81. 泣くな赤鬼
根本的な問題点は、かつての主人公が、ちょっと口が悪いという程度でしかなくて、全然「赤鬼」ではないこと。これだったら、例えば中村計あたりがルポしている(書籍にもなっている)実在のいろんな監督の方が、よっぽど「鬼」ですよ。なので、野球を素材としていながら、そもそも野球に対する制作側の愛情も感じられないのです。また、過去と現在を並行して進めておきながら、その過去と現在が全然絡んでいないのも問題です。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2024-08-31 02:04:45) |
82. 拝啓総理大臣様
《ネタバレ》 渥美清がベタベタの関西漫才師!その相方は長門裕之!という無茶極まりないキャスティングなのですが、これがもろに大外しで・・・。渥美さんは台詞はしっかり入ってるんですけど、演技のノリは完全に江戸っ子ですし。そもそも作品の内容自体がかなりいい加減で、なぜ漫才師を選んだのかも分からないし、周辺登場人物の存在理由も分からない(山本圭の無駄遣いぶりにも絶句します)。もし無名の人たちばかりで作られていたら、むしろカルト作品として語り継がれたのではとすら思ってしまいます。タイトルも最後に無理矢理こじつけているだけで、意味がありません。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2024-08-30 00:28:42) |
83. ステラ・ダラス(1937)
《ネタバレ》 ベット・ミドラー版は最初から成長した娘視点だったと思うので、いきなり若きステラの恋愛沙汰から始まる導入にびっくり。しかし手際よくその後を済ませ、いよいよ親子3人と周辺人物の絡み合いとなっていく。中盤では、モリソン家の(子供たちも含めた)奥床しい上品さの描写と、一方でクリスマスの場面の4者心理の静かな(エドはやっぱりうるさいが・・・)ぶつかり合いが秀逸。したがって、あの哀切に満ちたラストシーンにも、必然の流れでなだれ込むことになる。最初のところでスティーブンとヘレンの関係がよく分からなかったり、肝心のところで突然大事なメモが飛び出したりと、若干雑なところも目につきますが、その辺は枝葉ですね。 [DVD(字幕)] 7点(2024-08-29 00:40:11) |
84. タイ・カップ
《ネタバレ》 数限りないエピソードのある人だけに、伝記映画となればそのまま順番に並べて作りたくなってしまいがちなのだが、そうはなっていない。取材側の記者目線と、そして引退後(というか人生の晩年期)という時的焦点を確保することによって、ありがち伝記ものに陥ることを回避している。特に、途中から「本人用」と「自分用」の2種の執筆に入るくだりなどは、その一事がすべてを象徴するほどの力を有している。一方で、トミー・リーは熱演を発揮しているが、むしろ暴走気味なところも見受けられ、(主人公そのものと同じく?)周囲との調和はあまり意識していないのではと思わなくもない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-08-28 00:55:26) |
85. ミッドナイトムービー
70年代に編み出された「深夜上映」というフォーマットから生み出されたカルト作品群6作について、背景とか影響を追ったドキュメンタリーです。とにかく、登場する監督や製作者がいずれも自信満々で、心底自分たちが映画史に残る名作を残したと思ってそうなところがいいです。カルト映画たるものはこうあるべきです。ただ、この中の何作かは私も見ていますが、それがそのまま面白かったかというと、そうでもなかったという根本的な問題があったりするのですが・・・。まあ、そんなこととは別に、一つの時代的な文化を追求して形に残そうというこの作品自体の姿勢は嫌いではないです。 [DVD(字幕)] 4点(2024-08-26 02:08:36) |
86. 続・拝啓天皇陛下様
《ネタバレ》 中盤までの軍隊生活のところは、ほかにもいくらでもあるような描写であまり面白くない。復員してから、久我美子と出会ったりさらにいろんな人が登場したりして、段々と形が構成されていきます。どこまでもついて回るバラック生活の描写と、ちょっといい感じの生活になったらすぐまた元に戻ったりというよく見ると波瀾万丈な展開が、力強さを感じさせます。ただそれからすると、最後の出産と死亡のくだりは、急に行儀よくまとまってしまっています。ここはむしろ、素っ気なくまたいなくなるか、死亡としてもごくあっさりとかの方が、それまでの流れに即していたと思いますが。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2024-08-24 03:35:29) |
87. メガフォース
これはですね。アメリカン・プログレ・ハードの代表的名曲、707の"Mega Force"がテーマソングであることから、人生においていつかは見ないといけないと思っていたのです。作品の中身はB級以下というのは聞いていました。しかしこれは、事前の予想と覚悟を大きく上回っていました。とにかく、いささかでも面白いと思えるシーンがどこまで行っても皆無なのです。その反面、もしかすると制作者は、主人公をクールで格好良く決めようとしているのではないかとか、気合の入った戦闘シーンを作ったつもりではないかとか窺えてしまう箇所もあるのです。B級ならB級道を突っ走ればそれなりの作品にはなるのに、むしろ意識が真逆に行ってしまいました。点数はもちろんテーマソングに対して。 [DVD(字幕)] 2点(2024-08-19 21:49:34) |
88. イッツ・フライデー
原題がすべてを表しています。金曜日の夜に、ディスコに人々が集まってさあ楽しもうとしている、というたったそれだけです。本当にそれだけです。しかしその中でも、多数の登場人物を次々に放り込んでいながら、自然とそれぞれの関係や行動が浮かび上がってくるという、なかなか丁寧なシナリオになっています。見ている側もこの空間の一員に引きずり込むかのような、迷いのない芯のある作品であり、約90分があっという間。これぞディスコ映画!●また注目すべきなのは、その多数の中に、駆け出しの頃のデブラ・ウィンガーがさらっと交じっていることです。それも中心っぽくはなく、割と地味目の役です(クレジットも真ん中あたりです)。これはかなり貴重といえましょう。●で、時代を反映して、コモドアーズとかドナ・サマーが美味しい登場をするのですが、全体の構成からいえば、それもあくまでゲスト的なんですよね。そこがまたいい。 [DVD(字幕)] 7点(2024-08-18 22:21:53) |
89. 親分はイエス様
《ネタバレ》 ゴリゴリのヤクザだった主人公が、キリスト教に目覚めて伝道に邁進するという内容。それならばこの二者がどうつながるのかという点が注目されるが、その部分は上手く話をつないでいると思う。いきなり大きなことをやり出すのではなく、「十字架を背負って歩く」という、1人でもやろうと思えばすぐできるはずのところに特化しているのが良いし、また説得力がある。ただし、「自分がやってきたこと(罪や悪事)をみんなに話す」というのがスタートだったと思うのだが、そのシーンはもっと欲しかった。●脇役はあまり使いこなされてない印象で、特にヤクザの親族関係の人たちは、ただあたふたしているだけのように見えた。それとは別に、夏樹陽子さんをせっかく出したのなら、出番がもっと欲しかったのですが・・・。 [DVD(邦画)] 5点(2024-08-17 00:52:21) |
90. リリイ・シュシュのすべて
《ネタバレ》 何かもう、すべてが、観念的、作為的、露悪的なのです。みんながみんな、その演技を「させられてる感」が満載です。いくら音楽を被せようが、もっともらしいネット入力風景を差し込もうが、カメラをあれこれ動かそうが、本質は変わりません。見どころは稲森いずみの登場シーンくらいでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2024-08-16 01:11:32) |
91. ローズマリーの赤ちゃん
《ネタバレ》 前半は「隣人侵略モノ」の趣で、同じような押したり引いたりのくだりが繰り返されて、割と単調でもある。本の一件が出てきてから焦点が絞られるのだが、ここでは、単に電話ボックスで電話をするというだけでもあれほどのスリルをもたらしているように、何気ない一風景にこそ怖さが宿っている。そして一番怖かったのは、クライマックス、包丁を手に進入する主人公に、誰も何も動揺せず(1人悲鳴は上げるが)、「ふーん」程度で済ませている、あの光景である。すでに悪魔の下に団結している人たちにとっては、凶器を手にした部外者がいきなり入ってこようが、脅威でもなんでもないのだ。●一方で、私は終盤まで「実は妊娠自体が主人公の妄想だった(周りの人たちは合わせてあげていただけ)」と思いながら見ていたというのは、ここだけの秘密である。そのため、あのラストも、「えっそのまんま?」と逆の意味で驚いてしまった・・・。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2024-08-15 01:00:51) |
92. 故郷の香り
《ネタバレ》 10年前の追憶の甘くほろ苦いほのかな想いと、そして10年後の現実。特段突飛な展開は何もないのに、一つ一つのシーンで登場人物の心理を丁寧に積み上げている。過去と現在の並行描写という進行をフルに使い切っている。その中で、単なる再会譚と見せかけておいて、実は3人それぞれが「自分のせい」だと思っていたという裏側も、それもはっきりとは言わない形で示されています。また、設定上台詞なしという制約の下で、感情の揺れを着実に表現した香川照之の貢献が絶大です(最後のシーンなんて、念のために子供の「通訳」が入りますけど、それがなくても何を言っているのかが分かるのが凄い)。 [DVD(字幕)] 7点(2024-08-14 01:41:48) |
93. ミルドレッド
《ネタバレ》 これが監督デビュー作とは思えないくらい、堂々とした安定感ある撮り方。画面も色合いも、そして進行も落ち着きに満ちている。母親ジーナ・ローランズを美しく撮ろうという愛情すら感じられるし(実際、他のジーナ出演作よりも綺麗に映っていると思う)、またジーナの側も、作中で子供に接するのと同様、作品そのものも暖かく包み込んでいる。●しかし、そのような作品外の親子関係に依存することなく、ドラマはじわじわと展開していく。突飛な事件も起こらない。その中で徐々に、しかし着実に変化していく関係性。それは必然的に、余韻にあふれたラストにつながっていきます。また、オスカー受賞済とはいえまだ若手だったマリサ・トメイが、ジーナすら食いかねないほどの存在感を発しており、作品にもう一本の芯を確保しています。●一方で、ドパルデューの役については、せっかくこの人まで起用に成功したんだったら、もう少し何とかならなかったかな、という気はします。あれなら単に「バーで出会ってちょっと口説きかけただけ」に近いんですよね。まあ、それはそれで慎みがあって良いともいえますけど。 [DVD(字幕)] 7点(2024-08-13 02:16:13) |
94. 岸辺露伴 ルーヴルへ行く
一つ一つのシーンにはそれなりに気合が入っているのですが、全体の整合性とかつながりがあまり考えられていないので、単発のよくできたダイジェストをつなげて見せられただけ、みたいに見えてしまいます。それと根本的なところで、どうしてルーヴルまで行かないといけないのかが、よく分からなかったのですが(むしろこのドロドロ粘着ぶりは、国内のどこかの地方に名も知られずひっそりたたずむ古美術館、みたいな方がふさわしい)。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2024-08-12 00:52:42) |
95. ファミリービジネス
親子三世代で泥棒というありえない設定なのだから、大いに笑わせてくれるのを期待するというのに、コネリー/ホフマン/ブロデリックという重厚なキャストを揃えていながら(揃えたからこそ?)、話が全然弾まない。みんなシリアスすぎる。大体、何で監督にルメットを選んだんだろう。というわけで、どこへ行きたいのかも分からない迷いまくりの進行の中、そのまま終わってしまいました。ユダヤ教云々というのももっともらしく取り入れられていながら、結局まったく機能していないのでは? [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-08-10 01:16:56) |
96. TINA ティナ
《ネタバレ》 ティナといえば、ミニスカワンピでステージを所狭しと駆け回り、頭を振って絶叫するあのアクティブライブの豪放磊落な光景を想起するのだが、その裏にはこんなに耐える側面があったとはねえ。アイクとは暴力問題で離婚したというのは知っていましたが、ここまでとは思いませんでした。そのアイクも、ステージではあくまでも終始冷静沈着にバンドを仕切っているのが、何とも言えない気分になる。●で、描写対象は多くがその夫婦問題で、バセットとフィッシュバーンの役作りの丁寧さによって、単調に陥ることは避けられていますが、脇役関係はもう少し使いようがなかったかな、とは思ってしまいます。それに対応して、音楽面はほとんどがアイク&ティナ時代なのですが、考えてみれば、アイク&ティナのデビューは1960年で、ビートルズやストーンズよりも早かったんですよね。逆に、この映画の後にもさらにキャリアを積み続けたティナの偉大さも実感します。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-08-08 00:48:10) |
97. 恋人たち(2015)
一つ一つのシーンのじとっとした雰囲気にはかなり力が込められている。しかし、その重みを制作側が自分で処理できなくなったのか、前後は意外なほどつながっていない。物語の必然ではなく、都合の良い方向に次の場面が置かれている。料理でいえば、下ごしらえにはものすごく気合が入っているが、調理方法は今ひとつで、味付けには手が回らなかったという感じだろうか。センスのある部分と唐突で作為的な部分の落差が大きい。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-08-05 00:19:03) |
98. スペンサーの山
《ネタバレ》 ワイオミングの大自然の中に、夫婦と子供たちが生活している。というところから予想どおりの、いい人たちばかりが平和な生活をしているお話です。途中から長男の大学云々が出てきて、焦点も絞られてくるのですが、今度はかえって長男にスポットが当たりすぎて、ほかの人があまり意味なくなってしまいました(それ以前に、あの弟妹たち、いくら年少子役とはいえ、あれだけたくさんの数がいて個性なさすぎでは?)。宗教部分もエッセンスになっていると思われますが、それも、絡んでいるようで今ひとつ絡みきれていなかったような。 [DVD(字幕)] 5点(2024-08-04 00:32:54) |
99. パティ・スミス:ドリーム・オブ・ライフ
ニューヨーク・パンクの生ける伝説、パティ・スミスのドキュメンタリーです。全体の構成は、11年間にわたって撮影された各映像が並べられているというもので、特に体系立てられてはいません。また、ライブ映像は少なめで、ちょっとした身の回りの風景が多くを占めています。しかし、いろいろ整理されたり刈り込まれたりしているよりも、こういったランダムな散りばめ方の方が、この人の場合は適しているという気もします。また、そこに被さってくるのが自作と思しき詩の朗読で、ミュージシャンであると同時に詩人でもあるこの人ならではの作り方になっています。 [DVD(字幕)] 6点(2024-08-03 21:19:09) |
100. ブロウアップ ヒデキ
《ネタバレ》 1975年、デビュー3年目、当時20歳(!)のヒデキの、全国縦断ツアーの様子を追ったドキュメンタリー。まず、富士の野外コンサートから始まるんだけど、そもそも当時、こういう野外フェス的な公演自体、国内ではほぼなかったんじゃないのかなあ。そしてヒデキは、今なら絶対に許可が出ないような超高層クレーン吊りのゴンドラで登場します。しかもその後、またそれに乗って上昇します。というかこの高さ、どう見てもビルの10階以上はあるぞ。その後は全国を転々とするのですが、合間に、札幌のジャンプ台で無意味にポーズを撮るヒデキとか、沖縄で馬が引く荷車に寝転がっているヒデキとか、プロモ・フィルム的な映像も挿入されます。ただ後半は、屋内公演の照明が暗くて、パフォーマンスがあまり見えないのが残念。●で、3年目ということは、その後に出てくるあの曲もあの曲も当然ないわけで、その意味では欲求はかえって高まってしまうのですが、しかし、この後の怒濤の驀進につながる勢いは、確かに感じさせます。やはりこの人は、不世出の名シンガーであり、唯一無二の大スターでした。その若き日の姿を切り取って保存したという意味において、この作品は今日でも、そして今後も意義があります。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2024-08-02 21:53:25) |