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鱗歌さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 3957
性別 男性
年齢 53歳

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1841.  パシフィック・リム
『大日本人』がハリウッドでリメイクされるとかいう噂がありましたけど、まさかそれがこの『パシフィック・リム』だったりして?と言いたくなるくらい、この作品も“カイジューごっこ”に特化した内容になっております。本作で怪獣と戦うのは冴えない巨大なオッサンではなくって、曲りなりにも巨大ロボ(あの“イェーガー”を最も端的に表現する日本語は“巨大ロボ”です)。その巨大ロボで戦う連中が一応は主人公とその周辺、ってなことになっているけれど、スターと言える俳優を中心には起用していないキャスティングを見てもわかるように、人間を描く気がさらさら無くって、ひたすら、巨大ロボvsカイジューの戦い。二人一組で巨大ロボを操縦したり、主人公のライバルがいたり、最低限のドラマのネタは用意しているけれど、申し訳程度のもの。だいたい、彼らが巨大ロボに乗り込んでいるのだって、操縦するために乗っているのやら、攻撃を受けるたびに中で操縦している人間が振り回される光景を描くために乗っているのやら(ロボがやられるたびに操縦する人間がこんなヒドイ目に遭うなんて、一体どういうシステムなのか。ダメージを負うたびにコックピットに火花が飛び散るレトロ感覚もまた)。という、ひたすらバトル、そこだけに力点を置いて作られた映画です。正直、ややクドイので、カイジューを一刀両断のもとに切り裂いてやっつけるシーンでは、むしろその手っ取り早さに少しホッとしちゃったりも。それにしても、二人で操縦するという設定、(いくら製作サイドに興味が無いとは言え)もう少し何か生かせなかったか、という気もするのですが、映画冒頭で主人公が兄とやたら気の合うところを見せるシーンでは、その見事な連携ぶりに、奈良・中谷堂の「高速餅つき」を連想してしまいました、ははは。あと、別のシーンで、操縦する二人がファイティングポーズをとったりしていると、“いつもここから”の「悲しいとき~」のネタを連想してしまいました。はははは。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-03-25 22:27:29)(良:1票)
1842.  もつれタンゴ
ダンスホールを舞台に、2人のバンドマンがクローク係のオネエチャンを狙って喧嘩するオハナシ、というのなら普通だけど、ここにもう一人の男が加わって三つ巴の喧嘩になるのがミソ。って、2人が3人になったからと言って、どやねん、ってなとこですが、その明らかにオジャマ虫である3人目の男が、チャップリンであるとうところがミソ。チョビ髭もドタ靴も無い、普通の扮装の小男であるチャップリンが、出演者の誰にも負けるまじと、ひっきり無しにコミカルな挙動不審ぶり(笑)を演じる芸の細かさに、また一方ではこれでもかと激しく動き回る。こういう作品を通じて、自分のキャラクターを作り上げていったのかな、と。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2014-03-18 22:33:43)
1843.  腰抜け二挺拳銃の息子
『腰抜け二挺拳銃』、ホント面白かったんですけどねえ。この続編モドキはもうお寒い限り。息子とかいう奴が登場し、親父の遺産がどうの借金がどうの、と、どうでもいい話が続いて、あとはひたすら寒々としたギャグの数々。何とかなりませんかねえ。というダメダメぶりなのに、ラストではとってつけたように、前作に負けじと本格アクションを見せようというのが、余計に腹立ってくる(笑)。ですが、ボブ・ホープの首がグルグル回ったり体がグルグル回ったりする物凄い特撮ギャグもあったりして、この時代にこんなことやってたのか、と、それなりに発見もあるかな、と。発見してもしょうがないですが。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2014-03-18 00:00:43)
1844.  忍者武芸帖 百地三太夫
とにもかくにも、「若いって、エエのう」と、半ば呆れつつも半ば感心する、うれし恥ずかしな作品。何がって? 真田サンが若いんです。もう魅力全開。伊賀忍者の親玉ともいうべき百地三太夫の名をタイトルに持つ本作、映画開始からまもなく、肝心の百地三太夫は死亡(笑)。そこにふらりと現れるのが、真田サン演じる鷹丸なのですが、これがもう、ムキムキにしてサワヤカ、そして男前。まあ要するにコレ、アイドル映画です。しかしJAC風味のアイドル映画、ですから、アイドルにもそれなりの事はやってもらわないといけない。体脂肪率ゼロ%かというような肉体美を披露しつつ、見事な武術アクションを展開。彼が登場したとたん、忍者映画ではなくカンフー映画と化してしまい、これぞ和製ジャッキー・チェンです。時には(なぜか)ダンスも披露するし、また時には危険なスタントにも挑戦。真田サン、お城の天守閣からホントに飛び降りちゃってます。すべてにおいて、ここまでやるか、という、まさにJACならではのアイドル映画。志穂美悦ちゃんも負けじと、うれし恥ずかしなアイドルぶりとアクションを見せつけてくれます。脇を固めるのが、丹波哲郎とか千葉真一とか、要するに妖怪系の面々(笑)で、ノリノリかつワケのわからん言動が映画を大いに盛り上げます。と言う訳で、どうにもこうにも浮世離れの甚だしい作品ではありますが、何かイイモン観たな、という気にさせてくれる映画です。あと、真田サンって、スゴイな、と。ほんと、若いってイイです(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-03-17 23:12:25)
1845.  のぼうの城
多勢に無勢、2万人対5百人の戦い。ってのが何だか、この作品における「豪快過ぎるスペクタクルシーン」対「野村萬斎のひとり踊り芸」と重なるような気がして。実際、この作品では(とくに前半)、主人公であるはずの野村萬斎の扱いがあまりよろしく無くって、あまり光も当たらない。むしろ彼を取り巻く人々の表情の方が、描かれてます。それに、この主人公、奇行が目立つとは言え、「天才」ならではの裏のある奇行なんぞではなく、むしろ裏が無く計算もあまり無く、場の空気や常識にそぐわぬ闇雲な率直さが結果的に奇行奇策に繋がっていく、という具合。映像は派手な合戦シーン、派手な水責めシーンと、どんどん視野を広げスケールを大きくしていき、主人公の魅力と野村萬斎の芸が、それに対抗する。ってのが、何だか愉快ではありませんか。
[地上波(邦画)] 7点(2014-03-16 20:44:14)(良:1票)
1846.  ヘルファイター
油田火災と戦う男たちの映画。って言ってもパニック映画じゃなくって、時々電話がかかってきて出動しては消火、というエピソードの寄せ集めみたいな、あまり緊迫感のないおハナシ。別に逃げ遅れた人々の救出、みたいなこともなく、呼ばれたら世界のどこにでも出かけて、じっくりと消火作業にあたる。出動要請の電話がかかる度にソレっぽいBGMが流れるのがまた、かえってノンビリした雰囲気を醸し出してます。主人公のジョン・ウェインはその道の大物であって、若いパートナーが居て、生き別れの娘も居て。と、何ともアリガチでベタな設定でして、実に大らか。どんな設定であれ、ジョン・ウェインが主演すりゃ、まあ、そんな感じですわな。ただ、油井が燃え上がるシーンはミニチュアなんぞ使うことなく、しっかり盛大に燃えあがらせております。最大の見所は、映画始まっていきなりの火災、「ユニヴァーサル・プレゼンツ」と出てくる前にもう大炎上してますから実に気が早い。そしてオープニングのクレジットの背景で燃え続け、クレジット終了とともに鉄塔が崩れ落ちる、神業のようなシーンであります。あとはノンビリしたドラマと同じような火災シーンの繰り返しですが、ラスト、飛行機から現れるジョン・ウェインの笑顔がいいのです。やっぱりこのヒト、神サマです。まあ、そういうノンビリした映画ですから、USJのアトラクションはやっぱり、「ヘルファイター」ではなくって「バックドラフト」でなくてはいけないんでしょう、なあ。
[DVD(字幕)] 6点(2014-03-15 10:36:26)
1847.  縄張はもらった
まあ何とガラの悪い映画。一応は日活のスター映画なんでしょうけれど、長谷部安春監督がやりたい放題、女優の皆さんはやられたい邦題で、刺激的なシーンの数々でございます。街を闊歩するチンピラどもを見てると、ここは無法国家かと。主演の小林旭もここではコワモテの役柄。彼が刑務所を出所した時、彼のいた一文字組に昔の面影は無く、ハザマ組に呑まれかかっている。そのハザマ組の密命を受け、小林旭は、街で幅をきかせている別の2つの組の対立をあおって殲滅を図る。この計画のために集められた精鋭(?)たちが、役に立ちそうな立たなそうなユニークなメンバーで、なかなかに魅力的なのですが、危険な作戦の中で、ひとりまたひとりと犠牲になっていきます。非情に徹する小林旭。しかしやがて彼は、ハザマ組にも反旗を翻す。という訳で、抗争に次ぐ抗争。またそこにはライバル同士の友情なんかもあったりして。こだわりのカメラにトンがった演出、エロあり暴力あり、そして男の哀しさ、女の哀しさがある。この映画、カッコ良い。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2014-03-13 23:30:25)(良:1票)
1848.  悪魔の陽の下に
87年のカンヌ映画祭パルム・ドール。いかにもテツガク的な作品でございます、といった感じで、なかなかにとっつきにくいのですが、ひと癖ある奇妙な作品でもあります。ジェラール・ドパルデュー演じる主人公の神父、深刻な自己懐疑に捉われており、今日も今日とて自らを鞭打つ苦行に励む。一方、男たちをたらし込むハスッパな少女、自分を捨てようとした男を射殺してしまう。そのふたりが出会った時、彼らに何が起こったか、彼らに救いはあるのか…とはいかないのが本作。救いなどなく、神父はさらなる自己懐疑に陥るしかない。彼は、ときには彼を誘惑する悪魔を退け(誘惑と言っても、自称「悪魔」はただのオッサンの姿なので、私でもこれは願い下げだけど)、またときには死者を蘇らせる奇跡すら起こす。でも自身が自己懐疑にとらわれている限り、彼に救いは無い訳で。死に至る病とは絶望のことである、とかつてキルケゴールが言ったけど、自己懐疑・自己否定・自信の無さといった「絶望」こそ、人間の心に巣食う“悪魔”であり、しかもそれは人間が本質的に抱えている“救われなさ”でもある。いやですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2014-03-13 22:46:46)
1849.  夜の道
途中までは、これは傑作なのではないかと思って観てたんですけど、だんだん平凡な作品になっていくような気がして。よくできた物語です。ジェームズ・スチュアート演じる主人公、過去に列車強盗をみすみす逃がしてしまったため、今では流しのアコーディオン弾き(?)に身をやつしているが、今でも凄腕なのは、通りすがりにイジメられてる少年を助け出す場面をみてもわかる。ちなみにこの少年は、顔を見ればわかるように、『シェーン』に出てたあのブサイクな少年です。で、そんな主人公に、再び、列車強盗から現金を守る仕事が舞い込む。峡谷をゆく列車、はたして現れた列車強盗。ココ、なかなか見ごたえのあるシーンです。物語も上手く編まれていて、ちょっとした脇役が何度も登場して見せたりするのが楽しいところ。主人公には、現金を守る使命があると同時に、確執を抱えた弟とも対峙せねばならぬ。つまりは様々な過去との対峙。「親父が唄ってくれた歌」なんてのもあったりして、自分のルーツを遡っていく訳ですな。と聞けばエエ話なんですが、実際にはどうもお話が深まらず、最後はアリガチな銃撃戦とアリガチな顛末でお茶を濁された感があって、どうも尻すぼみなのです。悪くはないのですが。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2014-03-08 11:56:49)
1850.  ロング・ライダーズ
実在のギャング団に取材した作品ながら、史実を追いかけるような内容ではなく、むしろ物語はどこかとりとめが無い。描かれるのは、彼らの気ままな姿。ただしその気ままさの裏にあるのは、南北戦争で失った過去であり、明日をも知れぬ我が身でもあり。「明日」が無ければ、そこには気ままな「今日」しか無い。そして彼らを待ち受ける、クライマックスの銃撃戦。5分くらいに渡ろうかという、その壮絶なスローモーション描写は圧巻で、破滅の美学とも言えるものだけれど、この映画のもつ静謐さもまた、そこには表れている。作品を支配する独特の静けさ。登場人物たちの会話も、言葉以上に、互いの視線によって交わされる。ペキンパーの『ワイルドバンチ』を思い起こさせつつも、また違った新しい西部劇の世界が、ここに拓かれた。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-03-02 23:42:03)
1851.  コント55号とミーコの絶体絶命
うーん、「ミーコ」って誰なんだ。何がどう「絶体絶命」なんだ。まず、欽ちゃんと二郎さんが、本作では兄弟なんだそうです。この時点でだいぶ違和感ありますね。そんでもって、2人は市役所勤めなんだけど、弟の欽ちゃんはひょんなことから地元有力者の二号さんの超ワガママ娘に気に入られてどうやら玉の輿、出世の道まで開けてきちゃう。まあ確かに、地方自治って多分に私物化されている面がありますからねえ。一方、兄の二郎さん、筋金入りの守銭奴なんだけど、どうも最近、胃の調子が悪い。実際には大した病気ではないのだけど、ガンで余命いくばくもないと勘違いしてしまう。で、二郎さん自暴自棄なり一騒動、というオハナシ。この勘違いの原因のひとつが、欽ちゃんが間違えて他人の診断を二郎さんの診断と勘違いしたことにあり、まあコントでありがちなネタではあるのですが、この手のネタ、「余命わずかなのが自分でなくてよかった、他人でよかった」ってんだから、正直あんまり笑えません。そこは目くじら立てないとしても、変に社会風刺的な部分が、ちとストレート過ぎて理屈っぽく、ナンセンスな笑いに繋ぎ切れなかったり。楽天的な愉しさは、いいんですけどね。 それにしても、チョイ役ながら、和田アキ子の存在感と威圧感は凄い。道理で、芸能界で誰も頭が上がらん訳です。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2014-03-02 21:12:20)
1852.  ワイルド・スピード/EURO MISSION
ストーリーはと言うと、「良い者チームと悪者チームがカーチェイスで戦います」というだけ。両者の間で多少の交換トレード(?)らしきものはあるけれど、ヒネリという程のヒネリは無く、いたってシンプル。ややこしい点があるとしたら、ハゲとムキムキが多いので、誰がどちらのチームだったっけ、と混乱する方もいるかも知れませんが。でも、こんなシンプルなオハナシになっているのは、アクションの凄さに対する自信の裏返しかも知れません。やり過ぎ、走り過ぎ、壊し過ぎ。地面を這いまわる2次元的なカーチェイスが、ここではまるで3次元の空中戦のような。それどころか、もはや、カーアクションは重力を超越し、3次元の立体世界での戦いに向っています。とりあえず、お腹いっぱい。ありがとう。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2014-03-02 20:38:06)(笑:1票)
1853.  バンク・ジョブ
銀行強盗、とは言っても銃突き付けての押し込み強盗じゃなくって、トンネル掘って狙うは貸金庫。普通なら、この強奪計画の華麗な手捌きを映画にするところ、しかし本作では、この計画に加わった連中というのが、どうも手際が悪く、素人丸出し。だもんで、果たしてこの作戦、うまくいくのかどうか、とまずハラハラさせられますが、さらにこの計画には、主人公の知らないウラがある。というにとどまらず、そもそも貸金庫なんてところにしまわれているモノといったら、それなりに訳アリのモノが多い訳で、ヤバいブツに手をつけてしまった主人公、ややこしい事態に。この事態をどう収拾させるか、にさらにハラハラ、だけどここで主人公がとる行動ってのが、事態の収束というより、さらに事態をかき回し、なるようになれ式のヤケクソな行動でして。で盛り上がったところに、舞台は駅。人々が集まりまた離れていく“駅”というところをクライマックスに持ってきたのがまた上手くって、ワクワクさせられます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-02-26 21:53:40)(良:1票)
1854.  オブリビオン(2013) 《ネタバレ》 
「過去」をもたない主人公たち。すなわち「現在」しかない彼ら。そこからいかに、過去というものによって「現在」を揺さぶるか。この点に限って言えば本作、シュワ主演の『トータル・リコール』なんかよりもうまくやってるとは思うのですが、逆に言えば『トータル・リコール』はそこに拘らずに活劇路線を貫いて見せた訳で、どうも本作、「過去」を深く掘り下げる訳でも無く、その割には設定に引きずられてなかなか吹っ切れない。そりゃま、それなりに魅力的な「意外な展開」あり、アクションあり、確かに面白いんですけれども、もうちょっと見せ方に工夫がないものか、と。お話の上では「過去」に拘り「過去」を追求する体裁なのに、実際にはそれがどうも形式的。ラスト近くの、あの宇宙へと向かうクライマックスなんぞ、変に混乱させる演出もあり、かなり蛇足気味のアンチクライマックスでしょう。ま、しかし、最後のオチが“利己的な遺伝子”のノリで来たのは、一番の驚きではありました。あと、ドローン3機が並んで飛ぶ光景、どう見ても『スター・ウォーズ』のドッグファイトにおけるタイファイターですね。どうして今更アレを再現しようと思ったんですかね???
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2014-02-23 23:10:56)
1855.  男はつらいよ 寅次郎子守唄 《ネタバレ》 
コメディならではの強引さが楽しい作品です。まず博の労災事故、ここで早くも看護師さんであるマドンナが登場して物語の布石を打つ。え、強引どころか、計算された脚本やんか、ってか。しかし、寅さんが帰宅し、老後の備えの話題となると、まるで会話を事前に予期し構想を練っていたかのように、壮大かつ軽薄な計画をスラスラ披露する寅さん、当然喧嘩となりとらやを飛び出すが、老後の備えと称していた通帳を捨て台詞と共にさくらに渡すと、それは実はさくら名義の通帳だったというオチ。喧嘩してカッコよく飛び出すところまで全て事前に織込み済みだったとしか思えない寅さんの全言動、コメディたるもの、このくらい強引でなくっては。そこから一転、侘しい港町でアンパンを買う寅さんの姿、風情があっていい感じ。しかし強引さは手綱を緩めず、知りあった甲斐性無しの男に赤ちゃんを押しつけられる展開。この後、登場人物の誰一人、警察に届けるべきという発想を持たないのが大変よろしい。この赤ちゃんが寅さんとマドンナを結びつける存在であり、一方とらやの面々はこれを阻止しようとムダな足掻きをする訳ですが。マドンナも強引にとらやに出入りするようになり、最初っから、寅さんにホレさせておいて後で別の男に走る算段だったとしか思えない。このシリーズのマドンナとして、これだけ自分の義務(?)に忠実なヒトも珍しいのでは。寅さんもこれに応え、いつにもまして軽薄で無責任な言動の数々を披露。当然にして最終的にマドンナは他のムサい男を強引にも選択。失恋したと知った瞬間に旅支度をする寅さんも、それを大して止めもしないとらやの面々も、素晴らしいほどに要領が良く、こういうストレートさも本作を実にサバけたものにしています。例の赤ちゃん、最後まで物語をかき回す役として存在してくれればいいのに、残念ながら作品の途中で退場してしまう。こうして物語を「整理」してしまうのが、本シリーズの限界かとも思う反面、最後に「遠い空の下で元気にしてるよ」と顔を見せてくれるのが、本シリーズの優しさか、とも。ところで、コーラスに参加した後のさくら、丸めた紙を持ってますが、楽譜ですかね。丸めちゃってるってことは、もう参加する気ないんですかね。喫茶店で丸めた紙を窓際に押し込んでましたが、このまま置いて行く気なんでしょうね。と思ったらその後のシーンでもまだ持ってましたね。意外に続ける気なんですね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2014-02-22 04:20:35)(笑:1票)
1856.  フェイス/オフ
二人の男の対決を描いた映画。ってそりゃ当り前なんだけど、そうとしか言いようがない、対決すべくして対決する、まさに対決そのものの映画なのだから。二人の男の「顔」が入れ換わる。「顔」とは存在そのものだから、存在自体が入れ替わる。奪われた「顔」、奪われた自らの存在は、きっと取り戻さねばならぬ。と同時に、二人の入れ替わりとは、相手の存在を自分の中に取り込むことでもある。だから、対決すべき相手とは、自分の影のようなもの、すなわちジキルとハイドの戦い。いや、二人の対決を描く映画なんだったら、その動機としては、復讐でもいいだろうし、単なる意地でもいいかも知れない。しかしこの映画では、対決とはまさに宿命、理屈もヘッタクレも無く、ただ対決へと向かうベクトルだけが存在する。だからこそ、あの、対決を求めて教会へと向かうニコラス・ケイジの姿にムヤミに興奮するのだし、その後のハチャメチャなアクション、現実の物理的な力学を凌駕した「対決」の力学に、さらに興奮するのだなあ。なお、教会の葬儀の場面で流れる音楽は、かつてシスティーナ礼拝堂門外不出だったものを少年時代のモーツァルトが聴いて記憶を頼りに楽譜に書きとったという、アレグリの「ミゼレーレ」。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-02-18 22:14:04)
1857.  コント55号と水前寺清子のワン・ツー・パンチ 三百六十五歩のマーチ
大金を持って鹿児島から上京してきた、やや鈍重なところのある二郎さんと、江戸っ子で気風がいい、というよりノリがやたら軽い板前の欽チャン。ひょんなことから二人は意気投合し、新しい料理屋を構えようとするも、店舗購入には資金が足りず、そればかりかうっかり手を出した競輪でスッてしまって、前途多難。さらには欽チャンたちが住むアパートの立ち退き問題も巻き起こる。ってな内容は、さすがにこのタイトルからは想像できませんねえ。しかし「汗かきベソかき」ってのは、いつもコントで欽チャンに無理難題をふっかけられ訳の分らぬ奮闘を繰り広げてきた二郎さんにピッタリの歌詞。本作でも、演出なのやらホントの汗なのやら、大奮闘。「ボケに対するツッコミ」というより「ツッコミに対するボケ」みたいなところがあります(今でいうとサンドウィッチマンの芸風が少し近い?)。当然ながら欽チャンはさらに若く、実に溌剌。さらに脇を固める面々も賑やかで(キックの沢村に、浪曲社長の圓歌師匠、西村黄門様に仮面ライダー1号。マエタケもいれば、財津一郎も忘れないでチョ~ダイ。あ、そういえばチーターもいたけっか)、物語は手堅くって派手さはありませんが、実に楽しい映画です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-16 10:14:52)
1858.  地獄(1999)
亡者どもが責苦を受ける地獄の光景。責め苦なのやら単なるハダカ踊りなのやら、変態的で楽しそうに見える部分もありますが。しかし作品の殆どは、地獄に落ちるまでの現生での悪事を描いており、しかもそれが有名な実際の事件に取材したもの。いや、実際の事件を表面的にトレースしたもの。テーマの重さにそぐわぬパロディ色が感じられてしまうのが、観ていてとまどうところ。で、事件を描くエピソードの最後に、ちょっとだけ地獄での責め苦が描かれて、その描写は残酷ではあるけれどユーモラスでもあって。要するに、地獄よりも現実の方がよほど「地獄」だ、ということでしょうか。醜悪な現代を裁くには、老朽化した地獄の設備ではもはや対応できません・・・。と言う訳で、実在の事件を描くにしては皮相に過ぎて物足りなく、地獄を描くホラーファンタジーとしてはボリュームの面でもイマジネーションの面でもやや物足りないところ、ではありますが、それにしたってまあ、荒唐無稽この上もない地獄の光景を映画として演出し、役者の皆さんも地獄の鬼やら亡者やらを一生懸命演じている(ラストには超適役のアノ大物まで)、これだけでも充分、眩暈のしそうなハチャメチャぶりを堪能できます。それに、意外に地獄って本当にあんな所なのかも知れないし。
[DVD(邦画)] 6点(2014-02-16 09:01:27)(良:1票)
1859.  ブラッディ・パーティ
現代に生きる吸血鬼のお話。吸血鬼はみな女性、イケてるお姉さんたち、というか、ややオバサンたち。彼女たちが夜の街をオシャレにかつ豪勢に闊歩し、男なんぞクソくらえ、女子会よろしく楽しく遊び暮らしている。なーんていうと、どうしてもあの、ゲゲゲの鬼太郎の主題歌の「楽しいナ、楽しいナ、~」ってのを思い出しちゃいます。オバケの楽しい日常、です。もちろん、彼女たちのファッションセンスは、鬼太郎の“ゲタにチャンチャンコ”とは全く異なりますが、オバケの日常が楽しいのは洋の東西を問わず共通なのでしょうか。さて、そんな彼女たちに新たに仲間入りした女性が、本作の主人公。コレまたずいぶんブサイクなヒロインだわい、と思っていたら、吸血鬼になるとみるみるチャーミングな女性に変貌するのが驚き。いやまあ、ヘチャムクレが普通レベルに変貌する程度ではありますが、それにしても同じ女優さんがこの変化。女性って、コワイですね。で、女性だけの吸血鬼仲間に、新たに加わった彼女ですが、その彼女が人間の男性、それも刑事に恋をしたことから、吸血鬼コミュニティのバランスが狂い始めることに。と言う訳で、スタイリッシュな前半から、後半はアクションも多くなりますが、あくまで映画の基調には、人間関係というか吸血鬼関係というか、シガラミに引きずられる哀しみがあって、意外にしんみりとした作品なのでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2014-02-15 15:15:45)
1860.  ダイヤモンドの犬たち
まずは冒頭から、たまらなくご機嫌なノリのよい音楽に、眼下に広がる砂丘。ワイルドでチープで楽しい70年代世界が待ち受けている、という期待が、高まるばかりです。さてここは、砂漠のど真ん中にある、ダイヤモンド会社(いや、ええと、たぶん砂漠のど真ん中だと思うのですが、町からココまであっという間に辿り着くかのような描写もあって、でもたぶん砂漠のど真ん中です、ハイ)。様々な防御線が引かれ、鉄壁の守りなのだけど、その会社の金庫に眠るダイヤの山を狙う、アヤシゲな一味が接近しつつあるらしい。で、(ここが、考えるとよくワカランけど、考えなければ楽しい本作のポイントなのだけれど)会社を警備するピーター・フォンダが、一味をあぶり出すために、自ら会社のダイヤを盗み出す極秘囮作戦に抜擢される。うん、よくワカリマセンね。この囮作戦、一部の者しか知らないため、彼は本当にダイヤを盗み出したと疑われる。さらには例の一味がやってきて。さあここからがワイルドでチープで意外な展開。ダイヤを狙う一味のメンバーには、クリストファー・リーやらOJシンプソンやらがいて、キャラ立ちしているといいますか、それぞれが存在感を示し、物語に厚みを加えます。一方のダイヤ会社の警備を取り仕切るは、さらに存在感示しまくりのテリー・サヴァラス。一応、善悪で言えば善の側なのだけど、どうみてもこのヒトが一番ワルそうなのです。そしていよいよ、砂漠を舞台にしたダイヤの争奪戦へ、まさにワイルドでチープなアクションのつるべ打ち(空撮によるアクションが実に小気味よい)。防御線を突破する際の「走り幅跳び」は正直カッコ悪かったけどね。さて、DVDにはよく特典映像ってのがあって、大抵は見ないで済ましちゃうのですが、本作はたまたま見ちゃったのが、大正解でした。笑撃の“別バーションエンディング”があなたをお待ちしています。
[DVD(字幕)] 7点(2014-02-15 14:40:39)
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