1201. 王は踊る
解釈は色々とありそうですが、私は額面通りルイ十四世への、リュリの永遠に叶わない片思いの物語と受け取りました。彼は王に服従どころか、狂信的に仕えていく。何処へ行くにも付き従い、いつ何時もBGMを欠かさない。それは全て王を称える為。特に野営地のテントで、ルイの夜の営みを除き見ながら、その動きに合わせて楽団を指揮するのが凄い。しかし、映画は時代を描くことに熱心で、人間ドラマとしては確かに弱くなってる気がします。そしてその時代を満喫するにも、豪奢な映像を映し出す大画面と、壮麗なバロック音楽を再現できる音響設備は必須です、5点献上。 5点(2004-10-13 23:15:28) |
1202. 甘い嘘
「レベッカ」風スリラーをベースに観客をミス・リードしていく、実は(ハリウッドに毒された)エロティック・サスペンス映画の「ゲーム」風フランス版複製。アメリカ製の同ジャンル物よりは映像も美しく、あり得ない設定に目を瞑れば中々楽しめる仕上がりではあります。しかし、こういう映画の最大の弱点が、罠にかけられる人間の行動予測性と罠をかける人間の動機に対する説得力。ここは相変わらず弱い。それに同じオチでも、本来ならもっと衝撃的に開示するのがセオリーというもの。「裏窓の女」という官能系パッケージでビデオ・DVD化されてしまうのもやむを得ません、5点献上。 5点(2004-10-13 23:15:03) |
1203. ぼくのバラ色の人生
日本に入ってきてなかっただけかもしれませんけど、まず典型的なサバーブを舞台にしたヨーロッパ映画ということが珍しかった。そのライフ・スタイルはほとんどアメリカのそれと一緒、そして住人が極端に保守的であるという点も同じ(舞台はベルギーなんでしょうか、フランスなんでしょうか、若しくはパロディなんでしょうか?)。性同一性障害だろうが、女装趣味だろうが、ゲイだろうが、息子をそのまま受け入れてあげたい気持ちと、社会常識を振りかざす世間の目との間で苦悩する家族。映画としてはラストに救いをもたらした感もありますが、基本的にはある共同体から排除される異端者家族を描いている。しかし、まるでリカちゃんハウスの様な女性化への幼い憧れは、物語の主題を不明確にしてしまったと思います、6点献上。 6点(2004-10-13 23:14:38) |
1204. 五月のミル
1968年の五月革命を背景にしながら、その熱気から遠く離れた田舎の屋敷で、遺産分配にドタバタしている家族を描いたコメディ映画(確信はないですけど、これも舞台劇の映画化でしょうか)。本作で私が何よりも気になったのは、この人達の恋愛バトルロイヤル。この近親浮気がサラッと粋に描かれてるのは、正にフランス映画ならでは。やがて感心も関係もなかった「革命」にも翻弄される家族達。しかし革命自体と同様に、最後は家族の関係にも全く劇的な変化は訪れず、それぞれが日常へと散っていく。これもまた、家族の絆の一形態を描いていたのでしょうか? 6点献上。 6点(2004-10-13 23:14:12) |
1205. ラッシュアワー2
前作も大して面白い映画だとは思わなかったけど、今作はそれに輪をかけてつまらない映画になってると思う。ジャッキー・チェンの弾けないアクション、クリス・タッカーの寒いギャグとオーバー・アクト、しょぼくれてしまったジョン・ローン、きっとヒスパニック系というだけで登場したロセリン・サンチェス、そして辻褄のまるで合わない無理矢理なストーリー…。最も許せないのは、どうして旬のチャン・ツィイー嬢に、全く似合わない濃厚メイクを施すかなぁ。これだけでブレット・ラトナーの才能の無さが判るというもの。まさかこれ、タッカーが宣言した様に「3」もあるんでしょうか? 3点献上。 3点(2004-10-09 00:39:26) |
1206. ラッシュアワー
アジア系とアフリカ系のコンビが主役というのは、ハリウッド映画としてはかなりの冒険だったと思います。水と油コンビのバディ・ムービーに、カルチャー・ギャップ・コメディを織り交ぜ、(【NOPPO】さんのご指摘通り)ブラック・カルチャーをベースにジャッキー・アクションを紹介するのは頭の良いやり方だとは思いましたが、如何せん、ストーリーはご都合主義が過ぎてあんまり面白くない。でもアメリカでは大ヒットし、その後ジェット・リー等も同じブラック・テイストで映画を撮り続けている所を見ると、本作の影響力は大だったのではないでしょうか。ということで、(↓)私も無難に5点献上。 5点(2004-10-09 00:39:07) |
1207. クライム アンド パニッシュメント
確かにこの映画には「罪と罰」よりも「クライム・アンド・パニッシュメント」という響きの方が合ってる(イングリッシュ・スピーカーには同じでしょうけど…)。豪華な脇役が演じるそれなりにドロドロした展開は中々面白く観れましたけど、罪も罰もほとんど描けてないじゃん。罪も罰も刑事上の問題じゃなくて形而上の問題だってのが解ってんのか。それにしても誰だ、このパツンパツンのねーちゃんは? モニカ・キーナ? 聞いたことあるな…‥、ええ~っ、この娘が「スノーホワイト」の白雪姫!? 面影まるで無いじゃん。お前はアメリカの斉藤こずえか!(古~) お前で-1点じゃ、4点献上。 4点(2004-10-09 00:38:45) |
1208. ミステリー、アラスカ
原題通りとは言え、確かにこの邦題は酷い。私はてっきり「インソムニア」の様な映画を想像してました。日本人の何人がこの邦題からアラスカ州ミステリー町(?)を連想できる? これは「佐賀県三日月町」という人情溢れる邦画を、“Crescent, Saga”というヨーロッパの歴史物風タイトルでアメリカ公開する様なものです。で、中身の方は、これまた絵に描いた様にライトなスポ根コメディ。主人公と妻の関係や町の退っ引きならない事情等を深く描けてれば、後半はもっと燃えたと思いますけど、戦う理由がどーでもいい「町の誇り」の為だけじゃ、映画自体も不完全燃焼です、5点献上。 5点(2004-10-09 00:38:24) |
1209. 不射之射
上海美術電影製片厰に招かれた人形作家・川本喜八郎が、中島敦の「名人伝」を原作に中国で作り上げた人形アニメーション。老荘思想の教訓溢れる物語は、日本人の原作・監督作品とは思えないほど中国的。日本語版の橋爪功のナレーションにも味があり、淡々と、そして見事に人形達が「真の極意」とは何かを教えてくれます。これが日本人の手によるものと考えると、少し誇らしい気持ちにもなりますネ。これ、東京MXテレビで観たんですけど、MXって石原都知事の記者会見を中継するだけじゃなかったのね。う~む、これは中国アニメと共に東京MXも侮れんな、7点献上。 7点(2004-10-09 00:37:17) |
1210. 銀河鉄道の夜(1985)
つまらない、本当につまらない。アニメーションでここまで退屈な映画は初めて観た。児童文学を原作にしながら、小さな子供がこの冗長さに耐えられるとはとても思えないし、少年に夢や勇気や興奮を与えられるとも思えない。成人が観て、この演出や美術・技術・作画レベルに満足できるとは思えない。従って、一体誰に向けた映画なのかさっぱり判らない。どっちが高尚とかいう問題ではないですけど、宮沢賢治の文学を松本零士のマンガ以下に確実に貶めてると思う。そもそも別役実に脚本を書かせているのが解らない。こういうのを企画倒れと言うのだと思います、2点献上。 2点(2004-10-09 00:36:53) |
1211. ナーザが海を騒がす / ナージャと竜王
ナージャというキャラクターは、中国では日本での桃太郎並にポピュラーなのだそうです。従ってこのアニメーションも中国人と言うか、中国の子供達には面白いのかもしれませんけど、それでもかなりの低年齢層向けだと思う。それにしてはこのナージャ(母親の生んだ蓮の中から孵るというのは釈迦のイメージ?)、無敵の上にかなりの傍若無人ぶり。情け容赦無く竜神の「筋」を抜いてしまうというのも、結構引いてしまう設定です。技術的にはほとんどディズニー・アニメの模倣みたいだし、京劇的演出を除くと、物語的にも個人的には面白くありませんでした。そういう訳で、3点献上。 3点(2004-10-09 00:36:31) |
1212. 牧笛
これは凄い! 技術には感動しないと書いたこともありましたけど、前言撤回。感動しました。この絵がどういう風に描かれ、このアニメーションがどういう技法で製作されているのか全く解りませんが、とにかく凄い。目を見張るとはこのことです。水墨画(水彩画?)が、見事に自然に動いている。人の動きはモーション・キャプチャー(アナログ風に言えばライブ・アクション)を使用したとしても、水牛が、鳥達が、水墨画でありながら実写の如く動いている。背景美術の芸術性とその表現手法の自然さもまた凄い。本作と比べれば、デジタルを駆使した水彩アニメ「ホーホケキョ となりの山田くん」なんて子供のお絵描き。中国では40年以上も前にこんな技術が完成していたんですねぇ…。流石4,000年の歴史、大陸は奥が深い、8点献上。 8点(2004-10-09 00:36:10)(良:1票) |
1213. モンスター(2003)
「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップや「ロード・トゥ・パーディション」のジュード・ロウ等にも感じたことですけど、最初は超美人女優がわざわざ不美人を演じることに違和感があり、単なる賞狙いとしか思えませんでした。しかし観終わってみれば、前述の男優達とは違って、この役にはシャーリーズ・セロン以外は考えられない程の説得力。また、こういった社会性のあるシリアスな作品では、とかく失敗しがちなアメリカ映画的演出が、本作では非常に効果的だったとも思います。本当に凄いモノを見せて貰いました。生きる為だけに男を殺し続ける「怪物」を造り上げたのは男達自身。だから安らぎを見出せる相手は必然的に女だった。きっと世界中に無数のアイリーン・ウォーノスがいるに違いありません、8点献上。 8点(2004-10-05 00:19:30) |
1214. ヴィレッジ(2004)
私は結構「サイン」が好きなんですよ。それは「ストーリー自体」にサスペンスとパラダイム・シフトがあったからです。しかし本作のストーリーはほとんど一本調子で、最後のアレはどんでん返しでも何でも無い(てか、盗作騒ぎがあった様に、すっかり使い古されたネタ)。だから私にとっては最初から最後まで全く予想通りの展開。大体、シャマラン映画に宣伝通りの内容を期待する人も既にいないでしょう。中盤は「アンブレイカブル」並に眠くなるし、【ちょび】さんの仰る様に「オチの為に映画を作った」感は否めません。オチがどうこう言う以前に、本作は単純につまらないです、4点献上。 4点(2004-10-05 00:19:04) |
1215. 白いカラス
現代風の悲惨なエピソードを色々詰め込んで人生の悲哀を描こうとしたものの(しかし、人種転換以外は珍しくもないエピソードばかり)、それらが相乗効果を生み出さずに中和し合って、全く印象に残らない散漫な映画になってしまったという感じ。これは脚本の未整理が決定的な敗因です。どれかのエピソードをばっさりと切り落とし、視点をゲイリー・シニーズ演じる作家に固定し、運命の皮肉に翻弄されるアンソニー・ホプキンスのアイデンティティを巡る物語に特化すべきだった。悪戯に豪華キャストを配置してしまった為、後からエピソードやキャラクターをいじれなかったことも、自らの首を絞める一因となってしまったのでしょう。そういうことで、「白いカラス」と聞けば、ついハカイダーの愛車を連想してしまう私ですが、3点献上。 3点(2004-10-05 00:18:33)(良:1票) |
1216. 真珠の耳飾りの少女
絵の具が乾く前にモデルになった女を孕ませてしまうという風評の、そして現に四六時中妻を孕ませているフェルメールが、何故グリートには手を付けなかったのか。彼女の芸術に対する才能の部分と共に、その辺をもう少し明確にして欲しかった気もします。しかし本作はストーリー以前に、絵画の様に官能的な画作りと、中世ヨーロッパ女性のイメージ通りのルックスを持つスカーレット・ヨハンソンを、正に「鑑賞」する為の作品なのでしょう(この辺の出来は「フリーダ」等よりも遥かに優れてる)。ところで、私はラスト・カットの「真珠の耳飾りの少女」とこの物語はどうにも結びつかなかった。グリートは常に哀しみに憂いている様な目をしてましたけど、絵の中の少女は、もっと明るく無邪気な目をしている様に見えました、6点献上。 6点(2004-10-05 00:18:13) |
1217. デュラス/愛の最終章
これはマルグリット・デュラスを知らない人には薦められません。例え著作を読んだことがなくとも、彼女がいつ頃どの作品を著し、晩年どの様に暮らしていたのかを知らないと、映画が何を描いているのかさっぱり解らないでしょう。本作は観客がそれらを既に知っていることを前提とし、デュラスと愛人ヤン・アンドレアとの愛憎のディティールだけを描写することに腐心しています。創作のダイナミズムや人間デュラスに迫ることもなく、時の流れは著作のタイトルだけで表現し、短いシーンがひたすら積み重ねられていきます。デュラスを演じるのは「愛人/ラマン」同様、デュラスの盟友ジャンヌ・モロー。15歳で中国人の愛人になった少女は、66歳で38歳年下の愛人を囲う老女になる。これも因果応報か(ちょっと違うか…)、3点献上。 3点(2004-10-05 00:17:47) |
1218. 愛人/ラマン
(↓)【やましんの巻】さん、ホント日本人ってこーゆーの好きですよね。ま、世界で一番エロに寛容な上、小児性愛傾向丸出しの国民性ですから、モロに日本人の資質にマッチしたのでしょう。(過去を美しく飾るのは本人の勝手ですけど)本作は紛れもない援交女子高生と淫行男の物語。それ以上でも以下でもない。こんな話、当時のフランス人男とベトナム人少女の間には掃いて捨てる程あった筈。そもそもフランス語の原作で、フランス人監督で、フランス人少女を描くフランス映画(資本はイギリスとベトナムも出した様ですけど)なのに、何で英語劇なの? これが最も気に食わない。でも、細部まで手を抜かない大作感と、主演の子の口元と身体付きの卑猥さに参ってしまったので(うわっ、小児性愛傾向丸出し!)、6点献上。 6点(2004-10-05 00:17:25) |
1219. 年下のひと
ま、本当の恋愛ってのは疲れるもんですよ…。そしてそこにハッピー・エンドはあり得ない。ましてやモラルに反旗を翻す芸術家同士では、お互いの愛が反発しあって決して溶け合うことはない。「愛を葬り去り平和を手に入れる」とは本作の中のジョルジュ・サンドの言葉ですけど、全くその通りです。オープニングが雑にまとめられていたので物語に入っていくのに苦労しましたし(自身の無知の所為もあるでしょうけど…)、二人の関係の不条理さに取り残されそうにもなりましたけど、いや、やっぱり恋愛ってこーゆーもんだと思い出しました。発見は、ヴィクトワール・ティヴィソルちゃんが「ショコラ」の前年に、ここでもジュリエット・ビノシュの娘を演じていたこと。しかし、もう少し気の利いた邦題を付けられなかったんでしょうか、5点献上。 5点(2004-10-05 00:16:56) |
1220. 葡萄酒色の人生/ロートレック
私は伝記映画は余り駄作にはならないと思ってますけど、極たまに「みすゞ」とか本作みたいな大変つまらない映画になることがあります。その一番の原因は製作者がテーマを絞っていない(絞れない)こと。偉人の生涯を描くこと自体にも意味があるとは思いますが、もっと大事なのは、人間としての偉人本人を掘り下げ、そこから普遍的テーマを表層に抽出することです。本作のロートレックは身障者として貴族(金持ち)の家に生まれた故、大変甘やかされた自堕落でつまらない小男というだけです。要するに唯の馬鹿。これはセットや映像以前の課題が疎かになってます、3点献上。 3点(2004-10-05 00:16:35) |