101. ハプニング
『レディ・インザ・ウォーター』以来の、待望のM.N.シャラマンの新作。 この作品も、シャラマン作品らしく人によって評価がわかれるとは思うが、私は好きだ。 目に見えない敵と闘う恐怖、時にその"敵"よりも怖くて残酷な、"人間"の描写。 何もないところでも、音楽と絶妙の演出で怖がらせてしまう。 ここに好き嫌いが出るだろうが、私はシャラマンの映画のこの要素が大好きなので、今作でも何もないところでビクビクしっぱなしだった。 そして人によって解釈が違うだろうが、救いのないエンディング。 今作は特に人間の地球への暴挙について問題提起していたと思う。 シャラマン映画は見終わった後、暗い気持ちになる。 人間の深いところを突いているからだろうか。 救われないエンディングだからだろうか。 しかし、私がシャラマン映画を見る理由の1つにこの観賞後の胸の痛みを求めているのも、また事実である。 [映画館(字幕)] 7点(2011-01-27 16:03:07) |
102. インファナル・アフェア
この映画は凄い。 散々語り尽くされてきて今更だと思うが、遅ればせながらこの作品を見て、凄い映画だと思った。 主役の2人の迫真の演技もだが、各場面に張られた伏線の巧妙さ。 次にどうなるか予想がつかない"見せ方"の上手さ。 そして、この緊迫感の中でも決しておろそかになっていない人物描写。 ネタバレになるのであまり語れないが、一見の価値はある作品だと思う。 [DVD(字幕)] 8点(2011-01-27 16:01:16)(良:1票) |
103. 最終兵器彼女
高橋しんの同名タイトルの漫画を映画化した作品。 私自身、原作漫画が好きな分この映画の出来にはがっかりだった。 まず主演の窪塚俊介の演技が、素人かと思うほどに下手。"てつ先輩"役の役者さんも下手だった。 そんな役者の演技に対しての不満と、世界観に対しての不満。現代の日本、札幌の空に戦闘機が飛び交うのは、漫画ではよいとしても、映画ではリアリティが無い。 そして、この映画のコンセプトが戦争なのか、SFなのかパニックなのか恋愛なのか…全くもって定まっていないと思う。 これは明らかに映画版の制作者側のミスである。 原作とは違ったラストも、少し受け入れがたかった。 結論として、原作ファンは勿論のこと、一般の人でも楽しめない映画になってしまっていると思う。 [DVD(邦画)] 3点(2011-01-27 16:00:13) |
104. 28週後...
"28日後"の続編にあたる作品。 "28日後"と同じ、ウイルスで人が凶暴化していった近未来、という世界観で発生から"28週後"のお話。 前作同様、空が突き抜けるように青い。自然が美しい。…自然だけは。 そこに存在するのは、生き残った僅かな人たちと、ウイルスによって醜い怪物と化したヒト。ヒトであったモノ達。 若干無理やりなところもあるが、パニックホラー映画の中ではストーリー性がある方だと思う。 ただ、前作に比べてグロい描写が増えた気がするが。 そして、ラストに何とも言い難いものを感じるのも、前作同様。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-27 15:58:01) |
105. 犯人に告ぐ
トヨエツが長々と喋っていると眠くなるのは自分だけだろうか… 全編トヨエツ芝居が際立っている作品。 劇場型犯罪を描いた小説を劇場化したというのは、フィールドとしては合っているのかもしれない。 トヨエツ演じる巻島の、酸いも甘いも経験した大人の男と、ボンボンの2世坊ちゃんとの人間性の対比が面白い。 ドラマの核である事件の方も2つとも上手く収束させているなと感じた。 決して名作!というわけではないが、佳作としてよくできている作品。 [DVD(邦画)] 6点(2011-01-27 15:56:58) |
106. 題名のない子守唄
一見、タイトルからして優しいヒューマンドラマかと思うが見てみると良い意味で期待を裏切られた。最初から終盤までサスペンス風に進んでゆく作品。 見終わった後に話として並べてみると、特段目をひく部分があるわけではないが、何分見せ方が良くできている。 謎に包まれたまま始まり、所々で挿入される回想で余計に謎が深まる。推理する内にミスリードに引っ掛かる人も居るかもしれない。 物語の全容が気になって最後まで惹き付けられてしまうので、退屈だと感じる暇はないと言える。 見せ方以外で良いと思ったのは音楽である。弦楽器の演奏が、観客の不安感を煽るのに一役買っている。 重いテーマを扱っているが、そこで息苦しい映画にせずにサスペンスというエンターテイメント性を取り入れたのは考えあってのことであろう。 終盤全ての謎が明らかになった後はヒューマンドラマとして感動できるが、それまではサスペンステイストで進んでゆくので、常に頭を回転させながら観ていなくてはいけない作品。何も考えずにぼーっと見たいという時には適さないが、是非この世界観に浸って欲しいと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2011-01-27 15:54:03) |
107. ナンバー23
《ネタバレ》 サスペンスホラーテイストで進んでいくが、ラスト15分程で教訓映画になるという、なんとも不思議な作品。 ネタバレ気味になるが、"悪いことはしてはいけない。それはいつか自分自身にかえってくる"という教え(?)が込められた映画。 公開当初にサスペンスホラーを期待して見に行った人は、終盤で肩すかしをくらったのだろうな、と想像できる。 話としては、ありきたりな展開だし、しかもラストで(予兆は途中の展開からあるのだが)いきなり家族ドラマに方向転換しているあたり、ストーリー面での評価は高くないのだが、それを補う演出と音楽があった。 演出と音楽の絶妙さで、何もないところでも無駄にびくびくさせられたし、ダレることなく終盤までグイグイと引っ張っていくような、スピーディーな演出は巧みだった。 ストーリーでは5点だが、演出と音楽で+1点。 「isn't it?」で終わるラストは最高に小気味よい。 変わり種的な作品が好きな方は是非。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-27 15:52:58) |
108. ミスト
サスペンスホラーかと思いきや、異生物襲来パニックホラーだったこの作品。 序盤は、異生物のCGが安っぽい上に、エグい描写が多くてイマイチだな…と思っていたが、中盤から"極限状態における人間の心理状態の変化"を描きたかったのかも…と思い直してみた。 そういう視点で見てみると、いかに人間が脆いかということが酷に描かれていると思う。 だが、ラストの展開には虚脱感を覚えた。あまりにも救いようがない終わり方。 結局は、彼らも冷静なように見えていて、他の人たちと同様に正常な判断思考を失っていた、ということなのだろうか。 後味がもの凄く悪く、もう一度見たいとは思えない作品。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-27 15:50:42) |
109. カメレオン
主役のファンなので、少し期待して見てみた。 感想としては、アクションシーンは一流だと思うけど、他は・・・。 リメイク作で、元の作品を見ていないので何ともいえないが、多分元の方が面白いんだろうな、と漠然と感じた。 リメイク故、あえて古くさく撮っているのが、"携帯"などの現代的なアイテムとマッチしていない。故に、所々で違和感を感じる。 キャラクターの掘り下げ方も、甘かった気がする。中途半端に書き込むぐらいなら、徹底して描いて欲しかった。 正直、次々起こる出来事とアクションの勢いで最後まで持ってきた感がある。 勢いが悪いとは思わないが、それだけで突っ走るのはどうかと思う。 藤原竜也の演技とアクションシーンを評価して、この点数。 [DVD(邦画)] 4点(2011-01-27 15:49:21) |
110. 再会の街で
正直、見る前に期待しすぎた作品かもしれない。 9.11で家族を失って独りになった男と、かつて大学の寮でルームメイトだった男がNYの街で再会する。 家族を失った男は心を閉ざしていて… あらすじとしては、こんな感じ。 120分と長い割には、何かスッキリとしない。 傷ついた男が再生する物語かと思えばそうではなく、どちらかといえば心を閉ざした彼を周りがどう受け入れていくか、そんな話のように感じられた。 "彼なりの生き方"を見つけていこうとするのはよいと思うが、やはり観客としては、映画の上映時間の中で立ち直って欲しかった。 キーワードになっているNYの街という設定や、"父親の死"などの出来事も上手く活かせてないように思った。 しかし、家族を失った男の悲しみは伝わってきたし、随所で70年代、80年代の曲が挿入されるという"音楽"をキーアイテムとした演出はよかったと思う。 どこがどう悪いというわけではないが、見終わった後にモヤモヤしたままなのが惜しい作品。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-27 15:47:06) |
111. 潜水服は蝶の夢を見る
"生きる"とはなにか、そんなことを見終わった後に考えさせられる作品。 主人公は脳機能は生きているが、まばたきしか出来ない。それでも生きていた。必死に"まばたき"で言葉を綴っていた。 実話に基づく作品だということなので、どこまでが実話でどこからがフィクションなのかがわからないが、主人公が必死に生きた、これは確かなことだと思う。 若干酔うが、主人公の見ている映像を観客が見るという作り、すなわち主人公と"目"を共有するという演出は、とても感情移入しやすい。 しばしば、本当に自分に話しかけられているような錯覚に陥った。 随所に挿入される、主人公の想像から生まれる映像も美しい。 この作品がこれほど高い評価を受けたのは、実話に基づくからだと思うが、自分もこの"主人公"が綴った本を読んでみたくなった。 [DVD(字幕)] 7点(2011-01-27 15:45:44)(良:1票) |
112. 記憶の棘
身勝手な大人たちに翻弄された、少年の物語。 この解説だけで、若干ネタバレしているかもしれないが… 亡くなった夫の生まれ変わりだと名乗る少年がいきなり現れる、という設定が面白い。 オチがわかってしまえばなんともないが、わかるまでのスリルはたまらない。 10才の少年と関係を持ちそうになる、主人公にもハラハラさせられる。 主人公含め、少年に関わった大人たちはあまりにも身勝手だが、映画として美しく描こうとするばかりに、身勝手な大人たちの人間臭さが薄れてしまっている。 "美しい映画"として収めるならそれでもいいかもしれないが、もっとキャラクターに人間臭さを出したら、また違った面白味が出たかもしれない。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-27 15:44:05) |
113. パンズ・ラビリンス
この作品は"ダークファンタジーだ"といって宣伝されていたので、てっきり"世にも奇妙な物語"や"ウルトラQ"のような作品を想像していた。 私の"ダークファンタジー"という言葉に対する捉え方が間違っていたのか、それともこの映画の宣伝が間違っていたのかはわからないが、少なくとも"世にも~"や"ウルトラQ"のような作品ではなかった。 この映画は暗く、悲しいお伽話。 私は、この話は内戦の中を少女が必死で生きた記録だと思う。 争いと少女の世界。この二つを見事に融合させて描ききったのはすごい。 ラスト、救われるような気がするのは自分だけだろうか… 映像も美しく、音楽も耳に残る。万人受けするとは思わないが、自信を持って人に勧められる作品。 [DVD(字幕)] 7点(2011-01-27 15:42:40) |
114. ゾディアック(2007)
《ネタバレ》 とにかく長い。全編157分の映画。 実際にあった未解決事件を、デビット・フィンチャー監督が映画化した作品。 正直、最初の方は殺人のシーンで明るい音楽が流れていて、いいのか…?と思ったが、終盤では主人公が真剣に犯人を追い詰めようとする姿が描かれていて、殺人犯"ゾディアック"をきちんと"悪"として扱っていたように見えたのでよかった。 やはり、実際にあった事件の犯人をヒーロー化してしまうのはどうかと思うので、その点は安心した。 映画本編だが、とにかく長い。1時間半の映画も増えてきている中、2時間半の映画というのは観る側にもキツいものがある。 しかし、監督の演出が相変わらず上手だったおかげで、そこまでダレることなくラストまで見ることが出来た。 ただ、扱っているのが"未解決事件"なので、残念ながら映画の方も、やはり未解決のまま終わる。 そこが2時間半の大作映画の割に、スッキリしない要因か。 劇中で犯人は2人いた?等、色々匂わせているのは面白かったが。 2時間半の余裕があり、なおかつ見終わった後にスッキリしなくてもよい、という方にはオススメ…。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-27 15:41:03) |
115. クロスファイア(2000)
宮部みゆきの同名小説を、ガメラの監督でもある金子監督が映画化した作品。 私は小説の方は読んでいないが、映画の方はイマイチだった。 サイコキネシスを使って、法で裁けない犯罪者に制裁を加える…という宮部みゆきの小説のアイデアは面白いが、この作品は、小説を上手く映画化できてはいなかったと思う。 酔いそうなカメラ割り、役者の演技があまり上手ではない、台詞で説明させる場面が多いなど… 挙げていくとキリがないが、もう少し別のアプローチの仕方もあったのではないかと残念である。 説明台詞が多い割りに、ラストよくわからないままで終わるのも如何なものか。 [DVD(邦画)] 4点(2011-01-27 15:39:19) |
116. ヘアスプレー(2007)
とにかく明るいミュージカル映画。 舞台は60年代アメリカ。主人公のトレーシーはぽっちゃりめの女の子だが、ひょんなことから夢の"コニー・コリンズショー"に出演することになる。 太っているトレーシーを認めないライバルや、TV局に根強く残る黒人差別と闘っていくトレーシーの奮闘劇。 とにかく、トレーシーのママの引きこもり、黒人差別の問題、トレーシー自身の奮闘…と、エピソードは盛りだくさん。 それがほぼノンストップで、歌を織り込みながら進んでいくので、飽きはしない。 ただ、テーマを詰め込み過ぎていて、いまいち訴えかけたいこと、メッセージが明確にわからなかったのが残念。 しかし、主人公であるトレーシーの、無邪気で明るいキャラクターには好感が持てるし、ミュージカル映画の核である音楽もよい曲ばかり。 落ち込んでいるときなどにオススメの映画。 [映画館(字幕)] 7点(2011-01-27 15:38:07) |
117. あるスキャンダルの覚え書き
下手なホラーなんかよりよっぽど怖い作品。 ストーリーとしては、若い女教師の弱みを握った年配の女教師が、その女教師を心理的に支配しようとする…というもので特に目新しくはないが、演出が怖い。 全編緊迫した空気で進んでいくので、ドロドロしたものが苦手な人にはオススメできないかも。 女同士の感情のやり取りや関係性…自分も女性だが、理解し難い部分はある。 その理解し難い部分を、意欲的に描いた作品だと思う。 音楽も綺麗で、おどろおどろしいものばかりだったが、その音楽が映画をより一層引き立てていたように感じた。 女の怖さを知りたい人にはオススメ。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-27 15:37:03) |
118. ザ・マジックアワー
TV番組の宣伝で、三谷監督が「最高傑作です。」と言っていたが、まさに映画の三谷作品では最高傑作といえるだろう。 前作"有頂天ホテル"も大好きだが、有頂天ホテルは人物像の描写よりも、シチュエーションを重視していたような気がする。 それはそれで、場面ごとに笑えてよかったのだが、今回は前作よりもさらに深い人物描写がされていて、ストーリーに重みが増していた気がした。 加えて今作は、マフィアが絡んでくるので、今までの映画の三谷作品にはなかった緊迫感"生きるか死ぬか"があり、観客も手に汗握りながら見ることができると思う。 もちろん、ギャング映画ではないので、バタバタと人が死んでいく…なんていうことはないのだが。 設定としては、三谷監督お得意の"勘違いから巻き起こる喜劇"なのだが、今作ではあまり笑わせよう、笑わせようとはせず、人間の汚い部分や、どうしようもない性を描いていたように思う。 だけど、それでも人間という生き物が愛おしいという、監督の思いが伝わってきた。ラストはそんな監督の優しさにあふれたものになっている。 全編を通して、三谷監督の日本映画への愛情が伝わってきて、昔からの映画ファンの方にも見て欲しいなと思った。 可笑しくて笑って、そして人間ドラマに少し涙させられて。 笑いと感動のバランスが絶妙の、老若男女誰にでもすすめられる映画だと思う。 役者たちもいい仕事をしていたと言えるだろう。特に主演の佐藤浩市は、絶妙な演技を見せてくれた。 監督も言っていたが、彼の新しい引き出しを開けたのではないだろうか。 余談だが、各所で出てくる豪華キャストをチェックするのも楽しみの1つ。前作"有頂天ホテル"からのキャラもいたりと、サービス精神旺盛だった。 [映画館(邦画)] 8点(2011-01-27 15:35:03) |
119. ラスベガスをぶっつぶせ
正直、期待し過ぎたかもしれない。 "MITの天才たちがベガスで大儲けする"というテーマに凄く興味をひかれたのだが、映画本編では、その"ベガスで儲ける"というのはあくまでエッセンスの1つでしかなく、結局は1人の青年を取り巻く出来事を描いた、青春映画のような気がした。 所々で数学の雑学的な話題が入っているのはよかったが。 しかし、映画といえどもとんとん拍子に事が進みすぎ。そのせいでラストは心地良いといえば心地良いが、後からじっくり考えてみると、本当にそれでよかったのかと思えてくる。 本当に彼自身の成長に繋がったのかと。 まあ、エンターテイメント作品なので、そこまで深く考えるべきではないのかもしれないが。 [映画館(字幕)] 6点(2011-01-27 15:32:10) |
120. 七人の弔
ダンカンの初監督作品。予告編を見てから、ずっと見たいと思っていたのだが、先日ようやく見ることができた。 予告編通り、ブラックでいてシリアスな映画。親に売られた子どもたちと、子を売る親たちのやり取りをブラックジョークを交えながら描いている。 私はこの作品にどこか違和感を感じた。新人の役者の演技にか、淡々としたダンカンの喋りにか、それともこの作品の世界観にか。 どちらにせよ、この作品は違和感を感じるべき作品だ。もしかすると、ダンカンも敢えてこの"違和感"を観客に伝えているのかもしれない。 この作品で描かれていることが、まかり通っていいわけがないのだから。 肝心のストーリーだが、予想通りのオチ、というわけではなかった。 ただ、どちらに転んでも悲しすぎる。 もしこの映画が隙なく完璧に作られていたとしたら、「誰も知らない」ぐらい涙させられただろうし、考えさせられもしただろう。 しかしそれはそれで恐ろしいので、個人的には、この"惜しい"ぐらいの出来でよかったのではないかと思う。 個人的には、「オールド・ボーイ」に並ぶ"見終わった後に憂鬱になる映画"であった。 (レビューを書いた2008年当時) [DVD(邦画)] 6点(2011-01-27 15:29:43) |