1241. 赤い天使
《ネタバレ》 戦争映画っていうものはカラーよりも白黒で描く方が絶対に戦争の持つ恐ろしさが伝わるものです。少なくとも私にはそう感じる。この映画を観て益々そう感じた。これは戦争映画であると共に恋愛映画である。それもそこらの生ぬるい今時の恋愛ものなんかとは比べ物になにない究極の愛の形というものがこの映画の中にはある。それは若尾文子演じる西さくらという一人の看護婦が自分に関わった(肉体関係になった男)の存在があればこその本物の愛の形というものがある。自分と関わった男達は皆、戦争の被害により死んでいく。愛した男の為に自らの身体を身を持って見せる西さくらこそ彼らにとっては正しく天使の存在だった筈!しかし、そこは増村保造監督、この天使とでも言うべき若尾文子演じる西さくらを白衣の天使とは描いてない。確かに白衣を着込んではいるけど、この映画の若尾文子はタイトル通り正しく「赤い天使」それは何故なら戦争の惨酷さ、あのバケツの中に入れられる負傷した兵士達の手や足、それこそ人間の心の中に流れている「血」=「赤」という正に「赤」をモチーフに徹底して描かれたリアルで惨酷な恋愛映画だ!それにしてもこの映画のグイグイと引っ張る力強さ、それこそこの監督ならではの凄まじさではないだろうか! この作品の中の若尾文子のナース姿も軍服姿もどちらも◎ [DVD(邦画)] 9点(2007-07-21 23:08:12) |
1242. カンゾー先生
開業医は足だ!って?えっ?やっぱり足より腕でしょう!すいません。そんな捻くれた見方しか出来ず申し訳ない気持ちでいっぱいです。それにそんなに足が速いなら医者になるよりも陸上選手にでもなった方が良いと思うんだけど?でも、あれか?陸上選手じゃ大した金にもならないし、やはり医者の方が金になって食っていけるだけ良いのかもしれない。う~ん?やはり私は変な見方しか出来ないのか?まあ、それでも海外でも国内でもやたら絶賛されて賞を獲得した「黒い雨」や「うなぎ」よりは楽しめたし、好きだし、それに何と言ってもこの映画公開当時まだ新人だった麻生久美子のナイスなお尻を拝見することが出来たので良しとしたい。 [ビデオ(邦画)] 6点(2007-07-19 23:20:02) |
1243. 銀座二十四帖
《ネタバレ》 さて、さて親戚に借りて来てもらった「風船」に引き続き勢いに乗って川島雄三監督のこの作品も鑑賞!で、個人的には「風船」より私はこっちの方が好みです。タイトルにもなっている銀座の街並み、風景、昭和三十年代の銀座とはこんな感じたったりするのかなあ?と何だか観ていてそんな雰囲気を十分に感じることが出来た。森繁久彌のナレーションと歌声、やはりこの人「喜劇・とんかつ一代」でも披露しているように歌もなかなかのものです。そんなこの映画、いかにもフランス的な何ともお洒落な雰囲気十分の見応えのある内容に私は満足です。あの名作「第三の男」のパロディも面白かった。そして、相変わらずこの監督の描く女性像、映し出す女性の魅力的なこと!川島雄三監督は女を撮らせても上手い。月丘夢路の異常なまでの美しさ、北原三枝にしても若くて元気で魅力的です。あっ!もう一人、浅丘ルリ子演じるルリ子も可愛い。大した話でもないとは思うのに、これだけ面白く見せることが出来るのは、やはりこの監督の才能の証であると言っても良いだろうし、これは川島雄三監督にしては爆発的なものは無いにせよ、私は十分、楽しむことが出来たので良いと思います。 [ビデオ(邦画)] 8点(2007-07-16 23:04:59)(良:1票) |
1244. 風船
やっと、念願叶いました。映画好きの親戚から家の近くのレンタル屋さんには川島雄三監督の「風船」も「銀座二十四帖」もいずれもビデオあるから借りて来てやるよと言われ、借りて来てもらって、早速、観ましたが川島雄三監督作品にしては結構、暗いなあ!何か他の川島雄三監督作品の多くに観られるような軽快さ、陽気な部分がすっかり影を潜め、そんな中で一際、笑顔を振りまき、和らげようしている健気な芦川いづみの何と可愛いこと。可愛いこと。これはとにかく芦川いづみですよ。この映画の芦川いづみの笑顔があってこその作品て気がする。話としては大して面白味のある話でもなければ、いや、どちらかという暗い気分に陥るような陰気な内容である。この当時の時代背景、日本人の生活感をよく表している内容になってます。いかにも昭和の雰囲気が画面全体通して伝わってました。川島雄三監督の他の作品を観ても解るようにこの監督の時代を読み取る観察力とその時代を映し出す描写、演出力はただ者でないぐらい本当に上手い。それとこの映画では芦川いづみともう一人、北原三枝の凄い迫力を感じる演技の前には三橋達也と新珠三千代の「赤信号コンビ」も霞んで見えるし、日本映画史上最も演技の上手い女優、左幸子でさえも今作では見劣りしていまいます。そんな中、男優陣では二本柳寛の嫌らしさ、傲慢ぶりが何とも観ていて腹が立つ。それでも芦川いづみの笑顔のおかげで救われる作品になっているのは単なる嫌味な人間きりの映画として描いていない所は流石です。それと森雅之の画家の名前がちょっと笑える。川島雄三監督としては傑作だとは思わないが、観て損のない作品だとは思いました。 [ビデオ(邦画)] 7点(2007-07-16 17:39:05)(良:2票) |
1245. 天使(1937)
ルビッチの演出が冴える。冴える。本当に何を見せて何を見せければ良いのか?この監督の見せないことで想像力を高める。素晴らしきルビッチタッチによって単なる三角関係の話がここまでスリリングにそして、上品で美しい物語になるものかと、本当にお見事です。もう、素晴らしすぎるコメントが既に書かれているので、私には何と説明すれば良いのか?とにかくルビッチ監督のこのお洒落で美しい物語にただただ酔いしれるばかりの傑作! [ビデオ(字幕)] 9点(2007-07-13 21:47:35) |
1246. 悪名(1961)
ずっと前から観たくて、観たくて仕方なかった。皆さんのコメント通りの面白さ、既に全員が書かれているようになんてたって、勝新と田宮二郎のコンビが良い。アウトローな勝新とまたそれとは対照的にやたら勝気な田宮二郎、この二人を見ているだけでも楽しい。この映画について書かれている人を観るとやっぱりと言いいますか、予想通り、全員男!これは正に男の映画であって、女には解らん。理解出来ない世界だろうけど、こういうのに男って奴は弱いのでございます。それにしても一番、驚いたのが中村玉緒ですよ。何やねん?あの可愛さは、そりゃあ、勝新が惚れるのも解るってもんよ!この映画は一言で言えば粋な映画!つまりそういう事です。 [DVD(邦画)] 8点(2007-07-13 20:51:17) |
1247. ブラックブック
《ネタバレ》 凄い!久しぶりに物凄い映画を観たような気がする。ナチス=悪、レジスタンス=善という図式を完全にぶち壊すことで物凄く見応えのある作品になっていて驚かされた。ナチスドイツ軍とレジスタンスという双方の人間関係の奥に見える想像を遥かに上回る人間としての哀しさ、刹那さが観ていてずしりと迫る凄い映画です。この映画は誰もが思い浮かぶ構図をひっくり返すことで、人間の持って生まれた宿命、人間の心の中に誰もが抱えている哀しい部分というものを見事に表現している。家族を殺された主人公のラヘル(エリス)が棺桶に入っている家族の写真を見つめている時の姿が何とも哀しくて、切ない上に観ていて何か女性としての愛の深さ、強さというものを感じられずにはいられない。そして、この映画、そういったずしりと心に響く内容でありつつも、サスペンス映画としてもハラハラドキドキ、最後までヒロインの家族を殺したのは誰なのか?まるで先の読めないストーリー展開、見事な脚本にまるでヒッチコックの映画でも観ているような感覚にさせられた。戦争映画としてもサスペンス映画としても間違いなく一流の今年、観た映画の中でも面白さという点ではダントツの作品です。最近、流行のやたらCGばかりにお金をかける見せかけだけの下手なハリウッドの大作を観るぐらいなら私はこの映画を観ることをオススメしたい。 [映画館(字幕)] 9点(2007-07-12 18:13:18) |
1248. ゆきゆきて、神軍
《ネタバレ》 これはある一人の人間の物凄いドキュメンターリー映画である。奥崎謙三、このあまりにも常識外れな人間、行動、それは例えば昭和天皇が皇居参賀の日に天皇陛下に向って、パチンコ玉をぶつけようとするという普通では考えられない行動を取る。その一方で戦争によって、亡くなった戦友のお墓の前で涙を流すその姿は人間としての正しい有り方、行き方、例えどんなに他人からおかしな奴、変人扱いされても、一人の人間としての進むべき道を物凄く現実を持って知らせる。この親友の墓参りのシーンがあるからこそより一層、他の部分での奥崎謙三という一人の人間の持っている奇人変人的な一面というものが物凄い力を持って観る者に衝撃を与える。今まで観たどのドキュメンタリーよりも力の持った恐るべきこれこそ本物のドキュメンタリーだ!本当は満点にしたいぐらいのとにかく物凄い作品なのだが、奥崎謙三ということの男がどうにもこうにも私の上司の顔にそっくりなのが気になって仕方がないので、マイナス1点とするが、それでも本当にこの作品の持つパワー、恐ろしさ、奥崎謙三という一人の人間性がずしりと重くのしかかる物凄い傑作! [ビデオ(邦画)] 9点(2007-07-10 21:59:01)(良:1票) |
1249. 座頭市海を渡る
シリーズ14作目の市は、これまで以上にアウトローというよりやたら優しい一面を見せてくれる。アウトローぽくて、それでいて優しい。特に困っている女性に対する優しさが勝新座頭市の魅力と言えば魅力ではあるのだが、何か物足りない。相変わらず殺陣のシーンはかっこ良くて決まってるのはいつも観ていて感心させられるけど、今作の悪人、山形勲があまりにもあっけなく斬られるのが不満です。何か今作は時代劇ではあるけど、最後の方なんて西部劇って雰囲気、それはそれで悪くはないのだが、やはり全体的に物足りない感じが残る。 [DVD(邦画)] 6点(2007-07-08 11:14:08) |
1250. あした
やはりと言うか予想通り何かと酷評されてはいるけど、私はこの作品も大林宣彦監督らしい優しさが画面全体通して伝わってきて好きです。どんな人にも心の中に大切な存在である人が一人や二人はいる筈です。そんな大切な人がもう、今はいない。けど、そんな人ともしも、また再会出来るとしたら?そういう人としての思いが描かれています。そして、この映画のタイトルにもなっている「あした」正しくこの映画のテーマは「あした」。この映画が言いたいこと、大林宣彦監督が言いたいことはあしたがあるということのありがたさ、大林監督の映画の多くに見られる「死」についての描き方もけして、後ろ向きなだけの捉え方をしてない。あしたを生きろ!命の大切さ、これぞこの映画の中で一番、言いたかったことだと思います。 [映画館(邦画)] 8点(2007-07-07 18:26:55) |
1251. 廃市
大林宣彦監督作品の中では比較的、地味でいまひとつ知名度も少ない作品だと思うけど、大林宣彦監督らしく品の良さと落ち着きのある作品になっている。大林宣彦監督独自の映像美、柳川の雰囲気が上手く描かれている。いかにも日本て感じの雰囲気が作品全体を包み込む辺りは大林宣彦監督ならではです。尾道シリーズに比べると笑いが無い分、退屈に感じる部分もあるけど、けして、つまらない作品ではないし、観て損のない作品になっている。それと大林宣彦監督の優しい言葉でのナレーションも印象に残る。 [DVD(邦画)] 7点(2007-07-07 18:14:21) |
1252. 東京オリンピック
《ネタバレ》 驚いた。流石は市川崑監督だ!ちょいとそこらの記録映画とは違います。オリンピックの記録フィルムを撮るに至って、いきなり東京の街を破壊するというシーンから始まるのには驚かされる。オリンピックを成功させる為に何が必要か?それにはまずは競技会場の設置が必須条件となる。ということは何を意味するか?要するに全て壊した上で新しいものを作る。この発想、それを映像として残す。こんな始まり、誰が思い付きますか?オリンピックの映像となるとただ走ったり、投げたり、戦ったりとそういうシーンだけ映すのかと思わせて、この始まり。そして、この作品、当時のオリンピックに関わった人達の熱い思いが映像として迫ってきます。東京オリンピックを見たことのない私でさえも、当時の躍動する選手達の息使いや地元開催のオリンピックにかける精神のようなものがひしひしと伝わる。いやはや、市川崑監督が一流の監督であり、映像作家であることの証明している見応え十分の記録映画を観た思いでいっぱいになりました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-07-04 23:45:42)(良:1票) |
1253. あの、夏の日 ~とんでろ じいちゃん~
大林宣彦監督による新尾道シリーズの一つとして公開当時、ガラガラの映画館で見たけど、他の尾道シリーズに比べるとどうしても見劣りしてしまいます。特別面白いとは感じなかったけどまあ、つまらなくはなかったし、大林宣彦監督らしいのどかな風景を観ることが出来て良かったとは思ってます。それと私もあの変な呪文がいつまで経っても頭に残って、離れません。 [映画館(邦画)] 6点(2007-07-04 20:31:05) |
1254. ラインの仮橋
《ネタバレ》 いや~何かこういうの観るといかにもハリウッド的なド派手なアメリカの戦争ものとは違う落ち着きのある。それでいて、物凄く優しさに満ち溢れている何ともヒューマニズムな香のする素晴らしい戦争映画て気がしてきて、やはりフランス映画独自の香り、底に流れる人間の持っている優しさ、この映画では何と言ってもパン屋ですよ。新聞記者と一緒に農民の手伝いをしたり、いや、どちらかというと無理やりさせられていると言った方がこの場合だと正しいのたが、嫌な顔一つ見せずに働くその姿は正しく働く者の鏡そのものです。そこに生まれる戦争という一つの壁を大きく超えた交流、まるで家族のように農民に対してもドイツ軍の捕虜となった人達に対しても優しく接する姿に涙が出てきた。これは正しくフランス映画、そう、例えるならジャン・ルノワール監督の映画にある優しさのようなものが画面全体を通して伝わってきます。これまた一つ素晴らしい映画に出会えた。以前、映画好きの親戚と戦争映画について話をしていた時にジャン・ルノワール監督の「大いなる幻影」が良かったと言ったらそれじゃ、これもきっと気に入るはずだよとテレビで放送したのをDVDとビデオに録画してあるからビデオで良ければやるよと借りたまま見てなかったので、昨日の夜、見たらもうこの映画のことが頭から離れず、ちっとも眠れず、寝不足ですが、それでもこれだけ良い映画なら文句は言えない。それにしてもこれってビデオにもDVDにもなってないのかな?なんでだろ?良い映画なのになあ! [CS・衛星(字幕)] 9点(2007-07-03 18:45:24)(良:1票) |
1255. バック・トゥ・ザ・フューチャー
えっ?平均点が9点を超えてる!まあ、確かに最初観た時にはかなり面白かったけど、でも、今じゃそれほど大騒ぎする映画でもないし、自分が歳を重ね多くの素晴らしい映画を知り、そういう映画を沢山、観れば観るほど私の中では評価が変わる。だからと言ってこれより低くなることはない。しかし、これより上がることもない。ここまで絶賛されるのが私には理解出来ない。まあ、ごく普通の娯楽映画て感じの作品です。 [映画館(字幕)] 6点(2007-06-30 23:18:07)(良:1票) |
1256. 時をかける少女(1983)
大好きな大林宣彦監督による最初の尾道三部作の真ん中、二作目として撮られたこの映画、十何年ぶりに観ました。以前、見た時は、なんだ!いまひとつだなあ!という風にしか感じなかったのに、何てことだ!やたら面白くて、それでいて、どこか懐かしい。大林宣彦監督の描く世界はいつも懐かしさを感じる。尾道には高校時代に修学旅行で一度しか行ったことがないのに、どういう訳かこの映画、見ていると他の大林宣彦監督の映画同様、もう何年もその場所で自分が生活をしているような感覚になるから不思議だ!大林宣彦監督の故郷、尾道の狭い階段も海が見える丘もその他、学校も何もかもが遠い昔の記憶の中にある懐かしくて、懐かしくて、やたら温かい風情というものを感じてしまい、何かもうそれだけで泣けてきそうだ!主演の原田知世の演技は確かにどう考えても上手くない。いや、むしろ下手くそだが、それが良い具合に作品の雰囲気に合っている。日常の生活の中にふっと起こる非現実的なエピソードがこれまた見事に描かれているのには参った。それにしても、大林宣彦監督はヒロインを美しく描くのが本当に上手い。ずっと前に見た時よりもずっとずっと面白く感じることが出来た。所々映される桜の花やピアノの音、更にはバイオリン、幻想的な映像美、甘いと言えば甘いのたが、その甘さこそ大林宣彦監督の一番の魅力だと思う。そんな甘くて、どこかほろ苦いこの物語とあのラストシーン、私も随分と歳を取ったもんだ!欠点だらけの作品だと思うのに、どういう訳か素直に楽しめたし、また感動してしまったぞ!それしにしてもこの作品の評価が「転校生」や「さびしんぼう」に比べると低すぎる気がしてならない。私は例え甘いと言われようがこの作品も支持します。 [DVD(邦画)] 9点(2007-06-29 22:57:06)(良:3票) |
1257. わが町(1956)
《ネタバレ》 東北は青森県生まれの川島雄三監督が大阪の世界をどんな風に描いているのか?どうしても見たくて仕方がなく現在東京では川島雄三監督の映画の特集をしてるのたが、東京まで観に行くことは出来ない。そんな訳で思い切ってDVD購入してしまった。どうしよう?もし、つまらなかったら期待外れに終わったらどうしよう?そんな思いもこの映画を見て完全に消えた。川島雄三監督と言えば奇想天外な作品ばかりで当り外れの激しい事で有名だが、この「わが町」のような心温まる人情劇もきちんと描けるということを見せてくれた。話としてはとても長い時代の物なのにそれを川島雄三監督らしいテンポの良さと時代を読み取る観察力の鋭さでこの時代の風景、雰囲気をきちんと描いている。また登場人物にしても誰一人として疎かにはせず、それでいて、僅か1時間半とい短い時間で描ききっているのも素晴らしい。 主演の辰巳柳太郎は勿論のこと、中でも一人二役の南田洋子の美しいこと。あっ!稲垣浩監督、阪妻主演のあの名作「無法松の一生」が好きな人は楽しめる筈です。この映画を観て大阪が益々好きになった。やはり大阪が舞台の映画は良いねえ!最後のあの場面、プラネタリウムのシーンでの辰巳柳太郎演じる主人公、他吉の死に顔は涙が止まらず!最後の最後まで人情深く熱い男ぶりを見せて死んでいった他吉の姿にこれぞ男の中の男を見たそんな思いでいっぱいになりました。 [DVD(邦画)] 9点(2007-06-24 21:33:42)(良:1票) |
1258. 転校生-さよならあなた-
《ネタバレ》 現役の日本の映画監督の中で最も好きな監督、大林宣彦監督作品にハマるきっかけとなったのが今から25年前に尾道を舞台に撮られた尾道シリーズ最初の作品「転校生」です。そんな「転校生」が再びスクリーンに甦る。しかも、それが私の知っている。いや、知ってるも何も住んでいる所が舞台となって撮られる。そう聞いた瞬間から不安よりも期待のが大きかったし、実際に撮影してる所も友達と見たりした。やっと見れる。期待に胸躍らせ観てきました。期待していた通りの素晴らしい出来に涙が止まらなかった。最初に尾道から長野へと引っ越して来た一夫と母との二人が電車乗ってるシーンからもうたまらない。あの電車、利用した事もあるし、一夫と一美の二人が歩く場所も二人の家もお蕎麦屋さんも勿論、知ってるし、利用した事もある。そんな馴染みの場所が次から次へと出てくる。しかも、大林監督らしい美しい映像を見せてくれる。長野県民として、長野市内にいながら今まで気が付かなかった新たな一面も見せてくれる。こんな所もあったのか!と驚くばかり、それだけでもこの映画、観ていて楽しい。そして、ただ楽しいだけでなく、後半の意表を付く展開にこれはリメイクとは言ってはいるものの、単なるリメイクではない。新しい形の「転校生」だ!全く同じ設定にしてはいないので観れば解ります。一夫と身体の入れ替わった一美が家族の前で蕎麦打ちをするシーンが出てくるのだが、そのシーンを最後の方で病気により亡くなった一美の真似をして蕎麦打ちをする一夫、あそこで一気に涙が出てきました。市民病院から抜け出す二人が途中出会う旅芸人とのちょっとした触れ合いも良い。単なるお涙頂戴にしてない演出の素晴らしさと相成って本当に美しい長野の風景、CGなんかじゃなくて、本当にある美しい信州のそびえ立つ山の見事なこと、同じ長野の人間としてあの美しい風景は自慢出来るぐらい美しい。一美のお墓参りを済ませて去っていく一夫、その後に流れる一美の歌声と美しくてため息の出る素晴らしい映像美に思い切り感動させられ、そして、大林宣彦監督の温かさを見せてもらって感謝しています。こんなにも素晴らしい感動を与えてくれた監督をはじめとする関係者皆に「ありがとう!」と声を出して言いたい。そして、見た後、また善光寺周辺を歩きたくなって、歩いてしまった。文句なし今年のベストワンです。 [映画館(邦画)] 10点(2007-06-23 18:08:42)(良:1票) |
1259. 日曜日が待ち遠しい!
これは何だ?サスペンス映画のようで恋愛映画でもあり、いや、それ以上にコメディとしての楽しさにこれが最後の作品となってしまったフランソワ・トリュフォー監督、この監督の人間観察、女性の描き方、あのファニー・アルダンの歩き方などどう真似しても男には無理だ!あんなかっこ良く決まった歩き方は女性ならではの女性にしか出来ません。そんな歩く姿を映し出すカメラワーク、歩き方だけではなくこの映画、男の私には女性にしか出来ない仕草の数々、足を組んで新聞を読む姿、それは殺された女の時もそうです。新聞を読む時の表情のミステリアスなことといったらもう、あんな表情は女性ならではです。映画を楽しむ上で欠かせない一つの要因でもある俳優の演技と表情、それを映すカメラワーク、私は映画は物語だけでなく、そういう所にも楽しみを見出します。この映画はそんな物語とは違う楽しみを見つける作品だと感じる。この作品を見て男は女性のミステリアスな部分に惹かれ、また女性はそうそう、解る。解る。と同姓しにか解らない部分に共感し、またそんな部分を監督は上手く描いていて感心させられる。これが遺作だなんて、勿体無い。これはフランス映画独自の雰囲気が苦手な方にも、そして、この監督さんが苦手な方にも私がこの監督の作品で一番、解り易くオススメ出来る。ハリウッドの大作にしか興味の無い方、こういう映画も良いですよ。 [ビデオ(字幕)] 8点(2007-06-17 18:36:42) |
1260. 豚と軍艦
《ネタバレ》 今村昌平監督と言うと「黒い雨」や「うなぎ」などで国内でも海外でも評価され、幾つもの賞を獲得しているけど私からしたら今村昌平監督の持ち味は喜劇でこそ発揮されると思っている。師匠である川島雄三監督の影響を強く感じる凄まじき欲に埋もれる人達の模様を何とブラックな笑いで描き切るこの今村昌平監督の演出の凄さにただただ圧倒させられた。アメリカ軍が支配する世の中の中で日本人がいかにして生きることの大変さ、厳しさというものがとにかく凄まじいほどの描写によって描かれている。よく醜い人のことを豚みたいな奴だと言ったりするけど、正にこの映画を見ているとその通りであると感じる。あの横須賀の町のギラギラした雰囲気の中、豚に埋もれる人間こそ、豚そのもの!あの何とも醜い姿、タイトルにもなっている豚を本物の豚を使ってまで見せつける人間の持っている醜い部分、容赦なしのこの徹底した演出、今村昌平監督が川島雄三監督へのオマージュを感じるあのラストシーン、便所に頭を突っ込んだまま死んでいく長門裕之のチンピラ、川島雄三監督の映画によく出てくる便所のシーンをここで見せる所なんて今村昌平監督がいかに川島雄三監督を尊敬しているかよく解るシーンだし、吉村実子が一人、去っていく時の流れる軍艦マーチ、あの陽気な音楽など川島雄三監督の「洲崎パラダイス赤信号」のラストとダブって見える。これは人間の欲望を豚に例えて描いて見せた何ともブラックな笑いの重喜劇の傑作だ! これこそ今村昌平監督の最高傑作!この映画を見ずして今村昌平監督を語るこなど私には出来ません。 [DVD(邦画)] 9点(2007-06-17 15:09:02)(良:1票) |