1441. 戦火の馬
やっぱり上手いなあ、感動のさせ方が。技巧的ではあると思うけど、この手練れ感はさすが巨匠。ジョーイをめぐる様々な人々のドラマを、細切れではあるけれど目一杯きちんと描きこんで消化不良にさせない。馬が相手だと、イギリス人もドイツ人もフランス人も分けなく愛を持って接する描写が多く、そのたびにああ、ありがとう、とほっとする。馬にあれだけの演技をされては、飼い主とめぐり合う場面すら「どんだけ驚異的な確率だ」と茶々を入れる気も失せる。馬すごいな。これは特撮なのかしら。馬同士の友情にぐっとくるなんて初めてだ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-04 00:44:17) |
1442. 真実の瞬間(1991)
アメリカ映画が時折見せる、反省と自戒のこもった作品。自国の黒歴史をきちんと残しておこうというその姿勢、やはり思想の自由が保全された国として米国はチャンピオンだろうな。過去にはその自由が怪しくなった時代があったぞという、一個人としてはどうにも戦いようの無い怖い話。勝ち目が無くとも、個人の内なる尊厳を守るべく生きがいを引き換えに闘うデニーロの姿は眩しかった。生命すら失った文化人も多数いたと聞くと、どうしても一人の映画監督が頭をよぎる。今はいろんな意見があるようだけど、彼のしたことをもっと後の歴史はどう評するのだろう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-10-02 00:32:48) |
1443. 恐怖のメロディ
《ネタバレ》 ストーカー成分満載の女ってこんなに以前から存在したんだなあ。こわいこわい。さすがのイーストウッドも防戦一方。突如“屈託無く”当然のように現れて人の生活に進入してくる前半の厄介さは今でも通じる迫真の恐怖。背筋も凍ります。警察が介入してくるくだりからは、彼女“法的に”犯罪者になってしまうので、怖さがかえって半減してしまったけど。あとやたらと長く青臭いラブシーンは勘弁。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-10-02 00:09:54) |
1444. 12モンキーズ
《ネタバレ》 これぞタイムパラドックスの醍醐味、観進むにつれてB・ウィリスの未来話がかちりかちりとはまって“おお本当のことなんだ!”と明かされてゆく構成が面白い。こういうのは二度三度見返しても新しい発見があるから楽しいですよね。私はデパートの売り場に設置された天使像を廃墟に見つけて一人喜びました。あまりに精度の低いタイムマシンに呆気にとられます。「君を96年秋に送る」って次の瞬間どかーん、ばしーんと戦場真っ只中。“これ絶対96年じゃないよね?またやりやがったか”とモーレツに突っ込んでしまうのですが、この時の写真で後にM・ストーが確信を得るわけで、ここもタイムトリップの妙が効いてます。結局ただの扇動者だったブラピの横をするりとすり抜けるようにして現れた真のテロリスト。ブラピがあまりにうるさく自己主張してるからうまいことプロットの陰に隠れることができてます。ラストも秀逸、B・ウィリス任務完遂です。泣けました。サスペンス感たっぷりのかっこいい音楽も印象的。 [DVD(字幕)] 9点(2013-10-01 00:46:34) |
1445. デビル(2010)
《ネタバレ》 ワタシはシャマランの術中にはまり易い体質らしい。馬鹿にされても高得点つけちゃえ。だって、怖かったよ、これ?ぞくぞくしっ放しでしたよ。ショートした回線を復活させようとする警備員のおじさんの、じわじわ~どーん!では飛び上がったし、デビルおばさんがむくーっと起き上がった時は叫んだよ。警備室でモニターを見ていたとしたら、インド系係員のおじさんと一緒に絶叫してたはずだ。なにしろ悪魔だし、人外のモノだって最初から言ってるくらいだからネタとしては大したことないのかもしれない。だけど、静けさと動揺の使い分けといった“怖がらせ方”が上手いんですよ。しんねりと静かな音楽にも引きこまれちゃうし。後引く嫌な感じは無いし、楽しく怖がらせてもらった、という感じです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-09-29 00:40:59)(良:1票) |
1446. 空気人形
《ネタバレ》 本物の人形みたいな、ペ・ドゥナの無機質にも近い透明感。綺麗すぎて切なさが増してしまう。愛を与えるばかりで、与えられることの無かった彼女。最後に見た夢が彼女の望んだ幸福かと思うと、哀しくてやりきれない。純一にはがっかりだ。空気を抜くのはノゾミにとっては死に繋がる恐怖。相手を恐怖に晒してでも快感を得る行為に愛があるとは思えない。こんなの、酷いとしか私には思えず、だから燃えるゴミに出されても同情なんかしない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-29 00:20:01)(良:1票) |
1447. プルーフ・オブ・ライフ
ちょっとちょっと、メグさあ、もう少しお芝居がんばろう。泣きマネする女優なんてアリですか。きっとあれだよ、ラッセル・クロウに惚れたから、泣き過ぎの鼻水たらした顔になんかしたくなかったんじゃないかね。いっつも可愛いもん。旦那が命の危機に晒されてるっていうのに憔悴してないもん。ストーリーがあまりにアレなんで、これでは誘拐されたダンナの立場が辛すぎると思ってか、D・モースにそこそこ男気ある活躍させてる脚本。とほほ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-09-27 00:09:40)(笑:2票) |
1448. イーグル・アイ
《ネタバレ》 HALが宇宙の旅から戻って米国中枢を牛耳るようになったらしい。脚本は細部まで気合入ってるのが伝わるし、爆薬の量の半端なさとか車酔いしそうなカーチェイスのシーンとか、真面目に作ってあります。コンピューターにダメ出しするのも野暮なんだろうけど、銀行から出てきた配達人を銃で脅してケースを奪うシーン。あそこはねえ。中身が気圧変化に耐性のできる注射セットでした、というのがね。さすがになんでこんな面倒臭いことして手に入れなきゃいけないんだろう、どっかのドラッグストアの店長丸め込んで置いといて取りに来させりゃいいじゃん、という思いを禁じ得なかったよ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-09-27 00:00:30) |
1449. ジャックはしゃべれま1,000(せん)
自身の内面と向き合ったのち、心が成長するというベタなヒューマンドラマを木の葉と寿命とにリンクさせてきた。この唐突っぷりはまあいいとして、でも話の展開は予定調和の最たるもの。エディ・マーフィーは80’まんまの芝居してるし。これはお金出して映画館で観たらすごくがっかりするパターンのやつだ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-09-26 00:27:47) |
1450. グランド・ホテル
《ネタバレ》 群像劇の元祖だそうですね。面子がそれぞれ印象強烈なメンバーを揃えてきてます。覚えるのに苦労しない、これすごく大事なことなのかもしれないなあ。金欠の速記者に余命わずかの帳簿係、社長に詐欺師に詰んでるプリマ、ここに狂言回しの医師が淡々と状況を整理解説と、この配役の妙。展開するドラマはいたって地味で、まあ殺人事件は起こるけれどもそれだってさしてドラマチックにならず、やがて夜が明けて人々はチェックアウトして三々五々散ってゆく。一人訳が分からず残されたガルボもまた車に乗せられて、後に残るはいつもの日常業務に勤しむホテル従業員。と、ここで例の医師がぼそりとまとめに入る。人生こんなもの、色々あったり無かったりと達観したようなこの話、実は意外と深いのかも。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-26 00:09:26) |
1451. ジョン・カーター
《ネタバレ》 お金がわんさかかかってそうな豪勢な画面にB級俳優を突っ込んだ、既視感あふれるアドベンチャー。スターウォーズありグラディエーターありターミネーターあり。冒頭はクラシックな謎解きドラマのようでもあり。率直に申しますとつまんなかったです。無敵の神サマ全然強くないじゃん。カーター一人で二人はやっつけてんじゃん。襲撃場所を間違えて頭をひっぱたかれるジョン・カーター、ここだけかなちょっと笑ったのは。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-09-25 23:45:29) |
1452. 白いリボン
鑑賞中は、異様な吸引力に息を詰めていた。観終わって脳が情報を整理するにつれて、じわじわとくる怖ろしさ。ナレーションが「村はいつもの平和に戻った」と何度も言うけど、いやいやいや、この村の病根のハンパないこと。陰惨で、閉塞で、それでいて苛烈な暴力。“白いリボン”は抑圧の象徴だ。一見優等生のクララの眼差しをあんなにも暗い狂気にしたリボン。怖い。冒頭で「この出来事は当時のわが国のありようだ」と語られた。この後、第一次大戦が勃発し、やがてナチスが台頭する時代を迎えるドイツ。戦禍に巻き込まれた形のヨーロッパ周辺国にとっては「やだドイツ訳わかんない。何考えてんの」という思いが数十年にわたって積もり積もってきたであろうから、この映画の不気味さにはカンヌの審査員達もなんかすごく諒解できるものがあったんじゃなかろうか。想像だけど。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-09-25 00:26:41) |
1453. バニー・レークは行方不明
《ネタバレ》 兄と妹がセットで動くってなんかおかしいなあとは思いつつ、“サイコ”要素が入ってくるとは予想外。ネタをばらされてみると色々プロットに粗が見えてきてしまうのが玉にキズ。お母さん、娘が行方不明なんですから、しかも自身が疑われてるんだし「いや実はうちの兄、少しおかしいんですよ」と警察に相談しないかね。とは言っても、そう感じたのは観終わってからでのこと。鑑賞中は孤立してゆく母親の焦燥感とか事件の不思議感の引きが強くて、わーどうなるんだろう、と楽しむことができました。モノクロのシャープな映像も印象的です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-09-25 00:04:29)(良:1票) |
1454. かいじゅうたちのいるところ
ちょっと、今ひとつでしょうか。少年を怪物たちの中に置いて社会性を学ばせようとしているようだけども、これなら別に人間社会ででも充分学習できるのでは。なにも怪獣である必然性が無いというか、相性が合わなかったり言葉が過ぎて仲間割れしたり、こういうのってクラス内でのグループ間の小競り合いみたい。怪獣のくせに抱えていることがみみっちい。ふくろうが入ってきたっていいじゃないか 別に。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-09-24 23:45:11) |
1455. 三銃士(1993)
安心・安全、ほどほどの冒険譚。全編に流れるディズニーテイスト。画面の隅々まで小ざっぱりとして綺麗で、荒くれ者たちが集う飲み屋ですらなんだか清潔感があって、裏を返すと作り物っぽいというか。テンポ良く展開してゆくので飽きはしないけど、あまりにも分かりきった勧善懲悪なのでつまんなさも感じる。三銃士ってもともとそういうお話だったっけ?そうだ、レベッカ・デモーネイ綺麗でしたな。悪役メイクが映えるんだ、この人は。発見でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-24 00:39:36) |
1456. 白いドレスの女(1981)
今観るとやっぱり古さを感じるなあ。80’は遠くになりにけり。K・ターナーとW・ハート、今ひとつ垢抜けない二人のせいか、当時はいざしらず今やスタイリッシュのスの字も無い。どうももっさりとして暑苦しいんだよな。人物の脇汗がすごいとかいうことではなくて。K・ターナーって男っぽいといつも思う。女の色香で男を惑わすキャラではないのでは。ラストもやや蛇足気味。拘置所で情けなさ全開でアルバムをめくるW・ハート、ここで締めてくれて良かったのに。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-09-24 00:28:41) |
1457. パラノーマル・アクティビティ
こういうのは、一回目に価値があると思うんだ。真似して俺らも作ろうぜ、って学祭で上映するならちょっとは楽しいだろうけどお金をとって観せられるほどのもんだろうか。テレビの心霊特集を長々と見せられてる気分だ。“残されたフィルム”形式だからオチを考える苦労も工夫も無いわけで、なんかずるいよ。最後のシーンはセンス悪いわねえ。 [CS・衛星(字幕)] 1点(2013-09-22 23:26:16) |
1458. ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月
《ネタバレ》 続編の宿命、とでもいいますか、前作よりもパワーアップしなければということで、C・ファースはより一層不器用に、H・グラントはより一層ヒキョー者に。で、レニーは二回りほど太っての登場。ええー、レニーそこですか・・。パターンは一緒なので前作を楽しめた向きには今作もそこそこ楽しいはず。コリンとヒューのキレの悪い取っ組み合い、おじさん同士ハアハア言ってて笑わしてくれます。展開はもう、先がまるっと読めちゃうんだけど、いや秘書の彼女がブリジットに惚れていたとは予想できなかったわ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-22 23:14:16)(良:1票) |
1459. 扉をたたく人
《ネタバレ》 地味で控えめだけど、いつまでも心が共鳴するような良作。人生に厭いた大学教授の出会う、予期せぬ扉。人と出会い、繋がることの幸福感と、そんな一市民のささやかなつながりすら絶つ9・11後のアメリカの現実。ドラマチックに盛り上げるような演出を控えたドキュメントタッチでまとめているけれども、唯一教授が感情を昂ぶらせるのは願いが叶わなくなったと知る移民局での場面。小役人相手に、どうにもならないことだけど、彼の叫び、憤怒は観る者すべての思いを代弁するように感じた。個人的に好きな場面は教授がストリートショップで店番をせざるを得なくなっちゃうトコ。「手作りです」って。こういう、ふっと笑みがもれるようなシーンを挿入してくる映画がほんと好き。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-09-19 23:54:46)(良:1票) |
1460. 菊次郎の夏
暑い日が続くと思い出す一本。日本の夏をくっきりと焼き付けたような降り注ぐ蝉の声と濃い影、緑。男の子が、成長する過程で心の中から母親を切り離さなきゃならないその季節に夏ってのはまたぴったりだったりする。正男くんにとってなかなかキツイ試練だったけれど、誰もが通るその道をダメとデブとハゲが賑やかに彩ってくれる。なんという優しさ。菊次郎の照れ隠しのバカヤローが連発され、でもって観てるこちらは「ばかはあんただよ」と岸本加代子姐さんの気持ちで突っ込みつつ、何かほのぼのしてしまうのだ。 でも、やっぱりたけしを見てきた日本人としては“だるまさんが転んだ”にしても“ターザンごっこ”にしても、次のショットでハゲが絶対全裸で出てくる、と分かっちゃうわけで、このあたりのたけしギャグはもっと新鮮な気持ちで呆れ笑いをしたかったなあとちょっと残念ではある。 [ビデオ(邦画)] 7点(2013-09-19 00:58:58) |