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161.  英国式庭園殺人事件
いつも「イギリス」を背負ってる監督の長編第1作。典雅と暴力。典雅なものが典雅であり続けるために必要とされる策謀や暴力。上品なものが上品であり続けるための残酷。そういったものへの関心がずっとあるよう。夫はいつも殺される。趣向を大事にする人で、今回は12枚の絵。実物と絵を見比べる楽しみ。絵のなかで探す楽しみ。移動はあまりなかった。食事のテーブルを横に動いたり、あと屋外で少々。庭が奥から晴れていくところなんか、よく撮りました。あの彫像男分からなかったんだけど、実際ああいう人間を雇ってたことが歴史上あったとか。下層階級の視点だったのかもしれない。趣向が先走りしてる気もしたが、この人はその後もずっと趣向を先走らせる姿勢を貫くのだった。
[映画館(字幕)] 6点(2013-08-12 09:27:15)
162.  密殺集団
疑わしきは罰せず、って言ってもモヤモヤは残り、かつて田中角栄が嘱託尋問の無効を主張したときには、そんな! 逃がすな! とか思ったし、でも再審請求の裁判のときなんかは、そうだ! 慎重にやってもらわねば! とか思うし、こっちもかなりいいかげん。ふらふらしてる。裁くって難しいんです。だからこういう映画、判決に悩んだ判事が秘密の裁判を行なう組織、なんてのも想像される。日本でも似たような時代劇が創造される。「悪い奴を逃がしてるかもしれない」という不快のほうが「無実の人を裁いてるかもしれない」という不安を凌駕してしまってるんだな。ストーリー上は一応「いけないことだよ」と言ってるんだけど、心理上は彼らの言い分のほうに説得力を置いていたようで、あんまりいい後味ではない。ラストの廃倉庫のタルコフスキー的水はちょいとよかった。
[映画館(字幕)] 6点(2013-08-06 09:18:37)
163.  グレムリン
製作総指揮がスピルバーグで、当時はその名前の牽引力は強く、それが全然スピルバーグの世界と違うところにいろいろ発見もありました。全体ヒステリックな感じ。ネバネバドロドロ志向。とにかく気色悪さのほうを選ぶ。ジュースにしちゃったり、電子レンジでの爆発とか。プールでの大増殖から乱痴気騒ぎになるのはスピルバーグも好きだが、こっちは陰性の活気なんだ。騒いでいるのが小悪魔なんだから仕方ないんだけど、ヒステリー志向と関係あるんじゃないか。ディズニーの「ほのぼの」からはずいぶん遠くまで来たなあと思い、こういうのが悪いと言い切る自信はないけど、ヒステリーの忘我状態を楽しむ・暗いはしゃぎの世界ってのはその後増えましたな。スクリーンを引っ掻いてやってくる一瞬は面白かった。
[映画館(字幕)] 6点(2013-07-29 09:33:42)
164.  スプレンドール
閉館まぎわの映画館、その臨終のときに見る意識の流れのような映画。「すいません、帽子をとってくれませんか」と頼むと長頭で…、なんてエピソードを挟んで、そういう細かいところは悪くないんだけど、どうしてイタリア映画はこう懐古的、愚痴っぽく、内閉的になってしまったんだ、と思っちゃう。不健康。ぐずぐずと滅んでいく己れにどこかうっとりしてしまっている。なぜ映画はすたれてしまったのか、っていうことに反省しないで、テレビのせいにばっかりする。ま、そんな反省をわざわざスクリーンで観たいとは思わないけど。映画が映画を描くときの一番良くないパターンにはまってしまった気がする。人の名作を延々と見せて、チョロチョロとつまみ食いで時間を構成するって、それこそ一番テレビ的じゃないか。ラストは開閉式の天井から雪が降りそそぎ、取り払われようとしている座席に客が座り込み、まさに臨終の床で見る世界のよう(自己陶酔でありつつ至福でもある)。フェリーニ的。イタリア映画はフェリーニとマストロヤンニの影響から抜けられず、どんどん弱っていった。
[映画館(字幕)] 6点(2013-07-28 09:36:43)
165.  リトル・マーメイド(1989)
北欧トーンを南洋に変えたのがミソ。人魚を褐色のお肌にして、音楽もカリプソ風。楽器の見立て、ちょっとせわしなかったけどディズニーの味。王子にキスさせるためのムードを盛り上げていくとこも楽しい。魔女が太ってるの。ディズニーではだいたい悪の側のキャラクターが魅力的で、これもそう。タコ。表情が豊かになる。海老の執事も怯えながら笑いを浮かべるあたり、いい。フランダースがつまんない。アンデルセンって19世紀のカフカだと思ってる。先がけて疎外のテーマを語っている。しかしその地上の世界と海の世界との断絶を、ディズニーは憧れの力で乗り越えられる、とする。断絶があるからこそ姫の憧れが輝くのであって…、などと注文をつけても、これはもう作者の立脚点の違いで、仕方なかろう。良くも悪くも、ディズニーの型はしっかり完成してしまっている。声が戻るとこはホロッとしたけど、もっとミュージカル的な手はなかったか。王子のキスが間にあわない、いう展開はいい。
[映画館(字幕)] 6点(2013-07-13 10:02:37)
166.  晴れ、ときどき殺人
劇の中でのクシャミってのは、ベテラン俳優でも不自然になってしまうものだが、本作での太川陽介君は良かった。あんまり自然なんで撮影中うっかり出てしまったのをそのままリアリズムっぽいので取り入れたのかと思ったら、だんだん風邪ひいていく設定になってて、演技だったのかと思い直した。役者を侮ってはいけない。意外な役者が意外な場面で光ることがある。で本作、浅香光代が死ぬまではどうなることかと心配だった。いや死んだ後も渡辺典子嬢が踊ってたりするところは、かなりヤバかった。いいのは探偵殺しのシーンの長回し、いちいちの人物のまわりをぐるっと回り、こいつはいる、こいつもいる、と点検してる感じで、観客は次第に、こりゃあの部屋で何かが起こってるぞ、って気になってくる。理にかなった長回し。全体、刑事が笑わせた。警察手帳を見せるとこ、額縁を傾けるとこ、犯人逮捕のとき「最初から分かってたんだ」と言うとこ、など。刑事の九十九一(つくもはじめ)って、でんでんなんかと同じころ芸人の勝ち抜き番組に出てて、とても面白かった記憶がある。
[映画館(邦画)] 6点(2013-07-04 09:28:16)(良:1票)
167.  逆噴射家族 《ネタバレ》 
劇画的に汗がタラーッとなるアップ、お父さんが風呂の湯垢を掬っているカット、広角レンズで街を走りシロアリ駆除液買って地下鉄の中を進み、夕景の中チャリンコ飛ばす。ここらへんイッキの勢いでよかった。このままスラプスティックに徹してくれればもっと良かったんだけど、社会批評的なものが紛れ込んでしまう。妻の描き込みが足りない。あの人だけがときどき「裁く人」になってしまう。小林家崩壊のシーンは、スローモーションにしないと安っぽくなってしまうからなんだろうが、あの手のスローモーション自体がそもそもセコい感じが匂ってしまう。協力のところに「日本シロアリ協会」があったのがウケた。
[映画館(邦画)] 6点(2013-06-30 09:57:22)
168.  ファミリー(1983)
映画館内でズルズル鼻をすする音が満ち溢れた記録は、私が体験した中ではこれか『チャンプ』か。母さんが癌で死ぬってんで10人の子どもを養子に出していく実話。可哀想なのはパパで、いちおうアル中などの欠陥があることになってるけど、もう家庭にとって必須の要素でなくなってるんだね。昔のアメリカ映画だったらパパを軸にし、長女が母親役になって次第に成長していく話になっただろうが、パパがもう駄目な時代なの(なぜか政治ではレーガンによる強いアメリカを目指していたころ)。こうして子が親を選べる時代が来たら、ってなことを考えた。家族が宿命にならない世界。それを親の側が許せるだろうか。子の幸せを願う親のエゴだけは、なかなか否定できないんじゃないか。そんなことを考えました。ちょっと“テン・リトル・インディアンズ”を思ったのは不謹慎でしたな。てんかんへの偏見を訴えるために、知恵遅れへの偏見を持ち出さざるを得なかったのは欠点。
[映画館(字幕)] 6点(2013-06-11 09:47:25)
169.  四月の魚
絶対映画にならないテレビ番組は、ってのをかつて考えたことがある。クイズ、天気予報、事件・事故の現場中継、ナマのスポーツ、などを考えて、料理番組も思った。そしたら「在日外国人夫人の人気番組」って雑誌の記事で「料理番組」があった。実用番組としてでなく美術鑑賞として日本料理を楽しんでいるらしい。料理というのも社交芸術のひとつなのだった。そんなことを考えていて本作。料理映画というジャンルと呼べるかどうか。料理図鑑で見る美しさを越えた何かが動画で表現された、とは思えません。もっと官能性というか、秘めやかさというか、隠微な悦びみたいなもの、が料理にはありそうなんだけど。着眼点のみ評価します。あと、大林映画で大人しか出ないドラマというのも珍しい。「バイオレンスやセックスを嫌ってちゃ駄目だよ」という説教に、クシャミで応えたのは監督自身か。丹波哲郎が登場しただけで、場内は大受けだった。
[映画館(邦画)] 6点(2013-06-08 09:21:21)
170.  必殺! THE HISSATSU
リアリズムを無視してるところがけっこう楽しめた。黒ミコシにはついていけなかったけど、三田村君が水中から飛び上がる馬鹿馬鹿しさは許せる。シーンのつながりでの面白さはないが、ワンカットワンカットのビジュアル的な面白さでもってる。急に大きな面が出てきたり、山田五十鈴が三味線弾いてせり上がってきたり、嬉しい。暗い中に照明を絞って効果出す、ってワンパターンなんだけどね。ただ設定がけっきょく連中の内輪な話なわけで、ラスト積極的に主人公たちに共感できないんだよね。別に共感したくもないし、そもそも彼らが仕事に対して抱く疚しさなんてどうでもいいし、こういうのは単純な悪玉のほうがいいね。
[映画館(邦画)] 6点(2013-04-15 09:55:08)
171.  クリスタル殺人事件 《ネタバレ》 
最近ニュースで風疹流行のことがしばしば語られ、この映画をぼんやり思い出していた。津村記久子の新作読んでたら、この映画の原作についてちょっと触れた部分があった。何か周囲からさかんに促されているようで、レビューを書いとこうと思った次第。あのころクリスティの映画が流行って、だんだん粒が小さくなってきたころの一本。私は名画座で『殺しのドレス』の付き合いで見ている。いまキャスティング眺め、一昔前のスターをそろえた「あの人は今」的な興味狙いの映画だったのかと思ったが、ともかく私が初めてリアルタイムでエリザベス・テイラーを見た作品だった。このオバサンが昔の絶世の美女だったのか、と眺めた。何が起こっていたのかを了解する場面での彼女の透明な瞳に、かつてのスターの凄味を見た気がし、おそらく彼女にとっては本作なんかで思い出されても困るだろうが、私にとってはE・テイラーというとけっこう思い出される映画になってしまった。ロック・ハドソンの演技などしっかり一昔前のもので、おそらくそういう味を狙った映画だったのだろう。ブラックなところもあるが、イギリス式ユーモアで、女優同士のののしり合いなど、まあまあ楽しめた記憶。殺人の動機がユニークで、それが印象に残っていた。妊娠している方の周辺では風疹にご注意。
[映画館(字幕)] 6点(2013-03-12 10:07:25)
172.  瀬戸内少年野球団 《ネタバレ》 
敗戦後の地方小都市における風俗カタログという感じで、それ以上でもそれ以下でもない。つまり、ああこういうことあったな、とか、こういうの知ってる、とかうなずきながら観る映画。それはそれでもいいが、篠田監督ならもっと何かを加えてくれても良かったんじゃないか。登場人物がみな泣きすぎる。こんなにメソメソしていられた時代だったんだろうか。亭主の帰還や再会でいちいち泣くのはまあ理解できても、ラストで加藤治子が貰い泣きするのは、不必要に思えた。これまでの篠田作品はちょっとスマしたような感じが鼻に付くとこがあったんだけど、その反動か、これでは真面目な人間が無理に冗談言ってるようなぎごちなさがあって、けっきょく寛げない。月夜の砂掘りや、室内で少年たちがスイカ食べてるシーンなど美しかった。こんなにノスタルジックに語られるほど昔のことになってしまったのか。
[映画館(邦画)] 6点(2013-03-03 09:36:33)
173.  探偵物語(1983)
なんとなくつけている松田優作がまず楽しい。望遠で縦の動き。薬師丸と先輩とガールフレンドと探偵が縦にいる。ジェスチャーでのやりとり、鏡を使ったドタバタなどなど、いろいろ工夫の跡は認められる。クレジットの間、松田優作はずっと立っていた。積極的に褒める映画じゃないけど、語り口は『遠雷』のときより上達してて、ちょっと藤田敏八を思わせる軽快さ。尾行したり尾行されたりするってのは、一つになりたいという願望でもあるということか。薬師丸嬢は思い入れを込めない表情のときのほうがいい。ラストの松田君の表情が難しい、本人も困ったんじゃないか。へんに深刻ぶっちゃってないか、などと。
[映画館(邦画)] 6点(2013-02-24 08:57:23)
174.  里見八犬伝(1983)
敵の城に乗り込んでからは、けっこう楽しめた。巻きものがひゅるひゅる飛ぶのも良かった。ただ薬師丸ひろ子はミスキャストだな。彼女がいて作られる映画なんだろうから企画のミス。お姫様役者じゃないんだ。人気が出た若い娘だとすぐお姫様って、せいぜい60年代までの発想じゃないか。真剣に叫ぶシーンが向かないんだ。彼女は「一途な少女」がいいんだけど、それが内に秘められてる感じが魅力なんで、その点けっこう陰性なの。澄明な冷たさ。そういうところを生かす企画を立てるべきじゃないか(と当時の感想)。終わりのほうで真田君の周りで刀持ってうろうろしてたところなんか、滑稽というか可哀想というか。
[映画館(邦画)] 6点(2013-02-10 09:44:10)
175.  人魚伝説
何のことはない、これ現代版『大魔神』ですわな。ラストの大殺戮はもう荒ぶる神。個人は弱いけど、そのなかにああいう神になるエネルギーを秘めてるんだ、いうところがポイント。ちゃんと題名に「伝説」と記してるんだから、リアリズムで見ちゃいけないんでしょう。「そんなことのために殺されたのか」いう怨みは、もう人類の歴史始まって以来、個が公に対してずっと抱いていた怨みなわけで、そういうものが蓄積されると怨霊になるぞ、という話で、これが伝説たるゆえん。弱点は曖昧に原発問題を導入してことで、伝説だからこそかえってぼんやりでなくカッチリとした輪郭をとっておいてほしいところ。公の側は、ああ跡を残しちゃうような下手な殺し方はしないだろう。印象深いシーンとしては、プールに夕立が降りそそぐのを水中から見上げたシーン。清水健太郎の死体が沈んでいくところも美しかった。
[映画館(邦画)] 6点(2012-12-31 10:47:11)
176.  ミス・ファイヤークラッカー
スモールタウンもの。アメリカ人にとって、なんかジーンとさせるものがあるらしい。たとえ都会生まれ・都会育ちでも、ある種の懐かしさが醸し出されるんじゃないか。年齢制限ギリギリのヒロインが「美人コンテスト」に挑む話。いとこへの対抗意識もあるが「町の困った娘」をずっとやってきたホリー・ハンターにとっては町への対抗意識が強い。ミスになれたら、この町を去っていけるって意地。関係をチャラにしたい、あるいは優位に立ってから蹴飛ばしたい、っていうか。だから彼女にとっては必死のコンテストで、その真剣ぶりがかわいい。ヒロインの少女時代へのこだわりも重なってくる。いとことの関係が、もっとキレよく描けなかったかな。いよいよ発表いうとこで、いとこの男のほうにカメラが移っちゃうのはいい。
[映画館(字幕)] 6点(2012-12-26 09:53:49)
177.  パッション(1982年/ジャン=リュック・ゴダール監督)
輪郭の融解ということでまとめてみようか。半ばあたりの喫茶店のシーンで、父と娘とが「何にでも輪郭はあるの?」というような会話を交わしていた。なにせ冒頭が飛行機雲だ。まっすぐに明晰に直線を引いていたのが、飛行機が黒雲にはいってしまうと、やがて直線もぼやけていってしまう。このシーンを、よく小説の冒頭に置かれる箴言のような役割りと思えば、作品のテーマとなる。ものみな輪郭は融け出す、という真理。ときあたかもポーランドでの変革が進行していた。労働運動なり革命なり、輪郭のはっきりしていた言葉もやがて融け出し、不確かなものに変質していってしまう。ならば古典美術はどうか。額縁という輪郭のはっきりし安定していた絵画を、現代はそれを取り払ってしまう。そこに古典絵画を越えるものを生み出せるのだろうか。モーツァルトをバックにハンナ・シグラが逆光で道を歩いていくシーンなど美しいはずなのだが、私たちはいつクラクションが鳴るのかとビクビクしているので、一つの場面としての情感を共感できない。輪郭を固められない。音楽と映像とは手を取り合いたくてうずうずしているのに、騒音の緊張が画面を不安定に流していってしまう。そういう時代。名画のモデルたちの間をカメラが自在に流れていくシーンは実に美しいのだが、輪郭を持てない現代の我々がここで美を感じてしまっていいのだろうか。
[映画館(字幕)] 6点(2012-11-26 09:53:10)
178.  評決
正義を行なうチャンスとしての陪審制。たとえ汚れても正義に至る道は確実に用意されているはずだ、といういい意味での楽天主義。アメリカはどんなに自己否定しても、最後に「民主主義の国だぞ」という誇りだけは残る。気分によっては鼻持ちならないが、おおむね、拍手してやりたいぐらいいいと思う。あくまで植物人間にされてしまった人間の代理として闘い始めるわけ。組織に対して、こちらは手作りの味で勝負していく。でもラストはちょいと無茶だったか。コピーを無視するようにという裁判長の指示のくどさが裏目に出たってことでもあるんだろうが、ちょっと間違うと心証による判断ともなりかねず、詰めの甘さを感じた。この人、女性が絡むと弱くなるんだ。シャーロット・ランプリングは、いらなかったんじゃないか。『ネットワーク』のとき、フェイ・ダナウェイがいなけりゃなあ、と思ったのと同じで。
[映画館(字幕)] 6点(2012-10-25 09:48:40)
179.  男はつらいよ 旅と女と寅次郎
今回の夢は大衆演劇風舞台。チンドン屋に「時代遅れ」だよと言われるのが、このシリーズのキーワードの一つ。次に、みんな「重し」を負って生きている、という中を寅がふわふわと飛んでくるところも重要。自由ということの不安定さ。運動会をめぐるシークエンス、「善意の無効」もポイント。「俺に何かできることはないか…ないなあ」という嘆きは、シリーズを通して流れている。「重し」のモチーフはラストの「暇はあるが金がない寅と金はあるが暇がないはるみ」の対比につながっている。そして「時代遅れ」の優しさが、はるみと知りつつ分からぬふりをしたかっこよさによって、肯定されていく。善意は直接の効果としては空振りに終わってしまうが、その気持ちはありがたい、というもので、精神至上主義というよりそういう心の風土をめでているのだろう。旅の部分は麦の穂のそよぎから凧揚げ合戦のあたり、沁みるような味わいが深まって、ますます枯淡の境地。後半、はるみがとらやに来る部分はオマケでしたな。ま、都はるみ使って歌わせなくちゃ失礼になるし。
[映画館(邦画)] 6点(2012-10-22 09:35:10)
180.  この子を残して
かすかに黄色がかった色調。回想の懐かしさに、沈んだ落ち着きを与えて格調高い。長回しやゆっくりとした移動で、けっこうのどかだった戦時中の地方都市が丹念に描かれていく。この懐かしいのどかさを奪われたということが木下の怒りの原点だろうから、ここは大事。おそらく作者にとって一番思い入れが深かっただろう淡島千景の祖母を、後ろに控えさせて隠し味的にしている慎み深さもいい。この主人公にはさして共感湧かなかったが、米兵に黙って写真撮られるところなど良かった。しかし原爆映画はつくづく難しい。この大量殺戮兵器に対して、もう怒りとか憎しみとか普通の神経では計れないのだ。限度を越えた愚劣さに対しては哄笑で答えるしかないと思えてしまうのだが、それは無力な自嘲として終わってしまいがちなものでもある。そしてその無力感がまた原爆を育ててしまう。原爆が具体的に私たちの生活から何を奪っていったのかを、丁寧に想像する作品が作られねばならない。木下はそれをやろうとしたのだろう。ネックになるのが被爆シーンをどう撮るかだ。演出困難なのである。本作も木下としてはずいぶん思い切って汚れた画面を作ったと思うが、やはりちょっとしたガス爆発事故という感じ。遺体がまだ美しすぎる。記録写真にはある、人間の尊厳に対する陵辱が感じられない。フィクションで原爆映画を作る難しさはここなのだ。いくらむごたらしい遺体を造形できても、たぶん方向が違うんだろう。こしらえものが現実の歴史と拮抗する新たな地点を、劇映画作家はさらに探し続けなければならない。
[映画館(邦画)] 6点(2012-09-30 09:29:56)
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