1. マイ・フレンド・フォーエバー
「僕の血は毒だ」とかざすシーンが強烈だった。スニーカーを流すラストは本当に切ない。友人を失った少年もそうだが、何より、息子を失った母親の心情を思って泣いてしまう。エリックを責めもせずに、有り難うということの出来る彼女は、本当に強い。母と子は、心ない仕打ちをいっぱい受けてきたはずである。そうした場合に、まっすぐに強い心を持てる人間というのは少ない。悲しみが多いほど人に対して攻撃的になるものなのだ。エリックの、少年らしい潔癖感・正義感・無謀さ、そして時々爆発する攻撃性と残酷性。彼の無謀な行動で少年の死期を早めたのだとしか思えないが、その純粋な無謀さが美しいのである。ブラッド・レンフロがたぐいまれな容貌で、そのすべてをいかにも自然に演じている。 8点(2004-08-14 23:02:17) |
2. ジェニファー8(エイト)
不気味な霧と闇につつまれた田舎。盲目のヒロインを演じるユマ・サーマンの静謐さ。アンディ・ガルシアの不穏な雰囲気。途中で登場していきなり奇怪な存在感を全開にして、一気に盛り上げまくるジョン・マルコビッチ。緊張感がとぎれず、役者もみんな上手い。全然分からなかった犯人と、ラストの急降下なオチに、ビックリした。ものすごく低予算で撮ってる映画だなぁと思いながらも結局、最後までハラハラしながら観ていた。 6点(2004-07-17 16:38:56) |
3. ルール
《ネタバレ》 いやぁ、ありがちな展開にありがちなオチだったとは言え、それなりに怖かった。バカ者共が殺されていく話になってるので、あんまり同情できないなぁ~。都市伝説って、訳語だったのか~と、トリビア50へぇだね! 用務員さんが怖かった。実は犯人だとずっと思ってた。それにしても、いつまでも死なない犯人がかなり怖い。 5点(2004-07-04 15:20:26) |
4. 素顔のままで
脱ぎたかったの? 見せたかったの? 何をしたかったの? ひとかけらの面白さも無く、素敵なキャラもいないこの映画は、結局、デミ・ムーアが脱いでますってところぐらいしか見所はない。デミ・ムーアって人気や知名度の割に、変な映画にばっかり出ているし、スタンスのよく分からない女優だ。それにしても、チャーリーズ・エンジェルの水着姿と、この映画のヌード姿を比べると、時の経過は残酷だなぁと思う。 2点(2004-06-18 13:19:29) |
5. ラスト・アクション・ヒーロー
とりあえず、楽しかった。こういう映画に、理屈を言い出すのは、ヤボってもんでしょ。私もチケット欲しい。 5点(2004-05-31 16:03:53) |
6. 理想の結婚
コメディなのだが、古き良きイギリスの上流社会の、日常生活をのぞき見ることができて、上質な映画。どぎついセリフや過激な場面も無くて、非常にゆったりと上品で、それなのに退屈しないで観た。俳優陣のクオリティもあるだろうけれども、脚本も良いのだと思う。原作は戯曲だそうだけれども、場面展開のテンポが良かった。上品なドタバタに、くすりと笑わせられた。やはり、ケイト・ブランシェットのクラシカルな優雅さが、素晴らしい。上品で清楚で優雅な淑女そのものだ。彼女は「美女」ではないが、生半可な美貌なんか太刀打ちできない存在感を持っている。めがねを掛けても、キスをしても、上品。それにしても、最後にキスをしながら足をばたばたさせているところが、かわいらしかった。ハーレクインの表紙を飾れそうなルパート・エベレットも、眼福だった。いつもは硬質な感じのジュリアン・ムーアが、意外なほど貫禄ある悪女っぷりで、素敵。 8点(2004-05-12 20:22:43) |
7. フェアリーテイル(1997)
《ネタバレ》 私が子供の頃(20年程前)までは、この映画の題材になっている妖精写真は、大真面目に「あのドイルが研究していた」「専門家もトリックの形跡はないと認めた」写真なのだと説明されていた。ところが20世紀最後になって、写真のトリックを撮影者本人が明かしたことで(映画の中で、トリックについて説明が足りず、観客は???という感じだと思うが)、突如として、荒唐無稽なトリック写真になってしまった。その時私の胸をよぎったのは「信じてはいなかったんだけど、信じたかったんだよなぁ」という思いだった。繰り返し観ていていつも思うのは、エルシーは妖精なんて本当は信じていなかったのではないかということ。ただ、息子を失った母親の嘆きにさらされ、妖精を信じた兄の形見が目の前にあって、さらに妖精を信じる従妹も現れた。だから彼女は妖精を見せてあげただけで、本当は信じていなかったのではないか。12歳の時に引き起こした事件のことを、長く口を閉ざした彼女の人生を思うと目眩がする。そして、この映画では妖精事件のもう1人の主人公であるサー・アーサー・コナン=ドイルを、ピーター・オトゥールが演じているが、素晴らしく良い。超常現象に惹かれずにはいられない人々の、悲しみをすべて表現している。地位も名誉も知能もあって、決して狂気とか愚鈍とか純粋とかではないけれども、強い絶望感と悲しみに支配されている。そういう男を上手く存在させていた。大きな悲しみにさらされたときに、超常現象に強烈に魅せられて、すがってしまう人々。それを利用し、それを金儲けや詐欺に使う人々。ただ、言いたいことは分かるが、ちょっと、感情に走りすぎでごちゃごちゃしているのが、この映画の難。本当に妖精を映像に登場させる必要はないんじゃないの?とか、死んだ男の子を最後にネタに持って来てるのってどうなんだろうとか? 最初はそういう部分が気になって仕方なかった。でも、エルシーのお父さんの冷静さとか、ほんのちょっとのところで清々しくピュアな印象が強い作品だと思う。そして私が一番好きなのは、カイテル演じる魔術師フーディニーの、芯の通った強さだ。彼の存在が、この物語をおとぎ話から現実の世界へと導く。ラストにフーディニーが語る言葉は、あたたかくて強い。 6点(2004-04-10 12:26:31) |
8. GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊
マトリックスの原典だというので、観てみたけれども、さっぱり良さが分からなかった。自己とは何か、というテーマも、こういう描き方では目新しいとは思えなかった。そもそも「製造元がうっかり生み出したものを回収している」という設定が、安易だ。それに、セリフが多すぎると思う。映像は美しいけれども、一般向けエンタテイメント作品ではないような気がする。 3点(2004-04-01 22:19:45) |
9. インディアン・ランナー
《ネタバレ》 痛い。観ていて、ひたすら痛い映画。あまり内容が整理されていなくて、役者の演技で持ちこたえているようなところがある作品だが、兄弟の葛藤物語として良くできている。この兄弟の容姿も性格も立場も極端に違う姿は、あまりにも神話的で寓意的である。喜びも悲しみも内包して、一見無表情で、ひっそりと物静かに幸せを探すかのような兄。じゃれたり甘えたりはしゃいだりしながら、どこか斜に構えて冷笑し、ふいにゾッとするような禍々しさを見せる抑制力の無い弟。この二人の対照的な存在が、あまりにもあざやかで、印象深い。ベトナムから帰ってきて、兄の家までは来たけれども「ママとパパはいい」と会わずに帰るフランク。何度か鑑賞していると、その時点で悲しくなってくる。実の親にたった一目でも会うのがイヤだと言ってしまうほどの絶望。そこにあるフランクのナイーブさ。そういうフランクが妻の出産に立ち会うことが出来ずに逃げ出したくなるのは、分かるような気がする。分かるような気もするが、私は女なので、フランクの自己世界に入れてもらえないドロシーとも気分が同調するので、痛い。イタイ。ラストなどは、ほとんどせりふがないのに、二人の苦しみと絶望が伝わってくる。この辺の演出にはただただ感嘆するのみだ。映像も、禍々しさと不条理に満ちながら、それでもいつも兄のほうへ視点を持っていくので、心にストンとおさまる。締めくくる兄の言葉には、現実を受け止めて生きる男の、万金に値する重さがある。人生はすばらしい。 8点(2004-03-12 22:50:21)(良:2票) |
10. クッキー・フォーチュン
《ネタバレ》 確かにコメディなんだけど、後半はブラック過ぎました。前半で「あれぇ、クッキーが自殺するところから話が始まるハズなのに、いつまでたっても始まらない・・・・・・」と、眠くなっていたのに、そのあとの展開はもう、背中に冷や汗、心にブリザードって感じでした。小さな町で、みんなが顔見知りの中で起こる事件で、みんなのキャラが面白いです。グレン・クロースの存在感は言うに及びませんが、警官も弁護士も、みんな楽しかった~。いかにも女好きな見習い保安官のクリス・オドネルも笑えたし、長身ショートカットなのにキュートで華やかなリブ・タイラーも予想以上に良いキャラになってました。びっくりしたのは、ジュリアン・ムーアの使い方。でも、彼女には知的で・強気で・クールというイメージが強いんですよね。彼女は実は「頭の弱いフリしてるだけっていうオチのキャラなんじゃぁ」と最後まで疑っていたんですけど・・・・・・話のオチがアレだと、余計に怖いです。なにげにサロメの衣装が良く似合ってました。あと、観終わったあとに、ふいに『欲望という名の電車』を思い出しました。共通点があると思います。 6点(2004-03-10 22:39:15) |
11. ルビー・カイロ
《ネタバレ》 ヴィゴ・モーテンセンが出ている昔の映画、ということで観た。角川映画でもあるらしい。しかし、あまりにもくだらない内容の映画。普通の主婦が「亡くなった」夫の謎を追いかけて外国へ飛び、その途中で出会った学者とイイ感じになりつつ、実は生きていた夫に出会い、その素顔を知ってしまう・・・・・・という、テレビのサスペンスドラマとしか思えないようなノリなんである。お金の無駄だ。しかし、ヴィゴ・モーテンセンが見たい、ただそれだけな人にはオススメできる。 3点(2004-03-05 21:08:21) |
12. G.I.ジェーン
《ネタバレ》 デミ・ムーアは頑張っているのだが、方向として間違えているような映画。何が何でも出世したいっ!!!そのためには男にならなきゃ!!!というカンチガイのすごさとばかばかしさと、デミ・ムーアの力のこもった表情は、ある意味スゴイ。体当たり演技、の代表例。しかし、マスターチーフはどう見ても、最初からものすごく気を遣って、オニールをしごいている。案外ああいうのは日本国内でも、空手とか剣道とか武道系の場所に行くとありふれて見られる光景なのではないだろうか。「さっさとリタイアしてくれよ」という気持ちの反面で、どこまでやれるのか見てやりたいと思っているに違いないマスターチーフは、鬼と言うよりも公平である。というか、気になって気になってしょうがない、という感じもした。最終訓練の場面は、そこまでやりますかと苦笑するほど、なかなか迫力があって強烈だった。私は女性議員の動向が非常に気になっていたのだが、突然ミサイル回収話になってしまい、女性議員のことは一切消え去ってしまった。さらにマスターチーフがぎりぎりのところで、オニールを助ける行動に出てしまったので、ビックリ。そういう性格である自分を自覚して、鬼教官をやっていたんだろうけれども・・・・・・。マスターチーフ、今後はどうやって生きていくんだと思っていたら、そのまんま鬼教官を続ける様子。ある意味で、オニールより精神がタフな人物である。詩人でもあるモーテンセンが提案して、詩集を読み、詩を引用するマスターチーフが出来上がったそうだが、謎の人物像であった。 5点(2004-03-02 20:32:59) |
13. クリムゾン・タイド
《ネタバレ》 実は良い人なのでは、何か裏があるのでは、と思わせてくれて何もなかったジーン・ハックマン演じる艦長。大きく間違っているわけではないが、自分がもはや正常な判断力がないことに気づけない老人の姿、と見ることもできる。ジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントンの対称的なキャラが、迫力を生み、リアリティはないのに、緊張感が続く映画で面白い。潜水艦の中での黒人と白人の待遇の差や、それぞれのポストでの意識の違いなど、描き込みが丁寧だ。すべての鍵を握る存在である管制室のウェップス(この名前自体が「武器を持つ者」 の意味)が、上司と親友の間に立たされ、「軍人として正しいことがしたい」と苦悩し逡巡し続ける様子は、秀逸だった。1人の潜水艦乗りとして艦長のやり方を理解しようとしてきたウェップスと部下に、言葉でなく銃を突きつけた瞬間、艦長は艦長としての資格を失ったのである。副艦長が正しかったことを知ったときウェップスの小さなガッツポーズも、印象に残った。その親友に甘えるわけでもなく、自分の理論を貫き通す副艦長は、考えようによってはかなり冷徹で危険であるが、デンゼル・ワシントンは、その存在感だけで彼を正義としてしまいたくなるようなところがあって、素晴らしい。 ちょっと理屈っぽいけど、良い映画だと思う。ただ、不満を言うなら、鍵を握ったウェップスが、私にはどうしてもドイツ人に見えてしまって、非常に違和感があった。 8点(2004-02-23 21:36:25)(良:1票) |
14. ギルバート・グレイプ
《ネタバレ》 印象に強く残るのは、ギルバートの不倫相手の存在。「あなたがこの街を出て行かない唯一の男だから相手に選んだ」というセリフがなかなかうなずけるものだったし、夫の死後には、「夫を殺したと疑われているの」とギルバートに未練を見せるようなそぶりをしてはいるのだが、すでに表情は生き生きとして明るく、新天地にギルバートを連れて行こうなんて全然思っていないことが分かる。女は強い。あと、この作品は、ギルバートを女性に直すと、案外身近にある風景になってくる。つまり「要介護の老人と、幼児をかかえ、夫もリストラにあいそうな、パートの主婦」の閉塞感や逃げ場の無さと、非常によく似ているのだ。放浪するヒロインに惹かれる気持ちはよく分かるし、どことなく無表情な主人公に、親近感を抱いてしまう。最後に家を焼くという大胆な行動も、ラストとして良かった。家を焼いて弟を抱えたまま、放浪の人生へ踏み出したギルバート、おそらく前途多難だろうなぁと思いつつ、さわやかな気分になれるラストだった。そして、デュカプリオの演技は本当に立派です。 7点(2004-02-14 03:07:49)(良:1票) |
15. レッド・オクトーバーを追え!
ショーン・コネリーの存在感が、この作品の一番のポイント。ソ連の軍人に見えない~っ!という感想は横に置いて、円熟した彼の貫禄や渋さを堪能すべし。アレックス・ボールドウィンも良かった。ボンドみたいに活躍するんじゃなくて、家庭も持っていて銃撃アクションもナシで、「情報を分析して世界を救う」ヒーロー像にボールドウィンはぴったりだった。原作のエスカレートぶりも困惑させられるが、この後のハリソン・フォードによるジャック・ライアンとだいぶ雰囲気・切り口が違っていて、この作品だけが秀逸。ジャック・ライアンのシリーズが、こういう緊迫感が最後までとぎれない作品群であったら良かったのに、と残念に思う。 6点(2004-02-14 03:04:24) |
16. 金田一少年の事件簿 上海魚人伝説
よくもまあ、こんな陳腐な設定の話を映画にしたなぁと思う。制作費の無駄としか思えない。しかし、その陳腐さに目をつぶれば、俳優の演技や音楽なども標準程度には仕上がっているし、映像の完成度は高い。特に色づかいは大変素晴らしい。 4点(2004-02-14 02:52:33) |
17. ディープ・インパクト(1998)
公開当時、ほぼ同じ頃に見た「アルマゲドン」と比べて迫力が足りないと思った。でも、あとからふと思い出すようなシーンがいくつか有る。津波にのまれる父と娘とか、バイクで逃げる恋人たちに赤ちゃんを託す両親とか。シェルターに入れるかどうかの選別の話も、さらっと描いていたが、よく考えると深い問題だった。まだ実現していない黒人大統領を登場させたことも大きいと思うし、演説場面でのモーガン・フリーマンは風格十分で素晴らしい。それにしても、いざというときには新婚の夫を見捨てて母親にところに行く妻、というのは案外どの国でも変わらないのだろうか? ツッコミどころもいっぱいあるが、最後の日を迎えるときに、人はどう行動するのか、どうありたいか、というメッセージはある程度伝わってくる。少年か青年かよく分からないような・・・・・・という印象だった主人公は、イライジャウッドだったのか!! 5点(2004-01-28 22:39:05) |
18. 恋におちたシェイクスピア
映像がきれいだったし、コメディとしてはイイ線いってる。でもその男装じゃゼッタイばれるだろー!!ということから始まって、展開がめちゃくちゃで、アカデミー賞受賞映画として観ようと思うと落胆させられる。あたりまえだが、ほぼ同時期に「エリザベス」を観ていたので、こっちの映画って妙にのりが軽くて意味が無くて変な映画だなぁという印象を受けた。何故映画を作るのか、何故芝居をするのか?というのが裏テーマであるから、そこが映画界に受けたのかもしれないけど、アカデミー賞にふさわしいとは思えない。 4点(2004-01-24 12:04:26) |
19. Shall we ダンス?(1995)
《ネタバレ》 この映画のおかげで、社交ダンスサークルに入ってても、あんまりいやらしい目で見られなくなりました。嬉しいです。渡辺えり子さんが最高に良かった。子育てを頑張って、社交ダンスを頑張って、素敵。太ってるからダメ~とか言わないで、ガッツがあって、素敵。一番感情移入が出来ました。役所さんの作り上げた、普通の家庭人で、不満はないけど心がしぼんでいる主人公が上手い。そして、自分が悪いんです迷惑かけましたと、ぺこぺこしておいて、奥さんには「もうほっといてくれ!」とどなって拗ねまくるところとか、日本の平凡な男って感じで上手い。奥さんのうじうじした態度も、イライラさせられるが、これもまた日本らしい家庭の風景のような気がする。そういう狭くてみみっちい家庭と、華やかな社交ダンスの世界が対照的で面白かった。そして、竹中直人はもう、すごい。この人がいればどんな駄作コメディも傑作に見えちゃうのではないかと思う。最後夫婦で庭で踊って、ラストかと思えば、もうひとひねり。あの手紙は余計だったが、最後に華やかなシーンを持ってきて静かなエンディングで良かった。ただ、パーティーに行かないが家庭にも帰らない、その行動にはむかついた。奥さんの「自分だけずるい」という言葉はすごく自分勝手な言葉だが、それでも、この主人公にぶつけてやりたかった。 6点(2004-01-24 11:36:37)(良:1票) |
20. 乙女の祈り
《ネタバレ》 すごい。こういうオタッキーな女の子って、いるものなんだなぁと思った。実話なのが怖いが、彼女らの異常にハイテンションでマニアックな現実逃避感情をうまくとらえて映像化している。主人公二人の少女は、思い詰め、思い込み、客観的になることが出来なくなっていくが、ピーター・ジャクソンは、彼女たちの心理に一定の理解を示しつつ、過度にグロテスクにせず、落ち着いたテンポで映画を完成させている。それに対して「同性愛」という言葉でくくって、彼女たちを卑しめ、分かったような気になってる医学博士への批判が感じられて良かった。ピーター・ジャクソンは、良い意味で「おたく」なのだ。ポウリーンのまったくロマンチックじゃない処女消失の描写が、非常に秀逸で、女性監督じゃないのになぁと感心。それに、現実逃避な彼女たちの、少しずつ確実に現実世界からはずれていく描写に、上手いなぁと思う。特にポウリーンの家族への嫌悪からくるブスーッとした表情が印象深い。思春期的な「周りの人が皆自分を分かってくれない」という思い込みの一時期、多感で閉鎖的で攻撃的な一時期、ああいう表情をする子供は多いが、それがクラス写真に残ってしまうようなとき、現実としてその子の明るくない未来を示す。それにしても、彼女たちの妄想の映像化は素晴らしい。ただの実写でなく、粘土人形のまま動かして、妄想世界を表現している。良い映像だなぁと思うんだけど、むなしい。そのバランス感覚が素晴らしい。架空の王国の、5世紀にわたる家系図を作り上げてしまう彼女たちを、笑えない人間は沢山いるはずである。これが良い方向に完成すれば、トールキンのように紫式部のように、なれるわけだ。「ロード・オブ・ザ・リング」が、マニアックな人々を非常に満足させる作品になった理由が、なんとなくわかった。 6点(2004-01-20 20:58:31) |