441. 犬神家の一族(1976)
《ネタバレ》 基本的に角川映画は嫌いなので、これも劇場には行っていません。テレビ(月曜ロードショーだったと思う)の放送は見ましたが、まったく記憶に残っていません。そういう状態でリメイクを見たのですが、ミステリーというよりも「母と子の物語」という側面が強いと知り、感心しました。ということでオリジナルの方もそういう点に注目したのですが、はっきり言って期待はずれ。ドラマとしてはリメイク版の方が胸に迫るものがありました(実の親子が演じているからではないでしょうが)。 ミステリーとしては、青沼静馬が正体を明かす時点でほとんど終わっています。あれでだいたい見当がつくでしょう。そのためか、金田一が松子に滔々と推理を述べるくだりは、ほとんど蛇足に思えました。ということで、ドラマとしても推理ものとしても中途半端。市川監督の美学はそれなりに楽しめますが……。監督がなぜリメイクしたのか、なんとなくわかる気がします。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-10-01 21:55:07) |
442. 刑事コロンボ/アリバイのダイヤル<TVM>
コロンボのような倒叙ものは最初から犯人がわかっているため、見ているちらも犯行のすべてがわかっているような気持ちになります。本作の特徴はその裏をかいて、こちらに知らせていない情報をあとから出して不意を突くというもの。それはそれでいいと思いますが、ちょっと話が複雑に思えてしまうところがあって残念でした。とはいえなかなか面白い試みでした。最後の幕切れもあざやか。人物の掘り下げは浅いですが、本作ではミステリーとしての楽しみがメインなので、それほど気になりませんでした。 演出は、ロケでロングのショットを多用したり、飛行機から車輪が出るカットなど、意欲的で引きつけられるところがありました。そのあたりも加味しての点数です。 [DVD(字幕)] 7点(2013-09-30 20:39:25) |
443. お日柄もよく ご愁傷さま
《ネタバレ》 題材からしてドタバタ喜劇なのかと思いましたが、まったくもってまじめなホームドラマ。笑うところは、披露宴で清水ミチコが「喝采」を披露するところぐらいしかありません。人情喜劇にすらなっていないというのは、いいのか悪いのか。実のところ結婚式は付け足しで、お葬式がメイン。お葬式という非日常を迎えたことにより、家族の秘密がいろいろと明らかになる。とはいえ、特にコメントしたくなるようなこともなくお話は流れていきます。しかし最後の山の場面、あれはなんだかむりやり感動的な話で締めくくろうとしたようで、感心しませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-09-28 17:42:24) |
444. ブラス!
《ネタバレ》 非常に腹立たしい映画。炭坑の閉鎖問題そっちのけ、バンドのことばかり言っていた指揮者が、最後に「音楽がなんになる」となって金賞も返上してしまう。真剣に音楽と向き合った人なら、苦しい時にも音楽は心の慰めとなること(仲間と演奏するならなおさら)を知っているはず。こんな極端な宗旨替えはおよそ考えられません。結局、炭坑問題とか政治を批判するためだけに音楽を利用したという感じ。その批判にしても、結局イギリス国内の問題に留まっていて、音楽というグローバルな要素に対して狭い。だから音楽の利用のしかたがせこく映ってしまいます。イギリス人ならともかく、日本人である私には他人事にしか思えず、高みから「ああ、可哀相だね」と無責任に同情する気にすらなりません。日本ではの炭坑は完全に過去のものですし。人物描写にしろ最後のダニーの演説にしろ、あまりにも浅くて単純すぎます。 ついでながら、個人的に「ダニー・ボーイ」っていう題名は好きじゃないんですね。この曲はやはり「ロンドンデリー・エア」でしょう。この映画ではグレインジャーの編曲が使われていますから、正確には"Irish Tune from County Derry"とすべきなんでしょうけど。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-09-26 22:41:06) |
445. グラディエーター
《ネタバレ》 映像には見るべきところが多かったですが、序盤でスローモーションを多用していたのにはうへっとなりました。ストーリーは特にどうということもないのですが、仇役のコモドゥスに魅力がない。悪には悪なりの哲学や美学がある方が望ましいのですが、単に権力を手に入れた勘違い野郎でしかなく、主人公が命をかけてまで倒さなければならない相手とは思えません。逆にそれが狙いなのかもしれませんが。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-09-21 22:16:07) |
446. グレートレース
《ネタバレ》 ナルホド、『チキチキマシン猛レース』ですか。たしかに教授とマックスは、ブラック魔王とケンケンみたいですね。ミス・デュボアが出発するときの衣装はミルクちゃんそのものですし。するとレスリーがキザトト君? さすがにオネエ言葉では喋っていないと思いますが。 ドタバタコメディとしては楽しいのですが、少々長い。あと、ミス・デュボアにあまり魅力が感じられません。特に出発前編集長に売り込むあたりは、かなりイライラしました。劇中で男女同権を叫ぶ割に、彼女自身の劇中での役割は、「主人公に対するヒロイン」の範疇を出ていないと思います。何度も助け出されていますし。だからもしかすると、これは女性運動に対する皮肉か揶揄なのかもしれません。そういうこともあって、どうも彼女の存在が邪魔。普通にドタバタ・レース合戦だった方がより楽しめたかと思います。 それにしても、フェイト教授の笑い声が、『マイ・フェア・レディ』のヒギンズ教授を思い出させてなりませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-09-19 19:33:06) |
447. 愛のメモリー
《ネタバレ》 主人公がイタリアに行くあたりで「奥さんとそっくりな女に会うのか、つまり『めまい』だな」と察しがつきました。そのため、サスペンスとしては緊張感が削がれたのが残念。謎を含んだ物語展開なので、人物の心理があまり掘り下げられておらず、最後は感動の再会のはずですが盛り上がりに欠けました。カメラグルグルもほとんど恋愛映画のパロディにしか見えません。ソフトフォーカスの映像などに見るべき点はありましたし、バーナード・ハーマンはあいかわらずいい仕事をしていると思いましたが、全体としてはそれほどとは思われませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-15 22:08:03) |
448. キューティ・ブロンド/ハッピーMAX
《ネタバレ》 ワシントンの政界へと舞台を移してグレードアップした結果、おバカ映画となってしまいました(笑) そういう視点では、それなりに楽しめました。友愛会全員集合による大行進とか、研修生がいきなり踊り出すとか、呆れつつ笑ってしまいます。一番うけたのは友愛会のあいさつで、まじめにバカやってるな~ってのがわかって面白い。しかし最後の演説でもっともらしい話になり、果ては「アメリカ万歳」になってしまったのでは、それまでとトーンが違いすぎてついて行けません。どうせならアメリカ議会や国そのものをしゃれのめす余裕がほしかったところ。それとアメリカで法案を通す手順は最後まで理解できませんでした。そのあたりもあくまでアメリカ人向けの作りになっていて、残念です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-14 21:57:40) |
449. キューティ・ブロンド
《ネタバレ》 これはエルの性格設定がすべてでしょう。お金持ちだけどタカビーなところがなく、ポジティブで友達思い。友愛会の会長を任されているのも納得です。高価なものを身につけても嫌みにならないところがステキ。頭のよさも端々に表現されています。裁判ではかなり運がいいわけですが、全体がコメディタッチなので、大きな傷とはなっていません。卒業演説でのシメも決まっていて、かなりいいできだったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-09-13 22:18:08) |
450. 刑事コロンボ/悪の温室<TVM>
《ネタバレ》 本作の脚本を書いたジョナサン・ラティマーは本職のミステリー作家でして、そのせいかどうか通常のパターンを外してきています。偽装誘拐でコロンボを殺人の前に登場させるという試みは面白いですし、最後の証拠品が今回の事件とは何の関係もないというのも、意表を突いていてよかったと思います。ウィルソン刑事を登場させたのも効果的でした。しかし今回の犯人も魅力に乏しい。そもそもどうやって生活しているのかが不明。蘭を売れば金になるでしょうが、甥の財産をかすめ取ろうというのですから、それも考えられません。浮世離れを通り越して現実離れしています。また、何かというとキャシーに嫌みを言うのもいただけません。こういうところでかなりマイナスになってしまいました。 [DVD(字幕)] 6点(2013-09-11 22:38:34) |
451. 七変化狸御殿
《ネタバレ》 狸御殿といえば本来大映のシリーズでして、それが松竹で製作されたいきさつは知りませんが、おそらく「美空ひばりが主役なら、名前を使われてもしかたがない」というのはあったと思います。このあと東宝で製作された『大当り狸御殿』も、美空ひばりが出ていますし。 七変化とはどういうことだろうと思ったら、美空ひばりのコスプレだったのですね。桃太郎とかちょっとしか出てこない衣装もありましたが、一応変化は楽しめました。しかし衣装といえば、むしろ森の精役の高田浩吉がすごい。日本の森だから和風かと思いきや、「あんたはアラーの使者かい!」と言いたくなるようなお姿。得物も大刀ではなくレイピア風で、フェンシングよろしく突いて戦っていました。相当場違いで、あれもやっぱりギャグなんでしょうか。 それ以外では堺駿二が面白い。ひばりとのコンビもいいですが、長崎での伴淳三郎とのやりとりは爆笑もの。これだけでも見たかいはありました。ほかにコウモリ団ボスの有島一郎(なぜか少々オネェ言葉)など、脇役が光っています。メインのお話は他愛ないのですが、例の長崎のエピソードとか、ジャズ狸のドラムとか、石松の幽霊と清水次郎長が出てきたりなど、脱線気味の脇筋がかなり楽しめます。正月映画として封切られたようで、サービス満点ぶりはそのためでもあるのでしょう。この点は大いに満喫できました。ただ、モノクロ作品だったのが残念でした。こういう映画は、やはりカラーで見たいです。 今回の放送で気になったのは、一部のセリフが消されていたこと。他の方のレビューから察するに、「放射能」という言葉のようです。原発事故に配慮したものでしょうか。たしかに放射能の雨でコロッと死んでしまうというのは、物騒な話です。しかも笑いのネタに使われていますから、不謹慎ということなのでしょう。消音は残念なことですが。 [地上波(邦画)] 7点(2013-09-10 22:15:09) |
452. ドドンパ酔虎伝
《ネタバレ》 基本的には忠臣蔵外伝みたいな趣向で、高田馬場の決闘がクライマックスになっています(ただし松の廊下事件はすでに起こっていて、赤穂の藩士は浪人)。それともう1つ、安兵衛が長屋の連中のために一肌脱ぐ話があるのですが、この2つにあまり関連がないことが残念でした。しかし本作では、時代考証無視の「酒呑みコンクール」とか、ドドンパ大流行(大高源吾作詞・中山安兵衛作曲!)あたりが面白いので、あまり気になりません。若い女優2人はあまり魅力を感じませんが、脇役がなかな濃いのでこれも大きなマイナスではありませんでした。前半は歌う場面が多かったのに、途中から普通の時代劇になったのも残念。などとよくない点もありますが、明るく楽しいコメディ時代劇で楽しめました。 [地上波(邦画)] 7点(2013-09-07 22:22:31) |
453. 妖精は花の匂いがする
《ネタバレ》 題名が意味不明ですが、原作を読めばわかるのでしょうか。映画化に際して変更するという考えはなかったようですね。 内容についてはできの悪い少女漫画のよう。教官をめぐる女学生のさや当て。それに貧乏とかモデルのアルバイトとかがからんでくるのですが、うまくかかみ合ってなくて何かチグハグ。あるいは妙にベタベタ。登場人物に魅力が感じられないんですね。特に丹下センセイは、あからさまにヒロインをひいきして公私混同もはなはだしく、なぜ人気があるのか解せません。ライバルの水絵お嬢様は、わがままなのはパターン通りとしても、勝手に学費を肩代わりしちゃあダメでしょう。そのあたりが世間知らずのお嬢様らしいのかもしれませんが。主人公は最後に「友情のために先生をゆずる」と言っていましたが、むしろこの借りがあることが大きいと思います。 あと、画家の見合い相手が水絵さんだったり、ガールフレンドがやはり学友だったりと、都合がよすぎる人物関係でした。音楽が大沢壽人だったことだけが収穫です(ネットのデータでは音楽は斎藤一郎になっていますが、クレジットは大沢壽人)。ピアノを中心にした、いい曲でした。 [地上波(邦画)] 5点(2013-09-06 21:33:48) |
454. 神様のくれた赤ん坊
《ネタバレ》 倦怠期(?)に陥った男女が、旅をすることによって関係を修復するというお話。それと女のルーツ探し。子供の父親探しというのは、はっきり言ってどうでもいい。旅に出るためのきっかけにすぎません。自分探し的ロードムービーとしては、特によかったとも思いませんでした。しかし脇役がなかなか個性的で、軽い気持ちで楽しめます。時代的なものか、かなりもっさりした作りで(特に前半)、見ていてある種のしんどさを感じました。 最後は、道を引き返すところで終わって正解。かんじんの子供が「帰りたくない、ここにいたい」と言ったら、それまでですから。何となく、そうなりそうな気がします。 『集金旅行』のリメイクとされることもあるようですが、共通しているのは「子供を連れた男女が、人を訪ねて西日本を旅する」ということだけ。やはり単なる元ネタ程度でしょう。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-09-02 21:40:50) |
455. 集金旅行
《ネタバレ》 『神様のくれた赤ん坊』の元ネタということで見てみました。大家の借金と慰謝料集金の旅。でも2人とも人がよすぎて取り立ては甘いですね。子供を母親に届けるあたりまでは、普通の人情喜劇。が、それからが真骨頂(?)でしょうか。予定調和をスカしまくった結末には、笑うしかりません。とはいえ、映画的に面白いかと言われれば、微妙ですが。それにしても、原作もこうなっているんでしょうか。 本作で一番の見どころは、結末の前、阿波踊りを踊りまくる岡田茉莉子。これしかない! とにかくその可愛いことといったら、もはや言葉にならないくらい。こればっかりは見てみないとわからないでしょう。この映画は「踊る茉莉子」を見ただけでも、もうけものって感じです。一見の価値はあります。いや必見の価値か。とにかく、茉莉子が踊ったおかげで、それ以前のありがち人情喜劇が吹っ飛んでしまったくらい。破壊力抜群でした。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-09-01 22:48:53) |
456. パシフィック・リム
《ネタバレ》 3Dは『アバター』で懲りたので、2D版で鑑賞。事前に「怪獣映画」だという評判を聞いていたので、その点はがっかりしました。これは「戦争映画」でしょう。倒すべき相手は怪獣ではなく、それを送り込んでくる異世界人。怪獣はしょせん兵器にすぎません。ロボットも当然兵器。ストーリー的にも怪獣戦争が10年以上も続いているという設定ですし。怪獣と巨大ロボットを使っても、結局戦争映画になってしまうあたりが、いかにもアメリカ製です。逆に言うと、私が子供の頃親しんだような怪獣映画は、日本独自の感性が生んだものであろうということが確認できて、嬉しく思いました。 さて、肝心のイェーガーVSカイジュウですが、これもがっかりするところがあります。あまりにも怪獣が没個性的。まあ兵器だからということかもしれませんが、ロボットの方はまだ識別できます(とはいえ、キャラ立ちしているとも思えない)。しかし怪獣とロボット、両方とも魅力があってこそのバトルシーンだと思います。そもそも本作では、怪獣の全身すらまともに映す気もないようで。単なるヤラレ役なら、往年のブチメカの方がまだ個性的で魅力があるでしょう。申し訳程度に酸を吐いたり空を飛んだりしても、主人公に見せ場を作るためだとしか思えません。この点でも怪獣映画にはほど遠いです。 ではストーリーはどうか。これも終始怪獣戦争の枠内にとどまっていて、そこからはみ出すことがない。まったく架空のお話だからこそ、現実に生きているこちらにも届くようなドラマを見せてほしいのです。いや、そういう点もないではないですが、ちょっと弱いです。定番的すぎて引かれるところがありません。2人の博士とかは面白かったです。 ということで、それなりによくできているとは思いますが、あまり称揚しようという気にはなりません。普通に面白いですが、一度見れば十分です。私が見たいのはあくまで映画であって、テーマパークのアトラクションもどきではないのです。 それにしても……なぜハリーハウゼンと本多猪四郎なのでしょう。そこは普通に考えれば"Eiji Tsuburaya"だと思いますが。こういう感覚からして理解できません。 [映画館(字幕)] 7点(2013-08-31 21:30:27)(良:3票) |
457. JUNO/ジュノ
《ネタバレ》 深刻になりがちなお話を、軽いユーモアを交えてカラッと仕上げていますが、決して軽薄ではありません。そのあたりのバランス感覚が絶妙で、こうした映画に関して深刻か軽薄かの二択しか思いつかない人は、高く評価しないかもしれません。しかし軽みの中にもシリアスなテーマはしっかりと練り込んであり、それが男女の愛情問題・人間関係を軸として展開しているので、見ていて充実感がありました。ジュノの成長が、年相応のものに抑えられているのも、好感が持てます。あと、リアがいい奴でとても嬉しくなってきます。欠点がないではないですが(両親が理解がありすぎるとか)、あまり気になりませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-08-30 22:08:56) |
458. 赤いハンカチ
《ネタバレ》 前半はかなりよかったのですが、後半グダグダになってしまいました。恋愛ドラマにしたのがまずかったのか? しかし製作年代を考えたら、致し方ないですね。春吉の死も、あまり生かされていなかったと思います。『太陽にほえろ!』世代としては、(元)刑事の名前が三上と石塚で、演じているのが石原裕次郎と二谷英明というのが魅力的です。そういえば、小川英氏が脚本に参加していますね。かなり7点に近い6点。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-08-27 22:22:02) |
459. 刑事コロンボ/黒のエチュード<TVM>
《ネタバレ》 『刑事コロンボ』シリーズは基本的に90分枠なのですが、第2シーズンから120分ものも放送することになり(広告収入が上がるらしい)、そのテストケースとして本作には90分版と120分版の両方が存在します。今回両方を見比べることができたのですが、登録されているのは120分版の方なので、そちらをレビューします。 改めて見てみると、音楽関係がムチャクチャですね。ジョン・カサヴェテスの指揮のひどさは言うまでもないです。あれで演奏できるとは、さすがプロ。それとも、音はあとで入れたのでしょうか。しかしそれだけでなく、ベートーヴェンの「田園」を楽章の途中から(カメラを回して)演奏するとか、管弦楽曲のあとに弦楽器だけの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」を演奏するとか(しかもコンサートの最後の曲らしい)、およそ常識的にはありえません。ありえないといえば、コンサートが夜から始まる場合、普通は午後にリハーサルを行い、出演者はそのまま楽屋で待機するものです。車で行かなければならないような自宅に戻るというのも考えられません。本作のスタッフは、クラシック音楽に関しては全くの素人のようです。 また、証拠品であるはずの“遺書”の上から改めてタイプするというのも考えられない。ここまで来ると開いた口がふさがりません。私は映画やドラマに完全な整合性を求めるわけでありませんし、むしろ傑作と呼ばれる作品には、なにがしか常識を超越したところがあると思っているのですが、これはあまりにもひどすぎると思います。 しかし本作を必要以上に持ち上げている人もいるようですが、それは単にゲストがジョン・カサヴェテスだからでしょう。「構想の死角」と似たようなパターンです。たしかにカサヴェテスは悪くないと思いますが、それだけで高く評価できるわけではありません。 とにかくこれは脱力系というか、失笑ものの話でした。 [DVD(字幕)] 4点(2013-08-25 10:08:43) |
460. 宮本武蔵 巌流島の決斗
《ネタバレ》 完結編らしく、見ごたえがありました。前作の最後で幼い子供まで殺めたことにより、武蔵はいわば悟りを開いたように見受けられます。そんな彼にもはや実践は必要ではなく、指南役に推挙されるというのもうなずける展開です。結局叶いませんでしたが……。こうなると、佐々木小次郎との対決なんてオマケみたいなもの。俗物風の小次郎では勝負は決まっていますし、藩の体面を気にする岩間角兵衛らも、吉岡一門と同類でしょう。「剣が人斬る物にすぎない」ということを実感した時点で、武蔵は違う次元に行ってしまったのです。これも多くの人を斬ってきた武蔵だからこそ言えることで、説得力があります。ドラマとしてうまく落としたと思います。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-08-23 22:23:51) |