1621. ラストタンゴ・イン・パリ
《ネタバレ》 分かった風に感想を書けば、“孤独”をめぐる愛と性のお話。 人は誰でも心の奥底に“孤独”というものを抱えている。 男と女が、ふとした偶然の機会にめぐり合った場合、本作の様な性の倒錯的な世界に溺れるやもしれない。 現実的な“孤独”という恐怖から逃れるべく、狂った様に性をむさぼるが、やがてそれも日常化してしまう。 特に、男と女の場合、それに先に気付くのは、大抵、現実的思考が一般的に強い女の方であって、男はそこに置いてきぼり。 本作での女は、“ポップな結婚生活”への階段を確実にのぼっていった。 “ポップな結婚生活”へと逃げていった、という方がより適切か。 日常の“なんとなしな孤独感”を埋めようと、非日常的な世界に飛び込んでみても、結局、我々が社会という場所に属している限りは、その“なんとなしな孤独感”は解消することができない。 30歳当時に、監督のベルナルド・ベルトルッチは本作を撮ったらしいが、それなりの年齢に達していたからこそ、創ることのできた作品で、一通りの享楽を経験した男にしか描けない切なさ、虚しさみたいなものが、画面にあふれていたように思う。 一方で、下世話的に感想を書けば、腹の出た中年男が、ふとしたチャンスで、若いコの体を弄び放題、という羨ましいエッチなお話。 女の方は、男には理解しがたいくらい従順にその中年男を受け入れるのだが、それはちょっとした好奇心に過ぎず、結局必死だったのは、理屈をこねまわしていた男の方だった。 女の方は一時の好奇心だから、それに飽きてしまえば、別の場所にあっさり移動すれば良い。 だけど、一度おいしい思いをしてしまった中年男は、それこそ死にもの狂いで女を追いかけまわすが、結局、逃げられてしまう。 似たような経験、あるような無いような・・・ [ビデオ(字幕)] 5点(2011-03-21 00:33:52) |
1622. フォー・ルームス
多数の出演陣の中では、やはりマドンナがインパクト大。 アントニオ・バンデラスも怖すぎる男が見事にはまっていた。 和田誠監督の『怖がる人々』を想起させる作品だった。 タランティーノの手腕がそれほど発揮されてはおらず、凡作のオムニバス映画という印象。 [ビデオ(字幕)] 5点(2011-03-20 19:55:42) |
1623. ブルース・リー/死亡遊戯
ラストのブルース・リー本人によるアクションシーンのみが見所の映画。 黒人の巨人がとにかく印象的。 カリーム・アブドゥル=ジャバーという、伝説的バスケットボール選手らしい。 身長はなんと218cm!! でも、あの動き! 異常なほどの身体能力だ。 同じく、異常なほどの身体能力を持ったブルース・リー。 この二人の激突! だからこその迫力。 この二人に言えることだが、あの速さは超人的。 二人のスピード・スターによる競演こそが、この作品の最大の見所だ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-03-19 22:14:30) |
1624. 黒いオルフェ
《ネタバレ》 この時代特有の美しいカラー映像。 狂乱の乱舞と音楽の洪水。 愛の究極の形を示したようなラスト。 どんな死に方だろうが、やはり愛する人と共に天に召す、というのが理想形なんだろうか。 それにしても、ビデオ裏ジャケの解説が、もろネタバレでひどい! 最後の結末まで書いてあったから、最後の最後まで予定調和になってしまった。 [ビデオ(字幕)] 5点(2011-03-15 00:43:28) |
1625. 哀愁
《ネタバレ》 冒頭のシーンで、既にネタバレ全開という、キング・オブ・冒頭ネタバレ映画。 ストーリーは実に重厚で、隙がない。 その分、進行上、都合の良すぎる部分があるのが、ややマイナスか。 女性が自分の不貞に苦しみ、相手の男にそれを知らせたくないとする気持ち、解らなくもない。 だけど、本当に相手の男を信用していたら、打ち明けるべきだと、個人的には思う。 なんせ、それが本当の愛ならば、全てを包容することができるはずであろうから・・・ 少なくとも、私はそう信じたい。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-03-13 01:00:17) |
1626. 狂った果実(1956)
《ネタバレ》 何不自由ないボンボン達だが、これといった目的もなく、ただダラダラと夏を過ごす。 若者達の欲望の先には、結局“女”があった。 狂気を孕んだ若者達の中にあって、唯一、純な心を持った津川雅彦。 後のエロオヤジ役を演じまくった津川が、唯一、純な少年を演じたところが皮肉で面白い。 ラストシーンは鮮烈。 常軌を逸したあぶない目つきで、石原裕次郎と北原三枝の乗るヨットを、ぐるぐるとボートで迂回する津川。 その目は極めて危険でうつろだ。 そして、津川はボートで二人をはね殺す。 普通に考えれば、これだけあぶない目つきで、二人をボートで無惨にもはね殺したとなると、津川が一番あぶない人間になるだろうが、実は一番人間的でまともだったのは、津川ではなかったか。 やることなすこと、全てあべこべで倫理観に欠けた若者達の中にあって、その純な心を裏切られ、その怒りを殺意に代えた津川の心情こそが、一番ストレートに理解できる。 “殺す”という、社会的に一番狂気な行動をとってしまった津川が、一番同情されるべきナイーブな心を持った登場人物として描かれている辺り、単なる青春映画では片付けられない、深い内容を感じさせる名作である。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-03-08 23:03:59) |
1627. 運動靴と赤い金魚
《ネタバレ》 イランの市井の人々の暮らしぶりと、人間同士の交流の温かさが心に沁みる逸品。 少年の表情と涙にやられた。 そして、その少年の涙に私と同じくやられ、規則を曲げて特別にマラソンのタイムトライアルをしてあげる教師。 この下りも暖かみがあって秀逸なるシーンだ。 兄妹同士の数々の、心の通じたやりとりも印象的だった。 妹の靴をなくしてしまったことで、必死にそれを取り戻そうとする兄。 ただ靴を取り戻す、たったこれだけのことが兄にとっては一大事であり、その為に死力を尽くす。 そして最後のマラソン大会のシーン。 3着商品が靴であった為、過って1着になってしまったことを少しも喜ぼうとしない兄。 そんな失敗を、妹に申し訳なくて話せない兄。 こんな兄と妹との心の交流が、申し分なく素晴らしく描かれている。 まさにイランが生んだ類い稀なる傑作と呼べる内容で、スキが見当たらない。 イランの町風景の映し方、人々の心温まるエピソードの数々、そしてこのラストの締め方、全てが高いレベルにある人間ドラマだった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-03-07 00:12:25) |
1628. 煙突の見える場所
上原謙、田中絹代、高峰秀子という布陣で、実に豪華キャスト。 内容も普通に楽しめるものだが、日本映画黄金期として考えると、普通の出来かなぁ、というのが正直な感想。 だけど、レベルが高い時代での「普通」であるからして、それでも十分楽しめる作品内容だった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-03-05 22:41:26) |
1629. ピノイ・サンデー
《ネタバレ》 フィリピン・台湾合作映画。 生粋のアジアンテイスト全開! ストーリーは何てことないし、支離滅裂な部分も感じられる。 しかし、アジアの香りが画面いっぱいから感じられるのが良い、いや、それだけで観る価値がある。 中盤のメインとなる、赤いソファーを運ぶ珍道中のエピソードは少し長かったかなぁ。 前半と終盤の人間模様をもっとメインに据えて、ドラマ仕立てにしてくれれば、もっともっと面白いアジアン映画になったかも。 もし逆に、赤いソファーを運ぶくだりをメインに見せたいのなら、最初から最後まで赤いソファーを運ぶことを題材にしたロードムービー色豊かな作品にしてしまうとかもありだったようにも思う。 その辺の完成度とか、構成のゆるい感じが、逆に言えばこのアジア映画の魅力だったりするのかもしれないが。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-03-01 22:53:08) |
1630. まってました転校生!
転校生がやってきて、次第にクラスに打ち解け、やがて仲間として認識される。 そんな少年時代の懐かしき様子を、恥ずかしいくらいに真っ直ぐに描いた児童映画。 ちなみに、監督ご本人がシアター内におり、そのすぐ後ろで鑑賞した。 監督のハゲ頭が気になったせいか、特別な感慨をおぼえられず、何だか申し訳ない気持ちにさえなってしまった。 もっと素直に感動すべきなんだろうけど、自分の少年時代と比べてみて、共感できる部分が少なかった。 というか、それ以前に、私にとっては真面目すぎる児童映画だった。 PTAの方か、真面目すぎる方にオススメしたい作品。 [映画館(邦画)] 5点(2011-02-28 01:14:20) |
1631. 女が階段を上る時
《ネタバレ》 やっぱり成瀬巳喜男作品の森雅之はカッコよすぎる・・・究極のダンディズムだ! さて、脚本に成瀬巳喜男が参画せず、あとはお馴染みのキャストとスタッフで作られた、微妙な異色作。 そこの辺りの影響は、ほんの少しだが出ていたようにも思う。 全体的に漂う退廃的なムードは、一見、その他の成瀬巳喜男作品と同じようにも感じられるが、人間と人間との交錯の深さがやや浅かった気がしなくもない。 成瀬巳喜男作品と言えば、切っても切れない男女の仲、深いつながりみたいなものを感じさせる作品が多いが、本作は沢山の人間が交錯するものの、それ以上の深みがない。 別につまらないわけではないが、作品に引っぱられ、のめり込む吸引力が少し劣る気がした。 その影響か、最初から最後まで淡々とし過ぎた感は否めない。 一方で、高峰秀子のラストの笑顔。 これはとても印象的だった。 “真冬を耐え忍び、春の芽をじっと育てる銀座の街路樹のように”、きっとまた復活するに違いない笑顔を、彼女は最後に見せてくれた。 当時の銀座の風景描写も印象的だった。 現在の銀座と言えば、一流外国ブランドのビルが建ち並び、路地裏もそれほどの淫靡さを感じさせない。 どんどん綺麗になり、浄化作戦とやらで変わっていく東京の風景。 そんな郷愁も、本作を観て感じずにはいられなかった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-02-27 17:20:02) |
1632. 四季(1969)
本作は、ユーリ・ノルシュテインがアニメーション監督として参加した作品。 無言劇で、一切セリフがない。 ユーモラスでいて幻想的なユーリ・ノルシュテイン作品とは異なり、本作はただひたすら芸術作品的なアニメーションである。 セリフがない分、あの愛くるしい登場人物たちの声を聞けないのが残念! 四季折々の景色の中を、流れるように進んでいく展開は、確かに美しいことは美しいが、ノルシュテインのユーモラスさと独特の寂寥感みたいなものが感じられないのは少々不満かなぁ。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2011-02-26 02:32:07) |
1633. 愛しの青いワニ
監督デビュー前のユーリ・ノルシュテインが、アニメーターとして参加した作品らしい。 作品全体の雰囲気は、ユーリ・ノルシュテインの監督作品と似ている。 だけど、何だか切ない気持ちというか、侘しささえもおぼえる後味。 コーヒーの苦味の様な、まさに大人の香り漂うアニメだ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-02-25 01:53:29) |
1634. 霧につつまれたハリネズミ
ストーリーをメインに主張するのではなく、あくまでアニメーションとしての特徴を活かし、幻想的な映像を全面に押し出して表現しているのが素晴らしい! ハリネズミの表情や声色が、これまた愛嬌とミステリアスな雰囲気を醸していて、味わい深い。 本作で立ち込めるその幻想的な霧たるや、アニメ版『雨月物語』と評したい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-02-24 01:51:08) |
1635. 遠くの空に消えた
よくぞここまで器用に「ヒット作っぽい失敗作」を創ったなぁ、という印象。 行定勲というヒットメーカーが、ヒットしそうな感じで時間たっぷりに創ってみたけど、実際は観客からすると、ただ時間を浪費するだけの薄っぺらい作品になっていた、というオチ。 それ以前に、主要キャストの面々が、個人的にあまり好きでないメンツで固められていたのが致命傷だった。 数少ない本作のプラスポイントは、ほんの少しだがノスタルジックな気分に浸れたのと、Coccoのエンディングソング「甘い香り」が良かったところかな。 器用な監督の失敗作って、こんな感じなのかな、と妙に納得してしまった次第。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2011-02-24 00:57:41) |
1636. 女たちは二度遊ぶ
この手のオムニバス映画は好きで、ツタヤとかで発見してしまうと、何も下調べもせずレンタルしてしまう。 当たりハズレも多いのが、この手のオムニバス映画の特徴で、それが何だかスリルだったりするわけで・・・ さて、ラブストーリーというくくりで、5本の短篇映画が収録されている。 その中で印象に残った作品が、相武紗季・柏原崇主演の「どしゃぶりの女」と、長谷川京子・ユースケ・サンタマリア主演の「つまらない女」の二つ。 「どしゃぶりの女」は、主演二人の人物造形が秀逸。 最後まで性格を掴みきれない面白さがある。 「つまらない女」は、ユースケ・サンタマリアの素に近い演技が功を奏した作品。 彼の人間臭さが、良い方向に出た面白い作品。 万人にオススメはしないが、もし私と同じようなオムニバス映画好きがいたら、是非オススメしたい一本! [DVD(邦画)] 7点(2011-02-19 18:17:05) |
1637. 夜の大捜査線
都会の刑事と、所轄内におけるその所轄警察官との力関係に興味をそそられた。 話の内容に関してはそれなりに理解できたが、うまく犯人が見つかりすぎという印象はぬぐえない。 しかも、都合よく犯人の目星が二転三転し過ぎ。 その分、二時間ドラマを観るような飽きにくさと、卒のない面白さは感じられた。 黒人を刑事を演じたシドニー・ポワチエは、地味ながら確かな実力を感じさせた。 警察署長役のロッド・スタイガーの演技も負けず劣らずに良い。 二人の確かな演技が土台にある、安定感を感じる作品でもあった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-02-19 18:08:38) |
1638. 女王蜂と大学の竜
石井輝男、吉田輝雄コンビによるお馴染みの新東宝映画。 今回は、アラカンがアカンかった。 元々苦手な俳優だが、どうにも演技としゃべりが好きになれない。 おまけに、三原葉子のグラマーぶりも苦手(笑)。 路線というか、作品自体に関して言えば、石井輝男のエネルギッシュさと新東宝の良い意味でのチープさが出ていて、大いに好きなタイプの作品。 吉田輝雄が暴れん坊的なキャラ設定だったのだが、このキャラ設定も合っているとは思えず。 吉田輝雄と言えば、“異常性愛シリーズ”の数々の作品で魅せてくれた、あの妙ちくりんな真面目演技が、個人的には大好きだ。 石井監督の創り出す、ふざけた作品設定の中にあって、浮きに浮きまくった“あまりに真面目すぎる空気読めない男”的なキャラの吉田輝雄を、私はもっと観てみたい! [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-02-18 06:21:14) |
1639. トゥルー・ヌーン
《ネタバレ》 初めて観るタジキスタン映画。 変に気取ったり捻りすぎたりするところがなく、真っ直ぐな映画作りの姿勢に感心させられた。 話としては、やや物足りなさも感じるが、婚礼という儀式の重要性を思わせる丁寧な描写が、とても印象的であった。 最後で、地雷の犠牲になるところは評価の分かれどころかもしれない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-02-13 22:51:09) |
1640. アオサギとツル
《ネタバレ》 切ないねぇ~。 男女のすれ違いの話。 素直になれない、嫌いになれない。 色恋はタイミングが全ての鍵を握っている。 ラストも、ほろ苦く切ない。 だけど、こんなことを延々とかけ合っている相手が居るだけでマシなのかも! 真の孤独よりはマシなんじゃないかな? [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-02-12 02:16:47) |