121. 鳶がクルリと
《ネタバレ》 主人公の立ち位置やエピソードが原作とほとんど変えられてしまっている。もちろんそういう映画の作り方もあるだろう。けど、原作で最も重要な最後の仕事のシーンがまったく撮られていないのは、これはもう逃げとしか思えないし、はっきり言って「鳶がクルリと」を映像化した意味はまったくない。原作に対し、たいへん失礼な作品。 [DVD(邦画)] 2点(2006-06-11 13:41:57) |
122. 遠雷(1981)
《ネタバレ》 家族や土地に振り回され閉塞感に苛まれていた主人公が、ハウストマトへの情熱と結婚を機に自分の行き方を肯定していく様子が原作では丹念に描かれている。作中、主人公は次第に自分に気を使い始めた母を目にし、「自分の時代になっていると満夫は折にふれ感じるのだった」と語る。それは閉塞感からの解放であり、そしてその思いはクライマックスの祝言で極まっている。 実は原作では、祝言中にひっそりと死を迎えた祖母を前に「生まれてくること命を引換えに祖母は逝ったのだ」と考えるところにその思いが凝縮されている。ところが映画ではそのシーンはカットされ、代わりに友人に囲まれて新妻と2人「わたしの青い鳥」を歌うシーンが挿入されている。原作にほぼ忠実に作られた映画の中で唯一このシーンが大きく作り替えられているのは、おそらく祖母の死を背景にしたのでは、映像では主人公の思いを描ききれないと監督なり脚本家なりが感じたからだろう。そして作り替えの試みは成功し、「わたしの青い鳥」を涙ながらに歌う主人公の姿には、自分の時代がやってきたことを感じ、閉塞感から解放されたという思いが充分に表現されていると思う。 いかにも文藝作品調な冗長な映像と無駄に多いセックスシーン、そしてセンスの悪い中途半端な音楽など、今の時代にこの映画を鑑賞することの意味があるとは正直思えないが、原作に対する製作者の尊敬と理解に感心させられた、そんな映画。 [DVD(邦画)] 5点(2006-06-03 17:08:07) |
123. フライ,ダディ,フライ
意図的な演出なのだろうが、劇画調の画面とムダに散りばめられたギャグが、正直ウザい。もっとストレート、そして簡潔な映画だったら面白くなっただろうと思うが、そもそもターゲットが岡田准一ファンだからこうなったんだろうと思うと、ある意味やりきれない。でも原作があるからかな、いいセリフもある。「オッサン、勝つのは簡単だよ。大切なのは、その先にあるものだ。」って、なかなかパンチのあるセリフだと思う。 [DVD(邦画)] 5点(2006-05-28 10:45:31) |
124. アンジェラ(2005)
リュック・ベッソン版「電車男」。思いっきりわかりやすい成長物語に、はじめはくだらないな~と思いつつも、いつの間にか主人公に自分を重ねて観ていた自分に気付き、一人赤面。エンディングは「フィフス・エレメント」よろしく仰天のハッピーエンドになっちゃっていて評価が分かれるだろうが、これはこれでよかったと思った。そうじゃなかったら、色々あっても主人公の人生は結局モノクロなまんまになっちゃうから。自信を無くしている時に、夜中にこっそり一人で見たい一本。 [映画館(字幕)] 7点(2006-05-26 21:42:56)(良:1票) |
125. 雪に願うこと
もしこれが普通の競馬場を舞台にしていたら、これほど素晴らしい映画にならなかっただろう。なぜならサラブレットはそれ自体、すでに選ばれた存在だから。ここでは輓馬という力だけが自慢の、不恰好な馬たちによる必死な競馬を背景にしているからこそ、主人公と1頭の馬が再び立ち上がろうとするその気持ちを強く感じることができた。だれでも、何度でも、立ち上がることができる。最後のレースに訪れる静かな感動に、久々に映画館で涙した。 [映画館(邦画)] 8点(2006-05-24 22:58:24) |
126. 私の頭の中の消しゴム
《ネタバレ》 この先なんの可能性も残されていない人とストーリーを前に、いったいどうしろというのか。映画を見ることでそれを娯楽として楽しもうとしていた自分を、嫌悪すらしてしまった。もし製作者が純粋な感動を与えようとしてこの映画を作っているのだとしたら、製作者はどこか大事なネジがはずれている。 [DVD(字幕)] 2点(2006-05-21 19:34:32) |
127. ダ・ヴィンチ・コード
《ネタバレ》 バチカンからは猛烈な反発があったらしいが、この映画の中ではテーマとなるスキャンダルに対してあらゆる価値判断をしないように気を使って作られていたと思う。そして、観客にもスキャンダルの正当性について思いをめぐらす暇をあたえず、そのかわりにむしろ宗教とか伝説が長い間語り継がれていることの不思議さを純粋に感じさせてくれる。たいしたメッセージがあるわけでもないが、俺みたいな歴史に不勉強な日本人でもヨーロッパの歴史世界に入り込める、良く出来た娯楽作。 [映画館(字幕)] 7点(2006-05-20 22:22:13)(良:1票) |
128. キャプテン・ウルフ
しまうまさんのご指摘のように、「キンダーガートン・コップ」のアイデアそのものではあるけれど、よく考えられたストーリーでなかなか楽しめた。おそらくヴィン・ディーゼルのために作られたキャラクターなのだろう、いつになくナチュラルに演技するディーゼルがよかった。こういう余計な、というか、複雑な感情とか関係を抜きにして、かつハートウォーミングな映画が作れちゃうのは、ハリウッドならではだよな~。 [DVD(字幕)] 7点(2006-05-13 18:23:25)(良:1票) |
129. 春香伝(2000)
《ネタバレ》 あゃ~、若様、お尻丸出しでたいへんなお戯れで・・・というアホ感想はともかくとして、いわゆる古典というものが現代にも語り継がれているのには、そこに時代性を超越した真実が描かれているからなのであって、だとすれば古典はやはり古典として表現されるのが一番正しいのかもしれない。そういう意味では、数多く映像化されてきた中で初めて、パンソリに乗せてそのストーリーを単純に映像化していったこの作品は、前衛的でもあり、同時に古典主義的でもある、非常に意義深い作品だと思った。 [DVD(字幕)] 6点(2006-05-12 23:53:02) |
130. 最後の恋のはじめ方
《ネタバレ》 それで結局、俺なんかが彼女をゲットするにはどうしたらいいんだ~?? [DVD(字幕)] 6点(2006-05-04 21:52:27)(笑:1票) |
131. コンスタンティン
天使や悪魔、地獄といったものの凡庸なイメージを映像化してしまっていて、なぜかそれはドリフを髣髴とさせた。お笑いだったらそれはひとつの戦略だと思うが、真面目なストーリーではその凡庸さが悲しい。疲れた。 [DVD(吹替)] 4点(2006-04-30 23:09:30) |
132. 50回目のファースト・キス(2004)
たいしてイケてない女とたいしてイケてない男によるリアリティー皆無のラブコメだが、余計な背景とか省いちゃった潔いストーリーで、素敵な映画になっている。毎日恋人と新鮮な気持ちで知り合えるなんて、正直うらやましいな~、などとおき楽なことを思いながら楽しんだ。いかんせん、タイトルが直截的すぎる気がした(原題)。「Good morning, Lucy」のほうが良かったのに・・・というどうでもいい個人的な感想。 [DVD(吹替)] 7点(2006-04-29 20:12:41) |
133. ブルドッグ(2003)
なんだか抑揚無く、ダラダラと展開する映画。ヴィン・ディーゼルは無表情に演技するタイプの俳優なんだから、せめてアクションとストーリーに緩急をつけないと厳しい。ところで、「ブルドック」っていう邦題の意味が全然わからなかったんですが、わかる方、教えてください!(涙) [DVD(字幕)] 4点(2006-04-23 19:38:31) |
134. Vフォー・ヴェンデッタ
《ネタバレ》 初日で込み込み、なんだか知らんがピントが合っていない画面、そして前後でいびきかいて寝ているおっさんが・・・という劣悪な環境で見たのだが、その環境を忘れてなかなか楽しめた。すでに多く語られているとおり、ウォシャウスキー兄弟はマトリックスの世界観を踏襲し、人間の解放を謳いあげていたりするわけだが、改めて思うのは、自分を含めてこの映画を楽しんでしまうようなサブカルチャーずぶずぶのメディア耽溺人間が、じゃあ解放されて謳いあげる何かを持っているのかというと、必ずしもそうではないということをおそらく兄弟が気付いているということ。彼らがそれを揶揄しようとしているのか、あるいは本気で変えられると思っているのか分かりかねるところに、微妙な苛立ちを感じる映画でもある。 [映画館(字幕)] 7点(2006-04-22 23:35:16) |
135. がんばっていきまっしょい(1998)
たぶんどんな人にでも、輝く一瞬があるんだなぁと思いながら見た。しかもその一瞬を、誰かと共有できるのは、本当に幸せなことだ。田中麗奈をはじめとして登場人物がみなナチュラルに風景に溶け込んでいて、ドラマ版にはなかった彼女たちの世界の「匂い」のようなものが伝わってくる佳作。 [DVD(邦画)] 7点(2006-04-15 20:51:52) |
136. きょうのできごと a day on the planet
《ネタバレ》 散文的な映画というのもありだとは思うが、それは極めて難しいこと。ストーリーなしに人を描こうとするのはあまりに人をバカにしている。こういう意味ありげだが、何の意味の無い映画は最低だ。 [DVD(字幕)] 0点(2006-04-05 22:50:05) |
137. ウォーク・ザ・ライン/君につづく道
《ネタバレ》 わりあいにカッチリ作ってある伝記モノなので、多少間延びして、退屈ではあった。けれど「成功→挫折→立ち直り」というストーリーが丁寧に描かれていて、だからこそジョニーの弱さと心意気がじわじわと伝わってきたとも感じた。「Because you're mine, I walk the line」って、すごくいい歌詞だなぁ・・・。 [映画館(字幕)] 6点(2006-04-01 18:16:59) |
138. ドッジボール
膨大な時間と労力をかけて、こんなくっだらない映画を作ってしまうアメリカ人、ひいては人間がもつ「余裕」というのは素晴らしいものだと、この映画を見ながら思った。基本的にお下劣コメディーなわけだが、スポーツが題材というだけで爽やかな味があって、そのへんのバランスが絶妙。時間を忘れて楽しめた。 [DVD(字幕)] 7点(2006-04-01 18:05:00)(良:1票) |
139. ミュンヘン
《ネタバレ》 「国家を死守しようとするイスラエル人と、国家を熱望するパレスチナ人による、血で血を洗う闘争。」そんな俯瞰的でニュース的な映画ではなく、そこに関わる人たちの目から事件を描いていこうという思いは充分に伝わってくる。そして、闘争の果てにイスラエルを去った主人公の姿を「逃げた」のではなく、積極的に国家を「捨てた」と描いていたことには、この映画をユダヤ系の監督が作っていることを考えれば衝撃的な結末だと言えるかもしれない。ただいかんせん、余計なものが省かれてわかりやすすぎる内容に、「3時間見て、これだけ?」と正直思ってしまった。 [映画館(字幕)] 5点(2006-02-05 14:58:18) |
140. オペラ座の怪人(2004)
全編ろうそくのオレンジ色で統一された幻想的な映像が綺麗だった。オーソドックスなつくりで、速い展開に慣れた目には若干退屈だったが、後半は盛り上がってなかなか。舞台の上でクリスティーヌとファントムが歌う、the point of no returnの歌(タイトルはわからん)はお下劣な内容で、ちと興奮(笑)。要するにファントムはただのストーカーだとは思ったが、その気持ちがわからなくもない自分が。。。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-31 16:56:33) |