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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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141.  シムソンズ 《ネタバレ》 
俺が「キサラギ」を見直し再評価するキッカケになった映画。  70年代風のスポーツ映画・・・いやTVドラマの感触。 人間の善良さを信じぬく物語に、我々は何処か懐かしさを覚えるのだ。どの世代にも関係なく。 毎回凝ったOPの佐藤裕市、簡単な自己紹介。  撮影は「キサラギ」でも組んだ川村明弘。  未来への不安、悲惨な人生想像、それを中断するように飛んでくるカーリングのブラシ。  劇中で幾度も画面を横切る自転車、軽トラ。少女たちは車をコントロールするようにカーリングの石を滑らせ、走らせていく。 「キサラギ」同様にアイドル(偶像)・憧れに誘われる主人公。「キサラギ」と違い最初からハッキリと映されるアイドル。 「キサラギ」に振り回される男たち、「シムソンズ」のために団結する女たち。  他に何も無い、何もないからみんなカーリングに熱狂し、何もないから勉強して現状から“抜け出そう”とする。  主人公も先輩への“憧れ”しかなかったから見栄を張ってしまう。  そんな何もないからこそ一つの事を徹底的に極める人々、それを追うメディア。  ブラシで擦るのは牛舎を綺麗にするため、石を走らせるため、己の未来を拓くため。  いつの間にか揃っていく面々、分かりやすいカーリング講座、「simsons」のゼッケンで自分を飾る。 シンプソンズ(The Simpsons)。とシムソンズ(simsons)。彼女たちはオリジナルの「シムソンズ」になれるのかなれないのか。  鏡に映るコーチ、憧れが遠のいていく現実、石に振り回される面々。  手に書いて覚える“勉強”。でも机と向き合い自分を偽る勉強とはワケが違う。  ワンマン少女、農家の少女、ずうずうしい少女、挨拶は「最低」の勉学少女。 それぞれが石で打ち砕きたい現実を抱え、嘘をつき続ける。  対照的に現金なコーチは自分に嘘をつけない。ホタテ漁に打ち込むのは幼い子供のため、誇れる“恥”をかいたのも仲間の名誉のために。 正直者と嘘つき少女たちの邂逅。  幾度も響くゼロ(0点)の言葉、丸い形。  ブラシを奪うのは人質にするため、たまねぎを切るのは女を泣かすため、声を出すのは自分を鼓舞するため、資金を集めるため、警察の手から逃げるため。 少女たちが走れば石も氷の上を走る走る走る。  ド素人もプロもイチからミッチリ訓練、木に刻まれる“目標”。  氷職人の超カッコイイ丸投げ、トイレのドアで練習、授業中も脚を動かさずにはいられない。 一応挨拶と握手はするようになる司令塔さん。彼女が“一線を越えた”のは自分のためか「1点」を目指す他人のためか。 やっと不平不満が爆発する。 「ずうずうしい!」という言葉のブーメランの投げ合い。  悪役に徹するホワイトエンジェルズ。名前と正反対の漆黒のユニフォーム。 表情が活き活きしたシムソンズに対し、エンジェルズの面々の表情の暗さは何なのだろう。 監督は何故、藤井美菜のような女性をエンジェルズ側にもキャスティングしなかったのだろう。エンジェルズがミキに嫉妬しているような側面も感じる。 ミキの過去がコーチの出した写真と記事だけで語られるだけ。ミキもあまり自分の過去は語らなかった。  ミキは言葉ではあまり語らない。 放り投げられたコインに思わず走り出すような、行動で示す女性だった。海の中に躊躇無く脚を入れるのだから。やはり他人のために頑張ってしまうタイプの女の子だった。  勝つ前の1点・勝つための1点。笑顔でエールを送る。  身を引き締める衣装と刺繍、大事なものを譲り合う女たち。初雪、ミキの選択、緊張をほぐす笑顔。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-11 23:44:52)
142.  チャップリンのゴルフ狂時代 《ネタバレ》 
「のらくら」または「ゴルフ狂時代」。 汽車を待つ人々、降りてくるゴルフ狂たち、夫人の脚、荷物入れから出てくるチャップリン。何と言う無賃容赦。 車の後ろに座るが振り落とされる。 今回のチャップリンは放浪者と同時に身奇麗な紳士も演じる。ちょっと抜けたね。 ズボンの短さに不意打ちってパンツかよwwww新聞で隠してしゃがんで移動。 泣いてんのかと思ったらカクテルをシェイク。サイレント映画ならではのギャグ。  芝生をズカズカ歩き、ゴルフボールを気づかぬ内に蹴って運んでしまう。  正しい土の使い方、不憫すぎるオッサンの連鎖、チャップリン気づけよ、腹を踏むと次から次へとボールが出てくる昼寝中のオジサン。よく窒息しなかったなこの人・・・。  馬、乗馬する女性、ロバで追跡、自力で追うスピードの速さ!と出来たらいいな。  酒瓶を狙い撃ったようにしか見えないナイスショット、殴られ腫れ上がった面で再び現れるオッサンの受難、太めのオッサンも災難続きで帽子を踏む追い打ちまでされる。  人違い、地面かと思ったら沼にドボン、チャップリンと出会うゴルフ狂はみんな災難が降りかかります。  仮装パーティー、騎士に扮装する紳士、鉄仮面が取れなくなるパニック。  スリに間違われ警察とのおにごっこ、チケット、逃げた先で警察かと思ったらそれの仮装。  懐中時計をくるくる回しながらしまう、デブのオッサン相手に後の「猪木アリ状態」?、御夫人のスカートに失礼。 バグパイプ奏者、嬉しくないパンチラ、缶切り?で鉄仮面を切り開く一変する空気。 追いかけて交わす握手・・・を文字通り一蹴するのがチャップリン。「今更遅いわ!」
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-11 23:41:24)
143.  南極料理人 《ネタバレ》 
猛吹雪の雪原、建物らしき黒い影。その中を駆け抜ける3人の男たち、倒れて揉み合う。逃げ場のない氷原、生きるために仲間を励ます。 「遊星からの物体X」みたいなサバイバルアクションでも始まるのかな?と思ったらぬくぬくとした部屋で麻雀始めちゃうんだもんなー。 撮影は「トウキョウソナタ」といった黒沢清作品でも腕を振るう芦澤明子。冒頭シーンの凍りつく画面、その後の居心地が良い画面が素晴らしい。  麻雀、漫画、ビデオ、音楽、ボウリングでストライク、カクテルとバー、卓球。極寒の密室、その極限状態に耐えるための娯楽、美味い飯!  命懸けで仕事に挑む人間たちが、飯を美味そうに食っているシーンの多さ。なんて腹の減る映画なんだ。心は満腹になるけどね。 飯を食いながら登場人物の紹介、好き嫌い、トマトに悪戦苦闘、丹精込めた料理に調味料をかけられすぎるのは料理人のプライドが見過ごせない。  空が晴れると白い建物。太陽が遮られた時はあれほど黒く見えたのに。  朝、ドアをめぐるやり取り、ラジオ体操と“目の保養”、落花生の箸置き、仕事内容の確認。  1年だけの付き合い、1年も務めなければならない厳しさ。  意気揚々と仕事にかかるプロフェッショナルたち、掲げられる旗、旗、旗。風の強さをストレートに教えてくれるし、時には誕生日といっためでたい日を祝う。   ボーリング調査といった仕事。 天然の冷蔵庫から材料を運び入れ、一品一品真剣な眼差しで作っていく。  サングラスをして何かを待つ男たち。「ワルキューレ騎行」と共に自転車に乗ってやってくる飯時。 飯めがけて全力で駆け、転ぶ。  読書中の主任に弁当の配達、積み重ねられ始める不平不満。基地のアチコチに張られた異性のポスター、受話器の向うの甘い声、家族の写真や宝物。すべてはホームシックの叫びを抑えるために。  雪を掘って水作り。他の面々も生きるために食飲み食いするものを作る。8人にとって無限に等しい原料。伊勢海老につられてくる面々、エビフライコール。  回想、揺れる船、帰りを待つ家族、胃がもたれる嫁の手料理は母の味。文句を言いながら食う食卓の団欒。 願った人間に訪れる事故、願わなかった人間に降りかかる仕事。 「家族と相談させて下さい」 「おめでとう」 「家族と相談・・・」 「行ってらっしゃいお元気で」 ああ殴りたいあの笑顔。  節分のお面、裸の鬼を締め出す・・・て殺す気かwww 劇中の面々は度々裸になって氷点下を満喫する。記念撮影もトライアスロンの特訓もパンツ一丁。 時間の限られた電話、砂時計、天然の氷で乾杯。  夜食を目の当たりにして「もう勝手にしろよ・・・」とドアを閉じる。人が何のために丹精込めて飯を作っているんだよと。 でも食う本人たちもそれはそれ、これはこれ。  凍傷への対応で怒る男たち。真剣な者と嫌々でやっている者たちの対立。  でっかい肉を外で火をつけて肉を振り回すシーンの面白いさこと。 「楽しいwww」  巻き込まれる主任、誕生日ケーキと肉のステーキでパーティー、料理人を支える娘の歯。  いちごの原液をかける天然のかき氷、原液はそのまま野球のベースラインに。  太陽を拝めない日々の鬱屈とした様子。 誰のための正装か解らない祭、凍傷が治った手と伸びた髪が物語る日数。  料理人もお母さん状態。 「あ~ぐ~ら」  ラーメン中毒者とバター中毒者が出てくる状況。重症です。  さあクソ主任との対決だ!後ろから迫る怒り、料理人も有無を言わさず蹴る、フラれたショックで自殺行為、医者「はい凍傷ね」  そして娘の分身に等しかった歯ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!! 精神的にグロッキー。  胃にもたれる母の味が料理人に涙と活力を与える。仕事仲間たちが、家族たちが食べさせてくれていた愛情。お母さんと娘の計らい。  本土との通信。 「可愛い動物は~?」 こんなに可愛いおっちゃんたちがいっぱいいるじゃありませんか。おっさんは非売品。   “冠水”作り、ラーメン>>>>>>>>>>>>>>>>>越えられない壁>>>>>>>>>>>>>>>>>>オーロラ。  いつもの朝食風景が、食卓を囲む人々が消えていく瞬間の何ともいえない寂しさ。  再会、そして出会う人々。“声”だけで出会った恋人たち。  成長した子供たち、氷原と灼熱のアスファルトを駆け抜ける男の生き様。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-11 23:36:31)(良:1票)
144.  くもとちゅうりっぷ 《ネタバレ》 
昆虫たち、てんとう虫の少女、蜘蛛の紳士。蜘蛛の巣のハンモック、美しい花々。交互に歌い合う二人。 蜘蛛は優しい口調で“得物”を誘惑する。  蜘蛛のナンパ、てんとう虫の女の子は羽で飛ばずに草から草に飛んでいく。怖がって羽の下に隠れてしまう。 蜘蛛が糸でするする降りたり昇ったりするアニメーションの軽やかさ。  ちゅうりっぷの介入、花の中の顔、蜘蛛の糸を大量に出してがんじがらめに巻きつける。 蜘蛛は糸をマフラーのように、鈴のように、タオルのように巧に操る。  空の上、雲の上から風を飛ばす者たち、雨風の猛烈さ・空爆のような雨。  子供のようなミノムシ?冒頭のミツバチ?がてんとう虫の女の子たちを助けるキッカケに。  傘にくるまって飛ばされ、草木はそれを跳ね飛ばすように運ぶ。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-10 18:28:15)
145.  なまくら刀 《ネタバレ》 
フィルムセンターで鑑賞。  別名「塙凹内名刀之巻(はなわへこないめいとうのまき)」。 舞台は江戸時代、買ったばかりの刀で試し切りをしようと座頭に後ろから声をかける。それを馬が脚蹴を食らわすように侍を蹴り飛ばす。 飛び散る☆といった表現。表情の変化も豊かだ。  この後も侍は散々な目に遭い、肝心の刀も実は・・・という見事なオチ。  90年以上前の日本で、既にこれほど豊かな表現に満ちたアニメが生まれていた事に感動した。
[映画館(邦画)] 8点(2015-06-10 18:27:07)
146.  蒸気船ウィリー 《ネタバレ》 
子供の頃、ミッキーのビデオで見て以来。 黒い煙を噴き上げる蒸気船。口笛をふきながら舵を切るミッキー、伸びる胴体、五月蠅いオウムにバケツごと水をぶっかける。 細い牛にデカいベルト、それを草を食わせて太らせる。乗船し遅れた乗客をパンツごと引き上げる。楽譜とギターはヤギに食わせる餌。音だけが残る。 楽器になるyアギ、ありとあらゆる物が楽器と化す楽しさ。猫やガチョウ?、子豚、豚、牛の歯すら楽器に。 俺が見たビデオ版(Disney ミッキーマウス/ブラック&ホワイト特別保存版)には豚の母親が仰向けになってアコーディオンのようにされるシーンはカットされていたかも知れない。 硬そうなチョコ?ガム? ハメを外しすぎた罰に、芋の皮むき。五月蠅いオウムは再び叩き落される。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-06-10 18:25:00)
147.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 《ネタバレ》 
銀河から集まったアウトロー集団の大暴れを描く快作。 ダークで主人公がウジウジするようなアメコミは嫌だ、頭からっぽで楽しめるのが見たい!という面々が撮った痛快なカウンターパンチ。  それはかつての西部劇といった娯楽映画にも通じる流れ。 「真昼の決闘」という退屈なクソリアリズム西部劇は御免だよ、という人々に向けて撮られた痛快な傑作「ヴェラクルス」や「リオ・ブラボー」といった流れを思い出す。  ただ、最近のアメコミはダークさとツッコミどころにも溢れた従前たるアクション映画の傑作・良作の方が多い。数十年前より遥かに進歩している事は確かだ。  要は雰囲気の問題。 とにかく単純明快で楽しいのが見たいという人に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を全力でオススメします。   冒頭の病室における別れとレクイエム、膨大な過去が眠るであろう遺跡でダンス、そして踊るようなバトルとそれを盛り上げる“音楽”。 「キック・アス」にも参加したベン・デイヴィスの軽快なキャメラワークも良い。冒頭のお葬式ムードが嘘みたいに馬鹿馬鹿しくなっちまった(褒め言葉)。  時代を超える魂のリズム!クラシックが何百年の時を超えるように、音楽は時代を選ばないし、好きなものに過去も未来も存在しない。その人にとっての現在進行形。それは映画でもアメコミでもアニメでも、すべての娯楽に共通する醍醐味だ。  「スクービー・ドゥー」や「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本・「スーパー!」を監督したジェームズ・ガンの演出は楽しい。 今まで参加してきた作品にあった暴力性(ヴァイオレンス)の快感。それを子供も楽しめる生粋のエンターテインメントに仕上げている。 クラシックとアクションが弾ける瞬間!  音楽とダンスは戦闘前にアドレナリンを高めるおまじない。俺には天国のママンがついているぜっ!アジトに殴りこんで獲物を奪い逃げていく見事さ、グリーン姉さん(検索する際は細心の注意を)の大立ち回り、刑務所での大騒ぎと大脱走、次々に増えていく面子。  最愛の人の手を握ってやれなかった幼き頃の悔しさ、今度はもう離さない!たとて氷点下の宇宙だろうと!  え? 横でその他大勢の正義のために立ち上がった面々がアボーンしまくっているって? 主人公のスルースキルがありえないんだぜって? ここまでCG使うならいっそフルCGにしてくれた方が違和感なかったって? 細かい事は気にするな!ツッコミどころの多さもまた楽しんだもん勝ちの娯楽よぉ!  ラストで“生まれ変わった”者が踊りあげる生命のダンスも可愛い&グッとくるじゃないか。  特に好きになったキャラは宇宙海賊ヨンドゥのオッサン。 地味に無双するわクイルたちの事も何だかんだ言って気にかけてくれる。 流石に原作漫画のモヒカン族(インディアン)スタイルはNGだったか。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 21:08:19)(良:1票)
148.  ニーベルンゲン 第I部 ジークフリート 《ネタバレ》 
ラングによるファンタジー映画の大作。第一部「ジークフリート」、第二部「クリームヒルトの復讐」。 同じ大作でも「ドクトル・マブゼ」は謎解きと犯罪活劇の面白さがそこかしこに満ちていたが、この映画はそれほど緊張がみなぎる作品だろうか。 そりゃあ細部にいたるドイツ美術の見事さには目を見張るし、ジークがドラゴン退治をするシーンは中々迫力があって面白かったが、それまでの20分はちょっと退屈だった。  この2時間30分の第一部は、大いなる序章に過ぎない。 むしろ第二部の2時間10分、特にラスト50分の凄絶な復讐劇こそこの映画の真骨頂!なので、思い切って第二部から見て見るのも面白いかもしれない。   さて話を一部に戻そう。 おどるおどろしいドイツ語の文字がかもしだす雰囲気、虹のかかる山、林と住民、剣を叩き鍛える青年、それを見守る老人。 老人に完成した剣を見せ、空を舞い落ちてきたワタが切れる。このセリフの無い導入部の5分間、完璧だ。  日の光を背に立つ城、黒い影をまとい移動する兵士たち。  上記でも述べた竜退治の迫力!一見すると巨大なトカゲがのそのそやっているようで拍子抜けする(眼は可愛らしすぎるし)が、造形や動き・演出が凝ってる。噂を聞いただけで、劇中では実質何もしないまま殺されるドラゴン。オマケに眼も可愛気で何処か哀しい表情。これじゃジークがただのDQNじゃないか(え?原作も大体そんな感じ?)。 滝が落ち、木の影から剣を抜いて様子をうかがう。剣を振り上げ火を噴くドラゴンの眼をえぐる!喉をついて血が流れ落ちる。剣にベットリついた血の跡。鳥だけがその一部始終を見ていた。 滝のように溢れる竜の血を、水につかるように浴びる。この間わずか3分。  ジークの旅は続く。霧がたちこめ、木がうねった不気味な森の雰囲気、変な網で透明になり変装もできる魔法のアイテム、月夜が差し込む渓谷、奇妙な洞窟、映像を映す光の玉、石になる人々・・・。  影のようにうねる砂絵の迫力!鳥、光と闇。  一色触発の事態を止める真の主人公とも言うべきクリームヒルトの登場。どうでもいいけどマユ太い。殺し合いそうになった男たちが手を取り合い、そして再び殺し合う運命。  男勝りなブリュンヒルデとの対決。炎で埋められた大地、そこにそびえる城。 中性的な顔立ちのブリュンヒルデ。石投げ競争、投擲による一騎打ち。使い込まれた盾を砕く一撃。戦士から“女”の顔になってしまう。 腕輪、ドロドロになっていく関係、ジークとクリームヒルトの淡い結婚生活、萌える木々が枯れていく残酷さ、森の中での競争、眼と影で表現される“暗殺”。異様な影で表現される“下手人”。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 21:04:04)
149.  ニーベルンゲン 第II部 クリームヒルトの復讐 《ネタバレ》 
二部から先に見て欲しいくらい。というか、二部の方が面白い。 亡き者の墓の前で建てられる誓い、フン族の王たちの蛮勇を利用する計画、黒衣は復讐の決意。普段は傷を負った兵士たちを励ますが、瞳の奥には復讐の炎を燃えたぎらせる。  従者が見てしまった真実、クリームヒルトもそれを見届ける。雪の下の土に眠る“愛した人”を布に包む。遠景で一行が去っていくショット、娘の決意を黙って見送るしかなかった人々の辛さ、楽器を城壁に打ち付けて憤りを表す。  出撃して突っ走る軍隊の疾走感。木の上から飛び降り、馬に乗り換えて迎う伝令のスピード。木の周りを裸で踊る子供たち、彼等に金を振る舞う兵士たちの気前の良さ。 蛮族の前で堂々と屹立するクリームヒルトの存在感!それを迎える蛮族のダンス。  ラスト50分、修羅場と化す酒宴。 密かに渡される武器、合図と共に切りかかる!弓矢の一撃、斧の投擲、二重三重の悲劇。 死者を弔いながら行進する人々、凄惨な殺し合いはエスカレートしていく。何度も押し寄せる群衆スペクタクル、死者を弔う暇もない、焼き討ち、パニックになり当たった矢を1本1本抜く姿。既に火はまわっているのに。 階段を駆け下り、崩れ落ちる瓦礫にまきこまれ重傷を負う者、燃えた瓦礫の中に消えていく戦士たち。滅びを見届ける演奏者。死者へのレクイエムは、阿鼻叫喚の地獄の中でどれほどの人間に届いたのだろう。サイレント映画だからこそ、その想像を掻き立てられる。 門の前で“待伏せて”いた男の一撃、“首”が無言で語る絶望・・・!
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 20:59:04)
150.  善き人のためのソナタ 《ネタバレ》 
00年代、実際の出来事を“告白”でもするかのようなドイツ映画が複数撮られた。 一つは「ヒトラー ~最期の12日間~」によって戦時中を、 もう一つはこの「善き人のためのソナタ」によって戦後の闇を告白するように。  冷戦時代の尋問というとリシャルト・ブガイスキ&アンジェイ・ワイダによる「尋問」を何故か思い出した。 「尋問」は監視者が監視対象だった者から“証拠”をでっちあげ、自分のテリトリーに引きずり込んで散々痛めつける事で屈服させようとした。 この映画は、監視者が監視対象から“証拠”を引きずり出せるか出せないかという過程を追っていく。疑はしきは罰せよ、何かされる前に先手を打たなければならないという恐怖。 この二つの映画に共通する事は、一人の女性が他の人間のために“犠牲”になる事を選ぶということ。  劇中でも引用されるベルトルト・ブレヒトの存在。 ブレヒトもまた戦時下のナチスに反撥してフリッツ・ラングと組んだスパイ映画「死刑執行人もまた死す」を発表している。 ラングのこういった映画の女性たちが活き活きとしていた事に比べ、この映画の女性たちは観客の感情移入を許さないような深い闇を背負っている。   廊下、腕を捕まれ連れてこられる“監視対象”だった男。男の声からテープレコーダー→現在→過去を行き来する。 疲弊していく男の表情を知るのは立ち会った本人だけ、声を聞いて当時を想像するのは生徒たち、そしてこの映画のスタッフたちだ。 椅子に付着した“匂い”、涼しい顔で男を言葉によって弄り続ける男。教壇に立つ男は、自分の過去を隠すことなく、生徒たちに教えていく。きっと同じような“告白”を何度も繰り返してきたのだろう。  劇場の鑑賞会から既に監視は始まる。上からの視点・パンフレット。 標的の家に慣れた手つきで黙々と盗聴器とカメラを仕込んでいく。ありとあらゆるところに。 その監視者を“監視”してしまった者の視点。  この映画の監視者は、勝手に疑い、勝手に同情し、勝手に揺さぶられ、勝手に自分を緊張状態に追い込む。監視されている者は何も知らないし、生を謳歌している。知らない事の不幸・幸福。妻の隠す真実にすら中々気付けない。妻と楽しんでいる間も、情報は絶えず流れ続ける。 勝手にピアノの音色に心を打たれてしまうのだから。男の葛藤が表情一つで語られ、その音楽は監視される者たちの“抵抗”の証になっていく。 人の出入りが少ない“仕事場”で画面や針、タイプライターとにらめっこ、ヘッドフォンの音に耳をそばだてていなければならない。そりゃあ監視対象に興味を持って退屈しのぎもしたくなる。ハイタッチする気分でも無くなってくる。エレベーターで子供とおしゃべりをする一時、暇な時は豊満な情婦と楽しい一時でもせにゃやってられない。豊満なバストに顔をうずめても何処か満たされない様子。そりゃ監視者は人妻の方が気になるし、情婦とも真に仲良くなれない。偽りの愛だ。  その監視されている者たちが、監視者を意識し、恐怖し、反撃に出る瞬間の恐怖。スパイのように潜り込む男たちも、いつ監視者側を裏切る・・・いや表返るか解らない。 ケーキの下の“武器”、盗聴器への“祝杯”は監視者への宣戦布告。  監視者の存在を知りながらドアの鍵をかけない。床下の“武器”の存在を偽らないのも妻を信じていたから。 妻も夫を愛していたからこそ“言わなかった”し、“躊躇”しなかったし、耐える自信も無かった。監視者との決定的な違いがそこにあった。 床下を剥がす瞬間に奔る緊張。  一瞬映る新聞が物語る“終焉”、それぞれが失った物の大きさ。  ラスト20分は真実を知っていく者たちの顛末。 コードを引き抜く力なき姿、表情。大量の書類に眼を通し、人々の告白でも聞く様に読み進める哀しげな表情。  そこには互いを探り合った憎悪ではなく、直接会って語り明かす事のできない哀しみだけが横たわっている。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 20:56:24)
151.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
クソ女vsクソ男によるハイレベルなギャグ映画 デヴィッド・フィンチャーによるまったくもって頭にくる実に不愉快な傑作です。キャラに殺意を抱いた映画は久しぶりだ。こういうフィンチャーを俺たちは待っていた!復活じゃー!  冒頭で女の頭をなでる男の視点。「頭蓋骨」というワードが出てくる時点で既に異常さが漂い、観客を揺さぶりはじめる。 バーの棚にたまったパズル、文字通りのグミ打ち、グラスがカウンターの上を流れると同時に過去へ。 男の回想の次は女の回想。このクソぬるい馴れ初め話で観客のイライラを高めていく。「セブン」の簡素さとは正反対だ。殴りたいほど素敵なクソ夫婦ですね。  人生ゲーム 窓ガラスが物語る事件の匂い ところどころに付着する血痕。 長年一緒に暮らしていた筈なのに妻の事をよく知らない男 妻が消えたというのにこの冷静さ。男も男だった。残された手紙の謎。  図書館「表に出ろクソカップル」  メディアリテラシーに踊らされる民衆、ニュース、Twitterであっと言う間に波及していく。  「笑って」で笑えるワケがな・・・って笑っているし( ゚д゚)。 「俺が嫌いでしょ?」 俺ら「当然だよ」  妹さん、もっと言ってやって下さい。 「女に批判されるのは不愉快だ」 黙れヤリチン野郎!何回S●Xしとんじゃわりゃああああっ!!この男がグラスを割ったところで俺の腹筋も崩壊した。  スイーツ(笑)「素敵ね」 まとも「キモ サイテー」  うおああああ!これが後44分も続くと思った時の恐怖は無いぜ!  ところが、後半はこのダメ夫たちとクソ女によるどちらが先に制すかという駆け引きで面白くなる。  アイドル(偶像)を追いかけまわす群衆の恐怖。 クソ完璧な女を演じるアメイジング・ファ●キン・サノバビ●チ・エイミー。アソコも「ザ・ワールド」! ノエル涙目。  「クソ結婚する」 「君のアソコは世界」 なんて素晴らしい訳なんだ。松浦美奈さんには心から敬意を払いたい。  そしてありがとうDQNカップル。どうか末永く爆発してくれ。良いケツしてやがったぜ。スカートをまくるイタズラに笑顔で応えるのは、二人の関係を暗示していた。 金を奪いやがって酷いだ?いいや慈悲深いぜ・・・指や腕をへし折ったり顔面を粉砕したり殺さなかっただけな。殺されなかっただけありがたいと思うんだな。  監視カメラすら利用する計画殺人はデジーの狂気すら凌駕する。デジー逃げて超逃げて。  弁護士のオッチャン、もっと笑ってくれ。   手のひら返しする人々、血まみれで登場する“アイドル”、音楽自重wwww嘘をつくな嘘をwwww  エレンのクソBBAも死ね。氏ねじゃなくて死ね。  マーゴが可哀想だ。デジーはコイツら殴っていいぞマジで。  ロングショットで薄気味悪い笑みを浮かべる女の顔を。殴りてえー。頭蓋骨カチ割りてー。  だから音www楽www自www重www やめろ!二度と観客の前で脱ぐな!てめえの裸体なんざ見飽きたわ!マーゴの美乳おっぱいの方が見たいわ(意味不明)!!!  冒頭で頭を撫でていた男の視点で、この映画は終わる。男は、妹を守るためにこの女を“受け入れる”しかなかった。  クソ完璧なアメイジング・ファッ●ン・サ●バビッチ・アス・エイミーは、「ゾディアック」と同様に野放しにされる殺人鬼なのである。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-08 21:24:31)
152.  歩いても 歩いても 《ネタバレ》 
「誰も知らない」と比べると、その穏やかすぎる雰囲気に驚く。YOUも毒が抜けて浄化されてしまった感じ。毒のない人物ばかりでちょっと退屈だった。 「花よりもなほ」も最後の“笑顔”を見るまで我慢するような映画だったが、この映画もあの海辺のシーンを見るまで我慢するような感じ。 夏場に田舎の祖父のところまで行く過程、過ごす雰囲気とかは好きなんだけどさ。 小津安二郎の映画にも通じる雰囲気。その雰囲気に共感を覚える者は多いのだろうが、俺はあまり共感できなかった。 のぼったり、おりたり、とにかくゆっくりと歩く映画だ。電車、バス、階段。  荷物を持ってもらう事よりも、父親を名前で呼ぶことをお願いする母。 でも「どっちか持とうよー(怒)」  歯磨きの場面は「誰も知らない」といい、是枝裕和の作品で幾度も挿入されてきた。 野菜を切る音、てんぷら、風呂場の割れたタイル。  子供たちの会話、夏休み、食事。割ったスイカは見えない。じいさんを動かすのは“音”。 写真に作文。ぼやける絵、遠目の写真。当の本人とって、自分の思い出はそれほどぼやけてしまっているという事なのだろうか。  窓ガラスに映る顔、遺影、ドアから出て遊ぶ子供たち、孤独でいたい爺さん、祖母の声をさえぎる子供の声、手で孫を誘う祖父、祖父を睨む父親(息子)。 家族の甘さに対する苛立ち、本業なのに相手にしてもらえなかった苛立ち。取り残されていく苛立ちと哀しさ。 それに対し妻は「ブルーライトヨコハマ」を懐かしみ、蝶を追って呑気ささえ感じさせる。   成長した息子と卒塔婆の数。大体それだけで事情は察する。ナレーションはいらない。 寂しいエンディング、そして天国でも暗示するかのような階段。 バスが去り、静かに坂を上り始める夫婦。  初めてハッキリ映る“絵”、意識する幼い頃の記憶の断片。  蝶、船、影、終盤やっと出てくる海・・・。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-08 20:17:51)
153.  誰も知らない(2004) 《ネタバレ》 
人によっては「歩いても 歩いても」や「空気人形」の是枝裕和を選ぶ人も多いかと思う。だが、俺はこの映画の異様さにこそ惹かれる。  餓鬼が嫌いって奴は、テメエが小さい餓鬼だった頃も忘れちまう。この映画は、それをすっかり忘れた大人たちに振り回される子供たちの生き残りをかけた姿を追っていく。  冒頭からこの映画の異様さを目の当たりにする。 電車、夜、車内の椅子に座る虚ろな眼の少年。ボロボロの爪と服、夜の町。  そこからアパートを仲良く歩いてくる“影”に切り替わり、少年の過程を描き始める。 家族はバラバラのルートで来る。荷物を人のように撫で、カバンの鍵を外すと中から子供が笑顔で出てくるのである。 せまい鞄に押し込められ、まるでペットのように。 階段を走る姿の“元気”さ。この頃は荷物を一緒に運ぶほど仲も悪くなかった、髪をとかす親娘。そういやYOUってマジで歌手だったね。  ただ、子供とはいえ女の一人旅。再会するまでずっと一人で来た。娘の、家族の疲れた表情を少年は見る。  アップの食事場面、子供一人一人に語りかけるような、別れでも言うような視線。 ああ、この女を子供たちを見捨てる。そういう嫌な予感が、緊張が最後まで張り詰める。孕ませた張本人の父親はどっかに行っちまい、母親は一人で子供を育ててきた。この女のストレスも限界だ。 子供のために働いてきた仕事は、唯一子供の面倒を見なくてもいい捌け口・快楽にもなっていたのだろう。  母がいなくても逞しく子供たちは家事をこなしていく。公園での洗濯、風呂、家事手伝い。  それでも中々整理されない箱に入れっぱなしの荷物など、子供たちは限界を目の当たりにして徐々に押しつぶされていく。 バイトやパチンコをしようにも年齢という壁が行く手を阻む。 窓の外の家族へのあこがれ、寂しさ。雨、帰らぬ者の存在、子供が見てしまったタクシー。  寂しさをまぎらわすように一人でキャッチボール、少年も他の兄妹も学校へ行きたい他の人と遊びたい、親に自分を見て欲しい。  生活力を身に着けていく子供たちのサバイバル、周りの人間はその逞しさを“嘲笑う”。直面しないと誰も解ってくれない。誰も知らないのだから。 警察に話してバラバラになる事への恐れ、引っ越しの時からバラバラできてるのだから。バラバラになって生きる可能性よりも、一緒に暮らして死んだ方がマシと思っていたのかも知れない。  大人たちは、犯罪を犯した子供を初めて“見る”。今まで無関心だったのに、監視カメラと子供の顔を覚えていた大人だけは“見ていた”。  時折聞こえるアニメの音声(「地球防衛企業ダイ・ガード」?詳細求む)、ゲーム(「ドラゴンボール」?)、少年たちが立ち読みする雑誌は何なのだろうか(「週刊少年ジャンプ」?)  10円の例に札束を無言で渡す優しさ。  迷う手、子供にすら打ち明けられない孤独、目と目で解り合う孤独な人々、請求書は絵を書く紙になっていく。見て見ぬフリ。  普通の子供たちは変わっていくが、彼等は変われずにいる。赤い血のような口紅。  冷麦、大量のカップ麺、おじやと同じような食事の繰り返し。部屋を綺麗にする気力もない。   それでも食卓で夢を語り合う子供たちの眼にはわずかな光が残る。 階段を競争する元気、公園の遊具(グローブジャングル)を廻して遊ぶ元気、フラフラでも野球に参加してストレス発散。  冒頭で親と一緒に歩いた大きな影は、真実を知って独り寂しくトボトボ歩く小さな影になっていく。 飢え、とうとう電気も水道も来なくなる、TVの光は消えてラジオの音に、虚しい“お年玉”。  落ちる植木、カップ麺で菜園、流星のように連なるモノレールの光。  揺れる椅子の恐怖、初めて介入した第三者。興味本位か同情か。少年は彼女の姿に自分たちを捨てた母親の面影を思い出す。 軽蔑した筈の者と、優しくしてくれた者が重なる瞬間の戦慄。少年は彼女に母親と“同じ”になって欲しくなかった。  “ちゃん”と“へ”の違い、髪も伸び声も変わる、歩きながらゲームの真似。  少しずつ助けてくれる大人、とうとう大家も登場(でも登場するだけ)、“成長”した事に気付き震える泥まみれの手、泥だらけの服、涙。  ラストは彼等の眼に再び光が宿り、希望に向かって歩むような期待を抱かせる。だがモデルとなった実際の事件を知る者には、あの後姿に絶望を感じるのである。  どうでも良い話、ダイハツのCMで柳楽優弥とYOUが再共演したやつを思い出した。「誰も知らない」の事を思い出しちゃってかなり複雑だった(二人とも良い笑顔だこと)。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-08 19:32:56)(良:2票)
154.  転々 《ネタバレ》 
三木聡は「亀は意外と速く泳ぐ」も面白かったが、この犯罪の匂いがたちこめる、頭空っぽで楽しめる愉快なロードムービー&コメディも好きだ。  まずファースト・シーンからして面白い。 後ろから来た黒ずくめの男が、いきなり部屋の中の男の口に自分の靴下を突っ込む!その口に突っ込んだものを履くなwwwww  借金返済に与えられた3日という猶予、喋らない岸辺一徳、ジャギ→ジャイアン。 その辺をブラブラと歩いて談笑、ちょっとした事件に巻き込まれる、何時の間にか仲良くなる楽しさ、面白さ。  ところどころに笑いが転がっていて楽しい。  募金に対して「何で?」と思わず聞いてしまう。自分の身がヤバいというのにどうして他人に金をやらねばならんのか。 解っていても公の場で中々口にできない。でも思わず心の声が出てしまう。  靴ひも→鍵→鞄の中身は大金だと思った?残念俺だよっ!! 「人を尾行るのは面白いよ(ゲス顔)」 食虫植物に捕まったも同然。ワケあり借金取り、文字通り旅は道連れ(あの世行き)。  恋人たちとしょっ引かれるホームレスの対比、串をヘバりつける、落ちたオレンジをちゃっかり猫ババ、被写体を追うカメラ、ラベルで即興。 「歩道を自転車で通ってんじゃねえっ!!」  必殺ベル外し&車のオッサンも酷い二連コンボ。BBA涙目  崖の匂いって何だろうね。ダイナミックセクハラ。  福原「解せぬ」  性分(タチ)、サッカー、神社 理不尽キック、女房の自慢話、理不尽コイントス、バカ息子とラーメン屋、みんな家庭がうまくいっていない奴ばかり。  こんなとこでごゆっくりできるかっー!  OL軍団、思い出なんて大嫌い、畳屋との死闘、「コスプレに年齢なし」、つげ義春「訴訟も辞さない」、残念コスプレは吉高由理子とチェンジで(吉高由理子がコスプレで登場すると思ったのに残念)。  ワニがいたら食われたい、ヤバいと解って応戦、月光変態仮面、美術家気取りの女、絵上手いね・でもちょっと待て、黒人のオッチャン涙目、ゲリラライブを演り慣れたギタリスト、警官「チッ」、何故か真似るオダギリ。  占いとバッタリ、ポスト「何だおまえは」、とんかつ茶漬け喰ってみたい、武闘派時計屋との死闘、立てつけとの闘い、トラックに飛び乗る謎のスリル、ハンガーで首を回す、うがいを飲むな。  ガラスに映るシルエット、女もパンツ一丁でキャーキャー走る(吉高由理子の尻!)、すき焼きとマヨネーズ、飯を食いたくなる家族団欒の空間。  ジェットコースターと記憶の中の真実、並木道を2人で歩いていく。  「私は若返りたくないんですよー」のやり取り。  優しい目で語りかける「じゃあな」! この男は本当に“やった”のかは最後まで明かされない。一体何がしたかったのだろう。そこが面白いし好きだ。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-08 19:27:56)(良:2票)
155.  ゆれる 《ネタバレ》 
ブラックコメディ「蛇イチゴ」のにおける素晴らしい馬鹿馬鹿しさと比べると、この映画は狙い済ましたかのように「ゆれる」映画である。 カメラそのものまで大袈裟に「ゆれる」。複数の人間の視点で観客の心も「ゆれる」。何が真実で何が嘘なのか。あるいわ・・・。 超極端に言えば、西川美和は観客を「騙まし討ち」にする事を予告している。その騙まし討ちを楽しめるか楽しめないか。 俺はその騙まし討ちを楽しんでしまった者として、この映画の感想を書いていきたいと思う。  細部のこだわり(照明や心理描写など)に思わず眼がいってしまう。 台所の流しに注がれる水、酒の一滴、ビールを注ぐ、ペットボトルの水、ホース、シャワーの、吊り橋の下の激流の“音”。 猛は女と接吻をして家を出て行くが、彼女もまた猛のフレームに映される“仕事仲間”の一人に過ぎない。  年代物の車を走らせて寄るガソリンスタンド。そこで出会った女と意味あり気に視線を交え、サイドミラーに写される女の表情を確認して男は去っていく。そこで観客は二人の関係を何となく察する。  葬式に普段どおりの格好で現れ、父親は詰り、猛もまた父親を詰る。それを止める兄の稔。稔はいつも耐えて耐えて耐えている。家族のために。  猛と女は再会してすぐに性交できるほどの“仲”。 ベッドで弟が情事を楽しむ間、兄は黙々とトラックにオイルを注ぐ。まるで弟あるいわ女に嫉妬するようにその場面を挿入してくる。トラックが微妙に上下している様子も気になる。  男が去った後、独りで男の煙草の匂いを嗅ぐ。残されたトマトが暗示する食事を食べたか食べなかったのか、そして二人の関係。  渓谷へのピクニック気分。 バックミラーに光る男女の顔。嫉妬、本音。 普段はヘコヘコ、その鬱憤を大自然で開放する稔。あるいわフリをしているのか。   渓谷にかかる吊り橋の上。その上にいるだけでサスペンスは起きる。閉鎖的空間の息詰まる雰囲気。ボロボロの橋、激流、幼い子供のように服を掴む挙動、怒声。  目撃者は独りだけ。しかもファインダーでなく肉眼だけ。その男の視点すら直後には明かされない。ただ橋の上に残った者に対する対応だけが描かれる。真実を語るのは手の傷だけ。 写真家は見ていたにも関わらずだんまりを決め込もうとする。 静かに励ます男、流れてくる靴、庇い過ぎる者への疑念、シャワーで亡き者を思い出し、汗と涙を洗い流す。封筒の報酬は前払い。  死に追いやった疑いのある人間を憎むどころか、むしろ殺されるような人だったの?という疑問つぶやいてしまうような母親。 弁護人同士の舌戦も、二人にはどうでもいい事なのだろう。 スーツの正装は初めて自分を出すために。  過去を物語るのは8mmフィルムだけ、それを見て今まで冷淡だった者が、過剰なまでに感情を揺さぶられて泣くのである。ここまできて観客の心を揺さぶるのか! 後悔し、全力で車を走らせる者の表情の出る“本音”、それに笑顔で応える者の表情は本音だったのか、それとも・・・。最後の最後まで謎を残す。そこに俺は惹かれる。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-08 19:26:19)
156.  かもめ食堂 《ネタバレ》 
この映画の大らかさが好きな人は、きっとカウリスマキの大らかさも好きになってくれると思う。 ただ、カウリスマキがフィンランドの町並みから社会の底辺や人々の闇も捉えるのに対し、この映画は太陽の光を注ぐように明るい、何処か陽気な雰囲気を終始貫く。  水のイメージとカモメたちのイメージから始まり、一人一人客が増えていくように、徐々にハマッていく作品だ。  地を歩くカモメ、かもめ、かもめ、かもめ。  ガラガラのレストラン、窓を隔て、女の耳に御夫人たちの噂は入ってこない。  客も来ないので居眠り、一人で泳ぐ、日課の合気道・・・よく一ヵ月も持ってたのが不思議なほど暇そうな顔で登場してくる。  「ガッチャマン」の歌を通じて出会う様々な人々、ニャロメを着た青年。頭から歌詞がスッと出てこず、止まる指。それが奇妙な巡り合わせで再びペンが入っていく歌詞。 歌が繋げる。   渋いオッサンのコーヒー講座、ちょっと怖いかもめの絵(「ムーミン」風?)、久々に食べる故郷の味に泣く、 アラスカ、タヒチ、ハモる女二人の談笑、森で花摘み、おにぎりを食べ、それを珍しそうにじっと見つめる人々。  ターヤ(Tarja Markus)のエピソードが一番面白かった。 無言でいつも店を睨み、入ったかと思うと無言で盃をグイッ、無言で見つめ合う。お?イメージ通り酒も強いのか?と思った瞬間にバッターンと倒れる。 胸にためこんでいた思いを打ち明け、帰らぬ夫の事を想いながら藁人形に釘を打ち込む。夫のTVも視界も砂嵐状態。  人魂のように揺れる電灯、サングラスで休日を満喫。ターヤもスッキリしたのか、大分女性らしい格好に。  泥棒を合気道で打ちのめす場面。この映画で唯一と言ってもいい対人へのアクション。しかしそれでもっと大きな事件が起きそうで起きない、この緩さ。  赤ん坊のようにコーヒーメイカーを大事抱きかかえる、黄金のように輝く花。  食堂もプールも孤独ではなくなった彼女の姿を映して物語りは締めくくられる。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-08 19:22:52)
157.  憂国 《ネタバレ》 
仲間の決起に呼ばれず、今度はその仲間たちを敵として討たねばならない。殺すくらいなら死んだ方がマシだ・・・。 そう思い死ぬ道を選んだ男たちの話。それを仲間想いの志士と見るか、死に逃げたと見るかは観客に委ねられる。 小林正樹の「切腹」が言葉と“見せない”事によって語る映画ならば、この映画はその瞬間を徹底的に見せる事を選ぶ。ただただありのままを描く、セミドキュメンタリーのような描写。  漆黒の画面、巻物を広げる軍服の腕、「憂國」と英語のクレジット。  サイレン映画の体裁で、この映画は一切セリフを吐かない。うめき声一つあげず、ただ男が切腹をするまでの過程を描いていく。  「至誠」の掛け軸、着物姿の女、折り紙、筆、亡霊のようにまとわりつく男の手、両手が女をなぞる。女の記憶の中に刻まれた夫の姿。 鶴岡淑子が演じる妻は、三島由紀夫が演じる男を心から愛している。神棚に祈るように。  廊下で帰った夫を出迎える妻。 二人の男女の会話は徹底的に省かれ、思いつめた男の様子と事情を飲み込んだ女の表情だけがすべてを語る。 肩を引き寄せ、女の耳元に何かを話し、腹を斬る真似をする右手、その手を女は掴み自分の喉元に寄せる。女が振り返るのは、男に笑顔で応える瞬間。男女二人は最期の接吻を、最期の交わりを始める。 抜かれかけた刃で女は時が迫る事を理解する。 見詰め合う二人、何度も交錯する視線、抱き合う二人、死ぬ前の生きる喜び、死への恐怖とそれを味わってみたいという欲求。 髪をたくしあげ、女の表情をなぞり、男の肉体をなぞる手、指、喉、仰向けになる頭、脈打つ肉体。 女の乳房や肢体はほとんど映されない。生きている筈の肉体は性交で真の快楽を得ないのだろうか。一体何が楽しくて死の間際の快楽を求めなければならないのだろう。それは本当に死ぬ人間にしか解らない痛みだからだろうか。そうじゃない人間がそれを解るワケがない。  帽子によって影が落ちた男の顔。ハラは決まった。 死に装束をまとう女、ふんどし一丁に帽子を被り、軍服という“装束”をまとっていく男。 互いに遺書をしたため、神棚に祈り、視線を交え、別れの、最期の挨拶。  小太刀を抜き、紙を巻き、上着のボタンを外し、腹を出し、太ももの根元に先を刺して痛みを確認、腹にあてがった指の間から刃を腹に入れていく。 口元だけが激しく表す苦悶の表情。うめき声が聞こえんばかりの、震えながら刃を左から右に引いていく。 女の口元も振るえ、汗を、涙を流す。血潮が白い着物に跳ね、女は見届ける事しかできない、苦痛を変わってられない苦しみ。 肉体はうめき、腸が飛び出て、口から泡をふき、喉元に太刀を突き刺す。女は介錯でもするように男を引っ張り見届ける。  女は外の部屋に消えていく。 女を見届けるように自動で閉会する襖、照明、鏡を見て白粉をつけ、紅をさす。男が死ぬ間際も軍服で飾ったように、女も死ぬ間際に自分を飾って果てていく。  夫の血の上を歩き、帽子を先に逝った者にのせ、顔を袖で拭って綺麗にして弔う。 懐刀を抜き、切っ先を舐め、喉に突きさし果てる。文様が刻まれた砂の上。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-07 21:23:01)(良:1票)
158.  ミスティック・リバー 《ネタバレ》 
ラスト30分の畳み掛けを見るだけでもこの“復讐”の物語は傑作だという確信しか俺は持てないのです。  「チェンジリング」の母親の赤い唇、「ミスティック・リバー」の男に情報を提供する謎の女の赤い唇。  町、家々、男二人の談笑、路上でホッケー、セメントに刻まれる名前・・・楽しく遊んでいた子供たちを引き裂く謎の男。  子供たちに立ち退くように言い、屋根を叩き、乗るように強制する。後ろに座っている男が座席の少年に不気味な笑みを送る。 友人二人は見守るしかなかった。何も出来なかった悔しさ。セメントに刻まれた名前だけが真実として残る。それを成長した“子供”が再び目撃し、思い出す。このファースト・シーン。 漆黒の闇、密室、森、不協和音、逃げる子供、文字が刻まれたまま固まるセメント、時間経過。  時を超えて同じベランダで語り合う2人。 煙草に火をつけようとした時、話しかけられて火をつけ損なう。椅子に腰かけ、男二人で語らい合い、心情を打ち明け、静かに泣く。 大の男が度々泣くのだ。そこには人間の弱さ、脆さも刻まれている。  車に女が入ってきた瞬間に不意に手が、イタズラをする彼氏、それがあんな事になるなんて・・・。  バーのカウンターの上で踊りだす女 洗礼と事件の対比、受け入れたくない娘との“再会”。  いきなり負傷して帰ってくる夫は女に泣きつく。女はそれを優しく迎え入れる。 いやいや怪我してんのに情事に入ろうとするなwww旦那を殺す気かwww その夫が、後に泣く妻を優しく抱き留める。  地道な聞き取り調査、現場に踏み入ろうとする人々、父親のどうしようもない嘆き。  電話の向こうにいる赤い唇の女。その次は“影”で、観客だけにその存在が予告される。  残された写真の数々、雨が降る外、暗い部屋の中で激しく移動、亡き者の前で苦悩し、服を捧げ“仇討”を誓う。それが取り返しのつかない“過ち”だったとしても。家族を思うが故の狂気、暴走の悲劇。  バーの酒。既に注がれたグラスが幾つもあるのは男を酔い“潰す”事が決まっているから。4人目が来てから空気が変わる。  このラスト30分の加速の素晴らしさ。 少年たちの方も決着がつく。屋根に隠されたもの、少年たちを待伏せる者、ドアがいつ開いて他者が入ってくるのかという緊張。 闇の中で炸裂する暴力の恐怖、ナイフの切っ先の鈍い光。 二つの現場が交錯し、カットが徐々に短くなっていき、複数の視点が一つに収束していく事でより緊張を高める。 拳銃の閃光が曇り空の朝へと移る・・・過ちを犯してしまった男の心は晴れない。髪を乱してうなだれる。 再び現れる赤い唇の女は何を語るのだろう。  友人とはいえ、事情はどうあれ、それを黙って見過ごすしかない男のやり切れなさも何ともいえない。  すべてが終わった後の情事、海、パレード・・・「俺は忘れないからな」と指の“銃”で男を指す者の視線の冷たさ。それを甘んじて受け入れる男の表情。 後の「グラン・トリノ」では、その指の“銃”がすべての決着を付ける引き金になる。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-07 15:41:36)
159.  チャップリンの給料日 《ネタバレ》 
工事現場で働くチャップリン。下から放り投げられたレンガを上で見事にキャッチしまくる。 工事現場のリフトが絶妙なタイミングで上下する。それはチャップリンに食事を運ぶため。 カステラ?とフランクフルトのサンドって美味いのかしら。  笛の音でキッチリ作業を止める。後の「モダン・タイムス」にも繋がるような描写。  夫の給料が心配で見に来る恐妻。黙ってついてくる怖さ、ごまかしがバレる。嫁怖ー。フィリス・アレンのインパクト。  下水に杖を吸い込まれる、落ちるようで中々落ちない名人芸、たむろには水をぶっかけろ、たむろも傘で応戦。  死なないのはギャグ補正、酔って傘と杖を間違う、吊革とソーセージを間違える、バスが来た瞬間に待ち伏せでもしていたかのようにブワ~と登場する群衆に弾かれる。  靴も猫も飛ぶように去っていく、やっと寝られると思ったら朝になってしまい仕事場へ。トホホ・・・。
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-07 15:38:39)
160.  サニーサイド 《ネタバレ》 
男にケツを蹴られてチャップリンが起きるが、また寝てしまう。 そこに靴を投げる、で起きて着替えるのかと思いきやパジャマの下にシャツとズボンwww何という横着振り。 んで出たと思ったらまた窓からベッドに御帰宅。  コーヒー、牛を連れてきてそのミルクをコーヒーにそのまま入れてしまう。 ヤギが楽譜を喰うわ鳴くはいきなり車がクラッシュして事故るわ。  犬を蹴るような野郎にはパイをくれてやらあっ!  後半は牛のモーレツな勢い。牛が教会で大暴れ、窓を牛がブチ破る。  杖に蝋燭、あえて車に轢かれるチャップリン。 情事のために人一人殺しにかかるチャップリン。これは酷い(褒め言葉)。  牛のロデオで頭を打って“幻想的”な妖精たちと原っぱでダンス。 それを引き上げる“現実”のおかしさ。  NGフィルムにおける床屋シーンの狂騒は「独裁者」で復活した。
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-07 15:35:26)
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