡人が自らの手で家族を埋葬するための穴を掘るシーンなど、その絶望感がひしひしと伝わってきて僕は思わず涙してしまいました。彼女を演じたロザムンド・パイクの素晴らしい熱演は特筆に値します。彼女を助ける寡黙な軍人役のクリスチャン・ベールも渋さ爆発で大変グッド。彼らが大自然の中を旅するシーンは全てが美しく、まるで優れた絵画を観ているようで非常に良かったですね。ただ、残念だったのは後半の展開。てっきりこの凶悪なコマンチ族を彼らが復讐のために追い詰めるのかと思いきや、呆気なくこいつらは第三者に殺されてしまいます。そこから物語としての強度が明らかに弱まってしまったのが惜しい。この家族を殺したコマンチ族との対決をクライマックスに持ってこないとやはりカタルシスが得られませんって!それに、入植者である白人たちとアメリカ先住民族の和解のドラマもかなり唐突でいまいち説得力が感じられない。前半の展開がすこぶる良かっただけに、なんとも勿体ない作品でございました。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-29 00:20:42)(良:2票)
389.  パラサイト 半地下の家族 《ネタバレ》 
半地下と呼ばれる、低所得者向けの賃貸住宅に住むとある四人家族。長びく不況のあおりを受け、揃いも揃って失業中の彼らは先の見えない困窮生活を続けていた。便所コウロギや酔っ払いの吐くゲロに囲まれ、スマホも近隣住民の飛ばすWi-Fi頼み、唯一の収入源であるピザ屋の内職も何かと理由をつけて買いたたかれるような屈辱的な毎日。そんな彼らが這い上がるために見つけたとっておきの方法。それは、小高い丘の上の豪邸に住む金持ち家族に〝寄生〟することだった――。浪人中の長男は、娘の英語の家庭教師として。同じく浪人中の美大志望の長女は、幼い息子の美術教師兼カウンセラーとして。失業中の父親は、主に金持ち主人の運転手として。そして母親は、住み込みで働く家政婦として。世間知らずの夫人に取り入り、もともと居た人間を追い出すようにして徐々に家族の中へと入り込む〝寄生虫〟たち。だが、異常を察知したもともとの家政婦が舞い戻ってきたことから、事態は思わぬ方向へと転がり込んでゆく……。韓国映画界を牽引するポン・ジュノ監督の最新作にして、外国語映画として初めてアカデミー作品賞を受賞した本作を今回鑑賞してみました。冒頭から流れるように続く、徹底的に考え抜かれたであろうストーリー構成は本当に素晴らしかったです。貧困に喘ぐ四人家族が、徐々にこの金持ち家族の中へと入り込んでゆく一連の流れはもはや神がかってました。細部にまで拘ったカメラワークに計算されつくした脚本、変幻自在な音楽の使い方など全てに監督の才気が漲っております。そして元々の家政婦が舞い戻って来てからのあっと驚くどんでん返しも見事にやられました。まさか寄生虫に先客がいたなんて!そこからのドタバタも皮肉が効いていて、ベタながらなかなか楽しい。そして最後はポン・ジュノらしく、貧富の格差という普遍的な社会問題へと落とし込む手腕もお見事。貧困家族がどんなに頑張っても消せなかった「臭い」の扱いなど、監督の視線は何処までも鋭く、そして切ない。エンタメ映画として観客を徹底的に楽しませておいて、最後はちゃんと社会問題についても考えさせられるという、アカデミー賞受賞も納得の良品でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2020-10-24 00:06:10)
390.  アマンダと僕 《ネタバレ》 
彼女の名は、アマンダ。何処にでも居るような7歳の平凡な女の子だ。シングルマザーの母親と二人で暮らす彼女は、叔父でその日暮らしの気儘な青年ダヴィットに助けられながら生活している。たまには厳しいこともあるけれど、それでも彼女は大好きなお母さんとこれから先もずっと幸せに暮らしていけると信じていた。そう、あの日を迎えるまでは――。イスラム系のテロリストによって引き起こされた凶悪なテロ。アマンダの母親はテロリストの凶弾に倒れ、呆気なくこの世を去ってしまうのだった。急に独りぼっちになってしまったアマンダは、突然のことに哀しむ間もなく、ダヴィットとともに暮らし始めることに。だが、失ってしまったものの重みは徐々に7歳の女の子の心にも重くのしかかってきて……。常にテロの脅威にさらされる現代のフランスを舞台に、そんな凶悪なテロによって母親を亡くした女の子の心情を淡々と綴ったヒューマン・ドラマ。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、最初は延々と続くこの女の子の日常描写に退屈さが勝り、思わず眠気に襲われそうに。でも、中盤でそんな日常の延長線上に混ざり込んでくるテロ描写にその意図が分かり、そこからは徐々に物語に惹き込まれてゆきました。何気なく自転車を走らせていたら、遠くの方から聞こえてくる救急車のサイレン音、そして公園に血だらけで横たわる被害者たち……。テロがいかに日常を破壊してしまうかが分かり、改めてこの残酷な行為に怒りを覚えます。そして7歳にして、愛する人を突然失ってしまったアマンダ。彼女の哀しみを思うとどうしようもなく切なく、そんな彼女を徐々に受け入れ、ともに一緒に生きてゆこうと決意するダヴィットの心情描写も丁寧でなかなか好感の持てるお話だったと思います。ただ、最後まであまりにも淡々としているため、どうしても一個の物語としては弱いと言わざるを得ませんでした。圧倒的な悲惨な現実に立ち向かうためには、やはりそこには優れた物語がなければならないと僕は思うのです。誤解を恐れずに言えば、これならテロの被害者を追った密着ドキュメンタリーを観た方がいいのではないか。アマンダ役を演じた女の子をはじめ役者陣のナチュラルな演技も良かったし、大切なものを失った人々に寄り添うそのスタンスにも好感が持てるものだっただけに、監督にはもっとフィクションの力で勝負してほしかった。
[DVD(字幕)] 6点(2020-10-19 09:00:52)
391.  ハイ・ライフ 《ネタバレ》 
新たなるフロンティアを求めて、太陽系から遠く離れた外宇宙へと片道飛行を続ける元死刑囚たちを描いたハードSFドラマ。正直、クソつまんなかったんですけど、これ。まず、冒頭のチープな宇宙描写に思わず苦笑い。だって宇宙船の船外で作業をする乗組員が、がっつり宇宙服を着てるのに無重力感がゼロなんですもん。んで、船内に戻ってきた彼が宇宙服を脱ぐと申し訳程度に手袋が宙に浮くんですけど、それも明らかにテグスで引っ張ってる感ありまくり。え、これはエド・ウッドが制作した知られざる作品とかですか(笑)。んで内容の方も変に芸術を気取った独り善がりな代物で、ちっとも面白くもなければ深みもない。無駄にエログロ描写が多いのにも辟易です。あの謎のオ〇ニーマシンに跨るおばさん描写は、演じるジュリエット・ビノシュ含め誰得なの?最後はよー分からんまま、主人公親子がブラック・ホールに突っ込んで終わり……。あまりのテキトーぶりに僕は思わず怒り狂いそうになっちゃいました。そばかす美少女ミア・ゴスちゃんのおっぱいに+1点!
[DVD(字幕)] 2点(2020-10-19 08:01:01)
392.  モーガン夫人の秘密 《ネタバレ》 
1945年、まだ戦争の傷跡が色濃く残るドイツ、ハンブルク。戦後処理のためにこの地へとやって来たイギリス人将校モーガン大佐の妻レイチェルは、現地で接収した民間人の館で暮らすことに。館の持ち主は、戦前ナチスに協力した疑いが持たれている建築家のルパート。かつてナチスの空爆により、幼い息子を亡くしてしまった過去を持つレイチェルは、当然、ルパートを追い出すよう夫に頼むのだった。だが、彼もまた妻を連合軍の空爆で亡くし、しかも幼い娘も抱えているということで、モーガン大佐は彼らと一緒に住むことを決断する。広い屋敷の中でお互いの居住区を決め、極力互いに干渉しあわない生活を心掛けるレイチェルとルパート。子供を亡くした女と妻を亡くした男――。最初は反発しあっていた二人だったが、互いに大切な人を亡くしたことを知った時、彼らはいつしか惹かれ合い、そして越えてはならない一線を越えてしまう……。終戦直後の混乱したドイツを舞台に、許されざる恋に身を焦がす男女を描いた大人のラブ・ストーリー。そんな二人の男性の間で揺れ動く人妻を演じるのは、人気女優キーラ・ナイトレイ。まあ一言で言ってしまうと、いわゆる不倫映画なのですが、正直イマイチな出来でしたね、これ。こういう不倫映画にとってもっとも重要な要素って、「ここでもし私が一線を越えてしまうと後々大変なことになる。でも私、自分の気持ちに正直でいたい……」という、多くの男女が思わず感情移入してしまうであろう背徳感にあると僕は思うのです。対して本作、肝心のこの人妻と男やもめのドイツ人が一線を越えてしまう描写が圧倒的に弱い!だってこれじゃ、夫に寸止めされたこの妻が火照った身体の疼きをどうにも我慢できなくなって思わずしちゃいましたくらいしか理由になってませんもの。せっかくお互い大切な人を亡くした男女というお膳立てが揃っていて、しかも映画の半分近くを費やしていながらのこの体たらく。この監督って実は恋愛経験に乏しい人なんじゃないかしら?そして最後はご都合主義全開、結局誰も傷つかないような甘っちょろいラストに僕は思わず苦笑しちゃいましたわ。うーん、なんとも残念な不倫映画でございました。
[DVD(字幕)] 4点(2020-10-19 07:23:29)
393.  TENET テネット 《ネタバレ》 
時間と空間の魔術師、クリストファー・ノーラン監督の最新作を観てきました!!正直、内容の方はほとんど理解できなかったけど、「なんか凄い映画を観てしまった!!」感はビシバシ伝わりました!!その全体的な密度の濃さには素直に圧倒されたので、取り敢えず今は8点!レンタルされたもう一度見て、内容を確認してみます~。それで10点になるか6点になるか、どちらもあり得るのがまた凄い…。
[映画館(字幕)] 8点(2020-10-17 22:30:21)
394.  誰もがそれを知っている 《ネタバレ》 
美しい田園風景が何処までも拡がる風光明媚なスペインの田舎町。親戚の結婚式に出席するため、二人の子供たちとともに久しぶりに故郷であるこの地へと帰ってきたラウラ。アルゼンチンで事業をしている夫は急用のため出席することは出来なくなったものの、ラウラは久しぶりに会う家族たちとの再会を楽しんでいた。中には、若いころに情熱的な恋に落ちたかつての恋人パコの姿もあった。そうして始まった結婚式当日。式はつつがなく終わり、皆はそのまま二次会へと雪崩れ込んでいた。だいぶ酒が廻って、盛大に盛り上がる宴席。ところがその夜、ラウラは予期せぬ事態に見舞われることになる――。15歳になったばかりの長女イレーネが何者かに誘拐され、莫大な身代金を要求するメールが携帯に届けられたのだ。突然のことにパニックへと陥るラウラ。元恋人パコの力を借りて、彼女は娘の行方を決死の思いで捜しはじめる。だが、閉鎖的な田舎町では様々な噂や憶測が飛び交い、事態はどんどんと混迷を深めてゆくのだった。果たして娘を誘拐したのは誰なのか?そんな折、ラウラが今までひた隠しにしてきた過去の秘密が明らかになり……。ある誘拐事件をきっかけに炙りだされる、とある家族の秘密を濃厚に描いたミステリー。監督は、前作でアカデミー賞の栄誉に輝くイランの俊英アスガー・ファルハディ。主演を務めるのは実生活でも夫婦である人気俳優ペネロペ・クルスとハビエル・バルデム。僕とはどうも相性のよくない監督の最新作だったのですが、この二人の共演に惹かれて今回鑑賞してみました。確かに、考え抜かれた緻密な脚本や謎が謎を呼ぶミステリアスな雰囲気、役者陣の熱のこもった演技等によって非常に完成度の高い作品に仕上がっていたことは僕も認めます。最後まで観客をぐいぐい惹き込むこの演出力の高さは相当なもの。でも、やっぱりこの監督の作風は個人的に苦手でした。この人って、とにかく登場人物同士をひたすら罵り合わせるのが好きなんですよね~。どんどんと深まる疑心暗鬼から、もう全編に渡って激しい痛罵の応酬。どんなけ喧嘩したら気が済むねん、この家族(笑)。そう言ったわけで僕は今回もやっぱり嵌まれませんでした。こればっかりは好みの問題なので如何ともしがたい。
[DVD(字幕)] 6点(2020-10-17 01:08:49)
395.  ホテル・アルテミス 犯罪者専門闇病院 《ネタバレ》 
2028年、各地で暴動が多発し極度なまでに治安が悪化したロサンゼルス。長年この地で犯罪者専門に営業を続ける闇病院、ホテル・アルテミスはその夜も大忙しだった。銀行強盗に失敗し、警察の手を逃れて駆け込んできた兄弟。謎の組織から依頼を受けてこの病院へとやって来た女アサシン。違法な手法で財を成した、口だけは達者な大富豪。そして、この病院のオーナーで闇社会の大物の息子……。酒が原因で身を持ち崩し、以来この病院の経営を一手に担っている〝ナース〟は、続々とやって来る彼らの対応に手を焼いていた。そんな折、彼女の過去を知るという謎の女性警官がこの病院へと駆け込んでくる。「会員である犯罪者以外は決して入れてはならない」――。長年守ってきたそんな厳格なルールを破ってまで、彼女を迎え入れるナース。果たして彼女は何者なのか?外では暴動の嵐が吹き荒れる中、閉ざされたこの空間でそれぞれの思惑を抱えた彼らの駆け引きが思わぬ事態を引き起こすのだった……。近未来のアメリカを舞台に、そんな閉鎖的な闇病院で繰り広げられる犯罪者たちを描いた密室劇。ジョディ・フォスターが久しぶりに主演を務めたということで今回鑑賞してみましたが、正直、さっぱり面白くなかったですね、これ。だってストーリーが全く意味不明なんですもん。闇病院という設定を全く活かしきれていない演出、そろいもそろって魅力に乏しい登場人物たち、説明不足なまま最後まで取っ散らかったストーリー。もはやすべてが素人レベルだと言っても過言ではありません。どうしてこんなレベルの低い作品に、わりかし有名どころの役者陣が揃っているのかもう意味不明過ぎます。それにしてもジョディ・フォスターは老けましたね~。もはやすっかりお婆ちゃんになっててけっこうショックなんですけど。という訳でいろいろと残念な映画でありました。
[DVD(字幕)] 3点(2020-10-14 16:46:24)
396.  ヘルボーイ(2019) 《ネタバレ》 
あの地獄のスーパーダークヒーロー、ヘルボーイが帰ってきた!!ギレルモ版前2作の大ファンの自分としては、こりゃ観ないわけにはいきますまい。監督は、その拘り抜いた独自の世界観は素晴らしかったもののお話の方がかなり残念だった『ドゥームズデイ』のニール・マーシャル。いやー、この人の細部にまで徹底的に拘ったであろう唯一無二の世界観は今回も大変素晴らしかったですねぇ~~。何処までもダークでグロテスクなのに、何処かコミカルなこの感じ、めっちゃツボでした。冒頭、悪役の魔女がアーサー王にバラバラにされ、箱に入れられて各地に埋められるシーンからもう摑みはばっちり。特に中盤に出てくる、ヘルボーイを捕える魔女バーバ・ヤーガのあの超絶気持ち悪いフォルムは出色の完成度!!こいつとヘルボーイがキスするとこなんて、数ある映画のキスシーンの中でも屈指の気持ち悪さを誇ってました(笑)。地獄から復活した魔物どもが無茶苦茶するクライマックスもグロさマックスでサイコーでしたし。まあストーリーの方は相変わらずしっちゃかめっちゃかでもう訳分かんなかったですけど。でも、このヘルボーイ君が出てくるとそんなに気にならずに観ていられるから不思議です。それだけこのヘルボーイ君のキャラが立ってるってことですね。うん、面白かった!7点!!
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-14 15:55:38)
397.  フッド ザ・ビギニング(2018) 《ネタバレ》 
中世イギリスの伝説的義賊、ロビンフッドの誕生秘話を現代的な解釈で描いたエンタメ・アクション。これまで何度も映画化されてきたこの有名なヒーローを今回演じるのは、『キングスメン』でのぶっ飛んだアクションが記憶に新しいタロン・エガートン。このベタな題材をあくまでスタイリッシュかつスピード感溢れる展開で魅せようという本作の意図は分かりやすくて大変グッド。一つ一つのアクションシーンは普通にキレが良くってなかなか楽しめました。まあちょっとやり過ぎな感じがするのはご愛敬ですけど。だって、冒頭の十字軍遠征のシーンなんて現代的に撮ろうとするあまり、銃が弓矢になっただけでもはや『プライベート・ライアン』の冒頭シーンにしか見えないんですもん(笑)。それに肝心のストーリーの方が大味過ぎなとこもちょっと残念。あとヒロインの女性の方が明らかにブ…失礼、個性的なルックスをしてらっしゃったのも好みが分かれるところ。でもまあエンタメ映画としては、最後までストレスなく見られるし、アクションシーンも迫力満点だしで、普通に楽しめると思いまーす!
[DVD(字幕)] 6点(2020-10-14 01:55:00)
398.  アド・アストラ 《ネタバレ》 
『インターステラー』の超絶劣化版映画。とにかくつまんなかったです。映像はキレイだったので、ぎり4点!!
[DVD(字幕)] 4点(2020-10-10 17:30:58)
399.  プライベート・ウォー 《ネタバレ》 
2012年、内戦が激化していた当時のシリアに潜入し、戦場のリアルな実態を報道し続けた記者メリー・コルヴィンが亡くなった。近くで爆発した砲弾に巻き込まれ、彼女はその決して長くはない人生を終えることになった。若き日に報道記者となり、スリランカの内戦取材中には銃撃を受け片目を失うという悲劇に見舞われながらも何故、彼女は戦場に行くことを止めなかったのか――。本作は、そんな彼女の波乱に満ちた生涯を冷徹に見つめた伝記映画だ。戦場の生々しい実態に心を蝕まれ、後にアルコール依存症とまでなった彼女を演じるのは、『ゴーン・ガール』での悪女役が記憶に新しいロザムンド・パイク。このメリー・コルヴィンという人をほとんど知らないまま今回鑑賞してみたのだが、これがなかなか丁寧な演出の力が光る秀作に仕上がっていた。世界の紛争地へと突撃取材を続ける彼女とその合間に都会へと帰ってきて束の間の休息をとる彼女の姿を交互に描くという本作の構成、これが巧く効いている。戦場で明日の命もままならないような生活を余儀なくされている子供たちと向き合っていた自分が、自宅へ帰ってくると裕福な友達に囲まれ何不自由ないセレブ生活を送る。いったいこの不条理の原因とは何なのか。そして自分はそんな子供たちを金儲けの道具にしているだけなのではないのか。そんな残酷な問いを突き付けられた彼女が、徐々にアルコールへと溺れてゆくのも当然だろう。彼女の人生を迫真の演技で再現したロザムンド・パイクもいい仕事をしている。この人、こういった何処か偏屈な人間を演じるのが相当巧い。最後、彼女は自らの身を顧みずに戦場へと残り、そしてその短い生涯を閉じる。何故なら、この現実から決して目を背けてはならないという確固とした信念があったから。観終わって、僕は同じくシリアで命を落とした日本人ジャーナリスト、山本美香さんのドキュメンタリーを見て非常に感銘を受けたことを思い出してしまった。時に批判されることもあるだろうが、それでも彼女たちのような職業も社会にとって絶対に必要なのだ。何故ならその地に行かなければ決して分からない真実がそこにあるのだから。メリー・コルヴィンという人の生涯を再現することに注力するあまり、若干テーマに対する踏み込みが甘くなったような気もするが、それでも充分見応えのある伝記ドラマの秀作であった。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-09 05:39:42)
400.  ぼくを探しに 《ネタバレ》 
2歳のころに両親を目の前で亡くし、以来口が利けなくなってしまったピアニスト、ポール。彼が、隣人の怪しげなマダムの作る薬物入りのハーブティーによって、記憶の中に眠る母親の思い出へと徐々にのめり込んでゆく姿を、時にハートウォーミングに時に毒気たっぷりに描いたファンタジック・ファミリーストーリー。舞台がフランスということもあり、全体的な雰囲気は僕のこよなく愛するジャン・ピエール・ジュネの名作『アメリ』っぽくて、この独創的な世界観はけっこう嫌いじゃなかったです。主人公がトリップする記憶世界もポップ&キュートで大変グッド。主人公が記憶の中の迷宮へと入り込む手段がマドレーヌとお紅茶というとこもプルーストの『失われた時を求めて』を絶妙に茶化しててなかなか楽しい。ただ、その魅力的な世界観に対してお話の方は正直微妙。ストーリーが単純すぎる上に、ところどころ説明不足な部分もあっていまいち面白くないんですよね、これ。最後過去のトラウマに打ち勝ってピアノ・コンクールに優勝できたのに、その直後には指を怪我して断念。その後は何故かウクレレ奏者になって、紆余曲折の末に中国人女性と結婚し子供も生まれる……。なんかストーリーが行き当たりばったりすぎて、後半どうでもよくなっちゃいました。あと、主人公がトリップするサイケデリック描写が若干少なめなのもちょっと物足りなかったです。とはいえエスプリの効いた、この独特の世界観は個性的でそこらへんは充分楽しめました。特にカエルの着ぐるみ楽団のキモ可愛いとこなんて、めっちゃツボ!それだけに内容の方をもうちょっと頑張ってほしかったな~。うーん、6点!
[DVD(字幕)] 6点(2020-10-06 05:30:51)
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