841. ファイティング・ダディ 怒りの除雪車
《ネタバレ》 まさかこんなゴリゴリの北欧映画(?)に、こんなタランティーノな作品があるとは思わなかった。一人息子に関する復讐という重いテーマなはずなのに、さくさく進む。旬を過ぎた(←作中で)登場人物はあっけなく退場。これ、作中の殺し屋とかよりも、制作者の方がよっぽど冷酷で容赦ないぞ。一方で節々に挟まれるどうでもいい会話。人質の子供とかはもうちょっと使いようがあったんじゃないかという気もするが、そのあっさり風味がむしろこの作品には適合しているとも思いました。 [DVD(字幕)] 6点(2021-12-14 00:29:37) |
842. アントマン
《ネタバレ》 すでに指摘されていますが・・・ミクロ化して、何というか、どんなせこい手で戦うのかと思っていたら(耳の穴から潜り込むとか、首筋をチクチク噛むとか)、やはりヒーローにそんなことはありませんでした。まず、蟻軍団を率いて巨象(に相当する敵)を倒す。それに至るまで、武闘トレーニングだけではなく、「蟻と意思疎通をして動かす訓練」を入れるのが細かいです(私はこのシーンで「ゴースト」を思い出しました)。バトル場面では体の最大化と最小化アクションも加わりますので、二度美味しい迫力もあります。スーパーヒーロー揃いのシリーズの中ではそれでもやはり全体として地味なんだけど、こういう作品も堂々と作れてしまうところにシリーズの奥の深さを感じます。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-12-06 22:41:08) |
843. フラッシュ・ゴードン
《ネタバレ》 ダッダッダッダッダッダッダッダッフラッシュ!ア~、のテーマ曲さえ聴ければいいと思っていたのです。中身にはまったく期待していませんでした。はたして、セットから衣装から筋書きから、B級道を、いや下手するとC級道を突き進んでいます。ところが意外なことに最後まで楽しめてしまったのです。勝因はまず、敵の異常な強さと悪さです。悪の皇帝ミンは、変に人情味を見せたり弱点があったりはしません。全宇宙最強にして冷酷です。いくら描写がB級であっても、その視座にブレがないため、まるでヤプールに対抗するウルトラマンAのごとく、見る側は全力で応援しなければならないのです。そして、相手は最強なのですから、戦法としても、「宇宙船を奪ってそのまま体当たり突撃する」しかありません。一本の筋が通っています。また、プリンセスがいきなり味方になるのですが、それも、「冷酷な父に育てられたが娘はまともで良心的だった」とかいう無理のある設定ではなく、単に男漁りを広げた結果主人公に行き着くのです。素晴らしい持って行き方です。また、何の武器も技術もないくせに「諦めるな!団結するんだ!」だけで地球を救ってしまう主人公の設定のいい加減さも、なかなかいい感じです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-12-05 01:02:03) |
844. 女囚701号 さそり
《ネタバレ》 まあこれはもう、皆様が書かれているとおり、普通に考えれば破綻しまくりなのを、梶芽衣子のオーラと目力で全部突破しています。主人公はひたすら理不尽な目に遭わされ続けるのですが、ごく一部のシーン以外、さしたる反撃も許されずただじっと耐えているだけなのも凄い。精神的拷問として有名な「掘った穴を埋めさせる」を堂々と大真面目に撮っているのも凄い。妙に実験的な撮影(回転カメラとか舞台図式とか)も見ている間は邪魔だったのですが、終わってみればそれもインパクトの一部として機能している不思議。 [DVD(邦画)] 6点(2021-10-22 01:27:24) |
845. 緋牡丹博徒 お竜参上
《ネタバレ》 何かこう、あれこれ放り込んだ割には、全体がごちゃごちゃして未整理なままラストまで行ってしまった感じ。せっかくの文太さんも、こういう堅気ベースの役ではどうも消化不良気味。山城新伍は冒頭のスリ演技はなかなかだが、その後に持って行きようがなくなっている。それにラストは、権利証を取り戻した時点でその場で成敗して終わり、で何の問題もないでしょ。その後にくっつけてしまったのがかえって蛇足になっています。●あと、浅草というある種紳士淑女の街も、このシリーズの作品世界に合ってない気もします。●などと言いながらも、3作目のお君ちゃんとの再会というビッグなネタとか(成長早すぎだろという突っ込みはなしで)、その再会では7分間定点長回しをしれっと放り込んできたりとか、そしてやっぱりぞくぞくする花札対決シーンとか、とにかくやっぱり、このお竜ワールドにはうっとりしてしまうのです。 [DVD(邦画)] 6点(2021-10-20 01:28:19) |
846. 緋牡丹博徒 鉄火場列伝
《ネタバレ》 いやー、これはまず、鶴田浩二と待田京介のキャストは逆でしょう!前後の見境なく単身で突っ込んでしまう三次はやっぱり京介さんだし、堅気と任侠の間でハムレットのごとく逡巡する幸平は、鶴田浩二で見たかった。そういえば、幸平の最後の処理も、えらく中途半端だったな。●そして、丹波哲郎の関西弁は、絶望的なほど似合っていない(笑)。加えて、現場に出てあれこれする丹波さんも似合っていない。この人はやっぱり、大座敷の奥にでーんと構えているのでないと。●と、何だかんだ突っ込みを入れつつ、細やかな美術関係、任侠モノならではの台詞回し、そしてお竜姐さんの美しさにじっくり浸れる110分は、やっぱり至福なのであります。 [DVD(邦画)] 6点(2021-10-19 01:51:46) |
847. アイアンマン3
《ネタバレ》 とりあえず三部作ファイナルとしての気合は入っていて、見ている間は十分楽しめました。●とはいえそれだけに逆にキズも気になって。ベンキンの悪役というキャスティングには唸ってしまったし、実際前半は強烈なインパクトだったのですが、中盤で裏返して、結局それだけ?(私はさらに「あの裏返しこそが実は芝居だった」になるかと思っていたのですが)レベッカ・ホールの退場が早くてもったいない。敵軍団の具体的な性能とか生態が不明(何か触ると熱そう、くらいしか分からない)。ウォーマシーンの装備状態の出番ももう少し欲しかった。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-10-14 01:02:37) |
848. ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気
《ネタバレ》 ジュリアン・ムーアとエレン・ペイジという贅沢な取り合わせならば、同性愛という設定に依存しないドラマが展開される・・・と期待したのですが、そうでもありませんでした。特に、エレン・ペイジの見せ場はほとんどないし、整備工という立場でありながら、その整備工としての「日常」がほとんど描かれていないのは痛い。●その一方で、中盤はほとんどマイケル・シャノンが主人公みたいになってしまっているが、それならばむしろ、マイケル視点で全部やってしまった方がよかったのでは?●ただし、同性カップルに特定の権利を認めることが、例えば同性婚の推進とイコールではない(というかむしろ主人公2人が利用されている)という描写は、なかなか興味深いし、奥が深い。撮影の場面でも、ローレルは最後まで同性婚推進とは言わなかった。そうすると、最後の字幕は少し違うような気がするし、むしろこの映画自体が、あの活動家のリーダーと同じことをしているのでは・・・と思わなくもない。 [DVD(字幕)] 6点(2021-10-04 01:54:46) |
849. 待ち伏せ
《ネタバレ》 この四大スター(+ルリちゃん)集結の絵面というのはやっぱり凄い。その各人物がそれぞれに思惑を秘め、それがどってことない茶屋の中で衝突しうねっていく脚本の面白さもなかなか。●なんだけど、最後はちょっとグダグダでした。まず、あのひねりらしきものはいらんでしょ。それから、錦ちゃんはこんなひどい役なんだったら、どこかで変化が起こって格好良くなると思っていたら、何と最後までそのまんまでした。つまり、錦ちゃんが何かのきっかけで覚醒するなり何なりして勝新に逆襲して成敗する、とかだったら全部素直に収まったのですけどね。あ、裕ちゃんも終盤はほったらかしだった・・・。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-10-02 01:29:14) |
850. 緋牡丹博徒 一宿一飯
《ネタバレ》 お竜様を美しく撮ろうという点に関しては一貫しており、そこだけで十分に価値があります。凜とした正面アップの連打もいいけど、実は一番ぞくっとしたのは、賭場の仕切りでの背筋の伸びた座り姿。●一方で、演出はどうも今ひとつで・・・とにかく敵の陰湿ぶりに気合が入っており、主人公側がほとんどやられ放題になっている。ラスト10分のオーソドックスな殴り込みだけで逆転というのはちょっと無理があります(あそこまで敵の描写が行ってるのだったら、制裁で製糸工場を全焼くらいはしてほしかった)。中盤の「自分の身を掛けた丁半勝負」は反撃ポイントなのですが、相手の賭博師(白木万里!主水の奥さん!)と後で和解みたいな感じになるので、パワーが弱まっている。山城新伍のコメディパートは浮きまくっている上に、なぜかしれっと最後は殴り込みの側近みたいになっている。西村晃の「男でなくなった」という設定は重すぎ(の割に生かされていない)。文太の使われ方も中途半端。 [DVD(邦画)] 6点(2021-09-23 00:45:50) |
851. キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
《ネタバレ》 戦中の話がプロローグで、そこから現在に飛んでくるのかと思ったら、何と全体が戦中の話でした。とりあえず、いざキャプテンが覚醒してからは、どこまでも盾アクション全開で、その部分は大いに楽しめます。●一方で、この作品の最大の弱点は、敵が弱すぎること。そもそも、変身後のレッドスカルって、あの「自称・宇宙の帝王」バド星人にしか見えないので、見ていて笑いしか出てきません。というか、元のヒューゴ・ウィービングの顔の方がずっと怖いぞ。それに、あれだけの工場を遠隔操作で瞬時に自爆できる技術があるんだったら、その分、敵を見破ったり撃退したりする方に使ったらいいのに・・・。●と思っていて再見して(というかシリーズを見渡して)気づいたんですけど、この作品は、敵をやっつけるのはむしろオマケであって、スティーブとペギーのラブロマンスに注目するのが正解だったんですね。その角度から見ると輝いてくるので+1点。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-09-18 01:02:07)(良:1票) |
852. AMY エイミー
《ネタバレ》 早世したスターの映像関係は必然的に元の母数が少ないわけで、その意味からしても貴重。と言いたいが、前半は、もしかしたらスマホで撮っているかもしれないような、アングルも何も考えられていない日常映像の断片が続く。そしていつの間にかトップシンガーになっていたような感じで、その過程を忠実に追っているとはいいがたい。終盤には日付その他データ関係もいろいろ入ってきてドキュメンタリーっぽくはなります。その中でも、トニー・ベネットとデュエットしているときの彼女の無邪気な明るさには、何ともいえない気分になります。一方で「あの」ベオグラード公演の実映像がもたらす負のインパクトも強力です。彼女はライブなんかは実は元々嫌で、スタジオで誰の目もなく集中して歌っているときこそが幸福だったのではないでしょうか。判断と管理を誤った周囲の責任は重いです。 [DVD(字幕)] 6点(2021-09-10 00:52:27) |
853. エイミー(1997)
《ネタバレ》 よくまとまってはいますし、周りの人たちの変なキャラもいい感じ(車の修理ばかりしている2人組がツボ)なのですが・・・何かいろいろちぐはぐで、素材を生かし切れていないのです。まず、母親は常時ヒステリックな割に具体的な愛情を感じる場面がなく、少女が喋れなくなったのも4分の1くらいはこの母に原因があるのでは?と思ってしまいます。歌の兄ちゃんや少年はまだしも、頑固お婆ちゃんや変な姉ちゃんと少女が打ち解けている(っぽい)のも経過不明。精神科医や児童福祉局も含めて、登場人物をちょっと詰め込みすぎちゃったのでしょう。最後は追跡サスペンスみたいになって、主題の歌やそれに伴う心理描写がどこかに行ってしまっている。そうそう、少女の歌がやたらプロっぽいのも気になりました。●ただし、最後の多視点解明のトリッキーさはなかなかインパクトあり。そう、年少者の心理に何があるかなんて、大人からは想像もつかないんです。そこに焦点を定めた点には大いに意味があります。 [DVD(字幕)] 6点(2021-09-09 01:02:16) |
854. マイティ・ソー
《ネタバレ》 い、いかん。こんな強引なだけのどうみても底の浅い作品を、そこそこ楽しめてしまったとは・・・。●いや、突っ込みどころは満載なのです。そもそも何で監督がケネス・ブラナーなのかから始まって(それならそれで、少なくともアスガルドの部分はもっと仰々しい台詞回しで決めまくればいいのに)、ナタリー・ポートマンはやっぱりこういうオーソドックスヒロインには合わないとか、デストロイヤーとの戦いはまあまあだけどその後のロキと氷の巨人がオマケレベルだとか、みんな書いてるけどソーの友人軍団弱すぎだろとか。●それでもそれなりに楽しめてしまった要因は、やっぱりクリス・ヘムズワースの存在なんでしょうね。それまでほぼキャリアはなかったのに、いきなりこの主役に抜擢されてスター街道へ。もともと神の国の王子という設定なので、人間との間で突っ込んだ芝居をする必要はないし、したがって演技力のアラも目立たない(あっ)。かえって、何か人ならざる雰囲気を醸し出し、雷神復活シーンのインパクトを高めている。この作品に彼が選ばれたのは、彼にとっても作品にとっても幸運でした。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-09-02 00:41:03) |
855. 我等の生涯の最良の年
《ネタバレ》 この設定でどうやって3時間も続けるんだろうと思っていたら、とりあえず3人が復員して家に着いて、その日の一夜の出来事、というだけで1時間も投入する大胆な構成に唖然。しかもそれでダレるわけでもなく、ごく自然に展開している。その後も、「その翌朝から、そして3人はそれぞれこういう立場に落ち着きました」だけでさらに1時間。その中で、変に登場人物を増やすわけでもなく、わかりやすい事件が起こるわけでもない。地道な丁寧さの積み重ねでここまでの内容が作れるという点で、今日においても参照されるべき作品です。●ところでこの原題、台詞ではマリーがフレッドと喧嘩するところで出てくるんですね(そこではmy lifeですが)。しかも「私はそれを貴方に捧げて失ってしまった」というネガティブな文脈です。これに何か意図があるのか、考えてしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-19 00:56:01) |
856. アイアンマン
やっぱり、シリーズ第一作のヒーロー誕生秘話となると、どうしても前置きの長さは避けられないのだな。ただ、この作品の場合、その背景に関して、武器商売がどうのこうのとか中東紛争がどうのこうのという妙に生々しい内容が続いているので、さらにバランスがおかしなことになっている。●ただしこの作品に関しては、主演にロバート・ダウニー・Jrを持ってきたという偉業については、力強く讃えたい。当時はすでにすっかり影が薄くなっていた、しかもその時点で40代のオッサンをこのヒーローにキャスティングするという英断がなければ、その後のMCUシリーズの発展もなかっただろう。実際、彼は滅茶苦茶楽しそうに芝居をしている。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-08-14 01:48:32)(良:1票) |
857. フェスティバル・エクスプレス
《ネタバレ》 最初の方でいきなり、「音楽イベントにはタダで入れて当然」と押しかける群衆の民度の低さに唖然。そういう裏事情が先に見えてしまうと、その後のツアーの進行にもあまりのめり込めなくなる。あとは、列車内風景そのままと各現地のライブがさしたる解説もなく交互に出てくる感じなのですが、そんな中でも、オフステージでは無邪気に笑い、ステージでは全身で絶唱するジャニスには、その後の彼女がたどった運命を考えると、何とも言えない気持ちになる。 [DVD(字幕)] 6点(2021-08-07 00:39:44) |
858. ワンダー 君は太陽
《ネタバレ》 途中からの多視点風味・・・姉や姉の友人、そして主人公の級友からの視点を入れていく構成はなかなか面白い。主人公はテーマであると同時に媒介でもあって、全体が一つの表現対象なのです、という制作意欲も感じさせる。が、それらが統合されて止揚していくものと思いきや、後半はそれがどこいった状態になってしまい、無難な着地に落ち着いている。というわけで、何となく物足りなさが残りました。なお演技面では、主人公以上に、級友ジャックの芝居が素晴らしい(誰かに似ていると思ったら、「ラブ・アクチュアリー」のサムことトーマス・サングスター君ですね。年代は15年ほど違いますが)。●エンディングで、タイトルトラックがナタリー・マーチャントのあの曲だったことにびっくり。というか、作品自体にこの曲との縁もあったのですね。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-08-02 01:17:59) |
859. さあ帰ろう、ペダルをこいで
《ネタバレ》 祖父と孫とが旅を続ける間にいろいろあって変化が・・・というのはよくあるパターンだよなあ、と思いながら見始めたのだが、ちょっと違っていた。記憶を失う前の「元の生活」の部分が丁寧で、亡命前も亡命後も、圧政の理不尽さと生活上の窮迫感がきちんと押さえられている。ところがその部分の出来が良すぎるため、肝心の自転車の旅が全然映えないのだ。走っている以外に特に何かがあるわけでもないし、ダンスのお姉ちゃんとの出会いはいかにも付け足しだし。それよりも最後のバックギャモン勝負が全部を持って行ってしまったというのは、やはり問題だと思う。ただ、途中ですっと祖父が消えてしまう点だけはなかなかトリッキーだった。 [DVD(字幕)] 6点(2021-07-26 01:24:44) |
860. 家へ帰ろう
《ネタバレ》 設定だけでも十分なドラマの重さを感じさせるので、素直に作ればつまらない作品にはならないのだが、それでもちょっとコンパクトにまとまりすぎというか、エピソードを連ねただけ感は否めない。3人のキーパーソンがいずれも性格良さそうな美女(1人目はちょっとクセありましたが)というのも、何か逃げちゃってると思う。逆に、娘との再会こそ、短時間でももっと何か膨らませられなかったのだろうか。年代的にどう見ても合ってないのも気になった。 [DVD(字幕)] 6点(2021-07-23 23:59:48) |