921. キートンの蒸気船
《ネタバレ》 チャップリン以外のサイレントを観たのはこれが初めてかも。 キートンをはじめ、登場人物のアクロバティックなコケっぷりが見事。お約束では確実に笑わされるし、オヤジ殿はガンコで意地悪っぽいのにセガレに立派な男になってほしいという気持ちが全面に溢れ出ていて全く憎めない。 後半のハリケーンのシーンは、現代ハリウッド映画を超える迫力と豪快さがあって、目を見張りました。満遍なく笑えた後で、パニックムービーを楽しめて、最後には心も温まるというお得な上質コメディでした。 台詞が聞こえないことは全くハンデになりませんし、逆に想像力をかきたてられますね。キートンの他の作品にも手を出していこうと思います。 [DVD(邦画)] 8点(2009-06-04 12:13:40)(良:1票) |
922. エコーズ
ホラー、サイコスリラーと思いきや、頭のおかしくなったベーコン兄貴がひたすら穴を掘る話。それだけを期待して見れば楽しめたでしょう。 やはり、鬼気迫る演技は天下一品。それに加えて彼の穴掘りを堪能できる、ベーコンマニアにはたまらない一本。 [DVD(字幕)] 4点(2009-06-03 12:03:06) |
923. スター・トレック(2009)
スター・トレックのテレビシリーズはほとんど見たことがないし、馴染みのある顔はあまりいませんでしたが、意味わからん的なところはなかったので、それはそれほど関係なく、楽しめる人には楽しめるようになっているんじゃないでしょうか。 それにしても、ノンストップムービーは決して嫌いじゃないんですが、カメラまでノンストップのなのは困る。一瞬のうちに引いたり寄ったり回りこんだり右から撮ってたと思ったら次の瞬間には左から撮ってたりするので構図も何もあったもんじゃない。そのせいでアクションシーンはわけわかんないし、人がしゃべってるだけのシーンでもそういうことをやられるので集中できない。しかも、ほとんどのシーンでチカチカしてるもんだからとにかく眼が疲れる。(ここら辺に言及してる人がいないってことは、最近の大作って結構こういうの多いんでしょうか? 俺が大作慣れしてないだけ?) ともかく、ド派手の一辺倒でメリハリがなく、ストーリーもシリーズに思い入れがないせいか心に残るようなものでもありませんでした。観る前はB級だと思ってたんですが、スケール感のある大迫力のA級映画でした。あんだけすごい映像なんだからジックリ見せる部分ももっとあってほしかった。 [映画館(字幕)] 5点(2009-06-02 01:07:44) |
924. パプリカ(2006)
他人同士の夢が混じりあい、夢と現実が交差する妄想120%アニメ。夢の世界を使うとなると、一切の制約がなくなってしまうわけで、描き手が描きたいものは全て脈絡なく登場することが許されてしまうと同時に、受け手を置いてけぼりにする可能性が生じてしまう訳です。だからといって、夢の世界を描いてるのにあんまりわかりやすい世界でちじこまってしまってもつまらない。 で、この映画は、暴走具合がわかりやすくて豪快で気持ち良い。無茶苦茶な話ではあるのにシンプルな冒険活劇としても意外と成立していて面白い。この絶妙(もしくは微妙)なバランスはやはり、観る人を選ぶのかな。僕は好きです。 [DVD(邦画)] 8点(2009-05-31 17:04:54)(良:1票) |
925. ホテル・ルワンダ
《ネタバレ》 ルワンダの内戦、虐殺を描いた痛々しい実話。眼を背けたくなるような非道の数々。民衆を巻きこむな! 国内の動乱に他国が介入することは、なかなか難しいし、外側からでは本当の事がわからない。下手な軍事介入は、余計に自体がこじれて泥沼化させることもあったりする。一時無理矢理解決させたところで差別意識が消えなければ、また同じことが繰り返されてしまう。だから自分の国の問題は自分達で解決するのが一番良いとは思うんですが、やはりこんな一方的な虐殺だけは……。 劇中でも描かれていた通り、実話だとわかっていてもこれを観た観客達は「怖いね」と言ってディナーを続けるでしょう。だけども、知ることが全ての第一歩。こういうテーマを取り上げ、観た人を無関心から関心に変えたりする作品は決してなくなってはならない映画のスタイルの一つ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-31 16:56:14) |
926. 座頭市と用心棒
勝新と三船夢の共演といえど、あまり評判のよろしくない本作ですが、それほど悪くなかったです。 ただ、勝プロがこの企画の監督を岡本喜八にしたということは、もっと自由に痛快でバカバカしい娯楽大作を作ってほしかったんじゃないかな、と思いました。 喜八監督らしさはもちろんあり、いい感じの軽さは出てるんですが、崩し方が中途半端で、余計に2人のキャラクターと世界観に違和感を感じてしまった。 主演二人が強烈なのに、更に多数の登場人物を出して入り組んだ話にしたせいで、ちょっ内容としてはかったるくなってしまっていました。 それでも、かなり陰惨なクライマックスには固唾を呑まされてしまった。 期待していたものと違う、という点が大きく低評価に響いている気がするので、座頭市とか用心棒とかの先入観を抜きにすれば、全然悪い作品ではないと思いますよ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-29 23:01:00)(良:2票) |
927. 愛してる、愛してない...(2002)
《ネタバレ》 アメリとは役の質は近いし、それほど時間が経ったわけでもないのに、なんだかマダムっぽくなったオドレイ・トトゥの歪んだ愛情物語。 一つのストーリーを別の視点からみせるという手法は珍しくないが、とにかく展開が早い。ポップに始まった序盤からどんどん雲行きがあやしくなり、ぞくぞくとさせられました。時間を感じさせないよくできた映画で、オドレイの不思議な凄味は見ものです。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-27 10:12:01) |
928. グラン・トリノ
《ネタバレ》 こんなにもスラッとしてて、堂々と立つ老人が他にいるだろうか。 クリントさん演じるウォルト氏は偏屈で頑固なクソジジイながらも、はんぱない哀愁が漂う。しかし、やはり優しい人々には強く出れず、彼のウーッという唸り声に愛嬌を感じ、男同士の会話に粋を感じ、このジイさんかわいいナイスガイじゃないかと、和みムードにニヤニヤ。 しかし、コメディタッチから一変、終盤は現代劇とは思えない西部劇臭が漂う。 怒れ!無敵のガンマン!悪党どもに鉄槌を! と、やはりどこかで予定調和で爽快な西部劇的クライマックスを求めていた僕は、最後にこの映画が現代劇だということを思い知らされてしまったのでした。 若者には未来があり、未来は若者ものだ。俺の時代は終わったと言い残したかのようにして、イーストウッドは永遠になったのでした。合掌。 これで次回作、自分主演の西部劇撮ったりしたら笑うけど。 [映画館(字幕)] 8点(2009-05-26 13:35:51)(良:2票) |
929. ディーバ
80年代映画の宿命か、音楽や演出、ストーリーやキャラクター、映像センス、全てが古臭くて野暮ったい。サスペンスの展開にもなんか緊張感がないし、アルバちゃんの変なドレスは動くたびにガサガサ音がするし。と、センスを酷評してみたが、この評価の高さを見るとセンスがないのは俺なのか…としょんぼり。 [DVD(字幕)] 4点(2009-05-24 11:05:30)(良:1票) |
930. 独立愚連隊西へ
邦画で文句なしに軽快で豪快なアクション娯楽活劇を見たかったらやっぱり喜八映画に限る。前作は観てても観てなくても全く影響がないくらいほぼ別物。佐藤允が主役でガンガン活躍するスタイルではなく、多彩な登場人物が均等に活躍するスタイルとなっておりました。全ての役者さんの顔つきが良いっ。 個人的には前作で佐藤允の立ち回りに惚れこんでいたので、今作はその点が物足りなかったんですが、こちらも十分すぎるほどの粋な快作。 [DVD(邦画)] 8点(2009-05-24 11:03:44) |
931. 8 1/2
いっぱい映画観てる者として、「フェリーニのハチトニブンノイチってのが良いんだよー」(ハッカニブンノイチって読むというのはさっき知りました)とか言いながら良さを語れたら通っぽいなと思ってたので、娯楽映画好きながら挑戦してみました。 しかし、やはり良さがサッパリわかりませんでした。進んでるか進んでないかわからない進行と、感情移入できない人々、モヤモヤとした映像…どこを観て楽しめば良いのかわからなくて、終始眠気との戦い。 こういう映画って歳をとれば良いと思えるようになるのか、その時代を共有した人にしかわからないのか、わからない人には一生わからないものなのか、どうなんでしょうね。 この映画を高評価している方々のレビューの質の高さを見るとなんか悔しい。もっと受け口が広くなりたい。 [ビデオ(字幕)] 4点(2009-05-23 17:41:33) |
932. 近松物語
《ネタバレ》 古典の映画化として全くケチのつけどころのない完璧な世界観と構図。物語は乱暴に言ってしまえば、ただの不倫&逃避行。人の迷惑を顧みず、自分勝手で、人前でもイチャイチャする姿はまったく腹立たしいというか、羨ましいというか…。 恋をしてるやつらってのは全くおめでたいもんだ、と現代の話なら鼻で笑っちゃうようなものですが時代が時代だけに命掛けで大袈裟な話となっているのですね。そんな二人の恋情が屁に思えるほど、親父の海より深い愛情にやられました。 俺なら、お玉ちゃんを選ぶ。 [DVD(邦画)] 7点(2009-05-23 17:38:03)(良:1票) |
933. スラムドッグ$ミリオネア
《ネタバレ》 インドのスラムで育った男が、どうして難問のクイズの数々に正解できたかを一問毎に繰り返していくだけなのに、編集の巧さか、決して退屈はしない。彼が語る苦難の回想は、音楽・映像に力があり、真に迫っています。 しかし、ストーリーは彼の人生で見聴きしたことに関する問題が出ただけというご都合主義の数々でできています。そして、それを「運命」の一言で片づけてしまう乱暴さはどうなんでしょうか。大衆性を高めわかりやすくしすぎた結果か、展開に意外性もなく色々と浅さが目についてしまいました。 安っぽいクイズ番組の設定なんか、この映画には実は丸ごといらなかったのでは?とさえ思ってしまいましたが、スラムの少年の過酷な半生を一変させるのが、安全でくだらない現代的クイズバラエティ番組というのが、これは昔話じゃないんですよ、という事をわからせてくれているのでしょう。僕らがお茶の間でくだらないテレビを観ている間にもスラムの人々は必死で這い上がろうとしているんですよ、と。 なんだかんだいっても、ジャマール君が正解するたびに拍手したくなったし、最後まで楽しめたことは間違いありません。 ヒロインのラティカは、少女時代も大人時代もとても可愛かったし、みのもんた以上の腹黒感を出していた司会者も良かったです。 三銃士は、僕もダルタニアンだと思ってました…。 [映画館(字幕)] 7点(2009-05-19 01:30:11) |
934. ダウンタウンヒーローズ
《ネタバレ》 戦後間もない1948年の松山を舞台にしたカラー映画というのは、あまり馴染みがなく、街並みとかを観ているだけでも楽しむことができました。すぐに二階の窓から飛び降りる血気盛んなバンカラな若者達は見ていて気持ち良い。 だけどストーリーがどうも面白くない。序盤の娼婦を匿う騒動の話があっさり完結して、また別の話が始まるという流れに、ちょいとかったるさを感じました。同時進行だったほうがよかったんじゃなかろうか、と。 恋物語としても皆それぞれが、いつの間にかただ勝手に想ってるだけなので、積み重ねもなく、後半急に盛り上げられたような感がありました。 とはいっても魅力のあるシーンは多く、女を巡ってのヘタレ二人の喧嘩のシーンなんかは、いつの時代にも共通の青春だなーと暖かな気持ちになりました。我らが渥美清もいいとこもってきますしね。 [DVD(字幕)] 6点(2009-05-16 23:31:55) |
935. GSワンダーランド
《ネタバレ》 栗山千明が男装して、GSをやる。それ以上でも以下でもないですが、このキーワードで観たいと思った人は、充分に楽しめるレベルで作られてると思います。ショートカットの千明嬢はいつも以上に輝いておりました。 予算の問題か、ほとんどが屋内のシーンで60年代後半の日本の風景があまり見れなかったのは少し残念ではありますが、楽曲やら色調やら演出やらには拘りと愛を感じました。脚本がイマイチなのと、主人公たちの熱意があんまり感じられなかったため、こちらのテンションもイマイチ上がりませんでした。意外なエンドロールにはちょっとビックリさせられました。 [DVD(邦画)] 7点(2009-05-16 20:59:53) |
936. デス・レース(2008)
囚人同士で殺し合いのレースをさせるというB級設定ながら、ド派手なカーアクションが堪能できました。無実の罪で投獄されながらも、邪魔ものは躊躇なくぶっ殺しまくるのはジェイソン・ステイサムの十八番ですな。おまけ程度なサスペンス以外は、ほとんどがレースシーンばかりで疲れますが、なんでもアリな勢いに好感が持てました。おいおい、と突っ込みながら楽しみましょう。 パネルを踏んだら武器が使えるっていうのは日本人ならマリオカートを思い浮かべるでしょうが、デストラクションダービーとかロックンロールレーシングというB級で大味な洋ゲーそっくりだな、と昔ハマったマイナーなテレビゲーム達を思い出したのでした。 女所長の顔怖かったなー。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-16 20:48:26) |
937. グランド・ホテル
《ネタバレ》 当時の映画スター大集結とのことですが、僕はほとんどの俳優を知りませんでした(75年以上も前だもんなぁ…)。当時のスターなんて、今以上に気難しそうなイメージがありますが、多数のキャラクターが登場しながらも全員の個性が良いバランスで立っています。 パッパラパーなバレリーナ、こそ泥ジェントル、悪人面で高慢なヘボ社長、余命短い豪遊おじさん、優しいが金の力に弱い娘と、それぞれのキャラクター造形が面白い。 ほとんどのキャラクターがお金を中心に、他人と接しながら悲喜こもごもなストーリーを繰り広げているのに比べ、ただ一人ダンサーだけは金に興味がなく、目先の恋の相手一人の存在だけでルンルンしているという対比は良いんです。良いんですが、それでもやはりちょっとでもいいからそれぞれ全員と絡んでほしかったなぁ、というのが惜しまれる点。 特別に面白いかというとそうでもないんですが、アカデミーに相応しい、隙がなく深みのある上品で見どころの多い映画。 DVDのおまけに入っていたグランドホテルの短編コメディミュージカルバージョンともいえる『Nothing Ever Hppens』は、本編より軽薄でマヌケで、この雰囲気のが好みだったかも。紳士のキャラクターなんかはこっちのが好きでした。 [DVD(字幕)] 7点(2009-05-15 00:44:56) |
938. トウキョウソナタ
《ネタバレ》 重い・・・。重すぎる。見ている間中、重しを上から乗っけられているようなしんどい気分でした。ここまで現代的で普遍的で平凡な不幸って一番観ていてきつい。こういうのって一番映画で観たくないものかもしれない。後半からは雰囲気が変わり、ちょっとだけ非日常な展開を見せ、妙に綺麗なラストに落ち着きますが、その嘘臭さが美味いのか不味いのか僕にはわからないです。どんなホラー映画の化け物や悪霊より、ずっとリストラや家族崩壊の方が怖いですよ、監督。 [DVD(邦画)] 6点(2009-05-13 12:19:53)(良:1票) |
939. 座頭市兇状旅
本作は随分サービス精神旺盛かつ手堅いエンターテイメントアクション時代劇となっておりました。90分足らずの尺で多様な登場人物それぞれの思惑や複雑な人間関係を描いていて、ちょっと欲張りすぎたかごちゃごちゃしてて焦点がぼやけ気味。 しかし、最後まで退屈するところはなく、殺陣の見せ場も出し惜しみなしだし、手強いライバルとの死闘も熱く、充分に座頭市を堪能できました。冒頭でのいっつぁんの相撲シーンが実は一番の見どころかも。 [インターネット(字幕)] 7点(2009-05-10 00:26:12) |
940. 新・座頭市物語
《ネタバレ》 カラーになっても影の見せ方が綺麗、いっつぁんの三味線にシビれる三作目の座頭市。 90分ちょいの話だが、濃厚で無駄なシーンは一つもない。というか、足りてない気がする。居合の師匠がどんな人なのか、兄妹の関係性はどうなのかとかの掘り下げがあれば、もっと深味のある一本になってた筈。 二人の恋はいつの間に盛り上がってたのか知らないし、魅力的なヒロインとも思えないが、女のために生まれ変わろうとするいっつぁんは情けなくも人間臭く男らしい。それでも結局は大暴れ。なんたって、市はこんな男ですから…。切ないぜ。 [インターネット(字幕)] 7点(2009-05-10 00:21:55) |