681. ハイヒール(1991)
《ネタバレ》 自身が同性愛者ということもあって、ゲイの描写が群を抜いている感じだ。 劇中、ベルイマンの「秋のソナタ」に触れているが、 彼が思春期の女親と娘の向き合い方を描いてることが、興味深い。 無神経な言動をするような男と付き合ってたり、男を見る目のない才能豊かな母親。 かなわない母親の男と結婚することで、母親に一矢報いたつもりだったが、もともと男が 大したタマじゃない。乱れた女性関係から、殺人事件にまで発展して、最後は母娘の話になる。 アルモドバルの全盛期を予感させる初期の傑作。 早くも彼の卓越した女性観や色の使い方が顔をのぞかせていて、興味深い一本。 [DVD(字幕)] 7点(2019-02-03 00:18:37) |
682. オン・ザ・ミルキー・ロード
《ネタバレ》 クリスットツァ節、全開! コミカルでもあり、残酷でもある大自然のなか、ハートにたたきつけるようなメロディとともに、 繰り広げられる愛と哀しみの逃避行。 最後、彼の心は自然の美しさのように思い出も美しくなっていくのでしょう。 この監督のは、心に残るんですよね。 本当の評価は、後々自分の中に残る気がします。 なんだかんだ言っても、僕はこの監督作品、好きです。 [DVD(字幕)] 7点(2019-02-02 19:57:29) |
683. ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
《ネタバレ》 見応えある、太った俳優をあまり観ないものね。 昔はチャールズダーニングとかいたんだけど・・ チャーチル演じる俳優に、独特の目力のあるゲーリーオールドマンを特殊メイクして、 起用するとこは面白いよね。 でもゲイリーらしさの、ちょっと悪どいとこが活かされてないというか・・ こんな直球の映画とは思ってなかった。 「ダンケルク」を観てたので、鑑賞もスムーズに。 でも、第2次世界大戦、イギリスこんなに追い詰められてたんだね・・ イギリス王朝が話の分かる人で良かった。 さすが歴史の長い大英帝国。 これから来るEU離脱問題もうまく対処できるだろうか・・ [DVD(字幕)] 7点(2019-01-27 00:44:13) |
684. 桜桃の味
《ネタバレ》 何度も観た大好きな作品。 最後のシーンは、これは映画なのだから、あまり暗くならないでくださいよ~という監督の意図らしい。 平成最後の紅白で、歌手のsuperflyが「Gifts」という曲を歌ったが、 その歌詞の内容に、この映画を思い出した。 劇中の老師の説教、けだし名説教である。 キアロスタミはこの作品があるから、他の作品も好きだ。 [DVD(字幕)] 10点(2019-01-19 18:31:51) |
685. 風が吹くまま
《ネタバレ》 キアロスタミの映画には、観るコツがある。 何かありそうだけど、何もない場合が多い、とリラックスして観ること。 そうすると、彼の映画のなかの会話やちょっとしたことに、クスリと笑える余裕が出てくる。 この映画では、少年と大人の友情や、顔を見せぬ少女や生き埋めになった事故など。 田舎の刺激感覚で見ると、これらもまた楽しい。 都会の次々消費される刺激の中で、これらの牧歌的な刺激もまた新鮮だ。 そして会話の豊かさ。 ビジネス的な要素の一切ない会話の豊潤さ。 そこにキアロスタミの醍醐味を僕は感じてる。 [DVD(字幕)] 7点(2019-01-19 15:45:34) |
686. オン・ザ・ロード(2012)
《ネタバレ》 ケルアックの「オン・ザ・ロード」。 名もない青春映画(このサイトにもない!?)の一コマで ある女学生がケルアックを絶賛するのだが、それがなぜか頭に残って、鑑賞。 (その映画、バンドデシネ作家の友だちが自殺したり、妙に記憶に残る映画だった) (ジョンカーニーの名作「はじまりのうた」でも主人公がこのタイトルについて一言) で、この映画の内容は、最後のほうの会話の中にそのすべてがあるような感じだ。 「虹の果てには黄金なんかない。あるのはクソと小便だけだ。でもそれを知ることで自由になる」 可哀そうなディーンの自暴自棄な旅につきあわされた作家志望の青年サル。 だが身勝手な彼に愛は伝わらない。旅の最後、人生の最後は、言うまでもない。 そんな映画だったが、劇中たびたび目にする本「スワン家のほうへ」。 プルーストの「失われた時をもとめて」の最初の話だ。 しかしこっちの同性愛は、自意識を求めあまして、悩んだ末の愛の顛末じゃないのか。 (「失われた~」は映画しか見てないので分からないが・・) 本作のような身勝手な行為の末の行く先とはちょっと違う気もするが・・(悲) [DVD(字幕)] 7点(2019-01-18 19:24:22) |
687. ブレイド2
《ネタバレ》 ギレルモ監督ものとして観たが、やはり面白かった。 この監督って南アメリカのオタクなんだけど、動物の死骸とか間近に見てたんだろうね。 とにかくセンスがエグイもん・・(汗) ブレイドシリーズはよく知らないが、女性が出てこないのがキツイ。 この映画ではヴァンパイアの女性が唯一のヒロイン。 でも敵側の女性で、最初の方は、敵の敵は敵?とかもう誰が味方なのか全然分からなかった。 でもブレイド対戦用につくった兵隊たちのリーダーにブレイドがなるっていう発想は面白い。 やはりデルトロは一味違うようだ。 ウエズリースナイプスは同年にウォルターヒルの「デッドロック」にも出てる。 アクションのキレがいい。カッコいいね。 [DVD(字幕)] 7点(2019-01-18 01:35:14) |
688. ミミック
《ネタバレ》 モンスターパニックものかぁ。 ギレルモデルトロ監督じゃなきゃ観なかったろうなぁ。 ニューヨークの地下には何かいる。 そんな妄想を抱かせるような、ドロリとした感じが気持ち悪い。 昔、巨大ワニの「アリゲーター」なんてものもありましたが・・ 東京の地下に何かが潜むって映画、あまり聞かないものね。 キレイ好きな日本人には、まぁ、取り組まないような内容でした。 さすが、デルトロ。細部までのこだわりよう、安易な特撮を使わない映像で、 センスの良さを感じます。 [DVD(字幕)] 7点(2019-01-14 23:12:50) |
689. 羊の木
《ネタバレ》 罪を犯した人間に寄り添う吉田大八監督。 でも許せない人間もいる。 今回は、犯罪者が一気に6人も出てくる。 しかし松田龍平演じる、根っからの人殺しには、吉田監督は寄り添わなかった。寄り添えなかった。 人としての審判の及ぶところではない。 それでも彼の映画に怒りはなかった。 吉田監督はのろろという神さまに審判を託した。 [DVD(邦画)] 7点(2019-01-12 16:17:08) |
690. ちはやふる 結び
《ネタバレ》 「しのぶれど」と「恋すちょう」の二首を試合のクライマックスに 持ってくるとこなど、本当に勉強になったし、面白かった。 昔の歌合わせが、紅白歌合戦みたいに、お互いの意地とプライドをかけてやったという 話は、それだけでもストーリーが一本できそうなほどエキサイティング。 (ちょい昔、邦画に「恋は五七五」という名作がある!) 若い俳優たちがみんな好感もてるのがいい。 特に女優。 無駄に美人という設定のちはや役を広瀬すずが体を張って演じてる。素敵だと思います。 「舞妓はレディ」の上白石萌音も、いかにも日本の伝統を知っている女性という感じがよく出てて、はまり役。 松岡茉優もどこかコミカルな才女役を存在感たっぷりに演じている。 男優役も好感持てるし、こんな連中との高校生活は楽しかろうと思いました。 高校時代の青春燃焼物の傑作です。 [DVD(邦画)] 8点(2018-12-23 13:20:37) |
691. 恐怖分子
《ネタバレ》 「クーリンチャ」が最初のエドワードヤン体験だから、 この映画と言い、「台北ストーリー」と言い、明るい映像に意外さを感じた。 音楽を使わないのは、相変わらずだが・・ 今まで貧困に苦しんでた台湾が、一気に経済が回る国になったことで、 抱くようになった、社会への不安を映画化するエドワードヤン。 このタイトルの恐怖分子とは、その社会の不安を顕在化させる人物がすなわち社会の恐怖「分子」なのだ。 映画は2人の女性に焦点をしぼってる。 1人は美人局まがいの交友をする不良少女。 もう1人は作家の女性だが、本来の夫を大事にせず、不倫を重ねる女性。 いずれも近代化が進むにつれ、生じたキャラクターである。 エドワードヤンは、この社会の変わりようから来る人間の変化に本当に嘆いていたようだ。 [DVD(字幕)] 7点(2018-12-22 23:40:11) |
692. ジュラシック・ワールド/炎の王国
《ネタバレ》 前半はすごいですね。 よくまぁリアルな火山の噴火に恐竜を掛け合わせて描いたもんだ。 ドエライ作業量だったでしょうね。 後半は別の意味で面白い。 女の子と恐竜というファンタジーみたい。 夜の月夜に欧風の屋敷の上で恐竜が叫ぶ。 女の子は布団の中で震えてる。 子どもの悪夢をスピルバーグチームがジュラシックシリーズでも使ってしまう。 豪華2本立てといった感じの話で、面白かったです。 どこまで子ども心にブルーが届いたか、興味ある。 ブルーのフィギュア、欲しい。 [DVD(字幕)] 7点(2018-12-17 19:31:03) |
693. カメラを止めるな!
《ネタバレ》 涙が出るくらい好き! 正直に言います。 DVDで鑑賞したので、最初の映画で、酔ってしまったところに、 現場の連中がまとまらず、好き勝手いうとこにブチ切れしてしまい、観るのを中断してしまいました。 船酔いで、自分が定まらない時に、あのような現場に出会い、怒り心頭になったからです。 なんでこの映画が高評価なんだろう?と思い、再度観始めたら、面白くて、最後はうるっと来てしまいました。 (正当な評価にならないですね、スイマセン・・) 映画愛がたっぷり入ってて、現場こそ映画じゃないか、と思ったんでしょうね。 フェリーニの「8・1/2」ですね。 でも映画愛のこんなにある人がゾンビを扱うなんて、ゾンビってそんなに面白いのかなぁ? 「桐島、部活」もそうだけど・・ 自分もゾンビ観てみます(笑) [DVD(邦画)] 10点(2018-12-17 01:30:12) |
694. 牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(188分版)
《ネタバレ》 受験に失敗して、夜学に行き、仲間ができ、抗争に巻き込まれ、好きな女子が元リーダーの彼女で・・ 一言で言うと、こういう映画ですが、エドワードヤンのこの映画は、 長回し多用で、主人公の魅力というのが伝わりづらいんですね。 しかもどこにでもいるような少年、少女を使い、映像も暗め。 でもこの映画は映画自主製作者には勇気をもたらしたんじゃないかな・・ 普通の人間使っても、こんな重厚な映画ができるって。 主人公の少年の家も政治の時代にもみくちゃにされ、映画は厚みのある内容になってます。 4時間近くの映画です。 多少きつかったですが、最後の合格発表のラジオ放送を犯罪者になってしまった家の人間がじっと聞いてるシーンを みて、あぁこれは挫折の映画だったかと思いいたりました。 ヘッセの「車輪の下」みたいなものを感じつつ、鑑賞後、ひとり静かに酒を飲みました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-12-16 00:40:40) |
695. ゲティ家の身代金
《ネタバレ》 面白い!話もだれずに、最後まで見せる。 リドリースコットは、巧すぎて、作家性が見えにくくなるほどだ。 引っかかるとこがなく、何がリドリースコットらしさか、見えにくい。 クリストファープラマーがいい。 他の俳優が考えられないくらい、はまり役だった。 でもケビンスペイシーの方がリドリースコットらしさが出たかもしれない。 最後、あれほど大事にしてたお金が慈善事業にまわったというオチは少し笑える。 [DVD(字幕)] 8点(2018-12-15 15:53:31)(良:1票) |
696. トレイン・ミッション
《ネタバレ》 コレットセラ監督は割と好き。 「フライトゲーム」の興奮、再び!?と思い、鑑賞。 リーアムニーソンは娯楽作品に出てて、かなりの確率で面白い映画が多い。 「96時間」も面白かったし、これからも楽しみな俳優。 一時期のハリソンフォードと同じオーラがある。 絶対裏切らないオジサンと言った感じだ。 [DVD(字幕)] 7点(2018-12-09 00:12:29) |
697. ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
《ネタバレ》 面白い!骨太な傑作だ! 最後は自由の国アメリカ万歳で締めくくるから、気持ちがいい! スピルバーグの計算がかなりあるのだろう、これを今、世に出したのは・・ 報道の自由の危機の予感、女性の時代の到来等々。 相変わらずの演出の巧さで、地味な内容の映画を最後まで引っ張ってくる。 彼の映画で言えば「リンカーン」に近い。 自分にとってスピルバーグの楽しみは演出の巧さである。 個々の部屋での電話会談、機密登場の緊迫場面でレモンを売る娘、「ニクソン」側の役員への印象づけ、 各人各人のセリフの面白さ・・ 最初はちょっと難しいよ、スピルバーグさんと思って観ていた。 字幕のセリフを読んでるうちに、広い新聞社のオフィスの空気で眠くなってしまった。 これは前も経験したなぁ・・ あぁそうだ。「大統領の陰謀」や「ネットワーク」(これはTV局だけど)でもそうだった。 とにかくマスコミの方々の説明口調は映画と相性悪い。 でもそれを最後まで引っ張るスピルバーグ御大の演出には、職人の味がある。 [DVD(字幕)] 8点(2018-12-07 22:33:52) |
698. エンドレス・ポエトリー
《ネタバレ》 自伝的映画「リアリティのダンス」に次ぐ続編である。 前作が家族のことを強く描いてたのに対し、本作ではホドロフスキーの女性関係が描かれている。 まぁ許される(?)クズであったということか・・ ホドロフスキーのキーワードは、厳しい父親、サーカス、小人などである。 「サンタサングレ」も自伝的要素が強い。 「エルトポ」「ホーリーマウンテン」あたりが彼のぶっちぎり世界観を楽しめる。 若きホドロフスキーにとって、アート(この映画では詩)が癒しだったのだ。 ラスト、旅立った先の業界が、映画界やバンドデシネだったということだろう。 リアルタイムで、映画を通して、彼という彷徨える詩人の旅に付きあえれたことは幸運だった。 どの作品も見応えがあって面白かった。 ご苦労様というしかない。 [DVD(字幕)] 9点(2018-12-07 01:13:36) |
699. 気狂いピエロ
《ネタバレ》 さてゴダールものである。 以前「右側に気をつけろ」を観て、さっぱり意味が分からなかったので、 今回は理論武装して、挑んだ。 当時の映画のあり方に批判的、実験的に模索していたのがヌーベルバーグである。 ゴダールの本作は、その代表ともいえる作品で、実験的かつ政治的メッセージをこめた代表作である。 今では、政治的メッセージを込めた実験映画は、数多く創られていて、youtubeなどでも散見される。 本作では、男女の会話で、それらしきことがほのめかされるだけだが、当時は衝撃的だった。 ストーリーはまったくない?(原作があるみたいだけど・・) ただ当時のアメリカのベトナム戦争や、世界を変えつつあった消費文化を 風刺しつつ、シネマスコープのスタイリッシュな映像で男女の逃避行が描かれる。 (男女の逃避行と言えば、「俺たちに明日はない」だが、この作品の2年後である) 筋を追って、観ていたら、何が何だがさっぱり分からなくなってしまうとこだろう。 「勝手にしやがれ」はまだ映画として成立していたが・・ まったく「ゴダールには気をつけろ」だ(笑) ※「ゴダールに気をつけろ」という映画本がありますね。図書館ででも見てみようっと。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-12-06 17:01:40) |
700. 評決のとき
《ネタバレ》 法廷ものの傑作をうみだすジョングリシャムの処女作の映画化。 メガホンを取るのは、「依頼人」の監督。 というわけでグリシャム原作なので、法廷ものである。 ラストの弁論で、不利な判決がひっくりかえるのは、ルメットの名作「評決」と同じ。 そういえば、タイトルも似てる(笑) 観てて思ったのは、アメリカという国は判例法主義なので、裁判に勝てば、法が時代に追いつく。 でもそのためには、多くの代償を伴うということ。 この映画では関係者が襲われたり、当の弁護士の家が放火されたり・・ それでもアメリカ人は騎兵隊のごとく、時代にぶつかって、国を前に進めていく。 異論もあろうが、やはりアメリカは、最前線の国だ。 振り返って日本を見れば、どうだろう・・ 原発一つとっても、中々状況は先には進まない国なんですよね・・トホホ [ビデオ(字幕)] 7点(2018-12-04 01:41:37) |