1461. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
《ネタバレ》 やたらと攻撃的な宣伝文句を並べ立てていた作品だが、観てみると存外に普通の映画でかなり拍子抜け。いや確かに、相当に変わった映画なのは間違いないのだが、もっとラディカルに妙ちきりんな作品を期待していた、というだけなんだけど。 だが、普通に映画として観たとすると、実は別に全然アリな作品だと思う。アダム・ドライバーはまたまたかなり頑張ってるし、コミカル面も(分量が少ないのは否めないが)決してそんなに悪くはないし、何よりどこで撮影したのか知らんが、荒れ地の情景にせよ時代を感じる街並みにせよ、また終盤の舞台になる城なんか特にスゴくイイ感じの雰囲気で、正直メチャクチャ行ってみたい。 とは言え、コンセプトが何なのか、という点では、ちょっと掴み切れなかった映画なのは確か。監督の過去作を研究して、そのうち再見したい。 [映画館(字幕)] 5点(2020-01-25 01:50:59) |
1462. キャッツ
《ネタバレ》 舞台版は未見。流石に全く前評判を入れずに観るという訳にもいかず、やれホラーだのポルノだのという評判を散々小耳に挿みつつ鑑賞。率直な感想としては、「ここ10年で最悪」とかいう評価はいくら何でも大袈裟なようにも思う(修正差し替えの効果がそんなにあったとも思えないのだけど)。がしかし、この規模の大予算映画としては稀に見る低レベルな出来なのは厳然たる事実だと断言する。 話の内容が極めて希薄なのが原作準拠だとしても、キャラのつくり込み・印象の付け方等でいくらでもやり様があったハズ。なのにそこは全く手当てもせず、ひたすら全編に渡ってミュージカルシーンの大盤振る舞いで乗り切ろうとしているように見えるが、背景も無いので歌詞は全く響いて来ないし、特に中盤は曲も地味なのが続くのでメリハリも欠いて盛り上がらず、極めて退屈。終盤も一番力の有る歌曲でやっとテンション上がったと思ったら、オーラスのジュディ・デンチの歌はこれも何を言ってるのかサッパリ分からず、失望の内に終劇。序盤20分くらいが一番楽しかったかと(か、エンドロールの歌がまあまあ良かった)。 とは言え、全体として歌や踊りに全く見るものが無かったという訳ではなくて、個人的には特にバレエシーンなんかは少し幻想的な良い雰囲気だったとも感じる。更に言えば、バリエーションを付けるべく色々と工夫された猫の衣装?も個人的にはむしろ良く出来ていたと思った(一人だけ、コートを脱いだマキャヴィティは確かにかなりキモチ悪かったケド)。 [映画館(字幕)] 4点(2020-01-25 01:25:25) |
1463. メン・イン・ブラック:インターナショナル
《ネタバレ》 本作も『3』に引き続きSFアクションとしての映画づくりがされているようで、コメディ要素は添え物程度な感じ。緊迫した場面も多いが、一方で完全にスリル&アクションという感じでもなく、なんか中途半端でどっちつかずな感がある。クリヘム君は筋肉は凄いが、俳優としては結構にポンコツなように思っている(テッサちゃんはそんなに悪いとは思わなかったが)。続編があるかどーかは極めて怪しい程度の出来映え(もしつくるんだったら、やっぱり『1』のコメディ全振り路線でお願いしやす)。 [映画館(字幕)] 5点(2020-01-24 01:13:40) |
1464. プールサイド・デイズ
《ネタバレ》 超絶いい加減なサム・ロックウェルをはじめ、プールサイドの面々は実にコミカルで、主人公がこっちに居るときはこの映画はとても楽しい。その一方で、サイテー男スティーヴ・カレルと自分のことで手一杯な母ちゃんトニ・コレットが待ってるおうちの方は、実に陰湿で暗ーい何とも堪え難い空気(観てるこっちも実際に堪え難い)。雰囲気の両極端さそのままに、主人公はスティーヴ・カレルと完全に決別して映画は終了するが、こういうただ一方的な人間関係って個人的にはあんまり好きじゃない(一方が100%悪役というのは、少し単純すぎて映画として浅いようにも感じる)。 でも「反抗」できるようになるって思春期の一番最初の顕著な成長だとも思うのだよね。それを描きたかった映画なのだとも思うし、その意味では終盤の展開も、またその部分の子役の演技も決して悪くなかったと思う。重ねて、コメディ部分はとても面白かった。一番笑ったのはやっぱりしれっと戻って来てるルイス(実は演者は監督だそうで、お疲れ様です)。青春ものを観たい!ってときの選択肢としては、十分にアリかと。 [DVD(字幕)] 6点(2020-01-23 00:03:18)(良:1票) |
1465. フォードvsフェラーリ
《ネタバレ》 MX4D・4DXは個人的に別に嫌いではないのだが、基本的に乗り物映画(特に航空機・航宙機の類い)の場合に選択肢になるかなという程度なのである。今作はクルマの話で、教習車しか運転したことのない私にとっては優先度が決して高くはないのだが、近場でイイ感じの時間にMX4Dの回が配されていたので、軽いノリで参上してきた。結果の方は、レースシーンの臨場感は否が応でも高まって良いが(特に急加速したりするシーンではこっちも加速度が感じられて良い)、割とどーでもいい場面でも車乗ってると必ず椅子が動くってのは(特にラスト付近の情感高まるシーンでは)ハッキリ言って邪魔なだけで、かなり興醒め。まだまだ発展途上の技術だと感じる。 映画の内容の方は、ひたすらレースで勝つのが目的な話で、この題材の映画としても結構単純な内容だとも感じる。とは言え、デイトナでの勝利と、それに引き続くル・マンでのフェラーリとの激戦・劇的な決着までは最高に盛り上がった。がしかし、個人的にはどうにもそこからのル・マンの結末にはただ盛り下がるしかなく、その一点のみで本作の個人的評価はかなり下がってしまったというのが正直なトコロ(ここの部分は完全に実話らしいので、何ともしょーがないのではあるが)。 ただ、更にそこからの哀愁漂うラストまでのつくりは決して悪くないし、つーか上記の場面以外は全体としても長尺ながら全くダレずにとても面白く観れたし、十分に良作と言ってよいクオリティは有る。加えて、C・ベールの眼光一閃で3人くらい殺せそうなレース中の鋭い目付きは超迫力で、あんまり観たことないくらい物凄かった。これのためだけに観る価値が有るレベルだと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2020-01-21 23:31:05) |
1466. チャップリンの独裁者
《ネタバレ》 本作の笑いは、スラップスティックな面を多分に含みながらも、大多数は本質的に「風刺」であり、抱腹絶倒と言えるとまではいかないのが正直な所である(ヒトラーのモノマネなどはかなり笑えるが、何回も登場するたびに爆笑できるとまではいくまい)。むしろ本筋は結構シリアスな物語であり、その意味でもコメディとして観ると少し違和感を感じるといって過言ではないと思う。 本作の真の価値は、映画でヒトラーに立ち向かったチャップリンの映画人としての「心意気」にある。同じことを成し遂げた人間は、現代に至るまで皆無なのだから。 [DVD(字幕)] 9点(2020-01-19 15:43:02)(良:2票) |
1467. 八月の鯨
《ネタバレ》 人生、必ずしも上手く生きてきた訳ではない。辛いことも多かった。悲しいことも多かった。掴んだと思った幸せは、指の間をすり落ちて二度と戻っては来なかった。 今、老いさらばえて病を得、体の自由も利かなくなり、遠からず訪れる死を待つのみとなった… それでも、それでも前向きに、今を生きてゆこう。いつかまた、鯨がやって来ることを信じて… [DVD(字幕)] 9点(2020-01-19 15:27:09)(良:1票) |
1468. ギャング・オブ・ニューヨーク
《ネタバレ》 大乱闘で親父が殺された!→なんやかんやあったけど、デイ=ルイス格好好い!(この間120分)→再び大乱闘!ワチャワチャしたけど、なんかカタキは取れたぜ! というだけの映画だが、色々と?な展開・演出の数々は正直意味不明なレベルまでに出来が良くない。一点だけ、非常に単純な敵討ちの物語で、要は二人だけの話(狙う方とカタキ)なのにも関わらず、その二人が種々の点で全く釣り合いが取れていないのが致命的に気になる。カタキの方は高潔で敏腕、加えて演技も超迫力なのに対し、ディカプリオの方はちょっと喧嘩強いだけの小物(手下に甘んじて裏で命を狙うというのは、どうしたって裏切り者の誹りは免れないだろう)、加えてバカ(ナイフで殺すことに拘って失敗し、失敗してから銃を取り出すもなんとナイフ投げで阻止されるという絵に描いたような間抜けぶり)、演技も平坦かつ平凡で、これではカタルシスも何もあったもんではない。何故にここまでシンプルな話がこんなにつまらなく(しかも長尺に)なったったのだろうか… もう一点、C・ディアスは見た目あんまし「品」の有る方でもないと思うのだが(逆に近寄りがたくなくてコケティッシュな所が魅力だと思ってる)、それにセコいコソ泥を演らせてしまうと、ちょっと育ちが悪すぎるようにも思う(少し憎々しすぎるというか)。 [DVD(字幕)] 3点(2020-01-19 14:02:42) |
1469. mellow メロウ
《ネタバレ》 ありふれた街角、その一軒の花屋を舞台に紡がれる種々の人間模様。なかでも幾つかの恋愛事象が物語の軸となっているが、その恋はどれも実ることがない。にも関わらず、本作が爽やかでポジティブな雰囲気に満ちているのは、この映画が終わりを描いているようで、実ははじまりを描いていること。ただ自分の想いを伝えたいというささやかな決意と、一歩前に踏み出そうとするひたむきさが、いずれも静かに、だが確かに、描き込まれているからだろう。観ると少しだけ元気を貰える、そんな映画。 [映画館(邦画)] 7点(2020-01-18 14:34:54)(良:2票) |
1470. ジェミニマン
《ネタバレ》 この映画の真のコンセプトはウィル・スミス若返りの特殊CG処理であり、その点では大いに成功しているのは間違い無く、今後の発展も見込めるエポックメイキングな素晴らしい技術なのはよおーく分かった。 しかし、映画自体の内容的にはかなり酷い出来だと思う。至極平凡なメインシナリオ、絶妙に繋がっていかない低レベルな展開運び、そもそも「ジェミニ」のアイデアがただ普通にクローン作っただけというもはや時代遅れな代物だし、せっかくウィル・スミスを2人用意したのにその2人の絡みに特段スペシャルな仕掛けが無いという致命的な企画倒れ… ただ、中盤のバイクチェイスや、スミスvsスミスのステゴロ、終盤のガトリング砲撃ちっぱなし等のアクションはそこそこ見応えも有り、観て損したとまでは思えない程度のクオリティは整っている。暇潰しにはまあ十分かと。 [映画館(字幕)] 5点(2020-01-18 02:56:51) |
1471. インターステラー
《ネタバレ》 基本的に近未来SFは悲観的な世界観でないと映画としては「当たらない」らしいが、本作は絶望的状況の演出が極めて秀逸かつ非常にリアル(=将来ホントにこんなんなりそうな)で、観ているだけでもなんか息苦しくなるレベル。展開運びもシリアス全開で、この点も面白く&興味深く&ハラハラしながら観れると言える。 なので(個人的な)結論を言うと、そこからのラストの展開がなんか少ーし空気が違う感じがしてそこが至極残念だというのに尽きる。恐らく「愛は時空を超える」とか何とかいうのがテーマの一つなんだろうが、せっかくリアリティに徹した凝ったシナリオなのに……とは言え、流石の独創的映像表現なんかもハイ・クオリティで、全体としてSF映画としては最高レベルに高品質な傑作。観て損は無い。 [DVD(字幕)] 8点(2020-01-18 02:32:20) |
1472. ジョジョ・ラビット
《ネタバレ》 コミカルな側面を前面に出した宣伝がされていた様に思うが、コミカル要素が無くてもヒューマンドラマとして完全に成立する話の内容である。むしろ本作のコミカル描写は全て、戦争の狂気を具現化するものとして描かれている(ホロコーストをはじめ、子供までを体制賛美と殺戮に駆り立てていることそのものが笑えない喜劇だという)。本作が真に描き出さんとするものはもっと静かで、真摯だ。その意味では普通に結構マジメな戦争系ヒューマンドラマだった。 ただ、こういった重い題材をテーマにしながらも、生活感や種々の生々しさを極力排除&状況設定も単純化・抽象化したどこか寓話的な雰囲気に、表面上のコミカル要素を足し込んで、子役の無邪気さ・可愛さをミックスして練り上げた作品全体の空気は、実にポップで何とも楽しいのだ。それはきっと、本当に伝えたいものを(例えば子供にも)苦しむことなくすんなりと飲み込んでもらうためのオブラートのようなものなのではないかと思う。その意味ではとてもポジティブなアプローチだなと率直に感じた。 そして、そうは言ってもこの題材の映画を現代的でコミカルでポップ、かつテーマはマジメに仕上げるなど、常人に可能なワザとは思えない実に卓越した仕事だと言って間違いは無いだろう。そもそも、ホロコーストを描いた映画をビートルズで始めてボウイで終わるって、音楽感覚ヤバいでしょ。やはりこの監督には、底無しのセンスを感じる。 [映画館(字幕)] 8点(2020-01-18 01:34:24)(良:2票) |
1473. ラストレター(2020)
《ネタバレ》 前半、過去と現在が一人二役で入り混じり、加えて手紙の遣り取りも錯綜する展開は、中々に複雑でそれが単純に面白い。このパートの主人公は松たか子で、(いい意味で)間が抜けたコミカルな様子が非常に微笑ましくて和む。後半は一転して福山雅治が主役で、やや暗い展開も交えつつ進むが、過去の回想と死んだ人の話が主体で肝心の福山雅治自体の話の方はあまり進展していかないようにも思う(ラストは少し前向きになって終わるとは言え)。 やや前後半で断絶が感じられるのと、それもあってか少し話が取り留めなくなっているようにも思われる。例えば、もう少し全体に渡って「未咲」の存在感を強く保ち、その人格・人生を生きている主演陣を使って描き出していくというような構成であれば、ラストの手紙の意味なんかもより明確になるようにも思うが、正直未咲がどういう人だったのかもイマイチ良く分からないのだよね。 とは言え、前述どおり展開運び自体はそこそこ面白く観れるし、全体の優しい郷愁に満ちた雰囲気もかなり心地良いのは間違い無い。その意味では、一人だけ唐突にドス黒いトヨエツは優れたスパイスになっていると言える。 あと一つ、ドローンてヤツは結構雑に使っても、画に広々とした爽快感が簡単に出せるもんだなと思った(爽やかな夏の雰囲気が強い本作では、特にそうなのかもしれない)。 [映画館(邦画)] 6点(2020-01-18 01:07:07)(良:1票) |
1474. ボーダーライン(2015)
《ネタバレ》 中盤までは、意図的な演出だが状況がよく分からないまま進み、実話ベースの衝撃的な描写のいくつかが映画のテンションを保っている(が、やや退屈)。しかし終盤、それまでを更に上回るショッキングな展開と、繰り出されるデルトロの鬼気迫る演技に圧倒される。エミリー・ブラントの疲れ果てた様も中々良いが、これは完全にデルトロの映画である。近年稀に見る傑作アクション。 [DVD(字幕)] 8点(2020-01-17 01:01:33) |
1475. ベン・ハー(2016)
《ネタバレ》 ワイラー版のような作品を目指していたとするなら、この作品は確かに失敗だと思う(全体的に金の掛け方や作り込みはかなり甘く、またテンポが良過ぎることも相まって物語が非常に軽いので、歴史スペクタクルの醍醐味たる重厚さは致命的に損なわれている)。 ただ、一転してライトな作風を狙ったのだとしたらどうかというと、前述のテンポの良さは十分利点になりうるレベルだし、脚本の工夫も決して悪くない(主役二人の関係性の新機軸は率直に中々面白かった)。だが、だとしても終盤の駆け足ぶりが単純に映画として褒められたものでは全くなく、歴史スペクタクルとか関係無しに「2時間の枠に抑え込むのに拘り過ぎ」な感が大アリ(そして失敗しているという)。 結局、ベン・ハーという話は重厚に撮るのが絶対に正解だ、という当たり前のことが分かっただけな気もするが、そうは言っても全体的に「思ったよりは酷くない」レベルなのは自信をもって断言できるし、暇潰しとして観るなら意外にそこそこ楽しめるだろう(もちろん名作の方と比較しながら観ても良い)。戦車競走なんかは流石にワイラー版より向上した部分も大きいし。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-01-17 00:15:34)(良:1票) |
1476. レイダース/失われたゾンビ
《ネタバレ》 私が観た中で最も単純につまらない・観る価値の無かった映画は多分コレ。真面目にレビューするのも馬鹿らしいが、まず場面間の繋がりも意味不明で、何を観せられてるのか最初から最後まで皆目わからない。BGM(例のあの歌をはじめ)すらも意味不明。商業映画としては逆に奇跡に近いダメ加減で、オールタイム・ワーストの最有力候補の一つ。 [インターネット(字幕)] 0点(2020-01-16 23:58:12) |
1477. リターン・オブ・ジーパーズ・クリーパーズ
《ネタバレ》 ショボい特撮も相当に薄ら寒いが、シナリオも所々意味不明だったり、あっちゃこっちゃ行ったり来たりと定まらなかったりで、なんとも酷い有様。見所も皆無。エンドロールを確認すると、監督・脚本・製作がワンマンっていう作品。コンセプトもアイデアも無いのに、仕事が無いからただただ続編作りましたってのが一目瞭然、正に自己満足の極み。そんなのに付き合わされるこっちの身にもなってみろと(前作がヒットしてるならまだしも、完全に自業自得だが)。 [映画館(字幕)] 2点(2020-01-16 23:46:37) |
1478. 魔の巣 Manos
《ネタバレ》 『死霊の盆踊り』に匹敵する中身の無さ。仄かにでも笑える、というのは中盤の謎のドタバタ痴話ゲンカ騒ぎぐらいなので、ハッキリ言って使い道は何も無い。史上最低の映画の有力な候補一角。 [DVD(字幕)] 1点(2020-01-16 23:40:38) |
1479. ラストサマー3
《ネタバレ》 1作目の謎解き重視なスタイルでの続編と見せかけて、犯人は例の漁師のゾンビでしたあ、という、無責任極まりない支離滅裂な酷いシナリオ。これは酷い。 [DVD(字幕)] 2点(2020-01-16 23:39:09) |
1480. ブリキの太鼓
《ネタバレ》 極めて特異で奇怪な主人公が設定されているが、彼が紡ぐ物語はこれまた外形的にも内面的にもこの上なくグロテスクで、ハッキリ言って本作はグロ映画の類だと言って過言ではない。主人公本人からして極めて不愉快なサイコパスで、目なんて(子役の癖に)半ばイっちゃってるし、あくまで日常風景をベースにしていながらも、とにかく映像がグロテスクで中々観るに堪えない。個人的に特にキツかったのはウナギ(シュヴァンクマイエルとかでも思うことだが、マズそうな食物ほど意外と心を「エグる」ものは他に無いようにも思う)。また、性的にも中々インモラルで、これほど濡れ場が全然嬉しくない作品もある意味珍しい。 ただ、この奇妙な設定と醜悪な演出によって本作が描き出そうとするものは、この時代のドイツ(取り分けて大きな社会的矛盾を孕んだダンツィヒ)の病的で狂った「時代の空気」なのだということはより良く理解できるように思う。その意味では、これだけ荒唐無稽な話でありながら、その伝えんとする雰囲気が寧ろより直感的で鮮烈に伝わって来るのは確かであり、映画としてテーマ面の表現が優れていることは間違い無いと言える。文芸映画としては屈指の傑作。 [DVD(字幕)] 8点(2020-01-16 22:24:54) |