621. ザ・コール [緊急通報指令室]
《ネタバレ》 誘拐された少女との通話だけで物語が進行する前半はとても面白かったのに、後半になるとあまりに凡庸で思いきり腰砕けになってしまうという残念な映画。 通報を受ける主人公が対応でミスを犯して被害者が殺されてしまうという導入部が秀逸で、そのトラウマの影響を受けながら少女の命をいかに守れるか、そのプロットがヒリヒリとしたサスペンスを生んで近年稀に見る面白さ!と思ったのですが、それだけで映画一本作るだけの力は無かったようで。 後半は有名映画の安直な焼き直しです。途絶えてしまった少女の消息を追って単身調査に乗り出し犯人の隠れ家に入り込んじゃって、って。主人公、現場の人間をあまり頼りにしてないようで。 携帯で連絡しようとしたら隠れ家の地下入口に落としちゃって、なんて、孤立状態に持っていこうと必死な脚本に幻滅。 その上、与えられたオチは幾らなんでもそれはないだろう、って。そこだけ不自然過ぎちゃって。あれ、さすがにすぐに見つかりますよね。そうしたら罪に問われるのは・・・ねぇ。 途中、次々と犠牲者が出ちゃう展開も含めて、気持ちの良いサスペンスという訳にはいかず、最初はあんなに面白かったのに、ってモヤモヤしたしたモノを抱えて映画館を後にするハメになったのでした。 [映画館(字幕)] 5点(2014-03-31 23:22:23) |
622. Wake Up, Girls! 七人のアイドル
《ネタバレ》 色々とかなりダメ、なのだけれども枯れちゃってる『アイマス』なんかよりよっぽどイキが良くて面白いっていう。 作画が「劇場にかけるレベルじゃないよ」って状態ですし、脚本も、映像の繋ぎも悪く。キャラの顔はみんな似ていて髪型で見分けるような感じで。そもそも上映時間が短いので内容はごくごく浅く。 「ご当地アイドルグループが結成されたのはいいけれど、弱小プロダクションの社長が夜逃げしてグループ解散の危機!」っていう物語で、メンバー一人一人にドラマがあって、主人公的存在は元人気アイドルグループのセンターを競ったほどの存在だったものの、訳ありで退団して、って、1時間足らずの「映画」としてまとめるにはかなり無理があります。 それって本来はテレビシリーズの第一話、第二話で描くべき事なんじゃ?みたいな感じで、実際、テレビシリーズの第一話は、この映画を見ていないと判らないところが多いっていう。そういう作品の成立のしかたを、私はあまり好ましいとは思いません。 社長の夜逃げエピソードなど、ドラマとして真面目に見られるレベルではありませんし。 ところが、その作品的な未熟さのあまりに、見ている側が行間を埋める作業をしないとならなくなり、結果、思わぬ感動を生むという。 それぞれの「設定はちゃんとしてあるけれどちっとも描ききれていない人物背景」をその短い間にどんどんと脳内で補完してゆく事で生まれるドラマ、それがラストのライブシーンに結実して、って。いや、それってちっとも好ましい状態じゃないのですが。 結果的に「ダメだけど面白かったけどやっぱりダメ」って。やっぱりこういうのってあんまり褒めちゃいけない気がします。 [映画館(邦画)] 5点(2014-03-31 22:57:25) |
623. 銀の匙 Silver Spoon
《ネタバレ》 とてもまっすぐ、真面目に作られた青春映画で非常に好感が持てました。 酪農を通して人間的な成長を描く作品、家庭の問題や友人関係、将来の不安等、等身大の若さを生きる姿がストレートに心に響いてきます。 個人的な話ですが、2匹のネコを宝物のように大切に育てながら、一方で毎日仕事で十数頭分の豚のモツを捌いている、その「生命」に対して日頃自分なりに向き合っている意識、そこが描かれている事に多大な共感を抱きました。 映画としては地味だと思います。題材が農業高校で酪農を学ぶ事ですし、恋愛要素はほぼ無し、現在の酪農の抱える問題や挫折など、苦い部分が描かれていて、単純に気持ち良さを味わえる映画ではありません。 でも、だからこそ心に響いてくるもの沢山があって。 脇のキャスティングにちょっと疑問が湧いたりしましたが(ヒロインの家族を哀川翔、竹内力、石橋蓮司にした事なんて、映画ファンウケを狙ったような感じで映画の内容に対しての必然性は感じられません)、自分を持たなかった主人公が高校生活を通して自我を獲得してゆく姿に、素直に感動したのでした。 [映画館(邦画)] 9点(2014-03-31 22:25:16)(良:1票) |
624. LEGO ムービー
《ネタバレ》 ウチはビンボだったのでレゴはちょっとだけしかありませんでした。ダイヤブロックはいっぱいありましたが。 さて、見る前は「レゴを一体どうやって映画化すんの? 『テトリス』遂に映画化!みたいな無理矢理さ加減だな!」って感じでしたが実際に見てみるとこれが面白い面白い。 キャラがいきいきと生きていて、スリルとサスペンスがあって、スペクタクルがあって、笑えて、ギョッ!となって、色々な映画パロディがあって(ガンダルフとダンブルドアネタとかミケランジェロネタとか大笑い)、そして感動して。スクリーンに映っているのはあくまでレゴなのに。 ただレゴという素材を用いて娯楽映画を作ったというだけではなく、オモチャに命や物語や夢を吹き込むという、レゴの持つ魅力そのままを映画に、そして作品のテーマにしています。 主役が有名キャラではなく平凡な作業員のミニフィグであるという点もテーマに大きく関わる重要なファクター。 クライマックスの、その肝心なテーマを語るところを実写の人間で描く、それまでずっとレゴのみで描いてきたのに、っていう点でちょっとひっかかってしまったりもしたのですが、レゴが子供のものであるように、この映画もまた子供のもので、大人の求めるモノにしてしまった時点でこの作品のテーマから逆行する事になる訳で、生身の子供視点で語られるそここそが大切なのかもしれません。 更に、レゴについての映画であると共に、命無き物に生命を吹き込む「アニメーション」の本質にも言及した優れた作品であったと思います。 [映画館(字幕)] 9点(2014-03-31 21:50:21)(良:2票) |
625. LIFE!(2013)
《ネタバレ》 そう、妄想はしょせん妄想。実際に動かなくては何も始まりません。 だけど、映画ってものも全ては光と影と音の作り出す幻影。そこに「リアル」は存在しません(「リアリティ」とか「リアリズム」とかでなくてね)。もしその場に「リアル」があるとすれば、それは映画館という空間のスクリーンという名の白い(あるいは銀色の)幕であり、スピーカーであるわけです。 妄想から抜け出し一歩踏み出す男の物語が存在する場所は(大勢の)誰かの妄想や空想によって創造された映像の中。 登場人物の体験ももちろん実際の体験ではありませんし、何度も繰り返したり、スタントマンが代わりに演じる事で創造された生なわけです。 妄想の映像がVFXを多用する事によって描かれているのに比べて、旅をする映像は実際に撮られた、自然溢れるダイナミックな映像が多く存在しています。でも、どちらも絵に描いた餅である事に変わりはありません。 この入子細工な作品が、その構造をシニカルに笑ってみせてくれれば、それはそれで楽しかったかもしれませんが、やっと辿り着いた写真家の言葉とか、ナンバー25の写真の実際の中身とか、親切に喋り過ぎな感じがあって。 映画に影響されて行動をして、もしその通りの結果が出なかったとしても、映画は責任を取ってくれはしません。 努力しただけの結果が出るとは限りませんし、誰からも評価されない可能性も(多分に)あります。むしろ人生は不条理の連続で、期待したほどの結果が出る可能性はとても低いものです。 映画はしょせん映画なのですから、本当の意味でのリアルを大切にしないと結局はちっともリアルを生きていないって結果に繋がりかねません。そこ大切。 これもまたよく出来た「おとぎ話」なのです。 [映画館(字幕)] 6点(2014-03-25 20:40:33) |
626. 偉大なる、しゅららぼん
《ネタバレ》 この原作者の『鴨川ホルモー』『プリンセス トヨトミ』に続いて、またしても「奇抜な設定をただひたすら説明するだけの映画」が登場しました。 物語はほぼ無いようなもので、映画の殆どは古くから反目する琵琶湖畔の2つの名家の対立と備わった特殊能力についての解説。そのファンタジーな設定を楽しめないと映画自体が楽しめないという点も前2作と全く同じと言えます。 で、それが今回もあまり楽しめないって感じで。 登場人物のあり得なさっぷりを、そういうものだと納得して楽しむというところに行かないんですね。作品の中だけで閉じ過ぎちゃってるようで、生きた、血の通った人々になかなか見えてきません。 延々とお殿様言葉で話し、感情を表に出さない濱田岳を、それでも面白い人と思うためにはその背景描写が欠落し過ぎていると思うのですね。設定の説明には費やしても、人や社会との関わりについては殆ど語られないので、ただ設定の中だけに閉じ込められた存在で。キャラ設定的には因習から抜け出そうとしていた訳ですから、皮肉な話です。 全編、そういう絵空事っぷりがハンパなく、しかも画面に登場するキャラを絞り過ぎてしまっている上(お城に居を構える名家でありながら、そこに住んでいるように思える人間はほんの数人)、人となりすらも多くがセリフで説明されるため、世界全体が薄っぺらい感じ。 クライマックスは湖が割れたり龍が出たりと、それこそ奇想天外な話になりますし。 あと、この原作者の映画でいつも気になる事なのですが、関西から全国に発信するのでなく、関西で閉じてる感じ、何か閉鎖的な感じがしてしまうんですね。土地に縛られる、他所とは線を引く、それがどうも東京モンな私からすると「なんだかなぁ」って思えて。 現代を舞台にした和なファンタジー、っていうのはとってもアリだと思うのですが、それが色々と縛り(物語や設定だけでなくもっと外側の部分まで含めて)を与えた上に成り立っているのはどうなんでしょうねぇ? [映画館(邦画)] 5点(2014-03-16 19:37:56)(良:1票) |
627. アナと雪の女王
《ネタバレ》 過大な期待を抱いた感じで、さすがにそれを上回るような事はなくて。前半の繊細さに比べると後半はフツーなデキという感じ。 仲の良かった幼い姉妹がまるで光と影のように相反する存在へと離され隔たれてゆく過程を描いた前半、表情や仕草や歌の細やかな表現によって、アナとエルサ、それぞれの心情が切なく響いてきます。 対して冒険物語となる後半は、さしてスケールがないわりには個々のキャラクターにもあまり作品独自の個性を与えられず、娯楽アニメ映画の定石を踏むような展開。前半にあれだけ個性を与えられたアナとエルサも、後半はエピソードを消化してゆくことに終始してまうような感じ。せっかくの「姉妹が呪縛から解放され本当の自由を獲得してゆく物語」が何やらごちゃついてしまって。 結局ピークは映画を見にいくたび予告編タイムに見せられた『Let It Go』のシーンだったかな。 最後まで見てその存在に疑問が生じるエピソードが幾つも。 「氷売りを生業とする人々の中で育ったクリストフがトロールの村でエルサの魔術によって意識を失った幼い頃のアナへの治療を目撃する」 ここにたっぷり詰まった情報が後の物語に何らかの作用をしているのかというと、これが微々たるものだったり。 アナが途中で殆ど動けなくなってしまう事で物語の進行にもブレーキがかかってしまう印象がありますし。 ただ、その表現力は本当に素晴らしいものがあって。 アナとエルサ、二人の主役の豊かな表情から、そこに通っている血を感じる事ができます。エルサはやっぱりケバくなってしまう前の方がいいですけど。 色彩溢れる世界から冷たい氷の世界へのメタモルフォーゼ、画面の隅々まで彩られた美しさ。 切ない物語の中で笑いで楽しませてくれるオラフも愛らしく。 表現はCGに変わっても、夢と伝統のディズニーアニメの世界を十分に堪能できる作品だと思います。 [映画館(字幕)] 8点(2014-03-14 21:41:16)(良:2票) |
628. ホビット/竜に奪われた王国
《ネタバレ》 すいません、完全に飽きました。『指輪』時代からもうずーっと同じ事を繰り返してるみたいな感じで。やたら勿体つけた描写~ドーンとアクション!ってパターンが延々と続いてるようで、シリーズを重ねれば重ねるほど単調なイメージになってゆくっていう。 御一行様が「全米川下り選手権に出場する」ウハウハザブーンな展開は、そのフレーズを思い出してウケましたが、それは映画の面白さとは全然別で。 ドラゴンが「親指を立てながら溶鉱炉に沈んで・・・」な展開もウケましたが、それも勿論・・・つーかキングギドラみたいだな。 いや、川下りのところのピタゴラ風展開は画的にも面白かったと思いますけど。 前作の事を思い出すのにひと苦労(実はあんまり思い出せなかったんですが)、でもどうせそこから展開する新たな物語もこれまでと似たようなもので、いやもうタメるなタメるな、ちゃちゃっと先に進もうよ、って感じで。 『指輪』より過去の話ですからどうせメインは死なないって判ってるわけですし。 で、これからやっと面白くなるんでしょ?これから活躍するんでしょ?って思ったら終わっちゃうし。ええ~、そこで終わらせるかぁ?って。結局延々と捕まったり逃げたりを繰り返すだけの話。 アクションの見せ場はレゴラスとエルフ姐さん頼り。そことてワンパターンですが。 見ていて、何か新しい展開とか映像とかにワクワクする、っていうのが無くなっちゃった。心は動かずひたすら頭で映画という名の時間を消化するばかり。 指輪はめた時の病的なエフェクトとか、もう見てて苦痛なんですよね。あーまたコレかぁ、って。 完全に固まったままの世界観の中でお馴染みの面々が更なる冒険を繰り広げます、ってところに喜びを見いだせるのならばいいのですが、私はここから刺激を受ける事がすっかり無くなってしまいました。 [映画館(字幕)] 5点(2014-03-13 21:11:32)(良:2票) |
629. 魔女の宅急便(2014)
《ネタバレ》 飛行シーンのデジタル合成映像が軒並みダメで、今時こんなモンしか作れないのか?ってくらいに酷いのですが、それ以外のビジュアルは良好です。特にロケーションを活かした美術デザインがとても雰囲気良くて。ああ、こういう和と洋とがキレイに混じった世界っていいなぁ、って。 問題は物語の方。そんなステキな世界でかなりギスギスとした、暗い話が多くを占めていて。ドラマを「作る」ために嫌な性格の人間を散りばめてあるんですね。 嫌がらせにキキを利用する女の子や、キキに延々と怒鳴り散らす動物園の職員、荷物を届ける先の人間等、ひたすらキキにとって負の作用をもたらす存在として設定してあって。トンボですら、延々とキキに冷たい状態ですし。 で、その連中が改心する、態度を改める、優しくなる、そういう「大きな振れ幅」を与える事で「ドラマを作る」「感動させる」って、それ、簡単なんですよ。安易なの。その振れ幅が大きい連中ばかりでストーリーライン埋めてるの。 一人の女の子の成長物語であるならば、もう少し繊細に、丁寧にエピソードを重ねるべきなんじゃないかな、って思うんですよね。 あと、ジジの扱いが後半雑になったまま、っていうのが個人的にイヤ。 せっかく美術設定も役者もいいのに、なんか素材を大切にしていない脚本だと思いました。 あと、タイトルバックの画がアニメ版とほぼ一緒(飛んでる方向が逆ですが)、エンディングの構成もアニメ版に準拠と、なんかココ!ってところでアニメ版に寄っちゃってるのが疑問でした。私だったら意地でも全く別のモノにしちゃうのに。 [映画館(邦画)] 5点(2014-03-09 15:07:01)(良:1票) |
630. それでも夜は明ける
《ネタバレ》 意外にも感動とか無しで。 「なんかいじめられる人にも原因があるのです、みたいな事を描いてないか?いや、そう思わせてしまうくらいに迫害が酷かったって事か」とか「どうしてそこまであからさまな悪人になれたのかな、あそこまで悪人だとなんか実感薄いわ」とか「アメリカ人ひでー、でも日本人は別だって訳じゃないよね」とか「アメリカ人はこの惨たらしい歴史を抱えながら今という現実を一体どう生きてるんだろう?やっぱり無かった事にしたいかな?」とか「ネットで酷い差別発言をしているような人間がこの映画をもっともらしく語っちゃったりするんだろうか?そういう人は自己のダブルスタンダードっぷりをいかに消化できるんだろうか?」とか、見ている間に考えた事はいっぱい。だけど感じた事は特になくて。 「考えるんじゃない、感じろ」とリー師匠はおっしゃっておられましたが、真逆ですね。 作品の空気としては『シンドラーのリスト』とか『プラトーン』とかを連想させるんですが、ああいう「見ろ!感じろ!」ってゴリゴリとオシてくる感じはあまり無くて。ゆえにドラマチックな感動の涙!とかいうのもなくて、見終わってワリと肩透かしな感じがしたのが正直なところで。 アカデミー作品賞は「アメリカ映画はこうやって陰惨であまりに愚かな歴史からちゃんと目を逸らさずに向き合う事ができる健全さを持っているんですよ」ってアピールするため?とかちょっと意地悪く勘繰っちゃったりして。 でも、日本でこういうの作ったら大騒ぎする人達がいっぱいいるよね、むしろ今の時代、絶対この国じゃ作るの無理だよね、って考えたらアメリカ映画はまだマシなのかなぁ。 [映画館(字幕)] 6点(2014-03-07 20:29:31) |
631. マイティ・ソー/ダーク・ワールド
《ネタバレ》 アレコレと予告編的映画が公開された上でやっと『アベンジャーズ』が登場したわけですが、今度は『アベンジャーズ2』のための予告編的映画が出てきた状態で。それでも楽しみどころの1つや2つあるでしょう、って。 んー、今回も見どころはダーシーくらいでしたかねぇ。キャラ的に面白いの、彼女だけ。つーか、前作よりは見せ場が多かったので良かったかな。ダーシー限定で。 なんで「たまたま」あんな大変な事になるのがソーのお知り合いのナタリー・ポートマンなの? こういう映画ではそういうのってツッコんじゃダメなの? コレにしろ『マン・オブ・スティール』にしろ『スパイダーマン』にしろ、物語を運ぶのが元からのお知り合いばかりだったりするのですが、それってアメコミもののお約束だったりするのでしょうか? クライマックスで違う世界が開いてあちこち行ったり来たり、ハンマー迷いまくりっていうのは面白かったですが、物語自体はアメコミものの定型フォーマットを踏んでゆくばかり。エンディング後にオマケ付き、なんていうのまで含めてマンネリ感がハンパないです。 もうすぐもう一本の予告編的映画『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』が登場しますが、アチラにはスカヨハのブラック・ウィドウが登場するので、少なくともそこはお楽しみどころですね。うん。 [映画館(字幕)] 5点(2014-03-04 21:34:19)(良:1票) |
632. マチェーテ・キルズ
《ネタバレ》 オープニングに付いてる予告編で結果的に本編のネタバレしちゃってるという。物語的にあんまり関連性が無いモノだと思ってたら、本編がどんどん予告編の内容に近づいていって、ちょっと肩すかし。今回はちゃんと完結しませんよ、って予め宣言されちゃってる状態ですからねぇ。 『マチェーテ』、今回は中途半端なシロモノになってしまった感じで。 元々は場末の映画館にかかっている映画『グラインドハウス』ネタの一編だった訳ですが、今回はフィルム傷は予告編部分とタイトル部分のみで本編はペカーッとキレイという統一感の無さ。 冒頭からしばらく続く「物語」はそれなりに「作られてる」状態で、なのでそこに小ネタを色々と挟んでみても、それがネタとして機能しきれておらず、むしろマジでB級な下手クソな演出に見えてしまうという。 一方、後半になるとひたすらネタ映画になっていって『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』の安直なパロディをやり始めたあたりでただのお遊びにつきあってるような状態になってしまって。 単純に「くだらねー」って楽しめればいいのですが、そのくだらなさの先が感じられないんですよね。映画独自の面白さが希薄。ネタの多くも前作のパロディという形になってしまっていますし。 そんな中ではやっぱりロドリゲスだけあってお姉さん達が魅力的なのですが、でもそこも物語が弾けていないためにちゃんと活躍できていなくて今一つなんですよねぇ。 物語に振り回されるキャラとキャラに振り回される物語、これが二元的に存在して(そう、あの多重人格キャラのように)相互に映画の足を引っ張っている感じがしました。 [映画館(字幕)] 5点(2014-03-04 21:03:37)(良:1票) |
633. ハード・ラッシュ
《ネタバレ》 これ、ポスターやチラシの絵柄が70年代のB級アクション映画みたいな安っぽい感じで興味を持ったのですが、中身も微妙な感じでその点ではブレがなかったかな。 いや、キャッチフレーズの「全員、コイツにだまされる」っていうのは嘘なんですけど。実際はわりとその時その時の成り行き任せ。 冒頭、夜の港を捉えた空撮が渋いクライムサスペンスを予感させますが、中身は義弟がバカやらかしたので裏稼業に戻らなくちゃならなくなった男のドタバタ話。しかもその義弟が途中で更なるバカをやらかしたりするのでメチャクチャです。 元々タイムリミットが設定されている映画なのですが、その中で更に生じるタイムリミット話なんか、脇道に逸れまくっていってツッコミどころ満載。どう考えてもオチに繋げるための脇道。 愛する人を助けなくちゃ!ってサスペンスとしては致命的なのが、遠く離れてる、しかも身動き取れない船の上って状況。どうにもなりませんから、なるようにしかならないと見てる方も諦めなくちゃなりません。 ラストでやっとイヤなヤツ込みで騙してスッキリと片付けてくれますが、それまで見ていてストレスのたまる映画ではありました。 でも、マーク・ウォールバーグはこういう役柄にピッタリとハマる人ではあります。かつて渋谷東急や東急レックスにかかっていたA級とB級の間をブラブラしているような映画によく似合って。よく動けて、男前過ぎず、嫌味が無くて。 いっその事「いつも6点、マーク・ウォールバーグ・ブランド」みたいなジャンルが確立されていって欲しいわ。完全なA級ともB級とも違う、この微妙さ加減に味わいがあるのね。 [映画館(字幕)] 6点(2014-02-28 23:24:08)(良:1票) |
634. ジャッジ・ドレッド(2012)
《ネタバレ》 「画面から低予算っぷりが滲んでいるけれど、閉鎖空間を舞台に全編をワンアイディアで通した意外と拾い物なSFアクション」という感じだと思うんですよね、普通に見ると。 でもコレ、3Dで見ると映画の価値がかなり大きく変わってくると思います。 これまで映画館で106本の3D映画を見てきましたが、3Dの視覚効果を直接アート表現に反映させた映画は『マダガスカル3』とこの映画だけ。アート作品な『夜のとばりの物語』ですら、3D技術自体はアートではなかったですからねぇ。 麻薬によってスローモーション化する世界、そこに割り込んでくるバイオレンス。その暴力のスローモーション空間が3Dによって立体的に構築され、飛び散る血と肉が、破壊が、ゆっくりと空間を満たしてゆきます。 更に鉛色の、血の匂いが立ち込める世界の中で異彩を放つように存在するルーキー。少年のようにも見えるヒロインの、その美しさが退廃した世界の中での希望のように金色に輝いていて。 退廃的な世界の中の暴力と美のアート、これを立体として空間的に見せた3D版は2Dで見るのとは別物と言っていいと思います。2D版はB級SFアクション映画としての印象が強くなるような感じ。 残念ながら日本では3D版ブルーレイが発売されず、3Dは輸入盤で見るしかないという事態に陥っており(その輸入盤もなんかあまり画質がよくない気がして)、映画館で3Dで見られた事は貴重な体験でした。 映画は、できれば旬を逃さないのがいちばん。 [映画館(字幕)] 9点(2014-02-28 22:28:06)(良:2票) |
635. ハル(2013)
《ネタバレ》 キレイキレイな絵のアニメって地雷だったりする場合が多いので、これもちょっと怪しい感じがしたのですが、ワリとハマった感じで。 同じ年に公開された某邦画と物語の構造がモロにカブってたりしますが、その構造はこちらの方が内容を深いものにするために有用な効果を持っているように思います。 物語に隠された秘密が明らかになる事で、遺された者を見つめる視点が逆に見つめられる視点へと転じ、遡って逝った者の心に触れ、その関係性を多面的に見つめる事ができる、そんな風に思えます。 この奇妙な雰囲気の映画を象徴するかのような疑問点もキレイな世界の中のシミのように散りばめてあって(料理や片付けがやたらに下手なヘルパーロボットだったり、どう見ても空港で旅立つように思えるのはヒロイン側だったり)、切なく哀しい物語を織り成す要素になっています。 ロボットだと思い込むとはいえ、自分の中に生じているであろう数々の生理的反応を頭の中でどう理解、処理していたのだろう?という大きな疑問点はあるものの、近未来という設定でありつつ趣きのある和の雰囲気をそのまま残している京都を舞台に、美しくしっとりと描かれたアニメを堪能しました。 [映画館(邦画)] 7点(2014-02-27 22:19:59) |
636. ラッシュ/プライドと友情
《ネタバレ》 毎度毎度そこそこな映画を撮るって印象のロン・ハワードですが、今回は熱く燃える映画を送り出してきました。 正反対の性格であるように見えながら、実は似た者同士であるラウダとハントが、ガキの意地の張り合いみたいな次元からお互いを高めあって成長してゆく様を、テンポよく心地よく感動的に描き出してゆきます。 ただ、あくまで主役になるのは人間であってF1についての映画ではないので、その部分に対する拘りは薄いかなぁ、って。 排ガスや摩擦熱でタイヤが焦げる匂いが漂ってきそうな映像がいっぱい散りばめてあって、それは十分に拘ってそうにも思えるのですが、モナコやニュルのコースなんて、今時のオタクならば忠実に再現されたテレビゲームによって細部まで頭の中に記録されているようなモノなんですよね。で、この映画の映像がその記録領域をキッチリ刺激してくれるかっていうと、そこまでの拘りはないっていう(ハントがコースをイメージするシーンに辛うじて表れてましたか)。 実況音声や文字によってレースの展開や結果が解説されますが、具体的なレース内容はそんなには映像でちゃんと表現してない、抜いた抜かれたの展開を似たようなディティール映像で繰り返している感じで。 一人称と三人称の間を行ったり来たりで、見ているこちらの視点が今一つ、ココ!ってところに固定できないもどかしさ。いっその事、3Dで思いっきり主観映像主体にしちゃってくれても良かったんじゃない?なんて。 そのあたりの拘りの薄さが、やっぱりロン・ハワードなのかな、って。 あと、毎度のロン・ハワード印として嘔吐シーンが頻発するのがどうにもこうにも。まあ、実は小心者な彼を表すという点で仕方ないのかもしれませんが。 F1に対するフェティッシュなくらいのマニアックな拘りの表現がもっともっと欲しいと思うものの、娯楽映画としてのバランスはこのくらいがちょうどいいのでしょうね。そこに拘ると、それこそ「とてもじゃないけれど理解できない」領域を描いちゃう事になるわけですから。 [映画館(字幕)] 7点(2014-02-27 20:50:35)(良:2票) |
637. プレーンズ
《ネタバレ》 お話し的にはダイジェスト過ぎるというか、エピソードが断片化されちゃってて、世界を横断する大レースが随分と短距離だな!って感じでしたが、『カーズ』よりもキャラクターに愛着が抱けて。 で、その理由を考えてみました。 『カーズ』のキャラはメインがトップから転落したレースカーの主人公と高価なポルシェ911カレラなヒロインですよ。もうお高いキャラなの。 一方こちらは全部レシプロ機。ジェットは艦隊の搭載機くらいで、主人公は農薬散布用のセスナ、偉そうなヤツまで含めてレシプロ機。そうお高くないです。 キャラの地位をあまり高めに置いてないところに好感が抱けるわけです。 それから『カーズ』はクルマのウィンドウ&フロントグリル、つまり前面全部が顔。なのでバランス的にボディほぼ頭。一頭身ですよ。一頭身キャラがドラマ演じちゃう違和感。 一方こちらはやっぱりフロントが顔になっていますが、飛行機なので胴体があって主翼と尾翼が手足のように見えます。セスナで3頭身から小型旅客機で6頭身くらい。ドラマを演じてもさほど難なく受け入れられる頭身です。 とまあこじつけてみたりもしましたが、なんだろ、実際デザイン的には『プレーンズ』の方がいい感じがしました。 サクラなんてカラーリングも含めてステキなんですが(初の飛行機萌えキャラ)、あれは日本限定デザインで公開国によって国籍とデザインと名前が変わるという凝った事をしていて、ワールドワイドではないのがちょっと残念。 あと『カーズ2』はレースシーンに3Dを活かせておりませんでしたが、こちらは飛行シーンで抜群の効果を見せておりました。3Dでの公開が極端に少なかったのがこれまた残念。 力の弱い者が上を目指して勝利するシンプルなお話、作品のクオリティは『カーズ』に及んでいませんが、個人的な好みとしてはこちらに軍配を上げます。 [映画館(吹替)] 7点(2014-02-26 21:56:31)(良:2票) |
638. 鑑定士と顔のない依頼人
《ネタバレ》 「愛すらも偽れるのか?」とクドく語られておりましたし、家具を動かした云々だの、あのパーツがポツリポツリと出てくるあたりの不自然さからして、主人公が騙されているのは明白で、だけど、ああいう本当に愛の無い騙し方でしかなかった、っていうのは意外でした。もっと逆の、温かい方向で騙されてるのかな、とばかり思ってました。 となると「二次元コンプレックスのおたくがリアルに興味持ったらリアルは容赦なくおたくから何もかも奪っちゃったのでした、リアルは甘くないのです」みたいな教訓めいた切ない話しか残らないわけで。 美しい肖像画一点一点の視点、決して鑑賞者に偽る事なくこちらに向けられた視線、それに魅せられてゆく男の姿、それを捉えるウットリするような映像の美しさ、二次元を愛し(絵画やアニメやマンガだけでなくて、もちろん映画ってメディアも含む)、主人公に気持ちをシンクロさせてゆく観客に対して冷水を浴びせる意地悪さ。 意味ありげなカフェの窓辺の女性もポイントになるのは単に記憶力のみという激しい肩透かしっぷり。 上手くノせられたと舌を巻くべきなのかもしれないけれど、ここはやっぱり性格の悪い映画だなぁ、と思いたいです。 ラストで回想の中の回想という創作上のタブーを犯してまで描いたのは「それでも愛の思い出を抱きしめて余韻を生きる主人公の姿」ではなかったような気がするんですよね。 警察署の前で逡巡した上で被害届を出さず、その人が現れるのを待ち続けた主人公ではありますが、時系列の最後は施設で廃人のようになって無表情でリハビリに励む姿なわけですから。いっその事、死なせてあげた方がまだ幸せなんじゃない?って。 私にはあのラストもひたすら残酷に思えたのでした。こんなんじゃ、ますます二次元に逃げたくなっちゃいますよ。 [映画館(字幕)] 6点(2014-02-26 21:19:57)(良:1票) |
639. ロラックスおじさんの秘密の種
《ネタバレ》 ユートピアの皮を被ったディストピアもの。 にしても、ファミリー向けCGアニメ映画で、なんでここまで鬱々とした作品になっちゃったんでしょうねぇ。原作ゆえ? 映画は半分以上が回想シーンで占められ、主人公は現代パートの少年と回想パートの青年とで別に存在している状態。ロラックスおじさんは、ほぼ回想パートにしか登場しないのですが、ロラックスおじさんは特に何か大活躍をするという訳ではなく、大自然の中で迫害されてゆくものの象徴的存在。 回想パートの主人公の私利私欲に走った身勝手さゆえに自然が蹂躙され主人公が破滅してゆく姿が描かれてゆき、時を経て現代パートの主人公によって世界に救済がもたらされるのですが、回想パートの主人公が失った時間を取り戻せる訳ではなく、回想パートが映画全体に占める割合の大きさゆえに重さ、暗さがのしかかります。 それに回想パートと現在パートとで話がほぼ連動していない、別の物語として切り離せてしまうという点に問題があります。回想時点から現在時点までの失われた時間が、映画自体からも失われてしまっているのですよね。 この遊離っぷりは映画の統一性を失わせ(現在パートが大きく割り込む回想パートによって停滞し続けるという結果を生みます)、人間のエゴによって自然が失われてゆく物語が大勢を占め、自然を取り戻すための物語としてはとても薄いという、見終わってみると暗く重い部分から受けるストレスばかりが印象に残る映画です。 似非ユートピア部分のデザインに面白さが集中している感じもあって、それはテーマに反してしまう危険性も孕んでいる訳で、テーマやメッセージはいいのだけれども、それを伝える方法(構成にしろ美術にしろ)はあまり上手くいっていないような感じがしました。 [映画館(吹替)] 6点(2014-02-23 22:25:07)(良:1票) |
640. キック・アス ジャスティス・フォーエバー
《ネタバレ》 前作に比べるとヌルくてフツー。 だけど神格化された存在である前作の、流行りの血みどろバイオレンス描写とメタヒーローもの状態(メタだらけになったらそっちが主流になってしまうという矛盾を生むのよね・・・)がちっとも好きでない私にとってはむしろ今回の方がまだマシ、って感じで。 キックアスよりもヒットガールの方が扱いが大きいんじゃない?って感じは、前作で評判だった部分を拡大しちゃう続編モノ、っていう安易な流れを踏襲してたりしますが、ヒットガール好き的にはそれはそれでいいんじゃない?って。バンでの逆襲シーンは単純に燃えますしね。 今回はヒットガールと普通の女子高生との間の揺らぎが存在していて、前作の「まるで嗜虐的に悪人をどんどん殺しているように見えてドン引き」って部分が抑え気味になってますし。 一方のキックアスに関しては凡人と言うより常識人化していて、言動も、与えられたドラマもフツーで(『バットマン』か?『スパイダーマン』か?)つまんないキャラに磨きをかけているようで、キックアスという看板はそろそろ終了かなぁ、って感じがしないでもなく。 だけど「個人的には前作よりはマシ」なだけで、今回は傑作!とかいう訳ではなく(ゲロゲリ棒なんて小学生並みのネタを見て喜べる訳もなく)、クライマックスの乱闘の凡庸な感じも含めて(あれ、もっと犠牲者が出ないと全体の流れから言って不自然)、決して好きではないです。 まあ、「美しい映画」が見たいと思ったらそもそもこれは選ばないでしょうけど。美しい『キック・アス』が見たい、なんて言うのは絶対にあり得ないわがままなのかな。世の中には美しい血みどろ映画もあったりするんですが。 [映画館(字幕)] 6点(2014-02-23 21:23:53) |