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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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161.  月曜日のユカ 《ネタバレ》 
のっけからこの時代の邦画っぽくないお洒落な感じで、映像も長回しの多用やストップモーション、それに突然サイレント喜劇のような映像になるなど凝りに凝っていて飽きさせず、古さも全く感じさせないスタイリッシュな演出に思わず引き込まれた。中平康監督は、今まで見た映画では正直そんなに評価されてる理由が分からなかったのだけどコレを見ればその理由が分かる気がする。とにかく今見てもじゅうぶんに新鮮に感じられる映画で、ひょっとしたら今の方がもっと評価されるのではないかと思った。主演の加賀まりこが今となっては信じられないほどとても可愛く、この頃の出演作は松竹の「雪国」くらいしか見ていないと思うのだが、本作の方が魅力的に思える。共演の中尾彬も若い。(ついこの間見た「新極道の妻たち 覚悟しいや」でもこの二人は出ていたが、それと比べると二人ともまるで別人のよう。)ストーリー自体は正直それほど印象に残るものではないかも知れないが、ラストはちょっと衝撃的だった。今見ても全体的にお洒落で日本映画というよりはヨーロッパ映画のような雰囲気を漂わせる中平監督のモダンな演出と加賀まりこの魅力。これだけでじゅうぶんに見て良かったと感じさせてくれる映画だった。黛敏郎の音楽もいかにもモダンな感じでこの映画にとてもよく合っていて素敵。
[DVD(邦画)] 7点(2011-01-19 02:51:06)
162.  日本一のゴリガン男 《ネタバレ》 
日本一の男シリーズ第4作。冒頭の上下逆に撮影された映像をバックにしたタイトルバックが印象的。植木等のキャラは相変わらずポジティブで、彼を見ていると本当に悩みなんかどこかへ飛んでいきそうなくらいに明るくなれる。古澤憲吾監督らしさもよく出ていて面白かった。植木等が人見明と一緒に「しびれ節」を歌うシーンはなんだか新鮮だった。ほかのクレージーの面々が桜井センリ一人しか出ていないのだが、もうこの頃にはこの日本一の男シリーズは植木等単独主演シリーズとして確立してたんだろう。「誠に遺憾に存じます」と、植木等の持ち歌の歌詞を口にする左ト全がなにかお茶目。時代劇の悪役という印象の強い進藤英太郎が東宝現代劇の喜劇に出てるのはちょっと意外な感じがする。コック役の田中邦衛はほぼ青大将そのままの演技のような気がして、でもそれが逆に面白かった。
[DVD(邦画)] 7点(2010-12-15 02:17:11)
163.  日本一のホラ吹き男 《ネタバレ》 
植木等主演の「日本一の男」シリーズ第2作。相変わらずイキイキとした植木等を見ていると元気になれるし、屈折した主人公が一念勃起してトントン拍子に出世していく物語は見ていて痛快。古澤憲吾監督の演出の勢いもやはり植木等が出ていると「若大将」の時より増しているように感じる。主人公が一念勃起するきっかけとなる先祖の自伝を読むシーンで急に時代劇が始まるあたりは凝っているし、殺陣師として久世竜が参加してるのもそのためだろう。ドモリの谷啓が酒を飲むことでドモリを治すあたりは「次郎長三国志」のパロディーのようで笑える。ここからクレージーキャッツのほかのメンバーがあまり出なくなるのは少しさびしい気もするが、それでもじゅうぶんに面白かった。それにしてもこの頃の植木等って普段からこういうキャラだったんじゃないかと思うほどのハマリ役で、本人が普段は物静かで真面目な人だなんて微塵も感じさせないのがすごい。主人公の祖母役で飯田蝶子が出てるけど、つい見ていて若大将のおばあちゃんを思い浮かべてしまう。
[DVD(邦画)] 8点(2010-12-01 01:49:40)(良:1票)
164.  南太平洋の若大将
東宝創立35周年記念作品として作られた若大将シリーズの一篇で、古澤憲吾監督がてがけた若大将シリーズとしては最後の作品となる。空撮など古澤監督らしい演出は健在だが、記念作品だからか若大将が歌う場面が多く、いつもの古澤監督らしい勢いは成りを潜めていて、逆に間延びしている印象であまり面白くなかった。先週もこのシリーズ見たからか「海の若大将」に比べて星由里子が大人っぽくなってるのにちょっとビックリ。(でも、澄子は好きじゃない。)同時期の「クレージー黄金作戦」でワイキキビーチで加山雄三が登場するシーンがあるんだけど、おそらく本作と同時に撮影してたんだろうなあ。
[DVD(邦画)] 5点(2010-11-24 18:07:51)
165.  海の若大将 《ネタバレ》 
加山雄三が黒澤明監督の「赤ひげ」撮影のため前作から2年ほど空いて作られた「若大将」シリーズ第5作。クレージーキャッツ映画でおなじみの古澤憲吾監督が手がけており、空撮の多用やクレジットの出し方、船の出港シーンで鳴り響く軍艦マーチ、テンポのいい展開、いつもよりも弾けている若大将などいかにも古澤監督らしい演出で最初から最後まで何も考えずに楽しめた。シリーズとしてはいつもと同じような印象だが、若大将がタバコを吸おうとしたり、青大将が澄子に襲いかかる場面など今まで見た回では絶対になかったシーンが描かれていてビックリ。(澄子を襲う青大将は少しやりすぎの感がある。)知らずにみんなにドッグフードを振舞う江口。彼のこういうボケは大好きだなあ。そうそう、古澤監督の手がけるこのシリーズって田能久の場所がほかの作品と違ってるみたいなんだけど分かんない。有島一郎や飯田蝶子など脇のレギュラーにも安定感があって楽しいが、やはりヒロインである澄子だけは嫉妬深いキャラが魅力というのが分かっていてもやはりそんなに好きじゃないな。星由里子自体はキライじゃないが。
[DVD(邦画)] 7点(2010-11-16 02:07:46)
166.  士魂魔道 大龍巻 《ネタバレ》 
娯楽時代劇としては確かにそこそこ面白いものの、全体的に見れば凡作という印象しか残らない感じで、可もなく不可もなくというところか。冒頭とラストの円谷英二監督によるスペクタクルシーンは見ごたえがあり、タイトルにも出ているラストの竜巻のシーンはいかにも円谷英二時代の東宝特撮らしいが、その竜巻のシーンがちょっと無理矢理感があって強引に感じられるのが残念。タイトルに「大龍巻」と出すならもっとストーリーに絡めても良かった気がする。でもここがやはりこの映画最大の見せ場であることは確かで、繰り返しになるが、ラストのこのシーンは東宝特撮陣の腕前をじゅうぶん堪能できる。
[DVD(邦画)] 5点(2010-11-09 11:20:49)
167.  鬼婆 《ネタバレ》 
新藤兼人監督が鬼女伝説を元に手がけた時代劇。見る前はいかにも地味な映画で少し退屈するかもと思っていたが、確かに新藤監督らしいオールロケ作品で金がかかってなく地味ではあるものの、見ていてだんだん引き込まれた。「鬼婆」というインパクトの強いタイトルで、実際物凄く恐ろしい内容なのだが、その恐ろしさというのが、鬼婆のそれではなく、人間のエゴとかそういうものであるあたりが実にリアルに描かれていて衝撃的だった。乙羽信子、吉村実子、佐藤慶という濃すぎる主演の三人の演技にも力が入っており、三人とも熱演しているが、特に乙羽信子のこういう恐ろしい演技は初めて見るような気がして、非常にインパクトがあり、しばらくは乙羽信子を見るたび思い出してしまいそう。宇野重吉演じる武将が穴に落ち、乙羽信子から鬼の面が外れなくなった時点でラストは予想がついてしまったが、それでもラストは鬼になってしまったという理由だけで吉村実子演じる嫁(こちらもインパクト絶大。)からも逃げられてしまう乙羽信子が自分では顔が見えていないのもあって哀れに思えて仕方なかった。先ほども人間のエゴが恐ろしいと書いたが、まさにこれは人間の心の暗部を鋭くえぐった社会派映画の傑作であると思う。白黒であるというのも効果的だった。
[DVD(邦画)] 8点(2010-10-28 00:13:15)(良:2票)
168.  昭和残侠伝 血染の唐獅子 《ネタバレ》 
東映のヤクザ映画ってガラが悪い印象が強くてほとんど見ていないのだが、池部良の訃報を聞き、思い切って本作を見た。東映のヤクザ映画に抵抗があるため、合わなかったらどうしようかと不安のほうが大きかったわけだが、とにかく、主演の高倉健と池部良がかっこよく、なんて粋なんだろうと思った。主演の二人だけでなく、周りの脇役たちも実にイキイキとしていてマキノ雅弘監督らしいにぎやかな映画となっていて面白かった。高倉健演じる花田秀次郎のところへ波紋にされた池部良演じる風間重吉が現れ殴り込みの助っ人を願い出るシーンなどは熱い男の友情を感じさせていて感動的だし、山城新伍が惚れた女のために纏を質に入れてしまうエピソードなど人間ドラマとしても見ごたえ充分。特に殴り込みの前にある高倉健と藤純子のシーンは、藤純子演じる文代の悲しみがストレートに伝わってきて彼女に思わず感情移入してしまう。そしていよいよ殴り込み。このシーンの高倉健と池部良のなんとカッコイイこと。とくに池部良は東宝の「雪国」、「青い山脈」などの文芸作品、あるいは「潜水艦イー57降伏せず」といった戦争映画での演技が印象に残っているのだが、ヤクザ映画でここまで粋な役を演じているのを見ると新鮮に感じるし、ああ、いい役者だなあと改めて思う。ラストの見事な余韻の残し方もマキノ監督らしく、繰り返しになるが本当に粋という言葉がよく似合う傑作映画だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2010-10-21 18:10:29)(良:1票)
169.  日本一の色男 《ネタバレ》 
「無責任男」シリーズの進化系と言われる「日本一の男」シリーズ第1作。「無責任男」シリーズ2本同様に植木等演じる主人公のパワーあふれるサラリーマンの活躍が見ていて楽しいし、冒頭から卒業式で歌われる「蛍の光」から突然、植木等がコミカルな曲を歌いはじめる導入部から笑えて、タイトルの出るタイミングも古澤憲吾監督らしい演出で引き込まれた。植木等演じる主人公はとにかく女にモテまくり、仕事も出来るという男にとってまさに理想ともいうべき存在で、本当にこの頃の植木等の姿を見ると元気が出る。ただ、ラストシーンはあれだけモテていた主人公が本命の恋人(藤山陽子)に振られるというもので、どこか「男はつらいよ」シリーズのような感じで少し切なかった。こういうのは植木等主演の喜劇映画ではかなり異色な感じで、このシリーズの雰囲気にややそぐわない気もするが、個人的にはこういうのもアリだと思う。クレージーキャッツのほかのメンバーも出演していて楽しいが、先日谷啓が亡くなったこともあり、もうメンバーの中で生きているのは二人だけなんだなと思うとやっぱりさびしい気がした。犬塚弘と桜井センリにはほかのメンバーの分まで生きていてほしいと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2010-10-06 18:22:24)(良:1票)
170.  大殺陣 雄呂血 《ネタバレ》 
戦前の坂東妻三郎主演のサイレント時代劇「雄呂血」を市川雷蔵主演でリメイクした大映時代劇。オリジナルも見ているが、5、6年前に一回見ただけなので肝心のストーリーのほうをすっかり覚えていなかった。そのため、オリジナルのことはあまり考えず見ていたのだが、リメイクと考えなくても一本の娯楽時代劇としてじゅうぶん面白い映画に仕上がっているし、ドラマとしてもなかなか見ごたえのあるものになっていて面白かった。雷蔵もニヒルでかっこよく、クールでバンツマの演じた主人公とは少し印象が違うが、これはやはり雷蔵ならではのものだろう。クライマックス、オリジナルではバンツマはもっとコミカルな動きをしている感じだったが、本作はあくまでこのクライマックスの殺陣はリアリズムを意識しているようで、「大殺陣」とタイトルにあるように、雷蔵ひとりで何百人はいようかという敵と大チャンバラを繰り広げる様は圧巻で迫力充分。「十三人の刺客」などの集団抗争時代劇が流行っていた時代に作られたことがおそらく影響してるんだと思うが、それにしてもたった一人でこれだけの数と戦うというのは凄すぎる。一体、何人相手にして何人斬ったのだろうと本気で思えてしまうほどの凄さを感じずにはいられない。はっきりいってこのクライマックスはオリジナルを超えているのではと思うほど凄い。ここだけでも見る価値はじゅうぶんあると思う。そうそう、雷蔵の相手役と言えば藤村志保が多いという印象が強く、実際に本作にも藤村志保は出ているが、この映画のヒロイン役は八千草薫。この女優を大映時代劇で見るのは珍しい気がするし、ましてや雷蔵とのコンビというのもほかではなかなか見られない組み合わせで新鮮に感じられる。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-08-20 20:52:23)
171.  エレキの若大将 《ネタバレ》 
加山雄三の代表曲である「君といつまでも」が初めて登場した映画で、シリーズの中でも有名な作品。今回も若大将はスポーツ(アメラグ部に所属。)をやっているが、それよりも今回のメインは音楽。加山雄三やバンドに参加する出前持ち役の寺内タケシ(←あまりよくは知らないのだが・・・。)が素晴らしいギター演奏を披露していて、これだけでバンドの演奏シーンは見ごたえ充分。後半は「田能久」が倒産してしまうという展開だが、これが原因で若大将が学校を辞めてしまうというのも含めて少しさびしい感じがする。「君といつまでも」は既に劇中で若大将がうたうこれ以降の回を何本か見ているが、初披露となる本作で若大将が初めて(澄子の前で)うたうシーンはムードがすごくよくて、このシリーズで今まで見た「君といつまでも」をうたうシーンの中ではいちばん好きかもしれない。青大将がシェーをしているが、これの同時上映は「怪獣大戦争」というので納得。バンドコンクールの司会者を演じる内田裕也は面影がぜんぜんなく最初は気づかなかったが、「マイネームイズ、ショーン・コネリー」とかいっておどけている姿がけっこう笑える。
[DVD(邦画)] 6点(2010-08-03 13:48:55)
172.  眠狂四郎 炎情剣 《ネタバレ》 
「眠狂四郎」シリーズ第5作。これでこのシリーズを見るのは「勝負」、「無頼剣」に続いて3本目。(すべて三隅研次監督)三隅監督による光と影のコントラストを強調した映像美には感心させられるし、ラストの寺での決闘シーンの見せ方も工夫されていて見ごたえがあり、三隅監督の演出のうまさに改めて唸ってしまう。ただ、話の面白さとしては三隅監督が手がけたほかの2本よりは若干劣る印象。中村玉緒が悪女を演じているが、仇討ちの助太刀を狂四郎に願い出ておきながら実は裏があってという役柄をうまく演じていて、悪女役の中村玉緒もう何作か見てるけどこの役はなかなか印象的だった。その中村玉緒を犯す狂四郎のセリフがまあキザったらしいのなんの。もうここまで来ると変態的な感じさえする。ラストの中村玉緒をすれ違いざまに無言で斬り捨てるシーンは三隅監督のスタイリッシュな演出と相まってすごくカッコよかった。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-06-24 00:50:19)
173.  放浪記(1962)
森光子が半世紀近くに渡って舞台で演じ続けていることでも有名な林芙美子の自伝的小説を成瀬巳喜男監督が高峰秀子主演で映画化した作品。成瀬・高峰コンビの映画の中でもけっこう有名な映画という認識を持って見たのだが、成瀬監督の演出は手堅く丁寧で、林芙美子という女の生き様を見事に描き出している。原作となった小説も舞台も見たことがないのだが、この林芙美子という女の男性遍歴を中心に描かれていて、その部分がなかなか見ごたえのあるものになっていて面白かった。とにかく芙美子と一緒になる男たちがみんなただの女たらしで徹底的に芙美子は男運がない。とくに宝田明などは見ていて本当にイライラするほどのわがままな男で、そんな男とはさっさと別れちまいなよと本気で思えるほど。でも、そんな主人公 芙美子の生き様に共感できるかと言われればそうとは言えない部分が多く、あまり感情移入も出来ないのだ。高峰秀子はそんな芙美子をわざと魅力的「でない」人物として演じていて、この間見た「二十四の瞳」(見た後、2週間たった今でも余韻が忘れられない。)の大石先生と本当に同じ人なのかと思うくらいの変貌ぶりでその役作りの凄さには驚くばかりで、役に完璧になりきっている。(今の役者でここまでやる人ってどれくらいいるだろうか。)でも、大石先生が強烈に印象に残っている分、なにか余計にこのキャラクターには感情移入出来ないし、少し違和感を感じてしまったのも事実。できる女優というのは十分に分かっているが、さすがに今回は見るタイミングを誤ったかも。映画としてもそれほど深いものは感じなかったし、傑作とも思わないが、ストーリー自体は思っていたより面白かったし、なかなか味のある映画にはなっていると思うので少し甘めだけど7点。加東大介が芙美子のことをいろいろ気にかける実直な男を演じているが、この人はやっぱり「黒の超特急」のような腹黒い悪役よりはこういう善良な役柄のほうが絶対似合ってる気がする。
[DVD(邦画)] 7点(2010-05-20 00:08:55)
174.  風の視線
木下恵介監督の「日本の悲劇」、「女の園」、「二十四の瞳」などで助監督として参加し、木下監督が活動の場をテレビに移してからも木下監督を支えた川頭義郎監督による松本清張原作モノ。木下組出身の監督(ほかにも脚本は木下監督の妹の楠田芳子だし、音楽も木下忠司。)が松本清張とはちょっと不釣合いのような気がしたが、内容はサスペンスではなく4人の男女のドロドロした関係を描いていて、どちらかといえば「波の塔」に近い印象だ。出演者たちもいい芝居をしている(とくに新珠三千代はこういう役をやるといつもうまいなあと感じる。)のだが、面白いかと言われると正直微妙な感じで何か物足りない。ラストがドロドロした話のわりに救いのあるものになっているのはやはり木下監督の影響が大きいのだろうか。(でも、後味はそんなに良くなかったかな。)先日見たNHKドラマ「天城越え」でカメオ出演していた松本清張本人がこの映画でも冒頭と中盤に出演していて、ストーリーとはなんら関係のない役柄だが強く印象に残る。
[DVD(邦画)] 5点(2010-05-13 14:22:10)
175.  笛吹川
木下恵介監督が「楢山節考」に続いて深沢七郎の原作を基に手がけた時代劇。戦国時代が舞台になると武将や剣豪を描いたものが多い印象だが、この映画では、ある農民の家族の歴史を通して戦国時代を描いている。母親が戦になど行くなというのに対して、息子たちは親方様のためにと戦場へ赴く。この映画はさっきも書いたとおりもちろん戦国時代が舞台なのだが、「親方様」を「天皇陛下」に置き換えれば第2次大戦を描いた反戦映画のように見えるし、木下監督は間違いなく戦国時代の時局にあの戦争の記憶をダブらせて撮っているのだろう。とにかく重い内容で、見終わった後の無常感ももの凄いのだが、木下監督の反戦メッセージがストレートに伝わってくる秀作で、演出的にも合戦シーンでずっと鳴り響く鈴の音の不気味さや、一家の家の前の橋を通る人馬のひづめの音ははなにかを暗示しているようだ。映像的にも実験的な白黒映像に部分的に色をつけるパートカラー(タイトル前の松竹マークのバックのお馴染みの富士山からもうそうなってる。)も効果的で、白黒画面にポツリと浮かぶ赤い炎などが美しく印象的。クライマックスの行列に我が子たちを説得に来た高峰秀子扮する母親が加わってしまうシーンはこの映画の中でいちばん木下監督のメッセージが込められているような気がした。それにしてもこの映画を見ると戦国時代の戦も近代の戦争も庶民の目からすればあまり変わらないのだなと感じられてちょっと恐ろしくなる。ちなみにこの映画は岩下志麻の実質的な映画デビュー作だが、とてもそれを目的にミーハーな軽い気分で見られる映画ではない。
[DVD(邦画)] 8点(2010-04-29 01:18:48)
176.  レッツゴー!若大将
約1年半ぶりぐらいにこのシリーズ見たけど、もうこの頃になるとさすがに加山雄三も田中邦衛も大学生を演じるには無理を感じる年齢になっているのが気になる。でも、久しぶりに見たせいか、レギュラーメンバーやシリーズのお約束ごとのようなものが懐かしい。しかし、今まで見たのがわりと初期の作品が中心だったせいか、若大将と田能久の面々との絡みが他の作品に比べて若干少ないように思うし、加山雄三のアイドル映画という側面もあるシリーズなので仕方がないとはいえ、若大将が歌うシーンが多く、それがストーリーとかかわりが全くないのでなにか浮いて見える。今回、澄子もそうだがゲストである香港で出会うレストランの令嬢もなにか性格が悪いように思えるのは気のせいか。いつもの回では若大将が勘当されていたように思うが、今回は青大将が勘当されるという展開の脚本はおそらくマンネリ回避のためなんだろうな。飯田蝶子演じる若大将のおばあちゃんが今回もいい味を出している。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2010-04-25 12:05:21)
177.  永遠の人 《ネタバレ》 
夫婦を描いた木下恵介監督の年代記ものといえば「喜びも悲しみも幾歳月」が思い浮かぶが、この映画は恋人がいながら別の男に無理矢理犯されて強引に結婚させられてしまった女がその後30年近くに渡って憎しみを抱きながら生きていくという物語で、時を経てそれが家や子供たちにまで及んでいくという重苦しい展開。夫婦の長年の絆を描いていた「喜びも悲しみも幾歳月」とは正反対にとてもドロドロした夫婦関係、人間関係をリアルに描いていて、「喜びも悲しみも幾歳月」と同じ監督の映画とは思えないほどであるが、こういうドロドロした人間ドラマを描かせてもうまさを感じさせているし、五部構成で各部の終わりに流れる日本語フラメンコの主題歌も実験的で、監督としての作風の幅の広さも感じることができる。主演の高峰秀子は夫を憎み続けながら恋人が忘れられないで苦しむ主人公 さだ子を熱演していて内に秘めた思いというものを見事に表現していて素晴らしい。木下監督の映画では高峰秀子と佐田啓二が夫婦を演じる作品が多いように思う(とはいえあまり見ていないのだが。)が、この映画では佐田啓二はさだ子の恋人 隆役で、反対に結婚した女(乙羽信子)を愛することが出来ずに別れてしまうという主人公さだ子とは対照的な生き方をする男を演じている。さだ子の夫を演じるのは仲代達矢で、女を襲って無理やり夫婦になるとかどことなく後に岡本喜八監督の「大菩薩峠」で演じることになる机龍之介のような狂気じみた印象を残している。息子役の一人が田村正和。木下監督の「女の園」でデビューした兄である田村高広に続いて、その弟の田村正和も木下作品である本作がデビュー作だそうだが、なかなかピュアに好演しており、この息子の悲しみもよく描かれていたと思う。ドロドロしたまま救いのない終わり方をするのではと思っていたが、ラストシーンは救いがあり、ドロドロしたままでは終わらせないという木下監督の人間に対する優しさのようなものが感じられる終わり方になっていてとても良かった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-04-24 15:59:05)(良:1票)
178.  新選組始末記
雷蔵演じる主人公が新撰組物では定番の近藤勇、土方歳三、沖田総司といったメジャーどころではなく、近藤の人間性に惹かれて新撰組に入った新人隊士というのが意外だが、どうも主人公よりも近藤を演じる若山富三郎や土方を演じる天知茂のほうが印象に残ってしまうし、藤村志保演じる主人公の恋人もほとんど話に絡んでなく、はっきり言っていないほうがよかったような気もしないでもない。三隅研次監督の雷蔵主演映画はかなり久しぶりに見たが、このコンビの映画としては全体的に平凡な印象で、それほど面白くもないし、完成度も高くないように思う。若山富三郎が近藤役というのもごつすぎてどう考えてもミスキャストにしか思えない。(既に指摘されている方もおられるが、どう見ても近藤勇というよりは西郷隆盛にしか見えない。)一方、土方を演じる天知茂はニヒルでカッコよくいかにも冷酷非常な感じがとてもよく出ていた。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2010-04-19 19:05:59)
179.  冷飯とおさんとちゃん 《ネタバレ》 
田坂具隆監督が「ちいさこべ」に続いて山本周五郎の原作を錦之助主演で映画化したもので、なんと今回は短編小説3篇をオムニバス形式で映画化し、その三人の主人公を錦之助が演じるという異色作。錦之助は今井正監督の「武士道残酷物語」でも主人公七人を見事に演じ分けていたが、やはりこの映画でもそれぞれキャラクターの違う三人を見事に演じ分けていて素晴らしく、また、田坂監督の演出も三話とも違うカラーが出ていてさすがにうまいと感じる。最初の「冷飯」。冒頭の主人公がくず屋(浜村純)とぶつかるシーンからどこかユーモアがあり、全体的に明るい雰囲気の話で、後味がよく、この話がいちばん楽しめた。中でも三男を演じる小沢昭一はやはりしゃべっているだけで笑いを誘う。それに母親役の木暮実千代も印象的だ。次の「おさん」は「冷飯」と比べると暗い感じがどうしてもしてしまうし、主人公に感情移入しづらいという点もある。現在と過去を交錯させて主人公の一人語りでストーリーを進行させるという構成もちょっと複雑なのだが、この話がこの三話の中で完成度が最も高いように感じた。この話で主人公の妻を演じるのが三田佳子。イメージ的にあまり好きではない女優だが、この話の彼女は素晴らしく、中でもラスト死んだ後に幽霊となって主人公の前に現れ、主人公と語り合う中で自らの心情を語るシーンが感動的だった。最後の「ちゃん」は、タイトルだけだとなんか「子連れ狼」を連想してしまいそうだが、いかにも山本周五郎原作らしい家族の話で、ありがちなんだけど泣ける。ここでは既に書かれている方もおられるが、森光子。この人も苦手なのだが、ラストの主人公とのやりとりはなかなか良かった。話は少しシリアスだが、三木のり平演じる泥棒の仕草などは見ていて笑える。そしてなにより家族の温かさがよく描かれていて見た後とても幸福な気持ちになれるのがいい。個人的にはさっき書いたように「冷飯」がいちばん楽しめたが、それでも三話ともとても丁寧に作られている佳作だと思う。余談だけどこの映画の公開と同時期に東宝で黒澤明監督の「赤ひげ」が公開されているんだけど、意識したのかどうかは知らないがこの映画でも「赤ひげ」と同じ佐藤勝が音楽を担当しているのが面白い。それにしても映画のタイトルが律儀でシンプルだなあ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-04-05 16:18:59)
180.  ちいさこべ 《ネタバレ》 
田坂具隆監督が山本周五郎の小説を錦之助の主演で映画化した人情時代劇。火事により無一文となり、独力での再興を決意した大工の若棟梁がやがて情に目覚め、焼け出された孤児たちを引き取るという物語。田坂監督の映画を見るのは「乳母車」以来、かなり久しぶりだったのだが、実に人間味あふれるドラマになっていてやや冗長に感じる部分もなくはないがとても感動的ないい映画だった。どことなく山田洋次監督が手がけていてもおかしくないような感じもして以前、山田監督が田坂監督のファンであると聞いたことがあるけど、やはり、受けた影響が大きいのかなとちょっと思う。出演者に関しては個人的には剣豪を描いた「宮本武蔵」シリーズや「瞼の母」、「沓掛時次郎 遊侠一匹」のような股旅映画の印象が強い錦之助にこの若棟梁の役はちょっと最初はイメージ的にどうかなあと思っていたが、独力で家業の再興をすることに躍起になっていた前半から、孤児たちを引き取る決意をする中盤以降の主人公の心の変化をとてもうまく表現していて、こういう殺陣シーンの一切ないような人情ドラマでもさすがにうまさを感じさせており、刀を持った役とは違う一面を見せている。主人公の幼馴染を演じる江利チエミは出演作をあまり見ていなかったのだが、子供たちに見せる母性愛や、健気な中にある儚さといったものを見事に表現していてこちらも素晴らしく、今までどちらかといえばアイドルのようなイメージが強かったが、(ちなみに「三人娘」シリーズはすべて未見。)初めて良い女優だと思った。 8点でもいいと思う映画なのだけど、やはりちょっと長すぎるので7点。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-03-20 21:23:38)
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