1441. 別離(2011)
《ネタバレ》 認知症を患う父親の介護と13年も連れ添った妻との離婚問題を抱えるナデルは、少しでも生活の負担を減らそうと訪問介護ヘルパーとして、妊娠している女性を雇うことに。しかし、そのヘルパーが仕事中に父親を放り出して出かけたことを知ったナデルは激高して彼女を突き飛ばしてしまう。その後、流産してしまった彼女を巡って愛憎渦巻くドロドロの人間ドラマが展開されてゆく。もう最初から最後までひたすら口論に次ぐ口論で描かれた、閉塞感漂うイラン社会のリアルな描写にはほんとゲンナリさせられたけど、ちゃんと最後まで緊張感を途切れさせずに見せきるところはさすがアカデミー外国語映画賞受賞作。どんな世界であれ大人たちの身勝手な理由に翻弄される子供たちの姿は見ていて本当に切ないです。ドキュメンタリーならまだしも、これを映画として見ることにちょっぴり疑問符を感じるところもあるけれど、核開発や反米イスラム国家という先入観の向こう側で必死に生きる市井の人々がいるという事実をあらためて思い起こさせてくれました。 [DVD(字幕)] 6点(2013-10-31 12:38:54) |
1442. ボーン・レガシー
《ネタバレ》 このボーンシリーズって取り敢えず1・2作目は観たのだけど、なんだか個人的に嵌らなくて、それは何故かと言うと登場人物たちがあまりにも完璧すぎて人間的魅力に乏しいからで、こういう完璧な主人公たちが活躍する疾走感溢れるアクションが好きな人の気持ちも分かるのだけど、僕はもういいやって感じで3作目は観てなかったのだけど、俳優や製作陣も心機一転して新たに創られたという今作、僕の好きなエドワード・ノートンも出てることだしとあらためて鑑賞してみました。うーん、映画が始まってから2時間以上のあいだ誰一人としてほとんど笑わない相変わらず超真面目な登場人物たちが織り成す、超糞真面目なストーリー展開は、やっぱり個人的に苦手だなぁ。でも、それを抜きにしても、ちょっと脚本上の粗が目立つような。クライマックスは当然エドワード・ノートンと直接対決するんだろうなーと思っていたら、唐突に出てきた№3とひたすらカーチェイスして、最後は何故かヨットに乗って「まあ復讐は果たせなかったけど、面倒臭いからこのままバカンスに行っちゃおう」って、ちょっとあまりにもやっつけ過ぎるでしょ、このオチ。 [DVD(字幕)] 4点(2013-10-30 22:52:38) |
1443. ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館
《ネタバレ》 男手ひとつで幼い息子を育てる弁護士アーサー。働き口を確保するため、彼は単身、片田舎にあるとある館へと遺言書の調査に向かうことに。しかしそこで待ち受けていたのは、非業の死を遂げたある一人の女性の怨念蠢く妖艶な世界だった。無精髭を生やしてハリポタイメージからの脱却を図るラドクリフ君が主演した、とってもシンプルなゴシックホラー作品。なんだけど、さすがにちょっとこれはあまりにもオーソドックス過ぎると思うんですけど…。今までホラー映画で散々やり尽してきたようなネタがこれでもかとてんこ盛り。カラスやら幽霊やらが急に飛び出してきたり、効果音が突然でっかくなったり、なんだか怖がらせ方も全般的に古いよ!田舎の小さな遊園地によくある安っぽいお化け屋敷のような映画でした。もっと無茶苦茶してくれてもよかったと思うんだけどなー。あと、子供がいつ死ぬかとびくびくしながら暮らしている村人の皆さん、どうしてとっとと引っ越さないんですかね。 [DVD(字幕)] 4点(2013-10-30 17:16:43)(良:1票) |
1444. レ・ミゼラブル(2012)
《ネタバレ》 基本的にミュージカルが苦手で、この監督の前作「英国王のスピーチ」もその芸術的価値は充分に認めるのだけど、どうも僕とは合わないなぁって感じだったので、今作も特に興味もなかったのだけど、世間でやたらと評判だったし、ラッセル・クロウも出ているしということで鑑賞してみました。いやぁー、まさにこれぞ王道ミュージカル(笑)。全登場人物たちが最初から最後までひたすら喉を潰すかってくらいの勢いで歌い続けます。フランス文学史上に燦然と屹立する、あの気宇壮大なメロドラマの世界と見事にマッチしておりました。この暑苦しいくらいの徹底的な人生賛歌はやっぱり好きになれないけど、圧倒的な映像美と楽曲のクオリティの高さは確かに認めざるを得ませんね。ヘレナ・ボナム・カーターが出ているシーンに、どう見てもティム・バートンの「スウィーニー・トッド」と酷似したシーンがあるのはご愛嬌。俳優陣の熱演も見応え充分だし、ミュージカル好きな人は存分に楽しめると思います。ミュージカルに極度のアレルギーがある人は絶対に観てはいけません。死にます(笑)。 [DVD(字幕)] 6点(2013-10-28 22:34:26) |
1445. くるみ割り人形(2009)
《ネタバレ》 せっかくのクリスマスの夜なのに家でお留守番をすることになった少女メアリー。不貞腐れながらも伯父さんから貰ったくるみ割り人形と共にベッドで眠っていたら、突然、その人形に話しかけられ、そして夢とも幻想ともつかないネズミに支配された王国へと迷い込んでしまう。という、いまどきディズニーだって創らないだろう、何処にも新しい部分の全くない恥ずかしいくらい超オーソドックスなメルヘンファンタジー作品でした。こういう作品って、現実から幻想世界へと移行する描写が肝となるもんだけど、この作品はその部分がとにかく弱い。くるみ割り人形と一緒に部屋のドアを開けたら、クリスマスツリーが大きくなっていて部屋の天井もなくなってて、ただそこを登っていくだけって安直過ぎるって。それに魅力的な登場人物がほとんど居ないってところがもう致命的。ピエロとドラマーなんて完全に普通のおっさんじゃん(笑)。こういう作品を観ると、いかにティム・バートンが才能に満ち溢れた映画作家なのかが実に良く分かる。でもまあ、お金をたくさん集めて頑張って良い映画を創ろうとした監督の情熱(センスはないけど)と、ナチスという歴史的汚点のメタファーとしてネズミ軍団を描こうとしたところ(成功してないけど)は好感が持てたので5点。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-27 19:54:17) |
1446. もうひとりのシェイクスピア
《ネタバレ》 誰もが知る文豪シェイクスピアの遺した数々の名作群が、実はとある貴族が匿名で書いたものだった、という大胆な仮説と、王位継承を巡る愛憎渦巻く政治ドラマを絡めて描いた宮廷絵巻。シェイクスピアとは全く無縁の、お馬鹿アクション映画界の巨匠ローランド・エメリッヒが、突然こんな正統派な文芸作品を創ったということで、ちょっと興味を惹かれて思わず鑑賞しちゃいました。まず、現代のニューヨークの劇場から始まり、そのまま中世イギリス社会へと移行したかと思うとそこからさらに5年前へと溯り、そこからまたまた40年前へと大きく溯るという「なんじゃそりゃー!」な冒頭部分にびっくり。そして、誰が誰だか分かりにくい登場人物たちが織り成すいつの時代のどのエピソードなのか皆目つかめないシーンの数々に辟易。ようやく話が分かってきたのは1時間以上経ったころ。さすがにこれは映画としてはマイナスでしょー。あと、こんなにドロドロの人間ドラマなのに、なんだか全体的に薄っぺらい印象なのはさすがエメリッヒ君だね。それでも「いつまでもお馬鹿映画の巨匠だなんて言わせないぞー!」と頑張った感はひしひしと伝わってきたので、努力賞ということで5点あげる。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-26 21:55:29) |
1447. HICK ルリ13歳の旅
《ネタバレ》 パパは酒浸りの駄目男、ママは愚痴ばっかりの浮気性、片田舎でそんな家族とともにどうしようもない生活を送っていた13歳の少女ルリはそんな自分を変えるために、着の身着のままで衝動的に家出し、ヒッチハイクでラスベガスを目指すことに。若いエネルギーに満ち溢れたルリが出会った一癖も二癖もある大人たちとの行き当たりばったりな旅を描いたロードムービー。なのだけど、ストーリーの不自然な部分や登場人物(特にルリ)の行動原理が理解不能でいまいち乗り切れず。もっと丁寧に描写してほしかったなー。でも「キックアス」のヒットガール役で、僕のロリコン魂に火を点けたクロエちゃんの惜しげもなく披露されるお宝映像の数々に、彼女のニンフェットな魅力に次々とやられちゃう作中のロリコンたち同様、今回も完全にノックアウトされちゃいました。ホットパンツ姿でソファに寝転がるクロエちゃん、サイコーっす!!ということで+1点(笑)。この監督って確実にロリコンだよね。だってルリが途中で意味不明に黒髪へと変えられベッドに縛られるシーンなんか、「こんなクロエちゃんも見てみたい!」という監督の願望だけで撮られたとしか思えないもん。 あ、それでこんなにストーリーがテキトーなのか(笑)。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-24 09:18:15) |
1448. 幸福の罪
《ネタバレ》 一般よりは少しだけ裕福だけど、何処にでもあるような平凡な幸せを享受するとある家族。ある日突然、一家の大黒柱であるリハビリ医に児童への性的虐待という容疑で警察の捜査が入ることに。崩壊の危機に直面した家族の動揺と結束、そしてそんな家族に秘められたとある秘密を巡るサスペンス作品。なのだけど、ドラマとして見るにはまだまだ拙すぎるんじゃないでしょうか。いまいち何を見せたいのかよく分からない作品でした。そもそも捜査を担当する刑事がリハビリ医に浮気されたあげく妻を奪われた元夫って、裁判で弁護士の格好の攻撃材料になりかねないそんな人選はいくらなんでも普通しないと思うのだけど。それに、最後のまるで観客にご丁寧に説明するかのように延々と告白する妹もなんだかなーって感じです。でも、夢見がちな少女によって崩壊の危機へと追い込まれてしまった家族の人間ドラマを、淡々と描いた前半部分はそこそこ見応えがありました。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-22 17:18:44) |
1449. ロック・オブ・エイジズ
《ネタバレ》 個人的には、80年代ロックには興味なくて(どちらかと言えば70年代の泥臭いハードロックやプログレ、90年代の重厚なグランジやインダストリアルのほが好み)、ミュージカルも苦手で、「じゃー、なんで観たねん!」と突っ込まれるとイタイところなんだけど、トム・クルーズが出てるという一点のみで鑑賞。いやぁー、ノーテンキ(笑)。やっぱり80年代音楽の、この何処までもノーテンキなノリは個人的に苦手だなぁ…。でも、それを抜きにしても、どうして主人公をあの女性にしたんだろう。てっきりこの女の子がのし上がってスターになっていくと思ったら、彼氏のヘタレ男がその役目っていまいち最後の盛り上がりに繋がらないような気が。でも、相変わらずのトムのお年を召してもいまだ逞しい肉体美と「マグノリア」で見せたセックス教団会長としてイケてない男どもをひたすらアジってた時の強烈ないかがわしさをも髣髴とさせる熱演は見応えがありました。あと、ロックに猛反対していたオバサマたちが急にノリノリのロックを歌い始めるのっていくらミュージカルとはいえ、どうなんですかね…。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-20 09:39:49) |
1450. ディヴァイド
《ネタバレ》 なんの説明もなされないまま、いきなり冒頭から核戦争(らしき?)カタストロフィが巻き起こり、マンションの地下室へと追い込まれてしまった種々雑多な人々。地上に出るべきか、このままここで救助を待つべきか、各々に葛藤を重ねていたら、突然に現れた防護服姿の男たちによって唯一の扉が溶接されてしまう。「どうせ、低予算で作られた、よくあるB級SFじゃろう」くらいの心持ちで鑑賞してみたら、これが意外や意外、なかなか良く出来た密室劇で良い意味で僕の期待を裏切ってくれました。追い詰められて次第に獣性を剥き出しにする男たち、心の弱さからそんな男に引き摺られる婚約者、子供をさらわれ次第に狂気に捉われる母親、そしてそんな極限状況の中で必死に理性を保とうとする主人公エヴァ。確かに脚本上の瑕疵が目立つ作品ではあるけれど、それを補って余りあるセンス溢れる映像(ビニールで包装された無機質な通路や、銃を手に入れようとする時の変幻自在なカメラワーク、何より自らはなった業火に身を焼かれる狂った男の最期等)と、過剰なまでの暴力描写によって人間心理の深い闇を垣間見たような気がします。お金がかかっていそうなのは冒頭と最後のCG描写だけで、あとはずっと薄汚れた地下室だけで物語が進むという明らかな低予算映画なのだけど、監督の映像センスと役者陣の熱演、そして何より人の心を打つような映画を創ろうという情熱さえあれば、いくらでも面白い映画が創れるという見本のような作品でした。この監督の次回作にも期待したい。 [DVD(字幕)] 7点(2013-10-17 22:37:33) |
1451. 一枚のめぐり逢い
《ネタバレ》 いつ死ぬともしれない戦時下のイラク。海兵隊として過酷な戦場を生きていた主人公の青年ローガンは、ある一人の女性の写真を拾う。直後に被弾したロケット弾によって九死に一生を得た彼は、アメリカへと帰還すると生きる目的を探すかの如くその女性を探し始めるのだった。そして見付かったのは、様々な困難を抱えながら生きるシングルマザーのベスだった。戦場で心に深い傷を負った(らしい)青年と、息子のために必死に生きるヒロイン、横柄で暴力的な元夫、素直で純朴な息子、全てを暖かく見守る優しいおばあちゃん…。そんなステレオタイプな登場人物たちが、もう恥ずかしいくらいにベッタベタな超王道のラブロマンスを展開させてゆく。日々の日常生活の倦怠を忘れ、たまには燃えるような恋と情熱的なセックスを堪能してみたいわぁという有閑マダムの欲求に応える目的で作られたのは分かるのだけど、さすがにこれでは軽薄に過ぎる。最後も取って付けたように、嫌な元夫があっという間に改心して息子のために死んで、残った3人が幸せに大団円…。実際にイラクで心に深い傷を負って苦しんでいる元兵士なんかがこれを観たら、確実に怒り狂って銃を手に取るだろうね(笑)。 [DVD(字幕)] 4点(2013-10-16 22:49:07) |
1452. キック・アス
《ネタバレ》 前に、「スーパー!」っていう映画を観終わって本サイトを覗いてみたらやたらとこの映画のことが引き合いに出されていて、気になってずっと借りたいと思っていたのだけど、いくら探しても近所のビデオ屋さんには置いてなくて、この度たまたま立ち寄ったツタヤで偶然発見。ツタヤだけといううたい文句に「なんだよ、ツタヤ限定だったのかよー。そりゃゲオでいくら探したってないはずだよー」とちょっぴり不貞腐れながら鑑賞。うん、正義と独善の差をシニカルに取り上げた「スーパー!」と違い、こちらは何処までもオタクで童貞の冴えないティーンエイジャーの妄想力爆発のエンタメ作品でした。こういう馬鹿馬鹿しい映画って昔からけっこう好きなのだけど、ちょっとおれの好みとはずれてるかなー。もっとハチャメチャしてくれても良かったと思うのだけど、ビックダディ&ヒットガールに比べて肝心の主人公のキックアスがおとなしすぎるのがおれには物足りなかったです。それでも、紫頭にアイマスク姿で屈強な男どもを次から次へと薙ぎ倒すヒットガールのポップでキュートな可愛さには、ちょっぴりロリコンの気があるおれとしては完全にノックアウトされちゃいました。ヤバい、可愛すぎるって、ヒットガール!あぁー、おれもヒットガールちゃんに無茶苦茶にされたい!!ということで+2点(笑)。スピンオフで、彼女を主人公に一本映画を撮って欲しいなー。ってもう彼女は成長してしまってるから無理なんだろうけど。そんな女の子の成長の速さが、ロリコンとしては辛いところっす(笑)。 [DVD(字幕)] 8点(2013-10-15 10:26:43)(良:1票) |
1453. エージェント・マロリー
《ネタバレ》 主にスパイ活動を行う民間企業にエージェントとして雇われている、凄腕の女性スパイ・マロリー。バルセロナで人質奪還という任務を無事に果たし、優雅なバカンスへと旅立とうとしていた彼女は、上司から簡単な任務だからと強引にとある仕事を引き受けることに。だが、それは彼女を破滅へと陥れる危険な罠だった…。そんな窮地へと追い込まれた現在の彼女と、そんな状況に陥るまでの過去の彼女をテンポよく交互に描く前半部分は、ノリの良い音楽や豪華俳優陣の華やかさもあって、けっこう楽しんで観れました。だけど、ストーリーが現在へと収斂されてからの後半部分は見事なまでにグズグズに。それに、マロリー役の女優さん(?)、ちょっぴりお顔が大きいせいか、いまいちスタイリッシュな女性スパイというイメージに合ってないような…。でもまあ、典型的なソダーバーグらしいおしゃれで薄っぺらいアクション映画ということで、適度な暇潰しにはなると思います。 三日も経てば、完全に記憶から消え去りそうだけどねー。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-13 18:50:00) |
1454. 最強のふたり
《ネタバレ》 パラグライダーの事故により首から下が不随になってしまった大富豪フィリップ。ひょんなことから彼に雇われることになった、素行の不良な黒人青年ドリス。全く違う世界に生きていた二人の心温まるような友情を描くヒューマンコメディ。恐らく意図してそう演出されているのだろうけど、とっっっても軽い!基本的に善人しか出てこないし、介護は楽勝でやりこなしちゃってるし、そして最後は誰も彼もが幸せになって終わります。この作品に「現実はそんな甘いもんじゃないっつーの!」と突っ込みを入れるのは野暮かもしれないけれど、人間の酷い悪意や現実の理不尽さをその片鱗でもいいのでもう少し漂わせて欲しかった。そしたらこの軽さがもっと活きると思うのだけど。まあ、結局、これは好みの問題なんだろうけどね。でも、最後の海辺の映像の美しさだけは印象に残りました。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-09 08:42:16)(良:1票) |
1455. サラの鍵
《ネタバレ》 1942年、ナチス占領下のフランス、パリ。ヒットラーによるユダヤ人狩りが猛威を奮い始めていた。家族と共に、これから幸せな人生を送ると信じて疑わない無垢な少女サラもそんな歴史の荒波へと巻き込まれてしまう。突然、家へと押し入ってきたフランス警察によって連行されそうになったサラは、機転を利かせて幼い弟を納戸に隠すのだが、奇しくもそれが悲劇へと繋がってしまうのだった――。そんなサラの哀しい人生と現代を生きる女性ジャーナリストの姿を交互に描いた哀切なヒューマンドラマでした。とにかくサラを演じた子役の演技が素晴らしく、理不尽な現実に翻弄されながらも弟のために必死にパリへと戻ろうとする彼女のひたむきな姿に涙せずにはいられません。極限状況に追い込まれ全く頼りにならない周りの大人たちを尻目に、サラは共に逃げ出した少女の助けもあってなんとかパリの元自分の部屋へと辿り着きます。だが、大事に守り続けてきた鍵を使って開いたドアの向こうには…。惜しむらくは、ここでこの作品がピークを迎えてしまったこと。そこから物語の焦点がぼやけてしまったのか、散漫な展開となってしまった面は否めない。後半、もっと罪悪感から鬱とアルコール依存で苦しむサラの姿をちゃんと描くべきだったと思う。それでもそれを補って余りある、茫漠とした歴史の闇に消えざるをえなかったサラの哀しい人生には深く胸打たれました。あの時代、暗黒のヨーロッパ大陸で、こんな子供たちが果たして何人いたのだろう。観終わったあと、ナチスがいかに人間として許されないことをしたかをあらためて思い起こさせてくれる秀作であったと思います。これから新たな時代を生きていく、彼女と同じ名前をつけられた幼い少女サラには、決してこんな哀しい人生を歩ませてはいけない。 [DVD(字幕)] 8点(2013-10-06 16:55:07) |
1456. シャドー・チェイサー
《ネタバレ》 スペインの家族の元に久し振りに里帰りした主人公の青年社長。家族水入らずでボートで海へと出ていたら、突然、謎の集団に母親たちを拉致されてしまう。そして、全く事情を呑み込めぬまま、彼は国際的な陰謀へと巻き込まれていくのだった。そんな思わせ振りなストーリーがテンポ良く進む前半部分は「これはもしかしてもしかするかも?」と思わせるのだけど、途中からそんな小気味の良さはものの見事に失速。ブルース・ウィリスも速攻で死んじゃうし、後半はどこかで散々見尽くしてきたような全く新味のないアクションシーンがだらだらと続きます。あと、こんなに路上で銃撃&カーチェイスして市民が悲鳴をあげているのに、スペインの警察は何をしておるのだー!いくら財政危機に見舞われて予算が削られているとはいえ、無能過ぎるだろ!それと主人公の会社が破産したという設定は何の意味があったの?それでも、いかにも更年期障害真っ只中で今にもヒスを起こしそうなイライラおば様な、シガニー・ウィーバーの悪役っぷりはそこそこ良かったかなー。 [DVD(字幕)] 5点(2013-10-06 09:14:04)(良:1票) |
1457. THE GREY 凍える太陽
《ネタバレ》 極寒の雪山に飛行機が墜落、生き残った男たちが、襲いくる狼の群れから逃れ決死の脱出を図るお話。以上、終わり。という、超シンプルイズベストな映画でした。場面の98%が雪山と森で、可愛いおねーちゃんどころか女性は一人も出てこず、放送禁止用語を連発し下ネタばっかり話すむさ苦しい髭モジャの中年男ばかりが出演(もう画面から加齢臭が臭い立ちそう笑)という、それだけ聞くととてもつまらない映画のように思えるけれど、やっぱり映画って優れた脚本と演出力さえあればいくらでも面白くなるという見本のような作品でした。極限状況に置かれ、時には反発しあいながらも力を合わせて必死に困難を突破しようとするのだけど、人間は常に弱い生き物で周りの困難ばかりか己の弱さによって身を滅ぼしてゆく男たち。美しい自然がもたらす脅威、人が生きる理由、そして神の不在。エンタメ映画として充分な水準を保ちながら、そんな深淵なテーマをも内包したなかなかの秀作だと僕は思います。 [DVD(字幕)] 7点(2013-10-04 22:40:31) |
1458. 声をかくす人
《ネタバレ》 南北戦争終結後、ようやく平和が訪れると歓喜に沸いていたアメリカ社会にリンカーン大統領暗殺という悲劇が襲い掛かる。再び混乱へと陥ることを怖れた政府は全力を挙げて容疑者たちを次々と逮捕していく。そんななかに、暗殺計画の中心人物だった青年の母親が含まれていた。北軍兵士として戦った主人公の弁護士は、そんな母親の弁護を担当することになる。そうして始まる裁判を通じて、法と正義、勝者と敗者、個と公、そして親と子の絆といった重厚な人間ドラマが展開されていく。法廷劇としてみれば(結局、死刑になるということが分かっていることもあって)少々地味で印象に残るシーンが乏しいという面は否めないけど、それでも歴史という巨大なうねりの前でちっぽけに押し潰されそうになりながらも、最期まで凛とした誇りを失わなかった一人の女性の悲劇は充分に見応えがありました。 もうちょっとドラマティックでも良かったかなーとも思うけども。 [DVD(字幕)] 6点(2013-10-03 22:26:11) |
1459. テール しっぽのある美女
《ネタバレ》 近所のゲオで準新作・旧作一週間50円キャンペーンというのをやっていて、これは借りとかなきゃあかんやろー、と調子に乗っていっぱい借りすぎちゃって(おかげで今週はたくさん映画を観なければならなくなった…)、そんななかに含まれていた、普段は絶対に借りないであろうB級感満載のエロティック・ファンタジー。パッケージに描かれていた尻尾のある全裸の女がもっと活躍するのかと思いきや、意外にエロ要素は低め。代わりに、画面に横溢するチープな低予算感と、恐らく時間稼ぎと思われるスローモーションの多用に終始睡魔が…。もっとおっぱい見たかったよー。あと、尻尾女の女優さん、お腹出過ぎで妖精感がかなり減じてるんですけどー。看板(パッケージ)に偽りあり過ぎ!でもまあ、50円だと思えばそんなに腹も立たないかな(劇場で1800円払ってこれを見せられたなら、獅子奮迅の怒りが湧き起こってきただろうけど笑)。 [DVD(字幕)] 4点(2013-10-02 23:27:51) |
1460. ハンガー・ゲーム
《ネタバレ》 過去に起きた内戦の教訓から、年に一度、民衆の不満を晴らすためにハンガー・ゲームなる競技が開催される未来社会。それは全国から若者を24人選抜し、最後の一人になるまで殺し合いをさせるという凄惨なものだった。妹の代わりに自ら志願した、平凡な女の子だったカットニスはそんな過酷なゲームに奮然と立ち向かってゆく。という、もう設定のおかしなところや中2病全開のストーリー展開などを本気で突っ込みだしたら、怒りのあまり鼻血が出るんじゃないかというくらいお馬鹿な映画でありました。都合よく変更されていくルール(国家が運営する大会なのにゆる過ぎだろ!)、74回も開催されているのに女の子が死んだことで今さら怒り出す黒人たち(遅いって!)、四六時中ライブ中継されている映像をひたすら見守るヒマ人ばかりの未来の人々(仕事しろっつーの!)、こっ恥ずかしい恋愛要素(トホホ…)。観終わって、なんだか山田悠介の某なんとか鬼ごっこといういまや伝説と化しているカルト小説を読み終えたときのような気分になりました。「いったい此処は何処やねん!」っていう、リアリティ皆無な未来世界の雰囲気も似ております。あと、なげーよ!!さすがにこの内容で2時間20分はないだろー。90分でサクッと終わってくれたらまだ見れたかもしれないのに。原作はアメリカの小説らしいけど、覆面で実は山田悠介が書いてたりしてね。 [DVD(字幕)] 3点(2013-10-02 16:54:04)(良:2票) |