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鱗歌さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 3957
性別 男性
年齢 53歳

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661.  GONIN 《ネタバレ》 
取柄があまり無いか、あるいはまったく無いか、という5人が、とにもかくにも集まれば、物語は転がり始める。よりにもよって、ヤクザから大金を強奪しよう、などという無茶な計画。こんな計画、うまくいったが最後、後に待つのは破滅でしかない。 という訳でこの作品も、フィクションであるが故に、登場人物たちにとって「いかに死んでみせるか」こそが自分達の存在意義であり、大きな見せ場となります。誰が、いつ、どうやって死ぬか。死に様こそが、彼らの生き様。 物語の中心にいると思われた佐藤浩市、だからといって、彼が最後に死ぬとは限らない。物語に束縛されることなく死んでみせる、その自由さ。 となれば、やはりこれも、最後まで生き残ってしまうのは一種の罰となりうるのだけど、その意味では、敵の殺し屋たちまで含めてすべての者たちに死を演じさせるのは、一種の優しさであるのかも。
[インターネット(邦画)] 7点(2021-05-01 20:59:32)(良:1票)
662.  白い恐怖(1945)
グレゴリー・ペックが、若くて線が細くて、やたらイイ男。ではあるのですが、そこは女優優先、明らかにイングリッド・バーグマンに照明の光が集まっており、そのゴージャスさの前には、やや見劣りしてしまいます。でも、いいんです、どうせ、ちょっと頼りない役どころなので。 男前でキレ者のドクターかと思いきや、事態は意外な展開に。シマシマ模様がコワイ、という設定は、見てる我々に伝わりにくいところですが、とにかくそういうメンド臭い設定を引きずりつつ、サスペンスを維持して、割とストレートな物語設定に引きこまれます。 ラストも、ちょっと強引とは言え、スッキリしています。 ただ、あの「実際に滑ってる感が皆無の」スキーのシーンなどは、ドキリとさせる幼少時の回想シーンのインパクトを帳消しにしてしまうくらい、ショボいし、明らかにデカ過ぎで明らかに作り物の「銃を持った手」なども、映画への集中を削ぐものがあって、この辺りは少々、策を弄し過ぎ、という印象を持ってしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-01 19:51:28)
663.  クロッシング(2009)
イーサン・ホークなんかに刑事役やらせるから、ほら、悪徳刑事になっちゃったじゃないの。逆か。ヤバい雰囲気出すのに、まさにうってつけの俳優、それがイーサン・ホーク。 冒頭、しつこい会話が続いて、このままいったらイーサン・ホークのことだから、相手をブッ殺しちゃうんじゃないの、と思ってたら確かにそうなるんだけど、それでもなおショッキングなシーンです。銃声の鋭さも効いてます。 それに続いて、リチャード・ギア、ドン・チードル、計3名の、何かしら「ヤバさ」を抱えた刑事の物語が、並列で描かれます。途中、彼らの間にはニアミスのようなものもありますが、あくまで並列に配置された3人の物語。 だけど、バラバラな感じがしないのは、この3つの物語がまるで、表に見えない部分で共振しあっているような感覚があるから。映画に不穏な空気が流れ始めると、それはエピソードを超えて互いに感染し、互いを不穏な空気へと巻き込んでいく。 銃声の衝撃に加え、電車の音なんかもBGMのように不安を掻き立てます。 そして、3人はそれぞれの物語に導かれながら、クライマックスの場へ。別々の物語でありながら互いにシンクロしあう故の、無類の緊張感があります。
[CS・衛星(吹替)] 8点(2021-05-01 16:39:33)
664.  誰かさんと誰かさんが全員集合!!
いかりや長さんが武道の師範で、注ブー工茶のドリフメンバーがその弟子、というのが何だか、いかにも8時だョ的な世界観で取っつきやすい、ってのもありますが、内容的にもよくまとまっていると思います。まとまってるけど、ハジけてる。 岩下志麻が保育園の美人先生で、長さんがゾッコン。それを、日頃の仕返しとばかり、メンバーがからかう。一方で岩下志麻にも謎めいたところがあって、なぜか副業で芸者さんをやってたり。ここ、もうちょっと謎を引っ張ってくれてもよかったのでは、と思わんでもないけれど、そこはそれ、岩下志麻。裏も無ければ表もなく、アッケラカンとした空気読めない感が、彼女のいいところです。 と思わせて実は・・・あとは見てのお楽しみ。 ドリフの4人組、長さんをからかいまくった挙句に逃亡を図り、逃走用にクルマを準備するのだけど、これが、その辺のクルマからパーツを盗んできて無理やり組み上げた超オンボロ車。こういうのがやっぱり楽しいですね。はたしてこんなポンコツが無事、走るのか? もちろん最後はこのクルマが大活躍。走りながら壊れていき、壊れながら走っていく、そのバカバカしさ。もう、たまりません。 ヤクザ映画ではコワモテ演じている俳優陣の面々も、ここでは楽しそうに敵役を演じてます。 あ、そうそう、中盤には、ショッキングな残酷シーン(?)がありますので、心臓の弱い方は、ご注意を。
[インターネット(邦画)] 7点(2021-04-30 15:55:51)
665.  アウトランダー
宇宙の果てだか未来の果てだかよくわからんけれど、どこぞの遠い世界からやってきた宇宙船が、中世ヨーロッパに墜落。宇宙船に乗せていたモンスターが解き放たれ、地球人を襲いはじめる。で、同じく宇宙船に乗っていた主人公(何星人かは不明。地球人にしか見えない)が、そのモンスターと戦う、というオハナシ。エイリアンVSマッドマックス、みたいな感じでしょうか。 主人公は早々に科学兵器を失い、当時の武器プラスアルファ、ぐらいでもって戦うので、SF仕立てでなくても成立するオハナシなんですけどね。要するに、主人公が異邦人であり、敵がメチャクチャ強い生き物であれば、良いわけで。SFでなくてもいいし、SFであってもいい。ただし、主人公がモンスターに立ち向かうには、それなりに動機付けが欲しいところだけど、そこがちょっと弱い印象。 いや、劇中では一応その動機、つまり彼の家族にまつわる過去が、示されてはいるんですけどね。それを控えめに示していくのも悪くない。どこからともなくやってきた、暗い過去をもつ主人公、確かに悪くない設定、なんですけどね。 ただ、それがどうも弱すぎるんですね。冒頭を除くと基本的に、「主人公の過去は映画の中盤過ぎにまとめて説明します」みたいな構成になっていて、主人公の普段の行動、佇まい、どうも影が感じられません。何だか、いずれヒロインと結ばれます的な雰囲気が、ずっと漂っていて。 マッドマックス2とかだったら、主人公がずっと周囲に関心なさそうな雰囲気漂わせているからこそ、最後があれほど盛り上がった訳で。 本作、CGモンスターはなかなかよくできています。なので、その点でシラケさせることは、ありません。だけど、戦闘シーンは、もう少し丁寧に見せて欲しかったです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-04-30 12:28:26)
666.  レプティリア 《ネタバレ》 
トビー・フーパーが監督でワニの映画、と聞けば、悪い予感かイヤな予感かのどちらかしか、しない訳ですが、実際見終わって、ああ久しぶりにツマラン映画を堪能したわい、と、ちょっとした充実感を味わうことができます。それともこれは、開放感、でしょうか。 まあ、とにかくツマランのですが、若者たちが夜の水辺で焚き火を囲んでいたりするのは、いかにも「これから襲われます」という感じがして、イイですね。 遠くには謎の寂れた邸宅があって、うむ、きっとクライマックスはあの邸宅を舞台にワニと戦うんだろう、と期待させておきながら、まーったくそういう展開にはならない、ってのが、意表をついてます。テキトー、とも言います。 とにかく、ただ若者たちがワニに襲われ、食べられ、逃げるだけ、ってな感じで、しかし相手は所詮ワニ、陸路どんどん逃げれば安全でしょ、と、安心感よりは「これでワニ映画が成立するのか」という不安が募ってくるのですが、逃げる彼らも何だかドン臭く、一方でこのワニがCGになった途端、まるでゴキちゃんのように動きが素早くなり、何とか一応、パニック映画の体裁を保ってます。 犠牲者の生首が粗末に扱われるなどの露悪テイストを交えつつも、イマイチ微妙な雰囲気を漂わせながら、ラストは意外な(予想通り過ぎて意外な)まとまりを見せて、この美人の女優さん(誰か知らんけど)、どんな気持ちでこのシーンを演じているんだろうか、と、そんなことばかりが気になってしまって、微妙さはマックスに。 見ている誰もに「コイツ早く喰われろ」と思わせるヤツを、敢えて延命させるあたりは、なかなかしたたか、ではありますが。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2021-04-29 18:43:18)
667.  アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲
あのやたら楽しかった第一作よりもさらに発想がぶっ飛んでて、発想が飛んでいさえすれば面白くなるという訳ではない、と言うことがイタイほどよくわかる作品です。飛ぶ方向を間違えると、オモシロさは飛距離に比例するどころか、悪くすると反比例してしまう。 今回はいきなり、人類が滅亡寸前。ナチの残党どころか、人類そのものの残党が月の裏側で生き残ってる。 で、地球の内部(毎度お馴染み、空洞説!)にあるという、ナントカいうエネルギー(名前忘れた)を目当てに、宇宙船で地球に向かうと、なんとそこには・・・ なんだ、発想が飛んでると思いきや、結局は第一作の裏返し、ってことですかね。でもとてもそれだけとは思えないくらい、この作品、支離滅裂。で、イマイチ面白くない。 なんかこう、最後の方もどうオチをつけてよいのやら、といった感じで。 パロディだけでは、ちとキビしい。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-04-27 22:35:21)(良:1票)
668.  ウェス・クレイヴンズ ウィッシュマスター
こんなタイトルですが、別にウェス・クレイヴンが監督してるわけでもなく、製作総指揮の座にちゃっかり収まって、登場する脇役の俳優陣もフレディだのジェイソン(の中身)だのキャンディマンだの、なんだかまるで、内輪で盛り上がって勢いだけで作っちゃったんじゃないの?ってな感じの作品で。 だもんで(かどうかは知らんけど)ちっともコワくないホラー映画。冒頭からなかなかの残酷シーンを展開してくれるけど、それがキモチ悪いながらもどこかユーモラスで。コワくない代わりにビックリさせるシーンは何度か挿入され、これも、「いかにも」なコケオドシなので、思わず苦笑しちゃう。そしてヒロインはと言うと、ホラーの主演女優たるもの、叫んでナンボでしょ、とばかり、しつこいくらいに叫びまくる。 と言うわけで、若干パロディじみたところのあるホラー映画、なのですが、たったらそれなりに楽しめるのかと言うとイマイチ面白くなかったりして、一体、何でしょうね。やっぱりこの、「願いを聴いてくれる魑魅魍魎」、っていう設定が、あまりに童話か何か、っぽ過ぎて、ちょっとついて行けない、というか。 ストーリー運びも、ちょっと、雑。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-04-26 23:19:45)
669.  フォー・クリスマス
中年太り気味の冴えない男が美人に言い寄ろうとして、当然のように撃沈、と思いきや、あれよあれよといううちに、何だかよろしくやっちゃって、ええい、くそー、と。 タイトル出るまでにもう映画が終わっちゃったみたいな感じでですが、ここからが本筋。要するにこういう、テキトーな男女が、ひょんなことからクリスマスを互いの家族と過ごすことになる。と言ってもどちらの親も別れてるもんだから、都合、四カ所、回らないといけない。だもんで、フォー・クリスマス。 で、二人とも、ロクな家族じゃないもんだから、訪問する先々で、ドタバタの大騒動。確かに、三角締めやらムーンサルトプレスやらをキメてくる兄弟なんて、誰しも持ちたくない、いや、少なくとも恋人には見せたくないもの。 そんなわけで、ちょっとオムニバスっぽい構成のドタバタコメディで、他愛ない内容ではあるんですけどね。一応は、騒動を通じての二人の変化も描こうとはしているけれど、ほぼ、心に引っかかるもののない表面的なもので、正直、どうっちゅうことのないオハナシ。 ただ、そのドタバタぶりが、かなりおバカな領域に達していて、だいぶ羽目を外しているのには、見てて、苦笑混じりの笑みがこぼれてしまいます。二組の両親をそれそれ演じているのが意外な大御所たちなのも、ちょっとした驚き。 ま、クリスマスですから、あまり目くじら立てないことにして・・・と言おうと思ったけど、妙にクリスマス「らしくない」映画でした。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-04-25 23:08:48)
670.  ヘイトフル・エイト
毒殺モノで、タイトルが「ヘイトフル・エイト」。日本語に直すと、「八つ墓村」、ですかね。なんでやねん。 雪に閉ざされた一軒家に集うは、一癖も二癖も、いや何癖もありそうな連中。だけどそこに至るまでに、まず雪道を行く馬車に登場人物たちの一部が集まってくるところから描かれて、「リンカーンの手紙」なんていうギミックがここで提示されたりもするけれど、それより何より、登場人物たちのいかがわしさと荒々しさ、そして一帯の雪深さが、強く印象づけられます。 寒さ、ってのは、屋内シーンに入ってからも、吐く息の白さから伺うことができます。 一軒家で繰り広げられる不穏なやりとり。登場人物に当てられる照明も、何だかアヤしくって。 結局、見ていくと、これはやっぱり八つ墓村じゃないのか、という気もしてくるのだけど(どこが?というのは書かないことにしますが)、それはともかく、章立ての構成の利点も活かしてストーリーを不用意に複雑にすることを避けつつ、容赦ない殺し合いを展開させて、我々を唖然とさせつつ、最後のアッサリ感がなかなかシャレてるな、とも思わせて。さらに唖然ともしますけれども。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-04-25 15:37:26)
671.  静かなる男
私がこの作品に10点をつけない理由があるとしたら、「↓すでに何人も10点つけてるから、もういいか」ぐらいのもんで。いやホントにこの作品、見終わって何ともうれしくなり、何ともしみじみしちゃう。また10点を増やしちゃいますけど、勘弁してください。 アメリカから故郷のアイルランドの小さな村に帰ってきたジョン・ウェイン、これが実にイイ男。知り合ったモーリン・オハラは気の強いところもあるけれど、お互い憎からず、というわけでトントン拍子に結婚へと向かいたいところ、しかし彼女の兄が偏屈者で、ジョン・ウェインを滅法、嫌ってて。 そういう、人間関係やら、田舎らしい因習やら、主人公の過去やらが、物語に起伏を生じさせるのだけど、全体的な基調はおおらかで、なんと言ってもユーモラス。彼らを取り巻く面々のやることなすこと、とにかく可笑しくて、あともう少し誇張してやれば、ショートコントのネタにも使えそうな。 豊かな自然も見どころだけど、馬のレースなんかのアクションも交えたり。 見てると、ほとんどお膳立ては整っていて、義兄弟同士が殴りあえば解決しそうな雰囲気が漂っているのだけど、そこになかなか踏み込めないのが人間。人間だけが、最後の障壁。しかしもう、行くしかないよね。というわけで、あとはもう、盛大に殴り合い、盛大に馬鹿騒ぎ。この肯定感が、たまりません。
[インターネット(吹替)] 10点(2021-04-25 14:58:05)
672.  犬鳴村
犬鳴村の都市伝説がどういうものなのか、まったく知っていなかったもんで、大阪の犬鳴山温泉のことだろうか、くらいにしか思ってなかったんですけど、何にせよ、都市伝説における「都市伝説らしさ」ってのは、話が中途半端で完結せず、背景もはっきりせず、とにかくモヤッとした感じ、にある訳で。こうやって物語化して、細かいところまで盛り込んでしまうと、都市伝説らしいコワさ、ってのは薄れる方向に向かってしまう。 んだけど、いや、コレ、面白かったです。 見せ方がうまいですね。背景にチラリとオバケを見せる、という手法それ一辺倒でもないし、「何だろう?」と思ってたら突然ワッとくる驚き、それ一辺倒でもない。 ビデオカメラとか、電話ボックスだとかいうアイテムを交えつつ、話を繋いでいく。そこには繋がりの悪い部分(どういうことよ?という部分)もあるけれど、それを強引に押し切ることで、上りあれば下りあり、物語に推進力が生まれ、気が付いたらオハナシはグルリと環をなしている、という仕掛け。すばらしい。 ホラーに対し変に納得したり感心したりするのも、イカンことなのかも知れませんが。
[地上波(邦画)] 7点(2021-04-18 16:50:12)
673.  エレファント・マン
特異な容貌故に見世物にされてきた青年、その彼をこうやって商業映画の題材として描く、という事自体に、メタな要素を感じざるを得ないのだけど、それを意識しつつも、どうもこの映画には、以前から醒めた印象しか持ち得ないのです。今回久しぶりに見ても、それは変わりませんでした。 結局のところこれは、メーキャップ技術の限界を示した映画、としか思えなくて。 微妙な、デリケートな問題、であるが故に、その「作り物」感が、まずもって、気持ちを門前払いしてしまう。 かつて初めて見た頃と違って、今ではネットで調べれば、モデルとなった男性の実際の写真を簡単に見ることができ、確かに、似せようと努力していることはわかるのですが。 ストーリーも人物描写もシンプルで類型的なものとし、あの神秘性を感じさせるマスクも勿体ぶらずに脱がせて素顔(のメーキャップ姿)を画面にさらけ出させて、この「作為の無さ」という作為が、ドキリとさせる面も、これまた確かにあるのですが。 しかし、結局のところ、メーキャップでは描き切れない以上、違和感を拭いきれない以上、その姿はやはり、あのマスクの向こうの神秘に、封印するしかなかったんじゃないか、と思えてしまうのです。 ところでこの映画のテーマ曲、聞くとどうにも、童謡の「叱られて」を思い出してしまうのですが。
[インターネット(字幕)] 4点(2021-04-17 15:04:21)
674.  血みどろの入江
このタイトルから何を想像すればよいのか、「血みどろ」はいいとしても、何で「入江」なのか? 要するに、遺産相続に絡んだ殺人劇で、その遺された不動産資産というのが、入江だった、というそれだけの話。 しかし、それだけと言うには、あまりに人が死に過ぎ、死体が登場し過ぎるのが、本作の特徴です。冒頭、ロマンチックな音楽が流れる中で、唐突に行われる殺人劇。念の入ったカメラが、いかにも「これは只者じゃないな」と思わるのですが、中盤以降、ひたすら繰り返される殺人と死体の描写は、かなーり残酷趣味の方に主眼が置かれてます。突き刺さり感というか、めり込み感というか、まあ、特殊効果はあくまで当時のもの、とは言え、やってることはなかなかエゲツないです。死体に纏いつくタコ。 という、殺し合いのデスゲームが展開され、もはや誰が勝利を収めようとどうでもよくなってくるのですが、この陰惨な雰囲気が、ラストで一変して、これって実はブラックユーモアなんだよ、と言わんばかり。 いまさら、そんなこと、言われてもねえ。あはは。 という、ちょびっと上級者コース(?)、みたいな作品でした。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-04-17 14:24:54)
675.  野良猫ロック 暴走集団’71
シリーズ第5作、この最終作に至っても結局、何がノラ猫で何がロックなのか、分からなかったけど、まあ、そんなことはおいといて。 公開日の関係でタイトルには「'71」が入っているとは言え、映画の最後には「1970.12.23」という日付が入っていて、1970年という年の中を、5本が走り抜けたこのシリーズ。最終作は残念ながら(?)第2作目と同じく藤田敏八がメガフォンをとっていて、同一シリーズとは言え、第1,3,4作の長谷部監督作と第2,5作の藤田監督作とは、テイストが異なります。前者が「若者vs若者」の衝突であるのに対し、後者は若者が社会と対立、挑戦するような内容、いわば「若者vs大人」の構図。女性よりも男性の方が映画の中心にいて、特にこの第5作では、これまで中心にいた梶芽衣子の存在も影が薄くなり、いかにもビンボー臭い容貌の原田芳雄が、映画の真ん中に腰を据えている。むむむ。やっぱり、一体何がノラ猫で何がロックなんなんだ、と。 と言う訳で、ロックというより、だいぶフォークのニオイがする作品となっています。一応、ザ・モップスとかいうバンドで、モップ頭で歌う鈴木ヒロミツなんかも登場して、ロックに詳しいヒトにはもしかしたらタマランのかも知れませんが、私は疎いのでよくわかりません。むしろマチャアキが歌ってるシーンもあったりするもんだから、どちらかというと、漂っているのは昭和歌謡ムード。あと、乱交チックな場面を挿入して、多少アナーキーなところも見せたりしてます。これが、ロック? で、それが終盤には、銃やらダイナマイトやらでの闘争に発展。その舞台となっている背景のセットを見ても、いかにもマカロニウェスタンな世界。なんじゃ、こりゃ。 このぶっ飛び具合が、何となくハリキリ過ぎの作為めいたものを感じたりもするのですが、それもまた、今の観点でのうがった見方なのかも知れませぬ。この勢い。華々しい、シリーズの幕引きでした。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-04-17 09:36:57)
676.  斬、
池松壮亮演じる主人公も、塚本監督演じる浪人風の男も、どちらも剣の腕前は超一流、滅法強い。後者は、普段は穏やかで冷静ながらも、いざ剣を抜くべき時には剣を抜く、実に頼もしい男。であるのに対し、前者の主人公はと言うと、人に向けては頑なに剣を抜こうとしない、過剰なまでの煮え切らなさが、何とももどかしい。 しかし、結局は、二人が剣を持ち、そして強すぎるが故に、理不尽な戦いに向かわざるを得なくなる。それは、この二人だけではなく、主人公の弟分にも当てはまるかもしれない。 という筋立てに対し、登場人物たちが現代的な台詞回しで話すのを聞いていると、これは一種の寓話なんだろう、と思えてきます。国家が武力を持つが故に、戦争が起こって悲劇を迎えざるを得ない、ということ。 それが頭に浮かんだ瞬間、若干、鼻白んでしまうのも事実なのですが、しかし。 冒頭の刀鍛冶のシーンに始まって、劇中、刀を抜く、或いは鞘に収める音を克明に捉えてみせる、剣のイメージ。肉体損壊を伴う、凄惨な殺傷の描写。といったものが、山奥の静かな村で展開される、その様は、寓話であるか否か以前に、充分に我々に迫ってくるものを感じさせます。 そして、虚構の世界であるが故に、登場人物の死は、多かれ少なかれ、その本人の存在感を彩るものとなるのだけど、逆に言えば、映画の中で死なないことほど、むごい罰は、無いのかもしれません。 80分ばかりの短い作品ですが、濃密な世界でした。
[インターネット(邦画)] 8点(2021-04-14 07:21:27)
677.  ビルとテッドの大冒険
本人たちのためにも、この二人はやはり落第させた方がいいと思いました、ハイ。 時空を飛びすぎ、飛びまくりすぎ、一本の映画の中でこれだけ、色んな国の色んな時代の色んな人物の色んな姿を登場させる、ってのも、恐らくは相当、手間なワケで、そういう意味ではずいぶん贅沢な映画なんですが、見終わって、ちっとも贅沢をした気分にならないのは、これはどうしたことなんだろう???
[インターネット(吹替)] 7点(2021-04-12 22:36:57)
678.  野良猫ロック マシン・アニマル 《ネタバレ》 
最初こそ多少のいざこざはあれど、「米軍脱走兵を匿い、海外へ逃がす」という目的のもと、たちまち梶芽衣子と藤竜也が共闘モードに入るもんで、この第四作、内容的にはかなりスッキリしています。ちょっと拍子抜けするくらいに。 最初に少しいざこざを交えることで、それに対する和解が、一気に親密度合いを深める、というわけですな。 仲間が集まりワイワイやってる、それを見守る各リーダー格の藤竜也と梶芽衣子が、何だか、デカイ子供たちを見守るパパとママみたいに見えてくる。 実際はそこに、LSDの取引などといったアブナイ話も絡んで、そこは本シリーズのアナーキーな持ち味でもありますが。 一方で油断ならないのが、郷鍈治率いるバイク軍団。そうか、リーダーはサイドカーに乗るものなのか。じゃあゴレンジャーのリーダーは実はキレンジャーだったのか。 彼には何やら過去があり、彼の背後には車椅子の范文雀がいて。紫色の部屋で、いつもオルガン演奏によるバッハの「フーガの技法」を聴いてるのが、なんかコワい。 やがて梶・藤と郷との抗争に発展した事態は、急転直下、すべてが徒労に終わるという虚しさに溢れた顛末を迎えることになるのですが、どこか、全てをやり切ったという清々しさみたいなものも感じないでは無く。 これまでの四作中、三作を長谷部安春が演出していて、細かいショットをチカチカとサブリミナル的に切り替える実験的な手法はここでも健在。とんでもない場所をバイクで突っ切ったりするアクションも、第一作のノリを感じさせます。 違うのは、藤竜也にヒゲが無い、ってことだけど、ヒゲが無くても、カッコいいねえ。
[インターネット(邦画)] 7点(2021-04-11 22:42:46)
679.  トラック野郎 御意見無用
シリーズ第一作からもう、全開モード。むしろ、まだ誰も何も期待してない分、自由奔放なのが第一作の強み、なのかも知れませぬ。 内容は盛り沢山、マドンナに対する一目惚れは勿論のこと、花束のエピソード、ライバルとの対決エピソード、捨て子のエピソード、ジョナサンの隠された過去の話・・・。そうそう、桃次郎とジョナサンとの喧嘩のエピソードもあって、もはや愛川キンキンが何に対して怒ってるのかもよくワカランのだけど、二人が波打ち際で水を掛け合えば、すべてが水に流され、ああ、二人ともバカだなあ、イイなあ、と思えてきます。 このおバカな主人公を演じる文太さん、一見荒削りに見えながらも、ときに絶妙の間で笑いをとってみせ、なかなかの喜劇俳優ぶり。 投入された脈絡のないエピソードが、見事なまでに、落ち着くべきところに落ち着き、サバサバしているのかと思ったら妙なところで泣き出したりするマドンナ中島ゆたかの破綻寸前のキャラクターが、彼女の抱えた苦悩の目眩ましになっていて、その苦悩が明らかになったとき、桃次郎の侠気が炸裂、怒濤の爆走クライマックスへ。  と言ってもアメリカ映画のカーアクションみたいに派手なことは出来ませんが、木の枝がトラックに激突し、泥水が(バケツでかけたように)飛び散り、気分だけは負けてません。 バカだから、カッコいい。それがこのシリーズの持ち味ですね。
[インターネット(邦画)] 8点(2021-04-11 12:38:37)
680.  ザ・ハリケーン(1999)
実際の事件、実在の人物を扱っているのが、難しいところでもあって。テーマとしては、人種差別の問題が存在していて、社会全体、いや歴史まで含んだ問題なんだけど、この映画の中ではそれが、特定の人達の仕組んだ陰謀劇、みたいにになってしまう。主人公を少年時代から目の敵のように扱うその偏執的な姿は、この物語を個別の特異的な事件としてしか描いていないようにも感じられてしまうのですが。 一方で、もう一人の主人公たる少年を、この物語に配置したのは、過去と現在とを思わぬ形で繋ぎ、決して自分たちと無関係の遠い世界の話ではないのだ、ということを感じさせ、我々をハッとさせるものが、あります。ただ、彼を二人の主人公を支える三人の男女、彼らの描き方は「善人」として、いくらなんでも形式化され過ぎていて、浅いと感じざるを得ません。国外の「カナダ人」として設定したのは、皮肉を効かせたところかもしれませんが。 最後に登場する判事が『夜の大捜査線』のロッド・スタイガー、ってのも、ちょっと狙い過ぎですかね、ノーマン・ジュイソン監督。 と、引っかかるところはあれど、やはり圧倒されるのは、長年にわたる主人公の苦しみを演じきった、デンゼル・ワシントンのその姿。ボクシングシーンにおける見事な肉体とファイトシーン。抑制された絶望感が、ときに焦燥感を伴って露わとなるときの、ひりつくような感じ。そして苦闘の年月を問答無用に感じさせる、風貌の変化。 圧巻です。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-04-11 11:53:21)
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