1361. 無能の人
《ネタバレ》 つげワールドの独特の空気感。 河原で石売りというのが絶対売れなさそうで、うら寂しさを醸し出す。 売れると大きな期待を寄せた石も、オークションで値をせり上げるのに失敗して自ら買い取るハメになり、結局は漬け物石にされてしまう。 風吹ジュンが生活のくたびれ感をうまく出していた。 無能な男と妻子が手をつないで帰るラストが優しくていい。 ただ、ストーリーとしては淡々とあまりに日本的で、自分が映画に求めるものとは違っていた。 [ビデオ(邦画)] 4点(2013-06-03 01:30:23) |
1362. Strange Circus 奇妙なサーカス
《ネタバレ》 なんだか寺山修司のようなアングラ臭がする。 近親相姦、児童虐待、乱交、四肢切断などおどろおどろしい倒錯の世界が背徳感を刺激する。 何が現実で何が夢で何が小説の世界なのか混乱してくる。 主演の宮崎ますみは体を張っての演技ではあったが、それほど魅力を感じないのがマイナス点。 [DVD(邦画)] 5点(2013-06-03 01:28:18) |
1363. アフタースクール
《ネタバレ》 内田けんじ監督は『運命じゃない人』もそうだったが、緻密に構成されたストーリーで予想の裏をかく。 登場人物の正体がなかなか明かさずにサスペンスで引っ張られる。 おおよその人間関係が把握できたかと思えば、そこでどんでん返し。 まんまと術中にはまってハッとさせられた。 予想の裏切りばかりを狙って失敗している某監督とは違い、ちゃんとベタで押さえる場面は押さえてラストでカタルシスもある。 大泉洋と常盤貴子が中学時代の淡い恋を成就させ、ハッピーエンドで後味もいい。 まだ作品数は少ないが、今後もとても楽しみな監督だ。 [DVD(邦画)] 8点(2013-06-03 01:26:12) |
1364. フォレスト・ガンプ/一期一会
《ネタバレ》 ひたむきで誠実なフォレストの姿にみんなが心を動かされる。 両足を失ったのに名誉の戦死ができずに屈折したダン中尉や、過去のトラウマを引きずりボロボロになったジェニーも、結局はフォレストに心を救われる。 ストーリーにはご都合主義がいたるところにあって細かいところで突っ込みどころも満載だが、大人の童話、おとぎ話として観ればいいのだろう。 その点において好みが分かれそう。 ジェニーがフォレストと初めて結ばれた後に去ったり、子供ができてもフォレストには知らせず一人で育てていたり、その理由がわかりにくかった。 ウイルスによる病気(エイズ?)になって再会を決意したようだが、もう少しジェニーの明確な心理描写があったほうがいい。 アメリカの歴史や文化を感じるシーンが時折り挿入されるのが、日本人にはいまいちピンと来ないかも。 [ビデオ(吹替)] 7点(2013-06-03 01:24:19) |
1365. オーディション(2000)
《ネタバレ》 「キリキリキリキリ~」 オーディションで再婚相手を見つけようとした男に麻美の狂気が突き刺さる。 「自分がどんな人間かがわかるのも苦しいことやつらいことだけなの。うんとつらい目に遭った時だけ自分の心の形がわかるのよ」 痛いのがダメな人は見ないほうがいいスプラッターホラー。 『ミザリー』のような観ていて痛い場面があるが、追い詰められる心理的恐怖では到底及ばない。 妄想や夢が突然挿入されるので、何が現実なのかわかりにくくて観づらい。 緻密さに欠けるストーリーなので突っ込みどころはいろいろあるが、怖がらせる(痛がらせる)という点では悪くない。 [インターネット(字幕)] 5点(2013-06-03 01:21:07) |
1366. 月はどっちに出ている
日本人が在日コリアンを描くとき、被害者、社会的弱者として気を遣い、同情的な描き方や遠慮が過ぎた傾向になるのを感じる。 それはともすれば差別はいけないという直接的で説教臭いメッセージとなって表れる。 ところが、在日2世でもある崔監督は負の部分も含めてストレートな描き方をしているのがいい。 北や南の対抗意識などもとらえているし、在日の雰囲気やしたたかな生命力のようなものがうかがえる。 ただ、ストーリーとしては特に惹かれるものはなく、淡々としていて距離感を感じてしまう。 [ビデオ(邦画)] 5点(2013-06-02 00:53:34) |
1367. HYSTERIC/ヒステリック
《ネタバレ》 カップルが知人の留守中に部屋に無断侵入して居座り、金に困ってその部屋の隣人を殺してしまった実在の事件が元になっている。 保母を目指した平凡な女が「太く短く生きて死ぬ」が信条の男と出会い、犯罪を繰り返しながらのその日暮らし。 刹那的で我慢のできない男を千原ジュニア、男に流されるようについていく女を小島聖が演じるが、無軌道で浅はかな二人に嫌悪感しか覚えない。 男がグレた原因が、母が父を裏切って他の男に走ったというのもありきたりでガキっぽすぎて同情するに当たらない。 男のクズっぷりと女のダメさ加減でイライラするだけ、二人に関わった被害者に同情するのみ。 同じ犯罪ものでもギャング映画のようなスケールも痛快さもなく、ひたすらにジメジメと暗い。 [ビデオ(邦画)] 3点(2013-06-02 00:50:51) |
1368. バックマン家の人々
《ネタバレ》 ギル役のスティーヴ・マーティンを『裸の銃を持つ男』のレスリー・ニールセンと勘違いしていたおかげで、スラップスティック・コメディと思い込んでいた。 それっぽい妄想シーンが時折り挿入されるものの、ちゃんとしたストーリーのあるホームドラマだった。 コミカルな会話が軽妙でウィットに富んでいてとてもいい。 そうしたユーモアのセンスはハリウッド映画独特のテイストで優れたものに感じる。 カレンが聞きかじりのストレス解消法をギルに試して、交通事故を起こしたシーンは爆笑もの。 笑えるだけでなく家族愛を描いたハートウォーミングな作品になっている。 派手な展開はないが登場人物が個性的で魅力たっぷり、もう一度見直したくなる佳作。 メリーゴーランドよりジェットコースターがいいというおばあちゃんの言葉が素敵。 [ビデオ(吹替)] 8点(2013-06-02 00:49:13) |
1369. サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS
《ネタバレ》 設定がユニークでいい。 冒頭はその設定を理解させるための説明セリフのオンパレードが気になったけど。 心の声が聞こえることから生じる悲喜劇がおもしろい。 前半はコメディタッチ、後半は祖母の病気でヒューマンドラマに。 精神科医の洋子は孤島で一人生きていたサトラレ1号と出会い、サトラレの本当の苦悩を思い知らされる。 それが洋子の健一への理解を深め、真の共感へとつながっていく。 八千草薫の優しいおばあさんはぴったりハマっていてホロっとくる。 健一を思いやる祖母と洋子の気持ちが周囲の心も動かす。 ありえない設定に違和感があるとリアリティのなさと予定調和が気になって最後まで受け付けないだろう。 だいたい人間の心はもっとどす黒いものも含んでいて、健一の心はしょせんはきれいごとにしか描けていない。 それでも、童話を楽しむように観るなら抵抗感なく作品世界に浸ることができる。 そうした意味で好き嫌いの分かれそうな作品。 [ビデオ(邦画)] 7点(2013-06-02 00:47:30)(良:1票) |
1370. 夜のピクニック
《ネタバレ》 この映画と似たような夜行登山の行事があったので、なんだか懐かしい。 等身大の高校生を描いているので自身の学生時代と自然と重ねて見ることに。 派手な展開は一切なくまったりと高校生の一日を描いている。 そのためインパクトが弱く印象に残りにくいが、じんわりと来るものはある。 時々アニメなどギャグタッチの演出が挿入されるが、等身大のリアルな高校生という作品のトーンと合わず違和感あり。 口もきけなかった異母兄弟を中心にストーリーが展開するが、その会話でお互いを気にしてよく観察していたことがわかる。 空気を読まない暴露発言で周りを凍らせた杏奈の弟、夜通しハイテンションな高見、超打算的で男を惑わす亮子など、脇で登場するキャラもいい。 多部未華子が女子高生役にうまくハマっていてリアル感を増している。 恩田陸の原作小説は未読だが、読んでみたくなった。 [DVD(邦画)] 6点(2013-06-02 00:45:40)(良:1票) |
1371. エントラップメント
《ネタバレ》 どんでん返しにこだわりすぎて、不自然になっている箇所が気になる。 つまらなくはなかったが、観終わってスッキリ感がなかったということは騙しきってくれなかったということか。 [ビデオ(吹替)] 5点(2013-06-01 01:03:22) |
1372. あした
《ネタバレ》 尾道新三部作とは知らずに観たが、高橋かおりを脱がしているのが大林監督らしいところ。 遭難した船の九人の乗客があの世から大切な人たちに会いに来るというファンタジーだが、まとまりがなくて盛り上がりに欠ける。 [ビデオ(邦画)] 4点(2013-06-01 00:56:41) |
1373. 運命じゃない人
時間軸を前後しながら真相が明らかにされていくのが面白い。 登場人物の視点を変えていくことで、見えなかった面が見えてくる。 ストーリーの事件自体はよくある類のものだが、脚本がよくできていて構成の巧みさで魅せてくれる。 [DVD(邦画)] 8点(2013-06-01 00:52:08) |
1374. 陽のあたる教室
《ネタバレ》 滑り止めで音楽教師になったホランドが、次第に教師という職業にのめりこんでいくさまに、生徒と共に成長している姿が認められる。 ホランドの家庭も並行して描かれるが、難聴の息子との葛藤が夫婦の成長にも関わっている。 ホランドは美しく才能ある教え子と惹かれあうが、一緒にニューヨークにとの誘いにも家庭を捨てない。 ジョン・レノンの死など世相を映し出すことで、ホランドの人生の軌跡がリアルに浮き彫りにされる。 誠実に生徒と向き合う姿勢が、音楽家としてよりも教師としての人生を歩ませた。 それは平凡な人生のように見えるかもしれないが、ラストのお別れ会が示すように多くの人生を変えた聖職を勤めあげたということ。 この映画は教師や教師志望者にこそ観て欲しい。 描かれているのはヒーローのように活躍するような特別な教師像ではないので、感じとるべきものがあるはずだ。 [ビデオ(邦画)] 8点(2013-06-01 00:46:04)(良:1票) |
1375. 南京の基督
《ネタバレ》 富田靖子が中国人の娼婦を全裸の濡れ場も辞さずに熱演。 主演のレオン・カーファイが日本人作家役なので、なんでアベコベにするのか意図がよくわからない。 純真でいたいけなクリスチャンの金花が残酷な運命に翻弄されてボロボロになっていく様子が痛々しい。 キリストだと思い込んだ外国人に抱かれて梅毒をうつされ、男がキリストでなかったことを知って半狂乱になる姿が哀れを誘う。 泣ける切ない作品は好きだが、この映画は泣けずに暗くてどんより重くなる。 [ビデオ(邦画)] 4点(2013-06-01 00:44:09) |
1376. 裸足のピクニック
《ネタバレ》 矢口史靖監督の長編デビュー作だが、ブラックコメディでニヤリとさせてくれる。 ごく普通の女子高生がちょっとしたことからどんどんとんでもない方向に流されていく。 キセル発覚で逃亡中にカバンからボーイフレンドとのベッド写真紛失。 そこから怒涛のように次から次へとトラブルに見舞われる。 祖母の骨壷紛失、通夜での火事騒動、一家離散、商店街ぐるみの犯行でレイプされ妊娠などなど。 それなのにラストは離散していた家族が集まって幸せそうな団欒と、なんだかよくわからない展開。 女の子の不幸には自業自得の面もあるのでインパクトが弱くなっている。 例えば、明らかに怪しい女と他人の家に不法侵入して同居したり。 もっとやむにやまれず仕方なくやったことばかりで不幸の連鎖が生じたほうが面白かった。 主演の女の子も素人丸出しの演技で、チープな自主映画のようなつくり。 それが狙いなんだろうけど、未整理でムダな部分も感じられテンポも悪くて完成度は高くない。 ただ『ひみつの花園』や以降の作品にも見られるようなコミカルなセンスはここでもうかがえる。 純子がボロボロになりながら歩いているところを罵詈雑言で責められ続け、時折り自転車を蹴って反撃するシーンはおもしろかった。 [ビデオ(邦画)] 5点(2013-06-01 00:42:48) |
1377. 虹の女神 Rainbow Song
《ネタバレ》 市原隼人のウザキャラに序盤からイライラ。 あんな気持ちの悪いストーカーとすぐに仲良くなるわけがない。 ところが、次第に二人の物語に引き込まれていく。 特にあおいの上野樹里がハマリ役でいい。 上司の酔った上での説教を真に受けて、不器用に好きな道を生きる姿が気持ちいい。 その裏には智也への失恋もあったわけだが、素直に告白できないジレンマがうまく描けていた。 出会いパーティで告白者ゼロというみっともない姿を智也の前でさらし、さらに酔った智也の無神経な言葉で傷つけられる。 「日本にいればいいじゃん」「日本なんだ…そばじゃないんだ…」 屋上での会話で、そばにいてくれと言ってほしかった女心が切ない。 市原隼人のダメ男と相田翔子の計算女のやりとりが妙にハマっていて笑える。 また、盲目の少女を演じたヒロインの妹役の蒼井優も出番は少ないが存在感はある。 結局実らずに終わった純愛だが、手紙に残されたヒロインの本音が胸を打つ。 大学時代の自主映画は全然つまらなかったけど、そのつまらなさも映研っぽくてリアルではあった。 ただ、自主映画の内容と二人の現実が関連しているので、無駄なシーンにはなっていない。 [DVD(邦画)] 7点(2013-05-31 19:41:56)(良:1票) |
1378. 愛という名の疑惑
《ネタバレ》 美人姉妹の計画犯罪に利用されただけの精神科医だが、その目論見に気がついて…。 悪くはないけど後まで印象に残るほどではなく、サスペンスとしてもう一工夫ほしかった。 [ビデオ(吹替)] 5点(2013-05-31 00:15:40) |
1379. 第三の男
《ネタバレ》 主人公ホリーが車で拉致されたのかと思いきや、連れていかれたのはすっかり忘れていた講演会。 このあたりの展開はうまい。 親友ハリーが水増しペニシリンを使って重大な被害を出し、その悪事のために殺された。 と思っていたら、一瞬ライトに照らし出されて、生きていたことがわかる。 オーソン・ウェルズの不敵な面構えがハリー役にぴったり。 意外な展開で、サスペンスの教科書といってもいい。 並木道でアンナがホリーを無視して素通りしていくラストシーンは、美しく余韻が残る。 一見ミスマッチに感じる明るい音楽も、かえって哀愁を誘っている。 [DVD(字幕)] 8点(2013-05-31 00:14:03) |
1380. テルマ&ルイーズ
《ネタバレ》 テルマの男を見る目のなさにはあきれてしまう。 甘さからの大ポカには、ルイーズに感情移入して一緒に腹を立ててしまうくらい。 そんな足手まといのテルマが終盤はルイーズをリードする展開になるのがおもしろい。 二人の対照的なキャラがロードムービーで活きている。 ルイーズの悲しい過去を推察したテルマが、ルイーズをさりげなく思いやるのがいい。 ちょっとしたシーンもセンスが良くて笑える。 電話での旦那のひと言だけで警察が来ていることがバレたところや、黒人がパトカーのトランクにタバコの煙を吹き込んだところなど。 ストーリーも後半尻上がりに盛り上がっていくが、ラストが…。 うーん、他に選択肢はなかったんだろうか、どうしても短絡的に見えてしまう。 晴れやかに宙を飛ぶ二人の表情から、抑圧からの解放を表現したかったのだろうが、カタルシスよりも違和感が残った。 [DVD(字幕)] 7点(2013-05-31 00:11:43)(良:1票) |