1341. しんぼる
《ネタバレ》 自分が最初に笑った場面は「マグロの握りが出てきたところ」です。小皿に醤油が無くてクスッ。どうですか?このシチュエーションを字面から想像して笑えますか?笑えないですよね。これが可笑しいのは、これまでの前フリ(物語の流れ)を知っていることが前提。さらに観客側に「鮨は醤油に付けるもの」という常識が必要です。視覚、聴覚を初めとする五感を活かし、想像力をフル稼動させ、自身の知識・経験と照らし合わせます。場の空気も影響しますし、タイミングは命です。様々な要素が刹那に融合し、笑いが生まれる理屈。送り手と受け手が共同で創り出す緻密で豊かな感情表現が「笑い」だと考えます。主導権は送り手が握っていますが、決定権は受け手に在ります。どんなに的確でセンスの良いネタでも、客に受け入れる度量が無かったら意味がありません。そのような観点で本作を捉えてみると、鑑賞中に自分が抱いたモヤモヤの正体が見えてきました。「今の笑うところだよな」「これは何のメタファー?」客が監督の意思を慮っているうちは、笑いも湿りがち。当然です。笑いは瞬発力ですから。ただ、これは松本監督の狙い通り。そもそも正解を設定していない映画なら、戸惑って当たり前です。この手法を不親切・手抜きと取るか、モヤモヤ自体を楽しめるかは、観客次第。自分は後者のタイプなので不満はありませんが、“答えなんか無くても正解が在る素振をする”のも監督の仕事のうちかなと。ちなみに最後に出て来た巨大しんぼるが大人のそれだったら+2点でした。(10/3なんばシネマパークスにてレイトショー鑑賞) [映画館(邦画)] 6点(2010-01-04 19:33:41) |
1342. 秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE II ~私を愛した黒烏龍茶~
《ネタバレ》 『私を愛した黒烏龍茶』というサブタイトルが、スポンサーコマーシャル以外の何ものでも無かった事に驚愕しました。つまり『黒烏龍茶より愛をこめて』でも『女王陛下の黒烏龍茶』でも『黄金黒烏龍茶を持つ男』でも『黒烏龍茶は2度死ぬ』でも良かった訳です。(最後のはスポンサー的にアウトかな?)ベンチャーは何処も厳しい。製作資金調達の為ならコレくらい貪欲にやってもいいでしょう。いや、やらいでか。普通なら“ダサくてカッコイイ”を目指すロボットのデザインを、リアルにダサくする手腕も超一流。世界平和だの、子どもを救えだの、説教臭い事この上ない主張なのに、素直に受け止められる不思議。「大人の手は子供の涙を拭くためにあるんじゃ」という台詞に、総統のリタイアを引き止めようとする吉田くん精一杯の罵倒に、涙涙涙。こんなおふざけパクリ映画に感動するなんて、俺ってつくづくダメだなと。やっぱりダメな奴は何をやってもダメだなと。でも鷹の爪が大好きだ!この気持ちに嘘はありません。締めはもちろんコレ。“た~か~の~つ~め~”ビバ総統!アンタ格好良すぎるぜ! [DVD(邦画)] 8点(2010-01-01 00:00:00)(笑:1票) |
1343. T.R.Y.
《ネタバレ》 これは…厳しい。観終えて思わず絶句しました。何がマズかったのか考えてみましたが、なかなか考えが纏まりません。暗殺者赤眉VS主人公のアクション関係は全部要らなかったと思うし、たどたどしい日本語が多いのも作品の質を下げている気がする。肝心の詐欺プランも切れ味を欠きます。そして織田裕二。けっして彼を嫌いではないのですが、いつも同じ『織田裕二』なのが気になります。具体的に言うと“格好つけている”。主人公は詐欺で命を賭けるのは馬鹿だと言います。ヤバくなったら逃げると言う。でもそれが本心でないのは明らかです。だから彼がどんなに頑張っても驚きがない。軽くて情けない奴が、ポリシーに反して命を賭けるから感動するのだと思います。渡辺謙の演技は流石の迫力ですが、一人浮きまくっていたので結果的に好演とは言えないのかな?新作映画『アマルフィ』宣伝のため、しきりに織田主演の映画をTV放映していますが、どれもパッとしません。これで誘客効果があるのか心配です。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2009-08-24 21:39:19) |
1344. タイムライン
《ネタバレ》 伏線の張り方も、タイムワープの整合性もちゃんとしています。過去への干渉というタイムスリップのタブーも“戦時中ゆえ人は死ぬ”という要素で上手にカバー。スムーズに観ることが出来ました。娯楽作品として上質だと思います。ただ、全てが予定調和に思えました。今ひとつ心に訴えかけられるもの無いというか。何でもいいです。サプライズが欲しかったと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2009-08-21 21:28:03) |
1345. スターゲイト
《ネタバレ》 未知なるモノに対する恐怖と好奇心。自分の場合は圧倒的に前者の感情が勝るタイプです。実生活ではよく石橋を叩き壊しています。ですから本作のようなSF映画をみて、後者の感情を満足させるのがお楽しみ。スターゲイトをくぐって遥か宇宙の彼方の地へ。緊張と恐怖、そしてワクワクが入り混じった感覚が気持ちいい。異星人とのコミュニケーションもドキドキしました。スターゲイトの秘密判明後は、冒険譚から専制君主打倒のレジスタンスへ物語の趣向がシフト。大風呂敷を広げたワリには、小奇麗に畳んでしまってちょっとツマラナイかなと。大佐のバックグラウンドに関する伏線も、十分活かされているとは思えません。終盤にきてテンションが落ちたのが残念でした。ところで、地球に戻った彼らの“浦島太郎度”が気になります。 [DVD(字幕)] 6点(2009-08-18 21:13:51)(良:1票) |
1346. 荒野の用心棒
《ネタバレ》 (黒澤『用心棒』の内容に触れますので、未見の方はご注意ください)黒澤版の脚本を忠実に擦っている本作。ソックリと言うより、まんまです。だのに満足度に大分差がある。何故か。それは“余白の有無”だと思いました。オリジナルには程よい遊びがあった。例えば丑寅の存在。親分の弟で腕っ節は強いが少々足りない憎めない男。彼のおかげで随分なごめました。主人公のキャラクターもそう。三十郎の魅力は「凄腕」と「頭の切れ」だけではありません。豪胆さの中に垣間見える茶目っ気を忘れてはいけない。こっちが心配になってしまう程のいい加減さ。その余裕が観客に安心感を与えています。リラックスした「緩」があってこそ、シビれる銃撃戦の「急」が際立つのだと思います。そういう意味で、本作は真面目過ぎたと思いました。酒場の親父と主人公の繋がりは物語のキモ。どうして親父は拷問を受けてなお、主人公の居所を喋らなかったのか。その想いが観客に届かなければ、主人公の最後の戦いの意味がぼやけてしまいます。オリジナルに在った“親父の満面の笑み”を描かないのは解せません。真似るなら、徹底して良い所を取り入れればいいと思います。以上、少々厳しい言い方をしましたが、本作がダメな訳ではありません。本作は本作で及第点以上の作品。ラストの対決の緊張感たるや素晴らしかった。主人公の計画は単純です。でも鋭い観察力と判断力、そして勇気なくしては成立しなかった。“奴は心臓以外を狙わない”という伏線の張り方など、丁寧な仕事ぶりが光ります。オリジナルに沿っていない部分の方がむしろ出来がいいです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-08-15 19:49:23)(良:1票) |
1347. 用心棒
《ネタバレ》 「これもアンタが考えた筋書きか?」「半分はな。もう半分はあの野郎が書き換えやがった」めしやの親父と三十郎の会話。本作の面白さはまさしくコレ。次々と書き換えられていく筋書きに、次はどうなるのかと興味津々。主人公の三十郎ではなく、善良なる一般人の象徴、めしやの親父(東野英治郎が上手い)に視点を重ねて物語の成り行きを見守りました。雨戸の隙間からこっそりと。もっとも、物語の終着点は最初から見えている。主人公が当初に描いた絵のとおり、2つのヤクザが食い合って共倒れになれば終わり。この結末は動かない。其処に至る過程がお楽しみです。如何に三十郎が二人の親分の間を立ち回って、二虎競食の計を完成させるか。三十郎が投げ込んだ火種がどんな形で大火事になるのか。彼は策士ではありません。裏の裏まで読んだり、二の手、三の手まで用意したりしていない。仕掛けは単純。後は流れにおまかせです。どう転ぶか三十郎本人にも分からない。だから物見気分。そのいい加減さが大物の証です。それに主人公は剣の達人。確かに頭は切れるが、刀のほうはもっと切れる。三十郎VS卯之助の一戦には唸りました。卯之助にすれば、セーフティな距離を確保しつつギリギリまで近づきたいところ。三十郎の秘策を知っている観客も、間合いの勝負と考えている。ところがその予想を三十郎は軽やかに裏切ります。あんなに“不用意に”詰めてくるとは。それにあの笑顔!機先を制する者が勝負を制する。お見事です。場馴れしている三十郎の完勝でした。本作ではチャンチャンバラバラの斬り合いは一切ありません。三十郎が一息で、しかも一方的に相手を始末するパターンが都合3回のみ。だのにこの迫力と充実感は何なのでしょう。「凄い」とか「面白い」という言葉しか出てこない自分がもどかしい。 [DVD(邦画)] 9点(2009-08-12 19:06:53)(良:1票) |
1348. 有りがたうさん
《ネタバレ》 有りがたうさん、少々余所見が多ござんす。それに八方美人な面も。ですから娘さんは旦那の浮気にご用心。ちゃんと旦那の手綱を、いやハンドルを(下品な意味じゃなく!)握っていないと、崖から落っこちちゃうかもしれませんよ。それではまた、有りがたう~。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-08-09 19:17:08) |
1349. NEXT-ネクスト-
《ネタバレ》 主人公クリスが運命の女カーリーと出会う場面のこと。彼は未来を読み、アプローチのリハーサルを重ねます。でも何度やっても上手く行きません。するといい加減呆れた彼女はクリスが動く前に「お願い止めて」と遮ります。でもこれは変。彼女は彼の試行錯誤を知らないはずですから。彼女もまた主人公と同じ特殊能力の持ち主なのでしょうか?でも違うみたい。となると「止めて」の彼女は何だったのか?あれはクリスの予知ではなく想像(願望)の彼女の姿ではないかと。コレって結構重要なポイントだと思う。主人公が見ているのは「ただ過ぎていく未来」ではなく「こうあって欲しい未来」が含まれているからです。其処には主人公の意思が在る。数々の神業(ライフルの弾避け、車&丸太回避とか)も納得できるというもの。ニュアンスとしては“避けている”のではなく“周囲を思うように動かしている”。本作のテーマ『未来は変わる』は、より強いメッセージ『未来を変える』に転化していきます。なかなかニクイつくり。それだけに“2分後までの未来が予知できる”という肝となるルールを徹底しなかったのが悔やまれます。制約は緊張感を生む格好のアイテムなのに。勿体無いです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-08-06 20:56:58)(良:1票) |
1350. ノッティングヒルの恋人
《ネタバレ》 ラブコメはこうあって欲しいという見本。とくに前半の出来がすこぶるイイ。主人公の同居人、スパイクのトボけた味が猛威を振るいます。大笑いしました。コメディパートでしっかり笑えるから、恋の切なさが際立ちます。まだ2人の関係が進展する前からウルウルでした。主役2人以上に脇役キャラが際立っているのも本作の長所。先に述べたスパイクは勿論、タッカーの家族や友人達がみな魅力的です。正直見た目はイケてませんが、心根の優しいイイ奴ばかり。類は友を呼ぶ。周りの人を見れば主人公の人間性も分かるというものです。躊躇なくアナに友人たちを引き合わせたのもポイント高し。さて、問題はアナです。自らの秘密や不安を語る彼女は、スターではなく何処にでもいる三十路間際の女。人間味が感じられる。でも恋人の存在にはガッカリしました。タッカーをホテルに誘った時点では完全に浮気ですから。ここがほぼ唯一の不満点。恋物語に敵役は必要ですが、彼女の人間性を貶めない配慮が欲しかった。至福の喜びと落胆の繰り返しでタッカーの心はズタボロです。アナからのプロポーズを一度は断ったのも理解できる。いろんな面でこの恋愛のリスクは高過ぎますから。でも、しかし!リスクなんかクソ食らえ!!人を想う気持ちに損得勘定なんか要りません。タッカーに間違いを気付かせたスパイク、ここでもいい仕事をしてくれました。ホテルのフロントもナイスアシスト賞。ラストの告白シーンもベタだけど良かったです。ハッピーエンド版のローマの休日でした。本作を現実的でないという事なかれ。これは夢物語。それに夢を現実に変えるのが人生の楽しみでしょう。 [DVD(字幕)] 9点(2009-08-03 19:53:58)(良:2票) |
1351. NINE -ナイン- (2005)
《ネタバレ》 デニス・ホッパーは登場人物のうち最もネームバリューのある俳優。彼の登場するファーストカットも印象的です。TVの2時間サスペンスを見慣れた身としては、早い段階で彼に犯人当確マークを付けたくなってしまう。善人キャラも如何にも怪しいですし。でもまさかの早とちり。本当にただの神父だったとは。これが本作最大のサプライズでした。『CUBE』『SAW』以降の数多あるソリッドスリラーの中では、そつなく纏めた方だと思います。でも面白味には欠ける。もし自分が被験者だったら、とりあえず監視カメラを全部探し出して壊します。 [DVD(字幕)] 5点(2009-08-01 19:50:59) |
1352. 燃えよ!ピンポン(2007)
《ネタバレ》 ジャック・ブラックからアクを抜いたような主演ダン・フォグラーの好感度はなかなか。良い人感が滲み出るナイスなキャラクターです。マギーQの美女ぶり+キレのある体さばきもグッド。上手くハマれば結構なコメディになったと思うのですが、ちょっと残念な仕上がりでした。ギャグセンス云々より、軸となる脚本が良くない。リベンジへの流れをアッサリ反故にしたり、最終的にメインのピンポンがどうでもよくなったり。要所を押さえていないので、どうにも締まりが悪いです。それにしても卓球シーンはどれもお見事でした。ラストの対決は別にしても、CG臭がほとんどしません。結構リアルに打っているのかな。 [DVD(字幕)] 5点(2009-07-29 19:09:11) |
1353. 皆殺しの天使
《ネタバレ》 何故ブルジョワだけが、神の仕掛けた罠に絡め取られたのでしょう。危機を察知して、屋敷から逃げ出した使用人たちとの違いは何か。ブルジョワたちは、いろんなモノを身につけ過ぎたのだと思いました。地位、名誉、金、プライド…。装飾が足枷となり、本来動物が持っている危機感知力を鈍らせた気がします。理性を失い罵りあう人々。足枷が外れたから、彼らは助かったのだと思いました。もっともそれは一時的なもの。一度服を着た人間はもう裸に戻れない。だからあの結末なのだと思います。不条理映画ではありますが、体裁はサバイバルサスペンス。『CUBE』や『SAW』と同じソリッドシチュエーションスリラーとも言えます。そういう意味でこの状況設定は秀逸です。物理的な拘束より心理的な抑圧の方がずっと強固な監禁状態だと思えました。お見事。謎の多い映画なので、鑑賞後にあれやこれやと自分なりの解釈をして楽しむのがお勧めです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-07-26 18:53:16) |
1354. ビキニ・キラー/真夏のくい込み殺人
レンタルDVD屋で本作を見つけた時、ぶっちゃけ大きな釣り針に見えました。一部のバカ映画好きにはヨダレもののタイトル。あざとい。実にあざとい。でも抗えないから不思議。レジへ直行でした。当然ながら三流以下の映画を予想していました。ツッコミを楽しむつもりです。でも違いました。『ラストサマー』や『スクリーム』系のサスペンス。いたって真面目に作られていました。食い込みも言うほど食い込んじゃいない。ただし、真面目だから出来がいい訳ではありません。キャラクター造型は薄いし、肝心の連続殺人が起きた理由も分かり難い。原題『秘密を知りたい?』は煽りすぎです。観客へアピールする部分が見当たりません。故にこういう邦題を付けるしかなかったのでしょう。そうそう、DVDのパッケージで殺人鬼は斧を持っているのですが一度も使ってないです。狙った邦題をつけるなら、それ相応のバカ映画じゃないと逆に期待を裏切ってしまうから難しい。 [DVD(字幕)] 4点(2009-07-23 20:34:58) |
1355. 今日も僕は殺される
《ネタバレ》 影のような悪霊はドラッグのメタファー。剣先のような腕は見たまんま注射針。主人公が見た悪夢は麻薬中毒による幻想との見方が一般的かと思います。再三再四その事を示唆する台詞や描写がありました。麻薬は日々自分自身を殺しているようなもの。止まる時計は、人生から奪われる貴重な時間を表しています。ラストはあのまま病院のベッドの上で…という方が物語として分かり易かったと思いました。物語の性質上仕方ないとはいえ、無限地獄を見せられるだけなので退屈してしまうのが難点。“何度も殺される”というアイデアの映画ならば、既出作品のほかに『Loop ループ』がオススメ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2009-07-20 13:28:45)(良:1票) |
1356. ビッグ・トラブル(2006)
《ネタバレ》 小さなトラブルが雪だるま式に膨らんでいく快感。女が牧師妻を斧で一撃したところで完全に物語の流れに乗れました。「これからどんなに(悪い方向へ)進んでいくの?!」とワクワク。善悪の価値基準が目まぐるしく変化するのも気持ちいいです。ガスが言う「娘の病気」が本当だったら?早とちりで殺してしまった男が犯罪者だったら?同じ罪でも罪悪感の度合い違ってくる不思議。人は絶対的価値観ではなく、相対的にモノを見ているという事が分かります。「情状酌量」が如何に危いものかも。主要人物がみな表の顔と裏の顔を持っているのも面白い。人の良さそうなオッサンがやり手のFBI捜査官で、絶対に犯罪を許さないと言っていた警官が夫の罪に目を瞑る。一体何が正しいのでしょう。主人公の口癖は統計の話。大多数の意見の指針。でも今起きている事態はレアケースの連続です。何を信じたらいいの?結局最期に犯罪者は全員死んで、何となく丸く収まった感があるのも皮肉なもの。みんなが振り回されたお金だって、結局はただの紙切れ。子供にとっては落書き遊びの道具でしかないってメッセージも気持ちいい。安易なギャグに走らず、虚無感と清々しさを同居させる後味も絶妙です。掘り出し物を見つけた気分。 [DVD(字幕)] 8点(2009-07-17 21:32:12) |
1357. スピード(1994)
《ネタバレ》 TV地上波で何度も放送されるのは伊達じゃない。確かに面白いです。自分の採点基準を当てはめれば、6点以下ということはありません。ただし、8点以上を付けるのは躊躇われる。“惜しい”部分が目に付くのです。例えばバスジャック。高速道路が途切れている件は遣り過ぎでした。台も無いのに高々とジャンプするバスをみて、一気に現実に引き戻されました。著しくリアリティを欠きます。成功確率1%未満のミッションが何度成功しても構いません。それが娯楽映画の正しいかたち。ワクワク出来ます。でも確率0%が成功するのは違う。サスペンスじゃなくファンタジーになってしまうから。地下鉄の戦いがバスジャックより見劣りしたり、キアヌVS犯人の決着があっけなかったりするのも勿体無い。後半、明らかに失速しました。折角素材がいいのだから、もっと丁寧に調理して欲しいと思いました。 [地上波(吹替)] 7点(2009-07-14 20:37:59) |
1358. 百万円と苦虫女
《ネタバレ》 揉め事は嫌い。自己主張はしません。まるで“菜っ葉のように”笑う鈴子。彼女のような人を見かけませんか?“彼女はワタシだ”自分はそう感じる一人です。四十近いオッサンが、二十歳そこそこの娘に共感するというのも照れくさいですけどね。2人の心が通じ合ったとき嬉しかったこと!恥ずかしながら泣きました。いい男を掴まえたなと。絶対に幸せになれよと。ですからダメ男の顔を見せた亮平に憤りました。大事な娘を弄んだ奴は許さない!完全に父親の心境です。結局勘違いだった訳ですが、あれは亮平が悪い。彼の心の弱さが引き起こした誤解です。彼女を引き止めて断られるのを恐れたのか。あるいは彼女の生き方を変える責任に慄いたのか。いずれにしても、怖れるのは真剣である証。奴は信用していいです(苦笑)。結末について。亮平は確かに鈴子を見つけました。恋物語として、ハッピーエンドの条件を満たしています。ここで映画が終わっている事に意味がある。2人がやり直せるかどうかよりも、鈴子が失恋の痛みを乗り越え、自分の足で立って生きて行く決意をしたことが重要なのです。今までの彼女はずっと逃げてばかりでした。でも周りに振り回されてばかりでは、幸せは掴めない。旅を通じて彼女は学びました。いじめっ子から逃げない弟の方が、ずっと強いことを知りました。彼女の人生の主語が“周囲の人たち”から“自分”に変わったのだと思います。この世は理不尽でいっぱい。人生はままならない。だから強く生きていこう。やっぱり弱ったときは腹ごしらえ。したたかな女は美しい。デビュー作『モル』や脚本を手がけた『さくらん』でもそうでしたが、監督の描く女性は、みんな痛みを乗り越え強く生きています。耐え忍ぶだけじゃない。ちゃんと行動する。言いたい事は言う。とても魅力的だと思います。そんなタナダ的ヒロイン像を蒼井優は見事に体言していました。本作は間違いなく彼女の代表作。稀代の大女優になるであろう蒼井優の、今のきらめきを感じ取ってください。 [CS・衛星(邦画)] 10点(2009-07-11 21:26:09)(良:1票) |
1359. 20世紀ノスタルジア
《ネタバレ》 徹と杏を見ていると、いたたまれない気持ちになります。エーテル体?ニューロンばちばち?猛烈に恥ずかしいです。この感覚は、本サイトに投稿し始めた頃の自分の感想を読み直しても味わえます。布団を被ってジタバタしたくなる。過去の自分を正視するのは大変キツイ。文章でさえこの有様なのに、映像ならどれほど破壊力があることか。2人とも、あとで存分にジタバタしてくださいね(合掌)。自分の中に宇宙人がいるという徹。それは己が何者かを見極めようとするための足掻き。成長期にはありがちです。ただ彼の場合は、本気でヤバかったかもしれない。回るカメラは定まらぬ心を表すよう。徹は杏に救われました。杏の方は、ごく普通の女子高生。彼女は映画の編集作業を通じて飛躍的に成長します。映画を完成させるよう発破をかけた先生と親友、グッジョブです。先に書いたように、過去の自分の作品を見直すのは恥ずかしいものです。それは「客観」だから。主観でいるうちは楽ちんです。都合のいいフィルタもかかる。自己完結で済ませられる。でもそこから成長は望めません。第3者の立場で自己と向き合い、自分なりの結論を導き出した杏は立派でした。21世紀の朝日に向かうチュンセとポウセ。もう大丈夫です。カメラはブレません。今度は徹と杏で新しい物語を紡いでいく。痛い彼らは、かつての自分。苦いけど嫌じゃないです。テーマは響きましたが、物語の体を為していないため退屈します。広末じゃなければ、たぶん最後まで観ていません。彼女の眩しいほどの魅力で“持たせている”映画だと思います。もっとも自分は、広末以上に余貴美子の美貌に見とれました。オッサンですな。ヒロスエと余貴美子さまに+1点ずつ進呈させてください。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-07-08 18:26:58)(良:1票) |
1360. ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝
《ネタバレ》 前二作とも鑑賞済みですが、あまり内容は覚えていません。ですから、シリーズ一見さんの感想と思ってください。クライマックスの合戦や皇帝のキングギドラ化等、見栄えのするシーンは結構あります。兵馬俑を蘇らせたアイデアも面白い。真っ当な娯楽大作だと思います。でも、お金をかけた割には安っぽい気がする。例えば序盤のホース&カーチェイス。それにヒマラヤ決戦。CGと生身の人間との間に、温度差を感じるのです。CGの質が悪いとは思いませんが、作り物感がある。醒めた目で眺めてしまいました。これは映像技術の問題ではなく脚本の問題。世界にのめり込んでいれば、張子の虎でも怖いですから。筋は何とか追えるけど、重要なピースが幾つか抜け落ちているようで頼りない。脚本に難ありです。ちなみに吹替え版を鑑賞したのですが、さっぱり。ジャッキー・チェンの石丸博也やブルース・ウィリスの野沢那智、シュワちゃんの玄田哲章など、名吹替も多いなか、本作のような吹替に当たると本当にガッカリします。誘客を優先するがゆえに作品の質が低下したのでは意味がない。長い目でみて結果的に誰も得をしません。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2009-07-05 19:50:34) |