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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2452
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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901.  スティーヴン・キング/痩せゆく男 《ネタバレ》 
よくある“ジプシーの呪い”もので、やはりどうしてもサム・ライミの『スペル』を思い出してしまいますけど、『スペル』のようなぶっ飛んだところがない分だけ微妙な感じがします。呪いをかける方もかけられる方も“みんな悪人”状態ですけど、お話しが進むにつれてどうしてもジョー・マンテーニャが演じるマフィアの親分に感情移入しちゃいますね。だってこの親分、義理を大事にするしほんとムダにカッコよいじゃないですか。この人以外の登場人物たちは、良くも悪くもキャラがブレブレ気味だから余計に目立っちゃいます。ジプシーの106歳の頭目にしたって最後の方になるとだんだん心持がぶれてきて、悪徳弁護士の呪いを解いてやるし「死ぬときは心を清くしておけ」なんて宗教家みたいなことまで宣います。特殊メイクにはけっこう力が入っていて、各人の死にざまはけっこうグロいですね。どんどん痩せてゆく主人公も映画の中盤の80キロ前後の体型がこの俳優の本来の姿なんでしょうけど、同じ映画の中で超デブからほとんど骨と皮だけまで特殊メイクを使って演じるってのは、けっこう珍しいんじゃないでしょう。どうせならトコトン痩せて死ぬまで観せてくれた方が面白かったかも。 観終わってとにかく「?」だったのはあのイチゴのパイで、なんで娘は食べても何ともなかったんでしょうか?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-06-20 22:25:36)
902.  穴(1957) 《ネタバレ》 
以前のレビュアーの方もおっしゃてるように、私も市川崑は”日本のビリー・ワイルダー“だったんだなと再認識させられました。コメディと言っても、邦画界でこれだけセリフ過剰な映画を上手くコントロールできる監督は稀有な存在でしょう。そしてあの京マチ子がこんなに早口なセリフのオンパレードでコメデイ演技を易々とこなせるとは全く想像を超えていました。彼女を観ていると、『ワン・ツー・スリー/ラブハント作戦』のジェームズ・キャグニ―を思い出してしまいました、そういえばこれも監督はビリー・ワイルダーでしたね。 ミステリーと言ってもこういう緩いお話しなので重箱の隅をほじくるような観方をしてもしょうがないです、でもミステリーとしても良く考え込まれた脚本だと思います。ラストの船越英二の飛び込みはちょっとシュールさすら感じる唐突ぶりですけど、そのために窓に空いた大穴の周りで、死ななかった登場人物たち全員がカーテンコール宜しく勝手なことを言い合っているところなんぞ、市川崑らしいブラックな幕切れだと感じました。 でもいちばん訳が判らなかったのは、石原慎太郎の無意味としか言いようがない出演でしょうね。もう調子に乗ってど下手な歌まで披露しちゃうんだから…
[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-06-16 23:23:15)
903.  ときめきサイエンス
いやはや、こんな中坊の妄想そのものみたいなお話しを大の大人が真面目に映画にしちゃうなんて、ジョン・ヒューズはやはり天才だったんでしょうかね?これはフランケンシュタインのパロディと言うよりも、セクシー姐ちゃんバージョンのドラえもんと呼んだ方がしっくりくるんじゃないでしょうか。 徹頭徹尾バカバカしいストーリーですけど、サウンドトラックだけはムダに豪華なんです。冒頭の暴走し始めるPCの画面には、なぜかデヴィッド・リー・ロスがチラリと登場します。そしてショッピング・モールのシークエンスで流れる“プリティ・ウーマン”は、なんとヴァン・ヘイレンのカヴァーなんです。おまけにこの映画のテーマソングは、ミュージシャン時代のダニー・エルフマンが組んでたバンドがパフォーマンスをしてるんです。 やはりジョン・ヒューズのティーン・ムーヴィーには、アンソニー・マイケル・ホールが欠かせませんね(もちろん女優ではモリ―・リングウォルドも)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-06-13 22:54:43)
904.  人類創世 《ネタバレ》 
その発想は、ちょっと他に類を見ないような珍作、「こういう映画を撮ってみたい」と妄想した映画作家は多々いたかもしれませんが、それを実現させるのはある意味で偉業です。 登場する原人は、まるっきり猿人風からネアンデルタール人的な風貌、そしてどう見てもアマゾンの原住民にしか見えないのまで、多種多様です。IMDBで調べると、実はこの映画に登場する原人たちにはみんな名前があり、種族名までちゃんとついていることを知って驚きました。ちょっと首を傾げたくなるところですけど、演出上はやはりそういう配慮が必要だったんでしょうかね。現在の研究では、ホモ・サピエンス以外の人類も同時期に地球上には存在していたことが判明しています。そういうことを考えると、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が共存している世界は自然なのかもしれません。そして容姿から考えると、ロン・パールマンたちが演じているがネアンデルタール人で、アマゾン原住民風の種族がホモ・サピエンスだと解釈するのが妥当な気がします。ということは、この映画は実はネアンデルタール人を主人公にした稀有な作品なわけです。 当たり前ですけど、誰も見たことがないし証拠もないのでこの映画の世界がリアルなのかは判りませんが、説得力がある映像なのは確かです。そしてホモ・サピエンス風の種族の進化の度合いは、他の種族に較べるとSF映画の高度な文明を持ったエイリアンと地球人ぐらいの差があります。 ラストにはこの異なる種族が交接して互いに夜空に輝くお月様を眺めるわけですが、そこにはやがて滅亡してしまう運命のネアンデルタール人の悲哀が感じられたりします。現在の人類の核遺伝子には、ネアンデルタール人特有の遺伝子が4%前後混入しているそうです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-09 22:28:32)
905.  動物と子供たちの詩 《ネタバレ》 
まず語っておきたいのは、オスカー歌曲賞にノミネートされたカーペンターズが歌う主題歌です。意外にもカーペンターズの歌曲がテーマソングに使われたのは、この映画だけなんです。『ふたりの誓い』もあるんじゃね?って思う人もいるかもしれませんが、あの有名な曲は確かにオスカー受賞してますけど、カーペンターズは映画公開後にカヴァーして大ヒットを飛ばしたんですね。本作で歌われた『動物と子供たちの詩』は、シンプルなメロディーラインなんですけどカレンの澄み切った歌声とのコラボレーションが絶妙で、カーペンターズの隠れた名曲だと言えます。 この映画はアメリカ特有の “サマーキャンプもの”に属しますけど、名匠スタンリー・クレイマーが撮るようなジャンルでもなかろう思いましたが、単純なジュブナイル映画とは一線を画す佳作だと思います。このサマーキャンプがまるで戸塚ヨットスクールの米国版みたいなところで、そこの最劣等班の六人の少年が主人公です。少年たちの親は裕福だけど家庭環境や育ちに難がある問題児たちで、牧場のバッファローがハンターたちに娯楽で射殺される光景を観てバッファローを逃がすためにキャンプを脱走します。ここで考えさせられるのは、この映画のプロットは一貫して少年たちの視点で展開するところです。日本でもニホンカモシカが増えすぎて個体調整のために駆除されることがたまにありますよね、ひょっとしたらこの映画でのバッファロー狩りも、そういう意図があるのかもしれません。でも少年たちはバッファローに不遇な自分たちを重ね合わせてしまい、悲劇的な結末まで暴走してしまうんです。大人たちの理屈も「バッファローは役に立たないから殺しても構わない」というかなり乱暴ですけど、この理屈を裏返すと「クジラやイルカは可愛いし知能が高そうだから、狩ってはいけない、食べてはいけない」という欧米人の身勝手な論理になるわけです。 プロット的には『スタンド・バイ・ミ―』が似ているとも言えますが、感傷的な演出を極力排して冷徹な視線で子供の世界を描いている分、本作の方が格段うえだなと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-08 22:55:43)
906.  ミニー&モスコウィッツ 《ネタバレ》 
メンヘラ気味の中年女と、ニーチェみたいな髭を蓄えているくせにがさつで向上心のない男が出会って4日で結婚式を挙げるというお話しですけど、これほど暑苦しいボーイ・ミーツ・ガール映画があったとは、まったくもう… 監督しているのがあのジョン・カサヴェテスですから、たぶん本作も彼お得意の即興演出で撮ったんじゃないかと思います。彼の即興演出は観ててほんと疲れるんですよ、そこに来てこんな重いんだか軽いんだか判別としないストーリーとなるとくたくたにされます。ジーナ・ローランズに絡むシーモア・カッセルがまたウザいことと言ったらもう、レストランではもっと静かに喋れよ、って怒鳴りつけたくなります。彼が運転する愛車のボロトラックが、なぜか普通の道路で必ずUターンするのが観ていて鬱陶しい。でもラスト近くのミニーとモスコウィッツがそれぞれの母親を呼んで会食するところだけは可笑しかった。モスコウィッツの母ちゃんがまた声がでかくがさつなんですよね、これは完全に息子に遺伝してます。そして息子もミニーの母親に「将来の生活設計はどうなってるの?」と訊かれて「もちろん大会社に勤めます、大企業の駐車場係りの方が安定してますから」、こりゃどうしようないわ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-06-03 23:07:44)(良:1票)
907.  ビバリーヒルズ・コップ 《ネタバレ》 
エディー・マーフィーと言えばアクセル・フォーリー刑事、ハリウッド俳優の中でもこれほど自身の個性にピッタリの当たり役を得た人は他にいないんじゃないでしょうか。あまりにインパクトが強すぎて、彼はその後のキャリアで苦労することになるんですけど、それはまた別のお話し。なんでこのお話がこんなにウケたのかって考えると、デトロイトとビバリーヒルズという同じアメリカの大都会でありながらも天と地ほども違う国内格差を巧みに盛り込んだ脚本プロットに、そのカギがあったように思います。特に80年代は、凋落が始まったデトロイトとバブル景気に沸くLAを対比するという視点が、新鮮だったと思います。でも製作者たちも、まさかデトロイトが現在の様な悲惨な状況にまで追い込まれるとは予想以上だったでしょう。 とにかくこのシリーズは、マーフィーのマシンガントークを愉しむのが正解で、英語のヒアリングができなくてもその可笑しさが伝わるんですから大したものです。マーフィーを囲む面々もみんな生き生きとキャラが立っていて、悪役キャラが多いロニ―・コックスも上司と現場の板挟みで苦労する真面目な中間管理職を好演してます。ちなみにデトロイトのフォーリーの上司トッド警部を演じている人は、実は現職のデトロイトの警察官でロケハンでスカウトされたんだそうです。 そしてなんといっても素晴らしいのは音楽センスで、イーグルスのグレン・フライが参加しているという贅沢さ!“フォーリーのテーマ”なんかは耳にしたことがない人は珍しいぐらいで、私は“エディ・マーフィのテーマ”とひそかに名付けています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-31 23:09:42)
908.  エル・マリアッチ 《ネタバレ》 
これが製作費7000ドルで撮られた映画だと聞かされれば確かに驚かされますけど、やっぱ7000ドルだよな、と納得する部分も多々見られることも否めないですね。“メキシコのマシュー・ブロデリック”といった風貌のカルロス・ガラルドーを筆頭に安いか素人の俳優を使っているのは当然の帰結としても、撮影テクニックにしても素人臭さが濃厚でもあります。ですけど、後年のビッグ・バジェット(もちろんこの第一作と比較してですけど)を与えられるようになってからのロバート・ロドリゲスのやり過ぎ作風からすると、自分としてはこの素朴な第一作目のほうがストーリーテリングのバランスが良くてけっこういい線行ってるんじゃないかと感じます。お話しの方も、狙った結果なのかはともかくとして、けっこう緩いと言うかユーモラスですね。狙う相手がただ「黒い服を着たギターケースを持ち歩く男」としか聞かされずに人違いする手下どもあれですけど、ボスだってちゃんと顔写真ぐらい部下に配っておけよ! 考えてみれば、7000ドルで撮った映画なら公開さえできれば損するはずがないですよね、これで実際204万ドル稼いだんだから、出演俳優のギャラなんて余裕で後払いできたんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-05-30 22:50:55)
909.  スピーシーズ/種の起源 《ネタバレ》 
便乗作も含めると確認されるだけで4作も撮られたんだから、企画というかアイデアとしては大成功だったんでしょうね。もっとも二作目以降はキャストもスタッフも完全にB級以下になってしまいましたけどね。 監督が職人ロジャー・ドナルドソンで、二人もオスカー俳優を投入してるってところは、お話しの内容はともかくとしても、製作体制はB級じゃなかったと言えます。特に自分はシルが逃げ出すところまでが好きです。ガスが充満してゆくのを見つめるベン・キングスレーの表情が素晴らしい、さすが名優です。少女シルも、まだ無名の存在だったとはいえミシェル・ウィリアムスですからねえ。 でもその後がけっこうボロ出しまくりな脚本なんですよ。マイケル・マドセンたちはバイオハザード・リスクのことを聞かされずに隔離室に入って行かされてあわや焼き殺されるところだったのに、その後も何もなかった様にベン・キングスレーと接するなんて、ちょっと考えられないと思いますけど…確かにベン・キングスレーのキャラに深みがないのがこの映画の脚本の欠点じゃないでしょうか。 でもね、TVで放映しているとついついラストまで観ちゃうんですよね。ナターシャ・ヘンストリッジのナイスバディにプラス一点ということで。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-05-29 23:18:12)
910.  羊たちの沈黙 《ネタバレ》 
ヒッチコックの『サイコ』を完全に無視したハリウッドが遂に降参してオスカーを与えた、サイコ・キラー映画の完成形。このジャンルでは無数のフォロワーが挑戦を重ねているけど、いまだに本作を凌駕する作品は現れていません。またこのお話はクラリスとレクター博士の異常なラブストーリーで、上司のクロフォードを交えた三角関係の物語でもあります。 ジョディ・フォスターにとってもこの映画に出演してレクター博士と向き合うことは過酷な体験だったそうで、続編の『ハンニバル』には降板してしまいました。そうなると、映画史上もっとも印象に残るサイコ・キラーを演じながら、続編でも脳みそを嬉々として喰っちゃうアンソニー・ホプキンスの方が役者としての器が大きいのか、はたまたそういう素質を持っている人なんでしょうか。と言いたくなるくらい、レクター博士はまさに“人間エイリアン・モンスター”と呼ぶにふさわしい存在でした。なんせ自分に関わったり通り道にいただけみたいな人でも、クラリス以外は足元にいるアリを踏み潰すみたいに殺しまくるんですから。確かにこれでは本筋のサイコ・キラーのバッファロー・ビルの影が薄くなってしまいます、そしてここがこの映画の微妙なところなんですね。まあビルは単なる狂言回しだと思うしかないです。 監督のジョナサン・デミは言うまでもなくなくロジャー・コーマン一派ですが、この映画では奇をてらわずオーソドックスな撮り方でなかなかの手腕を見せてくれます。そりゃ主役ふたりがあれだけの演技を見せてくれれば、傑作になるってもんですよ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-26 21:15:01)(良:2票)
911.  お葬式 《ネタバレ》 
自分が喪主を務めた経験から閃いて一週間で書いた脚本なんだそうですが、その着想と切り口はさすがというしかなく、この一作によって伊丹十三自身も映画作家としての道を切り拓けたわけです。伊丹映画というと作りこまれたキャラの登場人物が特徴ですけど本作は逆に主人公夫婦が俳優というほかは出演者がみな平凡な一般人という設定です。山崎努もお得意の脂ぎったアクの強いキャラではなく、私生活の雑事からは逃げるタイプの優柔不断な男であるってのが新鮮です。この映画の凄いところは、“お葬式”という自身が葬られることも含めてどんな人間でも一度は体験する儀式を、その平凡な進行の中に潜む“可笑しさ”をまるで神の眼で見ているかのように客観的に描いているところなんです。こういう知的なアプローチのコメディはそれまでの日本映画にはほとんど皆無だったことを考えると、伊丹の才能は驚嘆すべきものがあります。さすがに長い俳優生活を経て映画を知り尽くしていただけあって、随所に見られる映画技巧はこれが初監督作とは信じられないですね。その後はどんどんその技巧に溺れるような作風になってしまったのは残念ですけど。 そして見るたびに感じるんですけど、メンヘラ愛人の高瀬春奈のキャラは果たしてこの映画に必要だったのかな、ということです。確かにあの爆尻と腋毛を見せつけるシーンはもう強烈で、現在ならあのシーンのおかげでR15指定ぐらいにされるのは必定でしょう。でもそこでカットバックを使って宮本信子がブランコで揺れるところを見せるのがまた強烈な印象で、あの横移動する木柱は夫の不倫に気づいている彼女の葛藤を表しているんですけど、それと同時に山崎努が高瀬春奈に行っている行為の暗喩にもなっているんです。伊丹の作品にはたいがい1箇所はエロシーンが入るのが恒例ですけど、どの映画でもハッとさせてくれます。彼自身もそういうのが好きなんでしょうけど、それにしてもこの山崎努と高瀬春奈のシーンは、伊丹の全フィルモグラフィ中でも最高峰のエロなんじゃないでしょうか。
[映画館(邦画)] 8点(2017-05-23 23:26:43)
912.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
ゲイリー・オールドマンがまさかジョージ・スマイリー役に抜擢されるとは夢にも思っていなっかったんですけど、これが実際に演らせてみると実に素晴らしい演技です。ル‣カレのいわゆる“スマイリー五部作”で本格的に映画化されたのは本作が初めてで、そう言えば『寒い国から帰ってきたスパイ』にはチラッとスマイリーが登場していた記憶があります。TV版のアレック・ギネスが今まで最高評価だったみたいですけど、これは残念ながら観たことがありません。 確かに難解とまでは言わなくても非常に判りづらいストーリーであることは確かです。でもこれがル‣カレの原作が持つ雰囲気を見事に再現しているんじゃないでしょうか。彼のスパイ小説は、英国情報部のメンバーたちのバックボーンであるオックス・ブリッジとパブリック・スクールの狭い世界を理解していないと、読み通すのはしんどい作業になります。また派手なアクションはほぼ皆無と言って良く、スマイリーたちも拳銃を手にするシーンはありますが、発砲するわけでもない。ソ連側のスパイ・マスターであるカーラも最後まで画面に姿を見せることもなく、下手にラスボスみたいに暴れさせる安易なストーリーじゃないことにしびれますね。また70年代が時代設定とは言っても、まるで倉庫の中にオフィスがあるようなサーカス(英国情報部)の質素ぶりが英国の落ちぶれぶりが感じられていい雰囲気です。そして観てて判ってくるのがサーカスというか英国エスタブリッシュメント層のホモ率の高さじゃないでしょうか。さすがにスマイリーにはそういう趣味がないみたいな描き方ですけど、彼以外のメンバーはみんな“お友達”なんじゃないかと疑いたくなります。本作では真逆な性癖みたいなキャラになっていますけど、べネディクト・カンバーバッチが演じるピーター・ギラムも原作ではゲイだったと思います。 とても万人にはお薦めできませんが、ル‣カレのファンには必見の映画だと思います。そして世界はゲイリー・オールドマンの価値に気づいていなさ過ぎる!
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-05-20 22:18:17)
913.  インデペンデンス・デイ: リサージェンス 《ネタバレ》 
『ID4』製作20年目にしてまさかの“Resurgence”(再開)、でもキャストの面々を観る限りでは“Reunion”(同窓会)とした方がしっくり来ます(笑)。ギャラで揉めて出演を蹴ったウィル・スミス以外は、ほとんどの主要キャラが20年の歳月を感じさせるディティールを盛り込んで登場します。確か前作ではダンサーかなんかだったウィル・スミスの奥さんは、女優もヴィヴィカ・A・フォックスに変わったけどなぜか女医になっていて驚きの出世です。大統領の娘やヒラー大尉の息子も立派に育ってるし、ジェフ・ゴールドブラムは知らんうちに国連か何かの部長さんに成り上がってるし、それぞれまあ順調な20年だったみたいですね。そして誰もが驚愕するのが、エリア51でエイリアンに人間スピーカーにされたオーキン博士が生きていたというか、死んでなかったということであります。これには演じているブレント・スピナー自身がオファーされていちばん驚いたそうです。20年の昏睡から目覚めたあとはもう大活躍で、スフィアからは人類が未知の知識を授けられるし、もうこの映画の陰の主役は彼だったというしかありません。 という感じのおバカ映画ではありますが、お話の展開は前作とまるっきり一緒だと言い切って構わないでしょう。全世界がエイリアンの攻撃を受けているはずなのに、映像で見せるのはアメリカ以外は中国の上海か香港あたりだけ、月面基地の司令官や準ヒロインの女性パイロットが中国人、これまた最近日増しに露骨になってきたハリウッドの“中国ヨイショ”にはもううんざりです。女王エイリアンがもろ『エイリアン』のクイーン・エイリアンそっくりなのはもう笑うしかないですけど、これがローランド・エメリッヒの限界なんでしょうがないでしょう。 ラストのオーキン博士のセリフで判るように第三作を撮る気は満々みたいですけど、期待は全然していません(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2017-05-15 23:29:19)
914.  ファイナル・デスティネーション 《ネタバレ》 
ホラー映画のアイデアとしては、確かに平成になってからの作品では群を抜いたオリジナリティを持っていることは認めましょう。冒頭の飛行機事故の描写なんかも、恐ろしさでは歴代三位以内に入る墜落映像ですし、乗客の中に赤ん坊や障碍者がいるところをわざわざ観客に見せつける脚本の悪意には嬉しくなってしまいます。主人公の少年の行動を客観的に観れば、そりゃFBI捜査官でなくても生き残ったこいつが頭がおかしくなって連続殺人犯になったと思いますよ。ということで中盤までは不条理サスペンスの色彩まで感じられて良いんですけど、なんど説明されても理解できない死神の論理が出てくると頭を抱えたくなってしまいす。あちらの世界ではどうなのかは存じませんが、人間界ではこういう拘りに捉えられている人のことはパラノイアと呼ぶんですよ(笑)。 その後のシリーズ作ではやりすぎの世界に没入していってしまうんですけど、本作ぐらいの殺され方がちょうど良い(?)かもしれません。女教師の死に方がなんかいちばん悲惨な気がしましたけど、ラストの結局失敗してしまいましたが死神の“スネーク電線攻撃”も冷静に考えるとおバカの極みみたいな映像じゃないですか。のちのシリーズ作では顕著になってゆくんですけど、殺し方に凝りすぎるあまりほとんどコメディみたいになってしまいます。まあそれもこの映画の味なんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-05-10 23:39:15)(良:1票)
915.  スターリングラード(1993) 《ネタバレ》 
“『Uボート』を凌ぐ製作費をかけた戦争大作”と公開当時に喧伝されていましたが、このスターリングラードという題材自体が冷戦が終わってドイツが再統一されてようやく取り組むことができたんじゃないでしょうか。ドイツ人に聞いたことがありますけど、スターリングラード戦は第二次大戦を知らない現代のドイツ人にもトラウマになっている悲劇なんだそうです、第二次大戦ではほかにも悲惨な敗戦があるにも関わらずです。 この完敗劇をひたすら前線のドイツ軍一小隊の目線で描いています。その部隊は酷暑のアフリカ戦線で活躍して休養の後に極寒のスターリングラードに送られるという劇的な設定ですけど、史実ではそんな部隊はありませんでした。でもそれはラストの凍死してゆく兵士の重いセリフにつながるところなので良いフィクションだと思います。徹底的に前線目線の脚本なので戦役全体の動きは観ている方にもさっぱり実感できず、気が付いたら包囲されているという感じですが、それもある意味リアルなんじゃないでしょうか。若きトーマス・クレッチマンが小隊長役で、この後にもたびたび演じることになる育ちが良いけどちょっと気弱なドイツ将校を好演しています。この将校がまた全編で勇猛な活躍などはいっさい見せず、途中からは軍装がボロボロになったうえに部下からもため口を訊かれるようになるのでどこにいるのかも判別不能になってしまいます。 彼らは物語半ばで懲罰部隊おくりとなってしまいますが、防衛戦に成功して原隊に復帰してからラストまでの展開がエピソードを詰め込み過ぎてちょっと緊張感を削いでいる感が強すぎです。とくに悪逆な中隊長の隠れ家でのエピソードなんかは、果たして必要だったんだろうかと思ってしまいます。そこでまたもやドイツ軍に捕まってベッドに縛り付けられた女兵士を一同が発見、「ここは階級順で行きましょう、少尉殿からお先に」という兵士のセリフには苦笑させられました。大真面目なんでしょうけど、こんな状況で軍規を持ち出すところがいかにもドイツ人らしいです。
[ビデオ(字幕)] 6点(2017-05-07 00:29:35)
916.  ダイ・ハード3 《ネタバレ》 
製作陣も三作目を撮るにあたって、傑作だった一作目の監督ジョン・マクティアナンを再起用して気合いを入れ直してきた感があります。相棒をマクレーン刑事につけて90年代流行りのバディ・ムーヴィーに寄せた設定が前二作とは決定的に変えたところです。その相棒にサミュエル・L・ジャクソンを持ってくるところなぞ、気合いが入ってる感じは伝わります。そして悪役にはあのハンス・グルーバーの兄貴が登場です。ここまで頑張っているのは判りますけど、そりゃあ第一作を超えるどころか肩を並べる水準にまで達していないところは、まあ必然だったとしか言いようがないでしょう。第一作はビルの中、第二作は空港の敷地内と限定されている空間でのサスペンスだったのに、それがほぼNY市全域という舞台設定にしてしまったのは、初心を忘れてしまったとしか言いようがありません。現在ではもう不可能でしょうけど、たぶんNY市全面協力だったロケを多用した派手な破壊シーンの迫力は認めますけど、それでは他のアクション映画との差別化はできなくなってしまったわけです。グルーバー兄貴の犯行手口も動機からして弟の二番煎じに過ぎず、観てる方にも容易に見抜かれてしまいます。 実はダイ・ハードのシリーズはこの先は未見なんですけど、残り二作には相当出来が悪いものもあるという噂を聞いておりますし、観続けてゆく気力がちょっと萎えてしまいます。
[CS・衛星(吹替)] 5点(2017-05-04 22:57:50)
917.  猿人ジョー・ヤング 《ネタバレ》 
恥ずかしながら、今までこの映画は怪獣・モンスター映画だとばかり思っていました。てっきりメリアン・C・クーパーが二匹目のドジョウを狙ったキングコングの二番煎じだとね。ところが本作のジョー・ヤング君はただのでかいゴリラそのものでしかなく、もちろん猿人であるわけがありません。ちょっとがっかりしましたが、これがどうして、けっこう面白いんです。レイ・ハリーハウゼンのストップモーション・アニメはキングコング当時よりも格段の進歩を見せており、ジョーとライオンの格闘なんか見事なシーンとなっています。でかいと言ってもしょせんはゴリラなんで街中に出て行ったら警察や軍隊にあっという間に仕留められちゃいますが、そこはナイトクラブの店内という閉ざされた空間で暴れさせるというところは脚本の妙味です。このナイトクラブでの破壊シーンはストップモーション・アニメと実写の合成が見事に決まっていますし、セット自体も大掛かりで迫力満点です。人間ドラマも良く撮れていて、悪役かと思っていた興行主オハラがジョー脱出に大活躍するようになるところなぞ傑作で、製作のジョン・フォードが助監督まで務めている効果が出ている感じがします。 ちょっとジョー君の顔つきがゴリラらしくないところが難点ですが、ラストのアフリカからのムーヴィー・レターのくだりは、なんかほっこりさせられました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-04-30 21:39:17)(良:1票)
918.  ロック・ザ・カスバ! 《ネタバレ》 
いかにもインチキ臭い音楽エージェントが軍の慰問ショーを引き受けて女性シンガーを連れてアフガニスタンに赴きます。もうこのプロット自体はどっかで一度は観たことあるパターンで、お約束通り戦地にビビったシンガーはマネージャーのカネを盗んで遁走してしまいます。このインチキ・マネージャーであるビル・マーレイと女性タレントのゾーイ・デシャネルの絡みのところがまあこの映画でいちばん笑わせてくれるところです。ビル・マーレイが帰国資金を稼ぐために乗った危ない仕事で赴いた奥地の村で、メチャクチャ歌が上手い娘に出会って彼女をアフガンのTVコンテストで優勝させようと奮闘するというのがいわばメイン・ストーリーとなります。 アフガンでタレント・オーディションのTV番組が放送されているってのは意外ですが、このお話が実話をヒントにしているみたいなのでホントのことみたいです。女性の権利がないに等しいアフガニスタンのような国で、人前で素顔をさらして歌唱するということがいかに危険なことかは容易に想像がつきます。“問答無用で殺されちゃうでしょ”と思いますけど、それじゃ映画にならないので一工夫が必要ですけどこの映画の脚本はそこがとてもあっさりし過ぎです。超絶技巧を持った娼婦ケイト・ハドソンや民間軍事会社の傭兵ブルース・ウィリスなどが脇を固めていますが、どちらも精彩を欠く存在でした。だいたい、オーディション番組に挑戦するパシュトゥーン人の女性のキャラがほとんど描かれていない脚本が、この映画の最大の欠点だと感じます。この役を演じている女優はすっごい美人なだけに、もったいないことです。 拳銃やライフルがバンバン撃たれるのに誰も死なない、現代アフガンを舞台にしているにしては珍しい映画だとも言えます。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-04-27 22:28:29)
919.  アナコンダ
この間インドネシアでアナコンダの腹から人間が出てきたとニュースが流れていましたので、思わず観なおしてしまいました。動物パニックというかモンスター・パニックの王道という内容ですけど、CGが発達したおかげで撮ることができた映画だと言えますね。ちゃんとアマゾン、なのかどうかは判りませんが少なくとも南米の熱帯雨林でロケしているところは好感で、はさまれる壮大な自然のカットはやっぱ美しいです。キャストもムダに豪華ですけど、ジェニファー・ロペスやオーウェン・ウィルソンは今じゃこの手の映画には絶対出ないでしょうね、ジョン・ボイドは喜んでオファー受けるかもしれませんが(笑)。そうなんですよ、劇中のセリフにもありましたけど、アナコンダが完全にジョン・ボイドに喰われてしまってるんですよ。オスカー俳優が受賞後のキャリアでここまでの怪演を見せてくれたことがかつてあったでしょうか、たぶんこれからもないでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-04-24 23:18:34)(良:1票)
920.  チャーリー・バブルズ 《ネタバレ》 
チャーリー・バブルズはロンドン在住の若き作家。けっこう売れてて著書は映画化されたり自身でもシナリオを書いたりで有名人、稼ぎも多くてオープントップのロールスロイスを乗り回す生活。二年前に離婚したけど自宅は執事夫婦が切り盛りする豪邸で、なぜか各部屋にモニターカメラが付いていて書斎からすべてを監視できるようになっている。同業者や友人たちからは一目置かれているけど、彼自身はそんな人も羨む境遇にもなぜか馴染めない様子、つまり幸せそうじゃないんだな。そんなチャーリーがレスターに住む別れた女房から息子をサッカーの試合に連れて行けと懇願され、同居しているセクシーな女子大生の秘書と一緒にロールスロイスでレスターへの旅に出る。 英国ニューシネマの輝ける星だったころのアルバート・フィニーが今まで唯一監督した珍品です。もちろん日本未公開、ありとあらゆる映画が載っている(と勝手に自分が思っていた)allcinemaにも登録されていないというからある意味凄い。で、内容はと言いますと、このアルバート・フィニーの演じるチャーリー・バブルスが別れた妻子に会いに行くだけの話で、恐ろしいほど映画的なことは何も起こりません。冒頭で高級レストランで出会った親友とバカをしでかして遊び惚けるところは確かにキャッチ―な撮り方をしているので「おっ」ときますが、あとは基本会話劇みたいな展開です。チャーリーと登場人物たちの他愛もない会話が多いんですけど、このチャーリーが誰に対しても疲れた表情で目を合わさないような感じです。でもなぜかわたくしにはアルバート・フィニーのこの演技には魅了されました。これだけ何もないお話しで共演者も含めて惹きつける演技ができるというのは、フィニーの演出力が非凡であることの証しじゃないでしょうか。なぜか野原に放置されていた熱気球に乗ってチャーリー・バブルスが去ってゆくラストは、いかにもニューシネマらしい終わり方かと思います。 フィニー以外は地味な共演者たちでしたが、なぜかそこにブレイク前のライザ・ミネリがいるところは必見です。彼女にしては珍しいロング・ヘアーで、これもなかなか似合うじゃないかと思ったら、実は設定上はそれはカツラでフィニーとベッドを共にするときは外しちゃってトレードマークのショート・カットに戻ってしまいます。たしかにあれだけ髪が長いと、アレするときに邪魔でしょうがないでしょうけどね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-04-23 23:39:18)
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