1. 人情紙風船
戦争で若い命を失った天才映画作家、山中貞雄の最高のペシミズム表現。前進座の名演、長屋のセット、雨、雨上がりの美しい映像、運命を暗示してころがる紙風船。窮極の名画、日本映画の最高傑作!! [映画館(字幕)] 10点(2005-10-17 14:02:06)(良:1票) |
2. 評決
法廷劇の白眉。この時期のポール・ニューマンは自らがアルコール依存症に苦しんでいたようで、演技には思えないほどの迫真性が伝わってきました。宿敵コンキャノン演じるジェイムス・メイスン以下の競演陣も秀逸。医療過誤事件。病院を経営する教会側からの和解(案)をはねつけ、「絶対的真実の追求と正義の死守」に目覚めた弁護士、信念に基づく陪審員の評決、これらは裁判制度のあるべき姿を実に雄弁に物語っています。ボストンの寂しい冬景色や、各登場人物の微妙な心の動きなども見事に表現されていて、全く共感できました。 [映画館(字幕)] 10点(2005-10-17 13:59:06)(良:1票) |
3. 戦艦ポチョムキン
これぞ、セルゲイ・エイゼンシュタイン!!一こま一こまの映像が至高の芸術に昇華され、プロパガンダ性すら忘れてしまいます。万人が観て、何かを感じ、何かを得るべき映画です。 [映画館(字幕)] 10点(2005-10-17 13:56:10) |
4. フェリーニのアマルコルド
思春期の主人公とこれをとりまく家族や悪友達、教師と司祭、逞しく美しいイタリア女性達、リミニの街を愛する哲学者、眼の見えないアコーディオン弾き、赤鼻の豆売り…、そして祭とお葬式と結婚式、ファシスト、ムッソリーニの演説、アラブの首長の訪問、豪華客船レックス号の寄港…、様々な出来事、また、季節感に溢れた美しい風景、すべてがノスタルジックな想い出とやさしさに包まれて描かれています。「フェリーニのアマルコルド」とは、天才フェデリコ・フェリーニの夢と想像の世界なのかも知れません。想い出のデリケートなモザイク、コラージュのような感じ。ニーノ・ロータの音楽も哀愁に満ちて美しい。至福の2時間でした。 [映画館(字幕)] 10点(2005-10-17 13:54:04) |
5. 大人の見る絵本 生れてはみたけれど
「生きるべきか死ぬべきか」、「ニノチカ」等々、ソフィスティケイテッド・コメディーの映画作家エルンスト・ルヴィッチ監督を敬愛していた小津安二郎監督の本領は、初期のサイレント映画群にストレートに体現されていると思います。子ども(人間の本質)の眼から純粋にながめた大人(社会化された人間)の社会と小さな子どもの社会とを「大人の見る絵本」として、叙情的に描いています。情景描写も見事でノスタルジーに浸れる作品でもあります。小津作品、いや、日本映画が世界に誇れる大傑作でしょう。 [映画館(字幕)] 10点(2005-10-17 13:47:23) |
6. 嘆きのテレーズ
「天井桟敷の人々」、「悪魔が夜来る」、「北ホテル」、「ジェニイの家」のマルセル・カルネ監督のもう一つの代表作。シモーヌ・シニョレ、シルヴィ(→「舞踏会の手帳」での名演も忘れられません)…、名優達の名演も光り輝きます。フランス第2の都市、リヨンでのロケ、カメラワークも素晴らしい。ラストにかけて一気に緊迫感は高まり、ラストシーンでは、はっとさせられます。原作は、「居酒屋」、「女優ナナ」の巨匠エミール・ゾラの「テレ-ズ・ラカン」、自然主義文学の傑作を映画のリアリズムで表現した傑作です。 [映画館(字幕)] 10点(2005-10-17 13:40:31) |
7. 摩天楼を夢みて
押付け販売の不動産会社で働くサラリーマン達の世界を見事なまでに表現し尽くした作品。会社に愛想が尽き、どことなく醒めているエド・ハリス、トップセールス・凄腕のアレック・ボールドウィンとアル・パチーノ、病気の愛娘を抱えて必死に会社にしがみつくジャック・レモン等々の名優達、その細かなしぐさも心理描写も巧みで、それぞれに深い共感を覚えます。舞台劇で練りに練られてきた脚本も秀逸。この脚本あってこそ、名優たちが終結し、夢の競演が実現しました。赤く薄暗い色彩感覚の妙と、どことなくけだるいBGM、狭く引締まった事務所の空間と、雨、安酒場、高架の地下鉄等々、全てに印象深く残る名作です。 [映画館(字幕)] 10点(2005-10-17 13:33:08) |
8. 灰とダイヤモンド
大戦末期のワルシャワ蜂起で、地下水道の迷路を必死で逃げ惑い生き延びてきた主人公が、戦後、自由主義的な政治信条に促されてテロに走り、人生に一瞬の希望の光を感じながらも、結局は転向できずに、もがき苦しみ自らの命を犠牲にするまでの三日間の出来事。主人公の生き様は、大国の支配と恐怖に翻弄され苦しみぬいたポーランドの歴史を象徴しているかのようでもあり、自らの父親を「カチンの森事件」で失った監督ならではの国家観、宗教観、政治観、人生観に対する全世界への強烈なメッセージのように受取れました。 [ビデオ(字幕)] 10点(2005-10-11 15:20:14) |
9. 屋根
流石、デ・シーカ、ヴィットーリオ!!脚本、台詞もプロットも素晴らしい。カメラもロケも素晴らしい。役者も演技も素晴らしく、素直に感情移入できました。ハッピーエンドであー良かった・・・。 10点(2004-09-03 10:02:08) |
10. 山の郵便配達
日本人のメンタリティ-にググッとくる映画ではないでしょうか。古来、日本人が歌に読み、愛しつづけてきた原風景、朝靄、霞、かぎろい、風、夕焼け、山道、井戸、棚田、祭り、水車、渓流、風、雲、月・・・を見事なカメラワークで表現しています。親と子と村人との会話や交流も、暖かく心和みます。犬の「次男坊」の演技は特筆もの!!表情が賢こくやさしく、仕種が可愛く、動きが機敏で軽やかで滑稽です。 「那山 那人 那狗」の原題にも、実に趣きがあります。 10点(2004-08-06 11:16:01)(良:1票) |
11. ラルジャン
雷に打たれたかのような強烈な衝撃!!。鋭利で張り詰めた雄弁な画像、ダイナミックな構図と構成、素人俳優による虚飾を取り去ったリアリティ、ドキッとするようなプロットと展開と。鋭敏な鬼才ロベール・ブレッソンでこそ到達し得た高みである。なお、テーマはラルジャン(=お金)。原作はトルストイの後期短編小説「偽りの利札」(物神化されたお金に翻弄される人間の宿命を描いていて、極めてドストエフスキー的!!)。 10点(2004-05-10 16:18:16)(良:1票) |
12. 地獄に堕ちた勇者ども
ミラノの貴公子、ルキノ・ヴィスコンティによる深遠で、荘厳で、感動的な作品。副題は(ニーベルングの指環)「神々の黄昏」。ヒトラーのナチズムが蔓延していく重苦しい退廃的な時代の空気の中で、宿命の罠に引きずり込まれていく人々のあり様を、窮極の映像美で、雄弁に表現し尽くした見事な作品である。エッセンベック一族を翻弄しつづけたアッシェンバッハもまた、破滅の道を歩んでいたのであろうか。流される宿命を超越するためには、多数の理性の力と勇気とが必要ではなかろうか(「理性が眠るとデーモン(悪魔)が目覚める」)。私にとって古今東西、No1の映画です。 10点(2004-01-06 13:33:33)(良:1票) |
13. フィラデルフィア
減量して、やつれて、エイズ患者を演じ切ったトム・ハンクスのオスカーの演技は見事でした。クライマックスは、断頭台に露と消える「アンドレア・シェニエ」の恋人、マッダレーナのアリアに、主人公が感情移入していく場面。マリア・カラスのアリアもまた、感動的です。映像では、ミラノ・スカラ座でのエヴァ・マルトンによるマッダレーナが必見です。 9点(2004-01-05 17:53:48) |
14. 野良犬(1949)
さすが黒澤明監督!!この表現力!!灼熱の暑さ、夕立の後の涼しさ、三船敏郎の激しさ、志村喬の優しさ…、ぎゅっと凝縮された表現には強烈な印象を受けること必至です。 10点(2004-01-05 17:35:27) |
15. 第十七捕虜収容所
大好きなビリー・ワイルダー監督作品の中でも、一番好きな作品です。捕虜収容所という、辛く苦しいはずの閉鎖社会の中、個性をぶっつけ合って、強く、自由に、おおらかに生きる捕虜の面々、中でも知恵を武器に巧みに、逞しく立ちまわるセフトン(ウィリアム・ホールデン)は、最も魅力的な映画キャラクターの一人です。脚本は才気とユーモアに溢れ、演出、小道具等々も秀逸、細部にまで監督のこだわりが感じられます。これ以上楽しい映画、他にありますか??? 10点(2004-01-05 17:32:22) |
16. アンタッチャブル
最高のエンターテインメント映画。法に忠実なケヴィン・コスナー、社会に毒されていない新鮮なリンゴの実アンディ・ガルシア、最強の4人組「アンタッチャブル」、(髪を根こそぎ抜いたという)最高のカポネ役、ロバート・デ・ニーロ、観どころギッシリの映画の教科書です。 10点(2004-01-05 17:15:28) |
17. 街の灯(1931)
きわめつけのラストシーン!!何故か、何度観ても、息をのみ、胸にジーンと迫り、目頭が熱くなってしまいます。 10点(2003-10-30 11:53:10) |
18. レインメーカー
原作はジョン・グリシャムの「原告側代理人」、「レインメーカー」とは「札束の雨が降るごとく稼ぐ男」という意味。さすがにコッポラ監督、グリシャムものの映画では一番だと思います。マット・デイモンが社会に毒されていない正義派の弁護士を初々しく見事に演じきり、これに息投合したダニー・デビートも頗るつきの名演でした。攻撃防御、陪審制度、判例法、ビデオメッセージの採用など法廷ものとしても細部に優れていると思います。シドニー・ルメット監督「評決」とともに大好きな映画です。 10点(2003-09-26 12:03:52) |
19. ユージュアル・サスペクツ
《ネタバレ》 サスペンス映画史上の最高傑作!!カイザー・ソゼーの影での登場からポッと消えるまで、すなわち、最初から最後まで、わくわくどきどきの連続です。ケヴィン・スペイシーを初めとする名優群と名演と、脚本(プロットと台詞)、舞台設定と演出とカメラワークの全てに10点+αをつけたいと思います。繰り返し何度も観たい映画です。 10点(2003-09-18 09:34:03) |
20. ファーゴ
日常転がっている衝動の罠に引きづり込まれていく登場人物達の悲劇。全ての登場人物の名演、台詞の妙、雪景色や鮮血等々の映像美、映画の武器が最大限に生かされたサスペンス映画の最高峰であると確信します。 10点(2003-07-14 15:33:11) |