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アンドレ・タカシさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2127
性別 男性
自己紹介 2022/3/26に以下のような自己紹介文をアップしました。
ロシアのウクライナ侵攻が始まってひと月経過。
映画は観ていますが、侵略戦争のせいでレビューする気になれません。
私の映画レビューと戦争は直接関係しませんが、
楽しく文章を考える気分じゃない、ってことですね。
ロシアが撤退するか、プーチンがいなくなったら再開します。


そして、
侵略戦争が膠着状態に入り、
いつ終わるか識者にも判断できない状況になりました。
まぁ正直、痺れを切らしたので、レビューを再開します。
ウクライナ、頑張れ!

2024年3月17日更新

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101.  ディア・ドクター 《ネタバレ》 
医者という職業は人の命を預かるのだから、他の仕事より時間をかけて仕込まれる。学費も高い。それを考えると資格を持たない者が医療に携わるなんてありえない。万一のことが起こったときには「殺人罪」だろう。でも、本作のロケーションが必要としている医者の資質って、ブラック・ジャックじゃ無いことも確かだ。資格のある者が彼のようにできれば一番良いのだが、本作は行政に直訴しているのではなく、あの偽医者をあなたはどう思うか、という映画なんだよね。彼は正直だった。瑛太に言った台詞に嘘は無いと思う。実弾が飛んで来て打ち返している間にそうなってしまった。だから、彼には医師としての強い使命感があった訳ではない。気胸の空気を抜く為に胸に針を刺したときなどは、怖くて逃げようとしていたものね。でも、そこでは逃げずに母娘の最後の時間を作るために逃げた。とてもヒューマンなトンズラでした。違法行為だと否定するのは簡単だけど、一概に否定しにくい。ということで、この作品に対する姿勢はとても難しい。確実に言えるのは、自分が世話になっている医者が偽者だと分かったら私はたぶん怒るけど、偽者と知らずに処方された薬で病気を治していたら感謝しているってこと。これはそういう映画だ。すでにご指摘の方もいらっしゃいますが、「ブラック・ジャック」にソックリな話があります。そちらは年配の偽医者が正規の医者になるために医学部に入学するシーンで終わっていました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-01-14 00:33:07)(良:1票)
102.  ラスト サムライ
不思議な映画でしたね。ニッポン人としてはところどころに「違うだろ!」って描写があるんだけど、作品全体を覆う精神性がそれを緩和してくれる。この映画のモデルは西郷隆盛と西南戦争なのでしょう。日本の近代化を進める中央政府の改革を武士道精神の衰退にアレンジし、不平士族の反乱は列強と結託する私欲財閥への戒めにアレンジしている。これを観た外国人が日本の近代史を誤認した可能性はとても高いのだけど、そんな危惧よりも先述の精神性の描写の方がニッポン人として嬉しく思ってしまった。同時に、今の日本人に武士道を体現している人がいるのかと外国人から聞かれたら、とても困るのだけど。厳しい表情をしながら眼だけに優しい涙を湛える渡辺謙の演技は、ハリウッド映画の中では独自の存在感を示したと思います。彼の侍演技の多くはNHK大河「独眼竜正宗」でブレイクした頃と大きく変わっていないと思ったんだけど、逆に当時からかなりのポテンシャルを持っていたことが改めて証明された気分でした。
[映画館(字幕)] 7点(2011-12-17 14:50:30)
103.  ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 《ネタバレ》 
ドラゴン・タトゥーの女=リスベットが謎めいていて凄く魅力的です。ミカエルと彼女の連携が映画的な面白さを醸しています。さしずめ、ミカエルがホームズなら、リスベットはホームズより優秀なワトソンと云ったところか。女性が虐げられる描写が多く、その被害者の一人でもあるリスベットの活躍が事件を究明する構成で、彼女の容赦の無さは加害側全体に対する復讐的な色彩が強い。女性の恨みを晴らす、一種のダークヒーローですね。これを観たら、もっとリスベットが見たくなります。シリーズ化された理由が分ります。身近に残虐な殺人鬼がいたというオチは地元警察の無能さの証明みたいな内容だったけど、40年も昔の失踪者の捜索が終盤で別の事件の謎解きに繋がり、犯人を特定し、さらに失踪人も見つける展開のスピード感が劇的で爽快でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-10-30 02:05:58)(良:1票)
104.  ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション 《ネタバレ》 
TV版を除くシリーズ3作を続けて観ました。3作とも違う作品でした。そして、本作が最も見応えがありました。いくつか視点がありますが、まずタイトルの「リジェネレーション」はヴァン・ダム世代に終止符を打つ意図の表れと感じました。総合格闘家のアルロフスキーが演じた新世代ユニソルの方が明らかに強い。ストーリー上はヴァン・ダムが勝ちましたが、あれは花道ですね。そのアルロフスキーの戦いは見応えがありました。総合格闘技の迫力が初めて映画で取り上げられたという意見です。ナイフでとどめを刺す前に、これでもかとばかりに殴り続ける執拗さがリアルでした。そして、ヴァン・ダムとラングレン。初作で対決した二人の再戦はキレがあるという類いではなく泥仕合。かませ犬同士が取っ組み合っている様相。そもそもユニソルは死体を生き返らせた兵士で、戦うこと以外に意義を持たない存在。それはヴァン・ダムが精神のリハビリを断念して戦いに赴くことで念押しされる。衰えた肉体に鞭打って戦う両者とユニソルの宿命が絶妙にオーバーラップして、アクションシーンなのに寂寥感が募りました。「その男ヴァン・ダム」で感じた寂寥感も無意識に重ねていたのだと思う。ラングレンの最後なんて、悲しい存在以外のなにものでも無かったです。終始無表情で台詞の少ないヴァン・ダムは、3作目にして初めてユニソルの設定を正面から演じました。戦いの場から走り去る後姿が印象に残ります。ストーリーはシンプルというより陳腐に近い趣きですが、哀愁を感じさせるアクション映画として評価したいです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-06-24 01:30:41)
105.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》 
邦題の副題にとても説明的な言葉が並んでいますが、その通りの内容でした。その字面がくだらない内容を想像させるので、少し損をしています。いや、実際にやってることはくだらないけど、映画としてはかなり上出来な作品です。トラ、赤ん坊、パトカーなどなど、酒とドラッグで記憶を失くしている間にしでかしたことの残骸を次々に並べて混乱させ、笑いで回収しながらエンディングに向かうストーリーに退屈する暇がありません。途中でマイク・タイソン(本人)にグーで殴られたりもしますが、ありえないと切り捨てるほど荒唐無稽でもないのが上手いところ。事態に対応する3人の個性を上手く使い分けて物語を転がすシナリオが良く考えられていると思います。マフィアみたいな中国人やスタンガン警官にひと泡吹かせてやりたかったけど、主人公たちがやったことを考えると天罰みたいなもんですね。残っていたモヤモヤを晴らすエンドロールの写真集も逸品でした。ニワトリだけが分かんねぇ。下ネタが多いので観る人を選ぶ内容かもしれないが、結婚式を控えた行方不明の友人を捜す真摯な必死さが、くだらないコメディとのバランスを取っています。いい歳した男どもの長年の関係が感じられることが私には好感でした。諸々の調整を経たバカ騒ぎだったのに記憶が無いのは勿体ないことですが、この騒動は間違いなく一生の記憶に残る。独身パーティーの目的は達成したのでしょう。自分にもそんなバカ騒ぎの記憶があります。やっぱり友人の結婚式がらみです。忘れたくても忘れられない。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-04-24 22:37:03)(良:1票)
106.  (500)日のサマー 《ネタバレ》 
止めときゃいいのに、サマーに結婚した理由を問うトム。彼女は誰とも深い関係にならないと言っていた。だから自分たちが別れた理由もそこにあると思っていた。つまり、自分ではなく彼女に原因があると思っていた。「ある朝起きたら、あなたとは違う気持ちを感じたの」。それは正直な台詞なのだろう。しかし、その言葉は限りなく残酷だ。彼女が特殊なのではなく、トムが彼女の心を獲得できなかっただけなのだ。恋愛のカタチはたくさんあって本作もそのひとつだが、そのひとつをかなり深く掘っている。この行き違いに覚えのある者には古傷が疼く映画。自分の傷跡は風化が進んで丸くなっていて助かった。恋愛とは不条理なもの。なぜって、いくら相手を好きになっても、同じだけ好きになってくれるとは限らないから。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-04-18 03:19:42)
107.  月に囚われた男 《ネタバレ》 
まず最初に月の裏側での労働環境の非人間的側面を見せる導入が上手い。孤独と闘うことがテーマなのかと思わせたうえで足元をすくわれるような展開にゾクゾクします。クローン技術がもたらす不具合を大上段に構えるのではなく、主人公が感じる違和感として見せる展開も上手い。自分と同じ顔と同じ記憶を持つ者がすぐそばにいる。今後、起動する自分がたくさんいる。その状況を想像すると、今度はクラクラする。そして個の存在があやふやに崩れていく感じがとても怖い。さらに、たぶん地球で普通に暮らしているオリジナルの「自分」がこの企てに賛同している前提であることに思い至る。これは「自分」と同じ思考を持つ人間が認めたこと、つまり「自分」が認めたことで、混乱が深まります。良い意味で裏切られるのがロボットのガーティの行動です。真相に迫る主人公を抹殺するのかと思ったら、しっかりロボット三原則に則って機動している。本編中に「自分」を除く唯一の味方が血の通わないロボットだったということが物語世界を際立たせます。贅沢を言うと、最後の結び方には少し不満が残りました。株価暴落とか言ってたので、この未来世界にはクローンの使役に不正、もしくは非倫理的という判断があるらしい。せっかくクローンの在り様を良い具合に掘り下げているのに、企業不正に落として気分を晴らすだけでは勿体ない。物語にしっかり人の感情が織り込まれているので、最後までそこにフォーカスして欲しかったです。「ブレードランナー」のレプリカント然りですが、そこまで突っ込めばさらに作品のランクがあがったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-04-04 22:27:33)(良:4票)
108.  たそがれ清兵衛
この映画が心に響くのは、日本人が概念として持っている日本的な美しさが描かれてからなんだと思う。私は「名もなく貧しく美しく」という名作を思い出しました。主人公は好んで清貧をやっているのではなく、家が貧乏なことと、彼が謙虚なことは別のお話。でも、派手な部分が無い生活は身近なものが良く見渡せるのも確かです。それを慈しみ生き甲斐を見い出すには繊細な感受性が必要で、些細なことを愛でるのが日本的な美意識なんだと思う。貧乏をやってる方は堪ったものじゃないけど、観ている分には心が洗われる気分になります。私は礼節や謙虚といった言葉とは縁遠い人間ですが、この映画は美しく映る。日本的な美への憧れがあるのだと思う。江戸時代でも平成でも、ほとんどの人生はある時点からルーチンの繰り返しになります。そんな時、自分にとって大切なものが何かを正確に自覚できている暮らしは揺るがない。そんな部分にも憧れを感じました。宮沢りえの襷がけは良かった。あれって外出時は持ち歩いてるものなんですね。まさに心掛けです。
[DVD(邦画)] 7点(2011-03-09 20:53:57)(良:2票)
109.  ボーン・アイデンティティー 《ネタバレ》 
シリーズ化された初作だけあって、楽しめた作品でした。自分が誰か分からない主人公が、ロジャー・ムーアあたりの007なら目じゃないくらいの機転と格闘能力を見せる。最後まで面白く観られるのは、突っ込みどころが少ないからだ。記憶を失くしても工作員としての能力が維持できるのかという部分が最も不可解だけど、そこさえ許せば、記憶の喪失から起こる騒動としては筋が通っているし、巻き込まれた女性の選択や行動にも不自然なところがない。初見時にはとにかく格闘の切れ味が抜群にカッコ良くって、その印象が強く残った。そこには功罪があって、細かいカット割りとハンドカメラの臨場感は格闘シーンを特長的に演出しているけど、本作以降にやたらとブレブレ画面の作品が多くなった気がする。カメラを揺らせばいいと思っている製作者が増殖して閉口しているんだけど、起源は本作じゃなかろうか。
[DVD(字幕)] 7点(2011-03-03 22:10:54)(良:2票)
110.  幸福のスイッチ 《ネタバレ》 
「虹の女神」を観たときにも思ったことだけど、上野樹里は不機嫌な顔や態度が魅力的だ。電器屋の脇で電球を叩き割る姿に惚れぼれする。かと言って、シリアスな苦悩が似合うかというと全くそんなことは無い。つまらないことにぶつぶつ文句を言って不貞腐れている程度がいちばん良い。また、能力を発揮して成功するような描写より、もっと身近なことに喜ぶ彼女の方が素敵に見える。元来の愛嬌がコメディ向けのキャラだと思うけど、変態ピアニストを演じた某人気シリーズのような狙ったコメディより、ネガティブな態度から滲み出てくる可笑しさが彼女の個性だと思う。長い前置きになったけど、そういう意味で本作のストーリーと役柄はとても似合っていました。特に劇的な展開がある話ではないけれど、上野樹里が目に涙するシーンには彼女にシンクロして同じ気分になりました。本作に幸福になるためのスイッチがあるとしたら、それは他者の意見に素直に耳を傾け共感できる姿勢。言葉にすると簡単だけど、プライドが高く慢性的な不満を抱えている人には容易いことじゃない。しかし、そこから得られる充足を彼女は父親の代打で経験する。また、その姿勢は父親の営業方針そのものでもあり、父親を見る目も変わる。つまりは大人になるってことなんだけどね。「幸福のスイッチ」と言うよりは、まだ「不幸脱出のスイッチ」ってレベルだと思いますが、その大切さを伝えてくれる良作です。もはや浮気疑惑の真相なんてどうでもいいことでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-02-06 18:58:30)
111.  チルソクの夏 《ネタバレ》 
観ていて恥ずかしくなるような演出が随所にありますが、確信犯でやってますね。現代の若者の視点にはもどかしくアホらしい映画かもしれないけれど、同世代人には頷ける部分もたくさんあります。特に私の場合、自分に近い世代のお話で少しでも共感できるところがあると、途端に甘い採点になります。私は高校まで陸上をやっていて、しかも専門が走り高跳びだったので、これに関しては尚更。オリンピックなどを見ているよりもフィールドの空気感が伝わってきて、浸ってしまいました。本作は日韓両国に横たわる歴史のわだかまりを年長世代だけの現象として捉え、ことさら掘下げないことが良かったと思います。全ては過去の世代の出来事と割り切っていることに私は好感を持ちます。「なごり雪」が私的な友好の象徴に使われていましたが、現代もティーン世代がエンタメ系で交流を推進しているようで、こちらも好感を持っております。隣の国なので仲良くやりましょう。余談ですが、走り高飛びを専門にしている女子って確かに昔から美人が多かったですよ、ホント。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-01-26 22:18:07)
112.  マッチスティック・メン 《ネタバレ》 
主人公が観客もまとめて騙す映画は多々あるが、よってたかって騙される映画って少ないんじゃないかな。しかも騙されたまま終わる。新鮮でした。でも、本作の良いところは騙された後の流れです。娘と思っていたアンジェラと再会するが彼女を責めない主人公。それは、偽りの関係だったとしても、彼女との時間を大切にしたいと思ったから。彼女に騙されて失ったものより、彼女が残してくれたものの方が大きかったから。だから彼の中ではいつまでも「愛娘のアンジェラ」なのでしょう。神経症が治り、スーパーのレジ係の女性と再婚するオマケも付きました。ニコラス・ケイジの心情に暖かい灯を残すことが本作のテーマだったと思いますが、さすがにリドリー・スコット。スペクタクルだけではなく、この種の作品でも手堅い手腕を見せてくれます。計算するとアンジェラ役のアリソン・ローマンは当時24歳。ラストの見え方が本来の彼女です。女性のヘアスタイルとメークと衣装には騙されますね。ということで、ストーリー以外にしっかり観客騙しがありました。騙されて清々しい珍しい快作。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-25 22:01:59)
113.  沈まぬ太陽 《ネタバレ》 
企業トップの不正や政界との癒着を告発するような正義を描いた作品とは思わなかったです。一人のサラリーマンの生き方、その矜持とはどういうものかがテーマだと思います。恩地の海外勤務が延長された時、彼には辞める選択肢もあったはず。何故、辞めなかったのか? 負けた気がするからです。誰に? 楽な道を歩もうとするもう一人の自分に。人は基本的に弱い生き物で、すぐに楽な道に流れて行こうとします。そんな誘惑と戦う意思の総体が「矜持」です。自負・プライド・意地・自信・信念・虚栄、などで構成される。それは個をかたち作ると同時に縛るものでもある。自らの矜持と心中するような恩地の生き方は、お世辞にも上手とは言えません。一方の行天も彼なりの「矜持」は持ち合わせているが、順風を受けている時には現れず「欲」によって封じられる。この二人を較べたとき、人間の強さという概念が浮かびます。私は一概にどちらの生き方が良いとは言えません。いつか、それぞれが人生を振り返ったとき、その胸に去来するものでしか人生は測れない。私事ですが、過去に不本意な異動を命ぜられたことのある者として、本作は重い作品であると同時に興味深い作品でした。本作に描かれる矜持は、徹底して楽に生きないための戒めです。私は恩地ほど意固地じゃないけれど、職を辞さないのであれば、不本意と自らの矜持に折り合いを付ける必要が生じます。それは葛藤であり、生き方の軌道修正を余儀なくされる。生き方とは環境と矜持の接点から導かれるのだと思います。個人的に「沈まぬ太陽」とは矜持を抱き続ける姿勢と解釈します。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-01-01 15:19:17)
114.  女の子ものがたり
私はこういう話に弱いタイプ。私が子供の頃に暮らした街中には、この物語にあったような夫婦や家庭の不幸がゴロゴロしていました。その不幸な大人たちは、子供の私には不幸という顔は見せなかったけど、平穏な我家は子供ながらに随分と幸せな部類だと思ったものです。森岡監督はこの種の不幸を湿気を抜きに演出する方で、「子猫の涙」で感心していましたが、その手腕が活かされている。これは不幸自慢の映画ではないので。本作は、現代に生きる主人公が改心するとか、ギアを入れ替えるとかいう類いの啓蒙なんて一切無く、ただ子供の頃を振り返るだけです。それでも、主人公の人生にあたたかい厚みを感じさせてくれる。子供の頃の記憶は財産。それだけで満足できる作品でした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-12-19 14:17:55)
115.  母なる証明 《ネタバレ》 
無実を晴らそうとするのが母の愛なら、無実の演出に人を殺すのも母の愛、そして無実の青年に罪を着せるのも母の愛。つまり、そこに正義や道徳はありません。そんなものは、母の愛の前には二の次の論理なのである。道徳観や倫理観は人が社会を形成する際に、必要に応じて後天的に作られた価値観。それに対して「母の愛」は人が子孫を残すために備わっている本能を、行動的に類似した部分が多い「愛」で代替形容したものだと本作を見ていて思う。どちらが強いかって言ったら、そりゃ後者ってことになる。ご丁寧に「バカな子ほど可愛い」というオプションまで付けてある。その母の愛に対照させるのが息子の感情。コメディ要素だったはずの「バカな子」が、後半になると心情にベールを掛ける役割を果たす。廃品回収じいさんの焼死の真相に気付いていることを匂わせ、さらに気付いても忘れそうな記憶力の無さはサスペンス&ミステリーとして機能するが、なにより母の想いを素通りさせているような不透明さが、母を不安にさせ、母の愛を孤立させて行く。一方通行の行き着く場の無い本能的な愛。それは誰も見ていない原っぱで一人で踊る虚しさに等しい。ありふれた日常に隣接する非日常を軽々と残酷に切り取る芸当はこの監督の確固としたオリジナリティ。本作でもそれを確認させてもらいました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-12-18 13:58:32)(良:2票)
116.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 
これは我々の地球の話ではありません。フィクションだから殺し放題です。誰を殺すかには法則があるみたいです。何かに執着した人物だけが死んで行きます。征服でも、虐殺でも、復讐でも、逃亡でも、背信でも、恋愛でも、目標が近づいた途端に死神が取り憑きます。泰然とナチ狩りをいそしんでいたブラピは生き残ります。これを何かのメッセージと解釈するほど、タランティーノを理解しようと思いません。ものごとを素直に成就させることを極端に忌み嫌う監督さんの癖のようです。へそ曲がりです。でも、とても楽しめました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-12-14 00:52:36)
117.  エスター 《ネタバレ》 
ゾンビや霊体は出てこないけど、これはサスペンスというよりホラーですね。かなり良質です。エスターが怖い。その狡猾と残虐がストーリーとして周到に構成されていて見応えがあります。同性の勘か母性の本能か、母親だけがエスターの異常に気付く。それを相手にしない旦那やカウンセラーにイライラします。その組み立てはこの種の作品の常套だけど、本作の面白さはエスターの悪意が母親の想像を越えているところにあります。それは同時に観る側の想像も越えているということ。純粋な悪意を持っている人物に対しては、「警戒」するだけでは無防備と同じだということが良く分かる。最後にエスターの素性が割れますが、化粧をして旦那に迫ったのはギャグではなくマジだったようです。彼女の一連の行動の動機は成熟した女性として男から愛されること。きっとそれが叶わず精神が歪んで行ったのですね。あのメークに萌えた人もいると思うが、そういう趣味人を捜せば良かったのにね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-11-21 11:47:42)(良:2票)
118.  深呼吸の必要 《ネタバレ》 
「深呼吸」は暮らしている場所を離れて自分を見直すような意味合いだと思うけど、それよりもイベント的コミュニティがもたらす一体感や達成感の方にポイントが置かれた作品だと思いました。感激しすぎて大森南朋のように同じ仕事を続ける人も稀にいるけれど、大方は元の日常へ戻って行く。本人を取り巻く環境が何も変わらなくとも、物事を前向きに考えられる自分がいるはず。由緒正しい「リクリエーション」を見せてもらいました。彼らの内面の化学変化が分かりやすく沁みこんできて感動的です。トラウマを抱えた医師の再生はあざとい感もあったけど、彼だけは確かに「深呼吸」になったようです。それにしても、本作の「きび刈り隊」の女性陣の偏差値の高さは異常。深呼吸する前に過呼吸になりそうです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-11-15 21:40:52)(笑:3票) (良:1票)
119.  スペル 《ネタバレ》 
グロさが笑えるサム・ライミらしいホラーの復活、なのかな? まず、オープニングの「GHOST HOUSE」マークが笑えました。分かりやす過ぎ。唐突に「花やしき」のお化け屋敷が浮かびました。その連想はあながち間違っておらず、オーソドックスさが微笑ましいホラーです。入れ歯とか、ハエとか、義眼とか、汚い爪とか、レアもののコインとか…。撒き散らしたオブジェクトを上手く回収してまとめる手腕はさすがベテランって感じです。駐車場での乱闘で、入れ歯が吹っ飛んだ自覚がなく噛み付くババアに大笑い。しかも、入れ歯をはめ直してもう一回チャレンジするもんね。不条理な呪いを掛けられたお姉ちゃんが、ババアの墓を暴いて死体の口に呪いを突き返す逆襲には力が入りました。そんなシーンに力を入れる自分が可笑しかったりもする。この人、某シリーズで「力と責任」なんて真面目なテーマを探求するより、本作のような気楽に観られて笑えるホラーを作るほうが才能の有効活用だと思う。「地獄へ引きずり込め!」ってシンプルで愉快な原題に対して「単語の綴り」って邦題が不可解で調べたところ「呪文」って意味もあるのね。でも、原題のノリが感じられない。邦題にも「死霊のはらわた」レベルの創作力がほしいところ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-11-08 22:39:28)(良:1票)
120.  キャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~ 《ネタバレ》 
自分が物心付く前のアメリカ音楽シーンを見せてもらえるのは興味深かった。「サーフィンUSA」が盗作だったなんて初めて知りました。「ドリームガールズ」や「レイ」などと同じで、昇り調子の時は全能感を覚えるほど全てが上手く転がって行くようだけど、芸能世界の人気は下降線を描くもの。そのときに人間ドラマが始まるって感じでした。みなさん書いてますが、ビヨンセの歌唱力は流石でした。これ、いい映画だと思ったんだけど、レビューが少ないですね。周りに吹聴します。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-10-13 21:15:53)
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