1021. 何も変えてはならない
《ネタバレ》 女優にして歌手、ジャンヌ・バリバールのライブ・リハーサルの様子をひたすらモノクロで撮ってゆくというシンプル極まりないドキュメンタリ。ほぼ全編が(練習として)歌っているシーンなので、見た目はミュージック・ビデオの一種だと言ってよいかも知れない。音楽的にも、シャンソン風のものからクラシカルやポップス調のものまで多彩な楽曲が奏でられて面白いのだが、その上に、ただ練習風景を映像に納めているだけではあるのだが、そこにしっかりと歌手が歌をつくり込んでゆく過程が端々に描き込まれており、普通に音楽を聴くのとは一味違った面白さを確実に備えた優れた作品だとも言える。無作為なようで、実に見事なドキュメンタリだと思う。 また、監督の特徴である闇を多用した画づくりもこれまた見事。こっちもただ白黒カメラを無造作に置きっぱなしにしているだけにも思えるのだが、何とも言えないエレガントな映像を撮り納めることに成功しているのだ。これも一種の才能・センスなのだろうとしか言えないようにも思えるが、どこか少し不思議な作品という風にも感じられる。 [DVD(字幕)] 7点(2021-02-11 13:12:12) |
1022. ホース・マネー
《ネタバレ》 これも『コロッサル・ユース』に引き続き、全体としてはまたヴェントゥーラの物語である。しかし、更に詩的な、というか、物語性の希薄さは前2作をだいぶん上回っている。幾つかの現代詩をモチーフとして、その詩的な雰囲気を(ヴェントゥーラを媒介として)映画の中に落し込んだ、とでも言いますか。いわゆる「考えるな、感じろ」系の映画と言って過言でないだろう。 ミもフタも無い言い方をすれば、めっちゃ分かり難いヤツだということである。各シーンで何がどーなっているのかは(特に前半は)相当に理解も難しいし、間合い・時間の使い方も非常に緩やかでかなりモヤモヤ・ダルダルとした状況が続いてゆく。我慢して観ていくと、中盤以降は慣れてくるというか、するとその詩的で空虚で緩慢な雰囲気も少しだけ心地好くなってくる…とは言えるのだケド。あとは、暗闇を多用・活用した画づくりのセンスも中々に優れていたりして、そこには面白さを感じ取れる。まあ結論、かなり高度に訓練された玄人向きな映画かと。 [DVD(字幕)] 5点(2021-02-11 02:44:31) |
1023. 父の祈りを
《ネタバレ》 法廷もの・冤罪ものとしてはシンプルな筋で、基本的な部分は分かり易いしラストも十分に盛り上がるので、その時点で間違い無く良作だとは言えると思います。私も序盤から話に簡単に引き込まれ、ラストまでハラハラワクワクしながら一気に観終われました。 ただ、私は勝手にこのお話をジェリーの成長物語として観ていたのかもしれません。その観点からすると、意外とその部分はそんなに分かり易くもない、というか、特に父親が亡くなった後にジェリーが人間的に変化する、という側面は思ったホドは分かり易く描かれているワケでもないかと感じました。もう一つ、弁護士のピアースとの関係性もあまり掘り下げられてはおらず、そこら辺の人間や人間関係の描かれ方にはあまり深みというものを感じ取れませんでした。前述どおり総合的に良作であることは間違い無いと思いますが、人間ドラマとしては少しだけ浅いかもと。 とは言え、前半は父親のピート・ポスルスウェイトの落ち着いていながらも毅然とした様子が非常にグッドだし、彼の亡くなった後半も、代わって今度はデイ=ルイスとエマ・トンプソンの演技の質の高さが映画の緊張感を素晴らしく維持していきます。重ねて、総合的には良作だと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2021-02-09 23:59:53) |
1024. DAGON ダゴン
《ネタバレ》 うーん、最終盤はそこそこなのだけど、そこまでが正直クソつまらんのよね。ヨットで遊んでたら呪われたダゴンの村に流れ着きました、て導入部にしてもテキトーなことこの上ないし、そっからの展開運びもハッキリ言って支離滅裂、途中のショック描写も軒並み平凡、ラストもお話的には意味不明、と、率直にかなりレベルの低い作品だとは言って過言でないと思う。 ただ、メインのタコねーちゃんの目を瞠る美人ぶりと怪物的な雰囲気だけには少しばかりのユニークな鑑賞価値があると思うし、前述どおりラスト付近はグロ描写にせよ生贄の儀式の狂気溢れる様子にせよそこそこ面白いとも言えるので、諸々ひっくるめてそこまで耐えれれば…という作品にも思われる(そこからのラストはまたパッパラパーなので、どっちにせよムムム…という感じで観終わる羽目にはなるのだけど)。 [DVD(字幕)] 4点(2021-02-08 20:59:14) |
1025. コロッサル・ユース
《ネタバレ》 『ヴァンダの部屋』の続編といってよかろう作品でしょうが(ヴァンダも再登場しますし)、テーマ自体も非常に似通っています。主人公こそ違う人物ですが、描かれるのはこれも「絶望」、前作よりはやや乾いた絶望とでも言いましょうか。 演出方針も基本的には同様ですが、少しだけ抽象的な表現を取り入れてる?というシーンが見られたり(団地の担当者との幾つかのシーンとか)、画的に非常に凝っているようなシーンも随所に見られたり、そこは前作より挑戦的な作品にも思えます。あとは、何度も何度も繰り返される詩文のひとり語りからも想起されるように、より形而上的で詩的な作品と言えるのも事実でしょう。 ただ、これも前作と同じく、個人的な感想としてはとにかく長い!というコトが最上位に来るのですよね。もう分かったよ!(許してよ!)とでも言いますか。長いことに(大した)理由が無い映画というのは、どうしたって得意にはなれない、というのが正直なトコロです。 [DVD(字幕)] 5点(2021-02-07 02:00:00) |
1026. ヴァンダの部屋
《ネタバレ》 こ~れは…映画として評価するのは正直言って中々難しいというか、個人的にも(どーしてこーしているのかは重々分かるとは言え)いくらなんでも暗すぎるし長すぎるし説明も不足してるし、とは思います。ただ、コレは……もし映画館で観ていたら更に凄まじかったろうと思いますし、どこかしろに共感が引っ掛かれば確かに唯一無二の「絶望感」というのを嫌と言うホド味わえる稀有な作品だと思いますね。 朝起きて、咳込んで嘔吐し、それを打ち消さんとするかの如くおもむろにコカインを吸引する…これだけでも、この人何のために生きてるんだろ、という絶望をこの上なく生々しく実感できるのですよね。抽象的な意味でなくて、正に「悪夢」の様な人生。麻薬はむしろそんな人生に少しだけでも「存在意義」というものを与えてくれる希望のよーにすら思われます。彼らが自暴自棄に陥らず、なんとかかんとか悪い意味での衆目を集めずに大人しく生活しているのも、ただ麻薬をやりたいから(=逮捕なんかされたらできなくなるし)なのだろうとも思われますし。事ここに至っては何が正義なのかももはや分からなくなる、とでも言いますか。強烈な映画であることは確かですね。 分類的にはドキュメンタリ(に非常に近いドラマ作品)ということのよーですが、質感はどちらかとゆーと普通に劇映画に近いです。前述どおりの部屋の暗さ、全く動かない置きっぱなしカメラ、音も皆無、という漢気溢れる演出方針が形づくる寒々しい雰囲気自体は、どこか荘厳な感じすら帯びているというか、中々オツな味わいを感じ取れるヤツだと言えるでしょう。ただ、DVDだとちょっと画質がイマイチなのですよね(残念)。 [DVD(字幕)] 6点(2021-02-07 01:59:53) |
1027. 食人族3 ~食人族VSコマンドー~
《ネタバレ》 おおお…鬼の様にツマランな…そもそも監督のマーティン・ミラーて誰じゃ?と思ったら、案の定ブルーノ・マッティ(a.k.aヴィンセント・ドーン)の別名義だし、オマエは年に2本も食人映画撮るんじゃねーよ、と(否、年に2本も最低映画撮るんじゃねーよ、と)。 基本的には食人映画だが、ちとアクション寄りとゆーか、食人族のテリトリーに殴り込むのが重装備の軍人になってたりする+少しだけ『プレデター』を意識したよーな描写(例の皮を剥がれて逆さ吊りの死体)が散見されたりする…のだけど、何だろう、とにかく盛り上がらないのだよね。メリハリの欠如、見せ場となるハズの描写のテキトーさ&パクリから来る新鮮味の無さ…あとやっぱ、食人族が集団で襲い掛かってくる…とは言え、竹槍・弓矢の半裸集団をマシンガン5丁で薙ぎ払う!つーのには、流石にスリルとか爽快感なんてのは感じられないっすよね(率直にゆーて大人げ無い、と)。観終わるまでに三日掛かった映画ってのも、久しぶりだすね。 [DVD(字幕)] 1点(2021-01-30 01:01:50) |
1028. 食人族2
《ネタバレ》 とにかく強く感じるのが「既視感」。大半がどっかで(主に前作『食人族』で)観たことのある描写・展開で構成されてゆくというか、むしろ何か自分で縛りでもかけているかの様な。これはもしかして大いなるオマージュなのだろうか(それとも最早ネタを考えるのすらメンドくさいということなのか)? 更に痛いのが、そのパクリ描写のいずれもが以前に観たものよりショボいクオリティに為り下がっているという点。一番はかの有名な「串刺し女」だろう。オリジナルの方のそれは確かに流石に有名になるだけの迫力やリアリティを備えていたのだが、今作ではそれがただ血塗れの女が棒に紐で吊るされている、というチャチなシーンに変わってしまっていたり(話の中で出てくるタイミングが同じだから何とか「コレはアレなんだ」と気づけたケドさ、多分単純に撮り方が分かんなかったんとちゃうかね)。問題の動物殺戮シーンも2000年代にもなってま~だ入ってるのだが、申し訳程度にちっこいワニを殺すだけになってるし(別にこれは喜ばしいコトかとも思うケドね)。 要するに、前作のネームバリュー以上の価値というものが皆無な極めて程度の低い続編です。逆にこの進歩の無さは(23年も経ってることを考えれば)奇跡に近い、とも言える(だからなんなんだ、としか言い様は無い)。 [DVD(字幕)] 2点(2021-01-28 20:19:43) |
1029. 人喰族
《ネタバレ》 私は『食人族』という映画はハッキリ言って生理的に受け付けない。その最大の理由はシンプルに、動物を実際に殺しまくっているからだ。ただ、あの映画は所謂モキュメンタリのはしりというか、意識的になるたけ「つくりもの」感を排除するというコンセプトのもとに纏め上げられている作品で、殺される動物がモノホンなのはその部分に多大な貢献を果たしているのも事実だと思う。だからなんなんだ、と言ってしまえばそれまでなのは確かだけど、そこにはある種の「筋」が通っている映画だとも思えるのだ。 ところがこの『人喰族』というヤツは、恥も外聞も無い『食人族』の丸パクリにしてコンセプトは真逆、つまり質感はつくりものでも何でもよいからグロ描写をよりパワーアップさせてやろう、というあまり志の高くない作品である。なので当然の如く本作でも引き続き動物は(ついでに)殺しまくっているワケなのだが、意外にもその効果は薄い。というか、グロ描写・ストーリーがつくりもの感満載であるが故にキャンプながら気楽な娯楽作品になり得たかもしれないのに、動物は実際に殺されているのでそこだけ無駄に悲痛、という意味では、むしろ逆効果だとも思える。実は個人的にはコッチの方がより許し難いとも感じている(非常に高度な「どっちもどっち」であるのも確かですケド)。 どだいそもそも残虐描写にもやはり「真に迫った」感じが無いので、『食人族』よりグロさを本質的に尖鋭化できてるのかと言われると微妙な気もしている。その意味でも、かの作品の「下」をゆく正真正銘の最低映画と言って過言でないよーに思っている。 [DVD(字幕)] 1点(2021-01-26 00:52:44) |
1030. 蜘蛛の巣を払う女
《ネタバレ》 映画としての質感は多少似通っている様には思いますが、重々しいサスペンス・スリラーだった前作とは大きく異なる比較的単純なアクション・スリラーだという点からしても、お話としてはあまり続編であることに意味があるよーにも思えません。なので、その面の繋がりに価値があるのは当然キャラクターというコトになるのでしょうが、これとて俳優も総変わりしてますしキャラ設定・雰囲気自体もいくぶんの調整が入っている様にも思われ、正直あまり続編を観れた喜びを感じる部分を見出せませんでした。そのクセ、根本的な部分の設定は前作を前提として話が進むので(リスベットとブルムクヴィストの関係性とか特に)、結局前作を観ている人にとってはややガッカリしそうな設えなのに、観てない人にも不親切、というチグハグな作品だと感じられます。一番根本的な部分のマーケティング・コンセプトが非常に雑、というか(とは言え、監督・キャストを続投させられなかった事情がある中で、何が一番正解に近かったのかはよく分からないのも事実ですが)。 一点だけ、前作のマーラ・リスベットには迫力や凄み・クールさも然ることながら、どこかに若さ・幼さだとかガーリーな雰囲気を感じ取れた、そこがまた好かったと思っているのです。今作のクレア・フォイには残念ながらそーいう要素が皆無でしたね(年齢設定自体もやや年嵩になってるよーで)。当初主役に検討されていたのはアリシア・ヴィキャンデルだそーで、そっちだったらまた大いに違った作品に仕上がっていたのではないか…なんとも思いますね。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2021-01-25 18:51:26)(良:1票) |
1031. ドリアン・グレイの肖像(1945)
《ネタバレ》 シンプルかつ静謐な雰囲気、そして終始能面の様に無表情なドリアンの様子は、ゴシック・ホラーな文芸映画として原作の持つ文学的な趣を最も的確に作品に取り込んでいる様に思われます。 特に、本コンテンツが描き出さんとする「恐怖」の本質的な部分の表現は的確だったと思います。自らの魂の堕落が具現化・可視化されるということの苦悩と、そしてそれに伴って自分の肉体の方が虚構・抜け殻と化すことの恐怖というものが本作からは大いに感じ取れたというか。その意味でも優れた文芸映画だと言ってよいのではないでしょうか。 前述どおり全体的には非常に静かな作品でショック描写等も控えめですが、肝心のその場面だけカラーにしてハイライトした肖像画の醜悪ぶりはかなり鮮烈でした。画自体の芸術性というものもかなり高く、これも好かったと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2021-01-18 19:09:09)(良:1票) |
1032. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 ハードな雰囲気は中々なのですが、肝心のサスペンス部分の純粋なクオリティはあまり高いと思いませんでした(結構在り来り)。かなり長尺ですが、雰囲気の良さもあってそれほど退屈もせずに眺めてはゆけるのですけど、そーすると尚更内容の物足りなさが際立つなあ、というのも事実で。個人的には率直に、やや期待外れだったと言っちゃいたいです。 要は、内容よりも実は更に肝心なリスベットの出来映え自体が、これも私にはイマイチ嵌らなかったということだとも思います。確かに非常にユニークかつ演技自体の質も最高レベルの優れたキャラだとは思うのですが、個人的にはそこまで魅力的(=このキャラだけを目当てに160分もじっと観てゆけるホド)だったかと言われると少し疑問が残る、というコトですかね(あくまで個人の好みの問題でしかないですケド)。 続編はしかも、そのルーニー・マーラは降板してるのですね…もうその時点で中々キツそうではありますが。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-01-18 17:11:17) |
1033. 8人の女たち
《ネタバレ》 オチは中々秀逸だと思いますが、そこまでの実際の展開上にはミステリ的な面白さというものは薄くて、否、そもそも展開上に現れるのは面白さ、というよりは醜い人間性のエゲツなさ、だとでも言いますか。これをコメディとして楽しめるのは、それは率直に女性の方ではないか、とも感じます(純真な男のコである私なんかは正直ドン引きでしたですよ)。コメディだとしても少なくともかなりシニカルな方のヤツですね(私がごくごく苦手なヤツ)。 ただ現場そのものは、ある種超豪華な女優陣の面子とプライドを賭けた頂上決戦の場と化しており、凄く近寄り難い非常に危険な様相を呈していました。キャラが立ってたのはまずユペールですかね~ただ彼女は比較的分かり易いキャラで、その演技のもたらす面白さも少し表面的かとも。ドヌーブも単純なキャラで実は見た目ほど存在感も無いかと思います。悪辣ぶりが際立っていたのはベアールで、コッチは見た目にも若々しさとキレがあってこの8人においては重要なアクセントとなっていたかと。ただ私が一番印象に残ったのはアルダンです。正直訳の分からないキャラだし容貌も大味だったですが、ミステリアスな魅力、という意味では一番深みのあるものを感じました。そこら辺、女優の演技合戦という部分には間違い無く観る価値がある作品でしょう。 一点、件のミュージカル要素については、別にコンセプト的にアリかナシかで言えばアリっちゃアリかと思いますが、やるんだったらもうチョイ本気でやって欲しい、という感じですかね。特に歌ってる時の動き・振付け的な部分が非常に適当に思えました。そこは残念。 [DVD(字幕)] 6点(2021-01-17 00:41:07) |
1034. アメリカン・パイパイパイ! 完結編 俺たちの同騒会
《ネタバレ》 正に同窓会、というか、特に話に重大な内容がある訳でもトンデモ展開がある訳でもないのです(あくまで昔と比べたら)。要するにただ、彼らの「その後」を楽しもう、という作品だと思います。なので、コレを観るなら過去作をちゃんと観てから、というのは絶対条件かと思いますね(私も1~3までしか観てませんが)。 それでもシリーズの醍醐味たるおバカ下ネタは(少しマイルドになってはいますが)十分に健在で、随所でクスクスと微笑みながら観れますし、役者もゴージャスに勢ぞろい、かつみんな実に楽し気にやっていて、こっちの方面でも観ながらホッコリとできることは請け合いです。みんな成長・老成したな、という感じですが、スティフラーだけは相変わらず…と言いたいトコロですが彼も少しだけは成長してるなとも感じました。いちおう完結編と銘打たれていますが、20年後ぐらいにもう一回やってもいーんじゃね?とも思いましたね。 [DVD(字幕)] 7点(2021-01-16 18:26:27)(良:1票) |
1035. 大雷雨
《ネタバレ》 コレは面白いな~豪華キャストが織りなすシンプルな三角関係が描かれますが、三人ともがごく善人で、それぞれが互いを思いやった行動を取ってはゆくものの、しかし愛というものはそういった論理や倫理を超えていってしまう…とでも言いますか。前述どおりキャラがいずれも魅力的なぶん、徐々に不穏さを増してゆく展開にはどんどん引き込まれてハラハラしながら観れましたし、クライマックスなんかはもう釘付けでしたね。”イケメン”ジョージ・ラフトが結局イイ所をかっさらってゆく結末には、この世で唯一絶対の理は「カッコ好いは正義」なのか!と非モテの私などはそこはかとなく不満も覚えましたが、それでもエドワード・G・ロビンソンにも哀愁を纏わせてこちらもカッコ好く送り出してくれる粋なラストはかなり快感でもありました。マレーネ・ディートリッヒの風情も素晴らしかったですし。 でもな~個人的にはハンクに幸せになって欲しかったな~中盤の朝食のシーンなんかスゴイ感じ好かったじゃないですかー(だからこそ、ラストの哀愁が絶品なワケですケド)。 [DVD(字幕)] 8点(2021-01-14 23:59:33)(良:1票) |
1036. 時をかける少女(1983)
《ネタバレ》 「尾道三部作」の中でもコメディ色の薄さは特徴的ですし、言っちゃあロマンチックだとかノスタルジックだとか、その他の要素も率直に薄めだと思います(あくまでSF色を纏ったちょっと不思議なお話、くらいなもんで)。だとするとそのワリにやや長く感じるな、というのも正直な感想としてあります(別に尺自体がメチャクチャ長いというワケでもないのですけど)。ある種の雰囲気映画なのかも、と思いますが、演技の稚拙さからくるジュブナイル感も含めて、そこにはやはり監督独特のノスタルジックさをほのかには感じ取れますし、個人的にはそこそこ心地好くなれた気はしています。とは言え、これも個人的には後続のアニメ版の方が絶対的に好みではありますが。 原田知世もよく見ると昨今のそこら辺のアイドルなぞ問題にならないくらいに可愛いのですが、髪型がイマイチ好みじゃないのですよね。表情も暗め一辺倒で、演技のバリエーションも少ない(笑うシーンが特に少ない)のは気になります。オーラス(エンディング)が一番可愛かった!というのは、逆に彼女の使い方が宜しくなかった、というコトにも思えます。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-01-14 21:21:13) |
1037. 美女と野獣(2017)
《ネタバレ》 アニメ版から比べると、ミュージカル要素が量的にも質的にもとにかく強化されているという印象があります。アニメをはじめて観た昔は気づいてなかったのだと思いますが、ちゃんと聴いてみると地味に超の付く名曲揃いですよね。今作ではその上に、歌い手の力量も十二分だったかと思います。特にエマ・ワトソンなんて超巧かったすよね!率直にビックリしてしまいました。 一番好きなのは『ビー・アワー・ゲスト』ですね。ここは動きの面白さもアニメ版からは大幅パワーアップしてましたが、こだわりという意味ではモノ凄く凝った照明の使い方をしてたのが非常に印象的でした。映画全体としても「暗さ」を上手く使って、ディズニー一流のゴージャスさを更に一段レベルアップしたシックで大人な雰囲気に纏め上げていたと思います。そんな暗さの使い方が絶妙なもうワンシーン、やはり二人が広間で踊る『美女と野獣』も、観ているコチラまで人生の美しい光景が脳裏に甦ってきたとでもいうか。娯楽映画としては色々と最高レベルのハイ・クオリティぶりでしたが、特にミュージカル面の出来の好さには素直に感動しましたね。傑作です。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-01-08 23:59:49)(良:1票) |
1038. オーメン(2006)
《ネタバレ》 元ネタは傑作だと思ってます。今作はソレに非常に忠実なリメイク、というかほぼほぼ完コピですね(主演男優の雰囲気すら、臆面も無く名優ペックにも寄せてきてるという無遠慮さだったりで)。なので、逆に変に拘らなければつまらないという代物でもないかと思います(コッチが初見なら尚更でしょう)。かくいう私も割かし楽しめた、というのが実際のトコロです。 ただ、元ネタを超えている、などとゆーことは全く無いでしょう。それは残念ながら、個々の要素のどれもが、というレベルでです。ショック描写も総じて何故かやや迫力不足ですし、キャスティング・演技面もいずれもさほど好いとも思えません。あと気になったのが、元ネタと比較して若干後半のテンポが悪いかな、という点ですね(元ネタは終盤、かなりガンガン盛り上がっていった記憶があるのですケド)。 とは言ってもそこそこ楽しめたので、もう一点高くしてもよいかな、という気もしているのですが、こっちを先に観てしまう、というのはそれはそれで誰にとっても不幸であるよーな気もしています。なので一点引いておきます。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-01-07 23:42:04) |
1039. ファンタジア2000
《ネタバレ》 私の思う前作『ファンタジア』とはコンセプト面(というか経済的な面)で、それに比肩する作品でないことは観る前から(そして前半を観た段階でも)ひしひしと感じてはいました。まあ75分映画に8000万ドル掛けてるのですから、決してリーズナブルな作品とも言えんでしょうが、でも『魔法使いの弟子』は単なるリマスターですし、人が喋ってるシーンも前作と比べて多かったり、メリハリを付けて何とか凌いだ、という感じにも取れました。どだい『風と共に去りぬ』の製作費が400万ドルだった時代に200万ドル以上掛けた前作とは、色々と違ってきてしまうのは仕方の無いコトだとも思います。 しかし、実際のトコロはどーでしょうか?特に後半は徐々に本気を出してきたというか、結果的にはかなり(というかメチャクチャ)楽しめましたですね。『威風堂々』『火の鳥』あたりは相当にクオリティ高かったのではないでしょうか?やはりディズニーというのは流石ですね~これはIMAXで観たかったですねえ。。是非『ファンタジア2060』をお願いしやす(生きてたら観に行きます)。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-01-06 22:48:38) |
1040. ファンタジア
《ネタバレ》 アニメというのは「動く画」だと思うが、重要なのは「動くこと」なのか「画」なのか、というのは答えの出ない問いかも知れない。私見だが、日本のアニメというのはどちらかというと「画」であることを重視しているようにも思う。もちろんそれは「画を動かす」ということが必要とする多大な労力を鑑みての謂わば消極的な第二の経済的選択肢として、止まった画の中にも動きを取り込む、だとかいった方面の表現技法の方を磨いてきた、ということもあるのかも知れないし、(それも日本アニメの発展と決して無関係ではないだろうが)本邦における漫画文化の独自の発展も影響しているのだろうし、あるいは何らかの日本人的感性、静の中に動を見出す、といった価値観がそうさせた、のかも知れないと思ったりもする。それに比べれば(それは本作を観てもそう思うトコロであるが)アメリカのアニメというのはやはり「動き」だなあ、と思う。アメリカ産のそれがより簡単に動かすことの出来るCGに偏重していったのも然もありなん、とは本作を観ても実感できるのである。それこそ、かつてNHKがこの『ファンタジア』を模して製作した番組『音楽ファンタジー・ゆめ』がこれもCGアニメであったことからも察せられる様に。 その観点からすると本作の凄さというのは、「画」を芸術的な画のままに「動かす」というそのどちらにも何らの妥協もしていない点だろう。原画100万枚!という無理難題を持ってせねば実現できぬこのクオリティは、もはやオーパーツであり、またロストテクノロジーだと言ってよい。今後これを超えるものは恐らくないだろう、という意味では、これも恐らく永遠に歴史の頂点にある作品であることにも間違いが無いし、可能性、という意味で日本のアニメでこれを超えることが出来たかもしれない唯一の作品『かぐや姫の物語』ですら、惜しむらくこれも50億を費やしてさえ今一歩の完成度の不足に泣いた、というその事実が、むしろ如何に『ファンタジア』が異常な作品であったのかを示している様に思えてならない。 どれも素晴らしい作品の数々ではあるが、一つだけ選ぶとすれば個人的には『はげ山の一夜』を推したい。とにかく魔人がカッコいいコト!雄々しく、禍々しく、そして確実にどこか美しい。画自体の質・動きのダイナミックさも素晴らしかった。私はこれが一番お気に入り。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-01-06 21:05:14)(良:1票) |